日本臨床外科医学会雑誌
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49 巻, 3 号
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  • 志村 秀彦
    1988 年 49 巻 3 号 p. 391-397
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 高木 國夫
    1988 年 49 巻 3 号 p. 398-408
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 鬼塚 卓弥
    1988 年 49 巻 3 号 p. 409-414
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 西 正晴, 神谷 智雄, 印牧 俊樹, 山中 英治, 日置 紘士郎, 山本 政勝
    1988 年 49 巻 3 号 p. 415-421
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌患者355例を対象とし,入院時内臓蛋白指標と胃癌進行度,占居部位,腫瘍面積,進行度規定因子ならびに予後についての検討を行った.筋蛋白,内臓蛋白指標の低下症例は胃癌の進行とともに増加し,著明なprotein-calorie malnutrition状態を呈するほとんどはStage IV症例であった.また内臓蛋白指標におよぼす影響が大きかった因子としては腫瘍局在部位,腫瘍面積,漿膜浸潤度,進行度などであったが,腹膜転移,リンパ節転移の程度による差異は認められなかった.胃癌症例でのrapid turnover proteinのうちプレアルブミン,レチノール結合蛋白濃度は,アルブミン値と同様に摂食障害ならびに癌の進行による要因を反映した変動を呈した. Stage IV症例で非切除ならびに非治癒切除にいたった症例での予後推定にはトランスフェリン濃度が最も有効であった.
  • 篠崎 登, 内田 賢, 蛯名 大介, 細谷 哲男, 武山 浩, 南雲 吉則, 桜井 健司
    1988 年 49 巻 3 号 p. 422-425
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期乳癌を腫瘤の大きさ2cm以下と設定し, 2cm以下の乳癌に有効な診断方法を検討した.
    1983年1月から1986年9月までに当科で診断および手術した2cm以下の初治療乳癌55例を対象とした.乳癌診断法は,触診,乳房X線と乳腺超音波検査の画像診断,穿刺吸引細胞診の4法で,各診断法を正診率〔TP/Total: True Positive〕と感受性〔TP/(TP+FN): False Negative〕で比較検討した.
    これら4診断法の中で穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration biopsy cytology: ABC)が,早期乳癌の診断法として最も優れていた. ABCは,腫瘍の大きさにはほとんど関係なく安定した診断率を示していた.組織学的にみると, ABCでは細胞採取不良が硬癌に多く,診断不能が乳頭腺管癌に多くみられた.外科生検率は, ABCが診断法に加えてから,年々減少傾向を示しているが,乳頭腺管癌の外科生検率が最も高率であった.
  • 本島 悌司, 鍋谷 欣市, 小野沢 君夫
    1988 年 49 巻 3 号 p. 426-430
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸部中部食道癌の治癒切除適応決定のために,腹部リンパ節転移の超音波検査を行った.とくに,再発死亡の53例について検討した.
    腹部リンパ節の組織学的転移の有無で再発死亡時期が異なり,転移陽性例では有意に早かった.これは,転移陽性例のなかでも,とくに術前腹部超音波検査で腹部リンパ節転移の疑われた例の再発死亡時期が疑われなかった例よりも有意に早いためであった.
    このことより,現時点における腹部超音波検査による腹部リンパ節転移の検索は治癒切除適応決定のための有用な検査法の1つであると思われた.
  • 東 昇, 鎌野 俊紀, 榊原 宣, 松本 俊彦, 川島 利信, 松本 道男
    1988 年 49 巻 3 号 p. 431-437
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    多発早期胃癌12例29病巣について,臨床病理学的特徴を検討した.
    頻度は17.9%,年齢は平均65.2歳,すべて男性であった.
    主・副病巣とも肉眼型・組織型を同じくする傾向にあった.
    単発早期胃癌との比較では,肉眼型で隆起型,組織型で分化型腺癌の割合が高く,占居部位はいわゆるC領域・後壁側が多かった.
    副病巣は小さく,主病巣より噴門側に位置するものが多いため,取り残しの危険性が高いと考えられた.
    病巣とF-lineの位置関係を調べ,すべての病巣がF-lineより肛門側に存在していることを確認した.
  • 山田 紀彦, 北村 脩, 井村 寿男
    1988 年 49 巻 3 号 p. 438-444
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌の手術根治性を高める目的で, 34例の胃癌患者に対して術中照射療法を行った.
