日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
49 巻, 8 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • とくに分岐鎖アミノ酸について
    福井 四郎, 島津 元秀, 青木 春夫, 水島 康博, 藤井 惇, 池山 淳, 松浦 〓二, 早坂 滉
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1313-1324
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    肝硬変の病態と血漿遊離アミノ酸, IRI, IRGとの関連性を検討し次の結果を得た.
    非脳症群,脳症群ともに
    1) BCAAの総和とKICG, Bil, NH3とは高度の相関がある.
    2) AAAの総和とKICGは負の相関があり, Bil, NH3とは正の相関がある.
    3) BCAA/AAAとKICG, NH3, Bilとは高度の相関があり, Chol. Albとも相関がある.
    非脳症群では
    1) IRIとI-Leu, Leu, BCAA/AAAは負の相関がある.
    2) IRGとI-Leu, BCAAは高度の相関がある.
    したがって, BCAAとAAAは肝機能との関連性が強く,かつIRI, IMGと個々のアミノ酸とでもそれぞれ特有の関連性をもっている.したがって,術前術後のBCAAの個々の変動とIRI, IRGの推移を検討することは栄養管理の大きな指標の一つとなる.
  • 島貫 公義, 千葉 惇, 櫻林 郁之介
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1325-1330
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    消化器外科手術後に呼吸機能低下を示した5症例において,顆粒球エラスターゼ, α1-アンチトリプシン,および白血球数の術前,術後の変動を検討した.経過中,白血球数の低下と同時か,直後に顆粒球エラスターゼの増加を認め, respiratory indexの増加を示し呼吸機能低下を来した症例を認めた.また,顆粒球エラスターゼの上昇時期にα1-アンチトリプシンの一時的な低下を認めた.これは肺における白血球の集積や,肺外での白血球の損傷,破壊に伴い白血球からの顆粒球エラスターゼの放出を来し,その阻害蛋白であるα1-アンチトリプシンの消費による低下と思われた.
  • 里見 昭, 石田 清, 榎本 清文, 甲田 英俊, 朝来 野弦, 栗原 茂勝, 森田 孝夫, 時松 秀治
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1331-1335
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    手術手技や管理が向上しているにも拘わらず合併症のため,やむを得ず再開腹に至る症例は少なくない.今回,教室開設以来約14年間に経験した術後早期再開腹症例92例を前期,後期に分け,臨床的検討を行った. (1)発生頻度は3%前後で差がなかった. (2)原因として前期で多かった縫合不全が減り,後出血,腸閉塞,膿瘍が増加していた. (3)再開腹の時期は前期は1~8日に,後期は14~21日にピークがあった. (4) 30~80歳が77%を占め,中でも高齢者の割合が高かった. (5)原疾患は大腸27例,胃十二指腸26例が多く,良性がやや多かったが,予後は良性22%,悪性46%と原疾患が悪性の死亡率が高く,特に肝,胆,膵系の予後が悪かった. (6) 92例中30例が死亡し,多くは1~2週目の術後早期に再開腹されたもので高齢者が50%を占めていた.高齢者では種々の臓器の潜在的機能低下や併存疾患が予後を左右しており,再開腹の適応を厳密にし,又,初回手術時に二重,三重の備えとチェックを行う事が大切である.
  • 小池 龍, 佐々木 進次郎, 大関 道麿, 麻田 邦夫, 志熊 粛, 武内 敦郎
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1336-1342
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    20歳以上で根治手術を施行した心内膜床欠損症14例を対象とし,手術成績を検討した.平均年齢40歳,男女比は3対11,肺体血流比は平均2.92であった.全例,一次孔はパッチ閉鎖を行い,僧帽弁クレフトはその程度に応じて放置(2例),基部を修復(7例),さらに弁輪形成術を追加(2例),或は人工弁で置換(3例)した.三尖弁置換術を要した症例が4例あった.術前心不全状態にあった54歳女性の2例を低拍出量症候群,多臓器不全で失った. 2例とも三尖弁を含む両弁置換例で,剖検で心筋変性と肺中小動脈の内膜肥厚を認めた.耐術者は全例に臨床症状の改善および胸郭比の正常化を認めた.術後心尖部に軽度収縮期雑音が残存する例が5例あったが,これらの肺動脈圧は術後正常化し僧帽弁逆流は殆ど認めなかった.以上から,成人症例といえども心不全を呈する以前または自然予後(40~50歳)に至る以前であれば,積極的に外科治療をすべきと考えられた.
