日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
49 巻, 5 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 渡辺 英伸
    1988 年 49 巻 5 号 p. 751-760
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 檀 健二郎
    1988 年 49 巻 5 号 p. 761-766
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 野口 昌邦, 谷屋 隆雄, 熊木 健雄, 小野田 秀樹, 田尻 潔, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 767-773
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    初回治療乳癌症例289例を対象として領域リンパ節郭清の診断的および治療的意義について検討を加えた.腋窩および胸骨傍リンパ節率は全体でそれぞれ38%, 18%であり,これらリンパ節転移の有無は乳癌の生存率に密接に関係していた.しかし,リンパ節転移の有無を術前の臨床所見や検査法で的確に知ることは極めて難しく,診断的にも腋窩と胸骨傍リンパ節郭清が必要であった.一方,対象症例全てに腋窩リンパ節郭清がおこなったが,胸骨傍リンパ節郭清に関しては,徹底的な胸骨傍リンパ節郭清を加えた胸骨縦切開en bloc法拡大乳切症例とその他の手術症例を比較すると,腋窩リンパ節転移個数3個以内の場合, en bloc法症例の5生率が良好であった(p<0.05).従って,腋窩および胸骨傍リンパ節郭清は予後に関する情報を提供する診断的意義と共に,治療的には局所制御ばかりでなく,生存率にも影響を与えると考えられた.
  • 成瀬 隆吉, 小池 明彦, 鈴村 和義, 松本 幸三, 大岩 靖典, 三輪 雅彦, 小島 卓, 金光 泰石, 山本 貞博
    1988 年 49 巻 5 号 p. 774-778
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌の鑑別診断や術後再発の早期発見における癌胎児性抗原(CEA)や糖蛋白抗原(CA15-3)の有用性を検討するために,乳腺外来を受診した症例のうち組織学的診断の確定したもの及び乳癌術後の症例のCEAとCA15-3を測定した.非癌例とほとんどの治療前の癌例で両者ともcut off以下であった.再発例では少なくともいずれかが高値であるが,どちらが早く高くなるかは明確でなかった.また,再発時の値は再発治療を反映して変動するのを認めた.したがって両者はスクリーニングには有用とはいえないが,この両者を同時測定することによりは再発を早期に見出すモニターまたは治療効果を判定するモニターとして有用であると判断された.
  • 奥山 宏臣, 西村 正, 水野 均, 川口 学永, 真嶋 敏光, 仲原 正明, 大下 征夫, 小林 春秋男
    1988 年 49 巻 5 号 p. 779-783
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去12年間に当院で食道静脈瘤直達手術50例を経験した.手術死亡は11例(22%)でうち7例が肝不全死であった.一方術後急性肝不全発生群と非発生群の死亡率は各々62% (10/16), 3% (1/34)と肝不全発症群で有意に高率であり,術後急性肝不全発症は予後に大きく関与していた.そこで今回肝不全発症の因子について検討した.手術時期別では緊急50% (5/10),待期32% (6/19),予防18% (2/11)と緊急手術例で肝不全発症が高率であった.術前の状態をChild分類に分けるとC群に高率に肝不全を認めた.一方肝不全発症に有意の相関のみられた術前肝機能検査は血清総ビリルビン値, GOT, ICG・R15でありプロトロンビン時間,コリンエステラーゼ値には相関はみられなかった.以上より緊急例およびChild C群に関しては非観血的治療を第一選択とし,血清総ビリルビン値, GOT, ICG・R15の高値を示す例に対しては慎重な手術時期の決定が必要であると考えられた.
  • 橋本 謙, 武田 仁良, 孝冨士 喜久生, 梅谷 博史, 吉田 力, 辻 義明, 大森 康弘, 迎 徹, 難波 雄一郎, Teruo KAK ...
