日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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53 巻, 11 号
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  • 伊藤 喬廣, 水田 祥代
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2565-2568
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 重症例と軽症例の比較
    西村 好晴, 竹中 博昭, 岩瀬 和裕, 矢倉 明彦, 吉留 克英, 大西 隆仁, 高垣 元秀, 石坂 透, 別所 俊哉, 大畑 俊裕, 井 ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2569-2573
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術後MRSA腸炎の重症化に影響を及ぼす因子と補助診断法につき検索した.対象症例12例を重症群6例,軽症群6例に分けた.重症群とは腎機能障害を併発した症例, 39℃以上の発熱を認めた症例,あるいは維持輸液以外に1日2,000ml以上の輸液負荷を要した症例とした.術前,術中の諸因子に有意な(p<0.05)差はなかった.腸炎発症までの術後日数は重症群が3.7±1.1日と軽症群の7.1±2.7日に比し有意に短かった.腸炎発症時の白血球数は両群間で有意差はなかったが,核左方移動係数は重症群が72±26%であり,軽症群の6±4%に比し有意に高値であった. Toxic Shock Syndrome Toxin-1 (TSST-1)の最高希釈倍数は重症群が27.4±0.4倍であり,軽症群の26.6±0.5倍に比し有意に高値を示した.腸炎発症までの期間が4日以内であること,腸炎発症時の核左方移動係数が高値であること, TSST-1の最高希釈倍数が高値であることは重症化を示唆すると考えられた.
  • 迫 裕孝, 沖野 功次, 阿部 元, 小玉 正智, 中根 佳宏
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2574-2579
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去13年間に当科で経験した甲状腺癌再発例14例を検討した.初回手術は7例が他院で, 7例が当科で行われていた.年齢は平均50.9±16.3歳で,性別は男性4名,女性10名で,組織型はすべて乳頭癌であった.他院での7例の初回手術は核出・部分切除4例,葉切除2例,癌遺残のままの部分切除+根治的頸部郭清1例で標準的手術例は1例もなかった.初回手術から再発までの期間は平均11.2年で, 2例にすでに再手術が行われていた.再発部位は残存甲状腺5例,頸部リンパ節6例,縦隔リンパ節1例,気管・食道各1例であった.核出・部分切除例は全例残存甲状腺再発で,葉切除例は全例リンパ節再発であった.当科での7例の初回手術は1例が生検+radiation, 6例に根治手術が行われた.根治手術6例中5例に頸部リンパ節再発, 1例に皮下広頸筋内再発をみた.再発までの期間は平均1.6年であった.再手術で根治性が得られる症例も多く,積極的に手術する必要があると思われた.
  • 成田 達彦, 舟橋 啓臣, 佐藤 康幸, 今井 常夫, 大野 元嗣, 飛永 純一, 安藤 広幸, 宮崎 貢一, 村瀬 弘, 高木 弘
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2580-2585
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌において有用性が高いとされる3種類の糖鎖抗原腫瘍マーカーCA15-3, BCA225, NCC-ST-439 (ST-439)の比較検討を血清および免疫組織化学的に行った.血清値の検討では,術後例において感度はST-439>CEA>CA15-3>BCA225,特異度はCA15-3=CEA>ST-439>BCA225の順に良好であった. combination assayでは, CEAとST-439にCA15-3またはBCA225の3種類の組合せで原発例の30%以上,術後再発例の80%以上が陽性であった.各アッセイに用いられるモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討では,乳癌組織内におけるCA15-3 (DF3, 115D8)とBCA225 (CU18, CU46)の認識する抗原の分布は非常に近似していたが, ST-439の分布はこれらと異なっていた.以上より,乳癌の腫瘍マーカーとしてCEA+ST-439+CA15-3の組合せは,効率がよく,有用性が高いと考えられた.
  • 経腹膜法との比較
    佐藤 恭介, 海老根 東雄, 田村 進, 横室 仁志, 隈部 俊次, 鈴木 博雅, 亀崎 昌道, 奥田 隆博, 村岡 理人
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2586-2590
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左側腹部斜切開による腹膜外到達法による腹部大動脈再建例7例を,開腹法で行った10例と手術中因子,術後因子について比較を行った.術中の出血回収の有無を除いて手術時間,術中出血量,尿量,血行動態の変化には差を認めなかった.晶質液の輸液量は有意に腹膜外群で多かったが,最近の輸血節減効果と思われた.術後の経口摂取開始は明らかに腹膜外群で早く,術後入院期間も腹膜外群で短い傾向を認めた.術後合併症は,腹膜外群にはなく,開腹群で1例に急性腎不全が発生した.腹膜外法の問題点として,右腸骨動脈遠位部の視野に難点があり,特に右腸骨動脈瘤の存在下では顕著であり,別の皮膚切開を必要とすることがあった.また,開閉創に時間を要すること,腹腔内臓器の確認が出来ないことなどが問題点として考えられた.しかし,術後経過は明らかに開腹法に比して良好であり,高リスク患者や高齢者でも早期離床が可能であると思われた.
  • 木村 寛伸, 神野 正博, 高村 博之, 荒川 元, 前田 基一, 魚岸 誠, 素谷 宏, 神野 正一
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2591-2596
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期胃癌の増大と進展に関する研究は,年余にわたって経過を観察することは一般にはまれなため,正確なところ不明の点も多い.そこで,今回早期胃癌96病巣を対象に腫瘍径を1.0cm以下, 1.1~3.0cm, 3.1~5.0cm, 5.1cm以上の4群に分け,腫瘍径と病理組織学的諸因子との関係,ならびに小胃癌,表層拡大型早期胃癌について検討した.早期胃癌の平均腫瘍径は3.0cmであり,腫瘍径は性別では女性が,肉眼型では平坦型が,組織型では未分化型癌が有意に大きかった.深達度と腫瘍径との関係では,腫瘍径が3.1~5.0cmの群は他の群に比べ,有意にsm癌が多かったが,リンパ節転移と腫瘍径とのあいだには,特に関係は認められなかった.また小胃癌は11例(11.5%)に,表層拡大型早期胃癌は7例(7.3%)に認められ, 1例を除きともに全てm癌で,小胃癌はIIc, IIaの分化型癌が多く,表層拡大型早期胃癌はIIbの要素を含むsigを主とする未分化型癌が多かった.
