日本臨床外科医学会雑誌
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49 巻, 11 号
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  • 山内 泰介, 高橋 広, 青野 幸治, 北條 禎久, 阿部 康人, 酒井 堅, 大須賀 洋, 木村 茂, 永井 勲, 大ヶ瀬 浩史, 村瀬 ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2047-2052
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    昭和61年3月から昭和62年9月までに当科に入院した患者のうち25例からMCRSAが検出された. 21例は小児例であり, 4例は成人例であった.小児例は平均5カ月と幼少であり,先天性心疾患,先天性胆道閉鎖症が最も多く,成人例は高齢者のcompromised hostであった. coagulase型, phage群の組み合わせによって複数の感染源が考えられた.抗生物質多剤耐性菌であり, coagulase型によって抗生物質感受性バターンが異なっており,抗生物質の選択に難渋した.生体消毒に主として用いているクロールヘキシジンはMCRSAに対して有効であった.今後MCRSA感染は増加すると考えられ,院内感染の防止及び有効な抗生物質の選択が必要である.
  • 長山 正義, 奥野 匡宥, 高井 敏昭, 池原 照幸, 西口 幸雄, 田中 俊司, 西森 武雄, 東郷 杏一, 梅山 馨
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2053-2058
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    肝障害患者の脂肪乳剤投与前後における肝機能検査成績,血清脂質,血清脂肪酸構成,経静脈的脂肪負荷試験成績および肝の組織所見から脂肪乳剤投与の肝への影響を検討し若干の知見を得たので報告する.対象は肝障害を伴う食道静脈瘤に対して待期的手術が可能であった症例のうち術前に脂肪負荷試験あるいは血清脂肪酸分析を施行した17例である.脂肪乳剤投与前後における肝機能検査成績の比較では有意差はみられず,血清の各脂質は,投与前では比較的低値を示し,投与後では上昇した.血清脂肪酸構成は投与前での異常パターンから投与後では健常人に近いパターンとなった.また,脂肪総投与量と投与前後の血清リノール酸の変動値との関係から血清リノール酸値を健常値にするための脂肪総投与量は7.0g/kgとなり,肝障害時の脂肪乳剤の投与量の目安になると思われた.以上,肝障害患者への脂肪乳剤の投与は肝機能への影響は少なく,血清脂質,脂肪酸構成を改善させ栄養学的にも有用と思われる.
  • 溝手 博義, 福田 義孝, 香月 直樹, 黒田 卿子, 掛川 暉夫
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2059-2065
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後36症例の高カロリー輸液における脂質と蛋白代謝をglucose+アミノ酸(G群), gulucose+脂肪乳剤+アミノ酸(G+Lip群),およびglucose, fructose, xylitolを4:2:1の割合に配合した輸液剤(GFX)+アミノ酸(GFX群)に分けて検討し,以下の結果を得た.
    術後のTriglyceride, Phosphlipidの回復はGFX群が良好で,必須脂肪酸はG+Lip群のみが術前値のままで推移した.また, ω-3系脂肪酸は3群とも減少した. C-Peptideは3群とも3病日までは増加し,その後はG+Lip群, GFX群が良好な減少を示し, N-balanceでは3群間に差異はなく, Rapid turnover proteinはG+Lip群, GFX群, G群の順に良好な回復を示した.
    以上,高カロリー輸液の糖質源としてGFXはglucoseのみと同等の効果があり,インスリン節約効果も認められた.また,脂質の併用により一層の蛋白節約効果が得られた.
  • 徐張 嘉源, 杉山 貢, 土屋 周二
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2066-2072
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃切除後患者285例のうち, MD法の測定で骨障害と判定された110例(38.5%)のうち82例に対し, 1α-(OH)D3の治療を行い,その治療効果を検索した.
    1α(OH)D3は骨障害の軽,重症例に各々1日2μgと3μgの量で, 3カ月から15カ月まで(平均9カ月)経口投与した.治療前に重症だったものの血清中Caは低値, ALPは高値を示したが,治療後Ca値は有意に上昇し(p<0.05), ALP値は有意に低下した(p<0.01).なお血清リン値には変化がなかった.
    治療後MD法による評点数からみた治療効果は約80%であり,一方,腰痛,骨関節痛などの症状の変化からみた有効率は約60%であった.またMD法の指標のうちMCI (骨皮質幅), GSmax (骨皮質の密度)とΣGS/D (骨密度)の3指標に反映された治療効果が特に著るしかった.
    骨障害の軽症例では, 1α(OH)D3の治療効果は速力にあらわれ,良好であったが,重症例では効果発現が遅いものがあり,早期発見,早期治療が大切と思われた.
