日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
52 巻, 7 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
  • 鈴木 太
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1393-1404
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 久次 武晴
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1405-1412
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 野口 昌邦, 水上 勇次, 道岸 隆敏, 小矢崎 直博, 太田 長義, 宮崎 逸夫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1413-1419
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近,甲状腺分化癌の予後不良例を説明する病理組織所見として低分化癌の概念が導入され,注目されている.そこで,甲状腺分化癌239例(乳頭腺癌222例,濾胞腺癌17例)を病理組織学的に再検討し,高分化癌と低分化癌に分け,生存率や健存率との関係を他の予後因子と共に一変量および多変量解析を用いて検討した.その結果,一変量解析で乳頭腺癌と濾胞腺癌で予後に差はないが,低分化癌は高分化癌に比し予後が有意に不良であり,更に,年齢,性別,腫瘍の大きさ,臨床的および組織学的リンパ節転移の有無,甲状腺内転移の有無,手術方針,遠隔転移や局所癌遺残の有無で有意差を認めた.しかし,多変量解析では性別,腫瘤の大きさ,遠隔転移や局所癌遺残の有無でのみ有意差を認め,組織亜型で有意差を認めなかった.従って,甲状腺分化癌の亜型分類は予後予測に必ずしも有用でないことが示唆された.
  • 迫 裕孝, 中根 佳宏, 沖野 功次, 西原 和郎, 目片 英治, 小玉 正智
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1420-1426
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去12年間に経験した甲状腺微小癌22例を検討した.微小癌は全甲状腺癌手術例の23.7%を占めた. 22例のうち腫瘍多発例が3例存在し,腫瘍数は25であった.
    発見の動機は頸部リンパ節転移が1例,検診が21例であった.軟線撮影にて石灰化が45.5%にみられた.超音波検査を施行した20例23腫瘍の所見は,辺縁不整を呈したものが13,内部エコーの欠如する音響陰影型が19,腫瘍を同定しえなかったものが1であった.
    組織型は,乳頭癌24,濾胞癌1であった.手術は全摘が3例,亜全摘が19例で,リンパ節郭清は,患側のmodified neck dissection (MND)が16例, I~IVリンパ節郭清のみ3例,両側のMND 3例であった.多発例で両側のリンパ節郭清症例を除き, MND 16例の検討ではリンパ節転移は峡部腫瘍の場合60%にみられたが,すベてI~IV群であった.片葉腫瘍の場合66.7%にみられ, V~VII群へは50%にみられた.平均20.7±15.1カ月の経過観察中,リンパ節再発が4.5%にみられた.
  • 藤沢 順, 松川 博史, 佐々木 秀弘, 片山 清文, 清水 哲, 後藤 久, 松本 昭彦
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1427-1432
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌の中には時として視触診,画像診断上,良性腫瘍と鑑別が困難な例がある.
    1975年から1988年までの14年間に横浜市立大学第1外科で手術を施行した乳癌症例のうち粘液癌は17例(3.7%)であった.重複癌2例をのぞく15例につきその診断上の問題点を述べ,また浸潤性乳管癌323例との比較検討を行った.視触診,超音波検査,乳房撮影による粘液癌の確診率はそれぞれ35.7%, 15.4%, 30.8%と低く,とくに径2cm以下の例で低かった.これらを組み合わせても確診率は50%にすぎなかった.一方,穿刺吸引細胞診は全例class Vで有用な診断法であった.また浸潤性乳管癌と比較すると腫瘤径は小さく,リンパ節転移陰性例が多く,予後は良好である.しかし粘液癌のなかでも混合型は純型にくらべ悪性度が高く予後も不良であるので,術後の補助療法および経過観察には十分注意を要すると思われた.
  • 胸骨傍リンパ節転移陽性例を対象として
    高橋 弘昌, 山本 憲治, 萩原 良二, 佐々木 文章, 秦 温信, 内野 純一
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1433-1437
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌の胸骨傍リンパ節郭清の意義については欧米諸国においてはその生存率に影響を与えないとする説が一般的となっているが,我が国においてはその評価はいまだに定まってはいない.われわれは腫瘤の占居部位の特殊性に焦点を置き,胸骨傍リンパ節郭清の意義について検討を加えた. 1960年から1989年末までに当院で胸骨傍リンパ節(PS)郭清を行った女性乳癌症例184例中25例(13.6%)がPS転移陽性であった.これら25例を対象として占居部位別に臨床病期,腫瘤径,腋窩リンパ節転移度,および予後を検討した.内側中心部腫瘤では外側腫瘤よりもPS転移率が高い傾向があった.また内側中心部腫瘤ではT3以上, n1β以上のものはこれ未満のものより有意にPS転移率が高かった.内側中心部腫瘤ではPS転移群が陰性群より有意に再発率が高く,また生存率も低かった.内側中心部腫瘤でPS転移の有無を知ることは再発の可能性を予測するうえで診断的意義を有すると思われた.
  • 森本 重利, 森住 啓, 露口 勝, 田中 直臣, 惣中 康秀, 牧野谷 卓宏, 吉田 金広, 宮内 隆行, 筑後 文雄
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1438-1447
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Dieulafoy潰瘍の成因や診断基準については一定の見解が得られていない.本症の特徴を明らかにするために,外科的に治療した自験例13例について臨床的,病理学的に検討を加えた.発生部位は胃体上部が6例と最も多く,多発潰瘍は6例に認められた.潰瘍の深さはUL II 7例, UL III 6例であった.潰瘍の大きさは3×5~10×25mmで,露出血管径は1.0~2.5mmであった.露出血管は全症例で筋層貫通後も径を変えずに走行し,粘膜下に達し破綻していたが,動脈炎,動脈瘤の所見無く1例に軽度の動脈硬化を認めたのみであった.成因の一つとして,異常に太い動脈の上に偶然に潰瘍が生じて破綻する事もあげられると思われた.診断上では太い動脈の異常走行を重視し,外科治療では術中胃切開により出血部位を確認することが重要である.予後では,術後再出血のあることを念頭に置いて経過観察する必要がある.自験例の他にも本邦報告107例を集計し考察を加えた.