  • 濱路 政靖, 中尾 量保, 仲原 正明, 岸本 康朗, 荻原 信夫, 中 好文, 長谷川 順一, 清水 重臣, 打越 史洋, 奥野 慎一郎, ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2597-2602
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    予後の明らかな胃十二指腸平滑筋腫瘍20例を対象として,新鮮標本ないしパラフィン包埋ブロックからフローサイトメトリーを用いてDNA Ploidyを検索し,臨床病理学的指標,予後との関連性を検討した.胃原発腫瘍は18例で内訳は,筋腫13例,肉腫5例であった.筋腫と肉腫症例のMitotic Index, Cellularity, Histological Gradeに有意差を認めた.筋腫例13例中12例はDiploidy (D)を示し, Aneuploidy (A)は1例のみであった.一方,肉腫例では5例中4例がAを示し,肉腫症例に有意にAが多かった.さらに,反復測定すると, DNA Ploidyが異なり,腫瘍内核DNA量が不均一性であった.非治癒切除に終わった肉腫例の1例のみが再発死した.十二指腸平滑筋肉腫2例では,周囲組織浸潤や肝転移を示したが,いずれもDを示した. 20例の胃十二指腸平滑筋腫瘍では,肉腫症例に有意にAが多かった.予後とDNA Ploidyの関連は更に長期の経過観察のうえ検討する必要があると考えられた.
  • 及川 郁雄, 伝野 隆一, 平田 公一
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2603-2609
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1991年4月までに教室で経験した肝内結石症症例53例を対象として,手術成績および予後について検討した.その結果の要約は, 1) 左右両葉型症例では多次手術例が多かった, 2) 術後の結石遺残率は片葉型に比べ,両葉型症例で高かった, 3) 経過中に胆道癌が発生した症例を2例経験し,これらは全例死亡した, 4) 多次手術症例であっても,術後に積極的な内視鏡的截石術が施行された症例は予後良好であったことなどである.
    以上より,本症の治療に際しては初回手術時の正確な胆道病変の診断により多次手術を防止するとともに,術後やむなく遺残結石となる場合には,術後積極的に内視鏡的截石術を施行する必要があると考える.なお,術後胆道癌発生の診断については,かなり困難な場合が想定されるが,今回のretrospective studyからは胆道造影等による厳密なcheckの上でfollow upすべきであると考えられた.
  • 橋本 隆, 奥野 敏隆, 小西 豊, 高峰 義和, 谷 友彦, 梶原 建熈
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2610-2614
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間の鈍的肝外傷から直死例6例を除いた43例をA群:緊急手術群(23例), B群:保存的治療群(20例)に分けて手術適応について検討した.来院時血圧はA群90±29mmHg, B群117±21mmHgで,急速輸液後の血圧はA群98±22mmHg, B群117±15mmHgであった.腹膜刺激症状はA群では61%, B群では15%に陽性であった.腹部超音波検査では腹腔内貯溜液はA群100%, B群47%,肝内血腫はA群25%, B群32%例,肝破裂部の描出はA群19%, B群5%に認められた.合併損傷では肋骨骨折,肺挫傷,血気胸の合併率に差はなく, A群では脾,膵等の実質臓器損傷が多く見られた.鈍的腹部外傷例では,肝損傷が軽度でも腹腔内他臓器損傷の可能性があり,輸液に反応しないショック,腹膜刺激症状陽性,超音波検査で多重または増量する腹腔内貯溜液を認めた例では開腹止血術が適応と思われる.
  • 岡田 和也, 中島 公洋, 岩男 裕二郎, 荒巻 政憲, 鈴木 貫史, 多田 出, 吉田 隆典, 御手洗 義信, 金 良一, 小林 迪夫
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2615-2620
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腫瘍径3cm以下の小肝細胞癌切除25例29結節について臨床病理学的に検討した.腫瘍径2cm以下のA群は12例, 2~3cmのB群は13例で,切除耐術21例のA, B各群の5年生存率はそれぞれ87%, 62%であった.腫瘍径が2~3cmへと増大するにしたがい,単結節周囲増殖型の占める割合が増え,被膜浸潤,血管侵襲vpや肝内転移imが増加していた.したがって根治性においては腫瘍径2cm以下では部分切除, 2~3cmでは亜区域切除以上が必要と考えられた.一方,多結節型肝癌4例の発育様式として,その多くは多中心性発生と考えられた.また亜区域以上の切除を施行したにもかかわらず,予後不良な多発残肝再発症例が4例あり,それらの肉眼型は単結節周囲増殖型や多結節癒合型で,いずれもvpやimが旺盛なaneuploid症例であった.したがってこの様な症例に対しては,適切な術後補助療法が必要であると考えられた.
  • 岩澤 卓, 平尾 泰宏, 島田 守, 高山 卓也, 井上 雅智, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫, 岡川 和弘
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2621-2626
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石症として手術され,術中胆道造影にてはじめて総胆管結石と診断された症例(unsuspected common bile duct stone)を最近7年間に9例経験した.今回この9例を,術前より診断がなされていた総胆管結石症24例および最近2年間に手術された胆嚢結石症66例と比較し,胆嚢摘出後遺残結石の予防に関する考察を行った.検討の結果, unsuspected stone 9例は,コレステロール系の小結石で胆嚢管が拡張した症例が多く,そのほとんどは胆嚢内から逸脱したものと考えられた.この9例の術前診断は,黄疸の既往,血液生化学検査(ビリルビン, GOT, γ-GTP,アミラーゼ値の上昇),画像検査(CBDの拡張,胆嚢内小結石)から予測は可能であった.少なくともこれらの条件に当てはまる症例には術中胆道造影を行い,総胆管内結石の疑いがあれば積極的に総胆管切開を行うことが遺残結石の予防には重要であると考えられた.
