日本臨床外科医学会雑誌
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52 巻, 10 号
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  • 岩崎 洋治
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2225-2234
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 内野 純一, 佐藤 直樹, 中島 保明, 松岡 伸一, 小笠原 和宏
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2235-2247
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 間接熱量計測装置を用いて
    伊藤 正直, 浅沼 義博, 小玉 雅志, 面川 進, 鹿嶋 秋五, 曽根 純之, 関 仁史, 小山 研二
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2248-2252
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術後早期からの脂肪投与に関しては,肝障害や脂肪蓄積,網内系機能の抑制などを理由に,以前はあまり積極的には行われていなかった.そこで,胃亜全摘術を施行した胃癌症例20例を対象として,間接熱量計測装置によるエネルギー代謝の測定と,血清の栄養学的指標を用いて,術後早期の脂肪乳剤投与の意義について検討した.症例を,対照群11例,脂肪乳剤投与群9例にわけ,末梢静脈から糖質を投与した上,投与群については術後第1病日から5日間,脂肪乳剤を投与した.投与群では,対照群に比較し,投与中のエネルギー代謝量の増大,呼吸商の低下,エネルギー基質に占める脂肪の割合の増大を認めた.また,栄養学的指標では,レチノール結合蛋白に,投与群で術後早期からの上昇を認めた.術後早期のcatabolic phaseでは,内因性脂肪が主なエネルギー源であったが,その際外因性脂肪の一部はエネルギー源として利用されていると考えられた.
  • 大場 範行, 木村 泰三, 吉田 雅行, 梅原 靖彦, 櫻町 俊二, 松田 寿夫, 和田 英俊, 原田 幸雄, 後藤 秀樹, 宮原 透
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2253-2258
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性タンパクは手術など生体に侵襲が加わった時に上昇し,自己防衛機構として重要な働きをしている.糖尿病合併患者の術後では異化傾向が強く,潜在性の肝機能障害が存在することも多いため,肝での急性タンパクの合成にも異常があるのではないかと考え検討した.対象は胃,大腸の腫瘍性病変切除例30例で糖尿病合併例6例,非糖尿病例24例である.術前及び術後2週間のCRP, α1-antitrypsin, α1-acidglycoprotein,補体C3, C4膵trypsininhibitor (PSTI), haptoglobinの変動を検討した.
    その結果α1-antitripsin, PSTIなどのトリプシンインヒビターの変動や,補体C3, α1-acidglycoproteinの値に差を認め,糖尿病合併患者の組織の修復機構の異常や易感染性との関連が推定された.また,術前の糖尿病のコントロールを充分に行えば,急性タンパクの異常も軽度で合併症の発生も軽減できる可能性が示唆された.
  • 原 和人, 横山 隆, 古田 和雄
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2259-2263
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の術前・術後管理について,待期手術例と緊急手術例に別けて検討した.緊急手術は,糖尿病の管理不良例で感染症を伴った場合に多く,糖尿病患者に伴った感染症は,容易に敗血症などの重症感染症に移行しやすい.
    入院前insulinや経口糖尿治療薬にて治療していた患者や治療を放置していた患者は,術前insulinにて管理し, 1日血糖を200mg/dl以下に調節すべきである.
    術後の管理は,血糖を100~200mg/dlに調節すべきである. insulinの投与方法は,点滴内insulin注入療法と持続insulin療法があるが,緊急手術例や重症の糖尿病患者,手術侵襲の大きい術後管理においては,持続insulin療法が適している.持続insulin療法においては,頻回の血糖測定が必要である. insulin 1単位あたりのブドウ糖量は,緊急手術例で3.1g,待期手術例で9.3gであった.緊急手術例の予後は不良であった.
  • 和田 尚, 小山 博記, 稲治 英生, 野口 眞三郎, 岩永 剛
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2264-2268
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌に対する術後放射線治療の併用は,乳房温存手術例を除くと,現在ほとんど行われていない.ところが以前照射を受けた症例において,近年になりその照射野に潰瘍を形成する症例が増加してきた.われわれは過去6年間にこのような症例を6例経験し,全例に胸壁切除術を行った.手術時年齢は平均57歳,潰瘍形成までの期間及び胸壁切除術までの期間は平均14年及び18年で,照射線量は50Gy前後であったと思われた.再建法は腹直筋皮弁が4例,広背筋皮弁,有茎皮弁が各1例であった.また6例中2例に放射線治療に由来すると考えられる二次発癌(扁平上皮癌,線維肉腫)が見られた.術後の観察期間の中央値は5年であるが全例quality of lifeの改善を認めている.したがって,乳癌術後照射に際しては放射線潰瘍や二次発癌の可能性を考慮にいれ慎重に行う必要があり,また一旦潰瘍が発症した場合,可能な限り早期の外科療法を行うべきであると思われた.
  • 加藤 孝男, 木村 恒人, 村木 博, 神尾 孝子, 藤井 昭芳, 山本 和子, 浜野 恭一, 相羽 元彦, 河上 牧夫
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2269-2276
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    第VIII因子関連抗原染色を用いて乳癌の血管侵襲を検索し,腫瘤径, Stage分類,癌の浸潤増殖,組織学的波及度,細胞異型度および5生率との関係について検討した.原発乳癌136例を研究対象とし,主病巣の中心部の割面に第VIII因子関連抗原染色を行った.血管侵襲は33.8%であり,血管侵襲陽性例の5生率は有意に予後不良であった. T3, Stage IIIでは血管侵襲の頻度はそれぞれ50.0%, 43.6%で有意に高く, 5生率に関してもStage IIIでは17.6%で有意に予後不良であった.癌の浸潤増殖のうちγは42.9%でαの19.0%に比べ血管侵襲の頻度は有意に高かった.組織学的波及度ではs, p+s群は51.9%と高くなり,予後も不良の傾向にあった.細胞異型度の最も強い症例では血管侵襲の頻度が41.9%と高く,血管侵襲陽性例は予後不良の傾向にあった.第VIII因子関連抗原染色を用いた乳癌の血管侵襲の検索は予後の判定に有用であると思われた.
