日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
52 巻, 1 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
  • 佐戸川 弘之, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 浜田 修三, ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腱索断裂によるMRに対する手術例16例を対象とし形成術の有用性に関して検討を加えた.形成術(MVP)を6例に,人工弁置換術(MVR)を10例に施行した.病因は特発性が10例(63%)と最も多く,次いでリウマチ性4例,感染性2例であった. MVP群は全例男性であり,組織学的に粘液変性を認め特発性と診断した.特発性は病悩期間が6±7月とリウマチ性の52±15月に比べ有意に短く(p<0.01),腱索の断裂は後尖に8例(80%)と多く認められた.弁形成術はMcGoon法にて施行し, 3例にKay法による弁輪縫縮術を追加した.術後の血行動態は, MVP群では肺動脈楔入圧v波が19±6 mmHgから8±3mmHgと下降し,左室仕事係数も改善しており, MVR群と明らかな差はみられなかった.腱索断裂に対する弁形成術は適応を選べば有用であるが,手術時期の決定が重要と考えられた.
  • 川口 雄才, 平松 義文, 山中 英治, 小島 善詞, 真田 俊明, 日置 紘士郎, 山本 政勝
    1991 年 52 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌に対する手術は手術侵襲が大きく,術後は多彩な代謝異常がみられる.エネルギー代謝については近年のカロリーメトリー機器の開発によりリアルタイムの測定が可能となってきた.今回,われわれは胸部食道癌手術症例のエネルギー代謝の変動を測定し,それに基づいた合理的な栄養管理について検討を加えた.その結果,胸部食道癌切除再建症例19例は胃癌胃全摘術症例17例に比し,安静時エネルギー消費量およびserum osmolality gapの有意の上昇を認め,さらに胸部食道癌切除再建症例50例では,内分泌系としてカテコラミン,グルカゴン,コルチゾールの上昇が認められた.また,胸部食道癌切除再建症例19例において,安静時エネルギー消費量は術直後より基礎エネルギー消費量の約130から180%と増加し,胸部食道癌術後での至適投与カロリーは35~45Kcal/kg/day投与でエネルギー平衡は正に維持されることが判明した.
  • 安名 主
    1991 年 52 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃切除後の耐糖能を調べるために, 1980年WHOの糖尿病診断基準と1982年の日本糖尿病学会基準により,胃切除後の34症例を4グループに分けて検討した.
    グループIは3例で,正常型に属し,グループIIは境界型からImpaired Glucose Tolerance (IGT)を除いた22症例である.グループIIIはIGTの5例であり,グループIVは4例で,糖尿病型である.
    グループIIでは4グループ中最も症例が多く, Oxyhyperqlycemia例はすべてこのグループに属している.グループIに比べると,糖負荷後早期の糖処理能力が低下しているが,ブループIII及びIVに比べると,良好な耐糖能を有している.グループIIIは前糖尿病状態であり,胃切除後症例においても,グループIVと同様に厳重な管理が必要である.グループIVは4例中3例は術前に糖尿病として治療をうけていた症例であり, HbA1も他のグループに比べて有意に高値であった.
    以上, 4グループの間でそれぞれに耐糖能に有意差が認められ,この亜分類は胃切除後症例の耐糖能の評価に有用である.
  • 大草 世雄
    1991 年 52 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    単発胃癌症例654例を対象として切除標本の肉眼的最大径を測定し1cmごとに分類し,各長径ごとの臨床病理学的所見及び遠隔成績を比較検討した.さらに長径3cm未満でも漿膜面浸潤,リンパ節転移,腹膜転移,あるいは肝転移が陽性であるもの,および5cm以上でも早期癌,あるいはリンパ節転移陰性であるものを特殊例として検討した.長径と臨床病理学的因子は10cm程度までは関連を認めるが, 10cm以上では関連は明らかではなくなった.長径と遠隔成績は7cmまでは長径の増大とともに生存率は低下し95.2%から21.4%となった.しかし, 7cm以上では生存率に差は認めなかった.以上より胃癌長径は小さいうちは臨床病理学的各因子および遠隔成績を反映するが大きい腫瘍では明らかでなくなるとの結論を得た.また3cm未満の特殊例は平坦型, por,脈管侵襲が高度で, INFγに多かった. 5cm以上の特殊例は隆起型, sig,脈管侵襲が軽度なものが多かった.
  • とくに吻合部合併症について
    津嶋 秀史, 河村 正敏, 加藤 貞明, 鈴木 博, 趙 成坤, 廣本 雅之, 館野 哲也, 横川 京児, 伊東 司, 新井 一成, 小池 ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1982年から1988年までの7年間の胃癌切除症例501例中,胃全摘術を施行した151例を対象とし,器械吻合群(以下A群と略) 62例と,手縫い吻合群(以下B群と略) 89例とに分け,術後吻合部合併症について検討した.それぞれの術式は, A群Roux-Y吻合59例,空腸間置3例で, B群Roux-Y吻合86例,空腸間置3例であった.手術の背景因子は,両群間に有意差は認めなかった.
