日本臨床外科医学会雑誌
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51 巻, 12 号
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  • 加藤 健一, 山本 貞博
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2579-2585
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    70歳以上の高齢者で上部消化管出血を来し,術前に600ml以上の輸血補正を要した食道疾患2例,胃十二指腸疾患40例,胆膵疾患17例,肝疾患9例の計68症例を経験したが,少数の食道疾患と複雑な肝疾患を除き,胃十二指腸疾患,胆膵疾患57例の治療成績を中心に検討した.
    胃十二指腸疾患中,良性の11例では,3例に待期手術,8例に緊急手術が行われ,1例を呼吸不全で失ったほかは良好な成績であった,悪性の29例では,10例の緊急手術のうち4例を失い,根治性にも問題を残したが19例の待期手術の結果は良好であった.胆膵疾患では,緊急手術例はなく,17例中の16例が黄疸を伴う悪性疾患で,出血量にくらべ術後合併症は重篤化し7例を失った.
    今後ますます増加が予測される高齢者の出血症例では,術後合併症を回避する綿密な管理が必要であり,特に悪性の胃十二指腸疾患では緊急手術を避けるべきである.
  • 小林 孝一郎, 川浦 幸光, 大村 健二, 佐々木 正寿, 宗本 義則, 金平 永二, 岩 喬, 山田 哲司
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2586-2590
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全における透析患者には出血傾向や創傷治癒の遅延,易感染性,組織の脆弱性,血管病変の存在など手術を行う上で極めて困難な問題を抱えている.
    われわれは,昭和62年6月より平成元年5月までの2年間に慢性腎不全による血液透析患者の消化器系の手術を5例経験した.年齢は54歳から66歳(平均60歳)で,男性4例,女性1例であった.良性疾患4例,悪性疾患1例で,術前透析期間は2ヵ月間から15年6ヵ月間(平均8年6ヵ月間)であった.予定手術3例,緊急手術2例で,術後合併症は1例に認められたが,5例とも生存中である.手術を行うに当たって重要なポイントは,(1)術前透析,(2)愛護的な手術,(3)栄養の補給,そして,(4)水・電解質のコントロールである.このことを中心に細心の注意を払うならば,十分安全に手術を行い得ると考える.
  • 鈴木 正人, 土屋 敦雄, 滝田 賢一, 菅野 浩樹, 佐藤 久芳, 安藤 善郎, 遠藤 清次, 竹内 眞一, 阿部 力哉
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2591-2597
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1956年から1988年までの33年間に福島医大第2外科で経験した甲状腺未分化癌13症例1956年から1988年までの33年間に福島医大第2外科で経験した甲状腺未分化癌13症例検討した.症例は男性6例,女性7例,平均年齢は68.7歳であった.症例全体の1年生存率は10.3%であり,全症例ともに14ヵ月以内に死亡した.生存率を腫瘍の大きさT因子によって比較するとJT2以下の症例の方がJT3以上の症例よりも良い傾向にあった.各種治療法と予後の関係を見ると手術治療例に関しては姑息手術に比べ治癒手術を施行したものの方が,また,放射線療法施行例も無照射例に比べ有意差は無いもののその生存率は良い傾向にあった.化学療法の有効性は今回の検討では認められなかった.未分化癌の予後を左右する因子としては腫瘍の大きさがもつとも大きいと考えられた.
  • 浅越 辰男, 花谷 勇治, 堀江 文俊, 根本 明久, 城戸岡 謙一, 高見 博, 高田 忠敬, 四方 淳一
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2598-2602
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    本邦婦人の乳癌罹患数の著しい増加に伴い,早期発見・早期診断の重要性がますます高まっている現状であるが,(a)非浸潤癌noninvasive carcinomaの診断と,(b)触知不能(T0)癌の診断は臨床家の苦労するところである.そこで今回は,自験乳癌症例268例から,上記の(a)24例,(b)16例を検索対象として,診断上のポイントの具体的方法に関し検討した.その結果,非浸潤癌の診断法は,(1) 血性乳頭分泌に対する乳管区域切除38%,(2) マンモグラフィー(MMG)上の微細石灰化部の摘出生検8%,(3) 嚢胞内乳頭状病変の(2) マンモグラフィー(MMG)上の微細石灰化部の摘出生検8%,(3) 嚢胞内乳頭状病変の検33%であった.またT0癌の診断法は,非浸潤癌診断法の,(1) 69%, (2) 12%, (4) 7%であった.以上より乳管区域切除法は,非浸潤癌診断の38%, T0癌診断の69%を占め,乳癌早期診断上きわめて有用であると考えられた.
