日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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51 巻, 7 号
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  • 土岐 祐一郎, 岩沢 卓, 村田 幸平, 東野 健, 井上 雅智, 金子 正, 寺島 毅, 水谷 澄夫, 岡川 和弘
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1361-1369
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去6年間の当院における胃全摘85例,食道癌切除57例について,術後5日間の水分出納より,補正水分バランス累積を算出した.これを用いて,術後肺合併症の発生に体内の水分過剰状態が関与していることを明らかにしようとした.
    術後肺合併症症例において補正水分バランス累積は著明な高値を示した.さらに補正水分バランス累積は高齢者,術前腎機能障害群などに於いても有意な高値を示しており,これらの症例における肺合併症発生の危険性が示唆された.
    また,補正水分バランス累積はFENa (Fractional Excretion of sodium)とも密接な関係を示し,特にFENaが術後3日以降も1%以上をとり続ける症例は,水分過剰状態にあると思われた.さらに,食道癌術後のA-aDO2の増大とFENaの間にも有意な関係が存在した.
    術後肺合併症の予防にFENaを指標としたdry side controlが有効であると思われた.
  • 迫 裕孝, 中根 佳宏, 沖野 功次, 佐野 晴夫, 西原 和郎, 小玉 正智
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1370-1379
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    結節を有する甲状腺疾患78例,90病変(癌55,良性腫瘍35)の超音波像を検討した.
    超音波像は3つの型,つまり嚢胞形成型,充実腫瘍型,音響陰影のみの型に分類することができた.嚢胞形成型は癌の3.6%,良性腫瘍の37.1%にみられた.充実腫瘍型において,癌は内部エコー不均一,辺縁不整の超音波像を,良性腫瘍は内部エコー均一,辺縁型の超音波像をとる傾向がみられた.内部エコーの不均一は,癌の全例,良性腫瘍の半数が点状斑状高輝度陰影に依った.なお,その高輝度陰影は,石灰化を有する症例の全例,硝子化結合織のみの症例の80.5%,両者(-)症例の29.4%にみられた.音響陰影型は,癌の18.2%,良性腫瘍の5.7%にみられた.
    超音波上,良悪性の鑑別は,音響陰影のみを呈してくる症例は別として,辺縁および内部エコー像を詳細に検討することが大切だと思われた.
  • 杉山 和義, 河端 誠, 射場 敏明, 福永 正気, 木所 昭夫, 谷 尚志, 八木 義弘, 川島 徹, 石 和久
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1380-1388
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    新しい腫瘍マーカーBCA225のEIAキットを用いて健常者514名の血清中濃度を測定,カットオフ値を設定してその結果から原発乳癌58例,再発乳癌20例を対照としBCA225, CEA, CA15-3の陽性率を比較検討したところBCA225は病期が進行するにしたがって陽性率が上昇し特に再発乳癌で70%の陽性率を得た.対照として,BCA225は乳癌を除く各種悪性疾患10.0%,乳腺良性疾患0.0%,他の部位の良性疾患5.3%の陽性率を示し乳癌に特異的であった.BCA225とCA15-3とCEAとのCombination assayではBCA225 and/or CEAの組合せで原発乳癌,再発乳癌の両者とも最も高い陽性率が得られた.ホルモンレセプターとの関係ではER・PRの両者とも陰性であった方がBCA225は高値であった.組織型との関係では硬癌でも高い陽性率が得られた.以上からBCA225は乳癌術後のモニタリングに有用であると思われた.BCA225と他の腫瘍マーカー,特にCEAと組み合わせることによって臨床的意義は増すと思われる.またBCA225とCA15-3は相関性を示したのでこれらの抗原の性状等について若干の考察を加えた.
  • 増岡 秀次, 浅石 和昭, 戸田 和則, 岡崎 裕, 江端 俊彰, 岡崎 稔, 早坂 滉, 下川原 出, 長内 宏之, 山本 直也, 森 満 ...
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1389-1396
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    過去7年間に当教室において手術を施行した女性の原発乳癌411例の分析を通し,肥満が乳癌へ与える影響について検討し,以下の結果を得た.
    肥満は乳癌発生の要因の一つであり,中高年の女性の経年的肥満化傾向が乳癌発生数の増加に影響していると思われる.
    肥満傾向になるほど,上位リンパ節転移陽性率は高くなり,病期が進み,予後への影響が強いことが示唆され,また,手術術式としては定型乳切,拡大乳切と上位の手術が多くなる.特に閉経後においてその傾向が強く,肥満は予後不良因子の一つであると思われる.
    ホルモンリセブターは,肥満度と陽性率の間に有意差はみられなかったが,PgRは年齢の上昇するに従い陰性化する有意の関連が認められた.
    肥満の防止が,乳癌発生の一次予防の一つであると同時に,二次及び三次予防の一つであると思われる.
  • 加藤 孝男, 木村 恒人, 村木 博, 神尾 孝子, 藤井 昭芳, 山本 和子, 浜野 恭一, 平山 章
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1397-1403
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳癌の血管侵襲をElastica van Gieson (E.v.G.)染色と第VIII因子関連抗原染色(FVIIIRAg)で鏡検し他の病理学的因子と5生率との関係について検討した.原発乳癌136例を研究対象とした.H.E.染色とE.v.G.染色を全例に施行し,そのうち主病巣の中心部の割面を第VIII因子関連抗原で染色した.E.v.G.染色では20.6%, FVIIIRAg染色では33.8%に認められた.FVIIIRAg染色陽性例(FVIII(+))の5生率は58.7%, FVIIIRAg染色陰性例(FVIII(-))は77.8%で有意差が認められた.FVIIIRAg染色による血管侵襲の様式を塞栓型,浮遊型,浸潤型,混合型の4型に分類した.浮遊型,浸潤型各々の5生率は46.7%, 83.3%で浮遊型の予後は有意に不良であった.乳頭腺管癌では血管侵襲が18.2%と有意に低く乳頭腺管癌の予後の良さを裏付けているように思われた.リンパ節転移陽性のうちFVIII(+)の症例は43.9%だが,リンパ節転移陰性では24.3%であった.リンパ節転移が陰性でも血管侵襲が見られるときは将来の遠隔転移も考慮すべきと思われる.
