日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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51 巻, 4 号
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  • 角村 純一, 中川 公彦, 河村 純, 黄 泰平, 高橋 英治, 田山 雅雄, 久米 庸一, 森友 猛, 中尾 量保, 宮田 正彦, 川島 ...
    1990 年 51 巻 4 号 p. 629-633
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍の切除症例30例について治療成績と術後合併症について検討した.顔面神経麻痺が良性例の27例中6例に,悪性例の3例全例に術後認められた.うち良性例および悪性例の1例ずつに顔面神経麻痺がそれぞれ9ヵ月と1年9ヵ月の期間持続している.他の7例は一過性麻痺で1ヵ月から2年間で回復した.回復した症例のなかには,腫瘍と顔面神経の合併切除後に神経再建術を行った1例が含まれている.再発手術例2例は,ともに良性例の悪性化と考えられる.術式の選択は合併症と根治性から考えて,良性耳下腺腫瘍は核出術で充分と思われる.また顔面神経麻痺の回避のため,術中神経刺激法による顔面神経の確認が有用と思われた.
  • 藤原 郁也, 安村 忠樹, 岡 隆宏
    1990 年 51 巻 4 号 p. 634-638
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Xeroradiography (XR)と,新たに開発されたcomputed radiography (FCR)の乳癌診断における有用性を,retrospectiveに比較検討した.対象症例はXR 65例,FCR 51例であり,両群間の腫瘍径分布にはわずかの差を認めたが,年齢分布には差は認めなかった.両撮影の腫瘍陰影の出現率は,XRでは65例中44例(67.7%), FCRでは51例中34例(66.7%)であり,石灰化陰影の出現率はXR 27例(41.5%), FCR 21例(41.2%)であった.この結果,両画像から得られた所見による診断率は,XRでは66例中47例(72.3%,確診39例,疑診8例)であり,FCRでは51例中41例(80.4%,確診33例,疑診8例)であった.このようにFCRは乳癌の診断能力がXRと同等であり,X線被曝量が少ないため,XRより有用なX線診断法であると考えられた.
  • LONG-TERM (3 TO 13 YEARS) EVALUATION OF MITRAL VALVE REPLACEMENT
    青柳 成明, 小須賀 健一, 田中 攻, 古賀 正之, 安水 弘, 溝口 照章, 押領司 篤茂, 原 洋, 大石 喜六
    1990 年 51 巻 4 号 p. 639-643
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    1975年から1985年10月までに生体弁を用いて単独の僧帽弁置換術(MVR)を行った102例を対象として遠隔成績を主に人工弁に起因する合併症から検討した.対象の年齢は3~67歳,男性45例,女性57例で,術後観察期間は888.9患者・年(p-y)であった.術後30日以内の早期死亡は9例(8.8%),これ以降の遠隔期死亡は9例(9.7%)で,術後13年の生存率は76%であった.血栓塞栓症(TE)は心房細動を示した5例(0.67%/p-y)に発生したが,術後13年のTE非発生率は92%であった.人工弁機能不全は術後6年以降に急増し,32例33回(3.71%/p-y)に発生した.この内32回はprimary tissue failure(PTF)によるもので,術後10年,13年の弁機能不全非発生率65%,35%であった.生体弁によるMVRではTE発生は少なく抗血栓性はほぼ満足できるものであったが,術後6年以降PTFによる弁機能不全が多発し,耐久性が問題で術後10年以降も合併症の発生なく経過するものは少数であった.
  • 鎌田 徹, 米村 豊, 長谷川 啓, 大山 繁和, 竹川 茂, 木村 寛伸, 津川 浩一朗, 小坂 健夫, 山口 明夫, 三輪 晃一, 宮崎 ...
    1990 年 51 巻 4 号 p. 644-648
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    胃癌68例を対象として,超音波内視鏡を用いて深達度診断を行い,その正診率と誤診原因について検討した.m癌,sm癌,pm癌,ss以上癌のそれぞれの正診率は64.7%,原因について検討した.m癌,sm癌,pm癌,ss以上癌のそれぞれの正診率は64.7%,50.0%, 80.0%, 92.9%であった.これを早期癌と進行癌に分けて検討すると,それぞれ82.9%, 97.0%と良好であった.誤診原因は,潰瘍瘢痕によるもの8例,sm微小浸潤4例,散在性浸潤2例,その他4例であった.他の病理組織学的所見と正診率について検討すると,肉眼型では陥凹成分を伴った早期癌,組織型では印環細胞癌(sig),局在部位では幽門または体部大弯の正診率が不良であった.以上,超音波内視鏡により,早期癌と進行癌の鑑別は良好であるが,m癌かsm癌かの鑑別は不良であり,今後この点について検討していく必要があると考えられる.