  • 池澤 輝男, 矢野 孝, 佐藤 晴男
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1343-1346
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1987年5月までの8年間に167例の腹部大動脈・腸骨動脈瘤に手術を行った.このうち切迫破裂の2例を含む22例(13.1%)が破裂例であった.年齢は30~83歳で平均67.5歳で,同時期の待期手術例と有意差はなかった.原因は,非特異性炎症性2例,細菌性1例,他は動脈硬化性であった.動脈瘤径は5~14cmで平均8.7±2.4cmで,待期手術例の6.4±2.0cmに比べ有意に大きかった(p<0.001).出血量も平均6,077±4,080gで,待期手術例の1,866±1,235gに比べ有意に大きかった(p<0.001).手術時間は有意差を認めなかった.術後,急性循環不全・心不全で3例が死亡し,急性呼吸不全,急性腎不全で2例が死亡し,術後合併症に由来するMOFで3例が死亡した.結局8例が死亡し, 36.4%の入院死亡率であった.破裂例の手術結果は不良であり,周術期のintensive careにより改善が期待されるが,破裂前の診断治療が,唯一の解決策である.
  • 非手術例との対比において
    橋本 肇, 山城 守也, 中山 夏太郎, 野呂 俊夫, 高橋 忠雄, Yasunori HINO, Tokuji HIRASIMA
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1347-1351
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    最近6年間に80歳以上高齢者の胃癌で手術した100例と同期間に手術せず死亡した66例について検討した.
    手術例では進行癌が多く,また術前合併症も多かった.手術例の切除率は95%であった.手術はできるだけ治癒手術をめざしたが28例と少なかった.高齢者でも手術には十分耐えられた.手術死亡は11例で全て進行癌であり,肺合併症,縫合不全によるものが多かった.
    手術合併症と術前検査値の間に関係は認められなかった.
    非手術例の理由を見ると全身衰弱,拒否,高度浸潤などが多かった.
    早期胃癌の非手術例も進行癌となり死因となるものが多かった.
    以上より80歳以上の高齢者といえども,胃癌は進行癌はもとより早期癌も手術すべきと考えられた.
  • 渋谷 進, 高瀬 靖広, 渡辺 宗章, 近森 文夫, 小林 幸雄, 折居 和雄, 岩崎 洋治
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1352-1357
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    肉眼的他臓器浸潤胃癌切除症例における合併切除術の適応について検討した.方法は他臓器浸潤胃癌切除症例について,癌腫の胃壁内浸潤範囲,ボルマン分類,組織分類,占居部位,浸潤臓器数,腹膜播種性転移の程度,肝転移の程度,リンパ節廓清の程度および組織学的深達度と予後との関係から検討した.その結果,合併切除例では術中に診断しうる浸潤臓器数,腹膜播種性転移の程度,肝転移の有無およびリンパ節廓清の程度が予後に関連していたが,癌腫の胃壁内浸潤範囲,ボルマン分類,組織分類,占居部位および組織学的深達度は関連していなかった.以上から,他臓器浸潤胃癌に対する合併切除の適応は浸潤臓器数が1臓器で,腹膜播種性転移がみられないかまたは軽度,および肝転移がみられない症例であり,リンパ節廓清範囲がリンパ節転移範囲より大きいかまたは等しい手術を施行することが重要であると思われた.
  • 予後因子と選択的近位迷走神経切離術の効果
    奥島 伸治郎, 宮川 貞昭, 北野 善昭, 根本 明久, 三浦 誠司, 四方 淳一
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1358-1362
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    教室における十二指腸潰瘍穿孔による汎発性腹膜炎例は72例であった.平均年齢は40.3歳で,男女比は6.2:1であった.これらの穿孔例の予後因子として併存症,術前ショック状態および高齢が挙げられた.術式として,昭和56年以前は主に広範囲胃切除術を施行しており,昭和57年以後は選択的近位迷走神経切離術を施行している.これら両群を比較すると,後者の方が手術時間も短く,術中出血量も少なかったことより患者への手術侵襲は少なかったものと考えられた.一方,選択的近位迷走神経切離術を施行した穿孔例と非穿孔例の間には,手術時間,術中出血量などに差はなく,また,術後の胃酸分泌量および胃内容排泄機能にも差は認めなかった.