  • 前期1,000例と後期1,000例との比較
    太田 博俊, 関 誠, 高木 国夫, 堀 雅晴, 上野 雅資, 西 満正, 梶谷 鎧, 柳沢 昭夫, 加藤 洋
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1404-1409
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    単発早期胃癌2,000例を前期1,000例と後期1,000例に分けて比較検討した.前期に比して,後期に70歳以上の高齢者が増加していた.肉眼型別でIIcが増加しIIc+III, IIIが減少していた.隆起型と陥凹型の症例比は,前期の1対3が後期は1対4となり陥凹型が増加していた.胃上部癌は2倍に増加していた.また病巣のサイズは2cm以下の症例が増加し,4.1cm以上の症例が減少していた.1cm以下の症例は内視鏡的切除が行われる様になり手術例は減少していた.リンパ節転移率は全体的にやや低い傾向を示した.集検や検診発見例の増加に加え,実地医家での早期発見例が著しく増加していた.近年の早期胃癌は長型も小さく,初期の病巣例が増えてきており,手術や内視鏡的切除で治癒切除が期待されるようになったと考えられた.
  • 特に,壮年者胃癌との対比
    芦田 義尚, 佐久間 寛, 喜多 一郎, 高島 茂樹, 木南 義男
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1410-1417
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    若年者胃癌(40歳未満)51例の臨床病理学的所見を,壮年者胃癌(60歳代)231例のものと比較し検討した.
    若年者胃癌例の頻度は全胃癌症例の6.5%で,その性別分布は女性の占める比率が壮年者胃癌例に比して有意に高率であった(p<0.01).肉眼型及び組織型についてみると,若年者胃癌例は壮年者胃癌例に比し浸潤型や低分化型の比率が有意に高率であった(p<0.01~0.05).組織学的進行度及び切除率は両者間で差がなかった.非治癒因子および再発形式についてみると,若年者胃癌例は壮年者胃癌例に比し,肝転移が少なく,腹膜播種が多かった.壁深達度別にリンパ節転移,肝転移,腹膜播種の比率をみると,両者間に差はなかった.若年者胃癌のstage IIは壮年者胃癌例に比し予後良好であったが,stage I, III, IVでは両者間に差はなかった.
  • 若・壮年者大腸癌症例との比較を中心に
    桜井 洋一, 青木 明人, 岡芹 繁夫, 金井 歳雄, 島田 英雄, 砂長 貴子, 才川 義朗, 中山 隆市
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1418-1425
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除症例のうち,75歳以上の高齢者61例につき,49歳以下の若・壮年者57例と比較し,臨床病理学的所見および遠隔成績を検討した.切除率,治癒切除率および直接死亡率に有意差を認めず,病変占居部位は,右側結腸が全体の21.3%と有意に多かった.遠隔転移には両群に有意差を認めなかったが,リンパ節転移陰性例は高齢者群で68.4%と若・壮年者群の47.4%に比較し有意に多かった.病期では,高齢者群でAstler-Coller Aの症例が18.0%と有意に多く,遠隔転移やリンパ節転移のないAstler-Coller B2までの症例が64.0%と有意に多かった.組織型では,分化型腺癌が全体の95.0%と有意に多く,若・壮年者群で,粘液癌が12.3%と高齢者群の1.6%に比較して有意に多かった.壁深達度でも高齢者群でpmまでの症例が37.8%と若・壮年者群で14.1%に比較し有意に多かった.他病死を含めた累積7年生存率は,高齢者群,若・壮年者群でそれぞれ22.3%,60.2%と若・壮年者群で有意に良好であったが,他病死を除いた7生率で,それぞれ68.5%, 81.6%であり,両群に有意差を認めなかった.
  • 岩瀬 和裕, 宮田 正彦, 田中 康博, 伊豆蔵 正明, 上池 渉, 橋本 創, 奥村 賢三, 中場 寛行, 弓場 健義, 北川 透, 高尾 ...
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1426-1430
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術あるいは膵全摘術を施行した46例について,術前胆管拡張の有無が,術後の血中胆道系酵素の変動に影響を与えるか否かを検討した.術前にPTCDが施行された症例は,全例,総胆管の最大外径が12mm以上であり,術後3ヵ月目には,ALP,γGTP, LAPともに正常化した.術前にPTCDが施行されなかった症例は,全例,総胆管の最大外径が11mm以下であり,γGTP, LAPは術後3ヵ月目には正常化したが,ALPは,術後3ヵ月目においても正常対照群に比して有意に高値を示した.術前の胆管径が大きい症例に比べて,術前の胆管径が小さい症例では,胆管空腸吻合口が小さいため,血中ALP値上昇として観察される慢性胆汁うっ滞が遷延しているのではないかと推察された.
  • 中迫 利明, 羽生 富士夫, 今泉 俊秀, 中村 光司, 吉川 達也, 鈴木 衛, 三浦 修, 小形 滋彦, 吉井 克己, 木村 健, 小松 ...
