日本臨床外科医学会雑誌
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50 巻, 4 号
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  • 深尾 立, 轟 健, 折居 和雄, 石川 詔雄, 高瀬 靖広, 岩崎 洋治, 上田 廣, 青柳 啓之, 河合 勇一, 美誉志 康, 市川 意 ...
    1989 年 50 巻 4 号 p. 641-649
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    消化器領域の準無菌手術後,創感染予防目的で抗生剤を投与する指標を得るために,閉腹直前腹腔内洗浄液の細菌種と総菌数を検討した.検索症例44例全例に細菌が検出され,総菌株数は69菌株であった.胃手術と胆嚢摘出術,Miles術においては,Staphylococcus epidermidisを主とした落下細菌が検出された.総胆管切開を伴う胆嚢摘出術と結腸手術においては,Gram陰性桿菌とEnterococcus faecalisの検出率が高かった.嫌気性菌検出率は低かった.腹腔洗浄液内細菌数が最も多い症例の菌数は2.7×105菌株であったが,明らかな術後創感染症例はなかった.主に使用した予防的抗生剤のcefmetazoleは主要検出細菌種の2/3に有効であり,術後感染もみられなかった.術中汚染総細菌数からみると,特に汚染が酷くなければ,予防的抗生剤は106個の目標細菌の発育を阻止する組織内濃度を,術中維持するように投与すれば充分であると考えられた.
  • 川上 義弘, 藤田 昌宏, 渡辺 一男, 竜 崇正, 本田 一郎, 渡辺 敏, 坂本 薫, 篠原 靖志, 竹内 修
    1989 年 50 巻 4 号 p. 650-657
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺所属リンパ節に対する術前検査は触診による場合が多く充分とは言えない.特に縮小手術の適応決定においては術前のリンパ節の所見が重要な問題となる.本稿では腋窩領域のCT (AX. CT)を詳細に検討することにより,即ち患側部の乳房および所属リンパ節領域のCT (3mm幅)を撮影,これをもとにリンパ節マップを作製し,摘出標本と対比検討することにより以下の知見を得た.(1) Ax. CTから所属リンパ節は1例につき16.6±3.7個同定しえた.摘出リンパ節(24.4±7.8個)と対比した描出率は68.0%であった(n=21). (2)描出されたリンパ節は脈管走行および腋窩静脈からの距離により,その所属領域を同定しえた.(3)径3mm以上のリンパ節ではその形状・内部構造・リンパ節相互の癒着・Spiculationなどの所見がえられた.(4)以上の所見とCT値から転移リンパ節を推定しえた.
  • 今泉 宗久, 内田 達男, 新美 隆男, 内田 安司, 阿部 稔雄
    1989 年 50 巻 4 号 p. 658-663
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    輸血が免疫能低下に関与することは,腎移植等で知られている.そこで,肺癌手術例の予後における輸血の影響につき,当教室で手術を行った肺癌症例のうち評価可能な150例を対象として検討した.1986年6月現在,生存66例,死亡84例であった.P-病期Iは63例,IIは20例, IIIは60例, IVは7例であった.切除例は121例,試験開胸例は29例で,うち輸血例は91例であった.これらの症例の生存率はCaplan-Meier法に基づき,有意差はLogrank testによって統計的に処理された.術後5年生存率は無輸血群48.8%,輸血群30.2%であり(p=0.129),輸血量による差は認められなかった.P-病期別の5生率は病期Iでは無輸血群69.3%,輸血群62.5%で,病期II+IIIでは無輸血群30.8%,輸血群6.5%であった(p=0.125).手術程度別には,切除例,特に葉切例での5生率は無輸血群75.0%,輸血群49.8%で両群間に有意に差が認められた(p<0.05).従って,輸血は肺癌切除例の予後に悪い影響を与え,肺癌手術に際して不心要な輸血はなるべく避けるべきであると考えられた.
  • 荒木 賢二, 岩本 勲, 竹智 義臣, 巴 寛, 中村 都英, 城間 勉, 島山 俊夫, 古賀 保範
    1989 年 50 巻 4 号 p. 664-669
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    高齢者とくに80歳以上の超高齢者胃十二指腸穿孔手術症例の臨床像,とくに診断,治療上の問題点について検討したので報告する.対象は胃十二指腸穿孔手術症例83例で,うち80歳以上の超高齢者は7例(男性1例,女性6例,胃潰瘍穿孔2例,十二指腸潰瘍穿孔4例,胃癌穿孔1例)であった.超高齢者穿孔症例の特徴は,発症後早期の正確な診断が困難であり,そのため手術に至るまでの時間が平均40時間と長かった.従って脱水やショックにより術前腎機能障害をきたしていることが多く,併存症の合併頻度も高かった.術後の合併症も多いため治療が遷延した.術後合併症としては腎不全が最も問題であり,1例をこれにより失った.これらのことより早期に正確な診断をつけることは急性腎不全の予防と治療成績向上のために重要であると思われた.
