日本臨床外科医学会雑誌
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49 巻, 6 号
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  • 臨床および環境分離菌の比較検討
    神谷 保廣, 鶴賀 信篤, 保里 恵一, 鈴木 達也, 成田 洋, 村田 行孝, 林 周作, 橋本 俊, 由良 二郎
    1988 年 49 巻 6 号 p. 929-935
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    小児外科領域における黄色ブドウ球菌(黄色ブ菌)の検出状況について臨床および環境分離菌において検討した.教室における過去5年間の小児外科感染症(原発性感染性疾患および術後感染症)の集計では,黄色ブ菌の検出率は幼児・学童に比べ新生児および乳児において高い.また抗生剤感受性は術後感染症分離菌では低く, 2例にメチシリン耐性黄色ブ菌(methicillin resistant staphylococcus aureus: MRSA)を認めた.環境落下黄色ブ菌の分離状況は,小児系病棟において高頻度に分離されメチシリン耐性を示した黄色ブ菌は16.7%であった.また薬剤感受性は, MINO, AMK, AMPC+CVAに良好な感受性を認めた.
    臨床および環境において同様な結果を得たことから,小児外科の特殊性を配慮した環境汚染対策の重要性が示唆された.
  • 本田 宏, 阿岸 鉄三, 林 武利, 木原 健, 渕之上 昌平, 合谷 信行, 中沢 速和, 寺岡 慧, 太田 和夫, Rinnosuke ...
    1988 年 49 巻 6 号 p. 936-941
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    30例の手術不能進行癌患者に動注用カテーテル(vascular access device: VAD)を植込み,抗癌剤投与に局所温熱療法や大量抗癌剤投与時にはさらに活性炭血液灌流を併用して加療した.観察期間は平均7.85カ月で,固型癌化学療法直接判定基準によると12/30例(40.0%)にやや有効以上の効果を得た.
    治療中30例中8例(26.7%)に合併症を認めたが,合併症発生率を30名のVADの累積使用日数で表すと1合併症/841日と低率であった.合併症の内訳はVAD植込み局所の血腫2例,十二指腸潰瘍1例,殿部・会陰部潰瘍2例, VADカテーテルの閉塞3例で特に重篤なものはなかった.局所の血種やカテーテル閉塞などは手技や管理に習熟することにより発生が減少した.潰瘍に対してはよりsuperselectiveにカテーテルを留置するか,それが困難な場合には胃十二指腸動脈や上殿動脈を塞栓し,目的臓器以外への抗癌剤の漏出を防止することによって発生を防止しえた.植込み型カテーテルは,重篤な合併症もなく安全に動脈内注入化学療法に使用できるものと判断された.
  • 前田 長生
    1988 年 49 巻 6 号 p. 942-952
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    過去20年間に教室で経験した原発女性乳癌治癒切除376例を対象として,所属リンパ節転移の実態を中心に病理組織学的検討を加え,乳癌に対する外科治療の意義について遠隔治療成績に基づき検討し,以下の結論を得た.
    1) 内側症例の腫瘤径1cm以上および外側の腋窩転移陽性例には胸骨旁リンパ節郭清が必要と考えられた. 2) 大胸筋温存術式の適応は,胸骨旁リンパ節郭清の施行基準を加味し,腫瘤径が外側2cm以下・内側1cm以下で胸筋・筋膜に浸潤のみられない腋窩転移陰性例に限定されるものと考えられた. 3) 合併療法としての放射線照射は根治性や副作用の面から適応が極めて限られたものと考えられ,現時点では胸膜外胸骨旁リンパ節郭清による外科的治療が侵襲や局所の変形も少なく,遠隔成績の向上にとって,より合理性を持った治療法であると考えられた.