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1431-1437
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    総bilirubin(以下総Bil)値10mg/dl以下で,膵頭十二指腸切除(以下PD)が行われた膵胆道系悪性腫瘍85例を対象に,A群:総Bil値3mg/dl以上で,術前percutaneous transhepatic biliary drainage(以下PTBD)施行,B群:総Bil値3mg/dl以上で,術前PTBD未施行,C群:Bil値が3mg/dl未満で,術前PTBD未施行の3群に分け,閉塞性黄疸に対する術前PTBDの意義を探るべく比較検討した.また同時期の黄疸合併良悪性疾患469例のPTBDの合併症も併せて検討した.PD後の合併症発生率は,A群で23%, B群で22%, C群で30%,死亡率は,A群で8%, B群で0%, C群で4%と差はなく,PD術後の合併症の発生率,死亡率は黄疸のriskではなく,手術そのもののriskと考えられた.また,PTBDそのものの合併症発生率は16.8%,死亡率は1.1%であった.従って,総Bil値10mg/dl以下ならば,PTBDの合併症も少なくないので,悪性疾患に対して術前減黄処置なしに一期的PDを行うことが可能と考えられた.
  • 長堀 優, 関川 敬義, 前田 宜包, 石川 徹, 三木 修, 野口 明宏, 菅原 克彦
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1438-1442
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    胃癌切除後に脳転移をきたす症例は少ないが,胃癌根治手術後の経過観察中に脳転移巣を確認し,手術的に切除し得た2症例を経験したので報告する.2症例はともに胃体部原発のBorrmann 2型進行胃癌で,胃全摘術が施行された.原発病巣切除後の初発症状は,1例が意識障害と右不全麻痺,他の1例が頭痛であった.CT上の所見は,前者では左後頭葉に,後者では右頭頂-側頭-後頭葉に,明らかに造影される病変を認めた.2症例ともに他臓器に転移を認めず,腫瘤摘出術を施行し得た.病理組織学的に胃癌の脳転移であることが確認された.
    以上より,胃癌手術後に,脳転移による症状がみられる際には,積極的な切除療法を中心とした集学的治療が有効である症例もあるので注意深い経過観察が必要であることを強調した.
  • 上泉 洋, 佐藤 直樹, 川向 裕司, 後藤田 明彦, 内野 純一, 今野 哲朗, 宮田 昭一
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1443-1447
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    乳癌の胸壁局所再発に対し胸壁全層を切除し,レジン板をMarlex meshでsandwichし,その後広背筋皮弁にて再建した2例を報告した.
    症例1. 45歳女性.根治術3年後,再発した胸骨と右第1~4肋骨を皮膚を含めて胸壁全層切除し,Marlex sandwichで骨性胸郭を再建,広背筋皮弁を行った.症例2. 68歳女性.根治術2年9ヵ月後,右胸壁の皮膚に再発した症例に対し,右第1~3肋骨.右鎖骨・胸骨部分を含む胸壁全層切除と右鎖骨上窩の広範囲郭清を行い,同様の方法で胸壁再建を行った.計測により作成したMarlex sandwichは,煮沸後,オートクレーブで滅菌保存して用いた.術後経過は良好であった.精神的・美容的観点からも適応患者には試みるべき手術であると考えられた.
  • 篠崎 登, 内田 賢, 武山 浩, 長原 修司, 南雲 吉則, 桜井 健司
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1448-1451
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    妊娠合併の乳癌3例を報告した.症例1と2は,妊娠中期に病期IVの進行乳癌発見され,挙児希望で治療がおくれ分娩後それぞれ2ヵ月目,17日後に死亡した.症例3は,妊娠初期に病期Iで発見され,人工妊娠中絶と乳癌の根治的治療を受けた.その16ヵ月後妊娠出産し,5年経過した現在健在である.
    妊娠または援乳期に診断される乳癌の頻度は,全乳癌の0.4~3.8%,また妊娠3,000例に1例の割りに乳癌を合併すると言われている.しかし,妊娠可能年齢に限ると妊娠と乳癌の合併率は当然上昇するので,全乳癌に対する頻度の5から8倍になる.
    妊娠・授乳期に発生する乳癌の診断は,乳腺の妊娠による変化のため困難となりやすく,進行してから診断される症例が多い.ただし病期別にみた経過は,一般の乳癌と差がないとする報告が多い.したがって,妊娠時における乳腺腫瘤の評価には積極的な診断的アプローチが一層必要と思われた.
  • 久貝 忠男, 板東 徹, 下地 光好, 野原 正史, 山内 和雄, 国吉 真行, 石川 清司, 源河 圭一郎, 岩政 輝男
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1452-1457
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    赤芽球癆(Pure Red Cell Aplasia,以下PRCA)は,高度の貧血を呈する比較的まれな難治性の自己免疫疾患である.本症は胸腺腫を半数に合併し,治療的胸腺腫摘除が行われているが,ほとんど効果はない.各種合併療法のうち,最も効果が期待できるステロイド療法でも,その投与量に問題点を残している.今回,われわれは自験例2例(1例目は輸血後肝炎で死亡,2例目は大量ステロイド療法後の肺炎で死亡)と諸家のステロイド無効例,有効例について検討した.その結果,従来より汎用されているステロイド投与量(0.5mg/kg/日以下)では充分な貧血の改善は得られず,ステロイドの至適有効量は1mg/kg/日~1.5mg/kg日の大量投与が必要と思われた.
