日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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49 巻, 12 号
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  • 西 正晴, 印牧 俊樹, 今村 敦, 平松 義文, 日置 紘士郎, 山本 政勝
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2237-2241
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道切除術・胃全摘術ならびに切除不能食道癌症例を対象とし, needle catheter jejunostomy (NCJ)による空腸瘻を造設し,術後および長期の栄養管理に経腸栄養を施行した.
    昭和58年から62年までの5年間に148例にNCJを施行した.そのうち食道切除術58例のうち45例,胃全摘術83例のうち50例,切除不能食道癌症例7例の全例,計102例(69%)に2~1,100日以上の経腸栄養管理を行った. NCJは施行が簡単容易で安全であり,かつ重篤な合併症もみられず,患者に与える苦痛もほとんどないことから,長期にわたる経腸栄養には極めて有用な手段と思われた.
  • 今村 洋, 芳賀 駿介, 清水 忠夫, 飯田 富雄, 細川 俊彦, 蒔田 益次郎, 石川 信也, 平井 雅倫, 島川 武, 菊池 友允, 梶 ...
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2242-2247
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    362例の原発性乳癌を若年者群,中間群,高齢者群に分け,各群間で臨床病理学的事項を比較検討した.
    主訴は各群とも腫瘤触知が大部分であった.病悩期間は高齢者群で最も長いという傾向にあった.病理組織型については浸潤癌通常型では年齢層との間には一定の傾向は認められなかったが,非浸潤癌は中間群のみに認められた.腫瘍径については高齢者群でT3以上の大きいものが多かった.リンパ節転移については若年者ではT1でも転移率が高く, T2以上では高度転移例が多かった.高齢者群では他の群に比べ,転移率は低く,高度転移例は認められなかった.ホルモンレセプターに関しては中間群でその陽性率が最も高かった.予後は高齢者群が他に比べ,やや不良であった.
  • 田中 規文, 高塚 雄一, 河原 勉
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2248-2251
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当施設における昭和42年1月より56年12月までの15年間の乳癌治癒手術542例のうち再発例は148例である.このうちDisease free interval (DFI)が5年以上の晩期再発例は18例であり,これらをDFIが2年未満の早期再発例および2年以上5年未満の中期再発例と比較検討し,以下の結果を得た. (1) 晩期再発例の平均年齢は47.1歳でやや若年に傾いていた. (2) 臨床病期ではst. Iが23.5%で早期例が多かった. n因子でもn0が55.6%と転移度の少ないものが多かった. (3) ホルモン・レセプターを検索しえた5例はすべてER (+)であった. (4) 再発形成は軟部組織,骨再発が多かった. (5) 再発後生存期間は延長していた. (6) 初回治療として軟部組織再発の5例に外科的治療が,また全身療法では内分泌療法が中心であった.
    以上より晩期再発例は再発後も生存期間の延長が期待される.従って軟部組織再発には積極的な外科的治療が,また全身療法では内分泌療法を第1選択にすべきであると考える.
  • 中尾 丞, 澤井 照光, 石井 俊世, 栄田 和行, 野口 恭一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2252-2256
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    定型的乳房切断術前後に,リンパ球数,リンパ球サブセット, PHA幼若化率を測定して,手術侵襲の免疫担当細胞に及ぼす影響の一端をみた.
    術前,術後3日目, 7日目, 14日目に採血して,末梢リンパ球数およびリンパ球サブセット(OKT3, OKT4, OKT8, OKIal陽性リンパ球)をそのモノクローナル抗体とフローサイトメトリーにて測定した.またリンパ球幼若化率をEB蛍光法にて測定した.
    リンパ球数は3日目迄有意に減少し7日目には回復した.リンパ球各サブセットの比率は有意の変動を示さなかった. OKT3, OKT4, OKT8の絶対数は, 3日目の測定で有意の低下を示し7日目には回復した. PHA幼若化率も3日目の測定で有意の低下を示し, 7日目には回復した.
    術後の免疫能の低下は,侵襲に対してホメオスターシスを維持するための生理的な反応で,それ自体は生体に有利な作用であるが,一方担癌体にとっては転移・浸潤の進行につながるおそれもある.癌患者の術後に免疫能の状態を把握して治療にあたることは有益な事である.
