日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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49 巻, 7 号
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  • とくに総アミノ酸,必須アミノ酸,非泌須アミノ酸について
    福井 四郎, 島津 元秀, 青木 春夫, 水島 康博, 藤井 惇, 池山 淳, 松浦 〓二, 早坂 滉
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1125-1130
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    肝硬変症について, (A) 甲型肝硬変症25名,乙型肝硬変症15名, (B) 非脳症群30名,脳症群10名, (C) 乙型肝硬変症の起因症である脂肪肝10名,肝線維症23名,甲型肝硬変症の起因症である亜急性肝炎15名にわけて,術前術後の栄養管理の指標となるべく,血清中の総アミノ酸濃度を中心に検討し次の結果を得た.
    1) 必須アミノ酸濃度はいずれの肝硬変症においても正常値より低下している.(甲型↓<乙型↓,脳症群↓>非脳症群)
    2) 非必須アミノ酸濃度はいずれの肝硬変症においても正常値より増加している.(甲型↑>乙型↑,脳症群↑>非脳症群)
    3) 総アミノ酸濃度,必須アミノ酸濃度,非必須アミノ酸濃度, N/Eのいずれにおいても乙型肝硬変症はその起因症である脂肪肝,肝線維症群に近似し,甲型肝硬変症はその起因症である亜急性肝炎に近似している.
    したがって,これらはいずれも肝硬変症を伴った患者の術前術後の栄養管理の指標となり得る.
  • 菊地 秀樹, 〓野 繁雄, 劔物 修
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1131-1134
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    侵襲の大きな手術では,術中及び術後にかけて高アルドステロン状態となり, Mgの排泄が増加して血清Mg濃度が低下することが指摘されている.そこで,全身麻酔下の消化器手術症例51例を対象として,術中及び術後3日目までの血清Mg濃度の推移を測定し(対照群27例),またカンレノ酸カリウム(ソルダクトン®)の血清Mg濃度に対する効果について(投与群24例)検討した.
    対照群の平均血清Mg濃度は,麻酔導入前1.74±0.37mg/100mlであったものが麻酔終了時より低下し,術後2日目には1.50±0.36mg/100mlと最低となり,術後3日目も麻酔導入前と比較すれば有意に低下したままであった.さらに, 1.3mg/100ml以下のいわゆる低Mg血症が2例認められた.これに対し投与群では,麻酔導入前の1.77±0.28mg/100mlから術後2日目には1.66±0.25mg/100mlまで低下したが,術後3日目には1.77±0.27mg/100mlとほぼ術前値に回復した.また低Mg血症はいずれの症例でも認められなかった.
    これらの結果より,開腹手術時には血清Mg濃度は低下し,この血清Mg濃度の低下はカンレノ酸カリウムにより抑えられることが示唆された.
  • 岩崎 博幸, 呉 吉煥, 真鍋 嘉尚, 鈴木 章, 杉野 公則, 後藤 久, 松本 昭彦, 伊藤 國彦, 細田 泰弘
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1135-1139
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    甲状腺濾胞癌の血管侵襲を詳細に調べるため,原発巣の病理組織標本に, HE染色,ビクトリアブルー・HE重染色,第VIII因子染色を行い,血管の染色性の優劣を比較検討し,血管侵襲と臨床所見についても検討した.対象は横浜市立大学第1外科および伊藤病院で過去10年間に手術を行った甲状腺濾胞癌48例である.血管侵襲像の判定は腫瘍細胞巣が血管内腔に認められ,かつ血管の内皮が全周にわたり保たれているものとした.結果は,第VIII因子染色を行うと, 48例中31例(64.6%)に血管侵襲像を認めたが,ビクトリアブルー・HE重染色では20.8%, HE染色では8.3%といずれも第VIII因子染色には及ばなかった.
    また血管侵襲と腫瘍径との関係を検討したところ, t1, t2症例では,血管侵襲陽性例が50%弱なのに対し, t3, t4症例では80%を越え, 5%以下の危険率で統計学的に有意差を認めた.さらに血管侵襲陽性例の平均年齢は陰性例に比べ有意に高かった.
