日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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53 巻, 12 号
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  • 杉町 圭蔵, 戸部 隆吉, 高崎 健, 李 光春, 橋倉 泰彦, 中村 達, 鳥井 彰人, 松股 孝, 横井 一, 高山 忠利
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2811-2829
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 中島 公博, 加藤 紘之, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 田辺 達三
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2830-2834
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当科では術後創感染,腹腔内感染予防のため術中抗生剤の点滴静注ならびに創洗浄などの感染対策を行っており,その予防効果について検討した. 1989年1月から1991年1月までに施行した準無菌手術180例のうち術中抗生剤投与例は84例,非投与例は96例であり,術後創感染,腹腔内感染の有無について検討した.縫合不全合併例を除外した術後創感染は投与群において3例(3.6%),非投与群において5例(5.2%)であった.また腹腔内感染は投与群で7例(8.3%),非投与群で10例(11.1%)であり,創,腹腔内感染ともに有意差は認められないものの投与群で低率であった.また手術操作終了後の細菌学的検査陽性率と術後の感染症発生とは無関係であった.
    以上から,術中抗生剤は術後感染予防に有効であるが限界があり,生体側因子,細菌側因子など他の要因の占める割合が大きいと考えられた.
  • 杉野 公則, 呉 吉煥, 鈴木 章, 岩崎 博幸, 吉川 貴己, 富山 泉, 松本 昭彦
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2835-2837
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    局所進行性の甲状腺分化癌に対する治療方針については一定の見解が得られていない.当教室で手術を施行した局所進行性甲状腺分化癌症例について,長期治療成績と問題点につき検討した.対象は1965年から1989年までの間に当教室において他臓器合併切除を施行した局所進行性甲状腺分化癌28例である.死亡した症例は13例に認められ,原病死10例で他病死3例であった.原病死例の死因は局所病変6例(46.2%),遠隔転移例4例(30.8%)であった. Kaplan-Meier法により求めた5年, 10年, 15年生存率はそれぞれ60.5%, 38.4%, 38.4%であった.この成績は甲状腺分化癌の悪性度を考慮すると満足のいくものでないが,術後早期に死亡した症例は未分化癌に転化した可能性が十分にあり,術後の化学療法や放射線外照射等の補助療法を加える必要があると考えられた.
  • 数量化II類を用いて
    梅田 朋子, 上田 泰章, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 土屋 邦之, 川合 寛治, 荻野 敦弘, 伊志嶺 智子, 小玉 正智
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2838-2843
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌の超音波エコー所見を解析し,客観的な数値として表すことによって,さらにその診断能を向上させる目的で,カイ二乗検定,数量化II類を用いて検討した.平成2年7月から平成3年2月までに行った乳腺エコー250例のうち組織診のついた90例を対象とした.まず,乳癌と他疾患の鑑別をカイ二乗検定を用いて行った.その結果,乳癌と良性腫瘍では辺縁,境界,後方エコーの所見において,各々p<0.01の有意差を認めた.次に,所見項目毎に項目数を決定し,数量化II類に当てはめて解析した.その結果,境界が不規則帯状(0.72802),後方エコー減弱(0.54778)といった項目はCategory scoreが共に大きく,非常に悪性項目であると判明した.さらに,得られたCategory scoreの有用性を確めるために,その後新たに乳癌と診断された34例の所見に当てはめて計算した結果,正診率は85%であった.以上より,算出したCategory scoreは診断能の向上に有用であると考えた.
  • 門口 幸彦, 杉山 貢
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2844-2849
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管ホルモンの分泌動態に対する迷走神経の関与を明らかにするために以下の臨床的研究を行った.迷走神経切離前後の消化性潰瘍患者にインシュリン低血糖による迷走神経刺激を行い,血中のガストリン・セクレチン濃度の変化を観察した.同時に胃液を採取し胃酸分泌量を測定した.手術前においてはインシュリン低血糖刺激により血中ガストリン濃度は上昇した.選択的近位迷走神経切離術(SPV)後でもインシュリン低血糖刺激により血中ガストリン濃度は上昇した.一方全幹迷走神経切離術(TV)後ではインシュリン低血糖刺激により血中ガストリン濃度は変化しなかった.血中セクレチン濃度は迷走神経切離前後ともにインシュリン低血糖刺激に反応しなかった.胃酸分泌はSPV術後, TV術後ともに同程度に低下した.以上よりSPVはTVに比べて減酸効果が劣らないのみならず術後の消化管ホルモン動態,消化機能の温存の点からより優れた術式と思われる.