  • 倉岡 節夫, 折田 博之, 島貫 隆夫, 深沢 学, 小林 稔, 鷲尾 正彦
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2257-2262
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    65歳以上で手術を施行した高齢者弁膜症の術後遠隔期左心機能を,安静時, dopamine (DOP)平均6γ負荷時の心臓カテーテル検査とシネアンギオグラフィーから検討した.対象は大別すればMS 5例, MR/AR 7例の計12例で,平均年齢70.0歳であり,術後平均観察期間は38.9カ月であった.全例に安静時manometryと左室造影を行い,その後rate-pressure product 150% (p<0.01)を目標にDOP負荷を加え,再度manometryと左室造影を施行し,術前の値と比較した.高齢者弁膜症術後はNYHA分類の改善とは異なり, EF, mean VCF, forward SWI, total SWI等左心ポンプ機能は改善しないが, MR/ARに限り左心容積(EDVI, ESVI, total SVI)は縮小し, ESP/ESVI, ESWS/ESVI, TVEFで見た収縮機能は回復した. DOP負荷により,心拍数の増加よりも駆出時間が短縮したために, total stroke flowは不変であるが, regurgitant flowが減少することによるforward stroke flowの増加が認められた.
  • follow-upからみた病型別成績
    内山 勝弘, 高田 忠敬, 安田 秀喜, 長谷川 浩, 土屋 繁之, 三須 雄二, 斉藤 康子, 四方 淳一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2263-2268
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤出血には,これまで保存的治療と,緊急手術が主に行われてきた.最近では侵襲の少ない内視鏡的硬化療法が広く行われているが,その長期的止血効果については疑問視する報告もある.本研究では,硬化剤静脈内注入法による内視鏡的硬化療法の成績を評価するために,自験67例の肝硬変合併食道静脈瘤出血に対する成績を, Child分類による病型別に止血効果,再出血の頻度,予後の面から保存的治療,緊急手術と対比しretrospectiveに検討した.肝機能が比較的良好なChild A群およびChild B群症例(40例)では,保存的治療,緊急手術,内視鏡的硬化療法で止血率,再出血の頻度,予後には差がなかった.肝機能の悪いChild C群(27例)では,内視鏡的硬化療法(10例)が止血率や予後の面で保存的治療(8例)や緊急手術(9例)より良好であった.しかし, Child C群では再出血の頻度が内視鏡的硬化療法でも60%と高く,初回止血後も注意深い観察が必要である.
  • 中本 光春, 裏川 公章, 長畑 洋司, 安積 靖友, 伊藤 あつ子, 武田 浩一郎, 佐埜 勇, 橋本 可成, 市原 隆夫, 守友 仁志, ...
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2269-2274
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に神戸大学第1外科へ入院した消化性潰瘍をシメチジンの出現時期を境として前期と後期に分け,特に難治性潰瘍の変遷につきretrospectiveに検討した.
    後期では入院数,手術数ともに半減したが手術率は70%前後で大差なかった.後期は前期に比べ出血における手術率はやや減少し,逆に難治例における手術率がわずかではあるが増加していた.
    難治性潰瘍手術例について,その背景因子および形態学的特徴を検討すると,年齢,有併存症率,胃液検査成績などには前,後期でかわりなかったが,前期に比べ後期では女性の占める割合が増し,有潰瘍歴の割合は87%から55%へと低下し,形態的には2cm以上の巨大潰瘍, 3cm以上の線状潰瘍, U1 IVの深い潰瘍の占める割合が増え.反対に多発潰瘍は57.5%から25%に減少していた.
  • 板本 敏行, 梶谷 隆, 岡本 有三, 片山 幸治, 漆原 貴, 河石 浩
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2275-2281
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に経験した胃十二指腸潰瘍穿孔症例は胃潰瘍14例,十二指腸潰瘍102例,吻合部潰瘍1例の計117例で,胃十二指腸潰瘍手術総数442例の26.4%を占め, Free air陽性率は80.4%であった.
    穿孔例のうち約半数に潰瘍歴があり,その治療歴をみると治療を中止していた症例が半数以上を占め,潰瘍維持療法の重要性が示唆された.
    死亡率は5.1%で予後不良例は,高齢者,発症から手術までの時間が24時間以上経過した症例,術前合併症を有する症例,後壁穿孔症例であった.