  • とくにpm癌との比較において
    胡 祥, 岡島 邦雄, 山田 真一, 磯崎 博司
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1140-1146
    発行日: 1988年
    公開日: 2012/07/12
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対する合理的な手術,すなわち適正なリンパ節郭清の範囲を求める目的で1978年8月より1986年12月までに大阪医科大学一般・消化器外科において切除された早期胃癌(R2以上郭清例)274例を同時期のpm癌82例と比較し,リンパ節転移の特徴,早期胃癌の発育,進展様式および遠隔成績につき検討した.その結果,リンパ節転移率はm 癌4.9 % , sm-1癌7.9% , sm-2癌22.4%, pm癌45.1%であった.早期胃癌では, C領域には転移を認めなかったが, A領域の低分化型癌には19.4%の高率なリンパ節転移がみられた. sm-2癌中U1(+)群, 発育様式H 型, 進展様式微小点在型はpm癌と同程度の高率なリンパ節転移を認めた. 以上の転移率の検討から原則として, 早期胃癌に対するリンパ節郭清はR2または重点的なR3郭清が必要と考えられるが, C領域での早期胃癌の内, 長径1cm未満のものに対しては縮小手術の適応になる可能性があると考えられる.
  • 村上 義昭, 布袋 裕士, 津村 裕昭, 中井 志郎, 角 重信, 増田 哲彦
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1147-1153
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    われわれは,最近9年間にm癌93例, sm癌112例の205例の早期胃癌を経験したので統計的考察を行った.これら早期胃癌は,全切除胃癌の33.2%を占め,年々増加の傾向にあった.全体では,年齢は平均59.1歳,男女比は2.25:1,腫瘍最大径は平均3.28cmで,分化型癌が約7割を占めていた.また, M, A,小弯に多く発生し,陥凹型が大部分を占め,リンパ節転移率7.8%,リンパ管侵襲率13.7%,静脈侵襲率2.4%であった. m, sm癌の比較では, sm癌はm癌に比べて,有意差をもって,腫瘍最大径が大きく, sig症例が少なくpor症例が多く,また,リンパ節転移率,リンパ管侵襲陽性率が高かった.また, sm癌におけるリンパ節転移についての検討では,小弯,中間型, ly(+), v(+)の症例に有意にリンパ節転移率が高い傾向を認めた.しかし,積極的にリンパ節郭清の縮小を施行すべき条件は見いだし得ず,今後の症例の検討が必要で,現時点においては,早期胃癌に対しては2群リンパ節郭清が必要と考える.
  • 神頭 定彦, 草間 次郎, 飯田 太
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1154-1159
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    最近約20年間に経験した早期胃癌手術症例100例, 109病変について臨床的,病理組織学的に検討した.年齢・性別頻度では40歳代以上に多く,とくに60歳代は48%を占め,男女比は3.8:1であった.肉眼型は陥凹型,隆起型ついで降起型と陥凹型の混合型の順に多く,平坦型およびその混合型は少なかった.病変部位別頻度はA>M>C,小弯>後壁>前壁>大弯の順で,隆起型は前庭部に,陥凹型は体部小弯に多かった.深達度別ではm癌54.1%, sm癌45.9%で,とくに隆起型ではm癌がsm癌の2倍以上あった.組織型別頻度では分化型腺癌が74.3%と高率であった.脈管侵襲はリンパ管侵襲及び静脈侵襲のいずれもsm癌に多かった.周囲組織への浸潤増殖様式はm癌はINFα, INFβが多く, sm癌はINFβ, IFNγが多かった.重複癌は同時性13例,異時性5例であった. 5年生存率は98.3%であり,胃癌再発死は1例のみでほぼ満足できる成績であった.
  • 鈴木 丹次, 中野 眼一, 武川 啓一, 坂本 孝作, 栗原 透, 長町 幸雄
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1160-1168
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    1970年より1984年までに教室で治癒切除を施行したstage III胃癌症例の予後を,術後化学療法の有無により比較検討した.