  • 山崎 一馬, 朱 〓杰, 宮沢 幸正, 児玉 多曜, 磯野 可一, 川村 功
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1448-1453
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    各種併存症を保有する重症肥満に対する垂直遮断胃形成術の有効性を術前後における肥満度,併存症の変化よりretrospectiveに検討した.対象は当施設にて過去6年間に垂直遮断胃形成術を施行した単純性肥満36症例である.肥満度は術前213±27%であったが,術後6カ月150±18%, 1年142±19%, 3年141±17%, 5年141±9%と低下し良好に維持された.術前の肥満併存症は,脂肪肝86%,耐糖能異常78%,関節疾患72%,高脂血症67%,高血圧44%と高率であった.術後3年では肥満度の低下により,脂肪肝9%,耐糖能異常9%,高脂血症9%と著明に低下した.外科治療による術後合併症は8.3%に認められたが比較的軽度であった.以上の結果より,重症肥満に対する垂直遮断胃形成術の有効性が強く示唆された.
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 宮下 薫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1454-1460
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃全摘606例のうち, R2以上の郭清が行われた上部胃癌C (E) 141例, CM (E) 90例を対象とし,リンパ節転移状況を明らかにし,噴門側胃切除の適応と手術成績について検討を加えた.噴切例ではリンパ節郭清の領域外となるNo.4d, 5, 6のリンパ節転移は, C, CE 141例では, mからpmまでは転移を認めず, ssα, ssβ以深で転移を認めた.一方, CM, CME 90例の転移はm, smではなく, ssα, ssβ以深で転移を認めた. ps (+)では,高い転移率を示した.第2群リンパ節のうちNo.10, No.11の転移状況について検討した. C, CE癌ではm, sm, pmでは転移を認めず, pm以深で転移を認め, ps (+)ではNo.10: 16%, No.11: 23%であった. CM, CME癌ではm, smでは転移はなく, pm, ssα, ssβではNo.10: 10%, No.11: 20%, ps (+)ではNo.10: 28%, No.11: 36%の高い転移率を認めた.以上より,噴切の適応は,リンパ節転移の安全域を確保するため, C領域のm, sm, N (-)を対象とし,現在までの5年生存率は88%と良好な成績を得ている.
  • 特に異時性重複癌について
    竹吉 泉, 関根 毅, 須田 雍夫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1461-1467
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1975年11月から1988年12月までの大腸癌手術症例は565例で,大腸癌と他臓器との重複癌症例は51例(9.0%)であり,同時性17例,異時性34例(大腸癌先行7例,他臓器先行27例)であった.今回はこれらの症例のうち,異時性重複癌34例について検討した.性別は男女それぞれ17例,平均年齢は64.1歳であった.発生間隔は平均7年2カ月(大腸癌先行7年4カ月,他臓器癌先行7年2カ月)であった.他臓器癌では胃が34例中13例で最も多く,ついで子宮7例,乳腺4例の順であった.大腸癌の占居部位ではS状結腸(S),下部直腸(Rb)に多くみられ,肉眼型では2型は34例中21例で, O型は2例であった.組織型では高分化および中分化腺癌が大部分を占め,壁深達度ではss (a1)は34例中17例で多くみられたが, mは2例でいずれも他臓器癌先行であった.遠隔成績は治癒切除症例において5年生存率74.6% (大腸癌先行80.0%,他臓器癌先行73.9%)で良好であり,第1癌術後の注意深い経過観察が重要と思われた.
  • 江本 節, 伊藤 篤, 吉川 澄, 韓 憲男, 北川 陽一郎, 森口 聡, 阪口 全宏, 雨宮 彰, 岩崎 輝夫, 三方 彰喜, 井上 正宏
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1468-1473
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近5年間に手術した全大腸癌236例について,胆石合併の有無及び胆摘既往の有無により,癌占居部位,血中コレステロール値,中性脂肪値を比較検討した.胆石合併大腸癌は,全大腸癌236例中28例(11.9%)と一般健康成人の5~6%に較べて高率であった.癌占居部位を盲腸・上行結腸を右側大腸,下行結腸・S状結腸・直腸を左側大腸とすると,胆石合併群では右側大腸癌の発生頻度は35.7%であり,非合併群の18.3%に較べ有意に高値であった(p<0.05).また胆摘群と非胆摘群との間でも,癌占居部位に同様の傾向を認めた.血中コレステロール値,中性脂肪値は,胆石合併の有無及び胆摘既往の有無で有意差を認めなかった.更に,便中胆汁酸分画については,胆摘術の前後で有意の変化を認めなかった.以上より,胆石症と大腸癌は共通の危険因子を持つと考えられた.また,胆摘術後に大腸癌の発生が促進されるといった報告には否定的な見解を得た.
  • 柚木 正行, 三村 久, 浜崎 啓介, 柏野 博正, 津下 宏, 岡林 孝弘, Kunzo ORITA
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1474-1478
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝硬変合併肝細胞癌に対して肝切除を施行した137例について術後早期肝不全と,術前肝機能,肝切除範囲,術中出血量との関係について検討した.術後1カ月以内に肝不全を発生した症例は13例であり,術前KICG,肝切除範囲,術中出血量が肝不全の発生と関連していた.術前KICG値が0.1以下, 2区域以上の肝切除,術中出血量が3,000ml以上になると肝不全の発生率が高かった.術前KICG,肝切除範囲,術中出血量の各因子にスコアを与えるとその総和(判別値)は術後の肝不全の予測,手術適応および手術術式の決定の指標として有用であった.