  • 加藤 一哉, 斎藤 孝成, 小野寺 一彦, 坂田 博美, 水戸 廸郎
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2627-2630
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは,胆嚢内結石症に対し,体外衝撃波破砕療法(ESWL)を49例施行し,そのESWL施行中の疼痛管理について検討を加えたので報告する.
    破砕装置はMPL-9000を使用し,治療体位は腹臥位とした.
    麻酔法は,持続硬膜外麻酔法を用いた.その結果,無麻酔群は87.5%に疼痛を訴えESWL施行継続困難であったのに対し,硬膜外麻酔併用群(ESWL開始60分前に2%lidocaine 5ml+morphine 1mg, ESWL開始直前に2%lidocaine 5mlのbolus投与および, ESWL施行中の2%lidocaine 15ml/hrの持続投与)では,疼痛を訴えたものはESWL施行中および,施行後で14.4%であった.
    以上よりESWLにおける持続硬膜外麻酔法の併用は,非常に有効な方法と考えられた.
  • 浜田 吉則, 佐藤 正人, 上辻 章二, 山村 学, 山田 武夫, 日置 紘士郎
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2631-2637
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近10年間に経験した先天性胆道拡張症の再手術例から,初回手術術式について考察を加えた. 2例は初回手術が嚢腫消化管吻合で,遷延する胆管炎のため再手術を要した. 4例は嚢腫切除,肝管空腸吻合術後の症例で,再手術の原因は吻合部狭窄,胆汁うっ滞に伴う肝内結石や胆管炎であった.とくに肝内胆管拡張を伴う戸谷IV-A型に対して,嚢腫切除,肝管空腸吻合を施行した3例中2例は,初回手術時より存在した吻合部の相対的狭窄から肝内結石を形成し再手術を要した.残る1例は吻合部狭窄はなく,初回手術時よりの肝管狭窄,肝内一次分枝狭窄が原因の胆管炎で再々手術で肝切除を施行した.先天性胆道拡張症の初回手術は嚢腫切除,肝管腸吻合による分流手術が基本であり,肝門部肝管における大きな吻合口の作成が再手術の予防に役立つ可能性があると考えられた.
  • 小松 永二, 今泉 俊秀, 磯部 義憲, 鈴木 衛, 中迫 利明, 小形 滋彦, 吉井 克己, 原田 信比古, 木村 健, 羽鳥 隆, 羽生 ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2638-2644
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術後の膵腸縫合不全に起因する大量出血例の発生状況,出血状況,治療法につき検討した.対象は1968年から1989年までに教室にて施行した膵頭十二指腸切除術例565例である. 1) 膵腸縫合不全に起因する大量出血は16例であった. 2) 腹腔内出血12例,消化管出血4例であった. 14例が明らかなショック状態に陥った. 3) 止血法の内訳は圧迫止血4例,開腹手術8例,経カテーテル的動脈塞栓術(TAE) 4例であった. 4) 開腹手術では出血部位を確認できたのは3例のみであったが, TAE例では全例確認可能であった. 5) 圧迫止血,開腹手術例では全例死亡したが, TAE例では1例を失ったが, 3例を救命できた.膵頭十二指腸切除術後の大量出血はいまだ致命的な合併症であり,まず緊急止血を第一に考え, TAEを第1選択とすべきであると考えられた.
  • 臼井 由行, 佐々木 澄治, 松原 淳, 永広 格
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2645-2649
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近の11年間に手術を行ったバセドウ病90例のうち2例に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を認めた. ITP合併バセドウ病は診断面,治療面で難渋することが多いと言われている.われわれの2例はITPが先行しており, ITPの治療に苦労したが,甲状腺亜全摘術による甲状腺機能の正常化と共に血小板数の増加が認められた.
    甲状腺ホルモンと白血球数,血小板数との関係を調べるために,バセドウ病と甲状腺腫瘍症例における白血球数,血小板数を比較検討したが,どちらも有意差は認めなかった.
    しかし, ITP合併バセドウ病では,甲状腺機能を正常化し,その結果として血小板数を増加させるのに,甲状腺亜全摘術が有効な手段であると考える.
  • 中野 芳明, 川端 雄一, 五福 淳二, 西出 孝啓, 川崎 勝弘, 相沢 青志, 荒木 幸雄
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2650-2653
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    66歳男性,右側乳房の有痛性腫瘤にて来院.既往歴, 31歳時右肺結核.両側女性化乳房を認め,触診および諸検査にて男性乳癌を否定しきれず生検を行った.病理組織検査にて結核と判明した.また生検時採取した膿汁の結核菌培養にてヒト型結核菌が証明された. 1年間化学療法を行い,現在は再燃傾向はみられず良好な結果をたどっている.本症例は続発性の結節型乳房結核と考えられた.
    乳房結核は乳癌との鑑別が困難なことが多く,本症例では特に女性化乳房があったために男性乳癌との鑑別が困難であった.乳癌との鑑別診断には,早期の生検による病理学的検索が重要であると考えられた.
  • 日馬 幹弘, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, 松永 忠東, 佐藤 泰, 海瀬 博史, 海老原 善郎, 豊田 充康
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2654-2658
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性,潰瘍を伴った小児頭大の左乳房腫瘤と強度の貧血を主訴として入院した.胸部X線にて両側肺に多発性転移巣を認めた.精査にて悪性葉状腫瘍と診断し,非定型的乳房切除術を施行した.組織学的に上皮成分には異型性は認めず,異型性を示す肉腫様組織は平滑筋肉腫様に見え,また軟骨肉腫,血管肉腫の形態も見られ,一部には類骨細胞も見られた.エストロジェン・レセプターは弱陽性を示したが,いかなる内分泌,化学療法にも反応せず, 5カ月後,肺転移に基因する呼吸不全にて死亡するに至った.本疾患は外科的治療が唯一の確実な治療法であり,早期に切除することが必要である.
