日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
48 巻, 10 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 大加戸 彰彦, 東郷 杏一, 山本 寛, 道山 琴美, 佐野 均, 布施 徳馬, 竹内 正, 柳川 昌弘
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1577-1580
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和55年1月から昭和60年12月までの最近6年間に経験した80歳以上の高齢者手術症例35例について,既往歴,術前評価,術後合併症,手術成績の面から検討を加えた.既往歴では高血圧をはじめとする循環器系の異常が最も多くみられた.術前評価では肝・腎機能の異常の他,呼吸機能,心電図においても大部分の症例に何らかの異常がみられた.術後合併症は高血圧,不整脈等をはじめとして大部分の症例にみられた.術前心機能と術後合併症の発生率との相関関係を調べたところ,術前に循環器系の異常を有する症例は術後合併症の発生率が高かった.しかし術前呼吸機能の異常との相関関係はあまりみられなかった.高齢者では術前呼吸機能の評価に工夫を要すると考えられた.術後1カ月以内の死亡例はなく,硬膜外麻酔の使用,緊急例のなかったこと等が予後を比較的良好としていることが推察された
  • 渡辺 建詞, 山下 裕一, 曹 光男, 緒方 裕, 磯本 浩晴, 掛川 暉夫
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1581-1585
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化器外科手術後に発生した難治性瘻孔に対し,フィブリン糊による閉鎖を試みた.
    対象症例は6例で,瘻孔発生の原因は直腸低位前方切除後の縫合不全2例,胸部食道全摘後の縫合不全2例,直腸切断術後の会陰部創感染1例,虫垂切除後の腹壁の感染1例であった.
    瘻孔造影にて瘻孔の形態,走行を確認した後,フィブリン溶解液(A液)とカルシウム,アプロチニン,ゲンタマイシンを加えたトロンビン溶液(B液)を混合し,瘻孔に注入した.
    6症例中3例は本法の1回のみの施行で瘻孔は完全に閉鎖し, 2例には瘻孔の縮小化がみられた.
  • 山本 弘幸, 伊藤 末喜, 桑名 三徳, 篠藤 満亮
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1586-1590
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    局所再発乳癌は,その再発型によって臨床像が異なることがしばしば認められる.そこで局所再発を単発型,多発型に分け,また,遠隔再発とも比較し検討を加えた.対象は,昭和48年より昭和59年までの12年間に乳房切断術を行った原発性乳癌634例のうち,再発のみられた133例である.局所再発は40例であり,単発型13例,多発型27例であった.遠隔再発は93例であった.単発型,多発型および遠隔型の間に年齢分布に差はみられなかった.単発型は,他の2型に比べ内側腫瘤に多く発生していた.多発型は,他の2型に比べ,腫瘤が大きく,リンパ節転移の多い症例に多く発生した.しかも,多発型は,健存率,再発後生存率,術後生存率のいずれも,他の2型より低く,とくに単発型より有意に低かった.多発型の局所再発をきたす乳癌は,発育が速く,生物学的悪性度が高いものと思われた.
  • 加納 宣康, 松原 長樹, 雑賀 俊夫, 酒井 聡, 池田 正見, 渡辺 敬, 飯田 辰美, 小山 明宏, 本間 光雄
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1591-1596
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近5年間に経験した重複癌23例を検討し次の結果を得た.年齢は37歳から84歳までで平均64.2歳であった.性別は男性12名および女性11名とほぼ同数であった.性別の平均年齢は男性66.8歳および女性62.0歳と男性で4.8年高かった.また同期間中の単発癌症例の平均年齢は男性60.1歳および女性59.8歳で,男女とも重複癌の方が高く,男性で女性よりもさらに高かった.臓器別の発生頻度をみると,男性では一方が膀胱癌あるいは腎癌といった泌尿器癌が12例中8例(66.7%)を占め,女性では一方が子宮癌あるいは乳癌といった女性特有臓器癌が11例中9例(81.8%)を占めた,同時性9例および異時性14例で,同時性は異時性に比し予後が悪く,とくに消化器癌の進行度が予後に大きく影響していた. 23例中9例(40%)で三親等内に癌患者を認め,重複癌患者での遺伝的要因の関与が示唆された.