    吻合部合併症は,縫合不全: A群4例(6.5%), B群6例(6.7%),吻合部出血: A群1例(1.6%), B群1例(1.1%),吻合部狭窄: A群5例(8.1%), B群6例(6.7%)であり,合併症の頻度は,両群間に有意差を認めなかった.
    器械吻合は,手縫い吻合と比較し,吻合部合併症で有意差を認めず,手技の簡便さ,吻合時間の短縮等の利点があり,有用な吻合法と考えられた.
  • 更科 広実, 井上 育夫, 斉藤 典男, 布村 正夫, 中山 肇, 小田奈 芳紀, 白井 芳則, 大森 敏生, 滝口 伸浩, 奥井 勝二
    1991 年 52 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸癌のリンパ節転移におよぼす術前照射療法(42.6Gy)の効果について検討した.対象は非照射群25例,照射群13例で,リンパ節の検索数を増やすため手術前日にmicrocarbonを腫瘍下縁に注入し, 1症例当たり40~60個のリンパ節を摘出検索した.リンパ節転移率は非照射群64.0%,照射群38.5%であった(p<0.1).転移陽性例におけるリンパ節転移個数は,非照射群で平均8.6個,照射群で平均2.8個であった(p<0.05).リンパ節の大きさ別検討では,非照射群の小リンパ節(3mm未満)には6.4%の転移度がみられたのに対し,照射群では小リンパ節に転移を全く認めなかった.以上の結果,術前照射療法は転移リンパ節個数を有意に減少させ,中でも小リンパ節に対する影響の著しいことが明らかとなった.
  • 合併疾患を中心として
    中島 久元, 菊池 友允, 熊沢 健一, 大谷 洋一, 細川 俊彦, 大石 俊典, 大東 誠二, 小川 健治, 芳賀 俊介, 梶原 哲郎
    1991 年 52 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当科における先天性胆道拡張症例に対して合併疾患を中心に検討した.胆道癌の合併は13例中2例にみられたがいずれも癌進展により切除不能であった.胆管の拡張形態は嚢胞状を呈し非拡張部の肝内胆管,肝外拡張胆管に癌の発生をみた.胆汁中のアミラーゼ値は高値を示し,長期にわたり膵液が胆管内へ逆流したことが誘因と考えられた.胆石症の合併は5例にみられその内3例がビリルビン石灰石であった.胆管の拡張形態はIV-A型3例, Ia型1例, Ib型1例でありIV-A型3例中2例は肝内結石であった.膵石は3例に合併をみたが, Wirsung管内1例, Santorini管内1例,双方に認められたもの1例であった.また3例中2例はX線非陽性結石であった.いずれも乳頭形成術,副乳頭形成術により膵石を載石した.
    治療として肝外拡張胆管切除術兼胆道再建術を行った.
    術後合併症として嚢胞消化管吻合後再手術例に膵液瘻を2例認めたが,保存的治療のみで治癒した.予後をみると癌合併例を除き良好であった.
  • 診断困難例の鑑別診断を中心として
    木戸 潔, 吉川 高志, 澤田 秀智, 吉川 周作, 中嶋 寿, 浅生 幸郎
    1991 年 52 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆道狭窄における良悪性の鑑別及び診断能の向上をめざし,過去5年間に当院で経験した胆道狭窄症例16例について,良悪性の鑑別を中心として,臨床所見,狭窄像を主体とした画像診断について検討し以下の成績を得た. 1) 年齢は悪性例が有意に高く,検査成績において白血球,ビリルビン, ALPがそれぞれ悪性例に有意に高く見られたが,その他の検査成績及び性別,病悩期間,症状等には有意差は見られなかった. 2) 診断法として,直接胆道造影が有用であったが,自験例では尚診断困難例が見られた. 3) 狭窄像では,部位に良悪性間の差は見られたが,長さ,最小径,狭窄側等には差は見られなかった.壁の性状,狭窄形態からはある程度良悪性の診断の一助にはなると思われたが,尚診断困難な例も多く,こういった症例に対してはPTCSが有用であると思われた.
  • 特に悪性疾患を中心に
    石光 寿幸, 江口 雅人, 廣瀬 宣明, 岐部 明廣
    1991 年 52 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは過去7年間に宇佐高田医師会病院で施行したPTCD症例76例(内PTGBD 11例)を対象として,主に悪性例を中心にその効果を統計学的に検討し以下のような知見を得た.悪性疾患57例への対応では根治手術9例,非根治手術15例,手術未施行(PTCDのみ)が33例であった. 1) 全悪性症例の内,手術未施行例では平均生存日数は116日を記録し非根治手術例(125日)との差は認めなかった. 2) 良性群は悪性群に比べ,減黄までの日数(T-Bil=3.0mg/dlまで)と初期T-Bil値で有意に低値であった(p<0.01). 3) 悪性群では胆管癌,膵頭部癌,胆嚢癌の順に予後が悪くなる傾向を認めた. 4) 悪性群で,手術未施行例は根治手術例との間で生存率に有意の差を認めた(p<0.05)が,非根治手術例との間では有意差は認めなかった.根治手術不能な進行癌に対しbypass術など姑息的な手術は慎重な適応の選択が必要と考えられた.