    化学療法無施行例45例の5年生存率は33.3%であった.このうち最大腫瘍径が7.1cm以上,転移陽性リンパ節部位が3箇所以上,転移陽性リンパ節総数が4個以上,手術前後の総輸血量が601cc以上の症例で再発率が高く予後不良となっていた.
    化学療法施行例45例のうち, MMCが30mg以上, 5-FUが20g以上, FT-207が50g以上のいずれかが投与された17例の5年生存率は64.7%と良好で(p<0.05),他の28例の5年生存率は32.1%と無施行例のそれとかわりがなかった.しかし,化学療法の効果は,転移陽性リンパ節部位が2箇所以内,転移陽性リンパ節総数が3個以内のstage III胃癌で認められ,リンパ節転移の著しい症例の化学療法に当っては,従来と異なった工夫が必要であると考えられた.
  • 橋本 可成, 裏川 公章, 伊藤 あつ子, 長畑 洋司, 安積 靖友, 武田 浩一郎, 佐埜 勇, 斉藤 洋一
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1169-1175
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎61例(男34例,女27例)の臨床像と治療成績について検討し以下の結論をえた.推定発病時年齢は10~30歳台が61例中47例(77%)と多数を占めた.初発症状は粘血便77%,下痢66%,腹痛23%などを重複し有していた.治療は内科的治療50例と手術11例(緊急・準緊急4例,待期7例)であり,緊急・準緊急手術の適応は穿孔2例,激症型2例でその死亡率は50%と高率であった.待期手術は内科的治療5年未満4例では活動期/観察期間50%以上,年平均再燃回数1.3回以上の症例で, 5年以上2例ではプレドニン使用量が10,000mg以上のステロイド離脱困難例であった.発癌は24年経過した全大腸炎型,再燃緩解型の1例に認めた(発癌率1.6%).重症型(激症型を含む)については保存的治療に固執することなく手術のタイミングに留意することが緊急手術の死亡率の低下につながると考えられた.
  • 安達 亘, 三輪 裕通, 高橋 千治, 堀米 直人, 梶川 昌二, 飯田 太, 島田 寔
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1176-1182
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎を伴った下部消化管穿孔50例の原因,診断,治療および予後について検討した.
    穿孔の原因については外傷性穿孔22例では交通外傷によるものが,続発性穿孔15例では大腸癌,放射線腸炎によるものが多かった.また特発性穿孔は7例,医原性穿孔は6例であった.
    消化管穿孔の診断は理学所見より比較的容易であったが,白血球増多例は43%と低率であり, free airは61%に認められた. Free airの出現について検討すると,小腸穿孔43%,大腸穿孔73%であり,また穿孔後の経過時間が長い症例でfree airの出現頻度が高かった.手術術式は単純閉鎖あるいは腸管切除吻合が多くを占め,死亡例は9例(18%)であった.術前にショック状態を示した症例は予後不良であったが,予後の向上のためには早期診断と確実な手術が必要と思われた.
  • CEA, CA19-9, TPAを中心に
    西田 修, 白戸 博志, 大村 孝志, 青木 茂, 佐藤 直樹, 真鍋 邦彦, 近藤 征文, 佐野 文男, 内野 純一
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1183-1187
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    大腸癌における術前血清腫瘍マーカーCEA, CA19-9, TPA, Ferritin, POAの臨床的意義につき検討した.ポリクローナルCEAは142例,モノクローナルCEAは56例で測定したが, stage IVまではモノクローナル値の方が低値で, stage Vのみ高値を示した. CA19-9 (53例)のefficiencyは64%とCEAと同様であったが, stageとの相関はCEAに劣った. TPA (48例)はfalse positiveが37.5%と高く, CEA, CA19-9に比較してefficiencyが劣った. Ferritin (40例)はstage IVまで総て陰性で,陽性例は肝転移に限られた. POA (19例)は陽性率も低く,大腸癌における有用性はみとめられなかった. CEA, CA19-9, TPAの同一血清による測定は49例で行われたが,総てに陽性を示したものは16.3%にすぎず,また, TPAにもこれのみ陽性のものが12.2%あり, combination assayの重要性を強調したい.
