日本臨床外科医学会雑誌
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50 巻, 10 号
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  • 転移陽性所見の検討
    西田 正之, 岩屋 啓一, 出井 雄幸, 今井 順, 田巻 国義, 平出 星夫, 玉熊 正悦
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2101-2106
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    水浸メカニカルアークスキャン7.5MHzを用いて腋窩超音波検査を施行した乳癌患者50例についてその所見を分類し,組織学的転移所見と比較検討した.
    転移陽性の判定には,従来は径15mm以上の血管に近いエコーレベルを有する境界明瞭なリンパ節としていたが,これに加えて径14mm以下でも血管に近いエコーレベルを有するものや脂肪組織に比べて明らかに低いエコーレベルに描出されるもの,あるいは境界やや不明瞭なリンパ節を含めることにより,触診のSensitivity 0.50, Specificity0.93, Accuracy 0.76と比べてSpecificityは0.87とやや低下するものの,Sensitivityは0.80・Accuracyも0.84と高い値が得られた.また触診にて検出されずに超音波検査にて転移陽性と診断できた症例が6例得られ,見落としのより少ない補助診断法として有用性が増すと考えられた.
  • 川上 義弘, 藤田 昌宏, 渡辺 一男, 竜 崇正, 本田 一郎, 渡辺 敏, 坂本 薫, 竹内 修, 篠原 靖志
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2107-2111
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺所属リンパ節をCT画像上に描出する方法とその有用性については既に報告した.本論文では各領域における所属リンパ節(1a, 1b, 1c, 2, 3)の転移に対する診断成績を求めた.1)リンパ節の総描出率は69.3%であった.径3mm以上のリンパ節に限定すると描出率は81.4%であった.2)転移リンパ節の診断率はAccuracy 76.2%, Sensitivity 76.0%, Specificity 76.5%であった.3)CTによる読み落し症例は6例(31.6%)であったが,いずれも3個以内のn1αでありn1β以上の読み落しはなかった.4)触知困難領域の正診率は1c; 90.2%, 2; 87.2%, 3; 66.7%であり腋窩領域と同様に良好な成績が得られた.以上からCTによる転移リンパ節の術前診断が全領域にわたり可能であり,その診断率は臨床的に充分評価しうるものと思われた.
  • 森本 雅巳, 羽生田 正行
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2112-2115
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胸腺腫手術例76例中,術後再発で手術した4例および術後原疾患による死亡10例から病期別(I期21例,II期31例,III期19例,IVa期5例)に胸腺腫治療を検討した.重症筋無力症(MG)の合併は41例,放射線治療(放治)は26例が受けた.術式は胸腺腫摘出9例(I期4例,II期5例),全胸腺摘出46例(I期17例,II期26例,III期1例,IV期2例),全胸腺摘出+合併切除15例(III期14例,IVa期1例),試験開胸6例(III期4例,IV期2例)であった.死因は腫瘍4例,MG 4例,術後合併症2例である.I期では再発,死亡はない.II期では再発4例と死亡1例で,これらは胸腺腫摘出,非放治例に多くみられた.III期は死亡7例で,MG例に多くみられた.IVa期は死亡2例でIII期と同様な成績であった.すなわち,I期は胸腺腫摘出あるいは非放治でもよく,II期以上の胸腺腫では正常胸腺を含めた腫瘍の完全摘出および放治を行うことであり,適切なMG治療が重要である.
  • 太田 稔明, 岩橋 和彦, 杉本 貴樹, 神田 裕史, 山本 信一郎, 小沢 修一, 岡田 昌義, 中村 和夫
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2116-2122
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    後天性弁膜症症例,とくに機械弁による弁置換術症例の成績に手術時年齢が与える影響を検討した.症例を年齢によりA群(39歳以下),B群(40~59歳),C群(60歳以上),の3群に分けた.弁膜症の病因をみると,A群,C群で非リウマチ性病因の割合が増加した.機械弁による弁置換術症例の術前,術中の諸指標には3群間で差を認めなかった.術後inotropic supportの程度,IABPの使用頻度,ICU滞在時間,諸臓器障害,精神障害の発生頻度も3群間で差はなく,手術死亡率もA群6.8%, B群5.8%, C群7.1%と同等であった.術後累積生存率は術後5年でA群91.6%, B群90.6%, C群77.8%となった.術後血栓塞栓症はB群にのみ発生し(0.77%/patient-year),脳出血はC群で多発した(2.97%/patient-year).術後NYHAの改善度に差はなかった.以上より,弁膜症の病因は各年齢群によって若干異なるが,その手術成績は同等かつ良好であること,しかし高齢者では術後脳出血の頻度が高く,機械弁による弁置換術後の抗凝固療法に際しより厳重な管理が必要なこと,が明らかとなった.