  • 副島 真一郎, 廣吉 元正, 久次 武晴
    1990 年 51 巻 4 号 p. 649-654
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    胆道造影は胆道疾患において極めて有用な情報を提供する.今回排泄性胆道造影効果におよぼす肝機能障害の程度を検討した.主として胆石症例268例について,肝機能の指標としては血清総ビリルビン値,glutamic oxaloacetic transaminase (GOT)値,glutamic pyruvic transaminase (GPT)値,alkaline phosphatase (ALP)値を用いた.胆道造影剤としては,meglumine iotroxateの点滴静注を行い最良の総肝管,総胆管造影効果を得た時の点滴終了後の時間と各肝機能値の関係をみた.さらにmeglumineadipiodonも同様に検討して二者間の造影効果を比較をした.その結果肝機能の正常範囲群及び異常範囲群の両群において,meglumine iotroxateがより早く良好な造影効果を得ることが判明した.このことより肝障害時における胆道造影としても,meglumineiotroxateの方がより有用と考えられた.
  • 大東 誠司, 菊池 友允, 熊沢 健一, 中島 久元, 大石 俊典, 成高 義彦, 大谷 洋一, 芳賀 駿介, 小川 健治, 梶尾 哲郎
    1990 年 51 巻 4 号 p. 655-660
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    1980年より1988年までの過去9年間に当科で経験した,LCを合併した胆石手術症例19例(男性14例,女性5例)について検討し,以下の結論を得た.
    1) 結石部位では胆嚢に限局した結石が多く,結石の種類では色素石,特に黒色石が多かった.
    2) 胆石症のみを手術目的とした症例11例についてみると,平均手術時間159分,平均出血量597mlであった.これらはLCを合併していない症例と比較すると有意差をもって手術時間も長く,出血量も多かった.
    3) 術後経過についてみると,Child Aでは経過良好であったものの,Child Bでは4例中3例に術後黄疸を合併し,Child Cの1例は術後肝不全を併発し死亡した.肝予備能の低下した症例では全身状態および肝機能の改善を待って,待期的に手術を施行することが望ましい.
  • 加藤 貴史
    1990 年 51 巻 4 号 p. 661-669
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    体外衝撃波による胆嚢結石破砕治療を77例に施行し,治療成績の検討を行った.破砕後の超音波像は,微細片浮遊型,小破砕片沈殿型,大破砕片沈殿型に分類することができ,微細片浮遊型は有意に消失率が高かった.胆石超音波分類のIa型胆石は,破砕により微細片浮遊型を呈することが多く,他より有意に高い消失率を示した.胆石の大きさでは径20mm以下で消失率が有意に高く,胆石のCTスキャンでは,低吸収像を呈するものほど消失率が高くなる傾向がみられた.治療後,数時間後に破砕片排泄に伴うと思われる軽度の腹痛が出現した症例から,比較的早期から破砕片の自然排泄がみられることが示唆された.十分な破砕状態が得られれば胆石溶解剤に頼らずとも胆石消失は期待できる一方,不十分な破砕は胆嚢炎などの合併症を惹起することがあり,慎重な治療前検査の検討が必要であると考えられた.
  • 自験12例の検討とその問題点
    別府 真琴, 白 鴻成, 高須 朗, 福崎 孝幸, 藤田 彰一, 谷口 積三, 興梠 隆
    1990 年 51 巻 4 号 p. 670-676
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    18年間に当院で経験した成人の先天性胆管拡張症12例に検討を加え,その問題点について考察した.
    12例中11例が先天性総胆管拡張症で,総胆管の嚢胞状拡張を示したものは7例で,紡錘状拡張を示したものは4例であった.膵胆管合流異常は前者では全例に認め,後者では1例に合流異常を確認できなかった.また前者7例中4例に妊娠期発症を,2例に嚢胞破裂を,1例に癌合併をみた.膵胆管合流異常を確認できなかった後者の1例にも,嚢胞切除,総肝管空腸吻合術を施行した.11例中9例に本術式を行い満足すべき結果を得たので,無症状症例あるいは本症の疑診症例に対しても施行されることが望ましいと思われた.
    先天性肝内胆管拡張症は1例で,左区域枝胆管に限局性嚢胞状拡張をきたすものであるが,組織学的にはCaroli病と酷似していた.