  • 腫瘍別及び血清値との対比
    安藤 静一郎, 板倉 正幸, 野原 隆彦, 小野 恵司, 瀬下 達之, 中瀬 明
    1989 年 50 巻 4 号 p. 670-675
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    抗CA19-9モノクローナル抗体を用いて,腫瘍組織の免疫組織学的検索を行った.症例は膵癌4例,胆道癌6例,胃癌4例,乳頭部癌3例,十二指腸癌1例,結腸癌1例及び卵巣奇形腫1例の計20例で,切除組織及び生検組織のホルマリン固定後のパラフィン切片を作成し,酵素抗体法(peroxidase-antiperoxidase method, PAP法)にて染色した.ほとんどの症例(18例)に染色がみられ,臓器特異性はなかった.染色態度は,細胞膜型,細胞質型(微漫型,顆粒型)間質漏出型,腺腔内分泌型等様々であったが,間質漏出型に血清CA19-9高値例が多かった.非癌組織では膵管上皮,変性膵腺房細胞,胆管上皮,腸上皮化生部,卵巣の顆粒膜細胞に染色がみられた.抗CA19-9モノクローナル抗体を用いた免疫組織学的検索は,診断及び治療への応用に有用であると思われた.
  • とくに診断面より
    石原 通臣, 森田 建, 岡部 郁夫, 宗像 敬明, 武 豪, 岩田 光正
    1989 年 50 巻 4 号 p. 676-686
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1948年4月より,1987年12月までの30年間に日本大学第1外科において虫垂炎として開腹した15歳以下の1,105例について,臨床的統計及び診断的事項について検討した.虫垂炎は1,024例,非虫垂炎は81例7.3%であった.4歳までの68例についてみると,79%が穿孔性であり,発症より手術までの時間が48時間以上では穿孔性が79.1%と多かった.6歳以上の908例では21%がカタル性と非虫垂炎であった.
    診断に関しては1948年4月~1965年12月の前期において臨床所見を中心に,1966年1月~1978年12月の中期において腹部単純X-P所見を加味し,1979年1月~1987年12月の後期において注腸造影を行った.その結果カタル性虫垂炎の頻度は前期37%,中期14%,後期3%と減少し,注腸造影は診断に有用な検査法であった.
  • 熊谷 眞喜子, 今野 喜郎, 新井 元順, 里見 孝弘, 高倉 一夫
    1989 年 50 巻 4 号 p. 687-691
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去13年間に経験した大腸癌緊急手術例74例について検討した.内訳はイレウス54例,穿孔16例,出血3例,炎症1例であった.腫瘍占拠部位は,イレウス例では大腸のいずれの部位にもみられたが,穿孔例ではS状結腸以下に多かった.Stage分類をみると,stage III以上が,イレウス例では83%と進行例が多いのに対し,穿孔例では50%と比較的早期例もみられた.術式についてみると,イレウス例では一期的切除術は39例に,二期的切除術は4例に行われ,穿孔例では,それぞれ6例,10例であった.直死例をみると,イレウス例では5例(9.3%)で,すべて一期的吻合術後であり,術式の選択には慎重であるべきと思われた.穿孔例では4例(25%)の直死例があり,厳重な術前術後管理が望まれる.予後をみると,イレウス例では,待期手術と類似の傾向を示したが,穿孔例では,イレウス例に比べてやや不良であり,重篤な腹膜炎が予後に影響しているものと思われた.
  • 小田 高司, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 松下 昌裕, 久世 真悟, 真弓 俊彦, 村上 文彦, 近藤 真治, 塩見 正哉 ...