  • 杉本 勝彦, 前川 和彦, 今井 恒, 島津 盛一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2282-2289
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    北里大学病院救命救急センター及び外科で経験した,外傷性小腸穿孔74症例について臨床的に検討を行った.受傷機転は,半数以上が交通外傷であり,大部分が多発外傷であった.本損傷の診断は,特に,意識障害症例や,多発外傷症例で困難であった.補助診断法の中で腹部単純X線写真,腹部エコー, CTはその診断能力に限界があった.診断的腹腔洗浄法は,特にその腹部症状が明らかでない多発外傷症例で有用な検査法であった.死亡率は1.4%であったが,術後合併症の頻度は40%代と高率であった.問題となった術後の感染性合併症発症の最も重要な要因としては,受傷から手術開始までの治療時間の遷延であった.
  • 東郷 杏一, 奥野 匡宥, 池原 照幸, 西森 武雄, 大平 雅一, 加藤 保之, 長山 正義, 由井 三郎, 梅山 馨
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2290-2295
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1972年より1986年までの15年間に経験した異時性大腸多発癌症例は9例で,第一癌手術時年齢は38歳から81歳,平均60.0歳であり,男性2例,女性7例であった.発現間隔は1年2カ月から14年,平均7年1カ月であった.大腸癌家族歴を有していた症例は3例であり,腺腫合併例は5例であった.同時性大腸多発癌を有していた症例は,第一癌手術時1例,第二癌手術時3例であり,第二癌手術時には同時性多発癌の存在に留意し,精査が必要であると考えられた.占居部位は盲腸から直腸に及ぶまで広く分布しており,第二癌が第一癌より口側に存在していた症例は6例であり,肛門側に存在していた症例は3例であった.第一癌手術時は絶対治癒切除8例であり,相対治癒切除1例であったが,第二癌手術時は絶対治癒切除4例,相対治癒切除4例,絶対非治癒切除1例であった. follow-up期間の短い症例もあるが, 9例中7例は生存中である.
  • 久保 琢自, 出川 寿一, 広瀬 敏樹, 坂本 昌義, 大谷 五良
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2296-2303
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1974年より1987年の間に当科で切除した血行性肝転移例は48例であった.うち39例は結腸,直腸癌肝転移例であった.全症例の5年累積生存率は23.6%で,うち結腸,直腸癌肝転移例において原発巣,肝転移巣とも治癒切除がなされた場合の5年累積生存率は24.5%であった.肝転移の数(単発,多発),大きさ,原発巣切除から転移巣切除までの間隔(同時性,異時性切除),手術術式による生存率の差はみとめられなかった.剖検による肝切除後の再発形式をみると,残存肝のみに限局した再々発形式は極めて少数(9.5%)であり,肝切除術のみでは不完全であり精力的な集学的補助療法の併用が必要であることが示唆された.
  • 田伏 洋治, 玉置 幸子, 寺下 史朗, 上畑 清文, 柏木 秀夫, 村上 浩一, 中塚 久仁英, 田伏 克惇, 谷村 弘
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2304-2308
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    非機能性上皮小体嚢胞の治療法は,嚢胞の摘出術が一般的である.しかし本症の診断が容易になった現在,穿刺吸引のみにより経過をみることがどの程度有効かを検討するため,嚢胞液の穿刺吸引後の経過について,また,経過を見ていて手術に至った症例では手術操作にいかなる影響を生じるかを検討した. 1982年から1987年までに本症と診断された5例のうち3例はそれぞれ穿刺吸引後2年9カ月, 2年6カ月, 11カ月経て超音波検査にても嚢胞は縮小したままであり, 1例は1カ月後に甲状腺癌の合併のため,手術を施行したが,嚢胞に液の再貯溜を認めなかった.他の1例は穿刺吸引後2カ月ごとに液の再貯溜と症状が生じたため, 5回の穿刺吸引後手術を施行した.手術を施行した2例とも穿刺吸引が手術操作に問題を残す変化は生じていなかった.以上から,本症に対して穿刺吸引により経過をみること,言い換えれば穿刺吸引法は第1選択の治療法としてもよいと考えられる.