  • 岩田 広治, 小林 俊三, 岩瀬 弘敬, 福岡 秀樹, 伊藤 由加志, 山下 啓子, 葛島 達也, 正岡 昭
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2659-2663
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1981年4月,左乳腺腫瘤を有する35歳の女性が入院した.前医による抗生物質の投与で発熱,咳嗽,呼吸困難はやや軽快していた.しかしながら,なお,軽度の咳嗽と呼吸困難が残っており,胸部単純X線検査にて肺の癌性リンパ管炎が疑われた.乳腺腫瘤の穿刺吸引細胞診と開胸肺生検にて乳癌とその転移であることを確定診断し,外側腋窩郭清を伴う単純乳房切除術を行った.術後サイクロフォスファマイド,アドリアマイシン,テガフールと抗エストロゲン剤による複合化学内分泌療法を施行した.患者は現在,多発骨転移による軽度の疼痛があるものの,術後10年の間呼吸器症状はなく元気である.本例は乳癌のみならず他の悪性腫瘍のリンパ管炎型肺転移の中でも,長期生存中の稀な症例である.
  • 嘉陽 宗隆, 大田 守雄, 大嶺 靖, 城間 寛, 喜名 盛夫, 国吉 幸男, 古謝 景春, 草場 昭, 伊藤 悦男, 安澄 文興
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2664-2667
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前の穿刺吸引細胞診にて,扁平上皮癌と診断された乳癌の1例を経験した.症例は36歳女性で,左乳房C領域に約2×2cmの弾性硬,可動性良好な腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診でClass V (squamous cell carcinoma)と診断され,定型的左乳房切断術を施行した.病理組織学的には腺腔形成を主体とした乳管癌の像を呈し,腺上皮の一部には扁平上皮化生を認めた.その腫瘍細胞はエオジン好性の広い胞体を持ち,核は不整形であった.透過電顕では,扁平上皮癌細胞に特徴的なtonofilament様の収束と,細胞間橋に相当するdesmosomeが認められた.エストロゲンレセブターおよびプロゲステロンレセプターはいずれも陰性であった.
  • 山本 秀和, 横尾 直樹, 白子 隆志, 金子 一郎, 久米 真, 二村 学, 米山 哲司
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2668-2671
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年の血液透析技術の進歩に伴い,透析期間の長期化,患者の高齢化が進み,種々の合併症が出現するようになった.最近筆者らは血液透析患者に合併した腹部大動脈瘤切迫破裂の症例を手術療法にて治療しえたので,若干の考察を加え報告する.
    症例は慢性血液透析中の67歳男性.腹部大動脈瘤と診断されながらも経過観察されていたが,切迫破裂状態になったため直径18mmのY型ゴアテックス人工血管を用い,置換術を行った.術後はSwan-Ganzカテーテル等による厳重な体液管理下,メシル酸ナファモスタットを用いた早期頻回透析を行い,治癒せしめることができた.
    透析患者の手術に際しては,術中,術後の厳重な体液管理と,術後早期透析が重要なポイントとなる.そのためにはSwan-Ganzカテーテルによる肺動脈楔入圧モニタリングと,短時間作用型抗凝固剤のメシル酸ナファモスタットが非常に有用であると考えられた.
  • 山田 俊介, 岩崎 正之, 小川 純一, 井上 宏司, 正津 晃
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2672-2675
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病患者において,胸部外科領域に関連する特異な症状を示した3症例を経験したので報告する.
    症例1は31歳女性,左後縦隔の神経原性腫瘍の診断で手術を行ったが,髄膜瘤であった.症例2は25歳女性,左上肢の腫大と疼痛,左後縦隔の異常陰影を認め,第1胸椎交感神経節由来の神経節腫であった.切除後8年目に頸椎C3~7レベルに硬膜内髄外腫瘍を認め切除,病理診断は神経線維腫であった.さらに術後9年目に左尺骨神経由来の神経線維腫で尺骨神経全切除術を施行した.症例3は31歳女性,突然の右背部痛と呼吸困難をきたし右血胸の診断で緊急手術を施行.第10肋間動静脈の断裂と第10椎間孔から静脈性の出血を認め止血した.
  • 今井 茂, 宮入 健, 渋谷 哲男, 秋丸 琥甫, 内山 喜一郎, 高橋 英毅, 山本 英希, 山本 正生, 渡辺 淳, Tasuku SH ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2676-2681
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    約1カ月間持続する稽留熱を主訴として来院した3歳女児の胸肺部悪性小型円形細胞腫瘍,いわゆるAskin腫瘍の1症例を経験した.胸部単純X線写真,胸部CTにて右第5肋骨を中心に胸壁に浸潤した紡錘状の腫瘤を認めた. Ewing sarcomaやOsteosarcomaを疑い,右第4, 5, 6肋骨部胸壁切除,及び肺S4部分切除術を施行した.摘出標本は80×30×25mmで弾性軟,腫瘍断面は灰白色で肋骨,肺及び胸膜に浸潤を認めた.病理組織ではAskin tumorと診断された.本症例は幼児においては,まれな疾患であると同時に,極めて予後不良な疾患である.早期診断と手術による切除を含めた集学的治療の確立が重要であると考えられた.
  • 藤原 敏典, 河野 和明, 森 文樹, 吉岡 嘉明, 田村 陽一
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2682-2686
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左上縦隔に発生した食道嚢胞の1例を経験したので報告した.