  • 栗栖 純穂, 長田 博昭, 平 泰彦, 横手 薫美夫, 山手 昇
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2603-2606
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1978年以来当科では,特発性自然気胸に対する開胸手術に際し,術後再発気胸の防止目的で,肺の処置に加え壁側胸膜の切除を併せ行うことを原則とし,209例251側にこれを行った.胸膜の切除範囲として,開胸部よりapical cupolaにかけての頭側の壁側胸膜部分切除を標準とし,縦隔側は,右は奇静脈,左は大動脈弓の各々の頭側縁までに留めている.249側中2側に手術方法に関連すると思われた再発を認め,再発率は0.8%であった.胸膜無処置や胸膜擦過法の諸家の報告での術後再発率2~3%と比較すると,胸膜切除を行った自験での再発率の方が低く,胸膜切除併施は再発防止に有効であり,ルーチンに併せ施行すべきものと思われた.なお,胸膜切除併施後の再発は,胸膜非切除部のみに生じる部分気胸であり,胸膜癒着術の追加で容易に対処できた.
  • 大石 明雄, 菅野 智之, 高野 祥直, 外山 雅文, 斎藤 拓朗, 竹重 俊幸, 管野 隆三, 薄場 彰, 井上 仁, 元木 良一
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2607-2611
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1989年4月までの約10年間に,当教室で経験した肺癌を含んだ重複癌は13例で,全肺癌の7.0%であった.年齢,性差,肺癌の組織型は全肺癌と比較して差はなかった.胃癌7例,大腸癌3例,食道癌と子宮癌と乳癌が各1例であった.同時性異時性とも消化器癌が多数を占めた.肺切除術を行った12例の5年生存率は17.0%で,肺癌死以外の3例を除いた9例の5年生存率は28.2%であった.肺癌診断治療と術後の長期follow-upにあたっては,特に消化器系を中心とした重複癌の早期発見早期治療を念頭に置く必要がある.
  • とくに傍大動脈リンパ節転移診断について
    児玉 一成, 田中 政治, 町 淳二, 孝冨士 喜久生, 橋本 謙, 武田 仁良, 掛川 暉夫
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2612-2615
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌手術において,術中超音波検査を腹部傍大動脈リンパ節転移の診断に用い,その有用性について検討を行った.傍大動脈リンパ節転移診断については,過去に描出された同リンパ節の割面の短・長2径を計測した結果より,長径7mm以上でかつ短・長径比0.5以上を転移陽性とする診断基準を設定した.また,エコーレベルで低エコー,もしくは低エコーと高エコーが不規則に混在する場合も転移陽性と判断した.その結果,傍大動脈リンパ節転移診断は,sensitivity 100%, specificitiy 90%, overall acurracy 93%で,同リンパ節の転移の有無を判定するうえで術中超音波検査は有用であり,術式決定の補助手段となりうるものと思われた.
  • 江端 俊彰, 南田 英俊, 浦 英樹, 高島 健, 服部 憲尚, 浅石 和昭
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2616-2620
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1977年1月より1987年12月までの11年間に当科で経験し手術した早期胃癌231例を対象とした.そのうち分化型胃癌151例,低分化型胃癌80例につき臨床病理学的に比較検討した.分化型胃癌では隆起型44.1%,低分化型胃癌では陥凹型85.4%と高率で,占居部位は分化型癌はA領域,低分化型癌はM領域に多かった.低分化型癌のうちsigではm癌,porではsm癌が多かった.胃癌組織の浸潤増殖,リンパ管侵襲,静脈侵襲では,porが侵襲が強く,sigは軽度であった.組織型とn因子の関係では,tub2, porにリンパ節転移陽性例が多かった.腫瘍径1cm未満では,リンパ節転移がみられなかった.早期胃癌による血行転移を4例,経験したが,すべてsm癌,リンパ節転移陽性例であった.
  • 更科 広実, 谷山 新次, 斉藤 典男, 布村 正夫, 井原 真都, 横山 正之, 中山 肇, 小田 奈芳紀, 白井 芳則, 奥井 勝二
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2621-2626
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する術前照射療法(42.6Gy)で,腫瘍体積がどのように変化しているか臨床的に検討した.非照射群15例に,経直腸的超音波診断法と切除標本を用いて体積を計測し比較した結果,両側定値の差は14.6%と少く,互に相関関係(R=0.952)が認められた.術前照射群15例に,同様の方法を用い腫瘍体積の縮小率を測定した結果,中等度(≧40%)以上縮小した症例は80%を占め,平均縮小率は55.1%であった.このように腫瘍体積の変化を測定することは,照射効果や照射線量を予測する上で臨床的に極めて有用な方法であることが示唆された.