    1988 年 49 巻 5 号 p. 784-788
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1972年から1986年までの15年間に教室で経験した組織学的他臓器浸潤胃癌85例を対象に臨床病理学的に検討した.浸潤臓器では膵が39例(45.8%)と最も多く,次いで横行結腸および結腸間膜,横隔膜,肝の順であった.また肉眼型では当然のことながら浸潤型が多く,とりわけBorrmann 3型が63.5%を占めた.組織学的他臓器浸潤陽性例の手術成績をみると治癒切除例の5生率は21.2%で非治癒切除例4.7%にくらべ明らかに良好であり合併切除の効果が期待できるものと考えられた.一方,横隔膜浸潤例は何れもC領域に主病巣を持つ癌腫で5年生存者は1例もみられず極めて予後不良であった.その一因として横隔膜浸潤胃癌では広範な横隔膜内への癌細胞の進展があることを症例を呈示し明らかにした.
  • 中田 一郎, 佐藤 茂範, 田渕 崇文, 徳毛 公人, 湯本 克彦, 金沢 築, 相馬 哲夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 789-795
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    英国は悪性新生物登録システムの完備された国の1つである.われわれはこの国の一地域Oxford州の大腸癌症例をこのsystemに基づき検討した.対象症例はOxford州住民で1968~1977年の10年間に登録された1.999例である.
    その結果, 1) 年齢分布の高齢化, 2) 直腸癌症例の減少,結腸癌の増加, 3) 女性結腸癌症例の増加, 4) 高齢化,癌高度進行を理由とした非治療例の増加などが示された.
    大腸癌罹患率は英国においても,本邦でも60歳代から急に高くなっていること,また救命不能癌は70歳以上から急激に増加していたことから,大腸早期癌および救命可能癌の効率よい発見を目的として, 60歳代検診の強化を強調したい.
  • 特に排液の細胞性免疫に及ぼす影響について
    丹羽 彦夫, 佐治 重豊, 森田 敏弘, 宮 喜一, 河田 良, 東 修次, 坂田 一記
    1988 年 49 巻 5 号 p. 796-801
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    切除不能肝癌あるいは硬変合併肝癌に対する凍結手術後,腹腔内ドレーンからの排液量の多い症例程,延命効果が良いことが示唆されている.今回,術後排液のphytohemag-glutinin (PHA)およびconcanavalin A (Con A)幼若化能におよぼす影響につき検索した.肝癌凍結手術後3, 24, 72時間目および1, 3週目排液を当該患者あるいは健常人リンパ球のPHA幼若化能測定時に添加したところ,患者peripheral blood lymphocytes (PBL)の活性を有意に抑制したが,健常人PBLでは活性亢進が観察された.またCon A幼若化能測定時に24時間目と3週目の排液を添加した場合は共に活性増強を示した.
    以上の結果,術後排液は宿主細胞性免疫に対して負の働きを示すので,術後早期に凍結壊死腫瘍抗原吸収により引き起こされるかもしれないhigh-zone toleranceの防止のため,充分な排液処置の必要性が示唆された.
  • 稲垣 優, 成末 允勇, 高橋 侃, 小林 敏幸, 嶋村 廣視, 坂本 昌士
    1988 年 49 巻 5 号 p. 802-808
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当院において開院以来9年6カ月間に45例の膵頭十二指腸切除術を行った.これらを70歳以上の高齢者と70歳未満にわけ,検討した.高齢者は16例で全体の35.6%を占める.疾患は,中下部胆管癌11例(うち高齢者4例),乳頭部癌16例(同7例),膵頭部癌11例(同3例),胃癌3例(同2例),十二指腸癌3例,慢性膵炎1例であった.術前の減黄術施行率は高齢者87.5%, 70歳未満48.3%であり,術後合併症発生率はそれぞれ, 43.8%, 37.9%であった.予後は,胆管癌では3年生存率が高齢者100%, 70歳未満17.2%,乳頭部癌ではそれぞれ33.3%, 31.3%,膵頭部癌では1年生存率がそれぞれ0%, 30%であった.胆管癌,乳頭部癌では高齢者にも適応があれば,積極的に膵頭十二指腸切除術を行うべきであると思われる.