  • 鈴木 修一郎, 山岸 文範, 白崎 功, 霜田 光義, 櫛淵 統一, 桐山 誠一, 坂本 隆, 山下 芳朗, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤 ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵癌切除例28例のうち手術死亡,他病死例を除いた24例を対象とした.その肉眼的進行度はStage II 6例, III 11例, IV 7例で,組織学的治癒切除例は13例,組織学的非治癒切除例は11例であった.
    組織学的治癒切除例では1, 3, 5年生存率はそれぞれ50, 37.5, 37.5%であり,組織学的非治癒切除例では23カ月を越えて生存した例はなく1年生存率21.8%であった.組織型では長期生存例に比し, 1年未満癌死例,組織学的非治癒切除例では中分化型管状腺癌が多い傾向がみられた.組織学的腫瘍進展度では長期生存の2例はいずれもs0, rp0, n(-), pv0 v0であり, 1年未満癌死例ではpv因子以外いずれも陽性であり,組織学的非治癒切除例ではさらに膵外への進展傾向が認められた.また,組織学的治癒切除例では死亡時, 6例中4例に肝転移が認められ,長期生存のためには肝転移対策が重要な課題であると思われた.
  • 高島 健, 平田 公一, 及川 郁雄, 古畑 智久, 服部 直樹, 白松 幸爾, 早坂 滉
    1991 年 52 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に経験した膵頭十二指腸切除術(以下PD) 53例の術後合併症について検討した.術後合併症発生率は55%と高率であった.局所的合併症発生率は55%で,縫合不全と出血が多く,全身的合併症発生率は34%であり,局所的合併症例との重複が多かった.手術直接死亡率は1.9%であり,縫合不全あるいは出血を契機として,敗血症, DICを生じ,さらに多臓器不全(以下MOF)へ移行する傾向を認めた.これらの検討から,手術直接成績を大きく左右するのは縫合不全と術後出血であり,その両者への十分な注意が必要であると思われた.
  • 久我 貴之, 松本 直晃, 中山 富太, 藤井 康宏
    1991 年 52 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    下肢の一次性静脈瘤を除くと静脈の拡張性病変は稀な疾患であるが,外頸静脈の静脈aneurysmの1例を経験したので報告する.
    症例は49歳の女性で右頸部腫瘤を主訴として来院した.右頸部に3×2cm大の弾性軟の腫瘤を触知した. MRアンギオグラフィーにて血栓形成を伴う外頸静脈aneurysmと診断し,全身麻酔下に切除した.手術でMRアンギオグラフィーと一致した所見が確認された.病理組織学的検索にて血管壁の菲薄化,血管平滑筋の構造異常および一部内膜肥厚を認めた.
    MRアンギオグラフィーは非侵襲的検査であり,末梢血管病変の術前検査として有用であった.
  • 瀬下 達之, 野原 隆彦, 上垣 賢, 板倉 正幸, 中瀬 明
    1991 年 52 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    CA19-9は消化器系癌において陽性率が高いといわれているが,甲状腺癌において高値を示した報告はまれである.最近,血清CA19-9値が高値を示した甲状腺癌を経験し, PAP法で組織学的に腫瘍組織からのCA19-9産生を証明したので報告する.
    症例は73歳の男性で,右頸部腫瘤を主訴にて来院し,針生検にて乳頭癌との診断を得た.腫瘍マーカーは血清CA19-9値のみが200U/mlと高値を示した.消化器系の探索を行ったが異常を認めず,頸部CT,頸部DSA,甲状腺シンチグラムより,甲状腺癌あるいは甲状腺癌のリンパ節転移と診断し,甲状腺右葉切除術,右頸部腫瘤を含めた,リンパ節郭清術を施行した.
    摘出標本を, PAP法を用いてCA19-9染色を行ったところ,腫瘍細胞の染色を確認し, CA19-9の産生を証明し得た.
  • 赤木 謙三, 高塚 雄一, 岡村 泰彦, 河原 勉
    1991 年 52 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌術後の胸壁放射線潰瘍に対して,種々の切除再建法を試みた.対象は7例で,手術時には全例,感染による難治性の潰瘍あるいは瘻孔を伴っていた.再建方法は切除が小範囲であれば局所皮弁,皮膚切除が広範におよぶものには有茎大網移植,胸壁切除に対しては腹直筋皮弁を用いた.術後全例にquality of lifeの改善がみられた.しかし,合併症として感染と瘻孔形成がかなりの頻度に出現した.