  • 小坂 昭夫, 安藤 浩, 住吉 健一, 安藤 二郎, 丸尾 啓敏, 壺内 泰二郎, 首藤 昭彦
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2309-2315
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌と他臓器癌合併の頻度は文献的には2.2%~5.0%と言われている.昭和53年1月より62年12月迄当科での原発乳癌は312例で術後第2癌の発生をみた症例は10例(3.2%)でありその内他臓器重複癌は6例であった. 6例中3例は舌癌,胆嚢癌,急性前骨髄球性白血病という稀な組合せの重複癌であった.症例1 (舌癌) 52歳女性, T2bN1bM0, stage II,定型的乳癌根治術を施行, scirrhous ca.,腋窩リンパ節転移はn1β, 8カ月後舌右縁に腫瘤を触知した.症例2 (胆嚢癌) 70歳女性, T2aN0M0, stage II,非定型的乳癌根治術を施行, solid tubular ca., n0, 1カ月後右季肋部痛,不快感を訴えた.症例3 (急性前骨髄球性白血病) 48歳女性, T3aN1bM0, stage IIIa,定型的乳癌根治術を施行, solid tubular ca., n1βであった. 1年9カ月後,上下肢紫斑,性器出血で来院. 3例とも術後化学および内分泌療法を行い,放射線療法を行っていない.予後は,症例1, 3は生存, 2は死亡している.
  • 薦田 烈, 岡田 節雄, 田中 聰, 小林 省二
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2316-2321
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳頭表皮に限局したPaget病と浸潤性乳管癌の併存した1症例を報告する.患者は52歳女性で, 7年前より左乳頭に徐々に拡大する糜爛を認め, 1カ月前より同側の乳房に腫瘤を認めている.腫瘤の摘出生検により乳癌(乳頭腺管癌)の診断を得たために, Pateyの手術を施行した.病理組織学的検査では, Paget病の病変は乳頭表皮に限局し,終末部の乳管には腫瘍浸潤を認めなかった.また,腋窩リンパ節に転移を認めなかった.さらに, Paget病の病変と乳頭から約3cm離れて存在する腫瘤との間を組織学的に検索した結果,両者の間には関連を認めなかった. Paget病は,乳頭乳輪を含めた乳腺の楔状切除に腋窩リンパ節郭清を加えた縮小手術で治癒可能と考えるが,病変が乳頭表皮に限局する場合においても,併存する乳腺腫瘍の存在を疑い,術前術後に精密な検索を行うことが必要と考える.
  • 箭本 浩, 浅越 辰男, 根本 明久, 花谷 勇治, 四方 淳一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2322-2326
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺腫瘤を主訴とした,乳腺原発悪性リンパ腫白血病化の1症例を報告する.症例は20歳,女性, 4カ月前より左乳腺腫瘤を自覚し,来院時4×6cm,硬度硬,境界明瞭,可動性良好,エコーでは境界一部不明瞭な充実性腫瘤で,内部エコー強,粗,不均一で,臨床的にはPhyllodes tumorが考えられた.腫瘤摘出術を施行したところ,病理組織学的には,乳管を取り囲んで大小不同のリンパ濾胞が形成され,小型リンパ球様腫瘍細胞の中に大型の切れ込み核細胞(cleaved cell)が認められ, mitosisも多かった.また末梢血および骨髄中にも異常リンパ球が認められ,末梢血の電顕像でB細胞系のリンパ腫細胞と同定され,乳腺原発悪性濾胞性リンパ腫,中細胞型, RappaportのM. L., por, lymphocytic, nodularと診断した.診断確定後11カ月で死亡した.乳腺悪性リンパ腫は乳癌の0.17%と報告され,自験でも1/229 (0.43%)ときわめてまれであった.
  • 増田 政久, 中川 康次, 古川 斉, 椎原 秀茂, 鶴田 好孝, 奥井 勝二
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2327-2329
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右房から右室にわたる異物カテーテル片を経皮的に摘出した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は71歳の女性で近医にて子宮体部癌の診断のもとに拡大子宮全摘術をうけ,術後中心静脈栄養下に管理された.症状の改善をみたので術後16日目なカテーテルを抜去する際,カテーテルを切断,遺残させたため,ただちに皮膚切開しカテーテル抜去を試みたが,内頚静脈内に落下し抜去不能となった.カテーテル片が移動したため直ちに右大腿静脈より経皮的にオリンパス社製Papillotomy knife (十二指腸乳頭切開用電気メス)を挿入し,カテーテル片の摘出に成功した.本器具は同症例緊急使用時には考慮されるべき有用なものと考えられた.