    方法:腸管等周囲臓器を照射野外に待避せしめたのち, 30~35Gy (18MeV)の電子線を腫瘍床に照射した.術中照射群の5年累積生存率はstage I: 100%, stage II: 72.7%, stage III: 68.8%, stage IV: 20%であり,一方手術単独群のそれはstage I: 95.2%, stage II: 68.4%, stage III: 48.8%, stage IV: 8.0%であり, stage IIIで術中照射群はかなり高い5生率を示した.また,術中照射後372日後に死亡した症例の剖検で被照射リンパ節はfibrotic changeとcancer regressionがみられ,術中照射の効果が確認された.術中照射を行った症例ではリンパ球数やT-cell, Tγ-cellなどに照射による有意の変化はみられず, 2例の吻合部縫合不全以外重大な合併症はみられなかった.
    以上の結果,術中照射療法は限局した進行胃癌の治療成績向上に有効である可能性が示唆された.
  • 大隅 雅夫, 飯島 俊秀, 児島 高寛, 小板 橋宏, 正田 裕一, 長町 幸雄
    1988 年 49 巻 3 号 p. 445-448
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌は早期発見が難しく,発見されたときには切除不能である事が多い.血管造影では超選択的造影を行い,これに胆道造影を使用し,切除不能因子の一つである肝門部癌の壁外浸潤度を検討した.
    対象は1981年から1986年までの6年間に群馬大学第1外科に於て経験した10例で, 6例は切除不能であった.これら切除不能症例は,血管造影に於て全例に右肝動脈の異常を認め,胆管周囲の他の中動脈にも高率に異常を認めた.門脈にも切除不能症例では高率に異常所見を認めた.胆管周囲動脈叢の異常所見は,超選択的造影と胆道造影の併用でより詳細にその所見を判読できた.早期胆道癌の発見手段としてもこれらの異常所見と中動脈の所見とを併わせて検討すれば,有用な検査となる可能性がある.
  • 松尾 雅司, 田中 龍彦, 芦田 卓也, 小野山 裕彦, 藤原 英利, 山本 正博, 奥村 修一, 大柳 治正, 斉藤 洋一
    1988 年 49 巻 3 号 p. 449-457
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近当科で手術した胆嚢隆起性病変35例について種々の臨床的検討を加えた.隆起病変の内訳は,胆嚢癌10例,腺筋症8例,過形成性ポリープ5例,炎症性ポリープ2例,腺腫1例であった.症状としては胆石の合併がなくても,胆石様症状を有する場合が多く,過形成性ポリープとコレステロールポリープは多発性であった.大きさ,肉眼的形態で検討すれば,良性の多くは10mm以下であったのに対し胆嚢癌は10例全例が10mmより大きく, 10mm以上の病変は悪性を強く疑って診断するべきであると示唆された.また有茎型のものは良性,無茎広基型のものは胆嚢癌に多くみられた.超音波検査の診断能を検討すると,胆石の非合併例の正診率が88.9%と高いのに対して,胆石合併例では, 28.8%と低値を呈しており,超音波検査時に胆石が認められても胆石のみにとらわれることなく,隆起性病変の存在,その形態を十分に精査する必要があると思われた.
  • 渡辺 信介, 高階 謙一郎, 米山 千尋, 山口 正秀, 佐々木 義文, 石井 孝, 蒲池 正浩, 相良 幸彦
    1988 年 49 巻 3 号 p. 458-467
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去6年間に経験した脾損傷27例を対象にCTを中心とした画像診断と非手術的治療について検討した.
    脾損傷の診断にCTは有用であり,そのCT所見の大半は脾辺縁の不整,脾内の低または高吸収域であった.その他の所見として脾の断裂5例,造影剤の漏出1例,脾陰影の同定不能1例などが認められた.
    脾損傷27例のうち手術施行例は10例であった.残り17例(63%)は非手術的治療で治癒したが,うち1例は経過観察中に遅発性脾破裂を併発したため,脾動脈塞栓術を行った.
    脾損傷の非手術的治療を行うには以下に述べる前提条件が満たされる必要がある. 1) 著明な腹腔内出血がなく,患者のバイタルサインが安定している. 2) 画像診断などで脾損傷の存在・形態が確認されている. 3) 管腔臓器の損傷など手術を必要とする合併損傷がない. 4) いつでも手術を行いえる体制で厳重な経過観察を行う.