    患者は53歳の女性で胸部X線写真上異常陰影を指摘され精査のため来院した.自覚症状はなく理学的にも異常所見はなかった.造影CT, MRIで左上縦隔の嚢胞と確認された.気管支原性嚢胞の術前診断で手術を施行した.腫瘤は5×6×3cmの単房性嚢胞で食道,気管,気管支との交通はなかった.組織学的には嚢胞壁は線毛円柱上皮および一部重層の扁平上皮よりなり2層の筋層を有しており軟骨はみられなかったため食道嚢胞と診断した.
  • 栗本 典昭, 安沢 紀夫, 伊藤 信昭, 田村 泰三, 松本 信夫, 岡崎 幸紀
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2687-2691
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    文献上本邦20例目である食道胃同時性早期重複癌を経験したので報告する.症例は, 65歳,男性.検診での上部消化管造影にて食道に異常を指摘され,内視鏡にてIm-Ei領域, 0-IIa型のsm癌,また切除標本にて胃M領域IIa型腺腫内癌と診断された.術前には胃病変を悪性と診断できておらず,術中に胃切開し,局所的に切除した.興味深かったこととしては,病理所見にて,食道では広範な異形成の中に扁平上皮癌があり,また胃では異型上皮の中に腺癌があったことである.
  • 都築 尚生, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 岸本 秀雄, 小川 弘俊, 中村 従之, 織田 誠
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2692-2696
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腫瘤形成型胃病変を呈したATLLの1切除例を経験した.症例は54歳の女性, ATLL (Stage IV)で治療中に心窩部痛を主訴に来院した.腹部CT検査で胃体上部小彎側に小児手拳大の腫瘤が認められ,腫瘤を含む胃全摘術を施行した.摘出標本の病理組織学的検索にてMalignant lymphoma, non-Hodgkin, diffuse pleomorphic typeと診断され, ATLLの胃病変と考えられた. 1980年から1991年までの本邦におけるATLLの胃病変の報告例は自験例を含め42例であったが,壁外に巨大腫瘤形成を認める病変の報告例は他になく, ATLLの中でも稀な発育形式を呈した症例と思われたので,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 北村 正次, 荒井 邦佳, 宮下 薫, 金内 一
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2697-2700
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高度な食道浸潤を来した胃悪性リンパ腫を報告した.症例は57歳,女性,心窩部痛を主訴に,胃の精査を受け胃悪性リンパ腫と診断された.食道・胃X線検査では体上部を中心とした腫瘍で中部食道まで浸潤を示した.胸部CT検査では下部食道は著明な肥厚を認めたが,縦隔および旁大動脈のリンパ節の腫大を認めなかった.手術は左開胸腹により胃全摘・脾摘・食道亜全摘を施行し,左側結腸を間置した.腫瘍は18×14cmで食道浸潤は11cmであった.組織はdiffuse lymphoma, mixed typeであった.深達度はse, nは0/72であった.術後16カ月の現在再発をみない.胃悪性リンパ腫は全身性のリンパ腫でなければ,他臓器浸潤があっても,膨張性の発育を示すこと,また癌と異なり,栄養状態も比較的良好に保たれていることより,積極的な合併切除とリンパ節郭清を行うことにより,良好な予後が期待できると考えられた.
  • 中村 正治, 草場 輝雄, 戸塚 茂男, 川辺 昌道, 宮本 幸男, Yasuo MORISHITA
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2701-2705
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Vater乳頭部に近接した十二指腸脂肪腫の1手術例を経験したので,本邦報告例を含めて報告した.
    症例は75歳の男性で,上部消化管内視鏡検査で,十二指腸下行脚に粘膜下腫瘍を偶然に発見された. Vater乳頭部に極めて近接していたために開腹下に腫瘍を摘出した.摘出標本は1.0×1.0×0.8cm大で,病理組織学的に十二指腸粘膜下の良性脂肪腫であった.粘膜下腫瘍の治療に内視鏡的ポリペクトミーを行う例が,最近多くみられるが,腫瘍の発生部位,大きさ,形態によっては外科的切除の適応も考慮すべきである.
  • 術前減圧療法と術前診断の重要性
    田口 貴子, 青木 明人, 岡芹 繁夫, 金井 歳雄, 桜井 洋一, 島田 英雄, 才川 義朗
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2706-2710
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近経験した成人型腸重積症の3例はいずれも小腸悪性腫瘍(空腸腺癌,回腸平滑筋肉腫,回腸悪性リンパ腫)に起因していた.いずれも開腹の既往のない腸閉塞症で発症しており,腸管内減圧後に施行した小腸造影や血管造影などにより腸重積症と診断しえた.減圧チューブより施行した重積部の口側の造影では先細りの所見(pencil tip appearance)が得られ,腸重積症に特徴的な所見と思われた.また,上腸間膜動脈の造影は重積の診断に大変有用であったが,腫瘍の存在診断やその質的診断には至らなかった.成人型腸重積症はその多くに原因となる器質的疾患を伴うが術前診断は困難で緊急手術となる場合も多い.今回の経験にて腸重積症の多くは減圧療法が有効で待機的手術が可能であることが明らかとなった.原疾患が悪性腫瘍である場合も少なくないことを考慮すれば,適切な手術方針をたてるために術前診断が可能となる意義は大きいものと思われた.
  • 渡辺 俊治, 鬼木 寛二, 明田 憲昌
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2711-2714
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷による上腸間膜静脈損傷の1症例を経験した.症例は29歳男性,作業中に木材で上腹部を打撲した.来院時血圧は110/68mmHg,脈拍は78/分,上腹部に擦過傷と軽い腹膜刺激症状を認めた.開腹時腹腔内には約700mlの血液が貯留していた.トライツ靱帯より30cmの空腸に穿孔がみられ,さらにそれより70cm肛門側の空腸から回腸末端迄の小腸が鬱血のため暗赤色に変色していた.上腸間膜静脈は第1空腸静脈の分岐直後で完全に断裂し,両断端は血栓で閉塞止血していた.全身状態が安定していたので,大伏在静脈を用いて血行再建術を行ったが,再建静脈は早期に閉塞した.一過性にGOT, LDH, CPKが著明に上昇したが小腸の梗塞壊死は生じなかった.しかし後遺症として術後9カ月の現在も慢性の下痢と栄養障害が継続している.