  • 巾 秀俊
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1363-1374
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    最近の超音波診断装置の進歩に伴い,消化管の病変に対する超音波診断が盛んに行われるようになってきた.著者は昭和59年1月から昭和61年12月までの3年間に,体腔内プローブを用い.経直腸的超音波検査を施行した135症例のうちの直腸癌症例63例に対し,肉眼的形態分類および組織学的壁深達度分類と超音波像とを比較し,腫瘍の超音波像の形態を4つのタイプに分類した. type 1は深達度pm症例で超音波像上の腫瘍最大径(M-M')の位置が第1層(粘膜と管腔との境界)に存在するもの, type 2・3・4・は深達度a1以上の症例で, type 2はM-M'が第1層近くにあるもの, type 4はM-M'が第5層(漿膜または直腸壁外)近くにあるもの, type 3はtype 2と4との中間にM-M'が存在するものとした.
    一方腫瘍の壁深達度においてはM-M'よりも超音波像の底面エコーの変化が認められる範囲の大小,深浅により現わされることが分かった.底面エコーの変化の度合の小さいものから大きいものへ順にpm, a1 (ss), a2 (s)となっていた.そしてこれらの超音波像を規定しているものは腫瘍の構成成分である膠原繊維や炎症細胞からなる間質成分であることが,後方エコーと,腫瘍の間質成分の割合との比率を検討することにより判明した.これらの腫瘍のタイプ分類は今後,腫瘍の断層像を主体内で得られるという超音波検査の特徴を生かし,大腸癌の発育・進展の形態推移を解明する手助けとなり得るものと考える.
  • 芦田 寛, 石川 羊男, 琴浦 義尚, 橋本 直樹, 西岡 昭彦, 高木 一光, 宇都宮 譲二
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1375-1382
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    選択的shunt術である遠位脾腎静脈吻合術の門脈血行動態におよぼす影響を,経動脈的門脈造影像の画像解析を中心に検討した.術後1カ月56例および遠隔時22例を,従来群, shunt脾静脈不完全遊離群と完全遊離群に3分した. (1) 3群に共通して脾静脈流入遮断による門脈圧低下と門脈径狭少化を認めた. (2) 術後1カ月目の門脈造影状態は3群とも良好に保たれていたが,従来群では他の2群に比し,遠肝性側副血行路発達は有意に顕著であった.完全遊離群ではこの側副血行路発達が防止された. (3) 遠隔時において,従来群では遠肝性側副血行路がさらに増強され,門脈造影状態は悪化していた.不完全遊離群および完全遊離群では門脈造影状態は良好といえたが,完全に遠肝性側副血行路発達を防止するのは不可能であった.以上より,従来法では遠隔時において門脈血行動態に大きな影響をおよぼすといえた.
  • 林 賢, 臼井 健二, 清水 蔵一, 後藤 成生
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1383-1388
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    甲状腺髄様癌の肝転移を伴ったSipple症候群の1例を経験した.
    症例は63歳の男性.他院で左網膜剥離の手術中にフェントラミン以外の降圧剤でコントロールできない高血圧となり褐色細胞腫を疑われた.ホルモンならびに画像による検索で術前Sipple症候群と診断した.開腹手術中,肝両葉に多発性で硬く黄白色の結節を認め,肝生検後HE, CEA, Carcitonin染色で甲状腺髄様癌の肝転移であることを証明した.右副腎摘出,甲状腺全摘,頚部リンパ節郭清術の後,肝転移に対しアドリアマイシンとリピオドールの肝動注を行った.甲状腺全摘術後1年10カ月経過し健在である.
    Sipple症候群の肝転移の報告は未だ少なく本症候群の文献的考察と合わせ報告する.