  • 阿岸 鉄三, 木原 健, 本田 宏, 中沢 速和, 寺岡 慧, 渕之上 昌平
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1188-1192
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    植え込み型カテーテルシステムであるvascular access deviceからの選択的抗癌剤動注とRF波発信による局所温熱の併用により22名の手術不能肝癌患者を治療した結果を報告した.
    MR以上77.2%, PR以上45.5%という癌縮小効果が得られた.
    さらに,この治療法導入初期に活性炭血液潅流下に抗癌剤大量動注を行った症例では, MR以上83.3%, PR以上50.0%という高い有効性が得られた.
    重篤な合併症は認められなかった.
    高濃度抗癌剤動注と局所温熱の相乗効果を期待できる方法と考えられ,積極的な適用が勧められる.
  • 国枝 克行, 吉田 明彦, 中條 武, 佐治 重豊, 浅野 雅嘉, 梅本 敬夫, 国枝 篤郎, 右納 隆, 祁 陳鳳
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1193-1199
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    いわゆる術後紅皮症は術後経過順調でありながら,術後1~2週間後に突然高熱,猩紅熱様発疹,白血球減少を来し極めて予後不良の経過をたどる症候群である.教室と関連病院で4例を経験したので報告した.症例1は58歳男性で小腸平滑筋肉腫にて腫瘍摘出術が施行された.術後経過は良好だったが, 8日目に突然の発熱,ついで全身発疹,顆粒球減少を来し,濃厚治療にかかわらず発症後12日目に死亡した.剖検にて特徴的な皮膚所見と骨髄低形成像が得られた.症例2は77歳女性で胃癌にて胃亜全摘術施行後, 10日目より同様の症状を呈し,発症後10日目に死亡した.症例3は52歳の女性で胆石症の診断で胆嚢摘出術が施行され,経過順調であったが術後10日目より同様の症状が発現し,発症後18日目に死亡した.症例4は4歳の男児で, VSD開心根治術後6日目より発症し,発症後30日目に死亡した. 4症例とも輸血されておりGVHD反応や抗生物質の関与が推察された.
  • 伊藤 重彦, 大江 久圀, 赤嶺 晋治, 徳山 昇, 添田 修, 仲野 祐輔, 谷口 秀樹, 辻野 直之, 富田 正雄
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1200-1202
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    胸部外傷手術後に発生した乳糜胸4例を,経験したので報告した. 2例は肺癌術後であり,縦隔腫瘍,食道閉鎖手術後に発生したものが各1例づつであった.乳糜胸は一般的には,保存的治療により治癒可能であったが,重症例では,低蛋白血症,低栄養により致命的となる場合もあるので栄養管理上の適切な治療が必要である. OK432胸腔内投与は,本症例の新しい強力な治療法として,推奨される方法であると思われ,新生児期の治療についても言及した.
  • 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 金広 啓一, 浜中 喜晴, 石原 浩, 松浦 雄一郎, 石原 晋
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1203-1208
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    高齢者の開心術においては,併存する呼吸器障害や動脈硬化症等により,術後重篤な合併症を起こし,治療に難渋することがある.今回,慢性気管支炎と下肢の閉塞性動脈硬化症を持った78歳の大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(NYHA IV度, Hugh Jones III度)に対し,救命の為に大動脈弁置換術を行ったが,術後心不全と肺炎を続発した.そこでこれら合併症に対し,以下の工夫を行い救命し得た.術後心不全に対しては, IABPを挿入したが,通常の大腿動脈よりの挿入は不可能で,左総腸骨動脈より人工血管を通じて挿入した.左下肢の血流保持の為に,左腋窩-大腿永久バイパスも設置した.左肺に対しては,分離肺換気とSelective PEEPを行い,選択的に左無気肺を治療し,更に抜管後は,甲状輪状靱帯部に,内径4mmの気管吸引カニューレ(Mini-trach®)を穿刺挿入して,喀痰吸引を行い,肺炎も完治せしめた.