  • 種本 和雄, 津島 義正, 中村 純, 小長 英二, 畑 隆登
    1988 年 49 巻 3 号 p. 468-473
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸骨動脈領域病変の32例に対して大腿-大腿動脈バイパス術(以下FFバイパス術)を施行した.術前の症状はFontaine分類では平均2.39度であった. 10症例においてはdonor側の腸骨動脈にも病変を認めたため, 1例に腸骨-大腿動脈バイパス術, 2例に腸骨-大腿-膝窩動脈sequentialバイパス術,さらに2例に血栓内膜摘除術を追加した.残り5例のdonor側の病変は軽度であったため放置した.またrecipient側の末梢のrun-offを改善する目的で, profundaplastyを6例に,腰部交感神経切除術を2例に行い,急性閉塞の2例に対してはFogartyカテーテルによる血栓除去を追加した.末梢のrun-offの非常に悪かった1例で早期に閉塞したが, FFバイパス術の3年の累積開存率は96.3%と良好で,末梢のrun-offの良い症例には極めて有効であると思われた.しかし, steal現象は皆無ではなく,運動能力の高い若年者への適応には慎重を期する必要がある.
  • 江里 健輔, 中村 丘, 竹中 博昭, 藤岡 顕太郎, 西山 利弘, 森 文樹, 近江 三喜男
    1988 年 49 巻 3 号 p. 474-477
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性動脈閉塞症の外科治療成績を塞栓症と動脈硬化性血栓症別に検討した.対象症例は塞栓症14例, 14肢,動脈硬化性血栓症14例, 14肢の計28例, 28肢であった.塞栓症にはFogartyバルーンカテーテルによる塞栓摘出術(14肢)が,動脈硬化性血栓症にはバイパス術(12肢),血栓内膜摘除術(2肢)がそれぞれ施行された.入院中死亡例は塞栓症にはなかったが,動脈硬化性血栓症では14例中6例(42%)であった.早期開存率(死亡時血行再建路が開存していたものも含む)は塞栓症100% (14/14),動脈硬化性血栓症72% (10/14)で,閉塞肢は全て肢切断となった.
    動脈硬化性血栓症のうち,再建路開存で,退院した7例, 7肢のうち晩期開存肢は2肢,閉塞肢は5肢で,後者は全て肢切断となった.このように,急性動脈閉塞症の外科治療成績は発生原因でまったく異るので,外科治療は発生原因を明らかにした後行われるべきである.
  • 池澤 輝男, 宮内 正之, 山田 育男, 佐藤 晴男, 森口 進, 川合 正之, 塩野谷 恵彦
    1988 年 49 巻 3 号 p. 478-482
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1976. 1~1985. 12.の10年間に,間歇性跛行を手術適応として血行再建術を施行した閉塞性動脈硬化症(ASO) 115例とバージャー病(TAO) 12例を再検討した.平均年齢は, ASOが61.8歳, TAOが41.7歳であった.術前合併症はTAOにはなくASOでは心疾患が43例(37.4%),糖尿病が15例(13.0%),脳血管障害が13例(11.3%)であった. ASOでは術後死亡が18例あり,うち2例は手術死亡であった.心筋梗塞及び悪性腫瘍による死亡は各々4例, 5例であった.グラフト閉塞はASOでは22肢, 11.3%で,うち3例に大切断を要した.一方TAOでは3肢25.0%であった.
    ASOでは動脈硬化症に起因する心疾患が術直後及び遠隔死亡の主たる原因であるため,その慎重な術前評価により手術適応を決定し,術中術後は厳重な管理が必要である.また下腿へのバイパス術は,長期開存率が良好とはいえないため,間歇性跛行では重症例にその適応を制限するべきと考えている.
  • 舟橋 啓臣, 佐藤 康幸, 今井 常夫, 野崎 英樹, 浅野 倫雄, 上田 雅和, 吉田 信裕, 加藤 伸幸, 高木 弘, 津荷 龍生, 大 ...
    1988 年 49 巻 3 号 p. 483-486
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスに時として慢性甲状腺炎が伴うことは古くからよく知られており,また,慢性甲状腺炎と甲状腺癌との合併例も時々みられる.しかし,サルコイドーシスに甲状腺癌を伴うことは稀とされ,なかでも濾胞癌の報告は見あたらない.われわれは,サルコイドーシスに甲状腺濾胞癌および慢性甲状腺炎を合併した稀な症例を経験したので報告する.