  • 野水 整, 土屋 敦雄, 鈴木 真一, 畠山 優一, 井上 典夫, 石井 芳正, 六角 裕一, 阿部 力哉
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1597-1599
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室例2家系10例と本邦報告例5家系40例の計50例の家族性胃癌を対象に,発症年齢,性差,重複癌の頻度について,非家族性胃癌として教室の胃癌家族歴陰性胃癌139例(1975年~1979年)を対照として比較検討した.
    発症年齢については,家族性胃癌では平均46.6歳, 39歳以下の症例の占める割合は35.4%であり,非家族性胃癌では平均57.5歳, 39歳以下症例は5.7%と,家族性胃癌の方が若年性であった.性別発生頻度については,対照が男性優位であるのに対し,家族性胃癌ではわずかに女性優位であった.重複癌の頻度についてはほとんど差はなかった.
    胃癌の家族内集積家系では,家族歴をもとに家族構成員のスクリーニングにより胃癌の早期発見,早期治療に努めるべきである.
  • 勝部 隆男
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1600-1610
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    溶連菌製剤OK-432を術前経内視鏡的に腫瘍内投与した早期胃癌20症例(投与群)を対象に,投与された腫瘍局所の変化,投与前後における宿主の細胞性免疫能の変動,この投与が所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応に与える影響などを検索した.なお, OK-432非投与の早期胃癌16症例(非投与群)を対照とした.腫瘍局所の病理組織学的所見では,投与群にリンパ球様細胞浸潤を認める症例が多かった.術前術後の細胞性免疫能の変動をみると,投与群では末梢血リンパ球数, PHA幼若化反応は変化しなかったが,非投与群では有意に低下した.所属リンパ節の抗腫瘍的な免疫反応をみると,近位リンパ節リンパ球のPHA幼若化反応, NK細胞活性は投与群で上昇していた.リンパ節反応形態をみると,投与群でSH, PHのgradeが高い症例が多かった.術前経内視鏡的OK-432腫瘍内投与は,免疫学的意義や臨床的有用性をもつ治療法と思われる.
  • アンモニア負荷動態試験の考案
    源明 己千夫
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1611-1623
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    慢性肝性脳症の中には,肝外シャントに起因し外科的遮断にて脳症の改善のみられるものがある.この型の肝性脳症を診断するため独自のアンモニア負荷動態試験を考案し,臨床的に検討して以下の結論を得た.
    1) アンモニア負荷動態試験にて正常型,肝障害型,肝外シャント優位型に分類した.肝性脳症例6例は肝障害型2例,肝外シャント優位型4例と判定され,肝外シャント優位型の門脈値を考慮した肝外シャント優位率は, 33.0%以上と高値を示していた.
    2) 肝外シャント優位型を示した脳症例3例に対して外科的門脈側副路遮断を行い,全例術後脳症の消失が得られた.
    3) アンモニア負荷動態試験で分類した3型における肝機能検査,門脈造影の成績を比較検討したが,肝障害型と肝外シャント優位型との間には大きな差はみられず,更に脳症の主因が肝障害か,肝外シャントかは鑑別できなかった.
    以上よりアンモニア負荷動態試験は,従来の肝機能検査や門脈造影では鑑別出来なかった外科的遮断の適応となる肝外シャント優位型脳症を的確に診断できる方法であると思われる.
  • 久田 友治, 田中 敏子, 松田 裕之, 西野 豊彦, 増田 英隆, 草場 威稜夫, 細川 哲哉, 森山 正明
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1624-1630
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    「日本における胆石の新しい分類」が示されたのを契機に,胆石の種類別に含有Zn, Cu, Mn, Fe, Mg濃度を対比し,その評価を試みた.なお,測定には原子吸光分析法を用いた.