    1989 年 50 巻 4 号 p. 692-696
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    4腺腫大を伴い,組織学的に核分裂像のみられた原発性上皮小体機能亢進症を経験した.症例は37歳男性で昭和50年原発性上皮小体機能亢進症のため腫大した上皮小体2腺を摘出している.術後経過を観察中であったが昭和61年になり,再発が確認された.再手術を行い,残存上皮小体全摘術を行い,胸鎖乳突筋内にその一部を移植した.組織学的には4腺ともほぼ同様の所見でシート状,嚢状,小嚢胞状あるいは濾胞形成をしめす細胞増生がみられ,大型核,核分裂像が散見された.本疾患では過形成と腺腫は組織学的にも鑑別が困難で,1腺腫大は腺腫,4腺腫大は過形成と考えるのが一般的である.過形成に核分裂像をみとめたとの報告もみられるが,通常は核分裂像は過形成では観察されず上皮小体癌に特徴的な所見と考えられてきた.自験例は4腺腫大をみとめ臨床的には過形成と考えられたが組織学的に核分裂像が観察され興味深い症例である.
  • 佐々木 正寿, 川浦 幸光, 宗本 義則, 村上 望, 関戸 伸明, 岩 喬
    1989 年 50 巻 4 号 p. 697-701
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1980年1月から1987年12月までの8年間に,金沢大学第1外科で手術を行ったバセドウ病症例は81例である.このうち,4例(4.9%)に甲状腺癌の合併が認められた.術前に甲状腺の腫瘤に気付いていたのは1例のみで,他の3例は術中の触診または術後の病理学的検索で初めて腫瘤の存在に気が付いた.術前に診断の付いた症例では,頸部の超音波検査が有用であった.合併した甲状腺癌は4症例ともに1.0cm以下の微小癌で,現在再発を認めず良好な予後を得ている.また,術前に使用した抗甲状腺剤と甲状腺癌の発生の間には,特別な関係は認められなかった.
    バセドウ病患者の手術にあたっては,術前に腫瘤の有無の検索を行い,腫瘤が認められるときには手術術式の決定,術前術後の管理に注意を要すると考えられた.
  • 沈 秀明, 鈴木 正康, 亀岡 伸樹, 平岩 克正, 佐藤 晴男, 新実 紀二
    1989 年 50 巻 4 号 p. 702-710
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌は乳癌取扱い規約に於て特殊型の1つに分類され,その肉眼的・組織学的形態の特異性と比較的予後の良い事で知られている.
    われわれは過去7年間(1976年1月~1982年12月)に,乳癌根治術167例中7例(4.2%)の粘液癌を経験したので臨床病理学的に検討を加えた.純型は3例,混合型は4例であった.
    HE染色の他にPAS染色,Alcian-Blue染色(pH 2.5)を施し,光顕レベルよりその組織学的特徴を観察した.
    I) 純型:1) 縮小手術が考慮される.2) 初期像とも考えられる興味ある組織像がみられた.
    II) 混合型:1) 腫瘤の大きさやリンパ節転移の有無等を参考に通常型癌と同様の治療方針を立てる必要がある.2) 通常型癌が粘液産生し,その結果混合型粘液癌へと変貌していく可能性が高い.
  • 由良 博, 山中 祥弘, 安村 忠樹, 岡 隆宏, 原田 善弘, 伊志峯 玄光, 安住 修三, 上田 泰章
    1989 年 50 巻 4 号 p. 711-716
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    男子乳癌は比較的稀な疾患であり,予後は女子乳癌より悪いと報告されている.今回,原発乳癌症例1,353例中9例(0.67%)の男子乳癌症例を経験したので検討を加えた.平均年齢は63.3±15,0歳で,病悩期間は3.8±4.6ヵ月であった.主訴は9例中8例が腫瘤触知であった.病期は全症例において,stage IまたはIIであり,8例については根治術(定型的乳房切断術4例,Patey 2例,Auchincloss 2例)を施行し,他の1例は腫瘤摘出のみ施行した.病理組織学的には,7例中4例に腋窩リンパ節転移が証明された.6例には術後補助化学療法を施行したが,内分泌療法は施行しなかった.再発症例は4例で,うち2例は局所再発であり,他の2例では肺転移を認めた.肺転移症例に対しては,種々の化学療法,内分泌療法を施行したが,完全寛解には至らなかった.しかし,こう丸摘除術,Tamoxifen (TAM)投与などの内分泌療法が比較的効果を認めた.したがって,男子乳癌再発症例に対しては,TAMを中心とする内分泌療法を積極的に試みるべきと考える.