  • 岸 清志, 加藤 一吉, 水本 清, 河村 良寛
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1479-1483
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    80歳以上高齢者胆石症の臨床上の特徴と治療上の留意点を明らかにする目的で,過去約10年間に当科で治療が行われた363例の胆石症例について年齢別に臨床像を比較検討した. 70歳代の症例は59例16%,そして80歳以上の症例は22例で全体の6.1%を占めていた. 80歳以上高齢者胆石症の特徴は, 1) 胆管結石の頻度が高い, 2) 色素胆石の頻度が高い, 3) 胆汁中細菌がほぼ全例に陽性, 4) 臨床上重症化しやすい, 5) 緊急手術例が多い, 6) 術後合併症の頻度は60, 70歳代と変らないなどであった.手術は80歳以上といえども初発症状がでた時点で厳重な術前,術後管理の下に積極的に行うべきである.また,緊急手術例では術前誤診例も多く,術前超音波検査が不可欠であることを明記すべきである.
  • 今田 達也, 浅尾 学
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1484-1488
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に外科治療を要した急性動脈閉塞症61症例を対象として,発症より治療開始までの時間,来院する迄の医療機関受診経路,治療成績および予後について検討を行った.結果は約41%が医療機関を受診していたにもかかわらず, 12時間以上経過後治療が開始されていた.また肢切断例の6例中5例が医療機関を経て来院したものであり,死亡例3例も同様な経路で来院したものであった.
    したがって本症に対する認識と啓蒙の必要性を痛感した.
  • 相吉 悠治, 田中 秀行, 今村 明, 平野 稔, 植野 映, 八代 享, 添田 周吾
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1489-1493
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    60歳女性.昭和43年10月に甲状腺結節に気づいた.甲状腺結節が増大してきたので,昭和53年12月に当科を受診した.甲状腺左葉に12×7.5cmの結節を触知した.甲状腺機能は正常で, 99mTcシンチではcold nodule, 201T1シンチではhot nodule,穿刺吸引細胞診ではclass IIIであった.甲状腺亜全摘と両側頸部リンパ節郭清を行った.病理組織学的には甲状腺濾胞癌であった. 4年後に多発性肺陰影を指摘された.甲状腺機能亢進症症状があり, T4・T3は軽度上昇していた. 131I全身シンチでは右頸部と両側肺野に取り込みが見られた. 131I 100mCi, 6カ月後に131I 180mCiの投与を行い,肺転移巣は著明に縮小し,甲状腺機能は正常以下となった.更に肺転移巣の増大に対して, 131I初回投与後3年および6年後に131I 150mCiの投与を行った. 131I投与後7年4カ月の現在,全身状態良好で担癌生存中である.
  • 井関 俊彦, 高井 茂治, 國友 一史, 古味 信彦, 廣瀬 隆則, 檜澤 一夫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1494-1498
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺乳頭部腺腫(adenoma of the nipple)と多発腫瘤を呈する乳癌との合併症例を報告する.
    症例は, 70歳,女性.右乳房の多発腫瘤を主訴として来院した.右乳房AE領域およびBA領域に発生した多発性乳癌の診断にて定型的右乳房切断術を施行した.切除標本の病理組織学的検索にて, AE領域の腫瘤には乳輪直下のadenoma of the nippleに接してintraductal carcinomaの浸潤像が認められた.また, BA領域の腫瘤はsolidtubular carcinomaであった.
    adenoma of the nippleの組織像は腺管の増殖像が癌の浸潤増殖像に酷似しており鑑別を要する.また,乳癌との関係については,その報告例が少なく,本症例が本邦2例目であり稀な症例であると思われた.
  • 矢満田 健, 増田 裕行, 小林 信や, 菅谷 昭, 飯田 太
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1499-1502
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    進行甲状腺癌や再発乳癌の症例で胸管結紮を伴う頸部郭清および乳腺切除を含む上縦隔郭清施行後,胸腺切除(切離)部位から乳糜が漏出したと考えられる術後乳糜胸を3例経験した.これら3症例の乳糜胸の発生機序を検討すると,胸管の結紮により胸管内圧が上昇し,胸管・胸腺間リンパ経路への乳糜逆流がおこり,最終的に胸腺から乳糜が漏出し,乳糜胸が発生したものと推測された.このように,胸管を頸部で結紮した症例において胸腺切除(切離)を行う際は,胸腺からの乳糜漏出の発生を未然に防止すべく慎重に対処する必要がある.
    治療に関しては, 3例とも持続胸腔ドレナージ,中心静脈栄養による栄養管理,内科的胸膜癒着術などの保存的治療により治癒が得られ,このような乳糜胸症例に対しては保存的療法が有効であると考えられた.
  • 鎌田 聡, 舟木 成樹, 安藤 直明, 稗方 富蔵
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1503-1506
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右冠動脈完全閉塞,左冠動脈主幹部病変を有し不安定狭心症からショック状態に陥った症例に対しIABP下に緊急A-Cバイパス術を施行し救命した症例を経験したので報告する.
    症例は66歳の陳旧性心筋梗塞,糖尿病を有する女性である.
    胸痛を主訴に,ショック状態にて来院した.緊急冠動脈撮影の結果,右冠動脈閉塞および左冠動脈主幹部に狭窄を認めた. IABPを挿入し来院6時間後に緊急バイパス手術を行った.
    術後はLOSに陥り難渋したが軽快し,退院した.術後2年6カ月の現在,胸痛発作はなく健在である.