  • 箭本 浩, 浅越 辰男, 四方 淳一, 青木 明人
    1988 年 49 巻 6 号 p. 953-957
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    最近15年4カ月間の乳癌根治手術施行260例中の現在までの再発50例を検索対象として,乳癌術後再発様式を中心に検討した.その結果, (1)初発再発部位は,骨18例,リンパ節10例,肺9例,肝7例,対側乳房3例,脳2例,局所1例の順であった. (2)再発部位別にみた根治術から再発発現までの期間(潜在期間)の平均は,肝13カ月,局所15カ月,脳18カ月,肺28カ月,骨30カ月,リンパ節32カ月,対側乳房35カ月の順であった. (3)腫瘍径2cm以下(T0, T1)乳癌の再発症例は3例で,いずれも組織学的リンパ節転移陽性例であった. (4)リンパ節非転移(n0)症例の再発は8例で,そのうち腫瘍径では30mm以上のものが6例,組織型では充実腺管癌が7例を占めていた. (5)胸骨旁リンパ節転移陽性例中再発症例は9例あり,術後照射非施行例に再発が多い傾向がみられた.
  • 岩本 勲, 綾部 公愨, 川原 克信, 母里 正敏, 橋本 哲, 伊藤 重彦, 吉田 彰, 碇 秀樹, 富田 正雄
    1988 年 49 巻 6 号 p. 958-961
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    教室で経験した肺癌手術後に発生した乳糜胸は4症例である.症例の平均年齢は55歳で,肺癌の内訳は扁平上皮癌2例,腺癌2例である.術式は右上葉,中葉,下葉及び左上葉切除が各1例で,全例に縦隔のリンパ節郭清を施行している.乳糜胸の治療として3症例に保存的治療を行ったが,その内容はドレナージの持続吸引と脂肪食の制限又はMCTの投与及び高カロリー輸液療法を行い,概ね良好であった.其の内の1例は1日200~300mlの排液が続くため,胸膜癒着促進剤としてOK-432の胸腔内注入を試み良好な結果を得た.外科的治療として1症例は1日1,500mlを超える排液が続いたため胸管結紮術を行い順調な結果を得た.
  • 臨床的特徴,治療上の問題点について
    武田 浩一郎, 裏川 公章, 長畑 洋司, 安積 靖友, 伊藤 あつ子, 橋本 可成, 佐埜 勇, 斉藤 洋一, 内藤 伸三, 藤本 彊
    1988 年 49 巻 6 号 p. 962-969
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    高齢者では全身諸臓器の予備能低下や併存疾患の存在のため,胃十二指腸潰瘍穿孔症例の予後が不良であり特別な配慮が必要である.そこで最近10年間の神戸大学第1外科及び加古川市民病院で経験した胃十二指腸潰瘍穿孔59例のうち70歳以上の8例の予後に及ぼす背景因子について検討した.穿孔した8例のうち明確な潰瘍歴を有したのは4例(50.0%)で,他の4例(50.0%)には潰瘍歴がなかった.突発性上腹部痛とBlumberg徴候の陽性率は, 25.0%~37.5%にしか認めなかったが,腹部レントゲン写真上の遊離ガス像の出現は他の年代とほぼ同様に, 75.0%にみられた.高齢者潰瘍穿孔の死亡率は50.0%と極めて高率でその予後を規定する因子として治療を要する重篤な併存疾患の存在に加えて発症から手術までの経過時間が考えられた.高齢者潰瘍穿孔例では広範囲胃切除術を基本術式とするのが妥当と思われた.
  • 蒔田 富士雄, 宮本 幸男, 川井 忠和, 泉雄 勝
    1988 年 49 巻 6 号 p. 970-975
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    21年間に当教室で切除された早期胃癌380例のうち,再発死亡について検討した.現在までに46例の死亡が確認されたが,その内訳は,手術直接死亡2例,癌死亡17例,非癌死亡27例であった.非癌死亡の原因は,脳血管障害,心疾患,肺疾患が多かった.癌死亡17例のうち他臓器癌による死亡は4例,術後の残胃に新たに発生した癌のため死亡したもの4例,再発死亡は9例(再発死亡率2.5%)であった.再発死亡9例のうち治癒切除後の再発死亡は8例(再発死亡率2.1%)であった.これらを深達度別に見ると, m (粘膜内)癌の再発死亡率は1.0% (2/210), sm (粘膜下層)癌は3.7% (6/163)であった.そしてsm癌でも微小浸潤のものに比べて粘膜下層の深部にまで浸潤しているものは,再発死亡率が12.5%と高くなっていた.組織型では,分化型の再発死亡率が3.2%と未分化型の0.7%より高く,また,病理学的にリンパ節転移陽性例,脈管侵襲陽性例に早期胃癌再発死亡が多かった.