  • 馬島 英明, 片野 光男, 溝口 哲郎, 湯ノ谷 誠二, 副島 真一郎, 藤原 博, 原田 貞美, 樋高 克彦, 山本 裕士, 久次 武晴, ...
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2123-2128
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    最近,Exulceratio simplex (Dieulafoy潰瘍,Es)及びEs類似疾患は,内視鏡的に診断し内視鏡的に止血されることが多くなってきた.しかし,その予後についての論文は少なく,内視鏡的止血法の臨床上の立場については,不明な点も多く残されている.今回,自験例16例を中心に,治療と予後について検討を加えた.
    自験例3例は,胃切開により出血源を確認の後,各々の症例に応じた手術を行い(胃亜全摘術,楔状切除術,胃壁縫縮術),いずれも止血に成功した.残り13例に対しては内視鏡的止血法(純エタノール局注法:ETH法)にて止血に成功した.これら内視鏡的止血の行われた13例のうち,4例が死亡したが,すべて併存する重篤な合併症によるものであった.残り9例は止血後25ヵ月から59ヵ月に亘り,再出血を認めない.この結果はEs及びEs類似疾患に対する内視鏡的止血法(ETH法)の価値の一端を証明するものであろう.
  • 特に手縫い吻合例と比較して
    立花 進, 田中 千凱, 伊藤 隆夫, 大下 裕夫, 深田 代造, 五島 秀行, 安藤 智重, 樫塚 登美男, 西脇 勤
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2129-2133
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    近年器械吻合が導入され食道空腸吻合時にも使用されるようになった.われわれは,1984年よりアメリカ製吻合器EEAを用いて胃全摘術の際の食道空腸吻合術を施行しているが,手縫い吻合と比較し,その得失を検討した.
    対象症例は,当外科において昭和50年1月から昭和62年12月までの間に,胃全摘術(ρ-Roux-Y吻合)を受けた187例で,うち手縫い吻合例は85例,器械吻合例は102例であり,これらを検討し,次の結果を得た.1)器械吻合は手縫い吻合に比し,縫合不全,出血,狭窄の術後合併症および術後逆流性食道炎の発生頻度が低い傾向を認めた.2)器械吻合は手縫い吻合に比し,食道静止圧曲線のtone, lengthが高くpressur garadientが低く,特に器械吻合は負の値を示した.以上より食道・空腸吻合のさい,器械吻合は手縫い吻合より優れていると思われる.
  • 前場 隆志, 田中 聰, 平田 陽一, 近石 恵三, 大森 吾朗, 岡田 節雄, 濱本 勲, 国土 泰孝
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2134-2140
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌に対して肝部分切除術が施行された15例の治療上の問題点につき検討した.全例が肝硬変を合併し,その中でも食道静脈瘤を合併していた8例では,非合併例に比べICG-R15, OGTT linearity index,血小板数に有意の低下を認め,術後1ヵ月を経過しても肝機能障害の遷延が明らかであった.肝切除とともに食道静脈瘤直達手術を5例に実施したが,うち3例が術後肝不全を併発した.解剖学的制約から15中例4例がTW陽性による非治癒切除例となった.以上より残存肝予備能の面から肝部分切除術を選択せざるを得ない症例には,食道静脈瘤直達手術の一期的附加は過大な手術侵襲を与えるものと考えられ,術前の内視鏡的硬化療法を第一選択とすべきである.また,断端再発対策が必要であり,われわれは術後の予防的門脈内注入癌化学療法によって治療成績の向上を図っている.