  • 末田 泰二郎, 石原 浩, 浜中 喜晴, 金広 啓一, 渡橋 和政, 松浦 雄一郎, 山科 秀機, 肥後 正徳, 藤井 隆典, 山本 正治
    1988 年 49 巻 5 号 p. 809-813
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近11年間に急性上肢動脈血行障害23例に対し外科的治療を行い以下の結果を得た.
    1. 23例の病型は,血管外傷15例,血栓症4例,塞栓症4例であった. 23例中15例(65%)は,発症より3日以内に手術を行った.
    2. 血管外傷の原因は,労働災害7例,交通事故2例,医原性4例,自殺行為1例,その他1例であった.血栓症では, ASO 2例,圧迫挫傷1例,不明1例であった.塞栓症では,心房細動による心内血栓由来3例,不明1例であった.
    3. 手術法は,血栓,塞栓症に対しては, 1例にバイパス術を行ったが,他の7例は血栓摘出術を行った.血管外傷に対しては,血栓摘出+挫滅動脈切除端々吻合を7例,仮性動脈瘤切除術を2例,人工血管によるバイパス術2例, vein graftによるバイパス術1例,血栓摘出術3例を行った.患肢の虚血症状の悪化例はなく,いずれも症状が軽快した.
  • 小林 薫, 八代 亨, 鈴木 章, 真鍋 嘉尚, 尾崎 修武, 伊藤 國彦, 濱名 元一, 三村 孝, 石原 恒夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 814-819
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    臨床的に問題となる転移性甲状腺腫瘍は稀である.腎癌の甲状腺転移のように外科的療法によって良好な予後の得られる症例があるが,予後不良の症例が多い.したがって,転移性甲状腺腫瘍の症例の予後を改善するには,その早期診断が重要である.
    症例1は48歳の女性で,圧痛を伴った多結節性甲状腺腫を有していた.転移性の未分化腺癌と診断され,原発巣の検索により,胃癌の甲状腺転移と判明した.化学療法を開始したが,短時日で不幸な転帰をとった.
    症例2は58歳の女性で,甲状腺左葉に結節を有していた. 7年前直腸癌のため根治術, 4カ月前その肺転移のため左肺切除を施行していた.甲状腺左葉切除を施行し,組織診で直腸癌の甲状腺転移と確認した.患者は術後経過良好である.
  • 堀口 実, 斉藤 光, 園田 仁志, 西村 宏
    1988 年 49 巻 5 号 p. 820-824
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近,再発乳癌に対して,積極的に集学的治療が行われるようになり,再発後の長期生存例も報告されるようになってきた.当科に於いても再発乳癌症例に対し種々の集学的治療を行い,初再発後8年9カ月生存,呼吸不全で死亡し,剖検の結果,転移,再発巣の完全消失を確認しえた極めて貴重な症例を経験したので報告する.発病時33歳,女性.右乳癌にて定型的右乳房切断術,更に術後照射を行った. 4年3カ月後,右鎖骨上リンパ節再発を初めて認め,その後,約3年して卵巣,骨盤リンパ節再発も認めた.それぞれに照射療法及び外科的内分泌療法を兼ね卵摘術を行った.又初再発後, 4年3カ月で左乳癌(異時性両側乳癌と組織にて判明),左胸膜,肺,左頚部リンパ節転移が認められ,定型的左乳房切断術,胸腔内抗癌剤注入,両側副腎摘除術等の治療法を行った.この結果,最終的に再発病巣を消失せしめる事ができた.