  • 既報告例のその後の臨床経過
    中野 憲一, 野水 整, 渡辺 文明, 渡辺 隆紀, 菊地 洋一, 鈴木 眞一, 浦住 幸治郎, 二瓶 光博, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1989 年 50 巻 4 号 p. 717-722
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は34歳女性で,授乳期に両側乳房の腫脹,圧痛が出現した.断乳により症状は軽快したが,再度乳房が腫脹し当科入院.両側乳腺肉腫と診断された.昭和60年9月12日両側乳房切断術を施行,術後の組織診にて,diffuse lymphoma Burkitt typeと診断された.(症例は,「癌の臨床32巻9号,1986年」に報告した.)患者は術後よりリンパ腫脳内病変のため昏睡状態に陥ったが,化学療法(VEPA療法),放射線療法によりほぼ完全寛解を得,退院した.その後,Burkittリンパ腫脊髄腔内病変,脳内病変のため,3度入院したが,いずれもVEPA療法により症状は改善した.昭和62年5月5日,再度昏睡状態に陥り,5度目の入院となった.VEPA療法により一時症状は改善したが,昭和62年10月13日,腫瘍死した.
    今回,成人の乳腺腫瘤を初発症状とした.Burkittリンパ腫の1例の全経過を若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 末田 泰二郎, 石原 浩, 浜中 喜晴, 金広 啓一, 林 載鳳, 内田 直里, 松浦 雄一郎
    1989 年 50 巻 4 号 p. 723-728
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性で,吐血,意識障害で近医で精査をうけ,肝部下大静脈閉塞症と診断された.術前の肝機能検査で,総ビリルビン値は1.9mg/dlであったが,ICG停滞率51.8%,消失率0.045,ヘパプラスチンテスト29.7%と高度の肝機能障害を伴っていた.肝部下大静脈は横隔膜直下で閉塞し,閉塞部は2cmであった.肝静脈のうち右肝静脈は下大静脈に流入していた.下大静脈には壁在性血栓を大量に認めた為にカテーテル穿破術は行わず胸骨正中切開,腹部正中切開下に,16mmリング付PTFEグラフトにて下大静脈-右房バイパス術を施行した.同術施行前後で下大静脈圧,門脈圧は22mmHg→14mmHg, 23mmHg→18mmHgと低下,更に術後は腹水消失,腹壁静脈怒張消退,食道静脈瘤の消退と臨床症状の著明な改善を得た.本法は低侵襲な手術法で,肝機能障害の重篤な肝部下大静脈閉塞症には有用な手術法と考えられた.
  • 細川 哲哉, 八板 朗, 千葉 武彦, 森山 正明, 綾部 欣司, 掛川 暉夫
    1989 年 50 巻 4 号 p. 729-733
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    28歳,男性.主訴,呼吸困難.胸部X線写真にて右側肺完全虚脱を認め,右自熱気胸と診断した.発症より42日が経過していると考えられたため,re-expansion pulmonary edema (REPE)の併発を考慮にいれ徐々に脱気したが,3時間20分後,咳,呼吸困難,胸痛が出現した.胸部X線写真にてREPEと診断し,-12cm水柱で持続吸引を開始し,酸素,ステロイド投与を併用した.翌日,症状は改善したが,胸写異常陰影は約1週間持続した.われわれの施設における過去3年間の自然気胸は12例であり,3例にREPEを併発した.これらの症例は全例患側肺の完全虚脱症例で,このような症例ではREPEの発症を念頭に置く必要がある.
  • 島貫 公義, 千葉 惇, 浜田 修三, 板橋 邦宏, 佐竹 賢仰, 佐戸川 弘之, 齋藤 拓朗, 浅野 宏, 渡辺 寛
    1989 年 50 巻 4 号 p. 734-738
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性,胸部下部食道癌にて胸骨後頸部食道胃管吻合を用いた食道癌根治術を施行され,術後1年目に呼吸困難が出現した.術前後に照射療法は施行していない.
    気管支鏡,胸部CT検査,気管断層X-Pにて,気管分岐部より1cm口側に全周性の狭窄を認めた.局所再発所見はなく,食道癌根治術における気管周囲リンパ管郭清に伴う血行障害が原因と考えられ,気管狭窄部切離,気管形成術を施行した.
    前回根治術時は右気管支動脈は切断されており,気管狭窄の原因は気管鞘内の両側に存在する左右下甲状腺動脈,気管支動脈などから形成されるlateral longitudinal anastomosisの損傷による気管虚血が原因ではないかと考えられた.