  • 橋本 芳徳, 伊福 真澄, 窪田 芙佐夫, 高田 俊夫, 南 寛行, 川渕 孝明, 中崎 隆行, 澤井 照光
    1988 年 49 巻 6 号 p. 976-981
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    当院における過去14年間の残胃癌,多発癌を除く胃癌切除症例は899例であり,このうちC領域に限局する癌は98例(10.9%)である.このうち,西らの定義による噴門部癌は37例であり,切除胃癌の4.1%を占めている.この噴門部癌と,これを除くC領域限局癌を比較検討し,噴門部癌の特徴を明らかにした.すなわち,噴門部癌は男性に圧倒的に多く,女性の頻度の4.3倍である.早期癌では,肉眼型はIIcを中心とした陥凹型が多く,組織型は分化型癌が多い.進行癌では,肉眼型はBorrmann 3型が多く,組織型では分化型癌が多いが未分化型癌とほとんど差はみられない.治癒切除例の5年生存率は67.6%であった.
  • 尾形 新一郎, 宮地 和人, 土井 誠章, 原 信寿, 神尾 博, 難波 美津雄, 武藤 邦彦, 池口 祥一, 信田 重光
    1988 年 49 巻 6 号 p. 982-987
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    術前血清CEA値を測定しえた大腸癌123例について臨床病理学的検討を加えた.血清CEA値はEIA法で測定し5.1ng/ml以上を陽性とした.当教室における術前血清CEA値陽性率は50.8%であり,病期別にみるとI 9.1%, II 50.9%, III 38.9%, IV 33.3%, V88.9%であった.また腫瘍の最大径が2cm以下では全症例陰性であった.病理学的評価はリンパ管侵襲,静脈侵襲,壁深達度について行い,その結果血清CEA値は肝転移,腹膜転移,漿膜浸潤,リンパ管侵襲の程度と相関し,リンパ節転移,静脈侵襲の程度とは相関を認めなかった.また壁深達度ではpm以下の群は低値を示した.以上より術前血清CEA値は癌進行度や治癒切除の可能性を示唆する一つの指標と考えられる.
  • 稲吉 厚, 岡本 実, 林田 信夫, 師井 良知, 八木 泰志, 池田 恒紀
    1988 年 49 巻 6 号 p. 988-995
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    当センターで最近の5年間に経験した肝嚢胞108例,肝膿瘍17例,肝内血腫4例の計129例のうち,肝嚢胞7例,肝膿瘍15例,肝内血腫1例の計23例に超音波ガイド下穿刺術による治療を施行した.超音波ガイド下穿刺ドレナージ術を施行した肝膿瘍15例中13例と肝内血腫の1例で,膿瘍または血腫の縮小および消失を認め有効であった.肝嚢胞の7例に対しては,超音波ガイド下穿刺による無水エタノール注入療法を施行し,全例に縮小を認めた.また, 15cm以上の巨大嚢胞に対しては,エタノールの繰り返し注入が必要であると考えられ,嚢胞内容の持続ドレナージ後のエタノール注入が有効であった.また,無水エタノール注入療法後の肝嚢胞壁の組織像は,上皮細胞の広範な剥離消失と壁内に散在する出血,変性,壊死像であった.肝嚢胞性疾患に対する超音波ガイド下穿刺術による治療は,簡単でかつ侵襲が少ないという利点があり,今後は肝嚢胞性疾患の有用な治療法になりうると考えられた.
  • 野津 史博, 飯田 直宏, 山本 透, 木内 俊一郎, 武山 直志, 田中 孝也
    1988 年 49 巻 6 号 p. 996-1001
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    重症破傷風に対してバルビタール療法が奏効した3例を経験したので若干の考察を加えて報告した.
    破傷風では抗毒素療法に加えて頻発する痙攣もしくは痙攣重積状態に対する治療が重要となる. 3症例にたいして痙攣抑制の目的にてサイアミラール4mg/kg/hを維持量として投与し,ほぼ完全に痙攣を抑制しえた.本療法の留意点としては人工呼吸器が必要なこと,喀痰の増加に伴う肺合併症の出現,心不全,低血圧などであり,中止時期としては, 1~2週間,痙攣が完全に抑制された時期を選択すべきであり,必ず, 2~3日,投与量を漸減せしめたのち中止すべきである.
