日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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49 巻, 2 号
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  • 馬場 恒男
    1988 年 49 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 石原 恒夫
    1988 年 49 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 隅越 幸男
    1988 年 49 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 癌原発組織と癌転移組織の細胞蛋白質の分析
    貞広 荘太郎, 高見 博, 山高 謙一, 奥田 康一, 高橋 哲也, 小平 進, 阿部 令彦, 津村 整
    1988 年 49 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    手術・生検を施行したにもかかわらず癌原発臓器が不明であった症例を検討した.手術時に癌原発臓器が不明であった症例,手術時と剖検時とで癌原発臓器の診断が異なっていた症例は,剖検された癌患者932例中20例(2.1%)であった.剖検により癌原発臓器と診断されたのは,肺が6例,胃が5例,肝が3例,卵巣が2例,前立腺が2例であった.肺癌ではいずれも原発巣が転移巣と診断されていたのに対し,胃癌ではいずれも転移巣が原発巣と診断されていた.
    一方,正常大腸,正常肝,大腸癌,肝細胞癌,大腸癌の肝転移組織の細胞蛋白質を2次元電気泳動し分析したところ,癌組織の細胞蛋白質は癌が発生した原発臓器の特徴の一部を有し,転移した組織においてもその特徴の一部を保存している可能性が示唆された.したがって,細胞蛋白質の分析が癌原発臓器診断の補助手段となり得る可能性が示された.
  • 清水 哲, 松川 博史, 佐々木 秀弘, 片山 清文, 後藤 久, 松本 昭彦, 有田 峯夫, 小泉 博義, 堀口 一弘, 城島 標雄, 松 ...
    1988 年 49 巻 2 号 p. 231-237
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌症例,健常例におけるCA15-3を測定し,臨床的な有用性,限界について検討した.健常例のデータより, cut off値は20ng/mlとした.しかしcut off値についてはいろいろな報告があり,多数例にもとづいて再検討する必要があると思われた.乳癌症例のデータからは,原発乳癌例における陽性率はあまり高くなく(5.9%),術前の補助診断法としての有用性は低いと思われた.しかし乳癌術後再発例では高い陽性率(81.6%)を示し,術後のモニタリングには有用と思われた.一方,再発の早期発見という点になると,まだsensitivityが低いように思われた.
    CA15-3は他の腫瘍マーカーとの相関は低く, CA15-3を含めた複数のマーカーとの組み合わせによって,診断率の向上が期待された.
  • 小川 智子, 小川 健治, 矢川 裕一, 稲葉 俊三, 石川 信也, 吉沢 修一, 成高 義彦, 菊池 友允, 芳賀 駿介, 梶原 哲郎
    1988 年 49 巻 2 号 p. 238-246
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Su-PS皮膚反応がOK-432の治療効果の特異的なパラメーターになりうるかどうかについて,組織学的および臨床的な面から検討し,つぎの結果をえた.
    1) Su-PS皮膚反応部位には, helper/inducer T cellを中心としたT cell, Macrophageなどの浸潤があり, OK-432皮内投与部位とほぼ同一の組織反応が認められる.
    2) Su-PS皮膚反応の推移は, OK-432の治療効果や胃癌の予後を推測するパラメーターになりうる.
    3) Su-PS皮膚反応が術後10mm以上増強した胃癌の予後は良好である.
    4) 術後6カ月, 12カ月のSu-PS皮膚反応を術前値と比較してみることは,胃癌の予後を知るうえで重要である.
    以上より, Su-PS皮膚反応は, OK-432の治療効果を特異的に反映するパラメーターであり,さらには, OK-432投与期間中の胃癌の予後を推測する指標にもなりうる.