  • 中本 実, 成瀬 勝, 柳沢 暁, 秋田 治之, 遠山 洋一, 稲垣 芳則, 高橋 恒夫, 水崎 馨, 長 剛生, 青木 照明
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2627-2632
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞性肝癌に対して肝切除を施行し得た症例のうち,3年以上生存症例と3年未満生存症例との比較においてどの様な点が異なるかを検討した.対象は53例の肝切除例で,3年以上の生存を期待できる点で次のような結果を得た.1)腫瘍の大きさが平均3.5×3.2cm以下の場合,2)切除範囲が病巣占拠率(E)でみると平均30±10%以下である場合,3)術前後のAFP値の減少率が約96%以上の場合は3年以上の生存期間の延長が認められ,その値が高いほど生存期間の延長を期待できた.4)Vp因子,特にVp1以下の場合からでは予後を判定し得なかった.5)原発巣が多発の場合は3年以上生存は期待できなかった.6)細胞異型度をしめすEdmondson分類からは予後を推定できなかった.
  • 橋本 直樹, 西岡 昭彦, 芦田 寛, 琴浦 義尚, 石川 羊男, 宇都宮 譲二
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2633-2637
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後の再建法は当教室において従来より今永法とChild法を施行している.両再建法の残存膵内外分泌機能に及ぼす影響および食物塊と胆汁との混合状態を比較検討した.75g OGTTでは耐糖能は今永法がやや優れ,Insulinogenic Indexも今永0.43±0.07に対してChild 0.33±0.08と,今永がやや優れていた.PFD試験でも今永75.3±7%, Child 58.4±4%と今永法が有意に良好であった.胃胆道シンチでは,Childではいずれの症例においても挙上空腸脚にTcのうっ滞が認められ食物胆汁混合開始時間も今永20±5分,Child 48.5±3分とChdld法は遅延が認められた.以上より今永法はChild法に比し残存膵内外分泌機能に与える影響は良好であり,また食物胆汁混合状態も良好であった.
  • 加藤 健志, 赤木 謙三, 岡村 泰彦, 高塚 雄一, 河原 勉
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2638-2640
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性で,全身の色素沈着と右乳房腫瘤を主訴に来院した.皮膚病変が強く,角質増生があり,全身の色素沈着が著明なため黒色表皮腫と診断した.また乳頭腫瘤に関しては,他院による生検および本院の画像所見により,T4bN2M1c/stage IVの乳癌と診断した.まず術前に動注療法を行い,ついで定乳切を施行,術後は化学内分泌療法施行中であり,皮膚病変の軽快傾向が認められている,また全経過を通して他の悪性腫瘍の併存は認められなかった.
    最後に以上のことより,本症を乳癌に併存した黒色表皮腫として報告する.
  • 保坂 茂, 鈴木 修, 武藤 俊治, 古屋 隆俊, 岩崎 甫, 松川 哲之助, 上野 明
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2641-2644
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は,40歳のMarfan症候群の独身女性で,幼少時から漏斗胸を認め,2年前に解離性大動脈瘤(De Bakey I型)を発症し,Bentall手術を受け,以後スピロノラクトンを内服していた.今回,右乳房に対し定型的乳房切断術を施行した.病理組織診断は,リンパ球浸潤の著しい乳頭腺管癌でt2, n2, M0, stage IIIであった.本症例では,併存疾患から治療上の問題点として,診断から治療までの過程,術式選択,皮膚切除範囲,皮膚切開形状などがあげられ,またスビロノラクトンの長期内服との関連から発生因的にも興味が持たれた.
  • 川渕 孝明, 伊福 真澄, 窪田 芙佐雄, 南 寛行, 河部 英明, 梶原 啓司, 地引 政晃, 七島 篤志, 坂井 秀隆, 松尾 武
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2645-2648
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    患者は66歳,男性.6年前,胃癌及び左乳癌の手術を受けていた.1989年1月30日,右乳頭からの異常血性分泌を主訴として来院.腫瘤は触れなかった.乳頭分泌物の細胞診の結果class V, adenocarcinomaと判明した.術前ホルモン検査にて血中エストロン,血中テストステロンの軽度の上昇及び尿中エストロゲンの上昇を認めた.TRH負荷試験では血中プロラクチンの過剰反応を認めた.非定型的乳房切断術が施行された.病理組織診断では非浸潤性乳管癌であった.
    この症例では明かな素因は認められず,特異的な内分泌環境が異時性両側乳癌の発生に何らかの影響を及ぼしたと考えられた.
    著者らの症例を含め,本邦では6例の原発性両側乳癌症例の報告があったので併せて検討した.
  • 武内 有城, 加藤 泰, 久保田 洌, 伊佐治 彰之, 篠原 正彦, 森 敏宏, 橋本 昌司, 久野 泰, 伊藤 浩明, 竹島 弘知, 奥村 ...
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2649-2654
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺原発悪性リンパ腫は非常に稀な疾患であり,両側同時発生例となるとさらにその頻度は少なくなる.また,その診断は特徴的な所見に乏しく困難であり,治療法についても未だ確立されているとは言い難い.