    LMT病変における緊急バイパス手術の適応,術前IABPの有用性について若干の文献的考察を加え報告した.
  • 三島 晃, 竹内 寧, 上田 修久, 佐藤 幹則, 寺田 順二, 神谷 保廣, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵, 武田 佳秀, ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1507-1511
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    網膜中心動脈閉塞症が左房粘液腫診断の契機となった1例を経験し,心疾患と網膜中心動脈閉塞症について文献的に考察した.
    症例は15歳の女性で,突然に左視力低下と一過性脳虚血発作が出現し左網膜中心動脈閉塞症と診断された.視力は光覚消失のまま回復せず,精査目的で行った心エコー検査にて左房粘液腫が発見され,腫瘍栓子による塞栓症と考えられた. 2カ月後に体外循環下に粘液腫を摘出した.
    網膜中心動脈閉塞症を来たす基礎疾患のうち心疾患は7.4~28.2%を占めるが,リウマチ性心疾患と僧帽弁逸脱症の頻度が高く粘液腫は希である.若年者に発生した網膜中心動脈閉塞症では,心エコー検査を含む全身の精査を進め,心疾患が判明すれば早期の外科的治療が必要である.
  • 原口 周一, 小須賀 健一, 山名 一有, 浦口 憲一郎, 名嘉真 透, 明石 英俊, 剣持 邦彦, 藤野 隆之, 久保田 義健, 大石 喜 ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1512-1516
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,胸部および腹部大動脈瘤に非連続性に多発する重複大動脈瘤の報告も少なくない.
    この重複大動脈瘤は手術法,補助手段,また手術時期として胸部,腹部のいずれを優先するか,同時に行うべきかなど多くの問題点を含んでいる.症例は62歳,男性でannuloaortic ectasia (AAE)を指摘されBentall術後,約7年後に下行大動脈瘤と腎動脈下腹部大動脈瘤の同時並存をみ,一期的手術を施行した症例を経験したので術前の抗凝固療法を含め若干の文献的考察を加え報告する.
  • 宮原 健, 今泉 宗久, 内田 達男, 西村 正士, 小鹿 猛郎, 近藤 大造, 渡辺 英世, 榊原 正典, 内田 安司, 藤田 興一, T ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1517-1522
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺癌検診の普及や診断技術の進歩に伴い,肺多発癌の発見される機会が増加している.同時性両側性肺多発癌の場合は術前診断が両側共に得られることは少なく,治療法に関しても種々の議論がある.今回われわれは右上葉および左上葉に発生した同時性両側性肺多発癌に対し,胸骨正中切開法および前側方開胸を用いて一期的に右上葉切除,左上区区域切除を施行し良好な結果を得たので報告する.
    症例は64歳男性で胸部X線写真にて両上肺野の異常陰影を指摘され来院. TBLBにて左上葉腫瘍は腺癌と診断された.胸骨正中切開法にて手術施行し,術中生検にて右上葉腫瘍は扁平上皮癌と診断され,一期的に右上葉切除,左上区区域切除を施行した.
    全身状態や残存呼吸機能が良好である場合には一期的切除は有用であると思われる.
    また胸骨正中切開法は疼痛が少なく呼吸筋が温存され肺機能を維持でき,癌の根治性を考慮し症例を選択すれば有用と思われる.
  • 岩瀬 和裕, 竹中 博昭, 高垣 元秀, 石坂 透, 大西 隆仁, 吉留 克英, 西村 好晴, 矢倉 明彦, 大嶋 仙哉, 田中 智之
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1523-1526
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺膵重複癌で両癌とも切除された報告は,過去本邦において同時性(1年以内)重複癌の3例が報告されているにすぎない.肺膵異時性(1年以上)重複癌切除例の報告はない.肺癌術後2年11カ月目に,膵癌に対して膵頭十二指腸切除術兼門脈合併切除術を施行した1例を報告した.本症例は,第2癌(膵癌)発見時点で第1癌である肺癌の骨転移が強く疑われた.しかし, (1)肺癌骨転移の進行が緩徐であった事, (2)閉塞性黄疸を呈し,何らかの外科的処置が必要であった事,の2点から開腹術の適応とし,局所根治性を求めて切除した.
  • 野牛 道晃, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, 青木 達哉, 小野 充一, 伊藤 伸一, 浦田 義孝, 長江 逸郎
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1527-1531
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的まれと考えられる遅発性Bochdalec hernia 3例を経験した.
    症例1: 2カ月男児.出生時,鼻翼呼吸を認めるも特に異常指摘されず経過していた.生後2カ月.哺乳後の顔面チアノーゼ,哺乳力低下,頻回の嘔吐を認め胸部レ線上,左下肺野の異常陰影を指摘され緊急入院した.
    症例2: 3カ月女児.哺乳後の嘔吐が頻回にみられ,胸部レ線上,左下肺野に異常陰影を指摘され,緊急入院した.
    症例3: 6カ月男児.哺乳後頻回の嘔吐出現,胸腹部X線上,左横隔膜上に異常ガス像を認め,緊急入院した.
    いずれも経腹的に裂孔の縫合・閉鎖を施行し,経過良好である. 3例を検討し,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 澤田 隆吾, 長山 正義, 石川 哲郎, 大平 雅一, 曽和 融生, 梅山 馨
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1532-1537
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Barrett食道は,発癌との関連で臨床上注目されているが,その腺癌合併例の報告は本邦では現在までに20例と稀である.われわれはBarrett食道に発生した表在腺癌の1例を経験したので報告した.症例は63歳男性で特に症状なく健康診断時の食道造影検査にて,下部食道に2×2cmの辺縁不規則な腫瘤陰影が認められ,精査目的にて当科入院となった.内視鏡下生検では腺癌の診断がえられ,左開胸開腹により下部食道切除,胃全摘,食道空腸吻合術を施行した.摘出標本の病理組織診では食道胃粘膜接合部より口側に4cmのBarrett上皮が認められ,同部に発生した腫瘍は中分化型管状腺癌であった.術後15カ月目の現在,再発徴候なく生存中である.本邦報告21例を集計し検討したが,早期癌が比較的多い反面,本例を含めn2リンパ節転移例も多いため,食道扁平上皮癌に準じた手術法の検討も必要であると思われた.