  • 杉浦 勇人, 末永 昌宏, 岡田 喜克, 上原 伸一, 神谷 勲, 藤田 真司, 立松 正衛, 立松 恵子
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1002-1007
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    49歳女性の巨大な発育を示し,片側内頸静脈,反回神経および一部食道筋層を合併切除して摘出できた進行甲状腺癌の1症例を報告する.腫瘍は頸部全体を占め,術前から嗄声,嚥下時違和感および頸部の運動制限が見られた.術前検査にて左の内頸静脈は造影されず,総頸動脈は外下方,気管は右方に著明に圧排されており,食道への直接浸潤も疑われた.切除した腫瘍は15×15cmの一部に嚢腫部分を含んだ多房性で甲状腺左葉全体を占め中心部は充実性であった.内頸静脈,反回神経は完全に腫瘍内に含まれ,食道筋層にも数cmにわたり直接浸潤していた.総頸動脈および気管への直接浸潤は見られず剥離可能であった.病理検査では乳頭腺癌で食道筋層への直接浸潤が認められた.
  • 大野 一英, 高井 満, 小幡 五郎, 高橋 誠, 小川 正憲, 升田 吉雄, 加治 文也, 浅沼 勝美
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1008-1012
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    縦隔内に発生したhemangiopericytomaを経験したので報告する. Hemangiopercytoma (血管周皮細胞腫)は比較的まれな腫瘍であり,我が国においては1913年の太田の報告以来210例を数えるのみである.この腫瘍細胞はpericyteよりなり鍍銀染色にて特有な構造をしめす.腫瘍の発生部位は体のどの部位からも起こりうるが,下肢,後腹膜に多い.今回,われわれの経験した縦隔内の報告は極めて少ない.診断にはCT,血管造影が有用である.治療法は外科的切除が最も良く,放射線治療,化学療法は効果的ではない.生存率は腫瘍の大きさに逆比例している.われわれの症例は現在切除後1年経つが再発の兆候はみられていない.
  • 岡本 雅彦, 白方 秀二, 佐藤 伸一, 岡 隆宏
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1013-1016
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    われわれは脾動脈瘤と腹部大動脈瘤を合併した比較的稀な1例を経験した.症例は71歳女性で,高血圧症のため内科入院中,拍動性腹部腫瘤を指摘され,腹部大動脈造影の結果,腎動脈分岐部直下に8cm×10cm大の腹部大動脈瘤を認め,同時に脾動脈にも1.2cm×1.2cmの動脈瘤を認めた.破裂防止のため手術は, Y字型人工血管による腹部大動脈再建と,脾動脈瘤を含めた脾摘術を行った.摘出標本の病理組織学的所見では,腹部大動脈瘤,脾動脈瘤ともに,動脈硬化性であった.
    脾動脈瘤は比較的稀な疾患であり,本邦での報告は,文献上集め得た限りでは自験例を含めて159例にすぎない.本症例のような腹部大動脈瘤の合併はさらに稀だと思われるので,若干の文献的考察を加えてここに報告する.
  • 久保 速三, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 土屋 邦之, 池 正敏, 上田 泰章
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1017-1020
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    好酸球性胃腸炎は消化管壁への好酸球の瀰漫性浸潤を認める原因不明の疾患である.胃前底部を好発部位とする.欧米における報告が多く見られるのに比し,本邦での報告はいまだ少数である.
    本症例は,胃体上部の潰瘍性病変として発生し,保存的治療に反応しないため,悪性病変を否定しきれず,胃亜全摘術を施行した.術後の病理組織学的検索によって好酸球性胃炎と診断されたものである.
  • 沈 秀明, 鈴木 正康, 佐藤 晴男, 平岩 克正, 亀岡 伸樹, 新実 紀二, 市川 正章
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1021-1029
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    十二指腸平滑筋腫(以下筋腫)と平滑筋肉腫(以下筋肉腫)は比較的稀な疾患であり,両者の正確な診断並びに鑑別診断は必らずしも容易ではない.
    著者らは筋腫165例(1935~1985年,自験例含む),筋肉腫126例(1975~1985年,自験例含む)を集計報告し,文献的考察を行った.