  • 馬場 憲一郎, 長尾 和治, 松田 正和, 西村 令喜, 松岡 由起夫, 上野 洋一, 森永 博史, 野村 耕一
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1458-1463
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    縦隔腫瘍のなかでも比較的まれな胸腺カルチノイド2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
    症例1は41歳男性で咳,発熱など感冒様症状で来院した.右開胸+胸骨横切開で腫瘍摘出(10×9cm)を行い,好銀染色陽性であった.術後放射線療法を行ったが10ヵ月で右胸膜再発,26ヵ月目に骨転移を来し死亡した.症例2は37歳女性,職場検診の胸部Xpで異常を指摘された.胸骨縦切開で腫瘍摘出(8×7cm)を行い,好銀染色陽性,電顕で神経内分泌顆粒を認めた.術後放射線療法を行い,11ヵ月現在健存中である.
    胸腺カルチノイドの本邦報告例は自験例を含め104例であった.男女比4:1で男性に多く,25%は無症状例であった.局所浸潤やリンパ節転移が高率にみられるが長期生存例も多い.治療の第一はリンパ節郭清を含む腫瘍の外科的切除で合併療法として放射線療法や化学療法を併用すべきである.
  • 大腿静脈バイパスの経験
    佐藤 秀之, 熊本 吉一, 白石 龍二, 杉野 公則, 平野 克典, 利野 靖, 徳永 誠
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1464-1468
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は45歳の男性,呼吸困難を主訴として入院.静脈造影にて上大静脈と左腕頭静脈の閉塞を認め,経皮的針生検を施行し胸腺腫と診断した.外科的切除は不可能と判断したため,人工血管spiral supported EPTFE (expanded polytetrafuluoroethylene)を用いた両側腋窩-大腿静脈バイパスを行った.術後,症状は劇的に改善したが,放射線および化学療法の効果はみられず術後120日目に死亡した.経過中に上大静脈症候群の再発はなく,患者の苦痛の軽減および延命効果に有用と考えられた.
    本邦で過去5年間に人工血管を用いた上大静脈の血行再建症例は78例で,このうちグラフト開存の有無が記載されていた43例61ヵ所について,再建部位とグラフト材質にわけて開存率を比較し,若干の考察を行った.
  • 南 寛行, 窪田 芙佐雄, 河部 英明, 川渕 孝明, 梶原 啓司, 地引 政晃, 七島 篤志, 伊福 真澄
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1469-1473
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    心膜憩室の2例を経験したので報告する.症例1は62歳,女性.胸部重圧感を主訴として来院.胸部X線写真上,左上縦隔に腫瘤影を指摘された.症例2は33歳,女性.自覚症状はないが,胸部X線写真で右心横隔膜角に異常陰影を指摘された.以上2症例のCT値はwater densityを示した.縦隔嚢腫の診断で開胸手術が行われたが,嚢腫はいずれも心嚢との交通を認め,術後組織検索の結果,心膜憩室と診断した.
    心膜憩室は比較的稀な疾患であり,自験2症例を含む本邦報告28例に臨床的検討を加えた.
  • 川崎 康彦, 仲間 ベンジャミン, 山田 護, 奥島 憲彦, 高江洲 裕, 外間 章, 武藤 良弘, 戸田 隆義
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1474-1478
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Carbohydrate Antigen 19-9 (CA19-9)は消化器系癌,特に膵・胆道系癌で高値を示すことが知られているが,肺癌では高値を示すことは少ない.今回血清CA19-9が術前に73660U/mlと異常高値を示した62歳男性の肺癌症例を経験した.腫瘍組織型は高分化乳頭型腺癌でPAP法によるCA19-9免疫染色にて腫瘍細胞は陽性に染色された.術後リンパ節転移巣の増大と共に血清CA19-9値は上昇し,最高178200U/mlまで達した.これまでに血清CA19-9値が1万U/ml以上を示した肺癌の本邦での報告例は自験例を含めても7例しかなく,5例が腺癌,2例が粘表皮癌であった.CA19-9は正常組織の気管支腺に認められるので,高値を示す肺癌では気管支腺由来の肺癌を考える必要があると思われる.
  • 藤井 輝彦, 藤田 博正, 山名 秀明, 白水 玄山, 南 泰三, 島 一郎, 掛川 暉夫
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1479-1485
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    肺外結核のなかでも食道結核の頻度はまれであり,本邦での報告例も少ない.私達は食道結核を2例経験したが,症例1では,食道結核と診断がつかないまま手術を施行し,予後不良であった.症例2では,重篤な腎障害があったにもかかわらず,リンパ節生検にて診断がついたため,抗結核剤による保存的治療だけで経過は良好であった.画像診断において食道結核と食道癌の鑑別は必ずしも容易ではないが,迅速な診断のもとに,適切な抗結核剤を投与することが重要である.内視鏡下生検で癌が検出できない潰瘍性病変では,積極的にリンパ節生検を行う必要があり,確診がつかないまま,食道切除のような侵襲の大きな手術を行うべきではない.
  • 伊佐 勉, 奥島 憲彦, 武藤 良弘, 外間 章, 仲間 ベンジャミン, 高江洲 裕, 川崎 康彦, 山田 護
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1486-1490
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌術後約4ヵ月後に発見された早期の胸部食道癌の症例を報告する.症例は55歳男性で,下咽頭癌術後の経過観察中に食道造影にて胸部食道に隆起性病変を指摘され当科紹介となった.内視鏡検査にて隆起の周辺に粘膜の発赤,粘〓化を認め,ルゴール染色法ではそれよりもさらに広範な不染帯を認めた.生検により扁平上皮癌と診断され,手術を行った.病理組織学的検査では大部分は上皮内癌(ep癌)と異型上皮(dysplasia)が混在した粘膜下層癌(sm癌)であった.