  • 土井 誠章, 宮地 和人, 野崎 泰宏, 橋本 龍二, 東 宗徳, 難波 美津雄, 池口 祥一, 信田 重光
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2850-2857
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1974年8月より1990年12月までに獨協医科大学第1外科で行った胃十二指腸潰瘍手術は,胃潰瘍115例,十二指腸潰瘍97例,胃十二指腸併存潰瘍23例,吻合部潰瘍3例であった.このうち穿孔により手術を行ったのは胃潰瘍8例,十二指腸潰瘍37例,胃十二指腸併存潰瘍3例であり,穿孔率はそれぞれ7.0%, 38.1%, 13.0%であった.なお胃十二指腸潰瘍併存例の穿孔は,すべて十二指腸潰瘍穿孔であったため,以後十二指腸潰瘍穿孔として検討を行った.胃潰瘍穿孔例と十二指腸潰瘍穿孔例の比率は1:5で,十二指腸潰瘍穿孔例が大半を占めた.性別では1:6で男性に多く,胃潰瘍穿孔例に比較し十二指腸潰瘍穿孔例は若年男性に多かった. Free airの出現率はそれぞれ75.0%, 97.5%であった.突発性上腹部痛は,それぞれ50.0%, 87.5%に認めた.また胃潰瘍穿孔例62.5%,十二指腸潰瘍穿孔例47.5%に潰瘍の既往を認めた.また死亡率は4例(8.3%)であった.
  • 青木 輝浩, 木下 平, 笹子 三津留, 丸山 圭一
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2858-2863
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    広範な転移,浸潤を伴う胃癌は,過凝固状態にあり, disseminated intravascular coagulation (DIC)準備状態である.そこで術前のfibrinogen degenerative product (FDP)値に着目し,骨,骨髄転移に対する検索を行った. 1984~88年に入院した進行胃癌症例641例にFDPの測定を行った. FDP≧20μg/mlの11例に骨シンチまたは骨髄穿刺を行い, 4例(36.4%)に骨あるいは骨髄転移を証明し,手術を回避したが, 4回とも早期に顕性のDICに移行した.
    また, FDP高値例はBorrmann 3, 4型の浸潤型が多く,深達度が深く,腫瘍最大径も大きく,リンパ節転移も広範で, Stageの進行した例が多く,組織型では分化度の低い傾向が見られた. FDP値別の累積5年生存率は, FDP<10μg/ml群47%, 10μg/ml≦FDP<20μg/ml群11%で, 20μg/ml≦FDP群では5年生存例はなかった. FDP値は胃癌の進行度を反映する重要な予後因子であり,胃癌骨,骨髄転移の簡便なスクリーニング検査として重要であると考えられた.
  • 谷 和行, 野口 芳一, 円谷 彰, 牧野 達郎, 福沢 邦康, 野村 勝俊, 山本 裕司, 今田 敏夫, 天野 富薫, 松本 昭彦
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2864-2868
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    70歳以上の高齢者胃癌手術例107例における問題点を術後合併症および生存率から検討した.術後合併症は,縫合不全,肺合併症の頻度が高く,これらの約半数は,これが原因で死亡した.術前の諸検査所見および主要術前合併症,年齢, Stage,術式と術後合併症の発症との間には,有意な関連は認められなかった.また術後合併症の有無は術後生存率に有意な影響を与えなかった.合併症による死亡例は7例(7%)で,全例がStage IVであった. Stage IV症例では,術後合併症の有無で術直後の生存率に一時的に有意差が生じたが,この差はStage IVの進行度による早期再発死亡の影響で,術後4カ月以降では消失した.以上の結果より,高齢者胃癌手術例においては通常施行される術前検査所見から術後合併症を予測することは困難であり,その発症は特にStage IV症例で合併症死亡と関連があった.従って高齢者Stage IV胃癌の治療にあたっては,合併症予防により細心の注意が必要である.