  • 細胞核DNA ploidy patternとの関連について
    曽和 融生, 鄭 容錫, 西村 昌憲, 芳野 裕明, 前川 仁, 加藤 保之, 梅山 馨
    1988 年 49 巻 2 号 p. 247-253
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    3種類(Span-1, CA19-9, SLEX)の単クローン抗体を用い,切除胃癌組織内糖鎖抗原発現程度と細胞核DNA ploidy patternとの関連性について検討した.切除胃癌68例の免疫組織染色はABC法で行った.染色程度からの各種糖鎖抗原陽性率はSpan-139.7%, CA19-9 22.1%, SLEX 41.2%で,これら陽性例ではn, ly, v因子陽性頻度が高く,また深達度別検討では深達度が進むにつれて糖鎖抗原発現が有意に高かった.しかし組織型との関係ではSLEX陽性例に分化型の頻度が, CA19-9 Span-1陽性例では未分化型の頻度がやや高いものの有意の差はみられなかった.またこれら3種類の糖鎖抗原がすべて陽性例では, n, ly, v因子陽性率がとくに高かった(p<0.05~0.005).以上の結果から,糖鎖抗原発現程度が胃癌の生物学的活性を示すものと考えられた.
    一方,糖鎖抗原の組織内局在様式別の検討ではcytoplasmic type, apical typeが多く,とくにSpan-1陽性頻度が75.0%, 60.0%と高かった.これら糖鎖抗原発現陽性細胞のDNA ploidy patternを落射型蛍光顕微鏡により検討した結果,陽性細胞は陰性細胞に比べ, II, III型が多く, non-diploid, aneuploid patternを示した.
    以上の成績から,糖鎖抗原発現に関与するDNA ploidyの変化が示唆され,胃癌細胞の糖鎖抗原発現および核DNA ploidy patternの解析は胃癌の悪性度を反映する一指標となる事実が推測された.
  • 梅田 隆司, 長屋 昌宏, 津田 峰行, 飯尾 賢治, 伊藤 喬廣, 石黒 士雄, 安藤 久実
    1988 年 49 巻 2 号 p. 254-259
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Mucoviscidosisを伴わないmeconium ileusはmeconium diseaseと呼ばれ,新生児期に小腸末端の通過障害を来す.このため全結腸無神経節症との鑑別が困難とされている.今回, meconium disease 6例,全結腸無神経節症13例の経験よりこの両疾患の鑑別点とmeconium diseaseの治療法について検討した.
    臨床所見では両者を鑑別することはできなかった.腹部立位単純X線写真では,小腸の拡張像は両者にみられたが,全結腸無神経節症でほぽ全例に認められた鏡面像がmeconium diseaseでは全例認められなかった.
    注腸透視では,全結腸無神経節症で31%に認められたmicrocolonがmeconium diseaseでは全例に認められた.
    以上の二点が鑑別に有用となろう.
    meconium diseaseの治療にはガストログラフィン®による注腸ないし,経口投与を第一選択とすべきと考える.
  • 大和田 進, 竹吉 泉, 水口 滋之, 中村 正治, 岩崎 茂, 宮本 幸男, 泉雄 勝, 横森 忠紘, 谷口 棟一郎, 家里 裕
    1988 年 49 巻 2 号 p. 260-265
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外科外来において大腸癌を早期発見するため,大腸ファイバースコープ(CF)・注腸X線同日併用検査およびCF先行検査を215例に施行しその有用性について検討した.癌21例,ポリープ41例57病変が診断された.この併用検査の利点として, 1.前処置が1回で被検者の負担が軽減される. 2.有愁訴者にCF検査を先行することで早期診断,早期治療が可能となり,場合によっては同日注腸検査を省略できる. 3.病変の好発する左側結腸,特にS状結腸,直腸のdouble checkができ,大腸癌の早期発見の手段としては効率がよい.欠点として, CFを先行することでair lock,粘液分泌等により注腸二重造影所見が多少不良となりX線診断能の低下が考えられた.
  • 大村 健二, 金平 永二, 佐々木 正寿, 疋島 寛, 橋爪 泰夫, 林 外史英, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭, 瀬川 安雄, 林 ...