  • 泉 良平, 堀地 肇, 清水 康一, 藪下 和久, 渡辺 俊雄, 北林 一男, 谷 卓, 宮崎 逸夫
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2141-2145
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌における治癒切除術及び相対的非治癒切除術59例で,再発率と再発形式について検討した.再発は24例(40.7%)に認められ,再発率に有意に関連する因子として切除術式,腫瘍径,門脈内腫瘍栓があげられた.再発形式の検討では,単発再発が8例,多発再発が16例に認められた.再発形式に有意に関与する因子として,T因子,stage,門脈腫瘍栓があげられた.単発再発例では再切除術3例を含め全例で再発巣に対する有効な局所治療が行えたが,多発再発例では肝機能低下のために7例で有効な治療が行えなかった.単発再発例では多発再発例に比して有意に再発後の生存率は有意に良好であり,再発巣に対する積極的な治療が肝細胞癌切除例の予後の改善には有効であった.
  • 中村 丘, 江里 健輔, 竹中 博昭, 藤岡 顕太郎, 秋本 文一, 河内 康博, 西山 利弘
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2146-2151
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症の下肢多発病変に対する外科治療の一つとしてSequential arterial bypassを行い臨床的評価を加えた.バイパスは14例14肢に行い,その内訳は大動脈-大腿-膝窩動脈バイパス(7),腸骨-大腿-膝窩動脈バイパス(3),大腿-大腿クロスオーバー-膝窩動脈バイパス(2),大腿-膝窩-後脛骨動脈バイパス(2)であった.
    術後57ヵ月の観察期間中,2例が死亡し2肢が閉塞した.閉塞肢2肢のうち,1肢は保存的治療で軽快したが,他肢は下腿切断が必要であった.
    ankle pressure indexは,術前0.31±0.22であったのに対し,術後3週間後には0.83±0.17と上昇した.臨床症状は57ヵ月の観察期間中10肢で改善が見られ,2肢は不変であった.
    Sequential arterial bypassはlimb salvageの手術術式として有効と考えられる.
  • 浦山 博, 片田 正一, 金平 永二, 高橋 政夫, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2152-2155
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    下肢の静脈性潰瘍は難治性,易再発性であり,静脈閉塞,静脈弁不全が成因となる.過去10年間で当科にて手術を施行した下肢静脈瘤に伴う皮膚潰瘍症例は12例であった.Doppler血流計,静脈造影等による術前評価により,全例が表在静脈弁不全と穿通枝弁不全を有しており深部静脈は開存していた.手術はstrippingと結紮術に加えて潰瘍部位と停留性皮膚炎の高度病変部位の切除と皮膚移植が施行された.術後合併症として下腿浮腫,移植部創感染,末梢神経痛,足部知覚低下を各々1例に認めたが全例退院時には改善していた.8ヵ月から9年,平均6.1年の観察期間にて全例潰瘍は治癒しており,また立ち仕事を含む元職へ復帰していた.静脈性潰瘍に対してはその成因を鑑別し適切な術式を選択することにより外科治療の成績は良好であった.潰瘍部位の切除と皮膚移植は感染に留意すればstripping手術と同時に行っても特に問題はなかった.
  • 岩本 勲, 島山 俊夫, 城間 勉, 竹智 義臣, 枝川 正雄, 永友 淳司, 矢野 裕士, 久保田 伊知郎, 柴田 紘一郎, 古賀 保範
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2156-2160
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌切除237例について深達度別,stage別,R別の4年生存率と総入院費について検討し,以下の結論を得た.(1)早期癌(m, sm)は進行癌(se)に比べ総入院費は1/3であった.(2) stage別,R別の総入院費はstage II, IIIのR3症例と,stage IVではR0, R3症例が高額であった.(3) 200万円以上の医療費を必要とした症例は48件(20%)で,R2, R3症例に多かった.(4)高額医療費の内容は薬剤,輸液,輸血,処置料などの占める割合が高率であった.
  • 花上 仁, 津久 井優, 徳田 裕, 町村 貴郎, 水谷 郷一, Hideo AIHARA, 三富 利夫
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2161-2164
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    頸部のVenous Aneurysmは稀な疾患であり,本邦報告例は自験例を含め19例である.今回左外頸静脈に発生したVenous Aneurysmの1例を経験したので報告する.