  • 林 明照, 蕪木 滋彦, 野中 杏栄, 柴 忠明, 竹内 節夫, 影沢 峰行, 秋間 道夫, 葛 益昌, 川村 貞夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 825-832
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    45歳女性,左側胸部から左胸腔の大部分を占める巨大malignant granular cell tumor (悪性顆粒細胞腫)の1例.
    外科的切除が不可能と判断したため, OK-432, PSKによる免疫賦活療法と,呼吸困難,両下肢浮腫への対症療法を行ったが,入院8カ月目に呼吸不全にて死亡した.経過中AFP, CEAの各腫瘍マーカーは陰性であった.剖検の結果,腫瘍は22×12×16cmと13×11×7cmと巨大であり,左肺,心嚢,横隔膜へ直接浸潤していたが,リンパ節や他臓器への血行転移は認められなかった.欧米諸国を含め今日まで報告された29例中,遠隔転移は25例と高率であることから,特異な進展様式を呈した症例であった.電顕にて,腫瘍細胞にふくまれる顆粒のうちミエリン様構造を示すものが認められ,また,神経組織抗原であるS-100蛋白,γ型エノラーゼがともに陽性であったことから,本腫瘍の発生母地はSchwann細胞である可能性が考えられた.
  • 松本 賢治, 山田 公雄, 戸倉 康之, 猪原 則行, 深瀬 達, 中根 晴幸, 加藤 英夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 833-838
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    真性多血症(polycythemia vera; PV)にて経過観察中,大動脈炎症候群(aortitis syndrome; AS)を呈した1例を経験した.症例は52歳の女性で右第5趾炎症性疼痛,両下肢間欠性跛行を主訴とし,血管造影検査にて腹部大動脈・両側腸骨動脈の閉塞性病変を認めた.手術は腹部大動脈・両側大腿動脈Y型人工血管バイパス術を施行したが,術中著しい出血傾向を生じた.術後4日目まで出血傾向が観察され, 17日目,急性深部静脈血栓症を併発, 21日目,出血性胃潰瘍を併発したため,術直後より抗凝固,線溶療法の適用及び中断を余儀なくされた.両合併症とも保存療法にて軽快し,その後の経過は良好であった.腹部大動脈の病理組織学的検査では大動脈炎と診断された.
    PVに伴うASにおいて血行再建術を施行した場合,出血,凝固系にいかなる変動が生ずるか不明の点が多く,今後その対策の重要性が指摘された.
  • 渡瀬 誠, 野口 貞夫, 藤本 直樹, 相川 隆夫, 籠谷 勝己, 柴田 信博, 田村 茂行
    1988 年 49 巻 5 号 p. 839-843
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消炎鎮痛剤dicrophenac natriumに起因すると考えられる食道潰瘍の1例を経験した. Dicrophenac natrium内服後,胸部につかえる感じ有り, 4日後上部消化管透視を受け,食道癌の疑いの診断を受けていたが, 2週間後吐下血をきたしたため来院した.食道内視鏡にて,胸部上部食道に多発する潰瘍と薬剤の遺残を認めた. Dicrophenac natrium に起因する食道潰瘍の本邦報告例は9例で,海外報告例はなく,稀な1症例と思われる.
  • 伊藤 重彦, 大江 久圀, 徳山 昇, 添田 修, 岡田 代吉, 林宗 榮, 赤嶺 晋治, 辻野 直之
    1988 年 49 巻 5 号 p. 844-847
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に胃穿孔24例(潰瘍穿孔16例,胃癌穿孔8例)を経験したので報告する.潰瘍穿孔症例では,来院時, 2例がショック症状を呈していたが手術直接死亡例は1例のみで他の症例は術後予後良好であった.一方胃癌穿孔例の手術直接死亡率は50%で潰瘍穿孔例と比較して予後は悪かった.手術術式は,術前の患者の状態に合わせて選択したが,姑息的手術に終った症例であっても,患者の全身状態の改善を待って,積極的に二期的手術を行うべきであると考えられた.