    1988 年 49 巻 2 号 p. 266-271
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝動脈塞栓術(TAE)施行例を, TAE施行前にあらかじめ胆摘を行った群(A群, 8例)と,胆摘を行わなかった群(B群, 50例)に分け, TAE後の生化学検査値の変動および不快な臨床症状と胆嚢梗塞の関係を検討した. TAE後のGOT, GPT, LDHの変動は両群間に差を認めなかった. B群においてTAE後γ-GTP, Al-pはそれぞれ16例(32%), 9例(18%)で上昇したが, A群では1例も上昇しなかった.また,両群ともTAE後高頻度に発熱を認めたが,腹痛はB群で38例(76%)と高率であるのに対し, A群ではわずかに1例に認めたのみであった. B群の8例に対しTAE後に胆摘を行ったが,そのうち6例に胆嚢梗塞の所見をみた. TAE後の血中の胆道系酵素上昇には, TAEによる胆嚢梗塞が関与していることが推測された. TAE後の不快な臨床症状を予防するために,初回手術時に胆嚢摘出術を施行することが有用と思われた.
  • 青木 洋三, 植阪 和修, 嶋田 浩介, 坂口 雅宏, 上田 耕臣, 佐々木 政一, 川嶋 寛昭
    1988 年 49 巻 2 号 p. 272-277
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    先天性胆管拡張症,良性胆管狭窄に対し,病的胆管を切除し有茎空腸間置胆管十二指腸吻合術(間置法)で再建した際の利点を,術後の消化管への胆汁排出能の面から胆道・消化管両シンチグラフィーの同時定量解析法を用い胆管空腸Roux-Y吻合術(Roux-Y法)と対比し検討した.間置法6例では経口食摂取後胆汁は速やかに上部小腸内に流出し,消化管内における食物の進行と胆汁の進行のずれ(postcibal asynchronism)はRoux-Y法7例のそれに比べはるかに軽度であった.しかし間置法のこの特長を生かすためには間置空腸を15~20cmにすべきで, 40cmとった1例では食後胆汁が間置空腸内にうっ滞し, postcibal asynchronismの程度はRoux-Y法のそれに近づいた.したがって間置法で再建する際は,間置空腸の長さの決定には慎重でなければならない.
  • 前川 仁, 加藤 保之, 本吉 宏行, 曽和 融生, 紙野 建人, 梅山 馨, 須加野 誠治
    1988 年 49 巻 2 号 p. 278-284
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    前頸部の嚢胞性疾患のなかで,上皮小体嚢胞はまれな疾患で,他の疾患との鑑別は困難である.近年では超音波診断および穿刺吸引診断で,術前に診断しえたものは徐々に増加し自験例を含めて本邦では12例,欧米文献で22例であった.
    上皮小体嚢胞の成因としては, 1)胎生期遺残組織, 2)微小嚢胞の融合または貯溜による増大, 3) PTHの貯溜嚢胞, 4)腺腫または過形成の嚢胞化,などが考えられているが,これらの複雑な諸因子が関与していると思われる.画像診断としては,嚢胞の所見を有するのみで特異的所見はないが,甲状腺の圧排所見やその占拠部位により,疑うことはできる.術前診断の根拠としては,穿刺吸引液の性状が水様透明である点が特徴的であり,内容液のPTH値が高値を示すものが多い.治療法としては,単純摘出のみ行い,甲状腺の合併切除は不要とされている.
  • 藤岡 正志, 小林 正幸, 高木 俊二, 野村 直孝, 村田 戒, 西郡 康行, 石原 省, 小高 明雄, 糸山 進次
    1988 年 49 巻 2 号 p. 285-290
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性で,思春期から徐々に腫大していた左乳腺腫瘍が外傷後急激に増大したため来院した.陳旧性線維腺腫に出血・感染を合併したものと診断し,単純乳房切断術を行ったが,迅速診断で扁平上皮癌と判明し,大小胸筋切除・リンパ節郭清を追加した.術後放射線療法,化学療法を行ったが, 10カ月で両側肺転移が証明され, 15カ月で死亡した.本例は巨大な線維腺腫の内外に扁平上皮癌があり,何れが原発巣であるか判断し難かった.線維腺腫内に発生する扁平上皮癌は極めて稀であること,線維腺腫の構造が保たれ,線維腺腫内には癌の中心が無いこと,線維腺腫内の癌のvolumeが小さいことなどから線維腺腫内のものは転移巣と考えた.