  • 田中 千凱, 大下 裕夫, 伊藤 隆夫, 深田 代造
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2073-2078
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃切除後の103例に対してMicrodensitometry法による骨塩量の測定を行い,胃切除術後骨障害の発生頻度をさらに骨障害例の血清CaとPの積よりその病態を検討した.また骨障害例には活性ビタミンD製剤・1α-OH-D3を投与して,その有効性を確認した.
    胃切除後骨障害の発生率は全体では39.8%であり, 5年以上経過例では49.9%と高頻度であった.
    手術法別に骨障害の発生頻度をみると,胃全摘術51.6%,幽門側切除Billroth I法37.2%,幽門側切除Billroth II法23%の順であった.
    この胃切除後骨障害は血清CaとPの積が27 (mg/dl)2以下の症例が多く,骨軟化症を呈していた.
    骨障害例に活性ビタミンD製剤・1α-OH-D3を投与しMicrodensitometry法による骨の3指標と骨障害の程度,さらに症状の改善がみられ,本剤が有効であることが証明された.
  • 佐々木 政一, 嶋田 浩介
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2079-2085
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎の診断および手術適応判定により客観的な診断法として超音波検査(以下USと略)を導入し, USで腫大した虫垂像,あるいは腹腔内に腹水や膿汁の貯留像が得られる症例のみを手術適応と決め,一方,これらUS所見が得られない症例は,保存的療法を原則として治療にあたっている.
    今回,このような治療方針により, USで所見が得られず,保存的療法を施行した症例のその後の経過について,アンケートによる追跡調査を行った結果,最終的に手術を必要としたものは13.9%にすぎず,残りの86.1%は外科的処置を必要とせずに経過しているという成績を得た.このような成績から判断して, USで所見が得られず,カタル性虫垂炎が示唆されるような軽症例に対しては保存的療法も十分意味のあるものと思われ,その治療方針判定にはUSが有用であると考えている.
  • 神田 裕, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 加藤 純爾, 松下 昌裕, 小田 高司, 原川 伊寿, 久世 真悟, 真弓 俊彦, ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2086-2091
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    1970年から1987年2月までに経験した40歳未満の若年者大腸癌51例(4.8%)について検討し, 40~74歳の対照群と比較した.男女比,癌の主占居部位,腫瘍径,腸管環周に占める割合,組織学的分類,壁深達度,腹膜転移の頻度には差がなかったが,肝転移の頻度やリンパ節転移率は若年者群の方が対照群より高く,進行程度も進んだものが多かった.このことは若年者大腸癌はより生物学的悪性度の高いことを示唆していると考えられた.若年者群の切除率は96.4%で対照群と差がなかったが,治癒切除率は50%と低く,非治癒切除の原因はP因子, H因子によるものが多かった.手術成績は若年者群全体の累積5年生存率43.0%,治癒切除例の累積5年生存率86.7%で対照群と差がなかった.すなわち,治癒切除できれば若年者大腸癌であっても,良好な予後が期待できると考えられるので積極的な手術をこころがけるべきと思われた.
  • 山村 卓也, 近田 正英, 飯島 忠, 矢部 清寿, 佐藤 雅昭
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2092-2096
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    高齢者を75歳以上と定義し,昭和51年から昭和61年までに経験した高齢者大腸癌49例を対象として臨床病理学的検討を行った.その結果以下のような結論が得られた. 1) 右側結腸癌が左側結腸癌の2倍の発生頻度であった. 2) 進行度をみると, stage V症例の頻度が43%と高かった.一方,早期癌の発生頻度は低く, 2例しかみられなかった. 3) イレウス症例が13例27%と高頻度にみられ,このうち治癒切除症例は4例で, 9例は人工肛門造設か吻合であった. 4) 切除率は67%で低く,治癒切除率は49%と極めて低率であった. 5) 5年生存率は全症例では35%,治癒切除例では63%であった.
    高齢者大腸癌の治療成績は不良であったが,この原因としてイレウス症例が多いこと,高度に進行した症例が多く,早期癌の頻度が低いことにあると考えられた.