    症例は7歳の男児で,5ヵ月前より左鎖骨上窩に軟かい腫瘤を認めていた.1ヵ月前から腫瘤は増大し疼痛が出現したため来院した.腫瘤は20×20mmでValsalva試験陽性であり,超音波検査および静脈造影で外頸静脈のVenous Aneurysmと診断し局所麻酔下に切除した.病理組織学的所見では,拡張した内腔に器質化血栓を有する静脈で血管壁に異常所見は認められなかった.
  • 石川 雅彦, 和泉 裕一, 大谷 則史, 八柳 英治, 久保 良彦, 後藤 幹雄
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2165-2169
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺原発の非上皮性悪性腫瘍は,比較的まれな疾患であり,なかでも間質肉腫(stromal sarcoma)の報告例は少ない.
    今回,左乳房に原発した間質肉腫の症例を経験した.症例は76歳,女性で,左乳房の腫瘤を主訴に外来を受診した.触診にて同部位に境界明瞭で,弾性硬の腫瘤を触知したため,葉状嚢胞肉腫を疑い,単純乳房切断術を施行した.病理組織学的には乳腺間質肉腫と診断された.術後経過は良好で患者は第10病日目に軽快退院した.特に化学療法など補助療法は施行していないが,術後3ヵ月たつ現在,再発や遠隔転移などの所見は認められていない.
    乳腺原発間質肉腫の本邦報告例は自験例を含めて17例であり,本症の診断,治療に関して若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 春田 直樹, 福田 康彦, 八幡 浩, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2170-2176
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    特発性Budd-Chiari症候群4例を経験し,このうち3例に,経右心房性用指閉塞部破砕術+経肝下部下大静脈血栓内膜摘除術を行った.術後の再狭窄,再閉塞に対してはPercutaneous Transluminal Angioplasty (PTA)にて対処した.術後24~79ヵ月の経過観察中各々2~4回のPTAを行った.その結果両下肢浮腫,紫斑状皮下出血などの理学的所見の改善及び食道静脈瘤の内視鏡所見やICG肝機能検査の改善がみられ,また重篤な合併症も認められなかった.これより以下のような結論を得た.
    1. この術式は広範囲の肝部下大静脈閉塞症にも安全に施行しうる術式である.
    2. 術後の再狭窄に対してPTAは安全に行え,かつ充分な下大静脈系の減圧効果を期待できる.
    3. 経右心房性用指閉塞部破砕術+経肝下部下大静脈血栓内膜摘除術に,PTAを併用することにより長期軽快症例が得られた.
  • とくに肺縮小切除例を中心に
    吉田 政之, 渡辺 洋宇, 清水 淳三, 村上 真也, 山村 浩然, 岩 喬
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2177-2182
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    当科では過去8例の肺動静脈瘻の手術例を経験した.8例の内訳は,男性4例,女性4例で,平均年齢は34.7歳であった.両側多発例が1例,Rendu-Osler-Weber病は2例に合併していた.術式は5例に肺葉切除,3例に肺区域切除を行った.最近の4症例に対しては肺機能温存の立場から,縮小肺切除の方針をとり,うち3例に肺区域切除,1例に中葉切除が可能であった.最近の1症例を提示する.症例は57歳の女性で,胸部X線写真にて右下肺野に異常を指摘され,精査の結果Rendu-Osler-Weber病を合併した右肺動静脈瘻と診断された.肺動脈造影では,右下葉に単発性の動静脈瘻が描出された.手術は動静脈瘻を含む肺区域切除を施行した.術後経過は良好で,術後18日目に退院した.
  • 樽谷 英二, 柳 善佑, 国頭 悟, 浅田 健蔵, 十倉 寛治, 竹林 淳, 中野 義隆, 宮本 修, 田中 勲
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2183-2188
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例1は42歳の女性で,検診時の胸部写真にて右下肺野に4×3cmの辺縁平滑鮮明な円形陰影を指摘された.気管支造影ではB5末梢枝の圧迫像が見られた.CT像では一部に切れ込みを有していた.中葉切除を施行した.