    1. 各金属の含有濃度はいずれも純コ石が最低値を示し,混合石,ビ石,黒色石の順に有意に増加した.この所見に赤外線吸収スペクトル法による成分分析結果を加えて多変量解析を行ったところ,種類別に明確に判別された.
    2. 純コ石ではZn, Cu, Mnの濃度に差はなく,混合石ではZnに比べてCuとMnが有意な高値を示した.また,ビ石ではCuがMnに比べて有意な高値であったが,黒色石では差がなく, CuとMnはともに著しい高値であった.
    すなわち,純コ石と比べて混合石ではCuとMnの増加が相対的に大であり,ビ石に対して黒色石ではMnの相対的な増加が注目された.
    以上の所見から,金属濃度からみても「新しい分類」の意義は大きく,とくにCuとMnの濃度には胆石形成機序の差がうかがわれた.
  • 藤井 康弘, 田中 龍彦, 中山 伸一, 高 弘一, 上坂 邦夫, 芦田 卓也, 山本 正博, 奥村 修一, 大柳 治正, 斉藤 洋一
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1631-1638
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去13年間に経験した良性胆管狭窄症73例について,非手術性胆管狭窄と術後胆管狭窄に分け,検討をした.非手術性胆管狭窄は66例(90%)であり,その内訳では乳頭狭窄が32例と最も多く,以下肝内結石16例,先天性総胆管拡張症8例などであった.症状は黄疸のみならず,疼痛,発熱などの症状の出現率も高く,病悩期間は長かった.
    術後胆管狭窄は, 7例であり,胆摘術を原因としたものが5例と多かった.そのうち3例は再手術時の吻合部狭窄にて再手術をも必要とした.部位別では,上部は肝内結石,下部は乳頭狭窄や慢性膵炎などの炎症性のものが多く,中部胆道では術後胆管狭窄によるものが多かった.良性胆道狭窄は長期間,患者を悩ませた後,発見されたり,治療も長期に亙ることを考えれば,早期に診断を確定し適切な外科的処置を施すべきであると考えられた.
  • 山本 宏, 菊池 俊之, 向井 稔, 高 在完, 古川 敬芳, 天野 穂高, 丸山 尚嗣, 山本 義一, 浅野 武秀, 碓井 貞仁, 磯野 ...
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1639-1645
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵癌手術例34例に対してslow injection dynamic CTを行い,その診断能を検討した.
    主腫瘍の描出率は94%であり,明瞭な低吸収域として描出でき, plain CTの76%に比べすぐれていた.
    血管浸潤の診断能を上腸間膜動脈と門脈および上腸間膜静脈について検討した.画像上の腫瘍と血管との関係を血管浸潤判定基準で4型に分類し,診断すると,上腸間膜動脈,門脈および上腸間膜静脈ともに正診率100%であり,血管造影の診断率88%, 91%に比べすぐれていた.
    SI-CTは膵癌診断において主腫瘍診断ぱかりでなく,血管浸潤診断においても非常に有用と考えられた.
  • 金 聲根, 田村 勝洋, 小野 恵司, 板倉 正幸, 樽見 隆雄, 山本 剛史, 中瀬 明
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1646-1652
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術の術式上の問題点のひとつとして,消化管再建法およびそれに伴う膵空腸吻合法が挙げられる.当教室ではBillroth I型再建法,膵空腸一層吻合法(I型1層法)を行っており,従来よりのBillroth II型再建法,膵空腸二層吻合法(II型2層法)と臨床的に比較検討した.術後のPFD試験ではI型1層法77±1.7%, II型2層法62±2.2%と前者が有意に(p<0.05)高かった.術後50g OGTTにおけるInsulinogenic indexはI型1層法で0.30±0.023, II型2層法で0,18±0,022と有意差はないものの前者が高く,また,耐糖能も前者にやや良好な傾向がみられた.術後合併症としては,前者には直接合併症を認めなかったが,後者に胆道炎2例,縫合不全1例,イレウス1例を認めた.膵頭十二指腸切除術の再建法には安全性などの問題もあり一概にどの術式が優れているか断定はできないが,今回の結果からは, I型一層法が良好であると思われた.