  • 丸田 福門, 石曽根 新八, 百瀬 芳隆, 寺田 克, 北原 修一郎, 有賀 浩子, 島田 良, 幕内 雅敏
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2715-2719
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虫垂切除術後に発生した腸管皮膚瘻を契機に診断されたCrohn病の症例を経験したので報告する.症例は14歳女児.約1カ月間の下腹部痛の後,急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を受け,その5カ月後に創部皮膚から盲腸に続く難治性瘻孔が形成された.臨床経過及び注腸造影像,小腸追跡造影像からCrohn病と診断し回盲部切除術を施行した.切除標本の病理学的所見はCrohn病に合致した.虫垂切除術時には回盲部の炎症所見はなかったことから,虫垂に原発したCrohn病が回盲部に波及したと考えられた.
    本邦でもCrohn病の増加に伴い自験例のような症例は増加すると考えられる.非典型的な急性虫垂炎では虫垂原発のCrohn病も考慮する必要があると考えられた.
  • 勝又 健次, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, Tatsuyo AOKI, 谷 千秋, 中島 厚, 加藤 孝一郎, 永楽 仁, 大野 正臣, 久 ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2720-2724
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性. 22歳時に全結腸型潰瘍性大腸炎と診断され,結腸全摘,回腸直腸吻合術を行い外来において経過観察をしていた.今回血便を主訴に来院し,大腸内視鏡検査で肛門管から下部直腸に隆起性病変を認め,生検で高分化型腺癌と診断された.結腸全摘後の残存直腸癌と診断し,腹会陰式直腸切断術,小腸瘻造設術を施行した.潰瘍性大腸炎は発癌のHigh risk groupとされており,特に回腸直腸吻合術後の残存直腸に発生する癌が欧米では問題となっているが本邦でも自験例を含め3例目で,今後同手術を施行された症例のsurveillanceが必要と示唆された.
  • 栗本 典昭, 安沢 紀夫, 伊藤 信昭, 田村 泰三, 松本 信夫
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2725-2728
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸内走査超音波検査が深達度診断に有用であった,深達度mのIIa+IIc型直腸早期癌の1例を経験したので報告する.症例は, 78歳,女性.主訴は血便であり,受診より約6カ月前より,排便後少量の出血が続いていた.直腸指診,注腸検査,大腸内視鏡検査にて,肛門縁から5cmに2/5周を占めるIIa+IIc型の隆起性病変を認めた.直腸内走査超音波検査では,低エコー域を示す腫瘍は第1層に限局し第2層は温存され, m癌を強く疑った.全身麻酔下に,低位前方切除し, n0であるm癌であった.
  • 西 八嗣, 大島 行彦, 清水 正夫, 宮内 邦浩, 森瀬 昌樹, 中村 秀夫, 藤原 睦憲, 岡田 収司, 大部 誠, 加山 英夫
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2729-2734
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    43歳男性で便秘腹満感を主訴として,腹部超音波検査,注腸造影,大腸内視鏡, CT, MRI,血管造影にてS状結腸間膜原発の肉腫等の悪性疾患を疑い, S状結腸切除を行った.切除標本では, S状部のびまん浸潤型の腫瘍で,病理組織学的にはS状結腸原発の扁平上皮癌と診断された.結腸癌の中でも,扁平上皮癌は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 誠, 佐々木 一晃, 筒井 完, 中野 昌志, 阿部 俊英, 平田 公一, 成松 英明, 石山 勇司
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2735-2738
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌において,原発性びまん浸潤型癌は稀な型であり,現在までに本邦で報告されているのは100余名に過ぎない.また,このうち組織学的にスキルスでない症例が半数を占めている.最近,組織学的にも著しい線維化を認めた直腸原発性びまん浸潤型大腸癌症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は68歳,女性.約2カ月間下血,肛門痛を認め当科入院となる.入院時の腫瘍マーカー値は高値で,注腸バリウム, MRI検査にて子宮,膣に浸潤した直腸原発性びまん浸潤型大腸癌の診断のもと,後方骨盤内臓全摘術を施行した.傍大動脈リンパ節に転移を認め非治癒切除であった.術後,肛門痛などの症状は消失し良好な経過を示したが,術後2カ月目頃から腰痛,腹痛,腹水が発生した.腫瘍マーカー値も著明な上昇を示し,癌性腹膜炎,悪液質にて術後6カ月で癌死した.
  • 三品 佳也, 大塚 光二郎, 川合 正行, 天野 謙, 蜂谷 仁, 三岡 博, 小山 芳雄
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2739-2743
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的まれな直腸肛門部悪性黒色腫の1例を経験したので報告する.症例:患者は43歳,男性で肛門出血,腫瘤脱出を主訴に来院した.術前生検にて悪性黒色腫と診断し,腹会陰式直腸切断術, R3リンパ節郭清を施行した.そけいリンパ節郭清は施行しなかった.切除標本肉眼所見では歯状線上に灰褐色,一部黒褐色の有茎性腫瘤を認めた.病理組織学的所見では腫瘍細胞の胞体内にしぱしぱメラニン顆粒を認めたが,大部分はamelanoticであった.深達度はsm, ly0, V0であったが,固有筋層外側に接した壁在リンパ節に転移を認めた.免疫組織化学染色ではメラニン顆粒を含む腫瘍細胞とamelanoticな腫瘍細胞共にS-100蛋白陽性であった.考察および結語:直腸肛門部の隆起性腫瘍を認めた場合は悪性黒色腫の存在を念頭におくべきである.診断にS-100蛋白陽性像を証明することがきわめて有用であった.