  • 自験6例と本邦報告182例の検討
    成田 洋, 橋本 俊, 鈴木 達也, 神谷 保廣, 村田 行孝, 林 周作, 鶴賀 信篤, 由良 二郎
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1209-1214
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    先天性食道狭窄症は,狭窄原因により気管原基迷入,筋性・線維性,粘膜異常の3群に大きく分類されるが,その各々で治療方針も異なるため,術前に狭窄原因を明らかにしておくことが重要である.そこで先天性食道狭窄症の自験6例,本邦報告182例を対象に狭窄原因別にみた臨床上の特徴点を比較検討した.
    症状発現時期は気管原基迷入例の多くが生後6カ月前後であるのに対し,筋性・線維性例や粘膜異常例では生後早期からの発症例が多い.狭窄部位は気管原基迷入例においては全例が下部食道であったが,筋性線維性例や粘膜異常例では下部食道狭窄の発生率が各々73%, 37%で,その原因により若干の差異を認めた.また広範囲狭窄例はすべて筋性・線維性例であった.一方食道造影,食道内視鏡検査,食道胃内圧測定では狭窄原因に基づく特徴的な所見は見出し得ず,これらの検査により狭窄部の質的診断を下すことは極めて困難であると考えられた.
  • 安田 治正, 金 昌雄, 赤松 大樹, 佐藤 尚司, 明渡 寛, 北川 晃
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1215-1219
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    食道平滑筋腫は稀な疾患とされているが,近年診断技術の進歩に伴いその報告例は増加している.しかしながら20歳未満の若年例は極めて稀である. 15歳少女の食道平滑筋腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は15歳女性,嚥下困難・咳嗽を主訴として来院.食道粘膜下腫瘍,平滑筋腫の診断にて手術,核出術を施行した.腫瘍は胸部上部食道を馬蹄型に取り囲むもので,核出標本の最大長径は15cmであった.
    今回われわれの調べ得た20歳未満の若年例は自験例を合わせても9例であった.また一般の食道平滑筋腫に比し若年例は巨大傾向を示し特徴的であった.
  • 六角 裕一, 土屋 敦雄, 野水 整, 君島 伊造, 大森 勝寿, 阿部 力哉
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1220-1224
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    Gastritis cystica polyposaの1例を経験したので本邦報告例22例を加え若干の文献的考察を行った.
    患者は54歳男性で昭和44年に早期胃癌により幽門側胃切除術を受けている.昭和48年から吻合部のポリープを指摘されていたが,ポリープが増大してきたために昭和55年吻合部切除が行われた.組織学的にはgastritis cystica polyposaの像を呈し,悪性像はなかった.その後7年を経過し,現在のところポリープ,癌の再発の徴候は認められていない.本邦報告例では男性21,女性2例と男性に多発する傾向がみられ,初回手術は全例Billroth II法で再建が行われていた.本疾患23例中8例にポリープより発生したと思われる癌を合併しており,悪性化の可能性が非常に高いことがうかがわれた.良性疾患,悪性疾患にかかわらず胃切除後には定期的な注意深いfollow upが必要である.
  • 赤松 大樹, 金 昌雄, 藤田 修弘, Kunio MATSUOKA, 前田 克昭, 岸本 康朗, 佐藤 尚司, 明渡 寛, 安田 治正, ...
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1225-1228
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    胃石による小腸閉塞はきわめて稀である.本症例は胃切除の既往のある73歳の女性で,嘔気及び腹痛にて発症し急性膵炎の疑いで入院した.症状の発現する数日前に柿を多量に摂取しており,胃内視鏡等の検査にて胃石症と診断した. 3週間後,突然激しい腹痛と腹部膨満が出現し上部消化管造影を施行,胃石による小腸閉塞と診断し緊急手術を行った.鶏卵大の胃石がTreitz靱帯より30cmの空腸に嵌頓しており腸切開により摘出した.
    胃石による小腸閉塞は本邦では最近10年間に自験例を含めて15例の報告があるが,全例に開腹術を行われており,一旦腸閉塞を来したら保存的治療は困難である.本症例のように胃切除後の患者では胃石は小腸へ下降し易く腸閉塞を起こす危険が大きいと考えられ,食餌指導等により胃石の生成を予防することが重要である.