  • 久保 正二, 酒井 克治, 木下 博明, 広橋 一裕, 街 保敏, 沖本 俊明, 福嶋 康臣, 岩佐 隆太郎, 李 光春
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2097-2101
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    肝切除施行small liver cancer (細小肝癌)のうち術後再発をきたした7例(再発群)と術後3年以上無再発で経過した5例(無再発群)の臨床像および臨床病理学的所見を比較し,細小肝癌治療の問題点について検討した.肝切除施行例の臨床病期はstage IあるいはIIであり, stage III症例に対しては他の治療法を選択すべきである.再発群にはHBs抗原あるいは抗体陽性例が多かった.また再発群には単結節周囲増殖型や多結節癒合型あるいは被膜浸潤陽性例が多いことから,それらに対する処置が重要である.細小肝癌であっても肝部分切除術よりも亜区域切除術,区域切除術などの系統的肝区域切除術が望ましく,また部分切除術に終わった症例には他の治療法を追加すべきである.さらに術前併用療法として動脈塞栓術だけでなく,経皮経肝門脈枝塞栓術などによって抗腫瘍効果を増強させておくことが必要である.
  • 市場 康之, 田中 恒夫, 藤井 康史, 児玉 治, 松山 敏哉, 土肥 雪彦
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2102-2106
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌切除例24例(切除率55.8%)を対象として手術成績を検討し,胆嚢癌治療の問題点と治療方針について考察した.肉眼所見では壁深達度が高くなるにしたがって腫瘍の大きさと腫瘍周辺の浸潤傾向は増強する傾向を認めた.進展様式ではm, pm癌は転移,浸潤を認めなかったが, ss癌以上の症例においてリンパ節転移,肝内直接浸潤,胆管浸潤の順に陽性頻度が高く,とりわけs癌の進展は高度であった.手術術式と予後との検討では単純胆摘(R0)でもm癌の予後は良好であるがpm癌では再発例が認められたことより,術中の鑑別が困難な現状では拡大胆摘(R2)が必要である. ss癌の進展様式と進行度は様々であったが症例によっては長期生存もあり,進行度におおじて積極的に拡大手術(R2~3)を行うことにより予後の改善が期待できる. s癌は予後不良で術式間の差も認められず,拡大手術の適応には慎重を要すると考えられた.
  • 藤島 宣彦, 内田 雄三, 岡田 秀司, 松本 克彦, 友成 一英, 柴田 興彦, 葉玉 哲生, 調 亟治
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2107-2112
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    過去5年間における術後薬剤性肝障害8例につき検討し,下記の結果を得た.肝機能障害のパターンにより次の3型に分けられた.
    I型(5例):術後早期に総ビリルビン値のみの上昇を示す型.
    II型(2例):術後早期に総ビリルビン値及びトランスアミナーゼが上昇する型.
    III型(1例):術後早期にトランスアミナーゼのみの上昇を示す型.
    すべての症例の起因薬剤として, CEZとアミノ配糖体の併用が強く疑われた. (発生率2.6%)治療としては,起因薬剤を早期に中止すれば予後良好であるが,その発生要因に気付かず,遷延して使用を続行すれば,重篤な肝不全に移行する.
  • 馬場 紀行, 梶山 美明, 小池 道子, 山崎 善弥, 比田井 耕, 三條 健昌, 出月 康夫, 山尾 浩行, 石橋 康正
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2113-2116
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の未婚女性.右乳房腫瘤を主訴として来院.両側の乳頭は著明に陥没.右の乳房全体が発赤,腫脹,硬化していた.乳房X線撮影,超音波,穿刺吸引細胞診,病理組織検査により乳腺炎と診断された.炎症は急激に悪化し,大きな潰瘍を生じた.約3カ月にわたる保存的療法にもかかわらず,乳腺炎が遷延し,ケロイドを形成した.膿瘍瘻孔切除術を行ったが,著明な乳房変形をきたした.本症例の乳腺炎の原因は,陥没乳頭による乳管閉塞が深く関係し,感染の治療を困難にしたものと考えられる.乳腺炎の治療は抗生物質により,安易に行われることが多いが,本症例のように特異な経過をとり,治療に難渋することがあるので,注意を要する.
  • 竹内 邦夫, 都築 靖, 前田 光久, 遠藤 範之, 岩谷 周一, 長町 幸雄
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2117-2120
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    当科において過去21年間に経験した男子乳癌2例を報告する.症例1は69歳,左乳房腫瘤を主訴に来院. T2aN1bM0, Stage IIであり,定型的乳房切断術施行.術後4年5カ月目に脳卒中で死亡した.症例2は75歳,右乳房腫瘤,食後不快感を主訴に来院.右乳癌(T1N1bM0, Stage II)と胃癌(MAC, Borrmann III型)の同時性重複癌との診断にて定型的乳房切断術及び胃全摘膵脾合併切除術施行.乳癌摘出標本のEstrogen Receptor, Progesterone Receptor共に陽性で,複合内分泌化学療法施行.術後6カ月現在健在である.尚家系内に他に3名の乳癌罹患者がいる.