    今回,われわれは,術前での生検にて診断し得た51歳の女性の両側乳腺に同時発生した悪性リンパ腫(diffuse, large cell type, B)の1例に,両側乳房切断術(Auchincloss法)と術前,術後にcyclophosphamideを中心としたCHOP療法などの化学療法とを併用し,術後22ヵ月経った現在も完全寛解の状態を維持できた
  • 大嶋 隆, 松本 佳博, 猪野 睦征, 橋口 勝敏, 奥野 一裕, 綾部 公懿
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2655-2659
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    67歳の女性の胸壁に発生し,原発と考えられた平滑筋肉腫の1手術例を経験した.既往歴として11年前に後腹膜腫瘍の手術歴があるが,詳細は不明である.今回は近医にて胸部X線写真で,右上肺野に異常陰影を指摘され,本院に精査・治療目的で紹介された.胸壁および右肺上葉の合併切除を行った.腫瘍の大きさは6.5×5.5×4.5cmであった.組織学的診断は胸壁より発生した平滑筋肉腫であった.縦隔リンパ節転移は認められず,画像診断で全身に異常所見を認めなかった.病歴と画像診断さらに手術所見より,病変は胸壁原発と考えられた.放射線療法・化学療法は行わなかった.術後経過は順調であり,現在外来にて経過観察中である.平滑筋肉腫は軟部腫瘍の中でもまれで頻度が低く,さらに胸壁原発の平滑筋肉腫は非常にまれであり,1951年以降の報告例は本邦報告例は2例,外国文献では4例であり,これらを検討した.
  • 診断及び今後の対策について
    杭ノ瀬 昌彦, 畑 隆登, 難波 宏文, 曽根 良幸, 瀬尾 和宏, 村上 貴志, 谷口 堯
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2660-2664
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    重症三枝病変と診断された52歳の男性に,冠動脈血行再建術(CABG)を行った.その際行った輸血(日赤新鮮血1,200ml,血小板10単位)によると考えられる輸血後GVHR(graft-versus-host reaction)を発症し,あらゆる治療を行うも術後47日目に失った.高熱,全身性紅斑,白血球の著明な減少などの臨床所見及び皮膚生検像よりGVHRと診断し得た.われわれはこの症例を経験後,可及的無輸血手術を行っている.またやむを得ず輸血を必要とする場合は,輸血パックに1,500radの放射線照射後に輸血を行うようにしている.GVHR対策につとめた結果,開心術の無輸血率は上昇し,開心術の質的向上となっている.またこれらの対策により,開心術連続250症例にGVHRを経験していない.
  • 落 雅美, 寺田 功一, 山内 仁紫, 池下 正敏, 田中 茂夫, 庄司 佑
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2665-2668
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    DeBakey IIIb型解離性大動脈瘤の術中に発生した冠動脈スパスムの1例を報告する.
    左開胸にて,部分対外循環下に大動脈を遮断中の事であり,解離の為術中術後を通じてIABPが使用できず,極めて難渋した.
    この様な疾患,術式では術中に起こる血行動態の破綻,とりわけスパスムによる急性冠虚血は致命的となる.
    術前の詳細な病歴聴取が重要であり,安静時狭心症が疑われる例では積極的な防止策が望まれる.発作の予防こそが唯一,最良の策であることを強調したい.
  • 河内 康博, 古谷 彰, 縄田 純彦, 江里 健輔, 西田 健一
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2669-2673
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性,検診で胸部異常陰影を指摘され入院した.自覚症状は全く認められなかった.術前の画像診断にて右上葉S2にspiculaを伴った腫瘤陰影を認めた.気管支ファイバースコープでは悪性所見は得られなかった.肺癌の診断で右上葉切除を行った.病理組織学的には肺胞内にリポイドを貪食した泡沫細胞が充満し,リポイド肺炎と診断した.本症例は12年前の上顎癌術後DKB油性ガーゼ(パニマイ含有プラスチベース)を使用しており,これを吸入したための外因性リポイド肺炎と考えられた.
  • 陳 孟鳳, 弘中 武, 小野 眞, 林 隆志, 堀 勝文, 奥村 悟
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2674-2679
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    昭和63年からの2年間に,公立湖北総合病院で経験した外傷性横隔膜損傷は左側2例,右側1例の3例であった.そのうち左側の1例は横隔膜ヘルニアを合併していた.3例とも急性期に横隔膜損傷と診断し得て,1例は保存的治療で他2例(横隔膜ヘルニア合併症例を含む)は手術的に治癒せしめた.横隔膜損傷は自然治癒が困難なため診断され次第手術するのが原則とされているが,単純な横隔膜損症例の中には保存的治療で治癒しうる症例もあることを経験した.発症機転,損傷の部位や大きさなど保存的治療の条件は不明であり推定の域を出ないので今後尚充分な経過観察が必要であるがこの症例の検査所見と臨床経過を手術治癒した他の2例と対比して報告した.