  • 溝口 哲郎, 藤原 博, 中間 輝次, 久次 武晴
    1988 年 49 巻 3 号 p. 487-492
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    上皮小体癌は稀な疾患であり原発性上皮小体機能亢進症の約5%をしめる.臨床症状は腎結石による腹痛や骨病変による骨痛や関節痛が最も多い.
    症例は46歳の男性で激しい食思不振を主訴とした.血清Caの異常高値と頸部に小指頭大の腫瘤を触れることより上皮小体癌が疑われた.経口摂取不可能であり,いわゆるhyperparathyroid crisisの状態であり中心静脈栄養を行うことによりCaの上昇を抑え安全に待機的手術を行うことが出来た.術中の所見では腫瘤は硬く周辺臓器と強く癒着しており上皮小体癌が疑われた.迅速検査によってcarcinomaと診断されたため甲状腺の一部と前頸筋群を含めen blocに切除し術後の経過は順調であった.
    症例の経過を報告するとともに上皮小体癌の診断の困難さ及び治療,予後について文献的考察を加えた.
  • 佐々木 正寿, 中川 正昭, 北川 晋, 金平 永二, 橋爪 泰夫, 疋島 寛, 大村 健二, 林 外史英, 瀬川 安雄
    1988 年 49 巻 3 号 p. 493-496
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌は特殊例を除き,他臓器癌に比べてその予後が比較的良好なものが多い.発症より死亡までが13カ月と急激な経過をたどった症例を経験したので報告する.患者は29歳の女性.最初,左乳房の小指頭大の腫瘤に気付き,近医受診しホルモン注射を受けたが,却って増大する為発症後約3カ月目に当院を受診した.生検にて悪性腫瘍と診断された為手術・放射線治療を施行したが,術後約8カ月,発症後約13カ月で全身の遠隔転移をきたし死亡した.病理学的診断はアポクリン癌であった.
    この症例より,アポクリン癌の一部は潜在的には極めて悪性で治療には注意を要すると考えられた.
  • 小池 龍, 佐々木 進次郎, 志熊 粛, 小玉 敏宏, 村木 宏要, 武内 敦郎
    1988 年 49 巻 3 号 p. 497-501
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性で, 9年前に心房中隔一次孔パッチ閉鎖術をうけている. 3年前から,動悸・労作時呼吸困難を認め,精査を行ったところ心房レベルでの左-右短絡, Sellers III度の僧帽弁閉鎖不全症,高度の三尖弁閉鎖不全症が判明し昭和61年3月再手術を行った.前回,自己心膜を用いてパッチを当てた部分に15×15mmの欠損がみられ,三尖弁輪は33mmに拡大していた.僧帽弁前尖に直径7mmの穿孔を認めた.僧帽弁葉は脆弱であるが,疣贅など感染を示唆する所見は無かった.両弁ともにDuromedics人工弁を用いて弁置換し,心房中隔再開通部をゴアテックスでパッチ閉鎖した.経過は良好で,患者は手術1年3カ月後の現在,完全に社会復帰している.
    心房中隔欠損閉鎖術後の遺残短絡は, 0.8~22.7%の頻度でみられる合併症であるが,両房室弁閉鎖不全症を伴い再手術を要する症例は少ないと考えられ,文献的考察を加え報告した.
  • 浦口 憲一郎, 山名 一有, 木下 寿彦, 大庭 聡, 明石 英俊, 平田 義博, 今村 明, 名嘉 真透, 原口 周一, 小須賀 健一, ...
    1988 年 49 巻 3 号 p. 502-507
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    多発性動脈瘤は末梢動脈には認められ,その報告例もみられる.又,最近では胸部・胸腹部・腹部大動脈瘤に対する治療経験も数多く報告されている.しかし多発性大動脈瘤の報告は少ない.当教室では1986年までに,胸部および腹部に発生した重複大動脈瘤を10症例経験した.男性8例,女性2例であり,年齢は51歳より74歳までの平均67.7歳であった. 2症例に胸部・腹部同時手術を行い, 5症例に二期的手術を行った.二期的手術では4例で胸部を, 1例で腹部を優先した.その他, 2症例で胸部のみ, 1症例で腹部のみ行った.
    胸部・腹部大動脈瘤が同時に存在し,もし両者共に手術の適応がある場合,手術の優先順位は各症例の破裂の危険性および全身状態に決定すべきと思われるが,一期的手術を安全に行い得るかが今後の課題と思われる.