  • 矢野 隆嗣, 金田 真, 山本 敏雄, 鈴木 卓, 藤森 健而, 伊東 敬之, 林 弘, 伊藤 真子, 吉田 利通
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1229-1234
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性,著しい貧血のため入院.胸部X線検査で右下肺野に径4cmの孤立性腫瘤を認めた.入院後大量のタール便を来し内視鏡検査を施行,十二指腸第2部に径5cmの腫瘍を認めた.肺癌の十二指腸転移の診断で止血を目的に開腹.十二指腸のみならず上部空腸にも数個の転移巣が認められ,膵頭十二腸切除並びに,空腸部分切除を行った.組織学的には肺大細胞癌の消化管転移と診断された.患者は術後36日目,呼吸不全のため死亡.剖検で右副腎に大きな腫瘍(重量140g)が認められ,悪性褐色細胞腫が疑われた.保存血漿を用いてcatecholamine測定を行ったところ, dopamineが異常高値を示した.免疫組織化学的にはNSEで陽性所見が得られたが, CEA, SC, keratin等の上皮系マーカーは陰性であった.電顕的にも神経内分泌顆粒が認められた.悪性褐色細胞腫の消化管転移の頻度は少なく,消化管出血で発症した報告例もみられない.本例は症候学的に極めて稀な症例と考えられた.
  • 和田 尚, 辻仲 利政, 辛川 克, 松浦 成昭, 小川 嘉誉, 森 武貞
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1235-1240
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の糖コルチコイド加療中,激烈な腹痛をきたし,腹部単純X線にてfree airを認めたため緊急手術を施行した.小腸に穿孔・穿通を各1カ所確認した後,これらを含め疑わしい部分を可及的に切除した.また,腸間膜リンパ節腫大と肝内小結節も存在,一部切除した.術後これらすべての部位にMalignant lymphoma, non-Hodgkin, diffuse, large cell, B-cell typeを認めた.術後早期よりのvincristine投与により全身症状の劇的改善がみられた. AIHA経過中の悪性リンパ腫発症は,過去15年間の文献的検索により,本例を含め5例,また小腸悪性リンパ腫の穿孔例は22例の報告をみた. AIHA経過中の消化管穿孔に際し,糖コルチコイド投与による消化性潰瘍穿孔, SLE等の膠原病の存在,悪性リンパ腫の合併等が基礎疾患として考えられ,これらの基礎疾患を念頭に置き手術を進め,また疑わしい病変を含め可及的に切除することが必要であろう.
  • 土屋 邦之, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 久保 速三, 池 正敏, 上田 泰章
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1241-1244
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    比較的稀な回腸原発悪性リンパ腫症例で,かつ,注腸造影で腫瘍増殖の経時的変化が観察できた1例を経験した.下血の精査のために昭和61年10月に注腸造影を施行し回腸に縦径が2.5cmの隆起性病変を認めた.本人の仕事の都合などで昭和62年1月に手術のために入院し,そこで再度注腸造影を施行したところ,縦径が4.5cmの全周性狭窄病変を認めた.手術および病理所見は回盲弁より50cm口側の回腸の全周性の狭窄病変で組織型はnon Hodgikin malignant lymphoma (diffuse, large cell type)でありSSγn0P0H0であった.注腸造影より腫瘍のvolume doubling time (体積倍加時間)を求めたところ32日だった.
  • 石川 雅彦, 鮫島 夏樹, 松下 元夫, 柴野 信夫, 菱山 四郎治
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1245-1250
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    消化管平滑筋肉腫は比較的稀な疾患であるが近年報告例が増加している.今回,空腸平滑筋肉腫2例,直腸平滑筋肉腫2例の合計4例の消化管平滑筋肉腫の手術症例を経験した. 4例中2例に腫瘍切除後肝転移を認めた.うち1例は転移性肝腫瘍を切除して,初回手術後約7年健在,他の1例は肝転移巣は切除不能にて化学療法等を施行するも効なく,小腸部分切除後約1年10カ月で死亡した.これら4例ともリンパ節転移は認めなかった.以上のことから消化管平滑筋肉腫の予後の重要な因子としては原発巣に対する根治的手術療法の有無と肝転移の早期発見とこれに対する積極的治療の施行が大切と考えられた.