  • 木暮 道夫, 井手 博子, 江口 礼紀, 室井 正彦, 葉梨 智子, 野上 厚, 遠藤 健, 窪田 徳幸, 中村 努, 林 和彦, 吉田 一 ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1538-1543
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    56歳男性.つかえ感を主訴に食道造影で下部食道下端左壁に6cmの半球状粘膜下腫瘍像を発見された. 1カ月後に胸痛と下血をみ,その後の食道造影で隆起は平坦化し中心に陥凹の出現を認めた.内視鏡では腫瘍は正常食道上皮で覆われ生検診断できなかった.超音波内視鏡検査(EUS)で固有筋層より連なる内部不均一,境界不明瞭な腫瘍像を認めた.経過とEUS所見から食道平滑筋肉腫を疑い胸部食道全摘胃噴門部切除術を行った.切除腫瘍は3.8cm×3.2cm,粘膜下発育型,組織学的に食道平滑筋肉腫と診断された.食道平滑筋肉腫の本邦報告例は62例ある.平均年齢53.5歳,性比は1:3で男性に多く, 57%が下部に発生.腫瘍径は平均7.9cm, 3~6cmが全体の45%を占める.術前正診率20%, 1生率81%,転移は肝が最多で35%を占めた.本症例のような形態変化をX線で捉え得た例はなかった.術前の質的診断にはEUS検査が有効である.
  • 菅野 正彦, 井坂 晶, 大森 勝寿
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1544-1548
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    石灰化を伴った胃平滑筋腫症例を経験したので,症例を提示し,文献的考察を行う.
    症例は76歳,女性.上腹部痛の精査のため来院し,腹部単純X線写真にて石灰化像を指摘され, CTにて膵尾部に接する腫瘍が見つかった.仮性膵嚢胞の診断で開腹したところ,腫瘍は胃外性に発育する胃平滑筋腫であった.
    石灰化を伴った胃平滑筋腫の本邦での報告は自験例を含め13例のみであり,非石灰化胃平滑筋腫に比較して, 1) 高齢の女性に多く, 2) 症状の出にくい胃体部に好発し, 3) 胃外性に発育する,といった特徴がみられた.これらの特徴及び病理所見から,石灰化の機序としてはdystrophic calcificationが考えられる.また石灰化の形状は全て塊状であるのも特徴的であった.
  • 町支 秀樹, 倉田 稔, 須崎 真, 酒井 秀精
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1549-1553
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性,高血圧にて加療中,右上腹部腫瘤を指摘され,腹部超音波検査,腹部CT検査等の検査で充実性腫瘤を認めた.腹部血管造影検査では腫瘤の栄養血管は左胃動脈及び右胃大網動脈で,胃原発の平滑筋腫瘍と考えられた.腫瘤は大きく,良,悪性の鑑別が問題となったが,腹部超音波検査及び腹部CT検査での腫瘤内部の性状と,腹部血管造影検査の所見から最終的に胃外に発育した平滑筋腫と診断し手術を施行した.腫瘍は胃角後壁小弯側より有茎性に発育しており,茎の基部を含めて腫瘍を摘出した.大きさは8×7×4cmで病理組織学的には平滑筋腫と診断された.本症例の質的診断及び原発巣の検索には腹部血管造影検査が特に有用であった.有茎性に発育する胃平滑筋腫瘍は文献的に稀であり,また,病理組織学的に,良性と悪性を鑑別することは困難な場合が多いとされているため,今後とも十分な経過観察が必要である.
  • 川平 洋一, 中尾 量保, 藤田 修弘, 濱路 政靖, 前田 克昭, 西村 正, 仲原 正明, 岸本 康朗, 中 好文, 打越 史洋, 辻本 ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1554-1557
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    十二指腸カルチノイドの1切除例を経験した.症例は, 50歳男性で,定期検診時の上部消化管透視にて十二指腸球部の隆起性病変を指摘され当院受診した.胃内視鏡検査では,同部に直径5mmの山田II型のポリープを認めた.生検,特殊染色にてカルチノイドと診断され,十二指腸局所切除を施行した.病理組織学的検査では,腫瘍細胞は粘膜内に限局し,曽我分類ではB型であった.免疫化学的検索により細胞質内にガストリン陽性細胞が見いだされた.術後1年経過し,再発なく経過良好である.
  • 片村 宏, 杉山 貢, 渡辺 桂一, 望月 弘彦, 土屋 周二
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1558-1562
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性,発熱と下血を主訴として入院した.理学的所見では右下腹部に圧痛,検査所見では貧血と白血球減少と肝機能障害を認めた.血液および便の培養所見は陰性であった.上部および大腸内視鏡検査,血管造影検査では明かな出血病変を確認できなかった.突然大量下血を認めショック状態を呈したため緊急開腹を行った.腸間膜リンパ節が全体にわたって腫大し,回腸終末部には潰瘍を多数認めた.また口側の回腸には180cmにわたってtell-tale signを認めたため回盲部切除と回腸追加切除を施行した.術中切除したリンパ節での培養検査でSalmonella typhiが検出され腸チフスと診断した.組織学的には潰瘍部で出血巣とチフス細胞,大リンパ球の広範な浸潤が観察された.術後はchloramphenicolの服用により急速に回復した.