  • 角田 卓也, 谷村 弘, 青木 洋三, 山上 裕機, 岩橋 誠, 落合 実
    1990 年 51 巻 4 号 p. 677-681
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    最近,消化器外科領域でも真菌感染症が増加し,重要な問題となっている.われわれはDegos病,肝癌,胃癌,直腸癌,結腸癌の症例に併発した真菌感染症5例に対しAmphotericin B (AMPH)を経口大量投与し,臨床効果を検討した.1例はDegos病にて加療中,消化管穿孔を併発した腹膜炎術後の敗血症で1例はTPN長期施行によるカテーテル敗血症で,いずれもC. albicans, C. glabrataが検出され,AMPH経口剤900mg~4,800mg/日を5~10日間投与し菌の陰性化,解熱,CRPの改善,白血球数の正常化など著効を得た.しかし,術前のTPN長期施行に原因した真菌性眼内炎にはAMPH4,800mg/日,7日間の投与では尿中からCandidaは消失したが,視力眼底所見は改善せず,この治療には他剤に変更した.すでにわれわれが行ったAMPHの血中および肝,脾などの臓器内濃度の結果と併せて,消化器外科領域の手術に際して発生する真菌症に対してはAMPHの経口大量投与は安全で有効な治療法の1つであるといえる.
  • 原 俊介, 鈴木 春見
    1990 年 51 巻 4 号 p. 682-685
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    男子乳癌は比較的まれな疾患であるが近年その報告例も増加しつつある.今回男子乳癌の1例を経験したので検討を加えた.症例は67歳,病悩期間約1年の後,1986年7月1日,右乳輪下腫瘤,右腋窩リンパ節腫脹を主訴として来院した.精査の後,右乳癌T2aN1bM0 Stage IIの診断にて定型的左乳房切断術を行った.病期はt2nlβ (12/19) m0stage IIであった.術前のホルモン検査では血中,尿中ともに異常値は認められなかった.腫瘍のホルモンレセプターの測定ではエストロゲン・レセプター(ER)が陽性を示し,術後放射線療法50Grayと共に抗癌剤の投与,内分泌療法を行い術術3年の現在健在である.文献的に男子乳癌は高齢者に多く,病悩期間も長いとされ自験例と一致した.さらに進行癌が多く女性乳癌と比較して予後不良といわれていることから,今後さらに男性に対する啓蒙活動が重要と考えられた.
  • 兵藤 真, 猪口 寛, 藤 勇二, 土田 勇, 磯辺 真, 掛川 輝夫
    1990 年 51 巻 4 号 p. 686-690
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳腺の紡錘細胞癌は前規約で「いわゆる癌肉腫」と呼ばれていたもので,発生頻度も稀で本邦にては13例の報告を見るに過ぎない.今回その1例を経験したので報告すると共に本邦報告例を検討した.
    症例は35歳女性で右乳房全体にわたる大きさ約10×9cmの腫瘤を認め,非上皮性腫瘤を疑い右拡大乳房切断術施行した.組織学的に,免疫組織染色も加え紡錘細胞癌と診断された.
    本邦及び欧米の報告を検討するに症例が少なくはっきりしたことは言えないが,共通していることは,乳腺の紡錘細胞癌は通常型乳癌に比べやや大きい腫瘤であるが予後等は変わりないようである.
  • 末田 泰二郎, 松浦 雄一郎, 石原 浩, 浜中 喜晴, 金広 啓一, 中島 康, 林 載鳳, 前田 佳之
    1990 年 51 巻 4 号 p. 691-694
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    漏斗胸に対する矯正術式として1977年以前はメタルブレードによる胸骨挙上法や単純胸骨翻転術を施行してきたが,1977年以降は腹直筋有茎性胸骨翻転術を標準術式として採用し1986年7月までに125例に施行してきた.この間翻転胸骨片のより生理的な形状を得るために余剰肋軟骨の切除と同時に翻転胸骨片に様々な矯正を加えてきた.しかし1986年に施行した術後2~9年の遠隔期調査にて翻転胸骨板の突出や胸骨横断部の陥凹を41%の症例に経験した.
    そこで1986年8月以降は胸骨を翻転しない腹直筋有茎の胸骨非翻転変法を7例に施行した.本術式は胸骨挙上法と腹直筋有茎性胸骨翻転術との折衷術式で胸骨片は軽度に陥凹するもののより生理的形状を保てる術式と考えられた.
  • 金沢 成雄, 藤原 巍, 稲田 洋, 正木 久男, 野上 厚志, 山本 尚, 勝村 達喜
    1990 年 51 巻 4 号 p. 695-698
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    急性化膿性縦隔炎は食道損傷に続発するものが多く報告されているが,化学療法の発達した現在では非外傷性の縦隔炎は稀なものとなっている.今回,53歳男性で咽頭周囲炎が隣接する組織隙を介して頸部・顎・口腔領域の各器官へ拡大波及しているところへ,気管切開術が行われたため炎症巣が気管周囲を介して縦隔へ及び重篤な化膿性縦隔炎を合併した症例に対し,緊急開胸ドレナージ術を施行し,救命し得た.