  • 大野 勝之, 生田目 公夫, 中野 浩, 中村 豊英, 高橋 博義, 広瀬 忠次, 浜井 直人, 大久保 雅彦, 幕内 幹男, 岩井 裕子, ...
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2680-2684
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性.嚥下困難,嘔吐を主訴として来院.食道造影にて胸部下部食道に長径3cmにわたり比較的平滑な狭窄を認めた.食道内視鏡検査で上門歯列より35cm部位に環状狭窄を認めたが,粘膜面にびらん,潰瘍形成はみられなかった.狭窄部位の生検組織診では悪性所見は認められなかった.食道造影,内視鏡所見より良性食道狭窄と診断し拡張術を試みたが無効であった.拡張術による狭窄解除は困難と判断し左開胸開腹連続斜切開法による食道切除,食道胃空腸間置法にて再建を行った.病理組織学的所見では5cmにわたる筋性・線維性肥厚による先天性食道狭窄症であった.成人まで放置された筋性・線維性食道狭窄症は稀であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 弓場 健義, 板倉 丈夫, 藤田 宗行, 山本 重孝, 山本 元三
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2685-2688
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃体部に巨大な過形成性ポリープを認めた症例を経験したので報告する.症例は50歳,女性.心窩部不快感を主訴とし,胃透視にて胃体中部大弯側に腫瘤陰影を指摘された.悪性粘膜下腫瘍を疑い,幽門側胃切除施行.切除胃標本では主に3個の大きな隆起に分かれ,全体としては9.0×5.0cmの広基性隆起病変を認めた.隆起病変は弾性軟,嚢腫様でムチン物質の貯留を認めた.組織学的には過形成性ポリープの所見であった.過形成性ポリープの巨大化の1因子として貯留嚢胞の存在が考えられた.胃の巨大な過形成性ポリープにおいては通常の小さなポリープと異なり,1) 悪性腫瘍との鑑別が困難となることがあり,2) 癌化率および癌の併存率が高くなり,3) 大量出血ならびに通過障害を惹起する可能性もあり,また,4) ポリペクトミーが困難であるなどの問題があり,胃切除を施行することが望ましいと考えられた.
  • 針原 康, 秋草 文四郎, 登 政和, 田中 信孝, 進藤 俊哉
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2689-2693
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    早期胃癌周囲に非常に稀な静脈炎が認められ,これが発熱の原因となったと考えられた症例を経験した.患者は71歳の女性で37℃台後半の発熱と上腹部不快感を主訴として来院した.発熱に対して抗生剤は無効で,内視鏡にて胃角部にIIc型早期胃癌を発見され,またCRPの上昇を認めた以外,諸検査上異常は認められなかった.原因不明で発熱持続したが止むを得ず,胃癌に対して胃切除術施行したところ術後発熱は認められなくなった.切除標本では胃角部にIIc型,smの早期胃癌を認め,極めて稀な所見であるがその胃癌周囲にリンパ球浸潤と内膜肥厚を伴う静脈炎を認めた.早期胃癌が発熱の原因となることは稀と思われるが,この症例では胃癌周囲に静脈炎が存在したこと,胃切除によりCRPが正常化し解熱したこと,他に原因が認められないことより,この早期胃癌周囲の静脈炎が発熱に関与したと考えられた.
  • 池田 英之, 江端 俊彰, 高橋 克宗, 高坂 一, 桂巻 正, 田中 浩, 早坂 滉, 成松 英明
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2694-2697
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    ITP合併胃潰瘍患者に発見された胃癌症例に完全分子免疫グロブリンの大量療法(400mg/kg/day)を術前5日間行い.血小板10単位輸血と併せ,血小板数が7.3×104/mm3から18.8×104/mm3まで上昇した時点で,手術施行した.胃全摘,R2リンパ節廓清,摘脾を行い,Roux-Y法にて再建した.術中出血量は400ccで,術中輸血は行われなかった.
    術後,血小板を計20単位輸血した結果,血小板数は約80×104/mm3程度に維持され,術後合併症を惹起する事なく順調に経過し,術後21日目に退院,近医での経過観察となった.
    完全分子型免疫グロブリン大量療法は,短期間に血小板数を安全かつ確実に増加させるため,他剤が無効で,著明な出血傾向があり,外科的処置または出産等一時止血管理を必要とする場合に,最も良い適応があると考えられる.