    1) 症状として筋腫は下血,筋肉腫は腹部腫瘤が最も多い. 2) 胃十二指腸造影で胃十二指腸圧排,十二指腸窓開大,瘻孔,空洞等がみられれば筋肉腫の可能性が高い. 3) 超音波・CTで筋肉腫は多彩な所見を呈す. 4) 血管造影でencasementがみられれば筋肉腫の可能性が高い. 5) 筋腫は2~5cm,筋肉腫は10~15cmの大きさが最も多かった. 6) 筋肉腫はしばしば肝転移を示す.
    以上の特徴から治療方針の決定には組織学的所見以外に腫瘍の大きさ・性状,特に生物学的悪性度を参考にすべきであると考える.
  • 渡辺 俊明, 成高 義彦, 吉沢 修一, 石川 信也, 熊沢 健一, 矢川 裕一, 菊池 友允, 芳賀 駿介, 小川 健治, 梶原 哲郎, ...
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1030-1033
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍は,術前に診断することが困難であるといわれている.下血・腹痛を主訴とし,術前の血管造影にて出血性小腸良性腫瘍と診断しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は47歳の男性で,主訴は下血および腹痛.入院時高度の貧血を認めた.上部および下部消化管の精査では出血源を思わせるような病変は認めなかった.小腸の病変からの出血を疑い.血管造影を施行した.空腸動脈より輸入動脈を分岐する腫瘍濃染像を認めた.出血性小腸良性腫瘍と診断し,緊急手術を施行した.トライツ靱帯より230cm肛門側に一部血管露出を伴う腫瘍を認め,切除した.病理組織学的には空腸平滑筋腫であった.
    本症例のように,下血を来たす小腸腫瘍を疑った際には,血管造影,殊にデジタル,サブトラクション・アンギオグラフィー(DSA)が有用と思われる.
  • 山中 定二, 迎山 恭臣, 冨士原 正人, 良河 光一, 中村 和夫, 北沢 荘平, 前田 盛, 杉山 武敏, 寺師 弘泰
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1034-1039
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は, 26歳女性で乾性咳嗽を主訴として来院し,胸部X線検査などで縦隔腫瘍を指摘され摘出術を受けた.手術所見ならびに病理組織検査で縦隔の悪性神経鞘腫と診断された.術後経過良好であったが,術後1年3カ月目に急性腹症の診断で開腹術を受け,小腸の平滑筋肉腫を発見された. retrospectiveな検討の結果,縦隔腫瘍は小腸平滑筋肉腫の転移であることが判明した.
    小腸平滑筋肉腫は術前診断が難しく,転移巣が原発巣より先に発見される場合もあるが,縦隔への転移は極めて稀である.組織学的には平滑筋肉腫と悪性神経鞘腫は鑑別を要するが,病巣部位により原発部位を思わせ,本例の如く診断困難な例もある.両者を鑑別するには最近市販になったPAP法によるS-100蛋白染色等を用い確実に鑑別診断を行うことが今後要請される.
  • 上岡 克彦, 山中 雄二, 林 周作, 加藤 克己, 宇佐見 詞津夫, 大久保 憲, 小谷 彦蔵
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1040-1043
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    成人では比較的稀な臍腸管遺残によるイレウスを2例経験した.
    症例は43歳と20歳の男性.両症例とも腹部手術の既往はなく術前診断はそれぞれ原因不明のイレウス,穿孔性虫垂炎であった.
    いずれも緊急手術が行われた.イレウスは,メッケル憩室と憩室から臍へ続く索状物に起因していた.その発生機序は索状物・憩室による小腸の圧迫と,索状物・憩室を中心とする小腸の捻転であった.
    治療として両症例とも索状物・憩室を含む回腸切除,端々吻合が行われた.
    腹部手術の既往のないイレウス症例では,成人症例においても鑑別診断として本疾患を考慮する必要がある.また手術に際しては,臍に接して憩室・索状物を切離し,臍付近に粘膜を遺残させないように注意が必要である.
  • 特にその発生母細胞についての考察
    宇佐見 詞津夫, 安井 保, 小林 建司, 南 宗人, 林 周作, 大久保 憲, 小谷 彦蔵, 若菜 久男, 由良 二郎
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1044-1050
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    従来までに本邦において直腸カルチノイドは比較的稀な疾患とされ,しかも,そのほとんどは良性カルチノイドであった. 1982年までの報告では転移性カルチノイドは本邦では25症例の報告があった.