    症例2は48歳の女性で,発熱精査時の胸部写真にて中葉の無気肺と3×2.5cmの円形陰影を指摘された.気管支造影では中葉支入口部の狭窄と圧迫および末梢支の収束と,腫瘤周辺の造影剤の流入が見られた.気管支動脈造影では腫瘤周辺の血管増生いわゆるメロン皮の網目状の血管走行を呈した.腫瘍とともに無気肺となった中葉を切除した.
    症例1, 2とも病理組織所見は肺硬化性血管腫で腫瘍細胞に異形性は見られず,リンパ節に転移は見られなかった.
    肺硬化性血管腫は比較的稀な疾患であり,肺胞上皮細胞由来の良性腫瘍とする考えが有力であるが,最近悪性例も報告されている.本邦報告例を集計し文献的考察を加えた.
  • 山本 明, 藤村 昌樹, 平野 正満, 大島 真一, 松原 聡子, 森 渥視, 朱 大慶, 田中 久富, 塩見 毅彦, 深野 美也
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2189-2195
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性で,自殺目的で60%硝酸を約150ml服用した.来院時,上腹部の軽度圧痛を認めるのみであった.X線造影で胃角の開大と大小弯の壁硬化像,内視鏡では下部食道胃粘膜全体に黄褐色調変色と著明な浮腫,出血性びらん,伸展不良を認めた.潰瘍形成は見られなかった.17病日,ショック状態となり,開腹すると,腐臭のある血性腹水がみられ,全胃は漿膜のみを残した菲薄な袋状と化し,膵,脾,横行結腸と一塊となっていた.
    腐食剤服用による症状は,傷害の程度と関連せず軽微なため,臨床症状から手術適応を決定することは困難である.そのため早期からの内視鏡検査の有用性が強調され,黒色粘膜や黒褐色の潰瘍底は全層壊死を示すといわれている.早期でのX線検査の意義は乏しいとされるが,自験例では早期の単純X線を再検すると,胃壁内ガス像が読影可能であり全層壊死を診断しえた.本症の臨床像と手術時期を中心に考察を加えて報告する.
  • 水谷 伸, 佐谷 稔, 小野 典郎, 亀頭 正樹, 岡田 康孝, 中岡 和哉, 山下 裕, 渡辺 洋敏, 池淵 雅成, 辰己 恵章, 位藤 ...
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2196-2200
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃体部に発生した扁平上皮癌の1例を経験した.症例は59歳男性で,心窩部痛を主訴とし,胃内視鏡にて胃体部後壁にBorrmann II型の腫瘍が認められた.同部の生検にて扁平上皮癌と診断され,胃幽門側切除,R2郭清が施行された.病理組織学的には,角化を示す高分化型扁平上皮癌であり,他のどの部位にも腺癌組織は認められなかった.また,リンパ節転移は2群まで陽性で,これらすべてに扁平上皮癌の転移を認めた.
    本症のように,腺癌組織を全く認めない純粋な扁平上皮癌は極めて稀で,本邦では,現在までに6例の報告をみるのみである.
    胃扁平上皮癌の特徴及び組織発生につき,文献的考察を加え報告する.
  • 草深 竹志, 宗田 滋夫, 竹中 博昭, 伊藤 章, 森 匡
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2201-2205
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    65歳女性,下部結腸癌,胆石症を同時合併した十二指腸脂肪腫の症例を経験した.十二指腸脂肪腫に関しては,術前の上部消化管透視にて水平脚の隆起性病変として捉えられていたが,内視鏡的には確認されていなかった.手術は,結腸左半切除,R2郭清,胆摘,十二指腸切開腫瘤摘出術を行った.術中所見,術後の組織学的所見より,脂肪腫と確診された.
    十二指腸脂肪腫は稀な疾患であり,検索し得た本邦報告例は51例であった.本疾患の特徴,症状,治療法などにつき検討を加えたので報告する.