  • 刀山 五郎, 弥生 恵司, 衣田 誠克, 直井 正紀, 高田 直樹, 丸山 博英, 岡村 純, 岡本 茂
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1389-1391
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    比較的稀な乳腺のアポクリン癌の1例を経験したので報告する.
    症例は41歳の女性で,右乳腺腫瘤を主訴として来院した.腫瘤は右乳房外側DC領域に位置し,大きさは1.6×1.5cm,表面は一部凹凸不平で弾性硬,境界は一部不明瞭で皮膚,大胸筋との癒着なく,リンパ節は触知しなかった.マンモグラフィー,エコーの所見で悪性所見が認められ,穿刺吸引細胞診を施行したがPapanicolaou class IIIのため, excisional biopsyを施行し,アポクリン癌との診断が得られ, T1aNoMo, Stage Iの乳癌として非定型的乳房切断術(Patey's operation)を行った.術後経過良好で現在外来にて経過観察中である.
  • 小寺 泰弘, 末永 裕之, 寺嶋 康夫, 奥田 哲也, 鳥井 彰人, 禰宜田 政隆, 余語 弘
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1392-1397
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    集学的治療により,発症後19カ月生存した前縦隔原発卵黄嚢癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は15歳男性で,健康診断時に胸部写真で発見された前縦隔塊状影と血清アルファフェトプロテイン(AFP)高値により,縦隔奇形腫と診断し,摘出術を施行した.病理学的診断は卵黄嚢癌の成分を含む成熟奇形腫であった.術後1カ月でAFPの再上昇,更には局所再発,肺転移を認めたため,放射線療法,化学療法を含む集学的治療を行った.本疾患はきわめて予後が悪いとされており,本症例も術後19カ月で腫瘍死したが,化学療法が本疾患の治療において重要な位置を占めることを確認した.
  • 福田 重年, 森 文樹, 中村 丘, 丹山 桂, 近江 三喜男, 江里 健輔
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1398-1402
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    内科的治療によっても心不全の改善が見られず高度の肺高血圧症を伴った生後3カ月の総動脈幹症Collett-Edwards I型例に対し, 12mm径の異種生体弁付conduit (Carpentier-Edwards)を用いたRastelli手術を施行した.補助手段としては,体外循環併用深低体温法を用い,高カリウム心筋保護液注入による心停止下に手術を行った.肺動脈とconduitとの吻合に際しては自己心膜パッチによる肺動脈の拡大を図った.術後の血行動態は良好であり,造影検査では, conduitと肺動脈との吻合口は十分な大きさであった.人工弁の動きも良好であった.ドプラー心エコーによる計測では, conduitによる右室-肺動脈圧差は21torrと推定された.肺血管病変進行防止の上からも乳児早期の根治手術が望まれる.
  • 木村 寛伸, 草島 義徳, 小西 一朗, 広野 禎介, 中村 裕行, 水上 陽真, 杉原 政美, 島崎 栄一, 高柳 尹立, 八木 雅夫, ...
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1403-1408
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    76歳の女性に発生した比較的稀とされる肺のいわゆる硬化性血管腫の1例を経験した.本例に対して,電顕を含む詳細な病理組織学的検討を加えた.本腫瘍の主体は,肺胞上皮由来で,肺の過誤腫に近いものと考えられた.また,本邦報告196例を集計し,若干の文献的考察を加えた.
  • 山岡 憲夫, 木田 晴海, 王 志明, 仲宗根 朝紀, 山口 広之, 吉田 一也, 遠近 宣裕, 地引 政晃, 木谷 崇和
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1409-1417
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    Giant bulla内に肺癌が発育し,嚢胞内感染を併発した稀な症例を経験した.症例は72歳男性で約6年前から右上肺野のGiant bullaを指摘されていた.発熱を主訴として入院し,胸部X線にてGiant bullaに一致して鏡面像を形成し,発熱も続くため感染性肺嚢胞症との術前診断にて開胸手術,右上葉切除を行った.右上葉の約2/3を占め, bullaに囲まれた11×10cmの腫瘤が認められ,術後の病理組織学的検索にてGiant bull壁に囲まれ,その内に発育していった肺癌(低分化型腺癌)であった. Retrospectiveに胸部X線像を見直すとDecubtius像にて鏡面形成像と重ならない腫瘤像が認められ,嚢胞内に感染を伴う場合は体位変換も加味した画像撮影はその診断に有用であると思われた.本症例を含めGiant bulla壁より発症したと思われる肺癌は本邦文献上30症例であった.