  • 小山 裕文, 小玉 雅志, 曽根 純之, 作左部 大, 荒川 明, 千田 禎佐緒, 佐々木 範明, 小山 研二
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2869-2872
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1976年から1987年までの12年間に教室で経験した切除不能胃癌は78例(7.3%),平均生在期間は5.6カ月であった.累積生存曲線で傾きの変わる8カ月を境として長期生存群(13例)と早期死亡群(65例)の2群に分け,その背景因子を比較検討した.両群間に差の認められた因子は,切除不能となった因子数,組織型であった.切除不能因子では,早期死亡群では2因子以上の複数の因子が関与し,特にS, P, N因子の複合が多かった.組織型では,長期生存群で分化型腺癌が多く,早期死亡群では低分化型腺癌が多かった.一方,胃空腸吻合術などの姑息手術やMMC, 5-FUを主体とする従来の化学療法は予後に関与せず,切除不能胃癌の予後規定因子に有効に作用する新しい化学療法により,予後の改善を計るべきと考えられた.
  • 佐藤 元通, 渡部 祐司, 大越 輝紀, 島瀬 公一, 藤石 秀三, 小野 仁志, 竹増 公明, 木村 茂
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2873-2878
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    80歳以上の高齢者の消化器手術151例の手術成績を検討した.待機手術102例,緊急手術49例で検討すると,救命効果はそれぞれ5例, 25例, Quality of life (QOL)改善効果は58例, 33例で得られたが, 7例, 13例が術後死亡した.良性疾患71例中41例は緊急手術を要し,重症例が多かった.悪性疾患のうち治癒切除し得た症例のQOLがより改善された.術後死亡20例の死因は原病死8例(癌死4例,術前よりのMOF 4例),手術死6例(縫合不全4例,膵炎1例,肝不全1例),他病死6例(心血管疾患2例,肺合併症2例,脳梗塞1例,不明1例)と他病死の割合が高かった.高齢者消化器手術はリスクがあるが,周術期を乗り越えれば60%の症例でQOLが改善される事より,高齢者に対してもタイミングを逸することなく,適切な手術を行うべきである.
  • 柚木 靖弘, 小谷 穣治, 湯村 正仁, 山下 裕, 椎木 滋雄, 佐々木 寛
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2879-2883
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当院で経験した小腸穿孔症例26例を対象とした.穿孔の原因には,腹部外傷と異物が多かった.平均は47.6歳で,男女比は19:7であった.初診時全例が腹痛を訴え,ショック症状を呈したものは5例であった. 70%の症例では発熱を認めなかった.平均白血球数は14,400/mm3で, 80%の症例で増加していた.レントゲン的に腹腔内遊離ガス像は17%に認めたが,術前に異物は指摘できなかった.汎発性腹膜炎の術前診断で開腹に至ることが最も多く,術前に小腸穿孔と診断し得たのは3例のみで全て腹部外傷によるものであった.術式として穿孔部単純縫合閉鎖術と穿孔部腸管部分切除術がほぼ同数に行なわれた.術後合併症は42%にみられ,術死は術翌日にエンドトキシンショックで死亡した1例のみであった.小腸穿孔は,術前に診断することが極めて困難であるが,原因疾患の探求に時間を費やすことなく早期に手術を行うことが大切と考えられた.
  • 奥山 和明, 粟野 友太, 松原 宏昌, 唐司 則之, 小出 義雄, 佐野 友昭, 中市 人史, 舟波 裕, 松下 一之, 落合 武徳, 磯 ...
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2884-2891
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    進行および再発大腸癌に対する骨盤内臓全摘術(TPE)の適応と限界を検討した.対象は1959~1992. 5まで切除された原発大腸癌Si, Ai 113例と骨盤内再発33例である.原発癌11例と再発癌10例合わせた21例にTPEを施行した.原発癌Si, Ai 113例のsi, aiの割合は全例で55.8%と低率であるが,骨盤内臓器の子宮,腟,尿管では75%以上と高率である. si, aiで骨盤内臓器合併切除例の5年生存率は57.9% (TPE例: 59.5%, non TPE例: 56.6%)であり,非合併例の10.6%に比較して有意に予後良好である.
    従って術前のdynamic CT, MRIでSi, Aiと診断し,腹膜・臓器転移がなく, N2までならew不足を考慮して, TPE (含S2仙骨以下切除)の手術適応ありと判断している.