  • 島田 良昭, 久下 裕, 田島 幸一, 斉藤 勢也, 大口 秀利, 吉野 正, 大朏 祐治
    1988 年 49 巻 5 号 p. 848-855
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例, 63歳女,多発性胃ポリープの精査として胃レ線,胃内視鏡検査を行い,胃癌および胃カルチノイドと診断され,胃噴門側切除術を施行した.胃噴門部前壁(m, tubl),胃体部小弯側(m, sig)に2つの粘膜内癌が認められた.また切除胃全体に小隆起性病変を20個認め,組織学的には,カルチノイド腫瘍であった.周辺胃粘膜には著明な萎縮性変化がみられ,内分泌細胞微小胞巣(ECM)が多発し,従来の報告通り逆萎縮性胃炎に合併するカルチノイド腫瘍の病巣分布と一致していた.カルチノイド腫瘍, ECMにはともにグリメリウス染色陽性顆粒を認め,酵素抗体法でもHCG, Leu7の陽性所見が得られ,これらの病変は腫瘍発生上一連の変化と考えられた.したがって,手術の際ECMが認められる領域を完全に切除する必要があると考えられた.
    多発粘膜内癌にはカルチノイド的性格はなかったが,慢性萎縮性胃炎と腫瘍発生との関係を考える上で興味ある症例であった.
  • 佐川 庸, 小野 仁志, 酒井 堅, 木村 茂
    1988 年 49 巻 5 号 p. 856-859
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人では稀な十二指腸膜様狭窄の1例を経験したので,症例の概要を報告し若干の文献的考察を加えた.
    症例は30歳,男性で腹部膨満感と嘔吐を主訴として入院した.上部消化管造影および内視鏡にて十二指腸下行脚に全周性の狭窄を認め,十二指腸膜様狭窄あるいは輪状膵の診断にて開腹手術を施行した.十二指腸Vater乳頭部直下に存在した全周性の膜様物を切除し,良好な経過を経ている.
    本症は胎生期の十二指腸融合不全が原因とされ,膜様物が吹き流し様に伸展した例は特にwindsock型と呼ばれる.また類似疾患にIDD (Intraduodenal diverticulum)がある.十二指腸狭窄の診断に際しては本症を念頭におき,手術は出来る限り膜様物切除が望ましい.
  • 小縣 正明, 黒木 輝夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 860-864
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後12年目に吐血および腹痛を主訴として急性発症したBraun吻合部腸重積症の1例を報告する.
    症例は59歳の男性で,胃癌にて胃全摘術の既往あり.術前に,超音波検査でmultiple concentric ring signを認め,腸重積症と診断し,さらにCT,消化管透視,内視鏡検査による検索を総合してBraun吻合部腸重積症を疑った.開腹所見は,胃全摘後の再建方法として結腸前B-II法, Braun吻合付加が施行されており, Braun吻合部の約20cm肛門側より上行性に生じた三筒性腸重積症であった.重積部腸管の壊死化を認めたために腸切除を行った.
    胃切除後腸重積症の診断には何よりも本症の存在を念頭に置くことが重要であるが,超音波検査では腸重積症に特徴的な所見が得られるので,極めて有用な検査法と考えられる.
  • 泉 俊昌, 沈 重博, 喜田 晃, 阿部 哲夫, 岩崎 隆, 五味 昭彦
    1988 年 49 巻 5 号 p. 865-869
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    塞栓摘除術だけで救命しえた急性上腸間膜動脈塞栓症の1例を報告する.症例は,腹痛を主訴とする70歳の男性で,来院時心房細動を併存していた.緊急血管撮影で,中結腸動脈分岐部より末梢の上腸間膜動脈本幹に閉塞を認め,発症後7時間で開腹した.腸切除は不要と判断し,塞栓摘除術だけを行った.ほぽ20時間後, second look operation (開腹)を行い,腸管のviabilityが回復していることを確かめた.