  • 仲宗根 朝紀, 木田 晴海, 中山 博司, 山岡 憲夫, 王 志明, 山口 広之, 遠近 裕宣, 福田 俊夫
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1251-1256
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    特有な症状を欠くことより,術前診断困難な胆嚢捻転症2例を経験した.
    症例1は,悪心,嘔吐,腹痛を主訴とし,諸検査にて診断し得ず,急性胆嚢炎の疑いで手術. Gross 1型,完全型胆嚢捻転症であった.
    症例2は,心窩部痛を主訴として来院.腹部超音波検査にて,胆嚢は,腹部大動脈,膵臓の腹側に,腫大,緊満して存在し,頸部において壁の肥厚が著しい.腹部CT検査にても,胆嚢は正中部に位置している.以上の所見より,胆嚢捻転症と診断し手術施行.胆嚢は,頸部にて,反時計方向に180度捻転し,肝十二指腸靱帯前面に転位している. Gross 2型,完全型であった.
    胆嚢捻転症の術前診断例は,本邦にて,自験例を含め7例に過ぎない.本症の診断には,超音波検査は有用であり,本症例の様に,著しい頸部の壁の肥厚も描出可能であれば,さらに診断能力は向上すると考える.
  • 田村 功, 近藤 治郎, 青山 法夫, 野口 芳一, 今田 敏夫, 天野 富薫, 松本 昭彦
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1257-1260
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    比較的溶血が軽度とされるBjörk-Shiley弁による2弁置換後に認められた胆石症の1例を経験した.症例は53歳女性.大動脈弁狭窄症,僧帽弁閉鎖不全および狭窄症,三尖弁閉鎖不全症のため, 5年前に大動脈弁位および僧帽弁位にBjörk-Shiley弁による弁置換術を施行した.今回胆石症発作のため胆嚢摘出術を施行した.胆石は金属元素を多量に含む黒色石で,特にCu, Feの含量が高値であった.人工弁置換術は,心臓外科において,現在最も一般的に行われる手術の一つであるが,これに伴う溶血は程度の差こそあれ避けられない合併症の1つである.従って弁置換術後の経過では胆石の発生も十分念頭におき,腹部超音波検査を中心に観察していく必要があると思われた.
  • 長谷川 洋, 伴野 仁, 寺崎 正起, 所 昌彦, 佐井 昇, 駒田 康成, 大久保 真二, 岡本 一男
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1261-1266
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    残胃癌にて膵頭十二指腸切除(PD)術後に発生した高度な胆管空腸吻合部狭窄に対して経皮経肝胆道鏡検査(以下PTCS)下に非観血的治療を行い良好な結果を得た.症例は5カ月前にPDを受けている47歳,女性で,発熱,肝機能異常にて入院した.肝胆道シンチでは著明な胆汁のうっ滞が認められ, PTCを行うと左右肝管合流部から肝管空腸吻合部にかけ距離の長い高度な狭窄像が認められた. PD術後であり,再切除,吻合は困難と判断し内瘻化を試みた. PTCSでは,狭窄部はpin-hole状で, guide wireの挿入を試みたが吻合部の通過は不能であった.そこで, PTCS下にFogarty balloon catheterを用い狭窄部の拡張を行ったところguide wireの通過が可能となり,内瘻化に成功した.狭窄範囲が長いためcatheterの抜去は不能と判断し,シリコン製の内瘻化tubeに交換し,腹直筋下に埋めこみを施行した.術後の経過は良好で,肝機能も正常化し,現在経過観察中である.