  • 奥田 哲也, 末永 裕之, 鈴木 祐一, 鳥井 彰人, 小寺 泰弘, 禰宜田 政隆, 谷口 健次, 余語 弘
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2698-2701
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    Crohn病は近年本邦でも増加傾向にあるが,腹腔内に穿孔したものはまれで,Crohn病診断基準(日本消化器病学会クローン病検討委員会,1976)を満たすものは自験例を含め26例にすぎない.われわれは,消化管穿孔で発症した本例を経験したので報告し,さらに診断基準を満たすクローン病穿孔の本邦報告例のアンケート調査を施行した.回収しえた19例について検討を行ったところ,以下の興味深い結論を得た.
    (1) 穿孔年齢は20~35歳が80%を占め,10歳台の症例は皆無であった.
    (2) 平均病悩期間は16.2ヵ月で,穿孔以前にCrohn病と診断されていた症例は皆無であった.
    (3) 穿孔部位は回腸腸間膜側が圧倒的に多く,これらの全てが小腸限局型であった.
    (4) 再発は32%とCrohn病全体よりやや多く,再発時の平均年齢は30歳と若年者に再発が多い.
  • 塩見 正哉, 蜂須賀 喜多男, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 久世 真悟, 真弓 俊彦, 近藤 真治, 新美 教弘, 青野 景也, 新井 利幸 ...
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2702-2707
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    門脈ガス血症は,腸管壊死などの際に認められる極めて稀な合併症で,予後不良の徴候とされている.今回,非閉塞性腸管梗塞症にともなった門脈ガス血症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は87歳,女性で下腹部痛を主訴に来院,腹部単純X線および腹部超音波検査にて門脈ガスを認め,汎発性腹膜炎の診断の下に緊急手術を行った.開腹するとBauhin弁から140cm口側から70cmに及ぶ回腸が限局性壊死に陥っていたため,同部を切除した.切除標本の血管造影では動脈閉塞等の所見はなく,組織学的にも非特異性炎症の所見であり,血管病変は認められなかった.切除標本の病理組織学的所見及び血管造影所見等から非定型的であるが非閉塞性腸管梗塞症と診断した.術後患者は肺炎を併発したが,比較的順調に経過し,術後第47病日軽快退院した.
  • 中川 国利, 桃野 哲
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2708-2711
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    成人の腸重積症は稀であるが,われわれは腸重積症を来した回腸悪性リンパ腫の1切除例を経験したので報告する.
    症例は26歳の男性で,5ヵ月前より心窩部痛があった.来院時嘔気もあり,腹部単純X線写真にて小腸にガス像を認めた.また右側腹部に小児手拳大の腫瘤を触知した.腫瘤はCT検査や超音波検査では同心円状の所見を呈し,注腸造影や大腸内視鏡検査では回腸腫瘍を先進部とした腸重積を認めた.開腹術を施行したところ,Bauhin弁より22cm口側の回腸に3.0×3.0×2.5cmの腫瘍を認め,それを先進部とした回腸回腸,さらに回腸結腸の二重性腸重積を来していた.また周囲リンパ節に転移を認めたため結腸右半切除を行い,さらに化学療法を術後に行った.組織学的にはdiffuse, large cell型の悪性リンパ腫で,術後4年8ヵ月を経た現在再発は認めていない.
  • 秦 怜志, 黒須 康彦, 岩田 光正, 森田 建
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2712-2716
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    虫垂粘膜液球形成症の1例を経験したので報告した.症例は25歳の男性.下腹部痛を主訴に来院し,筋性防御等の腹膜炎の所見を認めた.超音波検査,注腸造影にて回盲部に一致して嚢腫状の腫瘤を認め手術を施行した.開腹すると腫大した虫垂の先端が穿孔し,粘液および径2mm大の白色粘液球が散布されていたため虫垂切除および腹腔洗浄を行った.病理組織所見では,虫垂の残存粘膜は杯細胞が占め,悪性所見はなくmucosal hyperplasiaと考えられた.球体は組織球片を含み層構造を有する粘液塊であった.
    虫垂粘液球症は虫垂粘液嚢腫の一亜型とされ,その特徴は球体の存在である.診断には超音波検査,注腸造影が特に有用であるが,本例のように穿孔を来した場合,術前診断は困難である.また悪性細胞を含む粘液が散布された場合には,腹膜偽粘液腫に対する集学的治療が要求される.
  • 禰宜田 政隆, 末永 裕之, 鈴木 祐一, 小寺 泰弘, 谷口 健次, 竹下 洋基, 稲垣 均, 余語 弘
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2717-2722
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病(以下R病と略す)の合併症として血管病変はまれな病態であり,本邦報告例は散見されるに過ぎない.また,腹部血管病変として消化管動静脈奇形及び腹部臓器動脈瘤は共にまれな病態であり,中でも下腸間膜動脈(以下IMAと略す)領域にそれらがみられることは少ない.しかし,これらの病態は時として大出血を呈する為緊急の処置を要することがあり,しかもしばしば術中に部位診断が困難であり,正確な術前診断が治療の上で重要である.今回われわれは,R病に合併した上直腸動静脈奇形破裂及びS状結腸動脈瘤破裂と各々の病態がまれな腹部血管病変の2例を経験したので報告する.