  • 琴浦 義尚, 芦田 寛, 橋本 直樹, 西岡 昭彦, 高木 一光, 長田 哲雄, 高橋 徳, 福田 正春, 宇都宮 譲二
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2277-2283
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌の予後向上の要因を探るため膵頭十二指腸切除術後の22例を1年未満死亡, 1年以上生存3年未満死亡, 3年以上生存の3群に分け背景因子につき検討した.無黄疸,腫瘤型は3年以上生存群に多く認めた.胆管末端像と低緊張性十二指腸造影像の組み合わせは予後推定とともに術式選択の一助になると思われた.膵浸潤やリンパ節転移は3年以上生存群では殆ど陰性であったが1年未満死亡, 3年未満死亡群ではほとんどが陽性であった.脈管浸潤に関し, 3年以上生存群に比べ1年未満死亡群の陽性は高度であった.乳頭部癌の治療成績を向上させるためには術前画像で3年以上生存群と推定される症例は系統的R2郭清を原則とし,術中,膵浸潤やリンパ節転移が疑わしいか,明らかな場合はR3以上の郭清を考慮し,とくに膵浸潤例では拡大郭清に加え化学療法,放射線治療等の補助療法の配慮が必要と思われた.
  • 築部 卓郎, 松田 昌三, 沢田 勝寛, 喜多 泰文, 橘 史朗, 大薮 久則, 栗栖 茂, 柴田 正樹, 服部 哲也, 春名 宏樹, 安岡 ...
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2284-2291
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虫垂炎の鑑別診断並びに,軽症虫垂炎に対する保存的治療の現状と問題点について検討を加えた. 1985年1月より1987年7月までの間に急性虫垂炎として入院した症例289例中,保存的治療で軽快した症例は67例,開腹術を施行した症例は222例であり,このうち開腹後に他疾患と判明した症例が25例(11%)みられた.この25例を除いた手術症例197例の内訳はカタル性虫垂炎8%,化膿性虫垂炎38%,壊疽性虫垂炎22%,穿孔性虫垂炎32%であり,カタル性虫垂炎の割合が少なかった.またアンケート調査の結果,保存的治療後に手術を要するような虫垂炎の発見が見られた症例は4.9%という結果が得られた.
  • 栗原 浩幸, 望月 英隆, 長谷 和生, 横山 幸生, 山本 真二, 岡田 晋吾, 小池 聖彦, 玉熊 正悦
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2292-2298
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌切除症例を対象に血清CEA値と各種病理学的因子,治癒程度及び再発との関係を検討した.術前にCEA値が陽性(≧2.6ng/ml)であった症例は47%であった.術前CEA陽性率と相関の高かった病理学的因子は静脈侵襲で,肝転移,壁深達度がこれに続いたが,組織型,最大径,リンパ管侵襲やリンパ節転移とは相関が認められなかった.術前CEA陽性大腸癌においては治癒切除術後91%の症例においてCEAは陰性化した.しかし相対非治癒切除術後に陰性化したものは27%で,絶対非治癒切除術後の陰性化率21%と差はなく,術後のCEA値の変動により手術後の癌遺残の有無を推測し得る可能性が示唆された.再発時にはCEAは高率(88%)に陽性化し,再発時の陽性化率は術前CEA陽性症例においては92%,陰性症例においては80%と術前CEA陽・陰性による差を認めなかった.しかも臨床的に再発の確認出来る以前に陽性化する症例が多く,再発の予知に極めて有用であった.
  • 布施 明, 石山 秀一, 瀬尾 伸夫, 佐藤 淳, 太田 圭治, 須藤 幸一, 塚本 長
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2299-2303
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    教室で経験した肝内結石症手術例39例を対象に,主に肝切除術の適応,成績,問題点について検討した.治療法の内訳は,肝切除が25例,非肝切除が14例であった.症例の病型を見ると, L型, R型などの結石が片葉に存在する症例が74%と大部分であった.胆管狭窄部位を見ると,両側に狭窄を認める症例はわずかであり,一側の肝切除で狭窄部を含め病変部の切除が可能な例が大部分であった.したがって,病型的には大部分の症例が肝切除の対象となり得るものと考えられた.手術成績を見ると,術後の結石遺残率,長期的予後のいずれも肝切除例が非肝切除例に比較し良好であった.したがって,肝切除により根治し得ると判断される症例に対しては,積極的に肝切除を行うべきであると考えられた.ただし,慢性肝炎・肝硬変合併例では,術後合併症を高率に経験しており, PTCSによる治療も考慮すべきであると思われた.
  • 安東 克征, 天野 定雄, 黒須 康彦
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2304-2312
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌細胞のHLA抗原の発現の有無に加えて,腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の浸潤程度及びそのsubpopulation,および両者の細胞接着分子の発現の有無を免疫組織学的に検討した.対象は当科での手術施行例55例であり,このうち24例では,術前にTAEが施行されている.手術時採取した組織をMoAbにて免疫染色し,自動画像解析機にて各種抗体陽性細胞比率を求めた.癌細胞のHLA class I, DR, ICAM-1抗体陽性細胞比率は,それぞれTAE未施行群0.08±0.07, 0.21±0.31, 0.00%, TAE施行群0.18±0.26, 0.14±0.27, 0.00%であった.一方, TIL比率はTAE未施行群7.0±7.2%, TAE施行群11.1±9.3% (p<0.10)であり,いずれもT細胞が主体であった. LFA-1, CD2は,それぞれTAE未施行群34.0±12.9, 35.0±12.6%, TAE施行群29.9±4.7, 34.5±4.2%であった.以上, HCCにおいてはHLA及び細胞接着分子は発現不良例が多く,またTILの浸潤程度は少なく,しかもこれらの所見にはTAEによる影響は殆どみられなかった.