  • 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 久保 速三, 土屋 邦之, 池 正敏, 上田 泰章
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1267-1271
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    網膜に発生する腫瘍は非常に稀であり,また術前診断も容易でない. 55歳の女性に発生した小網原発リンパ管腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.患者は腹部腫瘤を訴え精査目的で昭和62年3月,国立奈良病院外科に入院した.全身状態は良好であったが,心窩部に小児頭大の腫瘤が触知された.腹部血管造影で,固有肝動脈,肝十二指腸動脈,左肝動脈および左胃動脈はつよく伸展されていたが,これら末梢動脈枝には不整,断裂および血管新生はみられなかった.腹部超音波検査では肝下縁に沿う巨大な嚢腫様パターンがみられた.穿刺吸引した腫瘤内容液の細胞診ではリンパ球が主体で,生化学検査では血清成分に類似した所見であり,腫瘍マーカーにも異常はなかった.腹部CTでは,上腹部に21×11cmの表面平滑な低吸収性の腫瘤がみられた.摘出標本は,胃小網から多房性に発育したリンパ管腫であった.
  • 篠崎 登, 大塚 正彦, 祐野 彰治, 山口 晶久, 蜂谷 芳弘, 稲田 省三, 竹村 隆夫, 斎藤 玻瑠夫, 桜井 健司
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1272-1274
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    大綱嚢胞は稀な疾患で,特異的な経過や症状を示さず,その大きさや発生部位により臨床像が異なるので,手術前に正確な診断が出来ることが少ない.
    腸管膜嚢胞の発見の動機は,急性腹症や慢性の腹痛による場合が60%で,無症状で他の開腹手術の際に偶然に発見される場合が40%である.成人例の1/3と小児例の2/3の腸管膜嚢胞が急性症状を示すので,大網嚢胞を鑑別診断として考えることは診断上大切なことであろう.
    今回,大網嚢胞の頸捻転により急性腹症を生じた3歳女児の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 井口 公雄, 宮内 卓, 福田 雅武, 安住 有史, 上田 祐二
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1275-1278
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    38歳男性の胆石症患者の精査中,偶然に右副腎腫瘍を認め,各種の検査によりnon-functioning adrenal tumor (cortical adenoma)と診断し摘出術を行った.摘出標本の大きさは11×8×3.5cmで,重さ175gで表面平滑,弾性硬であった.組織所見から副腎由来のganglioneuromaと診断された.本症は,これまで本邦では,わずか16例の報告をみるにすぎず,稀な疾患である.腫瘤が大きくならなければ自覚症状に乏しく,他疾患の精査中,偶然発見されることが多い.本邦報告例からみると若年者の女性に多い.診断には, CT,エコー,血管造影が有用であるが,術前に本症と診断することは困難であり,悪性腫瘍との鑑別が問題となる.したがって,腫瘍径が3cm以上のものは,積極的に摘出術を行うべきであろう.
  • 今脇 節朗, 前田 肇, 数野 博, 濱本 勲, 有岡 一郎, 白石 恭史, 薦田 烈, 田中 聰
    1988 年 49 巻 7 号 p. 1279-1283
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    右膝窩動脈捕捉症候群で膝窩動脈の捕捉部位の末梢側に動脈瘤を形成し,しかも, Buerger病の合併が疑われた1例を経験した.症例は16歳男性で右足の疼痛および冷感を主訴として来院した.術前の下肢動脈造影では膝関節伸展位に加え足関節背屈位により,右膝窩動脈が狭窄し,その末梢側膝窩動脈が瘤を形成,さらに右下腿動脈の3分枝および左下腿動脈の2分枝が閉塞していた.本症例に対し腓腹筋内側頭切断・膝窩動脈瘤切除を行い良好な結果を得た.膝窩動脈捕捉症候群には狭窄部位末梢側動脈の拡張や瘤の形成,あるいは下腿動脈閉塞が合併することがあると報告されるが,本症例はその両者を伴い,さらに病理組織学的検査や動脈造影所見などからBuerger病の合併が疑われた症例であり,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 1988 年 49 巻 7 号 p. 1284-1293
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 49 巻 7 号 p. 1293-1303
    発行日: 1988/07/25
    公開日: 2009/09/30
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