    症例は51歳及び48歳の男性で何れもイレウス症状及び腹腔内出血を呈し,血管造影で術前診断し緊急手術を施行した.共に術中所見では著明な腸間膜内血腫等の為,病態の把握は困難で,術前の血管造影が診断及び治療の上で重要であった.
  • 澤井 照光, 地引 政晃, 吉田 一也, 石川 啓, 原 信介, 高平 良二, 草野 裕幸, 福田 俊郎
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2723-2727
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大腸癌を合併した大腸脂肪腫の1例を経験したので報告する.
    症例は88歳女性で,上腹部痛,悪心,下血を主訴に来院した.胸部X線にて腹腔内遊離ガス像を認めたが,上部消化管内視鏡検査では異常を認めず,下部消化管穿孔の診断で緊急手術を行った.開腹したところ,上行結腸癌にともなう穿孔性腹膜炎であり,右半結腸切除術及びドレナージ術を行った.摘出標本では,癌腫の口側に嵌入した有茎性ポリープを認め,病理組織学的に粘膜下脂肪腫の診断を得た.
    大腸脂肪腫は,大腸に発生する非上皮性の腫瘍としては頻度が高く,本邦では現在までに約160例が報告されているが,このうち癌を合併していた17例は,高齢者,女性に多く,癌腫は脂肪腫に近接して右側結腸に好発していた.
  • 島貫 公義, 佐竹 賢仰, 板橋 邦宏, 浜田 修三, 千葉 惇
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2728-2734
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌根治術後1年目に切除し得たびまん性直腸転移の1例を経験したので報告する.
    症例は66歳男性で,胃癌(低分化型腺癌)にて胃全摘術,膵尾部脾合併切除を施行され1年後に直腸狭窄による排便障害をきたし腹会陰式直腸切断術を施行した.転移直腸病変は粘膜面に潰瘍形成を認めず,胃癌組織と同じ組織像と染色特性を示し,癌浸潤形態より腹膜播種性の直腸転移と思われた.
    胃癌根治術後に大腸および直腸転移を来し転移病巣の切除が可能であった報告症例は比較的少なく,検索し得た1975年以降の本邦報告例は36例であったが,報告されない例がある程度はあると考えられる.男女比は17:19,転移部位は盲腸~上行結腸は6例,横行結腸は16例,S状結腸は2例,S状結腸直腸移行部は2例,直腸は10例で,上行結腸~S状結腸が1例であった.低分化型腺癌症例が多く,再切除術後予後は不良であった.
  • 中村 俊一郎, 森永 聡一郎, 円谷 彰, 益川 邦彦, 堀口 一弘, 関根 重員
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2735-2738
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    急性胆嚢炎の穿通による肝膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は,54歳男性,腹痛,黄疸を主訴に来院した.腹部超音波,CT検査にて胆嚢腫大とこれに接する肝内に膿瘍腔を認めた.血液検査成績にてDIC準備状態と考え薬物療法を試みるも,弛張熱は持続した.入院11病日に超音波下経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行し,造影により膿瘍腔と胆嚢底部との間に交通を認めた.手術時,胆嚢内に胆石を認めず,瘻孔も不明であった.本症と同様な胆嚢穿通による肝膿瘍の報告は,本邦では3例に過ぎず,これらはすべて胆石を有していた.したがって,胆石を有しない胆嚢炎の穿通による肝膿瘍は,本邦での報告はなく,きわめて稀な症例といえる.
  • 笠原 宏, 加藤 道男, 大柳 治正, 斉藤 洋一, 光野 孝雄, 藤盛 孝博
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2739-2744
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    患者は49歳,男性.十二指腸潰瘍治療中に偶然,左副腎腫瘍を指摘された.腹部超音波検査,CT,血管造影,副腎シンチグラフィー及び血・尿中ホルモン検査にて褐色細胞腫または副腎癌を疑い,左副腎摘出術を施行した.摘出標本は5.1×5.3×5.3cm,重量89gのほぼ球形の腫瘤でよく被覆化され,表面平滑で黄褐色を呈していた.割面では,中心部に変性壊死に陥っている部分を認めた.病理組織学的には,副腎髄質に相当する部分にCavernous hemangiomaを認めた.副腎血管腫はきわめて稀な疾患で現在まで文献上33例が報告されているにすぎない.術前に超音波,CTあるいは血管造影の診断技術を駆使しても癌との鑑別診断は難しく,本症例では血管腫により刺激されカテコラミンが過剰に分泌されたためか,血・尿中ホルモン検査にて褐色細胞腫との鑑別診断も困難であった.きわめて稀な疾患である副腎血管腫を経験したので報告した.