  • 廣本 雅之, 津嶋 秀史, 高橋 正人, 日下部 輝夫
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1418-1423
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    比較的めずらしい左横隔膜弛緩症に伴う出血性胃潰瘍合併胃捻転症を経験したので報告する.
    症例は38歳,男性.過去5回の下血の既往があり近医にて原因不明の胃変形症といわれている.今回再び下血を認め当院受診.胸部レ線,上部消化管造影・内視鏡にて,左横隔膜弛緩症に伴う出血性胃潰瘍合併胃捻転症と診断,胃切除術(Billroth-I法)を施行した.
    胃捻転症はその存在を考慮すれば比較的容易に診断可能であるが,慢性例では自覚症状を欠き,潰瘍等の合併症をともなわない限り手術の適応となるものは少ない.従って手術々式においても定型的なものはなく,年齢や合併症の種類,程度を考慮し,各々の症例について検討されるべきものであると考えられた.
  • 朴 英進, 鳥越 義房, 安士 達夫, 永沢 康滋, 上田 哲郎, 大谷 忠久, 小林 一雄, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, 野中 博子
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1424-1428
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    穿孔を伴った非特異性多発性小腸潰瘍はきわめて稀な疾患で,本邦では8例の報告をみるにすぎない.最近,本症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は49歳男性.約30年前に肺結核に罹患し,今回胸部X線写真上の異常陰影精査目的で入院中に,汎発性腹膜炎をおこし手術を施行した.手術所見では,回腸終末部より口側約50cmの間に拇指頭大の硬結が6カ所跳躍状に触知され,そのうち2カ所が穿孔していた.クローン病とも腸結核とも診断できなかったが,回盲部切除を施行し,病理組織学的精査で非特異性多発性小腸潰瘍と確定診断された.
    術前検査で本症であるといった特異的な所見は不明であるため,結局は術後の病理組織学的精査によって初めて確定診断がなされるものと考えている.
  • 浜崎 尚文, 吹野 俊介, 深田 民人, 岡野 一廣, 湯川 勝託, 神波 澄幸
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1429-1434
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の男性で主訴は下腹部痛.絞扼性イレウスの診断で緊急開腹術を行った.十二指腸は下行部から上行結腸間膜後方を下行し回腸末端後方より腹腔内に出ており,腹腔内の小腸が軸捻転をおこし約3mにわたり壊死を起こしていた.上行結腸間膜をヘルニア嚢とする右傍十二指腸ヘルニアと診断した.壊死に陥った小腸を切除し,口側の腸管をヘルニア嚢切開部から引き出し端々吻合した.術後経過は良好である.右傍十二指腸ヘルニアは内ヘルニアの1種で,極めて稀な疾患である.このような症例の手術においては発生機序の充分な理解が必要である.
  • 大下 裕夫, 田中 千凱, 伊藤 隆夫, 樫塚 登美男, 安藤 智重
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1435-1439
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    大腸癌による腸重積症の3例を報告し,文献的考察を加えた.症例1は72歳,男.主訴は便秘と食思不振. S状結腸癌(4×3.8cm, 2型,深達度ss)による結腸-結腸型重積症であった.症例2は39歳,女.主訴は腹痛と下血.腫瘍の肛門外脱出がみられた. S状結腸の有茎性の絨毛性腫瘍(6×4.5×3cm,深達度m)による結腸-直腸型重積症であった.症例3は76歳,女.主訴は下痢とタール便.注腸でcoiled spring signが認められ,腸重積症と診断された. 1型S状結腸癌(5.5×4×3cmと3.5×2.5×2cm,深達度s)による結腸-直腸型重積症であった.自験例を加えた本邦報告例43例についてみると,大腸癌重積症は70歳以上の女性に好発していた.術前診断できたのは53.5%であった.癌の占居部位は盲腸20例(46.5%), S状結腸18例(41.9%)などであり,肉眼型は隆起性22例(48.9%), 2型12例(27.9%)などであった.深達度ではm~pmの比較的早期の癌が13例(30.2%)あった.