    本症患者を塞栓摘除術だけで救命しえたという本邦報告例は,自験例を含め10例である.全例が心疾患または塞栓を形成しやすい条件を持っていた.また,発症から血行再開までの期間は平均17.8時間であった.
    腹痛患者の診療に当っては,人口の高齢化と患者の背後にある併存疾患を考慮し,常に本症の存在を念頭におかなくてはならない.
  • 畑川 幸生, 丸田 守人, 坂本 賢也, 吉松 泰彦, 河田 周三, 小西 高義, 小森 義之, 青木 春夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 870-876
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的稀な盲腸軸捻転症に穿孔を合併し汎発性腹膜炎を併発した症例を経験したので盲腸軸捻転症の本邦報告111例(自験例を含めて)につき文献的考察を加えて報告する.
    症例は52歳,白痴の女性で,寝たきりの状態であった.主訴は腹部膨満と発熱.腹部単純X線で遊離ガスを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し開腹.開腹所見では盲腸を中心に約360度軸捻転を起こし血行障害はなかったが穿孔を認め,回盲部切除・回腸上行結腸端々吻合術を施行し,術後は良好に経過した.
    本症は症状に特徴的所見がなく,術前に診断することは困難で,可及的早期の開腹手術が必要である.軸捻転部に部分的壊死または穿孔を認めた症例の治療は,部分的切除・盲腸瘻造設術などが行われているが,自験例のように長期臥床,便秘傾向など再発の可能性がある症例では全身状態を考慮し,切除・吻合術を積極的に選択すべきと考えられた.
  • 斉藤 公男, 横山 正之, 更科 広実, 斉藤 典男, 新井 竜夫, 布村 正夫, 奥井 勝二, 古山 信明, 樋口 道雄
    1988 年 49 巻 5 号 p. 877-881
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近著者らは30歳の女性で,小腸大腸型Crohn病の経過中に合併した直腸腟瘻の1治験例を経験したので報告する.経腟・肛門的瘻管切除術と病変の少ない上行結腸に一時的人工肛門を造設し良好な結果が得られた.また,開腹時にみられた小腸狭窄部に対し, stricture plastyを追加し,病状の寛解とともに経口摂取も可能となった. Crohn病の瘻孔形成は比較的多く経験され,再発時の手術適応となることが多いが,直腸腟瘻は比較的稀な合併症であり,その治療方針の決定は必ずしも容易でない.その外科治療を中心に若干の文献的考察を加え報告した.
  • 鬼頭 秀樹, 笛吹 高志, 前田 敬文, 大野 良興, 橋本 仁, 長野 文昭, 室谷 益代, 松本 和基, 奥村 泰啓, 渡部 重則, 梅 ...
    1988 年 49 巻 5 号 p. 882-887
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    特異な内視鏡像を呈した直腸良性潰瘍の1例を報告する.症例は56歳,女性.元来便秘がちで,来院2日前,腹部膨満感が強いため浣腸したところ,血便,下腹部痛,発熱が出現し,当科に入院となった.大腸内視鏡検査では,肛門より4cmの直腸左前壁にBorrmann III型様の潰瘍性病変を認めたが,生検診断は非特異性潰瘍で悪性所見はなかった.潰瘍の治癒傾向は良好で,入院より7カ月目に瘢痕治癒を認めた.
    非特異性直腸潰瘍の代表的なものに孤立性直腸潰瘍があるが,これは慢性経過をとり組織学的にfibro-muscular obliterationが特徴的である.一方急性経過をとるものに虚血性直腸炎,急性出血性直腸潰瘍,宿便性潰瘍があるが,今回の症例は頑固な便秘が先行した点より宿便性潰瘍が疑われた.尚,直腸の非特異性潰瘍では癌との鑑別が問題となる.悪性が否定しきれずMiles手術が施行された報告例もみられ,初回内視鏡検査で癌が疑われても繰り返し生検を行うことが重要である.