  • 天野 定雄, 黒須 康彦, 中山 寿之, 三宅 洋, 松田 健, 遠藤 潔, 上田 仁, 森田 建, 佐藤 公望
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2313-2320
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近9年間に経験した鼡径部ヘルニア821例について統計的観察を行い,また施行された手術術式,術後合併症,術後再発,術後愁訴などについて検討した.ヘルニア種別頻度では外鼡径ヘルニアが76.1%,内鼡径ヘルニアが13.6%,大腿ヘルニアが8.2%,内外鼡径ヘルニアが1.9%であった.手術術式は外鼡径ヘルニアではMarcy法,内鼡径ヘルニア,大腿ヘルニア,内外鼡径ヘルニアではMcVay法が最も多く行われていた.術後合併症は3.7%に認められ,血腫形成が最も多かった.再発率は全体で3.1%であった.内鼡径ヘルニア型再発と大腿ヘルニア型再発が主であり,これらの症例の中には全身の併存疾患を有していたものが多かった.術式別愁訴に関してはMcVay法で程度は軽いものの牽引痛の頻度が著しく高かった.再発や愁訴を減少させるためには,ヘルニアの基本的な理解と確実な手術手技が重要と思われた.
  • 猪狩 次雄, 岩谷 文夫, 星野 俊一
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2321-2326
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去25年間の111例の急性動脈閉塞の経験を検討した.死亡率は12%,救肢率は89%であった.医原性の血管閉塞15例の検討では小児例は総てカテーテル検査によるものであり,小児のカテーテル検査には慎重な配慮が必要と考えられる.外傷性10例では7例が左側血管の受傷閉塞であった.医原性と外傷性を除いたその他の血栓・塞栓による86例では心疾患が基礎疾患として53.5%を占め,男女比は3.3:1であった.発症後86日の左総腸骨動脈閉塞の症例で成功した血栓・塞栓摘出を経験したが,発症より手術までの時間が短いものに治療成績が良く,術後の抗凝血剤によるコントロールなどの管理も重要である.血栓・塞栓の再発防止には原因疾患が加療しうるものならば可及的に治療されることが重要と考えられた.
  • 瀬山 厚司, 秋山 紀雄, 古谷 彰, 吉村 耕一, 中村 丘, 大原 正己, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2327-2331
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去14年間の当科における下肢閉塞性動脈硬化症に対する初回血行再建症例の中,血行再建術が再施行された17例17肢について,その原因と再手術術式を中心に検討した.
    204例275肢の初回血行再建症例の中, 17例17肢に血行再建術が再施行された.初回手術としては大腿-膝窩動脈病変に対するものが13例と多かった.再手術の理由としてはグラフト閉塞が14肢と最も多く, TEA後再閉塞, PTA後再狭窄,グラフト感染がそれぞれ1肢であった.グラフト閉塞原因では,吻合部狭窄が6例と最も多く次いで中枢側病変進行が4例,末梢側病変進行が3例,不明1例であった.再手術は全例にバイパス術が施行され,最終的に肢切断に至ったのは3肢で, Fontaine III・IV度の重症虚血肢に対する救肢率は73%であった.バイパス術後の吻合部狭窄やグラフト閉塞, TEA, PTA後の再狭窄に対しては積極的にバイパス術による再血行再建を行うべきである.
  • 11例における腹水中移行について
    品川 長夫, 水野 章, 石原 博, 村元 雅之, 真下 啓二, 石川 周, 由良 二郎
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2332-2336
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆石症11例を対象として,腹部手術後感染予防薬としてのCefuzonam (CZON)の薬動力学的検討および腹腔内感染症より分離した細菌に対する抗菌力についての検討を行った.本剤の1g 1回静脈内投与(Group 1, n=6)による腹水中濃度のピーク値は,投与1時間後で33.4±7.6μg/mlであり, 2g 1回静脈内投与(Group 2, n=5)でのピーク値は,投与1時間後で52.0±8.2μg/mlであった. Group 1における腹水および血清でのArea under the curve (AUC)は,それぞれ86.8および60.5h・μg/mlであり,腹水の方が高い値を示した.腹腔内感染症の患者より分離したStaphylococcus aureus, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeに対するCZONのMIC80は各々3.13, 0.2, 0.1μg/mlであった. CZONの腹水中濃度についての3菌種に対するTime above MIC80は,両群共に6時間以上を示した. CZONは,開腹術後の感染予防に有用な薬剤であると考えられた.
  • 岩瀬 弘敬, 小林 俊三, Shoji KARAMATSU, Koji MATSUO, 福岡 秀樹, 伊藤 由加志, 重永 啓子, 葛島 達 ...
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2337-2342
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌脳転移の10例に集学的治療を施行し, Medroxyprogesterone acetate (MPA)およびCMF (cyclophosphamide+methotrexate+5-fluorouracil)療法もしくはEpirubicinによる化学内分泌療法を施行した2症例にcomplete response (CR)が, 1症例にpartial response (PR)が得られた.
    腫瘍摘出術後の追加照射も含めて,全脳照射は頭蓋内圧低下を目的に治療の初期段階として施行された.しかしながら,頭蓋内局所の縮小効果が認められたにもかかわらず,長期生存は化学内分泌療法の効果に依っていた.また, 30Gyの全脳照射の後18カ月生存中の1例に脳萎縮による軽度の痴呆が認められた.したがって,頭蓋内圧の低下を目的として照射量を制限した初期放射線療法の後,できるだけ早期に化学内分泌療法での全身管理を行うべきである.
  • 郷良 秀典, 飯尾 里, 古川 昭一, 小田 達郎, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2343-2345
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    総頸動脈瘤はまれな疾患である.われわれは左総頸動脈瘤に対し手術を施行,良好な成績を得たので報告する.
    症例は76歳,女性.左側頸部拍動性腫瘤を主訴に来院,血管造影で左総頸動脈ののう状動脈瘤と診断した.左総および内,外頸動脈の単純血行遮断下に瘤切除,パッチ形成による血行再建が行われた.血行遮断時間は31分であった.
    術後嗄声を認めた以外脳神経症状はなく,経過良好であった.