  • 内田 晃亘, 井上 章, 岡 昭, 高橋 泰夫, 岡崎 信彦
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1440-1444
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    梅ぼしの種(異物)により発症した大腸癌イレウスの1例を経験したので報告する.本症は本邦において,初めての症例と思われる.一方,外国ではこのような症例が4例報告されている.
    症例は62歳男性で大腸癌潰瘍部に梅ぼしの種が嵌頓しイレウスが生じた.結腸左半切除を施行してはじめて異物によるイレウスと判明した.異物の嵌頓部位の観察から,腫瘍の口側部ではロート状で滑り易く,潰瘍部の肛側では急峻な立ち上りを呈するため潰瘍部に嵌頓したものと推測した.普通の大腸癌イレウスにおいても,もし便が硬ければこのような理由でイレウスが起こるかもしれないと思われる.
  • 中西 英和, 丸田 守人, 小西 高義, 小森 義之, 吉松 泰彦, 河田 周三, 島津 元秀, 中野 孚, 菅谷 宏, 青木 春夫, Ha ...
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1445-1451
    発行日: 1988年
    公開日: 2012/07/12
    ジャーナル フリー
    虫垂憩室症は欧米ではしばしば報告されているが, 本邦報告例は4 4 例と少なく, しかも術前に発見された症例は4例のみであった.
    教室では虫垂炎手術時および注腸造影施行時に虫垂憩室5例を経験したので報告する.症例1は,急性虫垂炎の診断で虫垂切除を施行し切除標本により虫垂憩室症と診断した.症例2は,術前の注腸造影により虫垂憩室と診断し手術を施行した.症例3~5は,注腸造影により虫垂憩室症と診断した.
    注意深い検索によって本症と診断される症例は少なくないものと考えられ,無症状の本症に対する手術適応には慎重を要するものと考えられた.
  • 石川 広記, 川原 英之, 日高 正晴, 吉田 泰憲, 岡林 寛, 大崎 敏弘, Koichi YANO, 吉松 博, 金子 保幸
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1452-1456
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,主婦.右腎細胞癌根治術後, 3年6カ月で左乳房に2.0cm大の腫瘤を自覚した.生検にてclear cell carcinomaであり腎細胞癌からの乳腺転移と判明.他部位には明らかな再発は認められず,左乳房切断術施行.乳腺内の転移巣は1つのみで腋窩リンパ節転移は0/13であった.乳切後11カ月の現在,胸部X-Pにて左肺に多発転移巣の出現が確認されているが生存中である.腎細胞癌の転移性乳腺腫瘍は極めてまれで,われわれの調べ得た限りでは既報告症例は海外の8例のみで本邦での報告は自験例が最初と思われる.既報告の集計と若干の文献的考察を加えた.
  • 庭本 博文, 大橋 秀一, 柏谷 充克, 柴原 浩章, 大門 美智子, 伊熊 健一郎
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1457-1461
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は18歳未婚女性.無月経を主訴に婦人科受診し,処女膜閉鎖を認めた.腟開口術と腹腟鏡検査にて,腟欠損,卵巣卵管正常形態,双角痕跡子宮を確認し,さらに内分泌細胞遺伝的には正常で, Rokitansky-Küster-Hauser症候群と確定診断を得た.本症例にS状結腸を用い人工造腟術を施行し成功した.
    先天性腟欠損症に対して種々の人工造腔術が行われているが,それぞれ長所短所がある.最も重要なことは,永久性があり,できるだけ自然に近い腟を形成することであり,この点からS状結腸を用いた造腟術が理想的であると思われる.