  • 山内 泰介, 大須賀 洋, 北條 禎久, 木村 茂, 田林 晄一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2330-2335
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は9歳男児, Pillsbury B型大動脈弓離断症の患者である.満期正常分娩にて出生したが,体重増加不良を認めた.運動時の失神発作を主訴とした.両側の大腿動脈は触知されず,両側の総頚動脈に血管雑音を聴取した.心血管造影では,左総頚動脈の末梢側で離断した. pulmonary ductus descending aorta trunkを伴わない大動脈弓離断症であった.
    Pillsbury B型大動脈弓離断症の診断のもとに手術を施行した.離断部は索状物で置換されていた.索状物を切離後,左総頚動脈と下行大動脈との側端吻合を行った.術後,上行大動脈と下行大動脈との圧較差は消失し,失神発作も認められなくなった.
  • 木下 寿彦, 清永 勉, 麻生 重明, 平田 義博, 明石 英俊, 浦口 憲一郎, 山名 一有, 木下 寿文, 小須賀 健一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2336-2340
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性で,耕運機の下敷きになり腹部打撲し,腹痛・腰痛を訴える.超音波検査で腹部大動脈内にintimal flapを認め,外傷性解離性腹部大動脈瘤の診断をうける. Digital subtraction angiogram (DSA)にて腎動脈分枝下部にintimal tearを認め,解離は右外腸骨動脈に及んでいた.手術ではintimal tearは腹部大動脈の後壁を除くほぼ全周にみられ, Y字型ダクロン人工血管による置換を行い,下腸間膜動脈も再建した.術後経過は良好で,術後血管造影ではグラフト及び下腸間膜動脈の血流は良好であった.
  • 近藤 宗廉, 桑田 雪雄, 中村 隆二, 大森 浩明
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2341-2345
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は他の消化管の癌腫に比べ稀な疾患であり,消化管病変の診断技術が進歩した現在でも診断が困難で,イレウスあるいは急性腹症などの診断で開腹手術を受けてはじめて診断される場合が多い.最近,原発小腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は65歳の女性で急性虫垂炎の手術の既往があり,普段より便秘気味で時々腹痛があったが排便により軽快していたという.来院2日前より排便なく下腹部痛・腹部膨満が著明となったために受診.入院にて保存的治療を行い一時改善するも再度イレウス症状が出現したため手術に踏み切った.回盲弁から10cm口側の回腸に腫瘍による全周性の狭窄を認め,摘出標本の病理組織学検索では高分化腺癌であった.
  • 吉井 克己, 野上 厚, 野方 尚, 原田 昌弘, 尾原 徹司
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2346-2350
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性回腸癌は稀な疾患であるが,腸重積を呈した原発性回腸癌を経験したので,最近10年間に報告された,自験例を含む本邦報告例18例を検討し,文献的考察を加え報告する.
    症例は73歳女性で腹部膨満感を主訴として来院,超音波にて右下腹部に腫瘤と腸管の二重構造を認め,注腸造影にて回盲部腫瘍を疑われたが,小腸造影で回盲部腸重積と診断された.手術所見は回盲弁より8cm口側に4.5×3.5cm大のBorr 1型様腫瘍があり,これを先進部として上行結腸内に腸重積を起こしていた.組織学的には,高分化腺癌でリンパ節転移は認めなかった.
    回腸癌は50~70代の男性に多く,稀で,特異な症状に欠けるため診断も困難である.今回の調査では腸閉塞症として診断される例が多くみられた.好発部位は回盲弁より30cmまでに18例中15例認め,大きさは長径4cm以上の腫瘤型が多く認められた.回腸癌のほとんどが高分化腺癌であった.
  • 安藤 久實, 平岩 克正, 梅田 隆司, 瀬尾 孝彦, 岸田 喜彦, 飯尾 賢治, Yukio ISHIGURO, 伊藤 喬廣
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2351-2356
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸の絨毛腺腫は,絨毛状の肉眼形態を呈する比較的稀な腫瘍であり,直腸とS字状結腸に多く見られる.われわれは稀な発生部位とされる盲腸の絨毛腺腫を経験し,また興味ある超音波像を得ることができたので報告する.
    症例は78歳男性で,腹痛を伴わない粘液を混じた下痢を主訴とした.腹部超音波所見は,盲腸から上行結腸にかけて肝とほぼ同一のエコーレベルを示す著明な全周性の壁肥厚像と,腸管内腔の液体貯留像を特徴とし,水腎症の超音波像に類似していた.また,探触子で肥厚した腸管を圧迫すると容易に変形した.切除された腸管内には多量の粘液が存在し,盲腸から上行結腸にかけてビロード状で平皿状に隆起した腫瘍が認められた.組織学的には絨毛腺腫の像を示し,一部に粘膜内に限局する高分化型腺癌が認められた.