    頸部においては筋膜隙と縦隔との間には明かな境界はなく,一旦炎症が縦隔に波及すると膿胸,心膜炎などの重篤な合併症を併発することがある.
    気管周囲に炎症巣の存在が疑われる場合には,気管切開術の適応の選択は慎重に配慮すべきである.
  • 徳原 太豪, 東野 正幸, 大杉 治司, 裴 光男, 前川 憲昭, 上野 哲史, 安田 晴紀, 谷村 慎哉, 木下 博明
    1990 年 51 巻 4 号 p. 699-703
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食道癌3症例の術後に独自に開発した内圧チューブを用いて上部食道括約筋(以下UES)に与える手術の影響を検討した.症例1は食道全摘,喉頭摘出,頸部郭清を行ったが,UESは消失していた.症例2は喉頭温存食道全摘,頸部郭清を行ったが,UESは健常人に比べ著明に圧低下がみられた.症例3は同時性重複癌で,食道癌に対する食道亜全摘後のUES圧に変化はみられなかったが,下咽頭癌に対する喉頭摘出後のUES圧は著明に低下していた.すなわち頸部食道切除及び喉頭摘出術はUESに影響を与えていることが示唆された.
  • 渡辺 修, 芳賀 駿介, 吉松 和彦, 塩沢 俊一, 渡辺 俊明, 島川 武, 大東 誠司, 清水 忠夫, 熊沢 健一, 菊池 友允, 矢川 ...
    1990 年 51 巻 4 号 p. 704-709
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    術前に診断しえた原発性空腸癌と早期胃癌との重複例という極めて稀な1例を経験したので報告する.
    症例は70歳女性.腹部膨満感,嘔吐を主訴に来院.臨床的諸検査および組織学的検査にて早期胃癌と空腸癌の同時性重複癌と診断した.空腸癌は,Treitz靱帯直下のBorrmann 2型様の腫瘍で組織学的には高分化腺癌であり,胃癌は,胃体中部小彎のIIa型早期胃癌で,組織学的には同様に高分化腺癌であった.
    胃癌に対して,幽門側胃切除術(再建はBillroth-I法)を行い,空腸癌に対して,腫瘍を含む小腸切除を行った.
    空腸癌は全消化管癌の中でもその発生頻度が低く,さらに胃癌との重複例は極めて稀である.また術前に確定診断がなされた例も非常に少なく,手術時すでに進行している例が多いため,今後早期発見が望まれる.
  • 水谷 純一, 川村 亮機, 高城 克義, 並川 和男, 庄嶋 健, 土井口 幸, 山口 哲也
    1990 年 51 巻 4 号 p. 710-713
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    内視鏡的ポリペクトミーを施行した十二指腸カルチノイドの1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性で,とくに自覚症状はなかったが,上部消化管透視を希望して受診した.上部消化管透視,内視鏡で十二指腸第2部に亜有茎性の粘膜下腫瘍を認めた.組織学的確診を得るために,内視鏡的ポリペクトミーを行った.摘出標本の大きさは2.7×2.5×2.1cmで,組織標本では切除断端に腫瘍細胞はなく,電子顕微鏡所見で細胞質内に電子密度の高い神経分泌顆粒を認め,カルチノイドと診断した.診断確定後,CT,エコーでリンパ節転移,遠隔転移の有無を検索したが,これらを認めなかった.患者の手術拒否のため,経過観察中であるが,内視鏡的ポリペクトミー後1年7ヵ月経過した現在,局所再発,遠隔転移を認めず経過良好である.
  • 竹下 和良, 池田 栄人, 武藤 文隆, 谷向 茂厚, 安 達行, 西本 知二, 栗岡 英明, 橋本 京三, 大内 孝雄, 田中 貫一, 原 ...
    1990 年 51 巻 4 号 p. 714-718
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    胆石イレウスの1例を経験したので報告する.症例は73歳の女性である.腹部単純X線写真及び超音波検査により本症を疑い,胃腸透視にて胆嚢十二指腸瘻を証明し術前診断をえ,イレウス解除術を行い良好な経過をえた.
    本症は高齢者に多くイレウス状態のため十分な術前検査ができず診断困難なことが多い.腹部単純X線写真及び腹部超音波検査は簡便な手段で本症を疑う有力な手がかりとなる.治療はまずは保存的に行うが外科手術を要するものが多い.内胆汁瘻に対する根治術は胆道内遺残結石を認めないものでは必ずしも必要でない.本症例では,遺残結石がなく,リスクが高いため胆道系に対する根治術は行わなかった.