  • 神野 正博, 月岡 雄治, 黒阪 慶幸, 高野 靖, 山口 明夫, 米村 豊, 三輪 晃一, 宮崎 逸夫
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2892-2897
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    直腸癌治癒切除後2年以上の経過観察が可能であった159例を対象として,局所再発例の予後,危険因子の検討を非再発例,血行性再発例と比較し,検討した.これより,直腸癌治癒切除後の局所再発は11例(6.9%)に認め,その5年生存率は10.9%と不良であった.局所再発の危険因子として臨床病理学的因子では浸潤型腫瘍形態,リンパ管侵襲陽性およびDNA aneuploid patternがあげられた.手術術式においては直腸切断の有無, awの距離に関係なく,リンパ節郭清の程度と相関していた.一方,血行性再発は24例(15.1%)に認め,その危険因子として,深達度,リンパ節転移,リンパ管侵襲および進行度があげられ,手術術式とは相関していなかった.
    したがって,血行性再発の予防には化学療法,放射線療法等の集学的治療が,局所再発の予防には手術によるリンパ節郭清の徹底が肝要と思われた.
  • 深田 代造, 田中 千凱, 伊藤 隆夫, 大下 裕夫
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2898-2903
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近10年間に治療した34症例の腹壁瘢痕ヘルニア症例につき検討を行った.症例の性別は,男性9例,女性25例で,平均年齢は男性55.7歳,女性64.1歳であったことから本症は高齢の女性に多い疾患であるといえたが,開腹手術から瘢痕ヘルニア手術までの期間の長い症例においてこの傾向がとくに顕著であった.瘢痕ヘルニアのうち開腹手術後1年以内の早い時期に発生するものは閉腹時の手技的な不備によるところが大きいと考えられ,開腹手術時に本症予防に対する充分な配慮がなされればある程度防止できるものと思われた.一方,開腹手術後10年以上の長期経過後に発生するものは女性の下腹部創に多く,ヘルニア門が小さくて自覚症状も少ないことから放置されていることが多いが,経過中に嵌頓などの合併症をおこして来院する率が高かったので,可及的早期の治療が望ましいものと思われた.
  • 植田 直樹, 冨士原 彰, 馬淵 秀明, 田邊 治之
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2904-2907
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性で左大腿部の腫脹と疼痛を主訴とし他院から転送された.発熱は12日前,跛行も9日前からあり,来院時には呼吸障害も来していた.臨床経過と局所所見から本症を疑い,単純レントゲンとCTを行ったところ皮下と筋層内にガス像が見られたため,左大腿部の壊死筋膜切除を行い創は開放とした.しかし,術後,敗血症性ショック,呼吸不全を認め,術後12時間で新たな膿と筋膜壊死が見られたため下肢切断術を行い救命できた.創部の膿培養ではE. faecalisが分離同定できたが,後に緑膿菌, MRSA,真菌と交代した.軟部組織の炎症性病変が進行性で全身症状を伴った場合にはガス壊疽を疑いレントゲン検査を行うことが重要である.ついでクロストリジウム性か非クロストリジウム性かを鑑別し治療方針を決定する.本症例は外傷の既往がなく糖尿病などの基礎疾患のない患者であり,臨床的に極めて興味深いと考えたので文献的考察を加え報告した.
  • 國本 健太, 杉浦 和朗, 馬場 元毅, 鎌塚 栄一郎, 工藤 千秋, 遠藤 純男, 亀田 典章
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2908-2911
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    特発性髄液耳漏はまれな疾患で,これまでに約40例の報告がある.今回われわれは特発性髄液耳漏の1例を経験したので報告する.
    症例は37歳の男性.反復する化膿性髄膜炎と髄液耳漏のため, 1989年5月,他院耳鼻科にて,左mastoidectomyを受けた.しかし髄液漏の原因は解明できなかった.その後も髄液耳漏が続くため,患者は1990年1月,当科に入院し,左側頭骨開頭が行われた.硬膜欠損が左中頭蓋窩にみられ,これに一致して骨欠損が左鼓室天蓋部に認められた.この骨欠損部には筋膜および脂肪組織を詰め,硬膜欠損部は筋膜を用いて閉鎖した.術後髄液耳漏は完全に消失した.
    反復する化膿性髄膜炎の原因の一つとして,特発性髄液耳漏を考えなければならない.診断には, high resolution CT scanやMRIが非常に有用であった.