  • 吉川 貴己, 呉 吉煥, 鈴木 章, 杉野 公則, 岩崎 博幸, 真鍋 嘉尚, 松本 昭彦
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2346-2350
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能亢進症に髄様癌以外の甲状腺癌が度々合併することが知られている.今回われわれは,原発性上皮小体機能亢進症に合併した甲状腺乳頭癌の1例を経験したので,両者の因果関係につき若干の文献的考察を加えて報告する.症例は53歳女性で,主訴は腰痛である.血液検査所見より上皮小体機能亢進症を疑われ,当科受診した.頸部所見では,右頸部および左頸部に腫瘤を触知した.頸部エコーでは,甲状腺右葉尾側に内部に一部充実性の部分を有する嚢胞様腫瘤を,甲状腺左葉上部に辺縁不整な低エコー域を認めた.右頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診ではclass Iで穿刺液中のPTH値は異常高値を示した.左頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診はclass Vで甲状腺乳頭癌であった.以上より原発性上皮小体機能亢進症に合併した甲状腺乳頭癌と診断し,手術を施行した.術後,血中PTH値は順調に正常化し重篤な合併症もなく退院となった.
  • 今西 薫, 須磨 幸蔵, 城間 賢二, Kenji INOUE, 金子 秀実, 鳥井 晋造
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2351-2355
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ここ数年,多剤耐性黄色ブドウ球菌に有効であったメチシリン(DMPPC),セフェム系抗生物質(CEPs)にも耐性を得た難治性の黄色ブドウ球菌による感染症(methicillinresistant Staphilococcus aureus: MRSA),が心臓血管外科領域はじめ,臨床各分野で注目されるようになってきた.今回われわれは5歳女児でFallot四徴症の根治手術後にMRSAによる難治性縦隔炎を来した症例を経験した.治療として,可及的早期の外科療法の開始,内科的治療法として適切な抗生物質の選択が必要である. vancomycin (VCM)は欧米ではオキサシリン耐性MRSAに対する第1選択薬であり,現在耐性株は報告されていない.本症例でも他の抗生剤が無効と判断されたので, VCMの経静脈的投与を行い治療効果を認め救命し得た.また感染対策として,院内に於ける汚染部位の特定,医療従事者を介しての感染の拡大防止など疫学的対策も講じる必要があった.
  • 花上 仁, 徳田 裕, 水谷 郷一, 奥村 輝, 菅野 公司, 田島 知郎, 三富 利夫
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2356-2361
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高齢または重篤な合併疾患のためにhigh riskと考えられた腹部大動脈瘤(AAA) 6例および腹部大動脈・腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症(ASO) 4例の手術に切除断端自動縫合器(TA)を使用した. AAAでは動脈瘤の中枢および末梢の動脈をTAで縫合遮断,瘤は空置しY型人工血管中枢側を腹部大動脈と端々に吻合,末枢側は両側腸骨動脈に端側吻合した. ASOでは閉塞部の中枢側で同様に縫合切離した後に腹部大動脈両側大腿動脈間にY型人工血管バイパスを造設した.経過観察期間は最長で2年であるがTAに起因した術後合併症はなかった.術後35日目に心筋梗塞で死亡した1例と術後11カ月で他病死した1例を除き全例経過良好である.
  • 松前 大, 岡田 淳, 浜田 英明, 戸田 完治
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2362-2366
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    破裂性腹部大動脈瘤術後に対麻痺を合併した症例を経験したので報告する.症例は71歳女性で,血行遮断は,腎動脈の直下の大動脈で行った.多臓器不全のために第24病日死亡した.本合併症の発生にもっとも関与しているのは,脊椎根動脈-Adamkiewicz動脈一の血行遮断である.腹部大動脈瘤の待機手術例で,対麻痺を経験することはほとんどない. Adamkiewicz動脈が,腎動脈より末梢の大動脈レベルにある場合には,腎動脈より中枢の大動脈レベルに比較的大きな他の根動脈があることが多く,また十分な側副血行が存在するからである.現時点でのもっとも良い脊髄虚血の予防法は,できるだけ大動脈遮断時間を短くすることと遮断中の側副血行を維持すべく,血圧を十分な値に保つことであると考える.
  • 神谷 保廣, 橋本 俊, 上田 修久, 佐藤 幹則, 寺田 順二, 三島 晃, 竹内 寧, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2367-2370
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは極めて稀な先天異常である気管無形成症の1例を経験したので報告する.
    症例は35週2日, 1,640g,自然分娩にて出生の女児である. Apgar Score 3点,体動なく徐脈で全身性チアノーゼをみとめた.直ちに気管内挿管を試みるも声帯は確認されるがチューブは先に挿入できず,食道挿管にて胸郭の動き,呼吸状態の改善を認めた.食道造影にて食道中部に気管食道瘻があり,それより左右気管支が分岐するのが認められた.また,食道下部に食道狭窄を認めた.生後12時間目に,胃液の逆流防止,栄養管理を目的に胃瘻造設術を施行した.食道挿管にて呼吸管理したが分泌物の増加とともに瘻孔の閉塞をきたし生後6日目に死亡した.
    生直後から呼吸困難を認め,気管内挿管が困難で,マスクーバッギングにて改善が認められる場合は気管無形成症を疑い対処する必要があると思われる.
  • 平山 雄, 金田 好和, 縄田 純彦, 野田 寛, 松井 則親, 田中 章一, 宮本 正樹, 江里 健輔
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2371-2377
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫(以下MFHとする)は成人の軟部組織腫瘍中で最も発生頻度が高いとされるが,肺に発生することは極めて稀である.今回,われわれは胸壁再建を必要とした肺原発MFHの1例を経験したので本邦報告例と併せ報告する.症例は63歳男性である.検診で胸写上の異常陰影を指摘され,精査にて肉腫の診断下手術を施行された.左第5肋骨床開胸を行い,第2~4肋骨に浸潤しているS1+2の腫瘍に対して上葉切除および胸壁合併切除を行った.肉眼的に肺原発で,組織学的にMFHと診断した.術後化学療法を行ったが術後3カ月目に脳転移をきたした.脳転移巣を摘出し, CYVADIC療法と全脳照射を行い術後1年4カ月の現在経過観察中である.肺原発MFHの予後は非常に悪く外科的切除が第一選択である.