  • 品川 秀敬, 中安 清, 本郷 碩, 奥平 定之, 塚本 幹夫, 酒井 秀則, 倉田 悟, 黒田 豊
    1990 年 51 巻 4 号 p. 719-722
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    高度狭窄をきたし,悪性腫瘍との鑑別が困難であった直腸憩室の1例を報告する.
    症例は34歳男性.主訴は肛門痛及び排便困難.注腸及び大腸内視鏡検査で高度な直腸狭窄を認めた.保存的治療で軽快せず,また病変の進行が認められ,悪性疾患も考慮し手術した.直腸周囲組織は慢性の炎症性変化のため石様硬であり,組織生検も困難であった.術中所見からも悪性を否定できず,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理学的検索で直腸筋層内に憩室の構造及び外膜まで及ぶ高度な炎症像を認め,憩室炎が直腸外膜の周囲組織にまで波及したことに起因する炎症性の直腸狭窄と判断した.
    直腸憩室は他の結腸憩室に比べ頻度が少なく,本邦報告例は7例である.他の憩室と同様合併症を起こさない限り無症状であるが,自験例の如く,周囲組織に炎症性腫瘤を形成したり,それに基づく狭窄を呈した場合,悪性疾患との鑑別は困難であると思われる.
  • 矢野 誠司, 木阪 義彦, 田村 勝洋, 山本 剛史, 中瀬 明, 佐々木 なおみ, 嶋本 文雄
    1990 年 51 巻 4 号 p. 723-727
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肛門周囲Paget病は,他に悪性腫瘍を合併することが多く,また,広範囲にわたる皮膚浸潤がみられるなど,他の悪性疾患とは若干異なる側面があり,その治療にあたっては十分な注意を要する.われわれは,68歳男性,直腸癌を合併していた肛門周囲Paget病に対して,術前生検のMappingで肛門部病変切除範囲を決定し,術後の排便機能や手術の根治性を考え直腸切断術を行った.また,広範な肛門部皮膚欠損に対しては,有茎皮弁により一期的に修復を行い得た.直腸癌を合併した肛門周囲Paget病の本邦での報告は,われわれの検索した限りでは自験例を含めて15例にすぎず,稀な疾患と考えられたので,切除における注意点を中心に考察を加えた.
  • 三村 哲重, 北村 元男, 戸田 耕太郎, 木村 秀幸, 大原 利憲, 筒井 信正, 広瀬 周平, 片岡 和男
    1990 年 51 巻 4 号 p. 728-732
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の自然破裂は,本邦では決してまれではない.その診断,治療にはいまだ困難を来すことがしばしばで,予後は一般に不良である.最近救命しえた症例を経験したので報告する.症例は,56歳男性で肝硬変の治療中,右季肋部痛とふらふら感のため来院.超音波とCTおよび腹腔穿刺で肝細胞癌の自然破裂と診断し,緊急に肝動脈造影を施行した.肝左葉に腫瘍濃染像を認め門脈左枝は,造影されなかった.以上の所見から,選択的に左肝動脈の塞栓術を行い,止血に成功した.ひきつづき,腹水の消失をまって,十分な肝予備能の測定のもとに,肝左葉切除を施行した.摘出標本で,約4cmの腫瘍をS4に認め,腫瘍栓を,門脈左枝一次分枝まで認めた.肝細胞癌の自然破裂に対し,早期に適切な診断のもとに,動脈塞栓術にてまず止血を行い,肝予備能のいかんで手術適応を決定することが重要と考えた.
  • 自験例2例と本邦報告58例の検討
    山道 博, 馬淵 原吾, 米山 公造, 荒武 寿樹, 浜野 恭一
    1990 年 51 巻 4 号 p. 733-737
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    最近経験した小児胆石症の2例を報告すると共に,自験例2例を加えた最近10年間の本邦報告例58例を集計し,その診断及び胆石の発生原因について検討した.
  • 福長 徹, 小澤 弘侑, 飯野 正敏, 木村 正幸
    1990 年 51 巻 4 号 p. 738-743
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石の手術時偶然発見された胆嚢カルチノイドの1例につき報告する.
    症例は右季肋部痛を主訴に来院した35歳女性で,Echo・DIC等の術前検査の後胆石症と診断され胆嚢摘出術を施行したところ,胆嚢頸部に15×9mmの腫瘤が認められ,病理組織学的にカルチノイドと診断された.深達度はss,胆嚢癌の合併はなく,術後経過は良好で術後13ヵ月経過した現在,再発の徴候は見られない.