  • 伊藤 敬, 黒田 義則, 池田 政宣, 倉西 文仁, 小川 喜輝, 渡辺 憲治, 米原 修治, 井内 康輝, 正岡 孝夫
    1988 年 49 巻 5 号 p. 888-891
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    54歳女性.昭和60年3月より肛門出血を認めていた.昭和60年9月近医でポリープを指摘されポリペクトミーが行われた.病理診断は直腸悪性黒色腫であった.昭和60年9月30日腹会陰式直腸切断術を行った.術後Dimethyl-Triazeno-Imidasole-Carboxamide (DTIC), Vincristine (VCR), Amino-Methyl-Pyrimidinyl-Methyl-Chlorethyl-Nitoro-sourea-Hydrochloride (ACNU)による化学療法を行った.昭和61年9月24日胸部X線にて肺転移を,昭和61年10月頭部,手掌,背部,前胸部に皮膚転移を,昭和61年10月18日CTにて肝転移を認めた.昭和61年11月18日よりBCG, Tamoxifen投与を開始するも,昭和62年1月29日死亡した.
  • 中川 秀和, 中郷 良蔵, 大山 正史, 吉田 栄一, 小林 努, 黒河 達雄, 真鍋 俊治, 小林 省二
    1988 年 49 巻 5 号 p. 892-898
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    中部胆管の限局性隆起性病変のために閉塞性黄疸をきたし,胆管癌を疑ったが術後に原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis: PSC)と診断された1症例を経験したので報告する.
    症例は75歳,女性で黄疸を主訴に来院した.胆管造影で,三管合流部の十二指腸側での完全閉塞を認め,中部胆管癌の診断により膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では膵上縁の胆管に限局した隆起性病変(12×12×3mm)を認め,病理組織学的にPSCと診断された.
    過去6年間に本邦で文献報告されたPSCは23例で,そのうち限局型は8例である.これらの症例を集計し,若干の考察を行った.
  • 富永 正寛, 松本 昭憲, 肥後 孝, 遠藤 幸男, 葛西 猛, 小林 国男
    1988 年 49 巻 5 号 p. 899-905
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷による肝外胆道系の損傷はまれであるが,著者らは過去7年間に興味ある胆嚢および肝外胆管損傷の4例を経験した.胆嚢損傷は, 1) contusion, 2) laceration, 3) avulsion, 4) traumatic cholecystitis, 5) biliary peritonitis without perforationに分類されるが,症例1の病態はcontusion,症例2はtraumatic cholecystitis,症例3はtraumatic cholecystectomyに類する状態と考えられる.また症例4は,十二指腸および膵頭部の挫滅創に随伴して肝外胆管が総肝管より膵内胆管に至るまで遊離して露わになるような損傷で,調べた範囲ではこのような報告は見られず,著者らはこれをexposed injuryと名づけた.以上4症例を報告するとともにその分類,発症機序,診断,治療法について文献的考察を加えて検討した.
  • 上野 正義, 深井 泰俊, 堀田 敦夫, 中島 祥介, 中野 博重
    1988 年 49 巻 5 号 p. 906-910
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は満期正常分娩にて出生した生後20日の男児である.出生後,著明な新生児黄疸のため光線療法を施行されていたが,徐々に腹部膨満が出現してきたため当科紹介された.入院後の腹部超音波・CT検査さらに腹腔内穿刺の結果,胆汁様腹水が証明されたため先天性胆道拡張症および拡張部胆道穿孔による胆汁性腹膜炎の術前診断のもとに生後31日目に緊急手術が施行された.開腹所見では拡張した総胆管並びに胆汁様腹水の貯留が認められたが胆管壁に明らかな穿孔部位は発見できなかった.手術方法は胆嚢並びに拡張部胆管を切除し肝管空腸端側吻合(Roux-en-Y), Y字管挿入を施行した.