  • 塩見 精朗, 勝浦 康光, 坂本 一博, 森脇 稔, 前川 武男, 榊原 宣
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2378-2382
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道平滑筋腫は,食道良性腫瘍の中では多い疾患であるが,若年者発症例はまれとされている.今回, 19歳女性に発症した食道平滑筋腫の1例を経験したので報告する.
    症例は19歳,女性. 13歳頃より時々嚥下困難があった.昭和63年10月近医受診し,食道粘膜下腫瘍を指摘され,当科入院となった.食道造影,食道内視鏡,胸部CT,食道超音波内視鏡などの検査により,食道平滑筋腫と診断し,左開胸開腹下部食道切除,胸腔内食道胃吻合術を施行した.腫瘤は下部食道に存在し,大きさは約5×4×2cm大で,割面は灰白色充実性であった.病理組織学的に平滑筋腫であった.
    われわれが調べ得た本邦における20歳未満の若年者食道平滑筋腫は,自験例を含め10例であった.女性に多く,巨大例が多い傾向がみられた.
  • 中村 勝隆, 河野 富雄, 楠本 長正, 安宅 啓二, 橋本 兼太郎
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2383-2386
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は40歳の女性で,昭和60年より胃内視鏡検査で胃前庭部大弯側に中心陥凹を有する粘膜下腫瘍を認め経過観察していたが,平成元年に入り増大し幽門狭窄症状を呈してきたため胃切除術を施行した.腫瘍は粘膜下層に主座を持ち,淡黄色透明の液を容れる5cmの嚢胞で,嚢胞壁は単層立方上皮で覆われ,固有筋層には膵の腺房細胞と導管が認められ,異所性膵と診断された.
    異所性膵には嚢胞形成,膵炎,潰瘍形成,壊死,腫瘍性変化,胆道や幽門の狭窄・閉塞,ホルモンの異常分泌といった正常膵と同様の病理学的変化がみられ,これらに伴い臨床症状を呈するが,嚢胞形成により幽門狭窄症状を呈した例は極めて稀である.その部位と特徴的内視鏡像より異所性膵の診断は可能であり,偶然発見されたものは経過観察とするが,症状を有する例,悪性化やinsulinomaが疑われる例には外科的治療が考慮される.
  • 小川 明男, 秋田 幸彦, 鵜飼 克行, 太田 淳, 大島 章, 京兼 隆典, 七野 滋彦, 佐藤 太一郎
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2387-2392
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    短期間で幽門前庭部狭窄が増悪し,進行胃癌と鑑別に苦慮した胃十二指腸潰瘍の1例を経験したので報告する.
    症例は71歳男性で,頭部外傷の既往があり常時頭痛があるため近医より投薬を受けていた. 1989年10月16日吐血し当院入院となった.上部消化管検査にてBorrmann 4型の進行胃癌を疑診したが,生検結果で悪性所見を認めなかった.幽門前庭部狭窄が著明に進行したため11月22日幽門側胃切除,十二指腸切除を施行した.切除標本では胃体下部小弯,前後壁に三条の巨大帯状潰瘍(Ul-II),その肛門側に十二指腸球部にまで及ぶ長さ7cmの全周性狭窄部を認めた.病理組織像では粘膜の軽度の炎症所見と粘膜下層における膠原線維の増生,更に全周性狭窄部では固有筋層の著明な肥厚を認めた.幽門前庭部狭窄は慢性炎症の繰り返しによるものと考えられた.増悪の誘因として,薬剤,循環障害が考えられた.
  • 南 昌秀, 伏田 幸夫, 瀬川 正孝, 高野 靖, 木村 寛伸, 小坂 健夫, 米村 豊, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫, 岡井 高, Hide ...
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2393-2397
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    61歳男性が,上腹部に腫瘤を触知され,諸検査の施行後,胃外発育型胃癌と診断された.血液生化学的検査では軽度の貧血と腫瘍markerの高値(CEA 104.4ng/ml, CA19-9 1,270U/ml)を認めた.胃内視鏡検査では胃角部後壁のBorrmann 3型の胃癌と診断されたが,超音波内視鏡では胃壁外にlow echoを呈する巨大な腫瘤の存在が認められ,腹部CTおよび血管造影でも胃外発育型胃癌と診断し手術を施行した.開腹所見ではAM大弯の壁外に突出する10×9cmの腫瘍をみとめ,横行結腸に接していたため,胃亜全摘・右半結腸切除術(R3)を行った.切除標本額は粘膜面の肉眼型は3型を呈したが,漿膜面に黄白色の苔を有する巨大腫瘤を認めた.病理組織学的には, Pap. med. INFα ssβ ly0 v0 n1 (+) (No.4, No.6)でstage IIであった.患者は術中にcisplatin, mitomycin Cを含む持続温熱化学腹膜還流法を施行され,術後はtegafur経口による維持療法にて,術後約8カ月の現在健在である.
  • 中川 国利, 桃野 哲
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2398-2401
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去7年間に切除した消化管原発悪性リンパ腫7例を対象とし,臨床・病理学的検討を行った.胃原発4例の主症状は腹痛や嘔気・嘔吐で,病悩期間は平均2.2カ月であった.また内視鏡下の生検にて,全例悪性リンパ腫と確定診断できた.一方,小腸原発3例の臨床症状は多彩で,病悩期間は平均5カ月であった.穿孔をきたして緊急手術をした例もあり,術前診断は困難であった.組織学的には全例びまん性で,大細胞型4型,混合型2例および小細胞型1例であった.また免疫学的には,全例B細胞由来のリンパ腫であった.腹膜や肝への転移はなかったが,リンパ節転移は7例中6例と高率に認めた.壁深達度はsmが1例のみで,小腸原発例ではとくに進行していた.治療は,広範リンパ節郭清を伴う原発巣切除術と共に,高齢の1例を除き全例で術後化学療法を行った.予後は,肝不全にて術後102日目に死亡した1例を除き,全例生存中である.