    胆嚢カルチノイドの報告は本邦では少なく,文献的には自験例を含め20例のみであった.これらの報告例につき臨床病理学的に検討したところ,胆嚢カルチノイドは,20mm以下のものは深達度ssにとどまり予後良好だが,20mm以上のもの・Hinf (+)のものは術後早期の死亡例が多数を占め,十分なfollow upが必要な予後不良症例であることが分かった.
  • 福長 洋介, 木下 博明, 広橋 一裕, 街 保敏, 久保 正二, 藤尾 長久, 小林 庸次
    1990 年 51 巻 4 号 p. 744-748
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌の多くは腺癌であるが,腺扁平上皮癌も少数ながら認められる.腺組織である胆嚢粘膜にみられる扁平上皮癌の由来は現在議論のあるところであるが,良性の扁平上皮化生を認めたという報告は少ない.本例では,扁平上皮化生が腫瘍に接して認められ,更に興味のある多彩な組織像が認められたので報告した.
  • 赤坂 義和, 中浜 貴行, 広田 有, 玉置 久雄, 谷川 寛自
    1990 年 51 巻 4 号 p. 749-754
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去3年9ヵ月間に経験した膵仮性嚢胞は6例で年齢は18~58歳(平均43歳),男性4例,女性2例であり,その成因は急性膵炎2例,慢性膵炎の急性増悪2例,外傷性2例であった.治療としては,外傷性膵炎の保存的治療期間に自然縮小を認めた1例を除き,他の4例に穿刺及びドレナージ術を施行し,2例に嚢胞の縮小消失が認められた.ドレナージ術後1週目に嚢胞内出血をきたした1例には嚢胞合併膵尾側切除・脾摘を,3回の穿刺吸引でも縮小消失を認めず嚢胞内感染をきたした1例には嚢胞胃吻合を施行した.以上の5例は経過良好であった.ドレナージ術を行わなかった1例は,膵炎発症後早期に敗血性ショックを併発,さらに嚢胞内に出血し,緊急手術を行うも術後MOFにて死亡した.
    穿刺ドレナージ術後は外科的治療を念頭に置いた厳密なる管理が必要で,嚢胞内出血や感染などの合併症や再発を繰り返す症例などは手術適応と考えられた.
  • 宇田 憲司, 難波 康男, 藤原 恒弘
    1990 年 51 巻 4 号 p. 755-758
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    汎発性腹膜炎の術前診断で開腹したところ,興味ある所見がみられた2症例を経験したので報告する.
    症例1.汎発性腹膜炎として開腹したところ,腹腔内に大量の膿性腹水と大網腫瘤を認めたが,腹膜炎の原因は不明であった.大網腫瘤を摘出切開したところ,膿汁内に魚骨があり,魚骨による消化管穿孔と診断した.しかし消化管穿孔部は不明で,穿孔後自然治癒したものと考えられた.
    症例2.汎発性腹膜炎として開腹したところ,腹腔内に大量の出血を認めた.しかし十二指腸潰瘍部に大網が癒着している以外の所見はみられなかった,胃切除術を施行し潰瘍部を精査してみると,穿孔性十二指腸潰瘍がみられ,これが腹腔内出血の原因と考えられた.
  • 国崎 主税, 杉山 貢, 土屋 周二
    1990 年 51 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は32歳の女性で左側腹部腫瘤のため当外科を紹介された.腹部超音波検査,CT検査,注腸検査,腹部血管造影検査により左側腹部に内部が均一で約5×6cmの円形陰影を認めた.超音波下に穿刺吸引すると,黄白色透明の漿液性内容物を認めた.腹腔内嚢胞の診断で手術を施行し,腫瘤は後腹膜嚢胞と診断した.病理組織学的には,一層の円柱上皮で被われた嚢腫であり,悪性所見は認められなかった.本疾患は,後腹膜に発生し腎臓,副腎,尿管,膵臓以外の臓器形態をなさないものと定義されているが,その発生由来は不明瞭なことが多い.本邦では,1911年以来28例が報告されており本症例が第29例目と考えられた.
  • 疋島 寛, 山村 浩然, 花立 史香, 金平 永二, 宗本 義則, 佐々木 正寿, 高畠 一郎, 村上 真也, 林 外史英, 山田 哲司, ...
    1990 年 51 巻 4 号 p. 763-767
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    原発性後腹膜腫瘍のうちでも,脂肪腫はまれとされており,本邦で約60例を数えるのみである.症例は22歳の女性で,右季肋部不快感の精査のため来院した.腹部単純X線写真では,右半側に腸管ガスを認めず,腹部エコー,CTにて後腹膜脂肪腫と診断し,摘出術を施行した.病理組織学的診断は脂肪腫であった.