    乳腺の扁平上皮癌の定義・発生・予後につき未だ検討の余地があることを,文献的に考察した.
  • 木下 寿彦, 浦口 憲一郎, 山名 一有, 平野 顕夫, 明石 英俊, 平田 義博, 木下 寿文, 小須賀 健一
    1988 年 49 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的稀とされている慢性外傷性解離性大動脈瘤(DeBakey IIIb型)を一時的な腋窩大腿動脈バイパス下に完全修復し得た.
    症例は47歳,男性. 5年前より高血圧を指摘され, 2年6カ月前に交通事故で前胸部打撲し治療をうけた. 6カ月前一過性の意識消失で近医入院し胸部X線写真にて縦隔陰影拡大,左第1弓突出,気管右方偏位を認める.
    digital subtraction angiogram (DSA)てに左鎖骨下動脈分岐直下にentryを有し, re-entryは腹腔動脈分岐部にあるDeBakey IIIb型の解離性大動脈瘤であった.手術は右腋窩右大腿動脈の一時的バイパス下にentry部は26mm woven dacron graftにて置換し, re-entry部はpatch graftingを行った.術後合併症もなく経過良好でDSAを含めた諸検査にても満足すべき結果が得られた.
  • 碓氷 章彦, 村瀬 允也, 田中 稔, 竹内 栄二, 阿部 稔雄
    1988 年 49 巻 2 号 p. 295-298
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群のため両側内頸動脈閉塞をきたし,人工血管による上行大動脈両側内頸動脈バイパス術を施行,術後21年目に上行大動脈に吻合部動脈瘤を合併した症例を経験した.瘤は胸骨裏面を侵食し,脳血流は側副血行のみにより保たれているため,開胸時の大出血と術中の脳障害が懸念された.術中出血に対してはあらかじめ補助循環を行い対処し,脳血流温存のためには胸骨正中切開で開胸し,瘤切除のみを行った.これらの方法により脳障害を伴うことなく救命できたので,その手術経験を報告した.
  • 岩佐 隆太郎, 酒井 克治, 木下 博明, 広橋 一裕, 街 保敏, 久保 正二, 福嶋 康臣, 藤尾 長久, 李 光春, 田中 宏
    1988 年 49 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性.肝硬変で加療中に右前上亜区域の肝細胞癌と診断されたため,肝動脈塞栓術および経皮経肝門脈枝塞栓術の後,右前上亜区域切除術を施行した.術後に切除断端からの胆汁漏が認められたが,これは約3カ月のドレナージにより治癒したと思われた.しかし退院後約6カ月経過した頃より,黄色の喀痰を伴った咳嗽が出現した.検査の結果,右横隔膜下膿瘍と交通する気管支瘻の存在が証明された.この右横隔膜下気管支瘻に対して右横隔膜下ドレナージを施したところ, 2カ月後に軽快退院した.本症は肝切除後合併症のなかでは稀であるが,その予防と治療について若干の考察を加えた.
  • 江上 格, 渡辺 章, 清水 康仁, 吉行 俊郎, 松田 健, 内藤 善哉, 高井 淳, 山下 精彦, 恩田 昌彦, 桜井 恵, 大塚 敏文 ...
    1988 年 49 巻 2 号 p. 304-309
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小児の腐蝕性食道狭窄に対し食道全摘・再建を行った1例を経験した.報告例は非常に少なく文献的考察を加え報告した.