    男子乳癌は全乳癌の約1%を占めるにすぎない.本邦では1986年まで354例報告されており,その臨床像も明らかになってきた.また症例2は胃癌との重複癌ということでは本邦7例目であり,かつ遺伝性乳癌の範畴に入り興味深い症例と考えられる.
  • 浜田 弘巳, 澤谷 令児, 中野 秀貴, 近藤 征文, 内野 純一, 吉川 紀雄, 上村 友也, 辻 邦彦, 金井 賀子, 鈴木 貴久
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2121-2126
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    消化器癌の診断と治療の進歩により早期食道癌の症例は増加しているが,食道胃同時性早期重複癌の症例は少なくこれまで15例の報告をみるにすぎない.最近,本症の1例を経験したので報告した.症例は, 73歳女性.主訴は特になし.昭和61年8月上部消化管内視鏡で食道に異常を指摘され入院した.上部消化管造影及び内視鏡にて,中部食道の後壁に2.3×1.2cmの表在隆起性病変,胃前庭小彎にIIc様の陥凹性病変を認めた.生検で食道の隆起性病変は扁平上皮癌,さらにその肛門側食道粘膜の発赤部より上皮内癌が証明された.胃病変は中分化型腺癌であった.胸部食道胃全摘術を施行し,右側結腸で再建した.病理組織学的に食道,胃ともに深達度はsmで,リンパ節転移は認めなかった.また食道主病変の肛門側病変はep癌と診断された.術後1年3カ月の現在,再発の徴候なく健在である.自験例を含めた16例について症状,診断,治療,予後などについて検討を加えた.
  • 特に胃病変の手術適応について
    白波瀬 功, 大澤 二郎, 東出 俊一, 網 政明, 田中 誠, 伊東 正文, 篠田 正昭
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2127-2132
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.昭和62年1月末より空腹時心窩部痛を覚え, 2月2日当院を受診した.諸検査により, Im領域食道癌,および胃の広範な異型上皮巣と術前診断した.昭和62年4月16日,胸腹部食道切除,胃全摘を施行.再建は,有茎性回腸末端・右半結腸移植を胸腔内ルートにより行った.切除標本では,食道癌は境界明瞭な潰瘍型で,その口側に表在平坦型病変を伴っていた.胃は胃体下部小弯側にIIa集簇型病変,胃角部後壁および胃前庭部前壁にIIa様扁平隆起を認めた.組織学的には,食道癌は高分化型扁平上皮癌であった.胃病変は粘膜固有層を中心とした,異型上皮巣を伴った広範な高分化型管状腺癌で,部分的に粘膜下層に浸潤増殖していた.
    食道の重複癌臓器は胃が最も多く,特に同時性では早期胃癌が20%を占めるため,術前の検索を入念に行う必要があり,また本症例の様に術前診断がGroup IIIの場合,その手術適応が問題であり,若干の考察を行った.
  • 冬広 雄一, 李 在都, 中河 宏治, 西口 幸雄, 市川 久次郎, 馬場 満
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2133-2135
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    正常な消化吸収機能を有しているにもかかわらず経口摂取不可能な患者7例に対して経皮内視鏡的胃瘻造設術を施行した結果,本法は局所麻酔下に行われる簡便かつ短時間で施行しうる胃瘻造設術であり全身麻酔や開腹手術に耐え得ないpoor risk患者にとって有効な手段であるとともに, 1例の短期間の皮下膿瘍形成をみたのみで重篤な合併症を起こす事なく安全に施行できる手段であると考えられた.
  • 那須 一道, 田中 三津子, 中村 哲彦, 大野 博通, 轟 敬, 本間 静夫, 北原 哲夫
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2136-2139
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    過食が原因となって,ひきおこされた急性胃拡張がさらに胃軸捻転を誘発したために,胃壊死,胃穿孔を併発した興味ある症例を経験した.
    症例は33歳,女性,主婦,以前から要求不満が原因で過食する傾向にあったが,いつもは自ら嘔吐することが可能であった.が今回,嘔吐不可能となり腹痛,腹満を訴えて来院した.急性胃拡張の診断で入院,直ちに,胃管挿入,絶飲食,補液等の保存療法で経過観察中,発熱,頻脈,側胸部痛が出現したため胃穿孔を疑い,緊急手術となった.胃は大部分壊死におちいり,穹隆部に1×1cmの穿孔を認めた.胃全摘,空腸置換術を施行した.術後の経過は順調であった.