  • 古谷 卓三, 赤尾 伸二
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2402-2406
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外傷性十二指腸破裂は比較的まれな疾患であるが治療困難で予後不良とされている.今回,外傷性小腸破裂の術後に十二指腸後腹膜破裂に気づき,これに対して保存的治療を試み救命しえたので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は交通事故にて腹部を打撲した44歳の女性で,小腸破裂にて受傷後2時間後に手術を行ったが,受傷後55時間後に十二指腸破裂に気づき意図的に保存的治療を行った.経過は良好で受傷後24日目に破裂部は閉鎖し,受傷後40日目に退院した.十二指腸破裂は受傷後より手術までの時間が長いほど予後不良であり,手術が原則とされているが,十二指腸瘻孔の治療と同様に行えば保存的治療が可能な症例もあると思われた.
  • 有賀 浩子, 宗像 康博, 岡本 講平, 市川 英幸, 幕内 雅敏
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2407-2410
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.腹部の激痛及び膨満感を主訴として来院した.顔面は苦悶状であり,腹部は柔らかいが全体に膨隆し,腹膜刺激症状を認めた.腹部X線写真では骨盤腔内にガス像は認められず,骨盤部CT撮影で子宮の前方正中線上に多房性でlow densityの腫瘍を認めた.骨盤腔内腫瘍と診断し緊急手術を施行したところ,腹腔内には回腸腸管から腸間膜にかけて12×7×5cmのブドウの房状で暗紫色の柔らかな腫瘍を認めた.腫瘍を含め回腸を30cm切除した.回腸内腔は出血を伴った部位では暗赤色の結節状隆起が全周性に存在しており,その周囲には黄色粗造な隆起が散在していた.病理組織所見で粘膜下層及び腸間膜に拡張したリンパ管組織が嚢胞状に認められ,リンパ管腔内にリンパ管内皮細胞が証明され,海綿状リンパ管腫と診断された.小腸に原発するリンパ管腫は非常に稀であるためここに報告した.
  • 川村 展弘, 白石 哲, 市川 度, 三島 好雄
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2411-2415
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫の術前診断に超音波誘導下穿刺生検の有用性を検討した.
    穿刺針は21GPTC針又は17Gシュアカット針を使用した.
    症例1.穿刺吸引細胞像は紡錘形の細胞が束状に配列し,核は長円形でクロマチンに富み,高分化型平滑筋肉腫と診断された.
    症例2. 21GPTC針による細胞診では未分化癌との鑑別が困難であった. 17Gシュアカット針による細胞診では細胞は紡錘形で大小不同が著しく,核は類円形でクロマチンに富み,悪性度の高い平滑筋肉腫と診断された.
    穿刺による重篤な合併症はなかった.
    超音波誘導下穿刺生検は小腸平滑筋肉腫の細胞学的診断,悪性度の診断に有用である.
  • 岡 義雄, 中野 博史, 衣田 誠克, 直井 正紀, 高田 直樹, 丸山 博英, 弥生 恵司, 岡村 純
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2416-2420
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは術前に診断し得た虫垂粘液嚢胞の1例を経験したので報告する.
    症例は40歳男性,右下腹部腫瘤触知で当科に入院した.腹部単純X線検査,注腸X線検査,腹部超音波検査, CT検査を行い,回盲部に石灰化を伴った腫瘤の存在を認識し,虫垂粘液嚢胞と診断し,手術を施行した.
    腫瘤は部位的に虫垂に一致しており,回盲部切除術を行った.内腔はゼラチン様物質で満たされており,内壁の一部に凹凸不整な部分も認めた.病理組織学的にmucinous cystadenoma, borderline malignancyと診断された.
    虫垂粘液嚢胞は虫垂の疾患としては稀な疾患であり,その診断,手術術式等について考察した.
  • 鳥越 敏明, 國崎 忠臣, 菅村 洋治, 石橋 経久, 中尾 治彦, 澤井 照光, 新宮 浩, 富永 丹
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2421-2427
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近14年間における非外傷性大腸穿孔35例につき検討した.原因別には特発性7例,大腸癌18例,憩室7例,その他3例である.平均年齢が68.9歳,男女比19:16であるが,特発性では2:5と女性に多かった.穿孔部位はS, Rsで全体の62.9%を占めた.術前白血球数4,000/mm3以下の減少例の直死率は66.7%,逆に10,000/mm3以上の増多例に直死例はなかった.腹腔内遊離ガスの検出率は58.6%であった.術前ショック出現率は37.9%で,このうち81.8%は左側結腸の穿孔であった.直死率は全体で31.4%,ショック出現例で72.7%,非ショック例では16.7%と有意の差(p<0.01)がみられた.予後を左右する因子として高齢者,術前併存症,穿孔部位,発症より手術までの時間,白血球数減少,術前ショックなどが考えられた.とくに予後改善のためにはショック対策が最も重要である.
  • 荒井 勝彦, 山岡 博之, 米沢 健, 衛藤 俊二, 渡会 伸治
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2428-2431
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは,嚢胞を伴った下行結腸神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は, 55歳女性で5, 6年前より便秘傾向が続いており,その精査目的にて当院受診.注腸造影を施行し,下行結腸に径4.0cmのポリープ様病変を認めた.下部消化管内視鏡所見では同部位に2/3周の半球形の大きな粘膜下腫瘍様の病変を認め,生検検査では軽度のcolitisであった.腹部超音波検査では左腎下方に径3.0cmの嚢胞を思わせるlow echoic lesionを認め,腹部CT所見でも左腎に近隣してlow density areaを認めた.以上の結果により下行結腸の粘膜下腫瘍の診断にて開腹術を行った.術前検査のように下行結腸に腫瘤を触知し,腫瘍を含む下行結腸部分切除術が行われた.切除された腫瘍の大きさは4.5×3.5×3.0cmで,割面では厚い壁に覆われたcysticな腫瘍であった.病理組織診断では,神経鞘腫であった.大腸神経鞘腫の本邦報告例を含め23例であり,稀な疾患と考えられる.