  • 藤原 郁也, 内藤 和世, 中路 啓介, 牧野 弘之, 戸田 省吾, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2744-2747
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管領域に限局した異時性3重複癌に対し,いずれも切除し得た症例を経験したので報告する.症例は73歳,男性. 64歳時,直腸癌(高分化型腺癌)にて直腸切断術を施行した. 68歳時,胃癌(中分化型管状腺癌)にて幽門側胃亜全摘を施行した.さらに73歳時,食道癌(扁平上皮癌)にて胸部食道,残胃全摘を施行した.
    近年重複癌の増加が指摘されているが, 3重複癌は比較的稀である.食道を含む3重複以上癌が臨床的に診断されたものは,われわれが検索し得た範囲では45例あり,食道,胃,直腸の組合せは5例のみであった.
    癌手術後の経過観察にあたり,他臓器癌発生にも十分配慮する必要があると思われた.
  • 戸田 宏一, 宗田 滋夫, 吉川 幸伸, 籾山 卓哉, 倉谷 徹, 山邊 和生
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2748-2752
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは極めて稀な肝右葉低形成の1例を経験したので報告する.症例は65歳の男性で,発熱,黄疸,腹痛を主訴に入院.腹部超音波検査, ERCPにて総胆管結石症と診断され,またCTにて肝右葉低形成が疑われた.以上の診断にて総胆管載石術,総胆管T-tubeドレナージ術施行した.肝右葉低形成は肝右葉萎縮と鑑別を要するが,本症例では手術所見,肝組織所見,術中T-tube造影所見,術後血管造影所見より肝右葉低形成と診断された.現在術後6カ月になるが術後経過良好である.肝右葉低形成は現在までに11例報告されているが,いずれも胆嚢の位置異常を合併していた.本症例においても胆嚢はやや高位にあり同様の先天異常が示唆させられた.
  • 中島 公博, 加藤 紘之, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 田辺 達三
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2753-2756
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性で, 1年前に胃粘膜下腫瘍に対し幽門側胃切除術を施行され,病理にて平滑筋肉腫の診断で,その後経過観察をしていた.最近になり腹部エコーにて肝右後区域に66×59mmの嚢胞状の肝内腫瘤を指摘された.肝単純CTでは腫瘤は嚢胞状を呈し,嚢胞壁は肥厚しており,造影CTでは壁が濃染していた.嚢胞壁の生検を行い平滑筋肉腫の肝転移との診断を受け,肝右葉切除,右尾状葉切除を行った.術後経過は良好であり,術後24日目に退院した.
    消化管原発平滑筋肉腫の肝転移は融解壊死傾向が強く,嚢胞状を呈し,また多発性で,散在性の発育形式をとるために手術不能例が多い.腫瘍壁には腫瘍血管の増生が多いことを利用し,動脈塞栓術が有効であったとする報告もなされている.しかし,肝転移は患者の予後を決定する因子であるために積極的な肝切除術が望ましいと考えられた.
  • 中野 秀麿, 大岩 靖典, 下川 邦泰
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2757-2762
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    58歳の男性が下痢と心窩部痛を訴えて来院した.末梢血検査で白血球が13, 400/mm3と増加していた.点滴静注胆道造影,腹部エコー,腹部CTより胆石症と診断した.胆嚢摘除術後に術中胆道造影を行い,総胆管の壁不整がみられたために総胆管切開したところ, 4×10mmの黒褐色の扁平な小結石様物質が28個流出してきた.手術は総胆管十二指腸側側吻合術を行った.胆嚢内には0.7×1×1cmの結石が1個と4×10mmの小結石様物質が6個あった.術後に,小結石様物質は肝吸虫と同定され,検便(MGL法)で肝吸虫の虫卵が認められた.術後17日目より吸虫駆除剤(Biltricide 41.4mg/kg/日)を内服させ,良好に経過して術後42日目に退院した.術後に患者の食生活について詳細に調査したところ,鯉の刺身(洗い)を年に数回食べていたことがわかった.
    日本人は刺身を食べることが頗る多く,胆道系疾患が疑われる場合には,肝吸虫症の存在も念頭において精査しなくてはならない.
  • 武藤 功, 音羽 剛
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2763-2766
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性で上腹部痛を主訴に前医受診した際, CA19-9の異常高値を指摘され精査の目的で当院へ紹介され入院した.入院時CA19-9は5,800U/mlと著増を示し, USにて胆嚢結石が認められ,腹部血管像では胆嚢動脈の圧排伸展像が認められた. ERCでは胆嚢は造影されず, PTCCでは結石による陰影欠損の他胆嚢壁の肥厚が示唆され,胆嚢癌の合併が疑われ手術施行した.胆嚢頸部にコ系石の嵌頓を認め体部にも11コの結石が認められた.胆嚢壁は肥厚していた.組織学的には悪性所見は認めず,慢性胆嚢炎と診断された.胆嚢の炎症は肝臓にまで波及していた.良性胆道疾患においてもCA19-9の軽度上昇はしばしば経験するが,このような異常高値を示す事はまれであり,多少の文献的考察を加え報告する.
  • 大谷 哲士, 松木 久, 川合 千尋
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2767-2770
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性.上腹部痛にて発症し,肝機能異常を呈していたため, ERCPが施行され,総肝管に全周性の狭窄を,また,左右の肝管内に多数の結石を認めた.そのため,上部胆管癌の診断にて開腹したが,同部に腫瘍は存在せず,胆道内視鏡にて総肝管に中心部に小孔を有する膜様の隔壁を認めた.術前に認めた狭窄は隔壁によるものと診断し,隔壁を切除したところ結石が排出され,遺残結石がないことを確認後T-tubeを挿入し手術を終了した.隔壁の組織像は線維芽細胞,膠原線維からなる軟部組織で悪性所見は認められなかった.術後経過は良好で,黄疸や結石の再形成等は認めていない.肝外胆管に隔壁を認める症例は希であり本邦では現在まで35例が報告されているのみである.本邦報告例につき文献的考察を加え報告する.