  • 遠近 裕宣, 小武 康徳, 野川 辰彦, 吉田 彰, 一瀬 和博, 三島 致衍, 河合 紀生子, 入江 準二
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1462-1468
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    18歳女性.左下腹部腫瘤を主訴として来院. CTで第2腰椎より骨盤腔に達する腫瘤を認め,血管造影で腰動脈及び左内腸骨動脈から分岐する異常血管を認めた.後腹膜腫瘍の診断で手術を行った.手術時の肉眼所見では,腫瘤は小児頭大で,内部は多房性であり,淡黄色漿液と凝血塊が充満していた.組織診断ではmalignant hemangiopericytomaであった.術後2週目に,両肺野および腰椎に多発性の転移を認め, 1年2カ月現在加療中である. hemangiopericytomaは,比較的稀な腫瘍であり,本邦報告例は223例である.そのうち後腹膜発生例はわずか21例で,平均年齢36歳,男女比9:12,良悪性例記載の明らかな12例中11例は悪性で6例に転移を認める.治療は外科的摘出,放射線療法,化学療法があるが予後は不良で, 2年以上の生存例はない.
    以上,後腹膜発生のmalignant hemangiopericytomaの1手術例を経験したので報告した.
  • 臼井 由行, 佐々木 澄治, 萱野 公一, 岡田 富朗, 古城 資久, 池田 敏夫, 東 良平, 西 純雄
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1469-1473
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    成人の前仙骨部腫瘍の2例を経験し,腹式と仙骨式でそれぞれ手術を行った.病理組織学的にepidermoid cystとdermoid cystであった.
    前仙骨部腫瘍は成人では極めて稀であり,その解剖学的関係から症状の発現が遅れ,巨大になってから発見されることが多い.また,手術の際には,腫瘍の大きさ,性状を超音波検査, CT,血管造影などで術前に診断して,腹式か仙骨式かを選択することが必要である.
  • 沢田 勝寛, 松田 昌三, 福岡 弘晃, 山本 英博, 橘 史朗, 大薮 久則, 栗栖 一茂, 柴田 正樹, 服部 哲也, 春名 宏樹, 築 ...
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1474-1478
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    重症骨盤骨折から心タンポナーデを来した症例を経験したので報告する.症例は31歳の女性.自殺企図にてビルの3階より飛び降りて倒れているのを発見された.来院時の血圧は触診で50mmHgのショック状態であった.レ線検査で骨盤骨折と両下腿骨折が判明し,他の外傷は否定されたので骨盤骨折による出血性ショックと診断した.第2病日,多量の輸血にても血行動態が安定せず,血腹が疑われたので試験開腹術を行ったところ,高度の後腹膜腔出血と滲み出したと思われる少量の腹腔内出血を認めたのみであった.第5病日, CVPの上昇と頻脈が出現し,胸部レ線と心エコーで血胸・心タンポナーデと診断した.胸腔ドレナージ,心嚢切開ドレナージを行ったところ,多量の血性胸水と血性心嚢液の排出を認め,以後血行動態は安定していった.このように骨盤骨折は単に後腹膜出血にとどまらず,様々な病態を呈してくるので骨折の治療のみならず,呼吸・循環管理を含めた厳重な全身管理と,迅速かつ適切な治療が必要であると思われた.
  • 末田 泰二郎, 石原 浩, 浜中 喜晴, 川上 恭司, 金広 啓一, 呑村 孝之, 松浦 雄一郎
    1988 年 49 巻 8 号 p. 1479-1484
    発行日: 1988/08/25
    公開日: 2009/09/30
    ジャーナル フリー
    最近6年間に,コイル付きEPTFEグラフト(IMPRA®)を用いて,種々な原疾患を有する21例の症例に23回の末梢血行再建術を行い,以下の結果を得た. (1) 症例は閉塞性動脈硬化症(ASO)11例,大動脈炎症候群2例,塞栓症2例,末梢動脈瘤2例,腹部大動脈瘤1例, Burger病1例,胸部外傷1例,急性動脈閉塞1例であった. (2) 使用グラフトサイズは8mm-11本, 6mm-12本であった.術後造影を行った20例, 22本のグラフトのうち,閉塞はBurger病の1例のみであった(開存率95.4%). (3) 遠隔期のグラフト閉塞1例(大動脈炎),吻合部狭窄2例を経験したが,いずれも6mmのグラフトであった. (4) ASO症例ではグラフト閉塞は1例もなく,他の症例でも,炎症性疾患を除くと閉塞例はなく, IMPRA®は末梢血行再建術用グラフトとして優れた人工血管であると思われた.
feedback
Top