  • 岩崎 誠, 川原田 嘉文
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2432-2435
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    完全直腸脱に対する手術術式は経肛門式と経腹式とに分けられ,最近本邦でも経腹式手術が多く行われている.中でも手技が容易で侵襲が少なく,しかも再発率が10%以下と低く,さらに便失禁の改善率も良好なことから, Ripstein手術が多く用いられるようになってきた.しかし直腸全周をメッシュで固定する従来法(1965年)では,直腸固定部での狭窄やfecal impactionなどの合併症が約10%程度発生することが指摘されていた.そこでRipsteinらは直腸を後方より270度だけメッシュで被い,前壁を2~3cm開放した状態で固定する改良法を考案し1987年に報告した.我々は完全直腸脱の5例にこの改良法を試み,術後の注腸造影でも固定部直腸前壁の伸展性が良好に保たれ,最長2年11カ月の症例を含み全例現在まで再発や従来法で指摘された狭窄やfecal impactionなどの合併症の発生例は1例もなく,便失禁も改善し満足すべき結果を得ているので改良法の追試成績を報告した.
  • 第1癌手術後10年以上経過後に発生した
    谷川 精一, 浜武 義征
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2436-2443
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌の増加にともない大腸多発癌の報告も増加しているが,異時性大腸多発癌の頻度は同時性に比し低い.今回第1癌手術後それぞれ14年10カ月, 12年10カ月を経て発見された大腸多発癌の2症例を経験した.症例1は75歳男で直腸癌術後11年5カ月を経て胃角部小弯前後壁にIIb型早期癌が発見された.さらに直腸癌術後14年10カ月を経て腹痛,悪心,嘔吐を主訴として救急入院.イレウスの診断の下開腹手術を行い,横行結腸肝曲部に進行癌を認め結腸切除を行った.術後1年3カ月を経て肝転移再発にて死亡した.症例2は66歳女で,直腸(Rs)癌術後12年10カ月を経て,腹痛,貧血を主訴として来院.逆行性大腸透視にて横行結腸肝曲部に進行癌を認め大腸切除を行った.術後2年3カ月の現在再発の所見なく健在である.以上比較的まれな大腸第1癌術後10年以上を経て発見された異時性大腸癌の2症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.
  • 柴田 佳久, 鈴木 一男, 千木良 晴ひこ
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2444-2447
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹腔内臓器に発生する仮性動脈瘤は,まれとされてきたが,外傷や消化器病の検査,治療に伴いその報告は増加傾向にある.今回,交通外傷にて発生した肝内仮性動脈瘤の3例を経験し,その経過と治療方法を報告する.第1例は外傷後の腹腔内出血にて開腹,ドレナージ術を行った.術後の腹部断層写真(CT)で肝血腫,肝内動脈瘤の診断がなされたが,経過観察にて血腫,動脈瘤の消失をみた.第2例は外傷後に行ったCTと血管造影像にて肝内肝動脈瘤の診断がなされた.手術待機中に破裂し腹腔内出血をおこしたため緊急手術(肝部分切除を伴う動脈瘤の結紮止血)を行った.第3例は外傷後に下血,肝膿瘍で発症し胆道系との交通をみた症例である.肝内肝動脈瘤を血管造影で確認し塞栓術を行った. 3例とも腹腔内破裂や胆道系との交通,感染をみ,重篤な合併症を伴ったが救命できた.早期の診断と治療方針の決定が重要である.
  • 山田 剛生, 安井 健三, 小島 宏, 平井 孝, 坂本 純一, 山村 義孝, 加藤 知行, 紀藤 毅, 中里 博昭
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2448-2451
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌が胆道内に発育し,閉塞性黄疸あるいは腹痛等の症状を呈することは稀なことであるが,今回われわれは初発症状として胆石様腹痛発作を呈した胆管内発育型細小肝細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は60歳男性. 1988年12月頃より胆石様腹痛発作があり,精査目的にて当院受診となる. CTにて肝硬変の所見とともに左肝内胆管に腫瘤陰影およびその末梢側の胆管の拡張が認められた. ERCにて左肝管にポリープ様腫瘤陰影を認め,この時の胆汁細胞診にて腫瘍細胞を認めた.以上より左肝管原発の胆管癌と診断し,手術施行.術中,肝左葉外側区域表面に直径2cmの腫瘍を認め,肝細胞癌の合併と判断し,肝左葉切除術を施行.摘出標本の割面では,肝表面に露出していた腫瘍と胆管内に発育していた腫瘍とは連続しており,肝細胞癌が胆管内に露出し発育したものと判明した.
  • 高橋 誠, 高井 満, 遠藤 文夫, 大野 一英, 升田 吉雄, 増田 益功, 田中 治実, 小林 信之, 清水 敦, 小幡 五朗
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2452-2456
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    病巣径が3cm以下の原発性肝癌12例,転移性肝癌13例(胃癌6例,大腸癌7例)と胆嚢癌で肝床部を部分切除した3例の計28症例に対して,マイクロ波手術器(microwave tissue coagulator)を用いて肝部分切除を行った.マイクロ波手術器での肝部分切除は肝門部処理による血管露出,血行遮断の必要がなく,肝切離予定線に沿って,モノポーラ型針電極を刺入し,マイクロ波による組織の止血,凝固および切離を繰り返すのみで,全く簡単,安全に病巣切除が可能であった.術後では感染3例,胆汁漏出1例がみられたのみで,術後出血その他の特別な合併症は見られなかった.マイクロ波手術器は,腫瘍周辺に主要脈管が存在しない3cm以下の肝病巣に対して,あるいは胆嚢癌での肝床部切除が,単独使用で容易に行え,有用な方法と思われた.
  • 小川 朋子, 矢野 隆嗣, 谷川 健次, 鈴木 卓, 藤森 健而, 伊東 敬之
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2457-2461
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    石灰乳胆汁は比較的まれな疾患で,本邦では現在までに約350例が報告されている.最近,われわれは石灰乳胆汁の2例を経験したので報告する.
    症例1は67歳女性.高血圧でfollow中,偶然腹部単純X線で胆嚢部の流動性石灰化陰影を指摘された.DICで胆嚢は非造影であった.症例2は54歳男性.検診で胆石を指摘され,腹部単純X線で液面を形成する石灰化像を認め,超音波検査, CTでも頸部の結石と胆嚢内石灰化が認められた.症例1, 2とも摘出胆嚢内に石灰乳胆汁を認め,頸部にコレステロール結石が嵌頓していた.石灰乳胆汁の成分分析は,両者とも炭酸カルシウムのアラゴナイト型結晶であった.