    1歳8カ月男児,カセイソーダを誤飲しショック状態となり当院救命救急センターに収容され,全身状態が改善した後当科へ転じた.受傷1カ月後食道全長にわたる高度狭窄と潰瘍形成が見られたため手術を行った.食道全摘し右半結腸移植による食道再建を順蠕動,胸骨後で行った.頸部の食道結腸吻合は2カ月後に2期的に行ったが,術後3週に狭窄症状が出現したため, 2カ月半後に狭窄部解除の手術を行った.狭窄部縦切開しstent tubeとしてT-tubeを使用し横に縫合閉鎖した. T-tube抜去し術後1カ月より拡張術を計4回行い,受傷後約9カ月で軽快退院した.退院後,狭窄症状が出現したが拡張術により容易に軽快した.長期にわたる経過観察が必要だがほぼ満足すべき結果を得ることが出来た.
  • 尾関 豊, 鬼束 惇義, 林 勝知, 広瀬 光男, 下川 邦泰
    1988 年 49 巻 2 号 p. 310-315
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌手術1年後に閉塞性黄疸にて発症した乳頭部癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告した.
    症例は51歳女.早期胃癌(P0H0n1 (+) m, stage II)で胃全摘術施行. 1年後に肝機能異常,黄疸をきたした. 1年半後に近医にて内瘻術を受け,この時,乳頭部の腫瘍を指摘された.腹部超音波検査, CTでは胆道系に病変を描出できず,胆道造影では総胆管末端部に圧排像を認めた.膵頭十二指腸切除術を施行.十二指腸乳頭は正常大で,中心に潰瘍形成を認めた.胆管と膵管は同時開口型で,乳頭部膵管は全周性に白色硬化し, 10×10×4mmのドーナツ状の腫瘍形成を認めた.総胆管末端はこの腫瘍により圧排されていた.組織型は中分化型管状腺癌, d2, panc0であった.
    胃癌術後で十二指腸乳頭が内視できない場合,乳頭部癌の診断は困難である.諸検査にて診断が確定しない場合でも,手術不能の所見がない限り,再手術を考慮すべきである.
  • 中嶋 啓雄, 平川 一典, 井岡 二朗, 石橋 治昭, 田部 志郎
    1988 年 49 巻 2 号 p. 316-320
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管重複症は,幼小児期に発生頻度が高く成人では稀な疾患である.今回われわれは発熱と共に短期間のうちに急激に増大した成人の巨大な嚢胞状の回腸重複症を経験した.症例は50歳の男性で主訴は腹部膨満感,腹部CTにおいて上腹部から下腹部にまで及ぶ巨大な嚢胞が認められたが,消化管造影,血管造影,内容液細胞診にても診断がつけられなかった.手術は嚢胞摘出術を行った.大きさは(240×210×180mm)で結腸間膜,漿膜と強く癒着していたが,消化管との交通は無かった.嚢胞の内面は,回腸粘膜上皮,粘膜筋板,平滑筋層の構造を有しており,病理学的に消化管重複症と診断された.本症例の如く急速に巨大化した成人症例の報告は本邦では珍しく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岩下 清志, 川村 一彦
    1988 年 49 巻 2 号 p. 321-324
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢胞は比較的まれな疾患で,特に腸重積症を合併した症例は少ない.最近我々は,上行結腸に重積し,イレウス症状を呈した虫垂粘液嚢胞の1例を経験したので報告する.
    症例は69歳女性で,腹痛,嘔吐を主訴に来院,イレウスの診断にて緊急手術を施行した.虫垂粘液嚢胞が先進部となって回腸が上行結腸から横行結腸近くまで重積していた.
    虫垂粘液嚢胞に腸重積症を合併した症例は少なく,本邦では現在までに10数例の報告をみるにすぎないので,若干の文献的考察を加えて検討した.
  • 太田 大作, 尾崎 彰, 古瀬 光
    1988 年 49 巻 2 号 p. 325-330
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸脂肪腫は従来,稀な疾患であったが,最近,その症例数は増加してきた.しかし,その診断率は低く,過大な手術を受ける症例が多い.今回2例の大腸脂肪腫を経験し,診断面において若干の知見を得たので報告する.