    頭頸部癌症例では,ep癌や粘膜癌(mm癌)などの早期食道癌と重複する頻度が高いといわれており,食道の早期の癌病変をとらえるには内視鏡検査は必須であり,ルゴール法の併用を積極的に行う必要があると考える.
  • 金 達也, 渡辺 明彦, 瀬川 雅数, 中谷 勝紀, 中野 博重, 西村 拓也, 吉岡 章, 福井 弘
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1491-1495
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    患者は48歳の男性で幼児期より皮膚・粘膜下出血を反復,32歳時にvon Willebrand病と診断されている.胃集検にて異常を指摘され精査の結果,胃体中部前壁のIIc型早期胃癌と診断,R2リンパ節郭清を伴う胃亜全摘術を施行した.手術直前に1-deamino-8-D-arginine vasopressin (DDAVP)を静注した結果,術中のリストセチン・コファクターは,64~112%まで上昇し過剰な出血をみることなく無事手術を終了した.術後,腹腔内ドレーンより異常出血を認めたため,加熱濃縮第VIII因子製剤による補充療法に変更した.以後は異常出血なく良好な経過をとった.von Willebrand病患者に対して胃癌根治術を施行したという報告は,本例が初めてであると思われるので,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 石川 仁, 平井 利行, 浅海 秀一郎, 腰塚 浩, Masao HADA, 佐藤 啓宏, 川島 吉之, 坂田 一宏, 宮本 幸男
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1496-1502
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    空腸平滑筋芽細胞腫の1手術例を経験したので報告する.症例は43歳の男性で主訴は下血,左側腹部痛と腹部腫瘤.既往歴に6年前と10年前に2回の大量下血がある.腹部所見では左季肋部を中心に,小児頭大の圧痛を伴う腫瘤を触知した.小腸透視,内視鏡,CTと血管撮影で肝転移を伴う空腸腫瘍の診断で,空腸切除と肝臓転移巣の核出術を行い,病理学的検索にて空腸平滑筋芽細胞腫の診断を得た.
    小腸の平滑筋芽細胞腫は,胃の平滑筋芽細胞腫に比しその頻度や報告例は少なく,本邦では,われわれが検索した限りでは,現在までに本例を含め27例である.われわれは下血から10年を経過して手術しえた,肝転移を伴う空腸平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので報告するとともに,本邦報告例の検討を行った.
  • 高 済峯, 上野 正義, 矢野 友昭, 小沢 利博, 今川 敦史, 八倉 萬之助, 中野 博重
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1503-1507
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は79歳女性.心窩部痛と血性下痢を主訴に当科に入院した.右上腹部に弾性硬の可動性のある腫瘤を触知し,同部に著明な圧痛を認めた.腹部超音波検査にて,右側腹部に高エコー層と低エコー層が交互するmultiple concentric ring signを呈する7×9cm大の腫瘤を認め,腸重積症と診断し,手術を施行した.開腹所見では,回腸回腸結腸型の腸重積症であった.回腸に15×14×14mmの脂肪腫を認め,これが腸重積の先進部となっていた.
    成人腸重積症は比較的まれな疾患である.近年,腸重積症に対する超音波検査の有用性が報告されている.本症例の超音波検査でも特徴的な所見が認められ,診断にきわめて有用であった.
  • 田中 肇, 金銅 康之, 由井 三郎, Itsuo NAKANISHI, 小倉 啓司, 越智 和夫, 奥野 匡宥, 梅山 馨, 三橋 武弘
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1508-1514
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    虫垂より発生したと考えられた黄色肉芽腫の1例を報告する.
    症例は62歳女性で,排尿後不快感および血尿を主訴に当院を受診した.検査所見では,膀胱鏡検査にて頂部に孤立性の表面平滑な腫瘤が認められ,CT検査では膀胱壁外に発育せる約直径3cm大の腫瘤が認められた.なお膀胱鏡による生検では移行上皮癌(GradeI-II)の組織所見であった.手術所見では虫垂と膀胱との間で両者と強固な癒着を示す約直径3cm大の腫瘤が認められた.悪性の可能性も考えられたため膀胱部分切除と右半結腸切除術を施行した.
    その腫瘤は黄色肉芽腫の組織像で虫垂原発と考えられた.稀な本症について若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 水谷 伸, 宗田 滋夫, 竹中 博昭, 小川 法次, 竹内 幸康, 森 匡
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1515-1518
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Schonlein-Henoch紫斑病の経過中,腸重積を発生した症例を経験した.症例は1歳10ヵ月男児,腹痛,タール便にて発症し,紫斑,関節症状が出現したため,Schonlein-Henoch紫斑病と診断された.内科的治療にて軽快傾向にあったが,突然,血便,イレウス症状が出現し,注腸透視にて腸重積と診断された.高圧注腸にて整復できず,手術を施行した.回腸-結腸型の腸重積を認めたが,腸管は壊死に陥っており,回腸及び結腸を部分切除し,端々吻合を施行した.術後は濃縮人第XIII因子製剤を投与し,良好に経過した.近年,Schonlein-Henoch紫斑病の患児に,血液凝固第XIII因子活性が特異的に低下しているとの報告があり,本症例も著明に低値であった.このように,Schonlein-Henoch紫斑病の外科的合併症に対して,濃縮人第XIII因子製剤を投与することは,有効であると思われた.