  • 小山 善久, 星野 正美, 井上 典夫, 遠藤 清次, 吉田 典行, 円谷 博, 野水 整, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2206-2211
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    無胆嚢症に合併した十二指腸カルチノイドの1例を報告する.症例は73歳男性.胃透視にて十二指腸ポリープを指摘された.低緊張性十二指腸造影で十二指腸粘膜下腫瘍と診断された.又,肝Computed Tomography(以下CT),内視鏡的逆行性胆膵管造影(以下ERCP)にて,胆嚢,胆嚢管は証明されなかった.以上より,無胆嚢症に合併した十二指腸粘膜下腫瘍の診断で十二指腸切開術及び腫瘤摘出術を施行した.術後迅速病理診断ではカルチノイドであった.術中,肝床面には白色の索状物を認めるのみであり,無胆嚢症と診断した.術後は3年経過し再発などの徴候はない.
  • バイパス手術の応用
    新藤 寛, 横山 正之, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 新井 竜夫, 谷山 新次, 井原 真都, 井上 育夫, 田代 亜彦, 奥 ...
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2212-2215
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の女性で,Crohn病の再発のため過去3回の病変部位切除が施行された.今回の再発では小腸間に内瘻が形成され,周囲臓器との癒着が高度で病変部切除は困難であった.このため病変部を空置してバイパス手術兼粘液瘻造設術を施行し,症状の寛解を得た症例である.このようなバイパス手術の応用も顧みられるべきものと考えられた.
  • 泉本 源太郎, 坂田 育弘, 高橋 均, 坂口 隆啓, 山田 恭史, 北岸 英樹, 安富 正幸
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2216-2219
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    組織学的検索にて偽膜形成を証明した偽膜性腸炎を10例経験した.女性は8例,男性組織学的検索にて偽膜形成を証明した偽膜性腸炎を10例経験した.女性は8例,男性抗生剤投与後の発生であった.初発症状は救命例では下痢,発熱,腹痛であり.死亡例では嘔気,嘔吐,腹部膨満感といった麻痺性イレウス症状であった.抗生剤投与後の初発症状発現までの期間は,救命例では7.25±10.27日であり,死亡例では2±1.41日であり,死亡例の方が症状発現までの期間が統計学的に有意に短かった.また,救命例のうち2例に,前回の投与で本症を惹起したと思われる抗生剤を投与する機会をえたが,その際には本症の発現はなかった.
  • 坂口 善久, 宇都宮 徹, 森山 正明, 伊東 文明, 千葉 武彦, 奥平 恭之, 草場 威稜夫
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2220-2224
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    大量下血をきたし,血管造影で出血部位を確診して手術を行った空腸憩室症の1治験例を報告した.
    症例は52歳の男性で,下血を主訴としショック前状態で入院した.保存的治療では貧血の改善がみられず,選択的上腸間膜動脈造影で上部空腸からの出血と診断し緊急手術を行った.Treitz靱帯から肛門側約50cmと130cmの空腸間膜付着側にそれぞれ1個,計2個の憩室が認められた.いずれも二房性で,その隔壁にほぼ一致して線状潰瘍がみられた.近位側の憩室では潰瘍底に血管断端が露出しており,肉眼的にも出血部位を確認することができた.憩室はともに仮性憩室であった.
    病理組織学的に線状潰瘍と潰瘍底における動脈破綻像を示説し,外科臨床の立場から若干の考察を加えた.
  • 斎藤 節, 塩谷 猛, 北村 裕, 北浜 秀男, 長浜 充二, 庄司 佑, 岡田 多摩男
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2225-2230
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大腸に発生する非上皮性腫瘍のうちでさらに稀とされている大腸リンパ管腫を経験したので症例の概要を報告するとともに本邦報告例52例53病変を検討し考察を加えた.
    症例は69歳男性で腹痛を主訴に来院.注腸造影検査にてS状結腸に半球状隆起性病変症例は69歳男性で腹痛を主訴に来院.注腸造影検査にてS状結腸に半球状隆起性病変と診断し手術を行った.切除標本では病変の大きさは5×4cm.内部に透明な液体を含んでいた.組織学的には単純性のリンパ管腫(cavernous cystic type)と診断された.
    本邦報告例では年齢分布は20~78歳(平均55.6),男35例女17例で男性に多い.発生部位は横行結腸20例,上行結腸15例,その他の順であった.術前診断は粘膜下腫瘍が最も多いが,ポリペクトミーにより確定診断も可能である.治療法は切除が多いが適応がある場合は内視鏡的ポリペクトミーが有用である.