    症例1は53歳男性.注腸造影にて横行結腸の重積症と診断.超音波検査にてhyper echoicな円形の腫瘤を認めた.腫瘤を含め結腸部分切除を施行.術後,病理学的に脂肪腫と判明した.
    症例2は44歳男性.注腸造影にて下行結腸に鶏卵大の腫瘍を認めた.腫瘍のCT値は脂肪組織に一致した.超音波検査ではhyper echoicな円形の腫瘤像で症例1に類似した.以上より脂肪腫と診断し,腫瘍のみの摘出を行った.術後の病理学的診断も脂肪腫であった.
    大腸脂肪腫は良性疾患であり腫瘍のみの摘出が理想的である.そのためには診断率の向上が望まれる.新しい診断法の確立,症例の集積が必要であるとともに,臨床医が本疾患の存在を認識することが大切である.
  • 渡邊 剛, 大平 政人, 田中 信行, 岩 喬
    1988 年 49 巻 2 号 p. 331-336
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性.下腹部の疼痛を主訴として入院したが大動脈造影にて腹部大動脈瘤と,大腸内視鏡にてS状結腸にBorrmann II型の悪性腫瘍を認めた.本患者は高齢でありまた心肺腎疾患を合併していたため,二期的手術侵襲はより危険と考えられた.このため持続硬膜外麻酔下に腹部大動脈瘤を人口血管にて置換し次いでS状結腸の悪性腫瘍を切除吻合し左結腸曲に一時的人口肛門を造設する一期的手術を行った.術後経過は良好で術後60日目に軽快退院した.従来腹部大動脈瘤に対する人口血管置換術と消化管手術を一期的に行う手術術式は術後の感染を考慮し一般には禁忌とされてきた.しかし心肺腎機能低下を合併する高齢者では,二期的な手術侵襲は危険でありこのため症例によっては同時手術の方が患者にはより有利となる.今日まで腹部大動脈瘤と下部消化管悪性腫瘍に対する同時手術の成功例の報告は少ないので若干の考察を加えここに報告する.
  • 渋谷 均, 古家 隆司, 西田 陸夫, 藤沢 泰憲, 秦 史壮, 中島 康雄
    1988 年 49 巻 2 号 p. 337-343
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸の孤立性潰瘍症候群は隆起性病変や潰瘍性病変など多彩な病像を呈する疾患であるが本邦では認識がうすく報告例が少ない.
    今回当科で過去3年間に7例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    年齢は若年層にやや多く,男女比は5:2であった.病変は前壁から前側壁にみられることが多く,また病変は全例肛門縁より3cm~8cm以内に存在した.本症は特有の臨床症状を呈することが知られている.全例に排便時“いきみ”の習慣があり,また便がすっきりでないいわゆる残便感を訴える症例が多く,また血便,粘液の排出,便通異常を訴える症例が多くみられた.
    組織学的には過形成性腺管,表面のびらん,ポリープの間質にfibromuscular obliterationが見られることが特徴的である.治療としては内科的治療が主であるが,症状の強い病変に対しては外科的治療も必要になる.
  • 梛野 正人, 近藤 成彦, 金井 道夫, 森 光平, 二村 雄次, 向山 博夫, 神谷 順一
    1988 年 49 巻 2 号 p. 344-349
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の女性で,血尿の精査にて入院中,腹部超音波検査にて肝腫瘤が発見された.腹部血管造影では,腫瘍血管の著明な増生,支配動脈の拡張,不整な腫瘍濃染像を認めた. Angio-CTでは,腫瘍は造影剤注入直後から中心部以外は,ほぼ均一に濃染し,その濃染が経時的に中心部にも移行してゆく像を認めた. Angio-CTからは,肝血管腫も強く示唆されたが,血管造影,特に腫瘍血管の著明な増生像より,肝細胞癌と診断し手術を施行した.腫瘍は右尾状葉に存在し,尾状葉全切除を伴う左葉内側区および右葉前上区域切除という非定型的術式にて切除しえた.病理組織学的には,腫瘍は肝海綿状血管腫で,悪性像は認められなかったが,腫瘍の被膜外に動脈枝を多数認め,血管造影の所見をよく反映していると考えられた.血管造影上,肝細胞癌との鑑別が困難な肝血管腫が存在する点に留意すべきである.