  • 島貫 公義, 千葉 惇, 板橋 邦宏, 冨樫 一智, 浅野 宏, 浜田 修三
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2357-2362
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性で,左側腹部腫瘤を主訴として,上部消化管造影,大腸造影, CT,血管造影にて,術前に腸無回転症に伴った盲腸癌と診断し右半結腸切除を施行した.成人腸無回転症に伴った盲腸癌症例は稀であり, 1956年以降の成人(16歳以上)腸無回転症の検索し得た本邦報告例は51例で,その4例に大腸癌の併存を認めるのみであった.成人腸無回転症の51例を検討するに,平均年齢は39.4歳,男女比は2.3:1で男性に多い傾向を示した. 7例に消化性潰瘍病変が併存していた.開腹時に診断されたものは21例,術前,非手術例での診断は25例,術後X-P検査にて診断されたものが4例であった.腸無回転症は他疾患の検査および手術時に偶然診断されることが多く,併存病変の診断治療を修飾することがあり,成人においても腸回転異常症を考慮する必要があると思われた.
  • 松田 真佐男, 伊藤 正光, 石榑 秀勝, 近松 英二, 加納 英行, 加藤 信夫
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2363-2370
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸管動静脈奇形は慢性消化管出血の原因として臨床上重要な疾患であるが,その病態についてはなお不明な点も多い.本稿では自験例3例を報告するとともに,本邦報告例58例を集計し,本症につき検討を加えた.
    年齢は1歳2カ月の1例を除き,すべて成人例で,平均56.7歳(1~82歳)であった.男性45%,女性55%で明らかな性差はない.本症の臨床像はくり返す消化管出血であるが,血管造影検査以外では確診がつかないため,診断がおくれる例が多い.発生部位は胃以下の全消化管および肝,膵にもみられるが,小腸(43%),結腸(34%)に頻発し, 60歳未満では小腸, 60歳以上では右側結腸に多い.治療は切除術が主体であるが,最近はレーザー・電気焼灼,硬化・塞栓療法も報告されている.予後は一般に良好であるが,広範囲多発例で出血のコントロールが不可能な例では予後不良となる.
  • 長谷部 行健, 本田 亮一, 鷲沢 尚宏, 朴 英進, 船橋 公彦, 鹿野 純男, 笹本 修一, 小林 一雄, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, ...
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2371-2375
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    65歳の女性で便秘を主訴に来院し,注腸X線透視で直腸に円形の石灰化陰影を含んだ楕円形の腫瘤陰影を認め,大腸内視鏡検査では表面に毛髪を有する直腸腔内を満たす腫瘤を認めた.経仙骨的に腫瘤を摘出したところ,大きさ8×6×4cmで,表面に毛髪を有し,割面では骨組織,嚢胞やメラニン色素沈着がみられた.病理組織学的に成熟型奇形腫と診断した.直腸原発奇形腫は非常に稀で,現在までに40例が集計されているにすぎない.経仙骨的直腸切開術にて摘除したのは本症例が初めてと思われるので,文献的考察を加えて報告した.
  • 廣本 雅之, 津嶋 秀史, 高橋 正人, 日下部 輝夫
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2376-2381
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸S状部に原発した腺扁平上皮癌を経験したので,本邦報告例とともに若干の臨床病理学的検討を加え報告する.
    症例は83歳,男性.下痢を主訴に近医受診するもしだいに食欲低下,体重減少も現れたため当院入院.下部消化管造影,内視鏡により直腸S状部の結腸癌の診断にてS状結腸直腸切除,人工肛門造設術を行った.摘出腫瘍は8.0×10.0cmのほぼ全周性のBorrmann 1型腫瘤で,病理組織学的には高分化型腺癌と中分化型扁平上皮癌の混在した腺扁平上皮癌であった.
    大腸の腺扁平上皮癌は極めてまれであり,本例を含め現在まで本邦で28例の報告を数えるのみである.検討するに若年者傾向,女性,上行結腸, Borrmann 2型, ssまたはs(+)の症例に多くみられ,扁平上皮癌中心型が多い.組織発生機転については定説はないが,腺癌細胞の扁平上皮化生説を支持したいと考える.