  • 明石 英俊, 山名 一有, 浦口 憲一郎, 木下 寿彦, 平田 義博, 木下 寿文, 小須賀 健一, 中山 和道, 大石 喜六
    1988 年 49 巻 3 号 p. 508-514
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    78歳男性で重症心疾患を合併した巨大腹部大動脈瘤症例を経験した.症例は5歳時に心疾患を指摘されていた.今回入院時心エコーにより心室中隔欠損症,大動脈弁狭窄症および閉鎖不全症.僧帽弁閉鎖不全症と診断された.本症例は腹部大動脈から両側腸骨動脈にかけて動脈瘤があり,特に左腸骨動脈瘤は径が約8cmで被裂の危険性が高く,左側尿管を圧迫し,左腎は水腎症を呈していた.手術時の大動脈遮断および遮断解除による心負荷を軽減する目的にてTemporary Axillo Femoral bypassを作成し,腹部大動脈瘤をY-graft人工血管にて置換した.術中血圧は大動脈遮断時に一過性に40mmHg上昇したが10分後には大動脈遮断前と同じ血圧に戻り,大動脈遮断解除時には血圧低下はみられなかった.術後心不全症状の出現なく心機能の改善がみられ,満足すべき結果を得たので若干の考察を加え報告する.
  • 及川 佑一郎, 村井 英夫, 志田 悦郎, 金森 裕, 多田 正人, 尾崎 鉄也
    1988 年 49 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    月経と密接に関連して反復発症する月経随伴性気胸の2治験例について報告した.
    症例1は17歳,高校生,左側に発症した気胸で,気胸は月経開始直後に発症していた. 16歳時,左側自然気胸として手術をうけており,再発性気胸として再手術を行った.左横隔膜の病変を切除した.症例2は35歳,主婦.右側の再発性自然気胸で,気胸発生は月経開始1~2日前であった.右横隔膜に小孔を有する病変を認め,病変部を切除した.切除した横隔膜の組織学的所見では2例とも子宮内膜症は認めなかった.
    月経随伴性気胸は比較的まれな疾患であるが,気胸発症時期と月経との関係に注意すればその診断は容易である.本症の治療は開胸手術を行うべきであり,手術時には横隔膜病変を見逃がさないよう注意する必要がある.
  • 北里 誠也, 加来 信雄, 藤政 篤志, 細川 哲哉, 小林 良三, 坂本 照夫, 内野 良彦, 武田 仁良, 掛川 暉夫
    1988 年 49 巻 3 号 p. 520-526
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃切除術後輸入脚閉塞症の7例を経験したので本邦報告55例と合わせて報告する.輸入脚閉塞症はほとんどがBillroth II法術後に何らかの原因で輸入脚が閉塞し輸入脚十二指腸の圧が高まることにより発症する.膵炎を併発し高アミラーゼ血症を来たすことが多く膵炎として保存的に治療され手術の時期を失していることが多い.輸入脚の圧が高くなれば輸入脚の壊死,穿孔をおこし汎発性腹膜炎として手術されることもあり,後腹膜へ穿破してseptic shockになるまで見過されることもある.初回手術術式だが結腸前吻合でBraun吻合がなされていない場合に発症することが多いが結腸後吻合でもBraun吻合がない場合に多く発症する.原因は内へルニア29例46.8%と多く,癒着21.0%,屈曲16.1%であつた.診断はCTが特に有用であり右腎前面,腹部大動脈前面の拡張した十二指腸が特徴である.治療はへルニアの整復,癒着剥離,腸切除,腸吻合などである.穿孔例の予後は不良である.
  • 高木 雄二, 山田 卓史, 岡田 代吉, 清水 輝久, 高田 俊夫, 橋本 芳徳, 窪田 芙佐雄, 伊福 真澄, 下川 功
    1988 年 49 巻 3 号 p. 527-531
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性関節リュウマチに合併した消化管アミロイドーシスによる小腸穿孔を経験した.症例は56歳女性で約16年前より慢性関節リュウマチにて治療を受けていたが,悪心,嘔吐,食欲不振などが出現した.消化管アミロイドーシスを疑い精査中,穿孔性腹膜炎を併発したため緊急手術を行ったところ,トライツ靱帯より1.5mの小腸に約2mmの穿孔を認めた.これを含めて約1mの小腸切除を行った.切除標本組織のHE染色, Congo red染色,偏光顕微鏡による観察にて,粘膜下の間質および血管周囲に著しいアミロイドの沈着を認め,消化管アミロイドーシスによる小腸穿孔と診断した.本症例は,手術の時期が遅れたため術後6時間で不幸な転帰をとったが,アミロイドーシスに対する外科治療の限界を感じさせた.