  • 木内 宗三郎, 宮司 勝, 小池 正造, 原 孝志, 長峰 光宏, 西田 一己
    1988 年 49 巻 2 号 p. 350-356
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腺扁平上皮癌は同一癌病巣に腺癌部分と扁平上皮癌部分とが相接し,混在する癌腫であり,胆管及び乳頭部では比較的稀な疾患である.過去20年間に当科で手術をした総胆管癌35例,乳頭部癌10例のうち, 3例の腺扁平上皮癌を経験した.症例(1)は41歳女性で,乳頭部原発の腺扁平上皮癌,手術施行後,局所再発にて9カ月後に死亡した.症例(2)は50歳女性で,下部胆管原発の腺扁平上皮癌,手術後3年1カ月にて骨転移を認め,死亡した.症例(3)は71歳男性で中部胆管原発の腺扁平上皮癌,術後4カ月で肝転移にて死亡した.病理組織学的に3例とも分化型腺癌との混在型であったこと,移行像を認めたことなどにより,組織発生については腺癌細胞の扁平上皮化生が考えられた.また,いずれも膵頭十二指腸切除術を施行し得たにも拘らず,同部位の胆道癌に比べ,予後は不良であった.扁平上皮成分は癌腫の進行に関与し,予後を不良にする因子の1つであると思われる.
  • 倉立 真志, 余喜多 史郎, 古味 信彦, 宮本 英之, 藤野 良三, 山下 英世
    1988 年 49 巻 2 号 p. 357-364
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    石灰化真性膵嚢胞はまれな疾患である.今回本症の1例を経験したので報告するとともに,石灰化膵嚢胞の本邦報告35例を集計した.症例は60歳,男性.主訴は腹痛,上腹部腫瘤.腹部外傷の既往はない.腹部所見では上腹部に10cm×6cmの卵型で弾性硬,表面はほぼ平滑な腫瘤を触知した.膵機能検査でPFDテストは正常, 75g-OGTTで糖尿病(パラボリック型)を示した.腹部エックス線写真で上腹部に石灰化を伴った7.5cm×7cmの円形の腫瘤陰影を認め,腹部単純CTスキャン像,腹部超音波写真で壁に均一な石灰化を有する嚢胞を認めた.手術は嚢胞摘出術を施行した.病理組織学的診断は真性膵嚢胞であった.
    石灰化膵嚢胞の本邦例は35例であり,自験例のように真性のものは5例にすぎない.石灰化膵嚢胞は真性,仮性を問わず,嚢胞摘出術もしくは嚢胞を含めた膵部分切除術が施行されており,この術式による予後は良好であることから,適切な術式と考えられる.
  • 松波 英寿, 鬼束 惇義, 松本 興治, 林 勝知, 小池 茂文, 富田 良照
    1988 年 49 巻 2 号 p. 365-371
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女子.主訴は腹部腫瘤で来院した.消化管造影,血管造影, CT検査等により,右水腎症を伴った下腹部全体を占める婦人科的原発性腫瘍が疑われ,開腹手術を施行した.腫瘍は表面平滑で周囲との癒着はなく28×24×13cm大,重量6,020gの子宮体部より発生した平滑筋腫であった.術後経過は良好で第9病日退院したが,第11病日右大腿部の痛みを感じ第21病日再入院した.術後深部静脈血栓症の診断で血栓除去術を施行し,第13病日軽快退院した.