  • 鬼頭 秀樹, 柳 善佑, 浅田 建蔵, 十倉 寛治, 竹林 淳, 田中 勲
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1519-1526
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    S状結腸破裂をきたし,救命しえたEhlers-Danlos症候群の1例を報告する.症例は60歳,女性.下腹部痛を主訴とし来院し,翌日緊急開腹したところ,S状結腸の腸間膜対側に約12cmの破裂穿孔を認め,Hartmann手術を施行した.臨床症状および皮膚の病理組織所見より本症候群と診断されたが抗コラーゲン抗体による螢光抗体法ではI, III, IV, V型のいずれのコラーゲンも正常皮膚と同様の分布を示し,本症例の型を決定するためには皮膚の培養線維芽細胞を用いた,さらに詳細な検討が必要と考えられた.
    文献的に,結腸穿孔を合併して救命しえた症例は本邦では自験例のみであった.本症候群では,腸管内圧の上昇を避けることが重要であり,また結腸穿孔例に対しては一期的な吻合は避けるべきで,術後もcolostomyの閉鎖は行うべきではないと考えられた.
  • 林外 史英, 山田 哲司, 高畠 一郎, 北川 晋, 中川 正昭
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1527-1531
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    当科では,過去6年間に5症例の大腸絨毛腺腫を経験し,大腸癌との関連性及びその治療方法について検討を加えた.大腸絨毛腺腫5例中3例(60%)に大腸癌が併発していた.また,大腸絨毛腺腫は,大腸癌手術349例中3例(0.9%)にみられた.本疾患の主症状は,肛門輪からの腫瘤脱出,排便障害,粘液分泌であった.治療方針は,過大侵襲を避けるために,腺腫の切除を出来る限り限局性に行う方針である.術中病理診で絨毛腺腫及び癌がen blocに切除され,深達度がm内なら切除は十分になされたものと考える.術後のfollow upを十分に行い,さらに症例を重ねる治療方針を確立したい.
  • 冨田 冨士夫, 高島 茂樹, 木南 義男
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1532-1535
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は91歳女性.主訴は黒色便.入院時内視鏡にて肛門縁より15cmの部位に特異な形態を示すS状結腸癌を認めた.切除標本では大きさ2.5×1.5cmの平坦で浅い潰瘍底を持つ陥凹性病変であり,あたかも周囲粘膜よりpunch outされた如くのIII型類似の形態を呈した.病理組織検索では高分化腺癌が潰瘍底及び筋層内にみられ,pm, INFβ, ly1,v1, ow(-), aw(-), n(-)であった.この特異な形態はIIcやIII型早期癌の進行型であることが疑われた.
  • 竹内 幸康, 南 俊之介, 杉野 盛規, 柏井 朗, 武田 学, 畑中 信良, 横田 博志, 花田 正人
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1536-1540
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    人工肛門に腺癌が新発生することはきわめて稀である.症例は56歳の男性で,1975年に直腸癌のためMiles手術,1977年に盲腸癌のため結腸右半切除術を施行されており,いずれも治癒切除であった.術後は再発徴候を認めなかった.1987年,人工肛門の出血を主訴に来院し,同部に母指頭大の腫瘤を認めた.生検にて腺腫内癌と診断されたため,人工肛門断端より結腸を剥離遊離し腫瘍口側縁より1cmの部位で結腸を環状切除した.病理組織検査にて腺腫の中心に粘膜下層に達する粘液癌を認めた.人工肛門に腫癌が発生したという報告は,潰瘍性大腸炎症例で3例,Miles手術術後に1例報告されているのみである.本症例のごとく人工肛門に腺腫内癌が発生した報告はなく,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 小暮 公孝, 石崎 政利, 根本 雅明, 中屋 光雄, 安藤 哲, 栗原 透, 笹本 潔
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1541-1545
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    58歳,女性.15kgの体重減少と腹部腫瘤を主訴とした肝外発育型肝細胞癌症例を経験したが腫瘤は右肝動脈前下区域枝に栄養され懸垂状に骨盤まで達していた.右肝動脈を結紮切断後,被膜に沿って剥離するように腫瘍を摘出したが組織学的には索状型,充実型,偽腺管型,硬化型等多彩な組織像を示した.術後15ヵ月,腹壁と肝内に転移巣を認め腹壁の転移巣を摘除した.術後20ヵ月目には腹腔内への転移も認められ,術後30ヵ月後には空腸間膜の転移巣が摘除された.この間,2回のMMC20mgの肝動注と他の抗癌剤の投与が行われたが術後48ヵ月目に転移巣増大と腸通過障害による全身衰弱により死亡した.本例は肝外発育型の内の肝外突出型肝細胞癌の範疇に入り本邦報告62例中では4年生存したものはなく生存期間に於いてもまれな症例と考え若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 寺島 信也, 八子 直樹, 櫛田 正夫, 渡辺 正俊, 小泉 祐功, 亀田 俊夫, 木暮 道彦, 斎藤 拓朗, 遠藤 幸男, 寺西 寧, 井 ...
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1546-1552
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    Biliary cystadenomaは極めてまれな疾患であるが,癌化の問題がある.われわれはbiliary cystadenomaの1例を経験したので報告した.症例は67歳女性で心窩部痛を主訴に当科へ入院した.肝嚢胞の診断にて嚢胞亜全摘術を施行し術中迅速病理診にて悪性所見のないこと確認した.術後の病理組織診にてはbiliary cystadenomaの診断であった.術後8ヵ月の現在悪性化の徴候なく生存中である.本邦におけるcystadenomaおよびcystic adenocarcinoma症例を集計しその特徴を明らかにし,両者の鑑別とくに画像診断上の相違点について検討した.