  • 野村 栄治, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 安田 正幸, 山田 眞一, 磯崎 博司, 松井 昭彦, 池上 正哉, 三好 和裕, 小溝 芳美
    1989 年 50 巻 4 号 p. 739-744
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌の発育形態として比較的稀な胃外発育型胃癌の1例を報告し,加えて本邦報告例40例を集計し,自験例とともに検討した.症例は35歳,女性,心窩部痛を主訴として来院した.胃透視にて胃空腸瘻を認め,胃X線,胃内視鏡像から胃体部大弯側の胃粘膜下非上皮性悪性腫瘍を疑ったが,潰瘍底部の生検にて腺癌の像を得たため,胃外発育型胃癌と診断した.術中所見では胃体部大弯側に手挙大の弾性硬な腫瘍があり,横行結腸,空腸,膵,脾に浸潤していた.手術は胃全摘及び膵体尾部,横行結腸,空腸合併切除を施行した.(H0P0S3N4(+)Stage IV).病理組織診断は高分化型腺癌,リンパ節転移程度はn1(+)であった.胃外発育型胃癌本邦報告例を文献的に検討すると,主訴は腹部腫瘤が最も多く,好発部位は胃体下部大弯側に多かった.組織型では分化型癌,低分化型癌の頻度はほぼ同率であったが,低分化型癌のうち間質量が髄様型の頻度が高率であった.
  • 深町 信介, 田中 述彦, 遠藤 潔, 柴田 昌彦, 天野 定雄, 森田 建
    1989 年 50 巻 4 号 p. 745-748
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    残胃に発生する悪性腫瘍のうち,極めて稀な残胃平滑筋肉腫を1例経験したので報告する.
    症例は75歳,男性,53歳の時に胃潰瘍で幽門側胃切除を受けている.入院時には,貧血と全身倦怠感を認めた.上部消化管造影にて,残胃に潰瘍を有する隆起性病変を認めた.胃内視鏡検査では残胃前壁に柔かく易出血性の潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認め,胃生検の病理学的診断は平滑筋肉腫であつた.手術は残胃全摘術,脾合併切除,第2群リンパ節郭清を施行した.術後経過は順調であったが,1年10ヵ月後に肝転移で死亡した.本症の予後改善の為には,血行転移による肝再発の予防となる有効な化学療法の確立が望まれる.
  • 久我 貴之, 守田 信義, 沖野 基規, 植木 幸一, 兼定 博彦, 江里 健輔, 丸本 多
    1989 年 50 巻 4 号 p. 749-755
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    近年,重複癌の報告は増加しつつあるが,同時性三重複癌手術例の報告は少ない.症例は44歳,女性.右乳房無痛性腫瘤に気付き,右乳癌の診断で定型的乳房切断術を受けた.組織学的には充実腺管癌,Stage I (t1nm0)であった.退院後5-FU 200mg/日,PSK 3g/日, TAM 20mg/日の投与を受けていた.退院後101日目に心窩部痛をきたし,胃内視鏡検査で胃癌と診断され,同時に行われた注腸検査で上行結腸に径約2cmの亜有茎性ポリープを発見された.幽門側胃切除術および腸切開によるポリープ摘除術を施行した.組織学的に胃癌は印環細胞癌,Stage I (H0P0n0m)で,大腸ポリープは腺腫内癌であった.術後3ヵ月の現在経過良好で社会生活に復帰している.癌治癒率の向上により,癌患者では癌再発発見のみならず,第2癌の早期発見に努めるべきである.
  • 小野田 尚佳, 前田 清, 石川 哲郎, 池原 照幸, 奥野 匡宥, 梅山 馨
    1989 年 50 巻 4 号 p. 756-760
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病(以下VRD)に合併した直腸癌の1例を経験した.症例は58歳,男性.VRDの家族歴はなく,20歳頃VRDと診断された.肛門出血を主訴とし,諸検査にてRa領域の直腸癌と診断され,低位前方切除術が施行された.術中所見はP0,H0, N1, S2で,組織学的には中分化型腺癌,s, n1であった.なお,腹腔内には神経線維腫の存在等の異常所見はなかった.
    VRDにneural crest起源の腫瘍が合併しやすいことはよく知られているが,自験例のような消化器癌の合併例の報告は少ない.今回検索し得た本邦報告例44例につき文献的検討を行ったところ,性差はなく,年齢は平均52.3歳,家族歴の有無による相違は認められなかった.しかし癌発生部位では,十二指腸乳頭部癌,膵癌の合併例が29%と多く,またVRDと癌発生の間に強い因果関係が示唆される例もみられ,かかる点については,今後症例を重ね検討を要すると思われた.