    きわめて興味ある症例なので,文献的考察をくわえて報告した
  • 八木 秀文, 生田目 公夫, 幕内 幹男, 岩井 裕子, 池田 忠明, 鈴木 快輔
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2140-2143
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.嘔気,食欲不振にて当院内科受診.精査にて肝硬変,食道静脈瘤及び早期胃癌と診断され,手術目的にて当科入院.内視鏡検査で食道静脈瘤はF2, CB, RC (+), Li-Lmで幽門前庭部後壁にIIa+IIc病変を認めた.術前検査にてChild Bであった.治療は胃癌手術を優先し手術を施行した.手術術式は幽門側普通切除術,小弯側食道血行遮断術を行った.後日内視鏡的硬化療法を予定したが,術後内視鏡検査にて食道静脈瘤は改善していた.
  • 秋田 信行, 平塚 正弘, 古河 洋, 亀山 雅男, 柴田 高, 佐々木 洋, 石川 治, 甲 利幸, 福田 一郎, 今岡 真義, 小山 博 ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2144-2149
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃癌肝転移例に対し原発巣および肝転移巣を同時に切除し, 5年以上生存した3例を経験した.症例1は70歳,男性〔H1 (sin) P0S1N1〕で6年生存中である.症例2は75歳,男性〔H1 (sin)P1S2N2〕で5年15日癌性腹膜炎で死亡した.症例3は64歳,男性〔H1 (sin)P0S3N1〕で9年9カ月生存中である. 3例の肝転移巣はいずれも左葉で,肝切除は小範囲の部分切除であった. 5年以上生存の文献報告11例を合わせて検討すると,肝左葉に限局する肝転移例においては,他に大きな進展巣がない限り,原発巣と肝転移巣を切除すれば長期生存が期待しうるものと考える.
  • 橋本 正也, 徳田 一泉, 竹中 温
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2150-2154
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    卵黄血管遺残による絞扼性イレウスを2例経験したので報告する.通常,胎生8週までに左の卵黄動脈は消失し,右の卵黄動脈は上腸間膜動脈となる.左の卵黄動脈がそのまま遺残したり,右の卵黄動脈の卵黄腸管を栄養している分枝が遺残した場合,索状物として卵黄血管遺残となり時として絞扼性イレウスの原因となる.今回経験した2例のうち1例はMeckel憩室合併例で,索状物が回腸を圧迫しイレウスを生じ,もう1例は索状物を軸とする回腸の捻転がイレウスの原因であった.いずれも腸間膜後面より出た索状物が,臍後面の腹壁に付着していたため,左の卵黄動脈の遺残と考えられた.
  • 矢田 克嗣, 池原 照幸, 梅山 馨, 竹林 淳, 浅田 健蔵, 沢井 康悦, 亥口 勝彦
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2155-2159
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    虫垂憩室症は欧米では多数報告されているが,本邦では比較的まれな疾患である.今回,われわれは3例の虫垂憩室症を経験したので若干の考察を加え報告する. 3例のうち2例は術前の注腸検査にて虫垂憩室と診断した. 1例はS状結腸癌の手術時に偶然発見されたものであった.本邦では,術前に虫垂憩室と診断される例はきわめて少なく,虫垂憩室穿孔で発見されることが多い.自験例のごとく3例中2例が術前に診断されたり,あるいは人間ドックの検査にて偶然に発見されたと言う報告もあることからも,注意深い検索にて診断率は向上するものと思われる.その手術適応については,本症は結腸憩室症に比して穿孔しやすいので,発見されれば虫垂切除術を行うべきであるという意見が多い.また虫垂憩室症と結腸憩室症が合併した場合には,結腸憩室の穿孔例は少ないが,虫垂憩室は穿孔しやすいことより,虫垂憩室症に対して虫垂切除術が必要だと思われた.
  • 岸本 秀雄, 大村 豊, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 小川 弘俊, 待木 雄一, 織田 誠, 加藤 雅通, 坂本 英至
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2160-2165
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    肝弯曲部に生じた結腸癌のために,十二指腸下行脚と結腸肝弯曲部の間に瘻孔を生じた62歳男性の1症例を報告する.瘻孔は上部消化管造影にて診断された.主症状は,全身倦怠感,腹部膨満感,嘔吐である.腸閉塞症状を呈したため,盲腸にて複孔式人工肛門を造設後,全身状態の改善を待って,根治手術(右半結腸切除,十二指腸前壁切除,膵部分切除,胃空腸吻合)を施行した.病理組織学的には粘液癌と診断した.患者は,根治術後6カ月を経過した現在,腹壁に再発するも生存中である.結腸癌による十二指腸結腸瘻の報告は稀である.本邦では,最近の28年間に23例の報告を認めるに過ぎない.予後に関しては,瘻孔を形成した症例が必ずしも不良とはいえなかったが,大腸の粘液癌は,局所再発,腹膜播種,肝転移などの再発が多く不良であり,十分な経過観察が必要と考えられる.