    Biliary cystadenocarcinomaは,US, CTで内腔に突出する乳頭状隆起が多くで認められた.また乳頭状腫瘤はenhance CTでエンハンスされた.血管造影でこれら隆起は濃染された.これらが画像診断上両者の鑑別上のポイントと思われた.
  • 児玉 一成, 柳瀬 豊, 笹富 輝男, 有島 史芳, 土田 勇, 福島 駿
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1553-1556
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    われわれは胆嚢欠損症に,総胆管結石,Meckel憩室を合併した症例を経験したので報告する.症例は69歳の男性であり,主訴は右季肋部痛であった,精査の後,胆嚢は確認できなかったが,総胆管結石の診断で手術を施行した.総胆管は拡張し内部に2個の結石をみとめたが,胆嚢は欠損していた.また回腸末端より75cmの部にMeckel憩室を認めた.手術は結石摘出術,Tチューブドレナージ,Meckel憩室切除術を施行した.先天性胆嚢欠損症は比較的稀な胆道奇形のひとつである.成人例における本邦報告例は77例であった.報告例の多くは腹痛,発熱,黄疸などを主症状とし総胆管の拡張は48.1%に,総胆管結石は31.2%に合併していた.結石合併例が主として手術適応になるが加齢とともに結石を合併する頻度が高く,胆嚢欠損症を疑う症例では注意深い観察が必要である.
  • 本邦集計5例の検討
    宗本 義則, 花立 史香, 山村 浩然, 村上 真也, 高畠 一郎, 疋島 寛, 森 義裕, 林外 史英, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 ...
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1557-1561
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性,右下腹部痛にて来院した.血液生化学検査にて糖尿病を認めた.腹部単純写真で,pneumobiliaを認めた.腹部超音波検査で,胆嚢壁の肥厚,塊状の不規則な腫瘤を認めた.上部消化管造影で十二指腸下行脚と総胆管に瘻孔を認め,肝内胆管の描出が得られた.上部消化管内視鏡検査で瘻孔の開口部を認めた.
    1989年1月12日手術施行,胆嚢癌で胆嚢十二指腸瘻,胆嚢結腸瘻を認め,胆嚢摘除術,1989年1月12日手術施行,胆嚢癌で胆嚢十二指腸瘻,胆嚢結腸瘻を認め,胆嚢摘除術,全く悪性所見はなく炎症所見のみであった.
    胆嚢十二指腸瘻,胆嚢結腸瘻の両者を認めた胆嚢癌は,本邦で5例認めその検討を行った.
  • 本邦報告102例の検討も加えて
    野口 徹, 工藤 道也, 原田 晴久, 島田 良, 今井 寿生, 沼田 稔, 志賀 知之, 幕内 雅敏
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1562-1567
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    膵のsolid and cystic tumorの2例の報告と,本邦報告102例の臨床的問題点を検討.症例は18歳と24歳の女性で主訴は腹部腫瘤,画像診断で嚢胞性腫瘍が描出され,膵体尾部切除術を施行.組織学的に両者ともSCTと診断され,症例1では被膜外浸潤と血管浸潤が,症例2では被膜内浸潤とα1 antitrypsin Ve色陽性が認められた.本邦報告102例の平均年齢は31歳で大多数が女性,腫瘍の部位は頭部32例・体尾部66例で,術式は膵頭十二指腸切除18例・膵体尾部切除45例・核出術26例等であった.組織学的な浸潤傾向が30例(被膜内へ13例・膵実質へ14例・周囲臓器へ3例)に,さらに転移・再発が6例にみられたので,術式は膵癌に準じるのが望ましい.
  • 山崎 雄一郎, 高田 真行, 茅野 嗣雄, 加藤 洋, 原田 則雄
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1568-1573
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性,腹部膨満感を主訴として来院.腹部超音波検査および腹部CTにて大量の腹水と腹水中に広がるmultiple septationsを認め,腹膜偽粘液腫と診断した.術中所見より右卵巣と虫垂に粘液産生腫瘤が見られ,組織像では両者とも高分化型腺癌構造を呈していた.腫瘤の外科的切除に加えて持続腹膜透析(CAPD)用のテンコフカテーテルを留置し,術後4ヵ月にわたり腹腔内持続洗浄と5-FUによる腹腔内化学療法を施行した.血清および腹水中のCEA, CA19-9, CA125値は経時的に低下し,術後4ヵ月目に再開腹したところ粘液塊の再発を認めなかった.本症例におけるCAPDシステムを用いた腹腔内化学療法は腹膜偽粘液腫の再発を防止する上で有効と思われたので報告する.
  • 尾崎 直, 近藤 治郎, 長井 孝夫, 松本 昭彦
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1574-1577
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    腎動脈瘤は高血圧を高頻度に合併するとされている.腎血管性高血圧症の血行再建術後に発生した右腎動脈瘤により高血圧が再発した1例を経験したので報告する.症例は34歳.女性.20歳時,右腎動脈狭窄による高血圧症で右腎血行再建術施行.術後14年,血圧の再上昇がみられ右腎動脈瘤の診断で昭和61年11月15日入院.入院時血圧は180/120mmHg(右上肢),172/130mmHg(左上肢),血漿レニン活性値は3.5ng/ml/hr.腎静脈レニン活性値は右側で6.2ng/ml/hr.左側で4.7ng/ml/hr.右/左腎静脈レニン活性値比は1.32であった.動脈瘤は17×35mmの楕円形,右腎/左腎長径比は0.72であった.手術は腎摘出術を施行した.術後の血圧は正常化し血漿レニン活性値は0.4ng/ml/hrと改善した.