  • 廣本 雅之, 津嶋 秀史, 高橋 正人, 日下部 輝夫
    1989 年 50 巻 4 号 p. 761-766
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    今回,下行結腸に原発した極めて稀なびまん浸潤型大腸腺扁平上皮癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は31歳,女性.2週間前より左下腹部痛と下血を認め当院受診,入院となる.下部消化管造影・内視鏡で粘膜面は保たれているものの約15cmにわたり下行結腸の全周性狭窄を認め,びまん浸潤型癌の診断にて左半結腸切除術,人工肛門造設術を行った.病理組織学的には漿膜に達する腺扁平上皮癌で高度のリンパ管侵襲と間質結合織の増生を示した.
    結腸のびまん浸潤型癌は本邦において113例の報告があり,40歳台,男性,直腸~S状結腸,低分化型腺癌や印環細胞癌,深達度ss~sの症例が多く,予後は極めて悪く平均術後生存期間6.9ヵ月である.
    なお,本症例のごとく腺扁平上皮癌の形態を示したものは過去1例のみであり極めて稀と考える.
  • 斎藤 如由, 荒瀬 正信, 田代 征記
    1989 年 50 巻 4 号 p. 767-771
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝右葉の転移性肝癌非切除例に対して,右肝動脈,右門脈枝の同時結紮術を施行し,臨床的に有効性を認めたので報告する.患者は61歳の女性で,昭和60年7月18日にS状結腸癌の診断でS状結腸切除術を施行.外来経過観察中,昭和61年10月の腹部CTで肝右葉にlow density areaを2ヵ所認めた.昭和61年10月29日に開腹し右肝動脈と右門脈枝を同時に結紮した.術後shockや肝不全は併発せず,腫瘍の縮小,CEAの低下を認め軽快退院した.その後緩徐なCEAの増加を認めていたが,昭和62年9月15日急性心不全で死亡した.
    種々の肝血流遮断術が肝悪性腫瘍に対し施行され,その有効性が認められているが,一側の肝動脈と門脈枝を同時に結紮した例の報告はなく,本術式の持つ有効性と問題点について考察した.
  • 齊藤 博, 三科 武, 石原 良, 高野 邦夫, 鈴木 伸男
    1989 年 50 巻 4 号 p. 772-778
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    総肝管癌を合併した先天性胆道拡張症,術後長期生存中の1例を報告する.症例は31歳男性,主訴は右季肋部痛,術前血清生化学検査は正常.術中,嚢腫を切開し1.8×1.8cmの腫瘤を認め迅速標本で腺癌の診断をえ,膵頭十二指腸切除術を施行.肝門側断端近くにも0.5×0.7cmの小腫瘤あり2cmの断端追加切除.癌腫は中分化型腺癌でStage I(ss, n0).小腫瘤は異型上皮を伴う炎症性腫瘤であった.嚢腫は最大径10cm,長さ14cmで左肝内にも拡張ある戸谷頒IV-A型で,長さ1cm,径2mmの狭窄部をもって膵管に直角に合流し,2.5cmの共通管でVater乳頭に開口する合流異常があり,胆汁中アミラーゼ値は275, 280IU/Lと高値.術後6年経過し再発の兆候なく健在である.拡張した肝内胆管での第二の発癌は皆無とは云いきれず,今後ともfollowしたい.
  • 松崎 正明, 村瀬 正治, 赤座 薫, 堀尾 静, 佐久間 温巳
    1989 年 50 巻 4 号 p. 779-782
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1979年から1987年までの8年間に手術した30例の胆嚢癌について臨床的検討を加えた.年齢は50歳から83歳で,平均66歳であった.男女比は1:3.3であった.主訴は腹痛,黄疸が多かった.補助診断法としてはCT,超音波が有用であった.術前に胆嚢癌と診断しえたのは19例(63%)であった.切除しえたのは17例(57%)であり,このうち治癒切除は6例(35.3%)のみであった.生存月数は切除例は1~72ヵ月,平均15.6ヵ月,非切除例は8日~14ヵ月,平均3.9ヵ月であった.3年以上生存例は4例あり,いずれも乳頭状腺癌で治癒切除出来た症例であった.