    放射線潰瘍は感染を合併すると難治性となりやすく,また急激に進行する場合もある.したがって,可能であれば可及的早期の外科的治療が望まれた.その際,感染合併例に対する人工物の使用は慎重を要し,たとえ広範囲の胸壁切除を伴っても,筋皮弁のみで再建可能と考えられた.
  • 小林 浩司, 芳賀 駿介, 清水 忠夫, 渡辺 修, 今村 洋, 飯田 富雄, 我妻 美久, 矢川 裕一, 小川 健治, 梶原 哲郎
    1991 年 52 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺は,転移稀発臓器として知られ,なかでも胃癌が乳腺に転移することは,極めて稀である.今回われわれは,胃癌の乳腺転移の1例を経験したので報告する.症例は29歳女性.昭和62年1月に手術不能胃癌(Borr 4,未分化癌)と診断され,化学療法を施行された.同年3月より右乳腺A領域に30×25mmの無痛性扁平腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは腫瘤陰影などは認めず,超音波検査で,境界明瞭な低エコー像を示した.穿刺吸引細胞診では,腫瘍細胞とその配列の特徴により,胃癌の乳腺転移と診断した.治療は化学療法,放射線治療を施行したが,乳腺転移出現後5カ月目で癌性リンパ管症により死亡した.なお転移様式は,臨床経過からリンパ行性転移が推察された.
  • 中村 真之, 本間 喜一, 城野 憲史, 久保 秀文, 清水 良一, 内山 哲史, 浜中 裕一郎, 岡 正朗, 村上 卓夫, 鈴木 敞
    1991 年 52 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳女性. 9年前に直腸癌に対し低位前方切除, 3年前に同肺転移のため左上葉切除を施行されている.
    今回,外来にて経過観察中にCEAの上昇と左側胸部の腫瘤を認めた.腫瘤は増大傾向にあるため,胸壁腫瘍及び3本の肋骨と肺の一部を合併切除し,切除範囲は縦15.9cm,横13.7cmと広範囲に及んだ.欠損した胸壁はmarlex meshを補填することによって再建した.術後は奇異呼吸や異物反応を生じることはなく順調に経過し,短期間で軽快退院せしめた.胸壁腫瘍は組織学的に直腸癌の胸壁転移と診断された.
    退院8カ月後に両肺に転移巣を認め,現在入院し免疫化学療法を施行している.
  • 小嶋 信博, 唐沢 洋一, 草野 満夫
    1991 年 52 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管の中でも食道に発生する平滑筋腫は稀とされており,症状に乏しく検診や他の疾患の検査中に偶然発見されることが多い.われわれも十二指腸潰瘍の経過観察中に胸部下部食道に0.7×0.5cmの微小粘膜下腫瘍を認め2年の経過で4.4cmに発育した食道平滑筋腫の1例を経験した.患者は69歳,男性.特に症状はなかったが,食道透視,内視鏡にて食道内腔に隆起する粘膜下腫瘍を認め,超音波内視鏡, CT等から食道平滑筋腫を疑い手術を施行した.術中肉眼所見でも悪性を疑わせる所見は認めず,核出術を行った.摘出標本の病理組織学的検討にて平滑筋腫と確診された.本症と鑑別を要する最も重要な疾患は平滑筋肉腫であるが,生検による有所見率は低く診断には苦慮する疾患である.本例では術前検査所見,術中肉眼所見から良性腫瘍と判断し,術後の病理組織学的検索で平滑筋腫と確診された.術後経過は良好で,穿孔,狭窄,憩室等の合併症はなく,再発も認めていない.
  • 板倉 裕子, 和賀井 啓吉, 遠藤 渉, 小高 庸一郎, 阿部 啓二, 三浦 俊治, 土井 秀之, 岩見 大二, 星野 彰, 後藤 邦彦, ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.主訴はタール便と吐血.内視鏡にて下部食道に潰瘍を伴う隆起性病変を認め,生検で低分化型扁平上皮癌と診断された.術前検査でM蛋白(IgG-λ)認め,骨髄像で形質細胞が18%と増加しており,頭部単純X線写真で打ち抜き像様の所見を認めた.以上より,比較的早期の多発性骨髄腫に合併した易出血性の食道癌として,中下部食道胃噴門側切除を施行した(A2N3M1Pl0).組織学的に形質細胞腫(a2n3m1ly3v0)と診断され,組織酵素抗体法でIgG-λが陽性であった.術後,胸腹水と左胸腔内腫瘤が出現し,これらから骨髄腫細胞が検出された.化学療法を施行したが,患者は敗血症及び呼吸不全で死亡した.
    食道原発の形質細胞腫は,世界で3例報告があるのみで,本邦ではこの症例が初の報告例と思われる.