  • 渡辺 聡明, 宮川 静一郎, 小松 邦彦, 橋本 敬祐
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2745-2749
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    本邦に於ける尿膜管疾患については,尿膜管癌270例以上,尿膜管嚢胞150例以上の報告があるが,今回われわれは3例の尿膜管疾患(尿膜管癌1例,化膿性尿膜管嚢胞2例)を経験した.化膿性尿膜管嚢胞は下腹部開腹術後に多いとされているが本症例中化膿性尿膜管嚢胞2例は何れも虫垂切除術後に発症していた.主訴は尿膜管癌例は下腹部痛,化膿性尿膜管嚢胞例は下腹部腫瘤,下腹部痛,臍よりの膿流出であった.術前,癌症例は穿刺細胞診にてclass IIIbと悪性像が疑われ,尿膜管嚢胞例は保存的治療にて軽快せず,炎症をくり返すため,手術を施行した.術式は嚢胞切除術を施行し,癌症例に対しては,更に膀胱部分切除術を施行した.術後何れの症例も炎症及び癌の再発は認められず,根治術の有用性が示唆された.
  • 宮原 成樹, 世古口 務, 山中 賢治, 岩佐 真, 勝峰 康夫, 稲守 重治
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2750-2756
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大網原発平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので,自験例を含む平滑筋由来の大網悪性腫瘍本邦報告例の検討と共に報告する.
    症例は76歳,女性.腹部膨満感にて近医受診し小児頭大の腹部腫瘤を指摘された.当科入院時,表面平滑な可動性を有する硬い腫瘤を触知した.腹部超音波検査,CT検査では辺縁不整な大部分嚢胞性,一部実質性の巨大腫瘤を認めた.腹部血管造影では右胃大網動脈より栄養される腫瘍陰影を認め,同動脈の分枝はすべて圧排伸展されていた.大網原発悪性腫瘍を疑い手術を施行した.大網前後葉間に成人頭大の腫瘍を認め,胃及び横行結腸と共に一塊として切除した.組織学的には大網原発の平滑筋芽細胞腫と診断された.術後4年3ヵ月目に腹腔内再発にて死亡した.
  • 芳村 直樹, 岡田 健次, 有川 俊治, 大野 徹, 山下 義信, 本田 雅之, 麻田 栄
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2757-2760
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    小児に発生した両側大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.
    症例は7歳女児で主訴は両側嵐径部腫瘤.昭和62年12月,本人が右鼡径部腫瘤に気付き,翌年3月29日,当科にて右外鼡径ヘルニア根治術(Potts法)を施行したが,術後も腫瘤は消失せず,更に左鼡径部にも腫瘤が出現するようになった為,平成元年8月25日,両側鼡径部ヘルニアに対し手術を施行した.まず右鼡径部に皮切を加えると,鼡径靱帯にかぶさるように大腿ヘルニアが認められた.ヘルニア嚢を鼡径靱帯の上方へ引き出し,可及的高位にて結紮切断した後,McVay法にて鼡径管後壁を補強した.続いて左鼡径部に皮切を加えると外鼡径ヘルニアが認められたため,高位にて結紮した.更に鼡径靱帯下方を検したところ,大腿ヘルニアが認められた為,右側と同様,McVay法にて修復を行った.
  • 紹野 進, 臼井 典彦, 中谷 守一, 塚本 泰彦, 木村 英二, 岩本 広二, 西沢 慶二郎, 李 典利, 南村 弘佳, 佐々木 康之, ...
    1990 年 51 巻 12 号 p. 2761-2766
    発行日: 1990/12/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    遺残坐骨動脈は,下肢の発達において胎生初期における下肢の発達に主役をなす坐骨動脈がその後も下肢の栄養血管として遺残したものである.その動脈瘤の報告は欧米では25例,本邦では8例ときわめて稀である.最近われわれは遺残坐骨動脈瘤の1例を経験した.症例は68歳,女性.夜間に左下肢の激痛が生じ,他院で左下肢急性動脈閉塞症と診断され,血栓除去術をうけた.その後左殿部に拍動性腫瘤を触知するようになり当科を受診した.CT検査,動脈造影等にて,右側遺残坐骨動脈,左側遺残坐骨動脈瘤の血栓閉塞と診断した.その後,左坐骨神経圧迫症状が出現し,CT検査で瘤の増大を認めたため瘤切除術を施行した.瘤は約7×10cm大で,坐骨神経と一部癒着し,同神経を圧迫していた.末梢血流は側副血行を介して比較的よく保たれていたため血行再建術は施行しなかったが,術後経過は良好である.
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