    本邦における巨大子宮筋腫の報告例は近年まれとなり,最近10年間では6例をみるのみである.自験例は子宮筋腫の合併症として水腎症を伴い,術後合併症として深部静脈血栓症を併発した.深部静脈血栓症は予防しうる合併症であるので,予防対策の必要性を指摘した.
  • 伊藤 正祐, 蓮見 昭武, 中野 孚, 中西 英和, 小西 高義, 橋村 宏一, 林 収, 鈴木 治郎, 丸田 守人, 青木 春夫, 渡辺 ...
    1988 年 49 巻 2 号 p. 372-377
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虫垂へ穿破して大量下血をきたした右総腸骨動脈動脈瘤の1経験例につき報告する.
    症例は69歳男性,下血ショックのため緊急手術を施行したところ,右総腸骨動脈に発生した鶏卵大の粥状硬化性動脈瘤が虫垂体部に強固に癒着・一塊化した所見を認め,虫垂切除および動脈瘤部分摘除・縫縮術を施行し,一旦は救命し得た.しかし術後6カ月に残存動脈瘤部の再発によるS状結腸穿破・再度の下血ショックをきたし,瘤全摘除および両大腿動脈間bypass作成の緊急再手術を施行したが,術後3日目に腎不全のため死亡した.
    本邦における腹部動脈瘤-下部消化管瘻の過去の報告例は10例に過ぎず,特に総腸骨動脈動脈瘤-虫垂瘻の症例は,本例が初めての報告である.大量消化管出血によって急激に発症することの多い本症に対しては,諸検査に時を費やすよりも,緊急に瘤摘除・血行再建術を施行することが,唯一の救命手段であると考えられた.
  • 江里 健輔, 竹中 博昭, 藤岡 顕太郎, 秋本 文一, 中村 丘, 西山 利弘
    1988 年 49 巻 2 号 p. 378-382
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    多発性末梢動脈瘤は稀な疾患である.症例は70歳,男性で,右下腿部痛を主訴として来院した.両側大腿部および右膝窩部に拍動性腫瘤を触知した.両側大腿動脈瘤には瘤切除・Cooley double velour人工血管で血行再建を行った.膝窩動脈瘤には二次的塞栓形成を予防するため,自家大伏在静脈で膝窩動脈をバイパスし,瘤直上,直下で膝窩動脈を結紮した.術後経過良好で術後4年4カ月の現在血行再建路は開存している.
    末梢動脈瘤の血行再建は比較的容易である.しかし,動脈瘤で血栓塞栓を合併したものや破裂したものの治療成績は不良である.とくに,膝窩動脈瘤破裂症例の多くは血行再建されても,肢切断となることが多い.したがって,末梢動脈瘤の手術適応は瘤の大きさのみで決定されない.診断され次第,瘤切除あるいは瘤空置・血行再建を行うべきである.
  • 佐々木 襄, 川口 正晴, 武藤 寛, 渡橋 和政, 森田 悟, 渡 正伸, 神田 未視, 米原 修治
    1988 年 49 巻 2 号 p. 383-388
    発行日: 1988/02/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    表皮様嚢胞(粉瘤)は日常ありふれた良性皮膚腫瘤であり,悪性化することは極めて稀であるが,著者らは長年放置した表皮様嚢胞から発生したと考えられる扁平上皮癌症例を経験した.症例は78歳,男性.約60年来右殿部に皮膚腫瘤があって次第に増大し,初診2カ月前から難治性瘻孔を形成した.初診後2週目に入院した時には,瘻孔から肉芽様腫瘍組織が膨出し,同側鼡径部リンパ節の腫脹を認めた.腫瘍切除とリンパ節郭清を施行し病理組織学的検査の結果,表皮様嚢胞から発生したと考えられる扁平上皮癌であり,リンパ節転移も認められた.所謂粉瘤の悪性化は極めて稀ではあるがあり得るので,放置しないで切除することが望ましい.文献上本邦では25例余が報告されている.
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