  • 遠藤 健, 井手 博子, 葉梨 智子, 野上 厚, 丸山 千文, 羽生 富士夫, 山田 明義
    1991 年 52 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性で昭和51年(12年前)左甲状腺癌で手術,翌年左頸部リンパ節再発にて左頸部リンパ節郭清術を受けた.昭和62年10月嚥下時頸部違和感自覚,上部消化管精査を繰返し,昭和63年9月内視鏡検査で早期食道癌の診断を受け入院した.入院時左頸部傍気管に直径15mmのリンパ節を認め,下部食道にep-mmを疑うIIc様病変を認めた.経験的にep-mmの食道癌はリンパ節転移が少ないことから胸部食道癌および甲状腺癌頸部リンパ節再発の診断にて,手術は非開胸食道抜去及び転移リンパ節摘出術を施行した.切除標本より左頸部リンパ節は食道気管壁に一部浸潤する乳頭状腺癌で食道癌は深達度粘膜上皮内の早期癌であった.甲状腺癌と食道癌の重複例は比較的稀であり,その食道癌が粘膜上皮内癌であった報告は前例がないと思われ,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 赤井 護, 平田 陽一, 前場 隆志, 宮内 章充, 田中 聰
    1991 年 52 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    石灰化を伴い,胃壁外型有茎性に発育した胃平滑筋腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は66歳女性,自覚症状は特に認められず,腹部単純X線上,左上腹部に石灰化を伴う腫瘤を指摘された. CT,超音波検査,胃透視,注腸透視,血管造影を行ったが,原発臓器を確定できず,術前診断が極めて困難であった.切除標本の組織学的検索により,胃平滑筋腫と診断された.石灰化を伴い,胃壁外性有茎性の巨大な胃平滑筋腫は文献的にも稀であり,また,病理組織学的に,良性と悪性を鑑別することは困難な場合が多いとされているため,今後とも十分な経過観察が必要と考える.
  • 藤井 輝彦, 梅津 徹, 田中 裕穂, 孝冨士 喜久生, 平井 裕, 辻 義明, 岩井 壽生, 安元 健二, 橋本 謙, 武田 仁良, 掛川 ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍による幽門狭窄に対し,胃空腸吻合術を施行され, 36年目にIIc型早期胃癌が発生した1例を経験したので報告する.
    症例は56歳,男性.胃体部大弯側の胃空腸吻合部に接して陥凹性病変と粘膜の集中像を認め,内視鏡生検にて印環細胞癌と診断された.手術は,吻合部を含め幽門側胃切除を行い, Roux-en Y法で再建した.摘出標本の肉眼型はIIc型早期胃癌で,組織学的進行度は, H0P0n0m: stage Iであった.組織型は,印環細胞癌であった.
    胃空腸吻合術後の胃癌の発生機序は,十二指腸液の刺激という化学的因子が最も重要である.診断には内視鏡が有用であり,とくに胃空腸吻合をされた胃の追跡には吻合部周囲の変化に注意すべきである.
  • 森 匡, 宗田 滋夫, 萩野 信夫, 三木 康彰, 末岐 博文, 山邊 和生
    1991 年 52 巻 1 号 p. 121-125
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    血清AFP高値胃癌を3例経験し,臨床病理学的特徴について検討を行った. 3症例はいずれも60歳台の男性であり,胃癌占拠部位はCが1例, Aが2例であった.肉眼分類はBorrmann 1型が1例, Borrmann 2型が2例であった.組織型は高分化型腺癌が1例,中分化型腺癌が2例であった.全例ともに漿膜面への露出はなく,間質結合織の量は3例とも中間型であった.リンパ節転移は全例に認められ,肝転移は胃癌手術時はいずれも認めなかったが,症例1では術後3カ月目に肝全域にびまん性の転移を認め, 2カ月後に死亡した.症例2では術後8カ月目に肝右葉に3個の転移巣を認め,肝切除後再発を認めない.症例3は4カ月経過し,現在のところ再発は認めていない.血清AFP高値胃癌は,その病理学的特徴から血清AFPの変動により肝転移を予測するとともに,転移確認前に予防的治療が必要と思われた.
  • 太田 安彦, 川浦 幸光, 金平 永二, 宮本 正治, 田中 功, 川田 直幹
    1991 年 52 巻 1 号 p. 126-129
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ACTH単独欠損症に合併した胃癌症例を経験した.胃癌は胃体部上部小弯後壁のIIc類似進行胃癌であった.本例はステロイドホルモンとしてヒドロコルチゾン15mg/dayが4年間にわたって投与されており術後縫合不全の危険性が高いと考えた.進行胃癌ではあったが吻合術を伴わない胃部分切除を施行した.生体からのcortinolの分泌がほとんど期待できない本症例に対し,術当日および第1病日は300mg/dayのコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムを投与し以後減量した.経過は良好で退院後引き続き経過を慎重にみまもっている. ACTH単独欠損症に合併した胃癌にたいして外科的治療が行われた報告例は他に見出せず,本邦初報告例と思われたので若干の文献的考察をくわえて報告した.