  • 新山 賢二, 木下 誠一, 大串 直太, 岩橋 寛治, 恒川 謙吾, 木下 研一, 蔵屋敷 隆二
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2231-2235
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    直腸癌の血行性転移は多発性のことが多く原発直腸癌切除後に肝転移・肺転移を各々切除しうることは非常に稀である.
    今回われわれは68歳の女性の直腸癌手術3年後に転移性肝癌を,8年後に転移性肺癌を切除しえた症例を経験したので報告した.
    Carcinoembryonic Antigen (CEA)値は原発巣切除前後には正常であったが肝転移,肺転移時に各々高値を示し再発の良い指標となった.
    術後経過良好で2年経過した現在再発の徴候はない.
  • 大場 範行, 吉田 雅行, 梅原 靖彦, 宮原 透, 原田 幸雄, 上山 武郎, 星野 順一郎
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2236-2240
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    60歳女性で門脈の海綿状血管腫(Cavernous Transformation)を合併した胆石症の1例を報告する.診断は血管造影にてなされ胆嚢摘出術の術中に確認された.門脈は再開通していたが狭窄しており,虫の這うような螺旋状の求肝性の副血行路を認めた.狭窄部位に一致して石灰化したリンパ節を認めた.胆嚢の炎症は軽度で胆管や膵臓にも異常を認めなかったので,リンパ節の炎症が門脈閉塞の原因と考えられた.しかし,リンパ節の炎症の原因は確定できなかった.
  • 紙野 建人, 光吉 靖夫, 清河 志明, 加藤 守彦, 加藤 保之, 奥野 匡宥, 曾和 融生
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2241-2246
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.約1ヵ月前から3~4日に1度の多量の嘔吐が発来し,さらに約1週間前から上腹部痛をみるようになり来院し,イレウスの疑いで入院した.腹部単純撮影でpneumobiliaがみられ,胆石イレウスが疑われ,中心静脈栄養法の下に水・電解質・栄養管理を行いつつ爾後の検査を施行した.上部消化管造影で空腸内に陰影欠損が認められるとともに十二指腸・結腸瘻が疑われ,腹部CTにて結石陰影が確認され,注腸造影にて十二指腸・結腸瘻が確認され,さらに胆嚢・十二指腸瘻が疑われた.ERCでは胆嚢・十二指腸・結腸瘻が強く疑われ,十二指腸内視鏡により,2個の瘻孔が確認でき,胆嚢・十二指腸・結腸瘻を伴う胆石イレウスと確診した.手術を施行し,結腸切除および胆嚢・十二指腸瘻切離を行うとともに幽門側胃部分切除を追加した.術後経過は良好で治癒退院した.
  • 沢辺 保範, 大澤 二郎, 網 政明, 黒川 善栄, 田中 誠, 白波瀬 功, 岡 浩, 篠田 正昭
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2247-2252
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ハンドルによる交通外傷で,膵断裂と外傷性腎梗塞の合併というたいへん稀な症例を経験した.患者は33歳男性で交通事故にて多発外傷のため入院.受傷後vital signに変化は認めなかったが,CTにて膵断裂と左腎梗塞を疑い,開腹術を施行した.膵および脾静脈が膵体部において完全断裂していたため膵体尾部脾合併切除を施行した.左腎も非可逆性の梗塞を起こしていると判断し切除した.
    外傷性腎梗塞は欧米では比較的多くの報告がされているが,本邦では自験例を含めて19例の報告がなされているにすぎず,膵損傷との合併は1例が報告されているのみである.その多くは受傷後数日経ってから発見されている.本例では比較的早期に診断し得たが,腎はすでに非可逆性変化を来していた.血行再建術等により腎を温存するためには,この疾患を念頭におき,さらに早期に診断することが必要と考えられた.
  • 榊原 敬, 守屋 卓, 沖 真, 前川 武男, 榊原 宣
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2253-2256
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性,急速に増大する腹部腫瘤を主訴に入院した.
    腹部血管造影およびCT検査より,左腎腫瘍と術前診断し,腫瘤摘出術・下行結腸切除術を行った.腫瘤は24×19×11cm大で,後腹膜への浸潤がみられた.病理学的検査より,腎結核と診断された.