    診断については,エコー,CTにて比較的容易であるが,再発や肉腫変化をきたすことがあり,外科的摘出の際には,細心の注意が必要であるとともに,長期の経過観察が必要である.
  • 北川 喜己, 秋田 昌利, 長谷川 洋, 金子 哲也, 太田 章比古, 吉田 英人
    1990 年 51 巻 4 号 p. 768-772
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    腸間膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
    症例は22歳女性.腹部腫瘤を主訴に入院した.腹部超音波検査および腹部CT検査にては大きさ10×7cmの充実性の腫瘍を認めた.上腸間膜動脈造影では腫瘍は空腸動脈より栄養され,毛細管相で淡い濃染像を認めた.以上より小腸腸間膜の充実性腫瘍と診断し手術を施行した.
    手術にて腫瘍は小腸腸間膜に発生した良性の神経鞘腫と判明し腫瘍摘出術を行った.病理組織所見では大部分はAntoni type Aと思われたが一部にAntoni type Bの部分も見られた.
    腸間膜の良性神経鞘腫はまれな疾患で,本邦では自験例を含めて4例の報告があるに過ぎない.年齢,性,症状,診断,治療につき若干の考察を行った.
  • 酒井 章男, 上原 孝一郎, 清松 瑤一郎, 垣花 昌彦
    1990 年 51 巻 4 号 p. 773-779
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    腸間膜リンパ管腫は稀な疾患であるが,なかでも成人発症の報告例は少ない.最近,腸間膜リンパ管腫の成人1治験例を経験したので報告する.症例は36歳の女性で腹部腫瘤と圧迫感を主訴に来院,腹部触診にて径6cmほぼ球形,表面平滑,弾性硬,可動性良好な腫瘤を触知した.超音波検査で6×8cm,臥位で右肝下部腎前面,立位で臍下部に移動する多房性嚢腫様病変を認め,諸検査により腹腔内腸管外嚢腫と診断した.全身麻酔下で開腹術施行したところ,横行結腸間膜に暗赤色多房性嚢腫を認めこれを一塊に切除,病理組織学的検索で腸間膜リンパ管腫と診断された.術後経過は良好であった.今回集計し得た成人腸間膜リンパ管腫本邦報告32例を中心に,成人発症の原因や特徴について文献的検討を行い,診断上超音波検査が極めて有用であることを強調した.
  • 竹中 博昭, 松本 直晃, 野田 寛, 平山 雄, 松井 則親, 壷井 英敏, 宮本 正樹, 丹山 桂, 森 文樹, 江里 健輔
    1990 年 51 巻 4 号 p. 780-784
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.主訴は左上腕部から左前胸部の疼痛.胸部X線検査で縦隔腫瘍と診断された.胸部CT検査では,腫瘍はTh3の椎管孔を通じて脊柱管内に進展しており砂時計型を呈していた.
    本症例に対し経胸腔的到達法にTh3の椎管孔周囲の部分切除を加えることにより腫瘍を一塊として全摘出することができた.病理学的にはneurinomaであった.
    脊髄砂時計腫の手術において最も重要なのは適切な腫瘍への到達法を選択することである.このため術前検査としては横断面での腫瘍の位置,進展程度を正確に把握できる胸部CT検査が最も有用であった.
  • 沖田 光昭, 山東 敬弘, 堀川 嘉也, 横山 隆
    1990 年 51 巻 4 号 p. 785-789
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは,絞扼性イレウスの約0.4~1.5%で,頻度としては少ない疾患である.しかし,発症年齢は,高年齢層に集中しており,今後高齢化社会に入り,日常診療において遭遇する機会が多くなると思われる.われわれは,最近本症3例を経験した.症例1は70歳男性,症例2は80歳女性,症例3は78歳女性であった.いずれも右閉鎖孔ヘルニアで,閉鎖神経の圧迫症状であるHowship-Romberg徴候は2例に陽性であったが,1例は陰性で術前診断が困難であった.術後合併症としては,症例1で患側大腿部に膿瘍を形成し,治癒が遷延した.その原因は,壊死腸管の嵌入したヘルニア嚢を遺残せしめたためと思われた.従って術式としては,腸管が壊死してヘルニア嚢に炎症が波及した症例では,ヘルニア嚢の摘出が必要であると考えられた.