  • 岩佐 真, 世古口 務, 和田 潔人, 宮原 成樹, 勝峰 康夫, 北村 紘彦, 稲守 重治, 野田 雅俊, 坂井 徳七, 石橋 支良
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2382-2387
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肉芽性肝膿瘍は臨床的には発熱や疼痛などの炎症所見の色彩が有りながら,肝臓には充実性の腫瘤を認め,画像診断上はSOLとして描出され,これを切開しても膿汁の排出はなく,細菌性肝膿瘍の治癒過程の中で肉芽性変化が強くおこったものとされている稀な疾患である.最近われわれは魚骨穿通が原因と考えられる,肉芽性肝膿瘍の1例を経験したので本例を報告するとともに,併せて本邦報告例13例について臨床的検討を加えた.
    症例は60歳男性で腹部膨満感,腹痛,発熱を訴え入院.白血球増多, CRP陽性及び血沈の亢進を呈し,腹部US, CTにて肝に不整なSOLが認められ肉芽性肝膿瘍が疑われたが,肝腫瘍も否定しきれず開腹.腫瘤の剥離中に長さ約3cmの魚骨が採取された.外側区域切除を施行.摘出された肝腫瘤は5×4cm大,割面黄褐色で明らかな膿瘍はなく組織学的に肉芽腫と診断された.
  • 勝木 茂美, 佐伯 俊雄, 加藤 博, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫, 阿部 要一, 山田 雅之, 加藤 清
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2388-2393
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左乳癌の拡大乳房根治術施行後14年目に胆嚢及び下部総胆管に見られた胆道系重複癌を経験したので報告する.症例は黄疸と心窩部痛を主訴として来院,閉塞性黄疸の診断にて外科入院となり,精査にて下部胆管癌及び胆嚢癌を疑い手術となった79歳の女性である.組織学的に胆嚢に管状腺癌を,下部胆管に低分化腺癌を認め,両者の間に連続性はなく,リンパ節転移陰性で胆道系重複癌と診断した.また,乳癌はAC領域の腫瘤でリンパ節転移陰性の硬癌であった.従って,異時性であるが乳癌・胆嚢癌・胆管癌の3重複癌である.胆道系重複癌の報告は比較的まれであるが,他臓器癌との合併症例は胃癌との合併例が1例報告されているのみである.本症例のような乳癌との3重複癌は極めてまれであると思われたのでこれを報告し,加えて乳癌術後の他臓器癌について若干の文献的考察を行った.
  • 宮川 秀一, 三浦 馥, 川瀬 恭平, 中村 従之, 山川 真, 堀口 裕爾, 北野 徹
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2394-2399
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆管癌の外科治療上,切除断端の癌遺残が大きな問題となる.とくに,肝門部胆管癌や肝門に浸潤をみる症例では,通常の胆管切除で対応しうるか,あるいは左右どちらの肝切除を行うか,さらに局状葉切除を必要とするか否かなどの決定が必要となる.今回,われわれは,中部胆管の肝門部浸潤に対し術前経皮的胆道鏡にて浸潤範囲を診断し,尾状葉全切除を含む拡大肝右葉切除兼膵頭十二指腸切除で治癒切除を行いえた症例を経験したので報告する.患者は52歳,女性右季肋部痛と黄疸にて入院.経皮的胆管ドレナージ後,造影で中部胆管に約1.5cmにおよぶ壁の不整と硬化,さらに肝門部胆管に軽度狭窄をみた.経皮的胆道鏡下の直視下生検では,中下部胆管から左肝管基始部,右肝管第一次分岐部まで腫瘍細胞を検出した.左肝管は正常粘膜であったので左外側区域を温存する術式を選択しえた.
    胆管癌治療上意義ある症例と考え報告した.
  • 杉野 公則, 天野 富薫, 松本 昭彦, 岩崎 博幸, 佐藤 秀之, 片山 清文, 森 直作, 熊本 吉一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2400-2405
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵の乳頭嚢胞状腫瘍は稀な疾患であり,最近認識も高まりつつあるが,その分類など不明な点が多い.今回われわれは,本症の2例を経験したので報告する.
    症例1は42歳女性で健診にて腹部異常石灰化陰影を指摘され,症例2は15歳女性で左季肋部痛にて受診した. 2症例とも術後の病理診断で本症と診断された.