  • 安藤 久實, 原 春久
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2166-2169
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    64歳男性の硬変合併肝癌の手術中に分葉異常肝を発見した.分葉異常肝は方形葉に三角錐状の異常突起として認められ, 3本の脈管と僅かの肝実質で連続しており,硬度,色調,表面状態などは硬変を来している肝と同様であった.切除した分葉異常肝に対して脈管造影を行ったところ,肝静脈はほぼ直線的に延びる径1.5mmの比較的太い脈管から数本の細い枝が分岐しており,門脈は径1mmの脈管が左右に分岐した後,門脈造影時における区域枝のような形に枝別れしていた.また,肝静脈は門脈を被うような形になっていた.組織学的には乙型肝硬変の像を呈し,グリソン鞘には門脈,肝動脈および胆管が存在し,肝硬変に伴う小葉構造の変化に伴って肝静脈の偏位がみられた.形成異常肝の脈管構造についての報告はCullenの論文のみであるが,自験例はCullenの報告した脈管構築とは異なっていた.
  • 勝峰 康夫, 宮原 成樹, 岩佐 真, 世古口 務, 北村 紘彦, 稲守 重治
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2170-2176
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    4例の非寄生虫性肝嚢胞に対し超音波映像下にエタノール注入を行い,超音波検査(以下US), CTにて肝嚢胞を観察し全例に嚢胞の縮小を認めた.症例1は73歳の女性,肝硬変,肝嚢胞にて内科で経過をみていたが,上腹部を打撲して以来,右上腹部痛が出現. CTで肝右葉に約11×9cm大の嚢胞があり,嚢胞内出血と診断しUS下に嚢胞ドレナージ術を施行.止血を待って嚢胞内へのアルコール注入を行った.症例2は62歳の男性で,腹部膨満感にて来院. CTにて肝右葉に約24×18cm大の嚢胞を認め, US下に嚢胞ドレナージ術を行い,無色透明な嚢胞液を吸引しエタノールを注入した.症例3は89歳の女性で,大腸癌の術前検査中に肝右葉に13×10cm大の嚢胞を認め,嚢胞ドレナージを行いエタノールを注入した.症例4は54歳の女性で, USおよびCTで胆嚢結石と肝嚢胞2個(3×3cm, 4×4cm)を認めた.胆摘術施行時に,術中US下に嚢胞にエタノール注入を行った. 4例とも重篤な合併症はなく,軽い酒酔い感のみであった.
  • 水谷 純一, 高城 克義, 並川 和男, 庄嶋 健, 川村 亮機, 山口 哲也
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2177-2182
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    昭和61年5月から昭和62年4月までの1年間に5例の孤立性化膿性肝膿瘍を経験した.その内訳は男性4例,女性1例で,年齢は47歳から81歳(平均62歳),膿瘍の部位は右葉が4例,左葉外側区域が1例であった.その診断には超音波検査, CTが有用であった.治療として4例に超音波ガイド下穿刺ドレナージ+抗生剤の全身投与, 1例に抗生剤の全身投与のみを行い,全例治癒した.抗生剤の全身投与のみを行った1例では,膿瘍腔の消失まで約7カ月を要したが,超音波ガイド下穿刺ドレナージを行った4例では,そのドレナージチューブの平均留置期間は25.2日で,合併症は1例もなかった.従って,孤立性化膿性肝膿瘍の治療としては超音波ガイド下穿刺ドレナージ+抗生剤の全身投与が最も有用と考えられた.しかし,ドレナージチューブ抜去後に膿瘍の再燃をみた症例があり,ドレナージチューブ抜去後も注意深い経過観察が必要である.