  • 津森 孝生, 中尾 量保, 宮田 正彦, 小川 法次, 橋本 創, 川島 康生, 南 俊之介, 金 昌雄
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1653-1656
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    後腹膜原発の非上皮性悪性腫瘍8例の性比は男性7例,女性1例であった.年齢は42~69歳(平均年齢53歳)であった.手術は腫瘍摘出術を4例に施行した.残る4例は手術時,周囲組織への広範な浸潤,または遠隔転移のため非治癒切除あるいは非切除に終った.腫瘍径は6cm~30cmにおよび,平均腫瘤径は15cmであった.組織学的には脂肪肉腫2例,悪性線維性組織球腫4例,平滑筋肉腫,横紋筋肉腫各1例であった. Stage分類を行うとStage I1例, II1例, III4例, IV2例となり進行症例が多かった.アドリアマイシンを含む多剤併用化学療法を4例に施行した.術後経過は生存1例,死亡7例 (2カ月~4年8カ月) であり予後不良であった.
  • 頻回の輸血により大球性貧血が隠された症例
    田中 英穂, 千見寺 徹, 鍋嶋 誠也, 花輪 孝雄, 村上 和, 菊池 典雄
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1657-1661
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    経中心静脈栄養(IVH)管理中に葉酸欠乏があったにもかかわらず,頻回の輸血のために大球性貧血を示さなかった死亡例を経験した.症例は70歳,男性.胃癌のため胃切除+脾摘.胸腹腔内膿瘍と出血性吻合部潰瘍を併発. IVH施行,頻回の輸血,長期の抗生剤投与と膿瘍ドレナージをおこなった.その後著明な白血球減少,血小板減少が見られ,敗血症により死亡した.死亡直前の骨髄は悪性貧血像.血清葉酸,ビタミンK1の濃度低下が認められた.回顧的検討により, IVH管理1カ月を過ぎる症例には葉酸の,また抗生剤長期投与例にはさらにビタミンKの投与が必要と考えられた.
  • 丸山 芳朗, 平田 公一, 白松 幸爾, 木村 弘通, 戸塚 守夫, 早坂 滉
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1662-1666
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化器外科領域における術後感染症に関して教室例の検討を行なった. 1977年~1985年の9年間に施行された開腹手術症例のうち上腹部消化器疾患は1,707例で,術後感染症の発生頻度は103例, 6.0%であった.胃・十二指腸疾患症例と肝・胆・膵症例に分けて比較してみると,術後感染症発生頻度は前者で8.1%, 後者で4.4%である.良・悪性別にみると,約5倍後者に多く,とくに肝・胆・膵症例の悪性疾患症例に高頻度であった.
    起因菌の変遷をみると,最近の3年間はグラム陽性菌の増加が認められる.とくにそれ以前は,胃・十二指腸疾患症例での起因菌はグラム陰性菌が圧倒的に多かったことと比較して逆転現象が見られた.
    術後感染症例の死亡率は21.4%と高率であり,そのうち悪性疾患は77.3%と大部分を占め,担癌生体の免疫機構,術前栄養管理などの面から検討を要するものである.
  • 滝口 伸浩, 唐木 清一, 川野 元茂, 北方 勇輔, 朱 明仁, 田中 寿一, 大多和 哲, 奥井 勝二
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1667-1672
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    頭蓋内髄膜腫の肝転移の症例に対し,肝左葉切除術を施行し,転移巣を切除し得たので若干の文献的考察を加え報告した.症例は42歳女性.腹部腫瘤.腹痛を主訴に来院した. 2回にわたる髄膜腫摘出術の既往があった.腹部超音波検査,腹部CTスキャンにて肝左葉全体を占める腫瘍を認めた.肝腫瘍の診断のもとに肝左葉切除術を施行した.摘出標本の組織学的検索の結果,頭蓋内髄膜腫の肝転移と診断された.