  • 小林 一郎, 浦山 博, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1990 年 51 巻 4 号 p. 790-793
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症の大部分は深部静脈血栓症に由来するとされており,下肢表在静脈瘤の血栓により発症したという報告は少ない.今回,われわれは下肢表在静脈瘤の血栓により発症した肺塞栓症の症例を経験した.61歳女性で,第1子を妊娠した25歳時より下肢静脈瘤が出現し以後増悪していた.時々表在静脈炎を合併していたが放置しており,突然の胸部異和感,失神発作にて発症した.肺血流シンチグラム所見や肺血管造影所見等より,肺塞栓症による肺梗塞と診断した.Homans徴候は陰性で,腫脹・疼痛なく,深部静脈血栓症を疑わせる所見はみられなかった.下肢静脈造影では深部静脈は両側共に良好に開存しており,血栓は認めなかった.肺塞栓症は血栓溶解・抗凝固療法にて軽快した.両下肢静脈瘤に対してはstripping手術を施行し良好である.下肢静脈瘤よりの肺塞栓症の発生率は1%未満と低い.しかし,実際に起った場合には死亡率は高く注意が必要である.
  • 山田 俊介, 櫻井 与志彦, 正津 晃
    1990 年 51 巻 4 号 p. 794-797
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大腿動脈領域は末梢動脈瘤の好発部位の一つであるが,深大腿動脈に限局した動脈硬化性動脈瘤は極めて稀である.われわれは両側の動脈硬化性深大腿動脈瘤を経験した.84歳,男性,はじめ左深大腿動脈瘤に対し,瘤切除,PTFEグラフト置換を行った.1年7ヵ月後,右深大腿動脈瘤が破裂,緊急手術にて結紮した.術後経過は順調である.
    深大腿動脈は結紮,切除されることが多いが,もともと動脈硬化性疾患であるから,浅大腿動脈,膝窩動脈の狭窄・閉塞が潜在,あるいは併発してくる可能性があり,その際には深大腿動脈は重要な副血行路となる.したがって可能な限り代用血管にて血行再建を計るべきであり,また自家大伏在静脈は同じ理由からなるべく将来のために温存すべきと考える.
  • 荻野 敦弘, 佐藤 伸一, 園山 輝久, 中路 啓介, 能見 伸八郎, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1990 年 51 巻 4 号 p. 798-801
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大腿動脈瘤は臨床的に無症状のことが多いが,一旦症状が発現すると瘤の破裂や動脈閉塞による下肢壊死のような非常に重篤な症状を呈することが多い.われわれは71歳男性で,他疾患の為に入院中に急速に増大する経過をたどった両側大腿動脈瘤を経験した.手術は両側総および浅大腿動脈をCooley's double velour graft(径8mm)で,右側はさらに深大腿動脈を大伏在静脈で血行再建を行い,良好な結果を得たので報告する.
    本症例は経過観察中は無症状であったが,瘤が急速に増大するためこれ以上の経過観察は困難であると判断し手術を行った.組織学的検討でも外膜に及ぶ動脈瘤壁の硬化性病変,内弾性板の部分的破壊があり,結果的に見ても切迫破裂状態であったと推定された.この経過を考慮し,大腿動脈瘤は注意深い経過観察は当然ながら積極的な血行再建の適応とするべきであると結論した.
  • 日野 晃紹, 屋関 豊, 後藤 全宏, 宮本 康二, 林 勝知, 鬼束 惇義, 広瀬 一, 下川 邦泰
    1990 年 51 巻 4 号 p. 802-806
    発行日: 1990/04/25
    公開日: 2009/04/21
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    肝腫瘍と鑑別が困難であった腹腔内遺残ガーゼによる異物肉芽腫の1例について,その成立過程についての若干の考察も含めて報告する.症例は,64歳の女性で,胆嚢摘除術後12年目に,肝左葉外側区域に接した充実性腫瘤および総胆管結石を指摘された.術前US, CTにては,内部不均一な充実性腫瘤であった.穿刺吸引細胞診,腹部血管造影,各種腫瘍マーカー等より遺残ガーゼによる異物肉芽腫の可能性も疑われた.手術時,肝左葉外側区域腹腔側に突出した小鶏卵大の充実性腫瘍を認め,腫瘤を摘出した.同時に総胆管切石術も併施した.腫瘤は,厚い被膜に包まれ中心部に壊死物質と繊維性異物を有する異物肉芽腫であり,病理組織学的には,異物巨細胞に囲まれた繊維細片が確認された.遺残ガーゼは,肉芽腫を形成するものは少なく,嚢腫様腫瘤を形成するものに比べて診断に難渋することが多い.開腹術の既往を有し原発臓器の不明な場合は本症を念頭におく必要がある.
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