  • 山田 直樹, 加納 宣康, 古村 能章, 二村 直樹, 足立 俊之, 波江野 善昭, 和田 英一, 稲田 潔, 松波 英一, 服部 福徳
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1578-1583
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    腹部内臓血管の動脈瘤はいずれも稀なものであるが,下腸間膜動脈瘤はその中でも最も頻度が少ない.われわれは大動脈炎症候群を合併した56歳女性の下腸間膜動脈瘤の1治験例を報告する.患者は臍部を中心とした収縮期雑音を指摘され来院した.腹部CT検査にて大動脈の左側に径2cmの周囲石灰化を有する円形の腫瘤を認め,大動脈造影にて下腸間膜動脈の根部に発生した動脈瘤と診断した.破裂の危険性を考え手術を施行した.術式は動脈瘤を切除後,右内腸骨動脈と流出動脈断端を端々吻合し腸管への血行を再建した.動脈瘤は3.0×2.0×2.2cmの嚢状のもので,動脈壁の一側より2×1cmの裂口をもって側方へ突出していた.流入動脈の切断端には著明な狭窄を認めた.組織学的に動脈瘤壁の内弾性板は離開消失し,石灰化が著明であった.本動脈瘤は大動脈炎による狭窄部後拡張に二次的な動脈硬化性変化が加わったものと診断した.
  • 2例目の治験報告と画像診断について
    杉井 重雄, 池田 浩之, 高木 良三, 磯松 俊夫
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1584-1589
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    術前に診断しえた膝窩動脈外膜嚢腫の1例を報告する.この症例は著者らの2例目の報告であり,本邦での報告は本症例を含めて34例と思われる.
    症例は56歳の健康な男性で,突然,左下肢の間欠性跛行をもって発症した.薬物治療の効果なく,症状は日によって変動し,休息により改善した.術前検査では,膝関節過屈曲位による動脈造影,超音波断層像,エンハンスCT像にて,特徴的な膝窩動脈の狭窄像と嚢腫像を認め,術前に本症の診断を確定することが出来た.手術は,嚢腫摘除(外膜切除)を行い,術後,症状は消失した.
    本症は,その特徴的な臨床像と画像診断上の2・3の特徴をつかめば,術前診断は比較的容易と思われ,著者らの経験と,文献的考察を加えて報告する.
  • 柳沢 肇, 安斉 徹男, 金沢 稔, 飯島 哲夫, 大林 民幸, 大滝 章男, 小玉 仁, 泉雄 勝, 松本 満臣
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1590-1593
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2009/04/21
    ジャーナル フリー
    孤立性内腸骨動脈瘤は,非常にまれな疾患であり,その破裂率も高い.今回,われわれは,内腸骨動脈の結紮と術中に動脈瘤の塞栓術を施行し,良好な結果を得たので報告する.
    症例は,84歳男性,左内腸骨動脈瘤破裂例であり,まず,カテーテルによる動脈瘤塞栓術を試みた.しかし動脈硬化が強く塞栓術は諦め,手術を施行した.左内腸骨動脈の中枢側の結紮を施行したが,依然と拍動を触知したので,瘤内にoccluding coil挿入とGelfoamを注入したところ,拍動は消失し,瘤の血栓化を得ることができた.瘤の中枢側だけの結紮では不十分である場合には,この方法は試みてもよいと考えられる.
  • 野守 裕明, 三村 孝, 鈴木 信正, 森永 正二郎
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1594-1596
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    患者は54歳の女性であり,健康診断にて左肺尖部の異常陰影を指摘された.同時に左鎖骨上窩に腫瘤が認められ,同腫瘤の圧迫により左前腕外側に放散する疼痛を訴えた.腫瘍は左腕神経叢原発の良性神経鞘腫であった.手術は鎖骨上窩の皮膚を切開後,鎖骨を離断して腫瘍に到達し,周囲臓器より腫瘍を剥離し可能な限り腕神経叢を温存し,開胸はせずに完全切除し得た.術後の神経障害はほとんど認められなかった.
  • 水谷 純一, 高城 克義, 並川 和男, 庄嶋 健, Ryoki KAWAMURA, 土井口 幸, 山口 哲也
    1990 年 51 巻 7 号 p. 1597-1600
    発行日: 1990/07/25
    公開日: 2010/01/21
    ジャーナル フリー
    昭和60年4月から昭和63年10月までの3年7ヵ月間に10例の精神分裂病合併患者の外科的疾患に対し手術を行った.10例の内訳は,男性5例,女性5例で,年齢は26歳~70歳,平均45.4歳であった.また,精神分裂病の罹病期間は2年~41年,平均18.4年であった.これら10例に対し,開腹術を5例に,開胸術を1例に,その他の手術を4例に行った.麻酔は1例を除いてGOEを主体とする全身麻酔を行った.術前の抗精神病薬の投与は全例,術前日まで行い,術後の薬物の再開は10例中3例に術当日より非経口投与で,残り7例中6例は経口摂取開始とともに経口投与で行った.全例,術後は外科病棟で管理を行った.術後,呼吸・循環系,その他の合併症は全くなかった.術前,術後の管理は精神科医の協力のもとに,何ら支障なく行い得た.精神分裂病合併患者といえども,その手術に際し精神科医の協力があれば,安全に術前,術後の管理が行い得ると考えられた.
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