  • 小森山 広幸, 金杉 和男, 福田 護, 山口 普, 丸山 雄二, 渡辺 弘, 酒井 成身, 長田 博昭
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1673-1680
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳癌の局所再発に対する外科的切除は,時に根治性を期待できる.我々は,局所再発5例,局所のみならず遠隔転移巣を有する5例の計10例に前胸壁切除を行った.局所再発のみの5例は術後最長4年9ヵ月であるが,全例健在である.遠隔転移を有した症例の予後は不良であったが,局所制御の観点から手術を行い,一時的ではあるが帰宅可能となり, quality of lifeの向上につながったと考えている.
    人工胸壁はいかなる大きさの欠損より必要であるのかは明らかではないが,我々の経験では約10×10cm以上の欠損には,何らかの補強が必要であろうと考えられた.現在胸壁補填にはmarlex meshとacryric resinが多用されているが,我々は硬性の面からacryric resinを,主に使用している.その上の皮膚の被覆には,腹直筋皮弁が有用であると思われた.
  • 李 美根雄, 海老根 東雄, 田村 進, 佐藤 恭介, 伊藤 信行, 鵜養 恭介
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1681-1686
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    開心術中の人工心肺離脱時または離脱後,重症の低心拍出量症候群(LOS)を生じ, IABPと上行大動脈送血による体外循環を併用した積極的補助循環を行い,左心機能の改善に努めた4例を経験したので報告する.
    症例1: 51歳女性,左房内血栓除去術+MVR+1枝ACBG. 症例2: 68歳女性, AVR. 症例3: 51歳女性, MVR+術後左室後壁破裂.症例4: 48歳男性,緊急2枝ACBG. 症例1・2・4は人工心肺離脱時, 3は離脱後重症のLOSを呈し積極的補助循環を施行した.
    積極的補助循環施行患者の病態は重篤で,その原因除去は難しい.特に長期施行では溶血,感染,下肢阻血,多臓器不全等を生じ,更に予後不良となり問題がある.今後我々は,人工心肺離脱時または離脱後の重症LOS患者に対し,前記の問題点を充分に考慮し,左心用補助心臓,完全人工心臓の前段階として,どの施設でも施行可能なこの積極的治療を続けていく方針である.
  • 掛谷 和俊, 御手洗 義信, 膳所 憲二, 桑原 亮彦, 斉藤 貴生, 小林 迪夫, 若杉 健三
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1687-1692
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃の燕麦細胞癌は,極めて稀な疾患であるが,その2症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.
    症例1は, 58歳男性で,胃幽門前庭部に小型Borrmann II型様の腫瘤が認められ,胃部分切除術ならびにR2のリンパ節郭清を施行した.組織学的には,浸潤度smで印環細胞癌を混ずる胃燕麦細胞癌と診断された.組織化学的,電顕的にも, Grimelius染色陽性,神経内分泌顆粒陽性であった.本症例は,術後1年4ヵ月の現在,再発の徴なく生存中である.症例2は, 69歳女性で,胃角および前庭部に壁外性発育を示す巨大腫瘤がみられ,肝・肺・結腸・腹壁へ浸潤していたので,姑息的に胃部分切除術を施行した.組織学的に腺癌を混在する胃燕麦細胞癌と診断されたが, Grimelius染色陰性で,神経内分泌顆粒も認められなかった.本症例は,術後約5ヵ月で,再発,死亡した.
  • 松下 昌裕, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 石橋 宏之, 加藤 純爾, 神田 裕, 小田 高司, 原川 伊寿, 久世 真悟, ...