  • 加藤 一哉, 小野寺 一彦, 草野 満夫, 鈴木 康之, 西田 靖仙, 水戸 廸郎, 村岡 俊二
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2257-2263
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    現在,腎細胞癌に対し有効な抗癌剤はほとんどなく,多剤併用療法を含めてもその有効性は10%以下である.われわれは,α型インターフェロン(IFNα)の持続動注療法の併用が下大静脈内腫瘍塞栓に著効した症例を経験したので報告する.症例は,50歳女性で下大静脈内に長さ10.5cm,最大径3.5cmの巨大腫瘍塞栓をもち,stage IIIAの右腎癌と診断された.腫瘍塞栓の縮小を目的として,腎動脈局所動注療法を施行した.我々の考案したVAU療法変法,vinblastin(VBL)+Lipiodol, adriamycin(ADM)を局所動注とし,UFTを経口投与した.また同時にrIFN-α-2a(Ro22-8181)を持続動注ポンプにて持続動注した.下大静脈内腫瘍塞栓は,IFN開始後6週目に38%,12週目に70%と著明に縮小し,下大静脈部分切除とともに右腎摘出術を容易に施行できた.副作用は,一過性で,筋肉内投与に比し特に重症なものはなく,IFNの持続動注療法は安全かつ有効な療法と考えられた.
  • 矢吹 清一
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2264-2266
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    63歳,男.肝硬変症のため大量の腹水を生じ,臍ヘルニアを合併したが,腹部膨満極度に達して破裂,噴水は約7,000mlに達した.搬送された際には全身状態は左程重篤ではなく,緊急手術を施行した.
    皮膚と癒着せる嚢とは一括して切除し,腹膜,腹直筋,その前後筋鞘は切離線を合せて密に縫合した.
    術後経過は順調で,腹壁感染は抗生物質で治癒し,ヘルニア再発もなかった.
  • 大原 正己, 柳生 岳志, 長谷川 博康, 宮下 洋, 年光 昌宏, 舘林 欣一郎
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2267-2270
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.左前腕部無痛性腫瘤を主訴に来院した.左前腕末梢側1/3の橈側に5×3×3cmの拍動性の突出,隆起した腫瘤であった.血管造影では同部に一致し,石灰化をともなった動脈瘤が存在していた.手術は瘤の中枢側および末梢側の橈骨動脈を露出し,瘤を切除のみを行った.摘出標本では大きさは6×4×3cmで,壁の連続性は全周性に保たれ,内面は器質化した血栓と比較的新しい血栓とが層状構造を呈していた.組織学的には内膜は著しく肥厚し,内膜側にはフィブリン血栓の付着,硝子化が著しかった.外膜側では血管周囲に中等度のリンパ球浸潤があり,一部では泡沫細胞も目立っていた.術後経過は良好で手指に虚血性変化はなかった.上肢末梢の動脈硬化性動脈瘤は極めてまれであり報告した.
  • 末田 泰二郎, 松浦 雄一郎, 石原 浩, 浜中 喜晴, 金広 啓一, 林 載鳳
    1989 年 50 巻 10 号 p. 2271-2275
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    最近5年間に,閉塞性動脈硬化症(以下ASO)症例22例に対し,コイル付きPTFE(IMPRAR)にて27回の血行再建術を行った.6ヵ月以内のグラフト早期閉塞2本(7.4%),遠隔期の吻合部狭窄に基づくと思われる症状再燃3本(11.1%)を経験した.早期閉塞例は血栓除去術,吻合部狭窄例には再バイパス術を行い,下肢切断を要した症例はなかった.術後42ヵ月までの人工血管にまつわる合併症の累積非発生率は70.3%であった.早期閉塞例は抗凝固剤の中止例で血栓除去術後はグラフトは開存している.遠隔期の吻合部狭窄は抗凝固療法を施行していても生じる,バルーンによる拡大術をグラフト吻合部末梢狭窄例に,人工血管壁を経由して施行する方法を1例経験し,本法が再バイパス術の代りに吻合部狭窄拡大術として利用し得る可能性があると思われた.
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