    最近10年間にわれわれの施設で7例の直腸カルチノイドを経験し,そのうち3例に肝転移,骨転移を認めたので報告すると共に今回6例の直腸カルチノイドの全ての症例にNeuron-specific Enolaseの存在を酵素抗体法にて染色し全例陽性であったため,これらを検討し,直腸カルチノイド発生母細胞について考察を加えた.
  • 石川 雅彦, 鮫島 夏樹, 松下 元夫, 柴野 信夫, 菱山 四郎治
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1051-1055
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    消化管平滑筋肉腫は比較的稀であるが,近年は報告例が増加してきている.本症は肝転移が多いという特徴をもち,予後不良なことから,転移性肝平滑筋肉腫に対して手術的治療が施行されることは少なかった.今回,直腸を原発とする平滑筋肉腫の術後,腹部CT検査にて肝右葉にlow density areaを認め,肝転移と考え,肝右葉部分切除を施行し,組織学的にも平滑筋肉腫の肝転移と診断された症例を経験した.本症の術前診断は臨床症状や臨床検査でも特異的なものがないため,一般的に困難であり,経過観察中に超音波検査やCT検査等により,肝転移を早期に発見する必要があると考えられた.また,平滑筋肉腫の肝転移巣に対する可及的な腫瘍切除術は,十分に延命効果が期待されるので,外科的療法の可能性を考慮すべきであると考えられた.
  • 巾 秀俊, 幕内 雅敏, 渡辺 治, 石川 正志, 根本 雅明, 山崎 普, 長谷川 博, 高安 賢一, 森山 紀之, 広橋 説雄
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1056-1062
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    26歳男性,偶然超音波検査により肝右葉に8mmφのhyperechoicな腫瘤が発見された.血管造影では腫瘤は車軸状の血管配列は見られず,ごく軽度の腫瘍濃染像が一枚の写真のみに描出された.単純およびbolus CTではlow density areaとして描出されたが, angio-CTでは高度に濃染された.以上の諸検査の結果から肝細胞癌も否定できず,また明らかな増大傾向を示すため手術を施行した.病理組織診断は肝細胞腺腫(HCA)であった.
    本症例は若年男性で,ホルモン剤などの服用もない正常肝に発生した点, doubling time 96日でangio-CTでhypervascularな腫瘍として描出された点が臨床上興味深い.なお本邦においてはHCAは稀な疾患で,現在までに37例の報告があるのみである.
  • 尾関 豊, 鬼束 惇義, 林 勝知, 日野 晃紹, 矢野 好弘, 広瀬 光男, 下川 邦泰
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1063-1068
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌による胆管侵襲およびリンパ節転移は切除例では比較的めずらしく,また,胆管細胞癌との鑑別を困難にする.
    症例は64歳,男.他疾患にて入院中,肝腫瘍を発見された.画像診断で内側区域に最大径約4cmの腫瘤を認め,左外側下胆管枝の拡張,肝内転移巣と思われる約1cmの小病巣および12番リンパ節腫脹を認めた.α-fetoproteinは48ng/mlであった.拡張胆管の穿刺造影では胆管の不整閉塞を認めた.胆管細胞癌の疑いで,手術を行った.転移リンパ節の術中組織診で肝細胞癌の診断をえ,リンパ節郭清を伴う拡大肝左葉切除術を施行した.組織学的に病巣全体が肝細胞癌で,肝内転移巣と思われた病巣は門脈腫瘍栓であった.二期的に大動脈周囲リンパ節郭清も施行した.
    胆管拡張を伴う肝腫瘍の鑑別診断について考察した.胆管拡張のみから胆管細胞癌と診断するべきではなく,他の所見の総合判断が必要である.