    石灰乳胆汁の成因としては,胆嚢管閉塞と慢性胆嚢炎の存在が重要とされている.考案では,共通の成因を有する陶器様胆嚢の病態と本症との対比検討を行った.
  • 青沼 宏, 畑 真, 渡辺 信夫
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2462-2467
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    陶器様胆嚢1例を経験したので本邦報告例を集計し文献的考察を加えた.症例は55歳,女性.主訴は嘔気,嘔吐.入院時現症では右季肋部に軽度の圧痛を認める以外異常所見認めず.血液生化学的検査で異常を認めず.腹部単純X線検査で右上腹部にほぼ楕円形の辺縁明瞭な線状石灰化像を認めた. DICでは胆嚢は造影されず, CTでは胆嚢壁は肥厚しドーナツ状石灰化像を認めた.以上より陶器様胆嚢と診断し手術を施行.胆嚢は灰白色で萎縮し極めて硬く,内部は結石で充満していた.病理組織学的検査では悪性所見を認めず.陶器様胆嚢は自験例を含め現在まで194例の報告をみる.一般に高齢の女性に多く,その多く(56.6%)は疼痛を訴え来院.ほとんどの症例において腹部単純X線検査およびCT検査で診断は容易である.しかし,本症は胆嚢癌の併存が13.4%と多く,また消化器系癌の併存もみられるため十分な術前検索と症状の有無に関わらず積極的な治療が肝要である.
  • 迎山 恭臣, 草野 昌治, 住吉 孝雄
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2468-2471
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    傍乳頭憩室に合併した総胆管結石症の2例を経験した.症例1は78歳女性で,胆石症で胆嚢摘出術を当科で施行されていたが, 1年半後,総胆管内に黒色石1コを認めた. T-チューブ造影で最大径44mmの傍乳頭憩室を認めたが放置した.症例2は41歳男性で, ERCP検査で総胆管内に結石1コを認め最大径20mmの傍乳頭憩室を認めた.手術時,胆嚢には炎症所見がなく胆石及び胆泥も存在しなかったが,総胆管内にビ系石を認め,傍乳頭憩室が結石生成に関与したものと考えられた.十二指腸外憩室切除術を施行したが,術後膵液瘻を来し治療に難渋した.
    傍乳頭憩室が胆石あるいは総胆管結石の生成に関与することから,術後合併症及び再発を考慮し,適切な手術術式を選択すべきである.
  • 長見 晴彦, 田村 勝洋, 中瀬 明
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2472-2477
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,私たちは43歳,男性のアルコール性重症急性膵炎の1例を経験した.
    患者は飲酒後の心窩部痛で発症し,発症後10時間目には著明な腹腔内滲出液の貯留,強度な腹膜炎症状のため緊急手術を施行した.開腹時所見としては約2,000mlの膿性腹水の貯留を認め,また膵体尾部壊死によって形成された膿の流出を認めた.しかし患者の全身状態が不良であった事,出血傾向があった事, 10年前の胃切除による残胃と膵との癒着が強度であった事から膵切除やnecrosectomyは無理と考え,手術は腹腔内ドレナージのみにした.術後,汎血管内凝固症候群(DIC)による皮下出血,左血胸,消化管出血を合併したが(gabaxate mesilate=以下FOY)投与にて軽快し,腹腔内遷延性感染に対しては術後1週目より連日行ったドレーンからの生理食塩水による持続洗浄が有効であった.なお患者は術後91日目に軽快退院した.
  • 尾関 豊, 鬼束 惇義, 林 勝知, 日野 晃紹, 渡辺 敬, 広瀬 一, 下川 邦泰
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2478-2484
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1984年から1989年までの6年間に経験した4例の膵内分泌腫瘍を検討した.
    平均年齢は72歳, 4例とも女性で, 2例に低血糖発作を認めた. US, CTおよび血管造影は全例に腫瘍を描出でき, MRIは3例中2例に描出できた. USでは低エコー腫瘍, CTでは造影剤で濃染する膨張性発育型の腫瘍,血管造影ではhypervascularな腫瘍として描出された.最も大きい1例では嚢胞状成分を認めた. MRIでは一定の傾向を示さなかった.
    切除標本肉眼像は3例が一様な充実性腫瘍であり,他の1例で嚢胞状変化を示した.組織学的には全例Grimelius染色に陽性で,免疫組織学的に3例が多ホルモン産生腫瘍, 1例が非機能性腫瘍であった.低血糖を呈した2例にはインスリン産生能が証明された.
    以上,膵内分泌腫瘍の画像上の特徴は膨張性発育をするhypervascularな腫瘍であり,その機能を判断するには免疫組織化学的検索が必須と考えられた.
  • 坪野 俊広, 福田 稔, 藤原 敬人
    1991 年 52 巻 10 号 p. 2485-2488
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸閉塞発症以前に診断された閉鎖孔ヘルニアの1例を経験した.症例は80歳の女性で,突然の左鼡径部痛を主訴に来院した.理学的所見や腹部単純X線検査からは腸閉塞は発症していないと考えられたが,症状からはHowship-Romberg徴候が強く疑われたため,骨盤部CTを施行したところ,左閉鎖孔から突出する腫瘤が明瞭に描出された.閉鎖孔ヘルニア嵌頓の確定診断のもとに開腹し,根治手術を施行した.腸切除は不要であった.術後のヘルニオグラフィーでは再発や反対側の発生は認められなかった.閉鎖孔ヘルニアは良性疾患であるが,適切に診断し対処しないと致死的となることもありうる.診断はほとんどの場合腸閉塞が発症してからなされるが,本症例では, Howship-Romberg徴候の認識と適切な画像診断により早期診断がなされた.また,ヘルニオグラフィーは術後の経過観察の手段としても有用と思われたので合わせて報告した.
  • 1991 年 52 巻 10 号 p. 2489-2502
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 52 巻 10 号 p. 2503-2515
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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