  • 安田 聖栄, 野澄 隆, 池田 正見, 向井 正哉, 堀江 修, 水谷 郷一, 太田 正敏, 田島 知郎, 三富 利夫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1563-1567
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌の口側腸管に発生した閉塞性大腸炎の1例を報告した.術前の注腸造影で,腫瘍による閉塞部と口側潰瘍性病変の間に,本症に特徴的な正常粘膜の介在所見が認められた.手術では潰瘍の存在は漿膜面から判定不能で,術中内視鏡検査を行い切除範囲を決定した.
    本症の術前診断は一般に困難と言われている.しかし大部分の症例は不完全閉塞であるため,口側腸管の造影も可能な症例があると思われる.注腸造影では潰瘍性病変のみでなく,正常粘膜の介在所見に注意が必要と考えられた.また切除範囲決定には術中内視鏡検査は有用と考えられた.
    閉塞性大腸炎の発症機序に関しては,腸管拡張に起因する腸管虚血の影響が最も大きいと推察された.
  • 大沢 昌平, 近藤 征文, 大森 一吉, 白戸 博志, 澤口 裕二, 西田 修, 佐野 文男, 内野 純一, 澤田 康夫, 橋本 伊久雄, ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1568-1571
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は24歳の男性で,孤立性肝転移を伴った下行結腸癌と診断し,結腸左半切除および肝部分切除を行った.病理組織学的検索により腺扁平上皮癌と診断された.大腸の腺扁平上皮癌は,これまでに本邦で60例の報告例があるが,自験例はCancer family syndromeと考えられる大腸癌家系に発症したきわめて稀な1例であった.
  • 柳川 憲一, 西野 裕二, 矢田 克嗣, 久保 俊彰, 康 純明, 澤田 隆吾, 曽我部 豊志, 梅山 馨
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1572-1576
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    喉頭蓋癌による頸部リンパ節転移および肝転移の患者において,画像診断上,肝右葉欠損症と考えられる1例を経験した.
    症例は, 62歳の男性,右頸部腫瘤にて入院,入院時検査成績では肝機能検査は正常範囲内であった.画像診断では,超音波像, CTにてCantlie線より背外側に肝の構造を思わせる像を認めなかった.左葉は著明に肥大していた.血管造影では,右肝動脈,門脈右枝を認めなかった.以上より画像診断上,肝右葉欠損症と診断した.
  • 小形 滋彦, 今泉 俊秀, 鈴木 衛, 三浦 修, 中迫 利明, 松山 秀樹, 長谷川 正治, 吉井 克己, 小松 永二, 原田 信比古, ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1577-1581
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodencectomy-以下PDと略す)後,胆管空腸吻合部の狭窄や癌再発,癒着による腸管通過障害が無いにも関わらず肝膿瘍を発症した6例について臨床的検討を行った. 1968年から1988年までに教室で経験したPDは584例であり,このような器質的成因のない術後肝膿瘍が1%にみられた.原疾患は悪性疾患5例,良性疾患1例,再建法はPD-II (膵胆胃配列) 3例, PD-III (胃膵胆配列) 3例であった.手術より発症までの期間は1カ月から4年8カ月に及んだ. 6例中3例は画像診断のみで, 2例は試験穿刺まで行い肝膿瘍と確認した.初期の1例は肝転移と誤診された.治療は3例にドレナージ, 2例に抗生物質の全身投与が行われ, 3カ月以内に治癒退院した.肝転移と誤診された症例では抗癌剤とステロイドが投与され敗血症により1カ月で死亡した. PD後の肝膿瘍は致命的な合併症であり,早期に発見し的確な治療をすることが必要である.
  • 長見 晴彦, 田村 勝洋, 内藤 篤, 矢野 誠司, 山本 剛史, 中川 正久, 中瀬 明
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1582-1586
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,私達は切除不能肝癌症例に対して間欠的肝動脈遮断(Intermittent Hepatic Arterial Occlusion: IHAO)と制癌剤併用療法を行うため,開腹下に5FrのSwan-Ganz (S-G)カテーテルを胃十二指腸動脈から挿入し,その先端を左右肝動脈分岐部直前に留置した.またWinslow孔へPenroseドレーンを留置した.術後経過は順調であったが,術後第6日目にPenroseドレーンから突然多量出血があり,直ちにS-Gカテーテルより肝動脈造影を行ったところ左肝動脈起始部に形成されたX線フィルム上直径8mmの仮性肝動脈瘤切迫破裂による腹腔内出血と診断した.しかし出血に対しては輸血,止血剤投与を行い治療後2日目に止血しえた.なお仮性左肝動脈瘤はその治療期間中にS-Gカテーテルによって塞栓された.これまで本邦では仮性肝動脈瘤破裂症例は文献で検索した範囲では6例報告されているが,その診断,治療には充分な注意を要すると考える.
  • 福田 直人, 石山 純司, 天野 仁, 石川 泰郎, 山川 達郎
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1587-1591
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去8年間に当院にて経験した巨大肝海綿状血管腫は男性1例,女性2例の合計3例で,平均年齢44.3歳であった.診断は主に選択的肝動脈造影によってなされ,その特徴は動脈相から静脈相に及ぶ多発性腫瘍濃染像であった. 3例中2例に外科的切除が行われた(外側区域切除及び肝部分切除)が,他の1例は腫瘍がびまん性に存在し凝固能障害を併発(Kasabach-Meritt症候群)していたため,中・左肝動脈結紮術が施行された.これらの症例の予後はいずれも良好であった.