  • 田中 道宣, 田辺 大朗, 佐田 英信, 上村 邦紀
    1991 年 52 巻 1 号 p. 130-133
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸早期癌の1手術例について報告する.症例は68歳の男性で自覚症状はなく胃集団検診で精査を指示された.上部消化管X線検査で十二指腸球部に長径約4.5 cmの半球状の隆起性病変がみられ,内視鏡検査では球部後壁に表面がカリフラワー状の隆起性病変を認めた.生検で腺癌と診断し,腫瘍が大きくリンパ節転移の可能性を否定できなかったので膵頭十二指腸切除術を行った.切除標本では十二指腸球部後壁に4.5×3.7×高さ1.5cmの広基性病変を認めた.組織検査では高分化型乳頭腺癌で深達度は粘膜層でありリンパ節転移はなかった.手術後の経過は良好で10カ月を経て健在である.
  • 松尾 信昭, 石倉 宏恭, 石原 崇史, 山本 透, 武山 直志, 田中 孝也
    1991 年 52 巻 1 号 p. 134-136
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    58歳に発生した腸管壊死に伴う敗血症性ショックに起因した心停止状態にて搬入され,蘇生後に手術を施行した成人原発性小腸軸捻転症の1例を報告した.原発性小腸軸捻転症は本邦での報告例が少なく,早期に腸管壊死に陥り,死亡率も高くなるため注意を要する.
  • 大田 準二, 音琴 要一郎, 横山 敏男, 橋本 憲三, 弓削 静彦, 西 文明
    1991 年 52 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性.腹満,嘔吐を主訴に当院に搬入され,直腸癌による閉塞性イレウスと診断し, S状結腸による一時的双孔式人工肛門を造設した.その後,人工肛門から十分な排便があるにもかかわらず,進行する下腹部の膨満を認めた.腹部CTでは下腹部の膨隆に一致して局所的腸管拡大像を認め,人工肛門より肛門側に発症した限局性のイレウス状態と診断し,根治術を施行した.イレウスの原因はS状結腸と上部直腸の2カ所に存在する進行癌(同時性多発癌)によるものと判明した.
    大腸癌イレウスや穿孔にて緊急手術を行った症例や,肛門側大腸癌による高度狭窄例では,多発癌に対する術前の検索は不十分なことが多い.また,大腸癌症例では,いかなる場合も多発癌の存在を忘れてはならないと思われた.
  • 鈴木 昌八, 中村 達, 小泉 貴弘, 阪口 周吉
    1991 年 52 巻 1 号 p. 141-145
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症の治療上,嚢腫状の肝内胆管の残存による術後の胆管炎発生の問題がある.われわれは他院で不適切な初回手術を受けて来院した先天性肝内胆管拡張症の2例を経験した.症例1は初回,総胆管拡張症の診断で嚢腫摘除・総肝管空腸吻合術が行われ,術後敗血症様弛張熱を認めた.肝S2, S7及びS8の胆管に嚢腫状拡張がみられ, S8の胆管内には結石を合併していた(戸谷IV-A型).このためS2の部分切除に加えS7+S8の系統的亜区域切除を行った.症例2は,他院で胆石症に対して胆摘後,肝内結石症の診断で経十二指腸乳頭切開術を受け,術後に発熱を繰り返した.後区域の嚢腫状に拡張した胆管内に結石を認め(戸谷V型),肝右葉切除を施行した.
    先天性胆道拡張症では,術前に併存肝内病変及び肝内結石の有無を充分に確認することが重要であり,肝内胆管の嚢腫状拡張部の切除は胆管炎及び癌発生の予防の上からも意義ある術式である.
  • 森田 修司, 中路 啓介, 西山 勝彦, 園山 輝久, 能見 伸八郎, 大森 吉弘, 岡 隆宏, 片岡 慶正, 福田 新一郎
    1991 年 52 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    著者らは,腹部単純X線撮影にて石灰化像を示す比較的まれな,磁器様胆嚢および石灰乳胆汁の各1例を経験した.
    磁器様胆嚢症例は, 40歳男,心窩部痛を主訴として来院し,胆摘が行われた.摘出胆嚢は石灰化により,壁が硬く,内腔に示指頭大の結石3個がみられた.粘膜上皮は剥離していたが癌の合併はなかった.
    石灰乳胆汁症例は, 57歳女,右季肋部痛を主訴として来院,腹部単純X線撮影にて石灰化胆汁と診断された.摘出標本では砂時計様に,中央にアデノミオマトーシスによる狭窄がみられこの底部側に石灰乳胆汁がみられ,主成分は炭酸カルシウムであった.
    2症例とも若干の文献的考察とともに報告した.