  • 藤本 三喜夫, 竹末 芳生, 児玉 節, 横山 隆
    1988 年 49 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右下腹部痛を主訴に来院した回盲部子宮内膜症の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
    回盲部子宮内膜症は比較的まれな疾患で,術前検査,さらには術中においても,大腸癌その他の疾患との鑑別は容易でない場合も多く,妊娠可能成熟女性の場合は,腸管の腫瘍性病変が第一に疑われても,本症の存在を充分に念頭におき,過大な手術侵襲をさけるべく,より慎重な態度でのぞむことが肝要であると考えられた.
  • 甲斐 真弘, 増田 好治, 田中 貞夫, 福田 実, 小野 二六一, 香月 武人
    1988 年 49 巻 3 号 p. 536-539
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は,比較的まれな疾患で,術前診断は極めて困難である.今回我々は虫垂切除術施行後の病理組織検査によって虫垂原発の粘液嚢胞腺癌と診断され, 2期的に根治手術を施行した71歳の男性症例を経験した.
    高齢で,長期間にわたり,あるいは反復して急性虫垂炎様症状を示す症例に対しては,癌合併も考慮し,術前に超音波検査および注腸造影検査を施行する必要がある.
    癌が虫垂に限局する場合は回盲部切除術,盲腸浸潤あるいは所属リンパ節への転移が疑われる場合には,右半結腸切除術が望ましい.
  • 角田 明良, 片岡 徹, 広本 雅之, 松田 哲郎, 桜井 俊宏, 加藤 貞明, 渋沢 三喜, 新井 一成, 小池 正
    1988 年 49 巻 3 号 p. 540-546
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌に併発した閉塞性大腸炎の3例を経験し,症例の概要を報告し,本邦報告例を蒐集し,文献的考察を加えた.
    症例1: 61歳,女性. Borrmann II型直腸癌(Rs)の口側に6cmの正常粘膜を介し,腸間膜付着側に長さ30cmの縦走潰瘍を認めた.症例2: 67歳,男性. Borrmann I型S状結腸癌の口側に1.2cmの正常粘膜を介し,長さ25cmにわたりびまん性の潰瘍を認めた.症例3: 67歳,女性. Borrmann II型直腸癌(Rs)の口側に4cmの正常粘膜を介し,腸間膜付着側に長さ9cmの縦走潰瘍を認めた.
    本症では閉塞性病変と潰瘍の間に正常粘膜が介在するのが特徴であり,本邦報告例の検討から,正常粘膜の長さが20cm以上の例がないこと,介在する正常粘膜の長さが短いほど潰瘍性病変が口側へ長く及ぶ傾向があることは,腸管切除に際して切除範囲決定の指標の一つになると考える.
  • 飯田 辰美, 渡辺 敬, 大貫 義則, 雑賀 俊夫, 松原 長樹
    1988 年 49 巻 3 号 p. 547-554
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1985年1月より1986年12月までの2年間に国立東静病院外科で治療を行った大腸癌症例は81例である.この81例のうち3例(3.7%)に腸重積症の合併が認められた(1例は盲腸癌, 2例がS状結腸癌).
    腸重積症は臨床症状とともに大腸造影,超音波検査, CTなどにより診断可能であったが,腫瘍の併存を確認する上では,大腸ファイバースコープ検査によるところ大であった.
    成人腸重積症は比較的まれな疾患で,大腸癌による腸重積症も上述の如くまれである.成人の腸重積症は小児のそれに比し,大腸に多くみられかつ腫瘍により惹起される事が多い.また大腸腫瘍が成人に多いことをも考えあわせれば,成人腸重積症(とくに大腸)では,術前に腫瘍の有無その性状を診断しておくことは極めて重要と考えられる.これによりリンパ郭清を含む的確な手術治療が可能となると考えられる.
  • 新本 修一, 松葉 明, 小島 靖彦, 嶋田 紘, 藤田 秀春, 中川原 儀三, 佐々木 紘昭
    1988 年 49 巻 3 号 p. 555-560
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵仮性嚢胞内出血は,慢性膵炎の経過中,稀に合併する重篤な病態の一つで,死亡率も高いとされている.われわれは,アルコール性と思われる慢性膵炎の患者に,仮性動脈瘤の所見を呈した膵仮性嚢胞内出血を合併した1例を経験した.