    症例1では, PAP法にて, α1-antitrypsin, insulin, glucagonに対し陽性を示した.本症の組織発生起源がmultipotentialな分化能力をもつstem cell由来でありうることをうかがわせた.
  • 長谷川 浩, 高田 忠敬, 安田 秀喜, 内山 勝弘, 土屋 繁之, 三須 雄二, 斉藤 康子, 四方 淳一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2406-2411
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎にて膵体尾部・脾切除後5年を経過した後,残存膵頭部に膵石を伴う慢性膵炎に起因する疼痛を主訴に来院し,全胃幽門輪温存膵全摘術を行った62歳男性の1例について報告する.自験例では残存膵を全摘し再建は十二指腸十二指腸端々吻合によって行った.術後1日19単位のインスリンを投与しているが,術後8週で体重は術前値に回復した.糖負荷試験にては術前と著変はみられなかった.術後のD-キシローステストでは2.8g/5hと脂肪吸収は軽度の障害をみた.なお,術後の胃液検査ではBAO, MAO共に値の増加をみたが胃内視鏡ではびらんや潰瘍所見をみなかった.膵全摘における全胃幽門輪温存は食事摂取量が充分にとれて満足感があること,かつ術後の体重増加がみられることなどに意義がある.これまで膵全摘においては胃切除を伴うものが通常であったが,最近欧米では全胃ならびに全十二指腸を温存した術式も報告されている.本術式はわが国における全胃温存による膵全摘の第一例と考え報告した.
  • 成田 洋, 鶴賀 信篤, 小野 雅之, 桜井 敏, 神谷 保廣, 由良 二郎
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2412-2416
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    交通外傷受傷後13日目に発症した遅発性脾破裂の1例を経験したので報告するとともに,本邦報告31例を集計し文献的考察を加えた.症例は18歳,男性で,オートバイ運転中転倒し全身を強打した.入院時左第11, 12肋骨骨折等を認めたが,腹部に異常所見はなかった.しかし受傷13日目に突然ショック状態に陥り,急性腹症症状を呈するにいたった.腹部CTで脾内,および脾臓周囲のlow density areaの存在と,腹腔内の液体貯溜像を認めたため遅発性脾破裂を疑い開腹術を施行した.術中,脾下極,脾門部側での脾被膜の断裂と,同部からの出血を認めた.修復術による脾温存は困難と判断し,脾摘除術を行ったが術後経過は良好であった.
  • 谷 眞至, 山上 裕機, 岩橋 誠, 角田 卓也, 田伏 克惇, 谷村 弘
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2417-2421
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    重量500gの巨大な原発性後腹膜非ホジキンリンパ腫に対して,腫瘍摘出・左半結腸合併切除・左腎摘出術を施行したが,後腹膜に4×4cmの転移を2個認めたため,術後に免疫・化学療法を行なって免疫学的パラメーターの変動を測定した.
    その結果, NK活性はインターフェロンα療法により一旦上昇したが, CHOP-Bleo療法後はNK活性が著しく低下したことから,何らかの免疫賦活剤の併用が必要であることが明らかとなった.
  • 末 浩司, 池田 恵一, 中川原 章, 福重 隆彦, 名越 真, 奥園 真一
    1988 年 49 巻 12 号 p. 2422-2426
    発行日: 1988/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Stage III, IVの尾仙部卵黄嚢癌2例をPVB療法で寛解させることができた.症例1は1歳6カ月女児で,肺,肝転移を伴い,症例2は1歳9カ月女児で両側そけい部リンパ節転移を伴っていたが同療法3ないし4クール終了後AFPの著明な低下を見,腫瘍切除が可能となった.寛解後の維持療法としては,前者はCDDPにADMを,後者はCDDPにVBL, ADMを使用し,現在disease-freeの状態である.維持療法としてVAC, pulse VAC療法を使用した報告も見られるが, PVB療法のなかでもCDDPの有効性が大であること,われわれの進行神経芽腫治療プロトコールでは腎機能,聴力に注意しながら総量1,000mg/m2程度まで使用していることから維持療法としてもCDDPを使用した.
    尾仙部卵黄嚢癌でのPVB療法の有効性が確かめられたが,同時にCDDPを中心とした強力な維持療法を行うことでより有効な治療法になるものと思われる.
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