  • 近松 英二, 矢野 孝, 池澤 輝男, 桜井 恒久, 近藤 哲, 二村 雄次, 脇田 彬
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2771-2775
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    極めて稀な肝鎌状間膜膿瘍を経験したので報告する.症例は48歳男性で,右季肋部痛を主訴に入院した.腹部超音波検査およびCTで胆石,膵頭部の腫大,上腹部正中で腹壁に接し門脈臍部付近から臍まで到る腫瘤を認め,また腹部血管造影で脾動脈瘤を認めた.これらより胆石胆嚢炎,膵炎,肝鎌状間膜膿瘍,脾動脈瘤と診断し,手術を施行した.開腹すると,肝鎌状間膜膿瘍を認めた.上縁は門脈臍部付近で切離し,切除した.次いで脾動脈瘤を露出し,瘤を含めて脾動脈を切除した.脾動脈の再建は施行しなかったが,脾の色調に変化を認めなかった.膵は全体にやや硬く,周囲組織と軽度に癒着していたが,仮性嚢胞の形成はみられず,また肝十二指腸間膜,肝鎌状間膜への炎症の波及は認めなかった.最後に胆嚢を摘出し手術を終了した.切除した膿瘍内には緑茶色の膿汁を認め, coagulasenegative-Staphylococcusが検出された.成因は胆嚢炎からの炎症の波及と推察された.
  • 小池 淳一, 安士 達夫, 山下 茂一, 辻田 和紀, 永澤 康滋, 大谷 忠久, 小林 一雄, 柳田 謙蔵, 吉雄 敏文, 野中 博子, ...
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2776-2780
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆嚢管原発カルチノイドの1例を経験したので,本邦報告21例の検討と共に若干の考察を加えて報告する.症例は70歳,女性.主訴は2カ月前よりの心窩部~右季肋部痛. US, DIC, CT, ERCPの結果, confluence stoneを疑い手術を施行した.術中三管合流部に母指頭大の硬い腫瘤を触知し,胆嚢と共に同腫瘤を摘出,術中病理検査にて未分化癌と診断されたため,総胆管切除,肝床部切除,総肝管空腸Roux-Y吻合再建を行った.術後病理学的検索にてGrimelius染色陽性,電顕にて黒色均一顆粒を認め胆嚢管原発カルチノイドであることが判明した. flow cytometryではdiploid patternを示した.術後血漿セロトニン,尿中5-HIAAは正常範囲内であったが,術後14カ月を経て多発肝転移を認め, CDDP等の化学療法を行っている.
  • 大野 徹, 本田 雅之, 阪本 俊彦, 坂田 雅宏, 有川 俊治, 山下 義信, 麻田 栄, 鹿岳 徹也
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2781-2784
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    上腹部痛を主訴とする17歳女性の膵solid and cystic tumorの1例を経験した. US, CT, MRIで膵体部に比較的均一でhypovascularな腫瘍がみつかり,膵体尾部切除・脾合併切除術を施行した.組織学的検討で, Grimelius染色陰性, α1-antitrypsin陽性, neuron-specific enolase陽性で,浸潤などの悪性所見は見られなかった.腫瘍組織のホルモン的検索では, estrogen receptorおよびprogesteron receptor共に陰性であった.この症例につき文献的考察を加えて報告する.
  • 矢埜 正実, 石井 良知, 中村 義人, 和気 典雄, 畑中 義美, 澤田 孝峰
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2785-2789
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    四肢の静脈血栓による血行障害から壊疽にいたるVenous gangreneは稀な疾患である.その前段階であるPhlegmasia cerulea dolensを含めても,報告は少なく,またそのほとんどが下肢に関するものである.些細な外傷(手背の打撲)後,手・前腕がVenous gangreneに陥り,ショック状態を呈した56歳の極めて珍しい症例を経験した.受傷36時間後には手背の皮静脈に血栓が形成されチアノーゼを呈し,表皮は剥離し,あたかも熱傷のように血漿成分が漏出した.ショックは経時的に進行し,乏尿になった.全身状態がわるいので血管造影は侵襲の少ないIVDSAを用いた.手の血行が無いことを確認後,上腕で切断した.手術後は急性腎不全,呼吸不全, DIC等の多臓器不全に陥ったが幸いにも救命できた.
  • 向田 尊洋, 近藤 潤次, 野上 厚志, 池田 光則, 原 史人, 中嶋 健博
    1992 年 53 巻 11 号 p. 2790-2793
    発行日: 1992/11/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    糖尿病を合併した足底難治性潰瘍に非クロストリジウム性ガス壊疽(non-clostridial gas gangrene, NCGG)発生をみた1症例を報告する.症例は63歳女性.糖尿病に右第I趾の難治性潰瘍が合併したため入院.入院後,右足腫脹,足底皮膚黒色化,悪臭を伴った膿排出,圧迫による捻髪音, XPのガス像を認め, NCGGと診断.抗生剤投与,皮膚乱切など保存的治療をしていたが, CTでガス像の拡大を認めたため右下腿切断術を施行. NCGGは糖尿病などの基礎疾患に合併することが多い.本症例も糖尿病のコントロールが不十分であり,右第I趾の潰瘍が感染源となりNCGGが発症したと考えられた. NCGGは病態進行が比較的緩徐で治療時期を逸しやすく,予後不良となることがあるため,早期に膿のグラム染色による起炎菌の推定を行い, NCGGとCGG (clostridial gas gangrene)を鑑別することが肝要である.保存的療法で治癒傾向が認められない場合は,患肢切断を躊躇すべきではない.
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