    先天性胆道拡張症に胆汁性腹膜炎を合併する症例は稀であり,術前診断も困難であるとされる.腹部超音波およびCT検査等により先天性胆道拡張症が疑われ,さらに腹水貯留を伴うような症例に遭遇した場合,積極的に腹腔内穿刺を行うべきであると考えている.
  • 吉田 晃治, 野中 道泰, 才津 秀樹, 浦口 憲一郎, 内田 立生, 渕上 量三, 杉原 茂孝
    1988 年 49 巻 5 号 p. 911-916
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵内胆管癌に対し,膵頭・十二指腸切除後, Whipple変法による再建術を施行した.術後2日目,膵・空腸吻合部に縫合不全を起し,再手術時,膵管内tubeはぬけ,局所の腹膜炎所見著明なため,再吻合は不能と判断し,膵・空腸吻合部を遊離し,膵管内へdrainage tubeを再挿入し,空腸側は縫合閉鎖し,局所に十分なdrainage tubeを挿入した.その後, 1カ月間は完全絶食と静脈栄養による全身管理を行った.術後76日目より上腹部痛と膵液排出量の減少を認めたので, 80日目に膵管造影を行ったところ,膵液の小腸内への自然内瘻化を認めたので,膵管tubeを抜去し,その後は経過良好で,術後6カ月軽快退院した.
  • 小林 達則, 松田 忠和, 大崎 俊英, 船曵 定実, 柚木 正行, 村嶋 信尚, 岩藤 隆昭, 松田 和雄, 三村 久
    1988 年 49 巻 5 号 p. 917-921
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.昭和59年7月31日,右葉の肝細胞癌に対し前区域切除を施行.術後経過は良好であったが,昭和60年9月26日に初回吐血した.血管造影および食道内視鏡で門脈本幹の閉塞による食道静脈瘤からの出血と診断した.同年12月13日再吐血したため緊急に回結腸静脈・下大静脈吻合,摘脾,後胃静脈結紮を施行した.術後1カ月目より左上腹部に連続性雑音が聴取され,血管造影で脾動静脈瘻と診断した.無症状のため経過観察していたが,次第に食道静脈瘤の増悪を認め出血の危険が生じたため,昭和62年4月20日,膵尾合併切除を伴う脾動静脈瘻切除を施行し食道静脈瘤は軽快した.肝細胞癌の再発は現在みられていない.摘脾後の脾動静脈瘻の報告は海外に過去8例あるが,本邦では本症例が最初と思われた.
  • 落合 正宏, 船曵 孝彦, 天野 洋, 杉上 勝美, 藤田 真司, 福井 博志, 亀井 克彦, 松原 俊樹, 山口 久, 二渡 久智, 長谷 ...
    1988 年 49 巻 5 号 p. 922-927
    発行日: 1988/05/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    骨盤内臓器全摘術またはこれに準ずる手術の際に,開腹に先立ちまず腹膜外経路にて側方郭清を行い,次いで恥骨結合を切離開大して骨盤腔を側方に展開する方法を開発したが,今回, 55歳の女性の巨大S状結腸癌,子宮膀胱浸潤例に本法を施行し,有用性を検討した.本症例は小児頭大の腫瘤を形成し,骨盤内腔のほぼ全域を占め,可動性が乏しいため,術前には切除の困難性が示唆されたが,本術式により十分かつ容易に切除し得た.
    腹膜外側方郭清はリンパ節を含む脂肪織のen-bloc切除が行い易く,視野展開が良好で,手術時間の短縮がえられる等有利な点が多かった.また恥骨結合切離開大法は,骨盤側壁の外方への展開により深部操作が容易となること,および下部尿路の処理が直視下で行いうることなどの利点を有した.両者の組み合わせによる骨盤内手術はまた報告をみないが,巨大腫瘤,狭骨盤,肥満等の症例では極めて有用と考える.
feedback
Top