  • 三尾 寿樹, 有馬 純孝, 土器 潔, 二見 喜太郎, 重田 正義, 山崎 宏一, 池永 英恒, 中野 元
    1989 年 50 巻 4 号 p. 783-787
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    多発性非機能性膵島腫瘍の1例を経験した.症例は66歳の女性で,上腹部腫瘤を指摘され当科に入院した.内分泌学的諸検査ならびに画像診断,血管造影で,膵頭部及び膵尾部に存在する多発性非機能性膵島腫瘍と診断し,外科的切除術を行った.
    本例の報告は稀であり,術前診断を中心に,文献的考察を加え報告する.
  • 三浦 敏夫, 平野 達雄, 中越 享, 三根 義和, 渡部 誠一郎, 草野 裕幸, 清水 輝久, 石川 啓, 下山 孝俊, 富田 正雄, 川 ...
    1989 年 50 巻 4 号 p. 788-796
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃十二指腸動脈瘤の1例と脾動脈瘤の2例の手術例を経験した.いずれも女性で,脾動脈瘤の2例はそれぞれ早期胃癌と胆石症で検査中画像診断で脾門部に石灰化が発見され,動脈瘤による症状はなかった.胃十二指腸動脈瘤では腹痛と吐血で急性に発症し,肝機能障害を伴う間欠的な胆道出血を現し,超音波,CTと腹腔動脈造影で診断した,治療は脾動脈では原疾患の手術に際して脾膵尾部合併切除で動脈瘤切除を行った.胃十二指腸腸動脈瘤では血管造影に際してコイルによる栓塞術を行ったが完全止血が得られず膵頭十二指腸切除により摘除し,出血の原因は動脈瘤総胆管間の瘻孔によることが明らかにされた.成因は2例では動脈硬化性と診断された.
  • 田口 和典, 真鍋 邦彦, 田村 元, 大村 孝志, 石村 美樹
    1989 年 50 巻 4 号 p. 797-803
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    後腹膜発生の巨大なHemangiopericytomaを経験したので報告する.
    症例は38歳女性で,主訴は腹部腫瘤.CT,排泄性尿路造影で右腎を左に圧排する腫瘤が認められ,血管造影では腰動脈を栄養血管とする腫瘤であった.後腹膜腫瘍の診断で開腹し,1570gの腫瘍を摘出した.組織学的に良性の後腹膜Hemangiopericytomaと診断された.
    本疾患の後腹膜原発例のうち,本邦報告例26例を集計しえたので若干の文献的考察を加え報告した.
  • 青山 まこと, 樽見 隆雄, 板倉 正幸, 山本 剛史, 野原 隆彦, 田村 勝洋, 中瀬 明, 長岡 三郎, 三浦 弘資
    1989 年 50 巻 4 号 p. 804-809
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫は比較的稀な疾患である.また,化学療法が有効であったという報告は少ない.しかし,化学療法によって著明な腫瘍縮小効果が得られた1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告した.
    症例は63歳の男性.発熱,腹部腫瘤を主訴として来院した.諸種の画像診断により腹部大動脈,下大動脈,左尿管をまきこみ,左腎下極より左鼠径部に至る後腹膜腫瘍と診断された.病理組織学的には針生検により,脂肪肉腫と診断された.
    Adriamycin, Cyclophosphamide, Vincristine, Dexamethasoneによる化学療法を施行し,約2ヵ月後,画像診断上,腫瘍の消失を認めた.
  • 林 載鳳, 金広 啓一, 末田 泰二郎, 浜中 喜晴, 石原 浩, 松浦 雄一郎
    1989 年 50 巻 4 号 p. 810-812
    発行日: 1989/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去5年間に鎖骨下動脈起始部閉塞を10例経験し,8例に手術を施行した.大動脈腋窩動脈バイパス術を3例,各種非解剖学的バイパス術を4例,鎖骨下動脈総頸動脈端側吻合術(いわゆるTransposition法)を1例に施行した.いずれも症状の軽快と良好な開存を得ているが,大動脈腋窩動脈バイパス術症例では持続する創部痛と肺炎を合併症として認めた.非解剖的バイパス術症例の1例に一過性嗄声を認めた.
    Transposition法は皮切が1ヵ所で済むこと,人工血管を使用しないこと,ワーファリンの不要なこと,合併症の少ないこと,長期開存の長いこと等より本疾患に対する第一選択の手術法となり得る術式であると思われる.
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