  • 長見 晴彦, 福田 貴好, 田村 勝洋, 中瀬 明
    1991 年 52 巻 1 号 p. 150-154
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性で,食欲不振,黄疸を主訴に来院した.入院時に行ったPTC及びCTの結果,広範な所属リンパ節転移,総肝管の完全閉塞を伴う胆嚢癌症例(腫瘍径は33 mm×26mm大)と診断された.本患者に対して入院後9日目に胃空腸吻合並びに経皮経肝的左胆管外瘻術を施行した.また術後4日目に5FU (500mg), MMC (10mg)を静脈内投与し,術後10日目から週2回のOK-432 (5KE)の経口投与を約5週間行った.その結果OK-432経口投与開始後20日目のPTCでは完全閉塞していた総肝管が開通し,また同時に膵管胆管合流異常症(木村の分類: I型,佐野の分類: α型,大井の分類: A型)が確認された.さらにOK-432経口投与開始後30日目のCTでは胆嚢癌腫径の縮小と転移性所属リンパ節の消失を認めた.これらの事からOK-432経口投与は進行消化器癌に対して有効な治療法になる可能性が示唆された.
  • 吉井 克己, 今泉 俊秀, 鈴木 衛, 中迫 利明, 長谷川 正治, 小形 滋彦, 小松 永二, 原田 信比古, 木村 健, 羽生 富士夫, ...
    1991 年 52 巻 1 号 p. 155-159
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性,空腹時の異常行動とその後の意識消失発作を主訴に来院.入院時の血糖は24mg/mlと低値にもかかわらず, IRIは23.8μU/mlと高値を示した.画像診断にて膵頭部のインスリノーマの診断にて手術を施行した.術中門脈内にカテーテルを挿入し,血糖のモニターの他にQuick IRI法にて腫瘤摘出前後のIRI値を測定したところ, hyperglycemic rebound出現に約2時間もかかったが, IRI値は腫瘤摘出後すみやかに正常域に低下した.したがってQuick IRI法は血糖のモニターと比較して術中インスリノーマの完全摘出の判断に有用であると考えられた.インスリノーマ自験10例を含めて報告する.
  • 本邦174例の集計について
    有賀 浩子, 石曽根 新八, 北原 修一郎, 寺田 克, 百瀬 芳隆, 安名 主, 幕内 雅敏, 原 洋治, 津野 隆久, 南 勇樹
    1991 年 52 巻 1 号 p. 160-164
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは胎児超音波検査で右腎に複数の嚢胞を認め,出生後の精密検査で右腎に排泄機能は無く,実質は大小不同の嚢胞で置換された先天性片側性多嚢腎の1例を経験した.経過観察中,生後4カ月に高血圧と血漿レニン活性の高値を指摘され,腎性高血圧の合併と判断し,右腎摘出術を施行した.術後血圧及び血漿レニン活性は正常化した.病理組織所見では先天性片側性多嚢腎の所見に一致し,且つ悪性所見は認められなかった.本症例は本邦で174例の報告があり,治療方法は患側腎の摘出が一般的である.予後が良好な疾患のため経過観察のみで手術を勧めない意見もあるが,手術のリスクが低く合併症として悪性腫瘍や高血圧(1.7%)の報告があるため,われわれは乳児期に切除する方針を取っている.
  • 杉浦 勇人, 末永 昌宏, 岡田 喜克, 上原 伸一, 大輪 芳裕, 長谷川 茂, 立松 正衛
    1991 年 52 巻 1 号 p. 165-171
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前血中Adrenalinの異常高値を示し, α-β遮断剤にてコントロール可能であった発作型褐色細胞腫の1例を経験したので報告する.
    症例は26歳男性で, 6年前から肝内血腫の診断にて他院にて治療されていた.今回本院での精査時,高血圧,頻脈発作が出現し,画像診断およびホルモン検査の結果右副腎褐色細胞腫と診断された.血中,尿中カテコールアミンとも高値を示したが,特に血中Adrenalinは正常値の300倍以上と従来の報告症例に比較しても異常高値であった.術前コントロールとしてα-β遮断剤であるラベタロールが有効であり,術前,術中の十分な配慮の結果安全に切除が可能であった.
  • 山田 俊一郎, 小暮 公孝
    1991 年 52 巻 1 号 p. 172-176
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアの一種である傍十二指腸ヘルニアの本邦に於ける報告例は1902年1)から1990年までの88年間に74例(男58 (75%),女13 (20%),不明3 (5%);左側38 (51%),右側27 (37%),不明9 (12%))を数えるに過ぎない.本疾患は腸回転異常に合併するものと考えられているが2)本邦報告例中,明らかな腸回転異常を認めたものは11例に過ぎず,全例,右傍十二指腸ヘルニア症例に伴なうものであった.自験例(47歳,男)は5年前より時々,激しい腹痛を経験し,今回入院時も激しい上腹部痛と嘔吐により緊急入院した.既往歴と経口小腸造影より内ヘルニアの存在を疑われ開腹手術により左傍十二指腸ヘルニアと診断された.自験例はBill2)のType IIIC型の腸回転異常(総腸間膜症)を伴なっていたが腸回転異常を伴なった左傍十二指腸ヘルニアとしては本邦で最初の報告と考えられ,本邦報告74例の検討を加えて報告する.