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1693-1698
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸間膜動脈閉塞症による小腸広範梗塞はよく知られているが,虚血性大腸炎のような虚血性疾患は小腸ではあまり注目されていない.回結腸動脈分枝後の上腸間膜動脈閉塞症による空腸の軽度の虚血性炎症を経験したため報告した.症例は72歳男性である, 6日前から嘔吐と腹部膨満があった.来院時,腹部膨満をみとめたが,圧痛あるいは筋性防御はなかった.腹部単純写真で著明な小腸ガス像をみとめたため,小腸イレウスとして緊急手術を施行した.手術所見では,遠位空腸に約30cmにわたる発赤と壁の肥厚を認めたため,この部分を切除した.また上腸間膜動脈は全体に硬化していた.切除した空腸は組織学的に虚血性炎症と診断された.術後経過は良好であり,術後の血管撮影で回結腸動脈分枝後の上腸間膜動脈に動脈硬化性閉塞を認めた.以上から,上腸間膜動脈遠位の閉塞のため空腸に軽度な虚血性変化を来したものと結論した.
  • 上田 祐二, 能見 伸八郎, 鴻巣 寛, 神吉 豊, 野村 秀人, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1699-1703
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    稀な病変である多発性小腸憩室が原因となり,小腸軸捻転を起こし,イレウスを生じた1例を経験した.
    症例は64歳女性,数年来便秘症であったが,急激な腹痛,嘔気を主訴に来院した.保存的に加療するもイレウス症状は軽快せず,開腹術を施行した.上部空腸から回腸末端部に至るまで, 0.5cm~5cm大,約60個の多発性小腸憩室を認めたが,特に鶏卵大の憩室が密集したTreitz靱帯から10cm~70cmの空腸を中心に,時計方向360度の軸捻転がみられ空腸は一部壊死に陥っていた.捻転部を中心に約1mの空腸切除を行い手術を終えた.患者は退院後も特に愁訴なく経過している.小腸憩室について本邦報告例を検討すると共に,その発生病理について文献的に考察を加えた.
  • 椎木 滋雄, 桑田 康典, 柏原 瑩爾, 上田 祐造, 黒瀬 匡雄, 宮木 功次
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1704-1708
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    デスモイド腫瘍のうち,腫壁デスモイド,腹壁外デスモイドの報告は多くなされているが,腹腔内デスモイドの報告は稀である.
    本邦では1975年以降,我々の調べ得た限りでは14例の報告をみるにすぎない.最近小腸間膜より発生した腹腔内デスモイドの1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は72歳女性で,腹部腫瘤を主訴に来院した.注腸透視では大腸にpolyposisを認めず, CT,上部消化管透視,血管撮影より腸間膜腫瘍と診断され開腹手術を施行した.
    腫瘍は, 7×5×2.5cm大,灰白色,弾性硬で,病理組織学的に腹腔内デスモイドと診断された.
    術後経過は良好で, 3年を経過した現在再発の徴候を認めていない.
  • 中川 芳樹, 桑原 修, 中岡 和哉, 土肥 英樹
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1709-1713
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸重積症にて発見された転移性空腸癌の1手術例を経験したので報告した.
    症例は52歳男性.風邪症状と体重減少を主訴とし近医受診,胸部X線像にて異常を指摘され当院を紹介された.肺腺癌と巨大ブラの診断で開胸,右上葉切除・R3郭清を施行した.摘出標本では右上葉肺尖部に巨大ブラがあり, S2に8×6cmの充実性腫瘍が認められ組織診断は中分化型腺癌であった.術後白血球数が減少せず19日目にイレウス症状を呈し,保存的治療では改善せず術後27日目に開腹した.空腸腫瘍による腸重積が確認され空腸部分切除術を施行した.摘出標本ではトライツ靱帯から約70cmのところに9×7cmの大きな腫瘍があり出血・壊死を伴っていた.またこの周辺に小腫瘍が多数認められた.肺癌と空腸腫瘍の組織像を検討した結果,肺腺癌の多発性空腸転移と診断された.
    肺癌の小腸転移巣に対する手術例はまれで文献上本邦報告例に自験例を加えて考察した.
  • 岩本 恒典, 西山 勝彦, 中村 昭光, 中路 進
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1714-1719
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔内臓領域における動静脈瘻(AVF)は稀である.そのなかでも腸間膜動静脈間のAVFは文献上53例を数えるにすぎない.そのうち28例が外科手術を原因として生じていた.