  • 太田 哲生, 西村 元一, 渡辺 俊雄, 上田 順彦, 前田 基一, 萱原 正都, 上野 桂一, 八木 雅夫, 永川 宅和, 宮崎 逸夫
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1069-1072
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    右下腹部痛を主訴に来院した72歳男性に対し腹部超音波検査を行い,術前に胆嚢捻転症と診断し,緊急手術にて救命しえた1例を経験したので報告した.術前に施行した腹部超音波検査では, 1) 著しい胆嚢の腫大, 2) 胆嚢壁の全周性肥厚, 3) 胆嚢の位置異常, 4) 胆嚢の内部エコーがfreeであることに加え, 5) 胆嚢頚部での捻転部位が高エコーレベルに描出されているのが観察された.これらの所見は胆嚢捻転症に極めて特徴的な画像所見であり,したがって,腹痛患者に対し胆嚢捻転症の存在を念頭において腹部超音波検査を施行することで,今後さらに術前診断される症例が増加するものと思われた.
  • 深町 信介, 高橋 雅明, 永井 信行, 青木 信彦, 森田 建, 菅 優, 高橋 篤, 池 薫
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1073-1076
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    急性気腫性胆嚢炎を1例経験し,術前の確定診断に腹部CT検査が極めて有用であったので報告する.
    症例は49歳,男性.既往歴に異常なく,心窩部痛で入院し,腹部単純X線写真にて胆嚢の輪郭に一致する弧状のガス像を認め,腹部CT検査で胆嚢内に鏡面像と胆嚢壁内のガス像を認めたことより急性気腫性胆嚢炎と診断された.緊急に胆嚢摘出術が施行された.手術時の胆嚢は腫大し,壊疽性胆嚢炎を呈しており,胆嚢管には細いビリルビン石灰石が嵌頓していた.術中胆汁細菌培養の結果は陽性で, Bacteroides属が検出された.病理組織学的所見では壊疽性胆嚢炎と粘膜内の気腫による空胞の存在を認めた.術後経過は良好であった.近年の画像診断の進歩により,本症の早期診断が可能となり手術の危険度を減じることが可能なので,治療は全身状態が許せば早期に手術を行うべきであると考える.
  • 長谷川 浩, 高田 忠敬, 安田 秀喜, 内山 勝弘, 四方 淳一
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1077-1082
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    膵炎における血漿交換は逸脱膵酵素の除去がその効果として期待される.一方,多臓器不全なかでも腎不全はその発生頻度は少なくなく血液透析も重症例では有効な治療法と考えられる.今回われわれは,血漿交換と血液透析の併用療法によって治癒しえた重症膵炎の1例を経験した.症例は27歳,飲酒歴のある男性.心窩部痛および腹部膨満などの腹部所見,ショック状態を呈し入院.重症急性膵炎の診断で積極的保存的治療を行っていたが,入院後,腎不全・肝不全・意識障害が出現し入院後10日目から血漿交換と血液透析をそれぞれフィルターを直列につなぎ同時に計3回施行した.これにより血液生化学所見および臨床症状の著明な改善を認めその後合併症もなく治癒した.入院時CT・SCOREは22点と高値であったが5カ月後の退院時には0点と回復した.
  • 黒川 善栄, 桐岡 智二, 神谷 順一, 梶田 正文
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1083-1087
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は微熱と全身倦怠感を主訴とした59歳の男性である.肺の腺扁平上皮癌のため1年3カ月前に左下葉切除術を施行した既往がある.腹部CT,腹部エコー,血管造影らの画像診断で左副腎腫瘍と診断した.この腫瘍は他臓器の合併切除を必要としたが完全に切除でき,病理組織学的検索にて肺癌の転移性腫瘍と診断した.自験例のごとく他の臓器に転移を認めない場合,転移性副腎腫瘍を積極的に切除することは意義のあることと考えられた.
  • 伊藤 公一, 堀澤 増雅, 秋山 清次, 小池 明, 嶋地 崇, 高橋 洋平
    1988 年 49 巻 6 号 p. 1088-1094
    発行日: 1988/06/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で,下血を主訴とし近医で直腸癌と診断され当院へ紹介入院となった.諸検査の結果,直腸に2カ所の腫瘍性病変を認め,それぞれ原発性直腸癌,前立腺癌の直腸浸潤と診断された.両病変部を一括切除するため骨盤内臓器全摘術が施行され,術後の病理所見で両変部は共に前立腺癌の直腸浸潤であることが判明した.
    前立腺癌の直腸浸潤は少なく,進行前立腺癌の10%以下と報告されているが,本症例のごとく2カ所の独立した直腸粘膜浸潤を呈した例はさらに稀である.また,患者がKlinfelter症候群であったことにも興味が持たれた.
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