  • 末吉 晋, 牟田 直, 松熊 晋, 杉浦 芳章
    1991 年 52 巻 1 号 p. 177-182
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,昭和63年4月頃より咳が出現し, 10月5日当院内科を受診し腹部腫瘤を発見された.入院時左側腹部に軽度の圧痛を伴い,可動性に乏しい小児頭大の腫瘤を触知した. CT,エコーでは長径35cm短径20cmの一部cysticな部分を有し,内部不均一な巨大な腫瘤を認め,腹部血管造影では左大網動脈,左肝動脈,左横隔膜動脈より栄養を受け,血管の不整像や,動静脈の短絡形成が認められた. 10月26日左開胸開腹連続切開腫瘍摘出脾摘肝左葉部分横隔膜部分合併切除を行った.腫瘍は怒脹した血管を伴った大網に覆われ,凹凸不整で易出血性であり,脾を巻き込み横隔膜と肝左葉の一部に癒着していた.摘出された腫瘍の大きさは40×26×15cm,重さ5,800gで,病理組織学的には平滑筋肉腫であり,術中所見も合わせ大網平滑筋肉腫と診断した.
  • 川口 吉洋, 和田 知可志, 三木 健司, 紙田 信彦
    1991 年 52 巻 1 号 p. 183-188
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    私たちは,今回巨大な後腹膜脂肪肉腫(以降本症と略す)を経験した.本症は解剖学的関係から臨床症状に乏しく,しばしば巨大な腫瘤を形成し発見されることが多い.
    本症の診断には, CTおよびMRIが有用であった. CT上ではCT値が-13~-99と脂肪同様のdensityを示すlow density tumorであり,内部は不均一で造影剤によるenhancementはなかった.
    またMRIではT1像でheterogenousでlow intensityを示し, 1部で柵状のhigh intensityを示した. Gd-DTPAでは,辺縁部にirregular contrast enhancementをみとめた.
    血管造影では, hypovascularな腫瘍であり栄養血管はcapsular artery systemからの枝が主体であった.
    病理組成学的には, well differentiated typeとmyxoid typeとが混在していた.
  • 武市 牧子, 芦田 寛, 琴浦 義尚, 宇都宮 譲二, 桜井 一成, 植松 邦夫
    1991 年 52 巻 1 号 p. 189-192
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    後腹膜に発生し特異な病理組織を呈する未分化癌の1例を報告した.本症例は47歳男性で慢性肝炎経過観察中に, AFP 810ng/ml, CA125 6,200ng/mlと高値をみとめた.腹部CT,血管造影では膵胆道系そのものには明らかな異常を認めなかったが膵頭部周囲に腫瘍を認め,膵頭十二指腸切除を施行した.術後,腫瘍マーカーは正常値に復し,経過は順調であったが,病理組織学的検討において,腫瘍と考えられていた部はすべてリンパ節腫大でその中に肝細胞に類似した部を認め“肝様腫瘍”を最も疑った.しかし,原発臓器不明のため,確定診断を得られず,著者らは本症例を,後腹膜AFP産生未分化癌として報告した.
  • 藤野 泰宏, 宮下 勝, 佐藤 美晴, 足立 確郎, 古賀 昭夫, 志田 力
    1991 年 52 巻 1 号 p. 193-198
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    骨盤腔を占める巨大な後腹膜腫瘤を呈した孤立性内腸骨動脈瘤の1治験例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は71歳男性.内腸骨動脈瘤の切迫破裂による尿閉,便秘をきたし,直腸指診で拍動性のない腫瘤を触知した. CT・USにて嚢胞性巨大腫瘤を呈したため,後腹膜原発嚢胞性腫瘍の診断のもと手術施行したところ, 12×16cmの血腫と5×6cmの右内腸骨動脈瘤を認めた.右総腸骨動脈を結紮,内腸骨動脈瘤を切開してendoaneurysmorraphyを施行したのち,大動脈-外腸骨動脈バイパスにより血行再建を行った.術後血管造影にてバイパスの血行は良好であり,直腸膀胱障害も認めなかった.
  • 森 彬, 江口 博, 坂田 久信, 安蘇 正和, 今村 秀, 濱田 哲夫
    1991 年 52 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 1991/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    人工血管移植後合併症のうち,人工血管断裂による仮性動脈瘤は非常にまれである.
    症例は78歳男性.閉塞性動脈硬化症に対し, Cooley double velour knitted Dacronグラフトを用いて右腋窩-大腿動脈バイパスを施行した. 7年1カ月後にグラフト自体に多発性の仮性動脈瘤の形成を認め,グラフトの抜去, EXS Dacronグラフトによる置換術を行った.摘出標本の所見はグラフト断裂による仮性動脈瘤であった.まれな合併症であり,症例の検討ならびにグラフト断裂による仮性動脈瘤について若干の文献的考察を行った.
feedback
Top