    我々は小腸切除術後6年を経過して吐血,食道静脈瘤,腹水などの門脈圧亢進症状や,頻回の下痢を主訴とした上腸間膜動静脈間のAVFの症例を経験した.患者は高心拍出状態であったが,その症状はみられなかった. AVFの切除手術により症状は全て消失した.
    自験例を含め27例の手術が原因であったAVFを検討した結果,腸間膜の虚血や炎症がAVF形成の大きな要因になっているものと推察された.
  • 武田 伸一, 桑田 圭司, 清家 洋二, 山崎 芳郎, 山崎 元, 本行 忠志, 李 鐘甲, 森口 聡, 石川 克也, 三木 康彰
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1720-1725
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性, Hirschsprmg病の再根治手術目的で当科へ入院した.患者は,過去に根治術を含め6度も手術を受けているのにもかかわらず,狭小腸管の切除不足による頑固な便秘が持続した.注腸造影検査ではS状結腸の著明な拡大及びそれに続く8cmの肛門側狭小腸管が認められた.再根治術に際し, 2度に及ぶ横行結腸人工肛門造設術の既往歴のため健常結腸が短縮している点と, pull through結腸の血行温存が問題点となった.
    根治術は三期的に行った.まずは, S状結腸に人工肛門造設(第1次),下行結腸は8ヵ月後にほぼ正常径に回復した.直腸粘膜抜去, endorectal pull thromgh法に肛門括約筋切開を加えた(第2次). 2週間後に肛門結腸粘膜吻合による肛門形成術(第3次)を施行し,術後経過は概ね良好であった.
  • 金丸 太一, 具 英成, 花畑 雅明, 宇佐見 真, 荻野 和功, 寒原 芳浩, 西山 裕康, 石本 左智子, 大柳 治正, 斎藤 洋一
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1726-1732
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    閉塞性黄疸を主訴とした胆道内発育型肝癌を2例経験し,そのうち1例を切除しえたので文献的考察を加えて報告する.症例1は68歳女性,胆嚢肝床部より発生した肝細胞癌が胆嚢頸部および左右肝管合流部にて管腔内浸潤をきたした症例である.症例2は70歳男性,胆管内腫瘍の一時消失という特異な経過をたどり,手術にて左葉内側の肝細胞癌が末梢胆管へ浸潤,胆管内ヘポリープ状に増殖したと考えられた症例である.本邦でのicteric type hepatomaの切除症例は16例である.そのうち術前に肝細胞癌と診断しえた症例は2例であった. 16例中6例は原発巣が3cm以下の微小肝細胞癌であり発育の部位や様式により胆管内増殖をきたすことを念頭にいれる必要がある,また4例に一時的な黄疸の軽減または消失を認めており診断時に注意を要する.予後は通常の肝癌に比し悪いが5年生存中という報告も有り積極的に根治術を行うぺきと考えられた.
  • 浦野 健, 林田 政義, 森 英昭, 天野 実, 宮田 昭海, 平 稔, 岩田 享, 坂本 晃
    1987 年 48 巻 10 号 p. 1733-1737
    発行日: 1987/10/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    副肝は稀な肝臓の奇形であり,本邦では文献的に調べ得た限りでは32例の報告を見るにすぎない.最近,副肝の2症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例1は69歳,女性,胆石症の診断で開腹術を施行した,胆嚢底部腹腔側に8×4mm大の副肝を認めた.
    症例2は52歳,女性.胃癌の診断で開腹術を施行した.肝左葉内側区域下面に茎を介して連絡する8×5×3mm大の副肝を認めた.
    副肝は臨床症状を示すことがほとんどなく,剖検あるいは手術時に偶然発見されることが多い.また,副肝の多くは胆嚢に認められるため,胆嚢壁肥厚性病変の1つとして鑑別に加える必要がある.
feedback
Top