    われわれの症例及び他の報告例を検討した結果,血管腫が急速に増大する例や腫瘍径が4cm以上の例については手術の適応があると考えられた.また,腫瘍が摘出不可能な場合は肝動脈結紮術が有効であると思われた.
  • 四宮 義浩, 上尾 裕昭, 渡辺 大介, 高椋 清, 井上 裕, 有永 信哉, 松岡 秀夫, 安部 良二, 狩峰 信也, 永松 正哲, 秋吉 ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1592-1596
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆石手術後に発生した総胆管断端神経腫の1例を報告する.症例は78歳の男性で,胆石症に対する胆嚢摘出術,総胆管切開術の術後1年目に黄疸と右季肋部痛が出現.胆道造影で中部総胆管の狭窄と総胆管結石を認め,総胆管の瘢痕性狭窄の診断の下に総胆管切除を施行した.狭窄部の総胆管壁には弾性硬の硬結を認め,組織学的に断端神経腫と診断された.本症の本邦報告24例の解析により以下の点が示された. (1)画像診断上,悪性腫瘍との鑑別が非常に困難であり術前に確定診断の得られた症例はわずか1例(4%)であった. (2)術前に悪性腫瘍が疑われた症例は9例(38%)を占めており,そのうち2例は手術不能とされ死亡し,他の2例では過大な手術侵襲が加えられていた. (3)手術例の予後は良好で全例で良好な経過が得られていた.胆道系手術後の胆道狭窄に遭遇した場合には本症の可能性も考慮すべきと考えられた.
  • 吉田 栄一, 志摩 泰生, 村上 努士, 下山 均, 黒河 達雄, 梅田 政吉, 小林 省二, 山鳥 一郎
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1597-1600
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症の術前診断にて手術が行われ,偶然胆嚢に外傷性神経腫が発見された症例を経験したので報告する.症例は85歳女性で,腹部超音波, CT, DIC等より総胆管結石症の診断にて手術が行われた.術中所見では,総胆管は拡張し内部に多数の結石を触知した.胆嚢は萎縮し,壁は非常に肥厚,硬化していた.病理学的検索では外傷性神経腫の診断であり,胆嚢壁全体に末梢神経束が結節状に著明に肥厚しているのがみられた.胆嚢に発生した外傷性神経腫の報告は,われわれの検索した限りでは自験例を含めて3例にすぎず,きわめて稀である.今回,われわれはその症状,成因などを中心に考察を行った.
  • 及川 郁雄, 中野 昌志, 平田 公一
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1601-1605
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆管癌症例の予後に対するリンパ節転移の影響について検討した.肝管合流部以下に発生した胆管癌症例では,リンパ節転移の有無は切除率・治癒切除率に影響していた.しかし,肝門部胆管癌ではリンパ節転移の影響は少なく, V. Hinf因子の関与が重要と考えられた.腫瘍径が3cm以下の症例ではリンパ節転移陽性率は38%であったが, 3cm以上の症例では56%にリンパ節転移が見られた.さらに,漿膜浸潤が高度になるほどリンパ節転移陽性率は上昇した.また,上・中部胆管癌であっても膵頭後面・上腸間膜根部のリンパ節に転移を生じる症例が見られた.
    以上より,胆管癌症例においては,占拠部位に限らず広範囲なリンパ節郭清を含む拡大手術の必要性が示唆された.
  • 高橋 昭三, 小林 信や, 菅谷 昭, 増田 裕行, 小松 誠, 小出 直彦, 飯田 太
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1606-1610
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性上皮小体機能亢進症(HPT)に膵炎を合併した3症例を経験した.上皮小体手術後に高Ca血症が是正されるに伴い,上皮小体ホルモン(PTH)も低下し,同じように血清アミラーゼ値も低下した.高Ca血症と膵障害との関連を考える上で興味深い症例であり文献的考察を加えて報告する.症例1:71歳女性で,骨盤の病的骨折と高Ca血症,高PTH血症を指摘され,精査中に急激な心窩部痛が出現した. CT検査で膵管の拡張と膵石がみられ慢性膵炎と診断された.右下の腫大した上皮小体腺腫の摘出を受けたところ,血清Ca値が正常域に低下し,それに伴い血清アミラーゼ値, PTH値も低下した.症例2:57歳女性で発熱・腹痛を主訴に来院し急性膵炎と診断された.同時に尿管結石,高Ca血症があり精査を受け, HPTと診断された.症例3:25歳女性で頻回の心窩部痛と高アミラーゼ血症により急性膵炎と診断された.高Ca血症もあり,精査の結果HPTと診断された.
  • 生方 英幸, 田渕 崇文, 松本 文和, 平良 朝秀, 舟山 仁行, 湯本 二郎, 佐藤 茂範, 中田 一郎, 西田 清一, 湯本 克彦, ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1611-1617
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵癌と鑑別困難であった腫瘤形成性膵炎の2例を考察を加え報告する.症例1は58歳の男性で,黄疸を主訴に入院となった.膵頭部に腫瘤を認め総胆管および膵体尾部膵管の拡張がみられた.各種画像診断にて膵癌との鑑別困難であり胆汁細胞診にてclass IIIbも報告されたため膵頭十二指腸切除を施行した.症例2は38歳男性で近医より膵癌の疑いにて紹介入院となった.大酒家で主訴は心窩部および背部痛.膵頭部に腫瘤を認めたが黄疸はなく,膵体尾部膵管の拡張がみられた.膵癌との鑑別困難にて膵頭十二指腸切除術を施行した.各種画像診断法および腫瘍マーカーを含む血液生化学的検査等,諸家の様々な鑑別法が報告されているが未だ確定的なものはない.最も有力なてがかりは腫瘤形成性膵炎は腫瘤の縮小する例が多いことであるが,その経過観察に要する期間は定かではなく膵癌の予後が非常に悪い現状を考えると,手術をためらうべきではないと考えられた.