  • 沼部 聖, 村上 雅彦, 清水 久和, 田辺 大明, 春日 井尚, 石井 健, 武士 昭彦, 長崎 二三夫, 飯島 恒司, 亀田 俊忠, 小 ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2183-2186
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は19歳・男性,サーフィン中に転倒しボードで上腹部を打撲し上腹部痛を主訴に来院した.来院時上腹部に擦過傷と強い圧痛,筋性防御,腹膜刺激症状があり,腹部超音波検査にて外傷性肝破裂を示唆し緊急開腹術を施行した.その結果,肝左葉に破裂した巨大な肝細胞癌(以下,肝癌)と右葉に娘結節を認め,肝左葉切除及び肝右葉楔状切除を施行した.今回,本邦で初めてと思われる若年者の外傷性肝癌破裂例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 宮川 秀一, 堀口 明彦, 中村 従之, 山川 真, 肌附 敏, 三浦 馥
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2187-2192
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    Portacaval shuntにより脳症を呈する猪瀬型肝性脳症の外科的治療は困難である. shuntを外科的に閉鎖することにより脳症の改善を認め,また肝癌を伴った稀な症例を経験したので猪瀬型肝性脳症合併肝癌の画像診断と外科的治療の適応について文献的考察を加えて報告する.
    症例は59歳女性,右季肋部痛を主訴に近医受診,血液生化学検査で肝機能障害, US, CTで肝硬変,肝癌,胆石症が疑われ当院紹介入院となった.血管造影, MRIでportacaval shuntの併存が認められた.その後,精神症状が認められるようになった. Giant portacaval shuntを併存した硬変合併肝癌の診断で, S8部分切除,胆摘, shunt遮断術を施行した.門脈圧は16.8cm H2Oから遮断後25.0cm H2Oであった.術後,脳症は改善され退院となった.
  • 板本 敏行, 江藤 高陽, 田中 恒夫, 児玉 治, 浅原 利正, 松山 敏哉, 土肥 雪彦
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2193-2197
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    食道離断術後に発生した門脈血栓症を3例経験した.うち術後早期に発症した2例は肝不全に移行し予後不良であった.
    門脈血栓症が発生した原因として,術中門脈圧測定時のカテーテル操作による血管内膜損傷が最も考えられたが疑問点も多かった.
    予防および対策として,術中の慎重な問脈内カテーテル操作が必要であり,術直後より少量のヘパリン投与も考慮されなければならない.また,門脈圧亢進症の術後には門脈血栓症が起こりうることを念頭におき,腹部超音波検査などを中心とした早期診断,および早期治療が必要である.
  • 上田 順彦, 永川 宅和, 太田 哲生, 津川 浩一郎, 竹田 利弥, 角谷 直孝, 木村 寛伸, 前田 基一, 萱原 正都, 上野 桂一, ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2198-2205
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.腹部超音波およびCT検査にて,胆嚢頸部に不整な隆起性病変と膵尾部に径約6.5cmの嚢胞を認めた.経皮経肝胆道造影では胆嚢頸部に約2cmの陰影欠損と,膵内胆管に30×12mmの透亮像を認めた.胆嚢胆汁および胆管腫瘍に対する擦過細胞診はともにclass Vであった.以上より胆嚢癌,胆管癌,膵嚢胞を伴う慢性膵炎の診断にて手術が施行された.術中超音波検査にて膵嚢胞内に一部腫瘍性病変が疑われたため, R2リンパ節郭清を伴う拡大胆摘術および膵全摘術が施行された.胆嚢にはstage Iで深達度がssの乳頭状腺癌,胆管にはstage Iで深達度がmの乳頭状腺癌が認められた.さらに膵臓には膵頭部から尾部にかけて主膵管および分枝内にほぼ限局する乳頭状腺癌が認められた.膵尾部の嚢胞は仮性嚢胞であった.各腫瘍間には連続性はなかった.なお,術後の標本造影にて膵管胆管合流異常症が証明された.
  • 南 宗人, 林 周作, 小林 建司, 安井 保, 稲垣 宏, 三島 晃, 竹内 寧, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵, 鶴賀 信 ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2206-2210
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    最近5年間に当院にて経験した閉鎖孔ヘルニア5例を報告する.
    患者はすべて女性で,平均年齢は79.6歳と高く,痩せて小柄な人が多かった.全例,腹痛・嘔気・嘔吐などのイレウス症状で発症した.術前診断がついたのは2例で,共に本疾患に特徴的とされるHowship-Romberg (H-R)徴候を認めた.発症から手術に至る期間は2日から25日までに及び,長期間経過を見ていた1例が死亡した.
    高齢者の原因不明のイレウス症例では常に本症を念頭に置く必要があり,詳細な問診によるH-R徴候の有無が診断上重要である.本症はイレウス症状が緩徐に進行することが多いため保存的に経過観察しがちであるが,徒らに手術時期を延ばすことは危険である.また術前診断が困難な場合が多く,腸管切除率も高いことから本症の術式の選択については開腹法が最も望ましいと思われる.