    患者は46歳の男性で,左上腹部および背部痛を主訴として来院した.左上腹部に,急激な経過で出現した手拳大の腫瘤を認め,同部に血管雑音を聴取した.腹部超音波, CT,血管造影等の術前検査にて,膵体部の仮性嚢胞が脾動脈と交通して嚢胞内に出血し,さらに嚢胞が脾静脈を圧迫閉塞して,脾腫をきたしたと診断した.手術所見は,上記診断のとおりであり,膵体尾部切除術,脾臓摘出術を施行した.本例は術後1年半の現在,元気に社会復帰している.本疾患について,診断および治療につき,若干の文献的考察を加えた.
  • 山田 直樹, 香山 仁志, 原 聡, 山内 一, 和田 英一, 松波 英一, 木村 雅彦
    1988 年 49 巻 3 号 p. 561-566
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤は比較的まれな疾患とされているが,腹部内臓血管動脈瘤のなかでは最も多く,最近の画像診断の発達により,その報告例も増えつつある.
    症例は60歳の男性で,心窩部痛を主訴として来院した.胃内視鏡検査にて胃体中部後壁に粘膜下腫瘍様の5×5cmの半球状腫瘤がみられ,超音波内視鏡検査にて腫瘤は胃壁外からの圧迫と診断され,腹部血管造影にて,脾動脈主幹部より発生した脾動脈瘤と診断された.手術は動脈瘤の切除のみを行い,摘脾は施行せず,患者は第17病日に全治退院した.組織学的に動脈瘤壁には動脈硬化性変化はなく,発生原因としてStanley分類のI群に属するものと考えられた.
  • 門田 今日子, 坂口 隆啓, 康 謙三, 進藤 勝久, 安富 正幸, 今田 聰雄, 門田 永治
    1988 年 49 巻 3 号 p. 567-571
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近本邦においても普及してきている透析方法の一つであるCAPD療法の重篤な合併症である硬化性腹膜炎の1症例を報告する. 45歳男性,既往歴は27歳で急性糸球体腎炎. 41歳時,末期慢性腎不全の診断でCAPD療法を開始.治療開始後2年目から無菌性の腹膜炎,イレウス症状が時々出現し内科的治療で軽快していた. 3年10カ月目にはイレウス症状と共に限外濾過量の減少が認められるようになりCAPD療法を中止し血液透析療法に透析方法を変更した.持続するイレウス症状に対しては内科的治療が無効なため開腹術を施行した.腹腔内は連続した白い線維性の被膜が腸管を一塊として包み込み圧迫していた.本症は一般的に治療法が無く,進行性のイレウスに加えて腹膜透析を持続することが不能となるため予後は不良である.われわれの経験した硬化性腹膜炎の症例を報告するとともに若干の文献的考察を述べてみたい.
  • 本邦報告例74例の検討
    大橋 直樹, 小坂 篤, 水木 龍二
    1988 年 49 巻 3 号 p. 572-577
    発行日: 1988/03/25
    公開日: 2009/03/31
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    腹壁desmoid tumorの2例を経験したので本邦報告例74例につき検討した成績と共に報告する.症例1: 38歳女性.右下腹部腫瘤を主訴として来院.腫瘍は4.5×2.5×2.0cm,充実性で内腹斜筋内に存在し同筋へ浸潤していた.症例2: 39歳女性.左下腹部腫瘤を主訴として来院.腫瘍は4.5×4.4×2.0cm,充実性で内腹斜筋内より腹直筋鞘及び腹横筋に浸潤していた. 2症例とも周囲幅約1cmの健常な筋及び筋膜と共に腫瘍を完全に摘除し,欠損部は周囲の筋膜に減張切開を加えて一次的に縫合閉鎖し,各々2年10カ月及び11カ月後の現在再発の徴なく健在である.本邦報告例の検討では20~30歳代の女性に好発し,発生部位は右下腹部が最も多く腹直筋及び内腹斜筋由来のものが約90%を占めていた.診断にはUS, CTが有用で, USでは境界やや不明瞭で辺縁に不整があり,内部エコーは概ね低エコーで,約半数が不均一であった.再発は5例(6.8%)に認められており,外科的完全摘除が必要である.
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