  • 中嶋 孝司, 長浜 徴, 林 剛一, 榊原 宣, 瀧 和博, 渡辺 信夫
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1618-1623
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾リンパ管腫はまれな疾患である.自験例を報告し,本邦報告例37例を集計した.
    症例は43歳,女性.平成元年秋頃より左背部痛を訴え,近医で行われた超音波検査で脾臓の異常を指摘されて当院入院.超音波検査, CT検査で脾臓に3cm大の嚢胞とその周囲に多数の小嚢胞を認め,脾嚢胞と診断した.しかし,確定診断は得られず背部痛が持続したので平成2年4月18日脾摘術を行った.摘出脾は110gで,割面では大小多数の嚢胞を認めた.病理組織学的には嚢胞壁に内皮細胞を認め,リンパ管腫と診断した.集計しえた結果では, 30~50歳の女性に好発し,症状は腹部腫瘤,脾腫の触知が67%ともっとも多かった.血液生化学的検査では特異的なものはなく,血小板減少などの脾機能亢進を思わせる症例が3例あった.治療は全例に脾摘術が行われていた.脾臓の平均重量は1,090gで,嚢胞数は1例を除いた全例が多胞性であり,石灰化は22%の症例に認められた.
  • 北原 健志, 中野 陽典, 中口 和則, 福田 弘, 長嶺 春利, 尾上 謙三
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1624-1628
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    著明な男性化を呈した卵巣門細胞腫の1例を経験した.症例は75歳,経産婦.頭頂部よりの脱毛,ひげ等の男性化徴候を指摘される.入院後検査にて,多血症,血中testosteroneの異常高値(29ng/ml),左卵巣の充実性腫瘍像を認め,卵巣の男性化腫瘍を疑い開腹した.摘出した左卵巣は,大きさ3×3×2cm,重量13gであり,組織学的に門細胞腫の像を呈していた.また右卵巣にも同様の腫瘍細胞が認められ,両側性であった.
    術後,血中testosterone値は正常化し,経過良好にて退院した.
    卵巣門細胞腫は,本邦では5例目の報告であり,しかも両側性は世界で3例目と極めて稀である.興味ある臨床所見とともに報告した.
  • 阿部 毅, 佐々木 廸郎, 中島 博史, 永瀬 厚, 田口 宏一, 内藤 春彦, 荻田 征美, 山城 勝重, 中西 昌美
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1629-1632
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.腹部腫瘍の摘出手術を受けたが,腫瘍は横行結腸間膜内にあり,組織学的には卵巣漿液性乳頭状癌に類似していた.他臓器原発癌の腹膜播種を疑い,再開腹を含めた原発臓器の検索を行ったが消化管,子宮,卵管及び卵巣には異常を認めなかったため,腹膜原発乳頭状癌と診断した.術後再発を繰り返したが,血中CA-125をマーカーとし早期に腫瘍摘出術を行いまたEpirubicin, Cisplatin, Cyclophosphamide併用療法が有効であった.
    初回手術後6年以上再発の兆候なく生存している.
  • 金沢 守, 竹中 博昭, 久我 貴之, 藤岡 顕太郎, 大原 正己, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1633-1637
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胎生初期に下肢の主血行路である坐骨動脈の遺残及びその動脈瘤は極めて稀で,その報告は本邦でも14例を数えるのみである.
    今回われわれは右坐骨神経痛様症状で発生した遺残坐骨動脈瘤症例を経験した.症例は71歳女性で運動時右下肢痛を主張とし, CTで右殿部の動脈瘤を指摘され当科紹介,入院となった.血管造影にて太い内腸骨動脈が骨盤腔外へ出た後,膝窩動脈となり,下腿へ向い,浅大腿動脈は大腿部分で先細りとなっているのが判明した.手術は仰臥位で, EPTFEグラフトを用い右外腸骨膝窩動脈バイパスを設置し下腿血流を確保した後,腹臥位として坐骨動脈瘤上下で坐骨動脈を結紮し血行を遮断し,瘤に縦切開を加え,血栓を排出,瘤は開放したまま放置した.術後経過は良好で下肢の阻血症状なく,坐骨神経痛は消失した.
  • 本邦報告38例の検討
    八木 誠, 廣瀬 光, 柴垣 一夫, 木村 貴彦, 吉村 高士, 戸塚 哲男, 矢田貝 凱, 羽白 洸, 寺本 健二, 新井 圭輔, 利光 ...
    1991 年 52 巻 7 号 p. 1638-1644
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性で, 3カ月前から自転車走行中の右下腿の疼痛と冷感を来たしては1~2時間の安静で軽快していた.血管撮影で右膝窩動脈の4cmにわたる結節状の陰影欠損を認め, CTでは膝窩動脈とその近傍の嚢包性病変を認めた.手術にて膝窩動脈外膜嚢包とこれに連なる膝窩部嚢包を確認し,これらを一塊として切除した上で,端々吻合にて血行再建を行った.
    膝窩動脈外膜嚢包は世界でも200余例の報告をみるに過ぎないまれな病態であり,その成因に関しては定説を得るには至っていない.この度自験例を含む本邦報告38例を集計して若干の考察を加えて報告すると共に,膝窩部嚢包が本症の成因の一つであろうと提唱したい.更に成因が明らかになるまでは,本症の手術に際しては関節との交通も念頭において外膜嚢包を膝窩動脈と共に切除し,十分な病理学検索を行うことが肝要かと考える.
  • 1991 年 52 巻 7 号 p. 1648-1670
    発行日: 1991/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
feedback
Top