  • 廣本 雅之, 津嶋 秀史, 高橋 正人, 日下部 輝夫, 内西 兼一郎
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2211-2214
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    小児の骨膜下骨折は,若木骨折と隆起骨折に分けられるが,初診時のX線所見からの両者の鑑別は難しい.今回,当院の最近5年間における小児橈骨下端骨折76例を用い,仮骨の推移から両者を検討した.
    まず初診時のX線所見から, I型:骨の連続性がよく保たれ骨折部の変形が極めてわずかなもの, II型:連続性は保たれるが変形の軽度にみられるもの, III型:いわゆる完全骨折とした.さらに,受傷後4週間で,仮骨がほとんどないA群と,仮骨を認めたB群とに分けた.
    この結果,受傷時の変形の程度から若木骨折と隆起骨折を確診することは難しく,従って小児橈骨下端骨膜下骨折では,まず2週間の上腕以下のギプスシーネ固定後, X線撮影で仮骨の有無を確認し,若木骨折では2~4週間の上腕以下のギプス固定を,隆起骨折では1週間の前腕以下のギプスシーネ固定を追加すべきと考える.
  • 岩井 武尚, Shoji SATO, 村岡 幸彦, 桜沢 健一, 木下 晴之, 井上 芳徳, 遠藤 光夫, 吉田 哲雄, 鈴木 宗治
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2215-2220
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    上肢にみられた微小塞栓症について病因と治療方針を中心に検討した.対象は当教室における10年間に経験した5例で,その中枢側病変の内訳は線維筋性形成異常,鎖骨下動脈steal症候群,鎖骨下動脈アテローム潰瘍,胸郭出口症候群および反復外傷による鎖骨下動脈血栓症の各1例であった.いずれも急激な固有指動脈の閉塞症状を伴って発症しており,動脈撮影で固有指動脈に閉塞所見をみとめた.塞栓症を繰返した1例では前腕および手におよぶ広範な動脈閉塞をみとめた.治療はアスピリンなど抗血小板剤を第一選択として,明らかな中枢の閉塞性病変を伴うものや,塞栓症を繰返す例では外科手術が適当と考えられた.固有指動脈閉塞による症状は比較的早期に消失する例が多かったが,冷感が残存する例では胸部交感神経節切除術または神経節ブロックが有効と考えられた.
  • 尾碕 俊造, 根岸 七雄, 萩原 秀男, 石井 良幸, 岡本 育夫, 篠原 裕希, 村松 高, 一和多 雅雄, 鈴木 克行, 奥村 晴彦, ...
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2221-2227
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    現在人工血管の発達は著しくかなり完成されたものになりつつあるが,それでも合併症の発生は皆無とは言えない.その合併症のなかで人工血管自体が拡張し瘤化する非吻合部動脈瘤は極めて稀の様であるが,このような1例を最近経験した.症例は54歳男性で, 6年前に外傷性右腸骨動脈閉塞症例でダクロン人工血管による血行再建術を施行し,無事軽快し社会復帰していたが,今回右鼠径部に拍動性腫瘤を認めるようになり疼痛も伴うため,入院精査のうえ再度手術を行った.術中吻合部ではない部分で人工血管自体の瘤化の所見を認め,グラフトを摘出し同経路で再度血行再建術を施行した.摘出血管を検索するとガイドラインに一致した部分が瘤状に拡張しており,同部における鼠径靱帯との摩耗による慢性外力が瘤化した原因の1つと考えられた.この稀な合併症について,若干の文献的考察も加えて報告を行う.
  • 片岡 政人, 杉田 洋一, 矢口 豊久, 川崎 晋吾, 三浦 啓多, 小池 明, 中根 正雄
    1988 年 49 巻 11 号 p. 2228-2231
    発行日: 1988/11/25
    公開日: 2009/08/24
    ジャーナル フリー
    胃癌を合併したマクログロブリン血症の1例を報告した.
    患者は72歳男性.血清単クローン性IgMの増加(3,110mg/dl)と他の血清免疫グロブリンの低下がみられ,マクログロブリン血症と診断された.
    患者は, bestrabucilの投与をうけ,血清IgMは漸減したが, 1987年1月,心窩部痛が出現し,胃内視鏡検査にて幽門前庭部後壁にBorrmann I型の胃癌を認めた.生検組織診にて,管状腺癌と判明した. CTにて,肝に多発性のlow density areaを認めたため,手術は行われず, 1987年9月死亡した.胃癌を合併したマクログロブリン血症の症例に関し,若干の文献的考察を加え報告する.
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