  • 阿部 元, 沖野 功次, 迫 裕孝, 糸島 崇博, 小玉 正智, 岡部 英俊
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2912-2916
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Dyshormonogenetic goiterに合併した増殖性甲状腺腫(wuchernde Struma)の1例を報告する.症例は75歳,女性.生下時より甲状腺腫を認め,甲状腺右葉切除術の既往がある.頸部腫瘤の増大と嚥下困難を主訴として来院した.左前頸部に手拳大の腫瘤を触知した.ヨード放出試験よりdyshormonogenetic goiterと診断された.さらに,頸部軟線撮影,超音波, CTによって甲状腺癌の合併を疑い,残存甲状腺全摘術を施行した.摘出腫瘤は15.3×7.6×7.0cm,重量220gの線維性被膜を有する充実性腫瘤で,多数の硬結が存在した.病理組織では,腺腫様甲状腺腫の像を示し,硬結の一部に低分化型濾胞癌の一型である増殖性甲状腺腫を認めた.
    Dyshormonogenetic goiterは甲状腺ホルモンの合成障害によって起こる先天性甲状腺腫で,これに合併した甲状腺癌の報告例は,本例を含めてわずか10例であった.
  • 高見 博, 関根 勝, 公平 裕人, 大塚 美幸, 蓮見 直彦, 花谷 勇治, 浅越 辰男, 小平 進
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2917-2920
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    炭酸リチウム(リチウム)は躁鬱病の治療剤であるが,今回本剤により誘発したと考えられる上皮小体機能亢進症の1手術例を経験したので報告する.症例は54歳,女性で, 1980年より躁鬱病のためリチウムを600~1,200mg投与されていた. 1989年に高Ca血症を指摘され, 1990年1月にリチウムによる上皮小体機能亢進症の疑いで,当科を紹介された.血清Caは13.1mg/dl, iPTHは124pg/mlと共に高値を示し,本症の診断で同年4月9日に手術を施行した.上皮小体の腫大は右下のみで,右下上皮小体腫瘤を摘出した.腫瘤の重量は419mgで,組織学的に腺腫であった.術後1年11カ月目の現在,再発を認めていない.本症の病因として,リチウムによる上皮小体細胞からのPTH放出作用が考えられている.リチウムが本症をinductionさせるのであれば組織学的に腫瘤は過形成,また本症をpromotionさせるのであれば腺腫と考えられ,本症の病態生理の解明は合理的な手術方法の選択のためにも重要である.
  • 片村 宏, 杉山 貢, 渡辺 桂一, 望月 弘彦, 遠藤 格, 簾田 康一郎, 金 正文, 山本 俊郎
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2921-2925
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    56歳,男.急性化膿性胆管炎による敗血症性ショック,急性腎不全で入院した.入院時電解質異常はなかった.術前からCAVHを施行し,第12日に胆嚢摘出術,総胆管切開を施行した.術後も腎不全に対しCAVHを施行したが,第25日頃より血清Ca値が上昇し最高15.2mg/dlとなった.意識レベルは低下し改善しなかった.上皮小体機能亢進症(C-PTH 5.1ng/ml)がありカルチトニン80u/日の投与とwashout therapyを施行し,血清Ca値は低下,意識も改善した.しかしPTHが依然高値で,高Caの症状(不穏状態・筋力低下・口渇・掻痒感)が続いた.副甲状腺腫と診断し,第93病日(術後80日)に腫瘤摘出術を施行した.組織学的にはoxyphil adenomaだった.自験例は透析治療中に腺腫の増生が促進され,明らかとなった原発性上皮小体機能亢進症の1例であった.救急治療の進歩にともない今後腎不全の長期治療例が増すものと思われ,この際副甲状腺機能にも厳重な観察が必要である.
  • 広岡 保明, 西江 浩, 松井 孝夫, 村田 陽子, 浜副 隆一, 貝原 信明, 堀江 靖
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2926-2928
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前の穿刺吸引細胞診で腺癌と診断され,根治手術が施行された最小乳癌の一例を報告した.症例は37歳,女性.左乳房内下方に小指頭大の腫瘤を触知したため当科外来を受診した.視・触診ならびにマンモグラフィー,エコー等の検査では良悪性の鑑別はできず,乳腺腫瘤としか診断されなかったが,穿刺吸引細胞診で腺癌と診断された.手術としては非定型的乳房切断術(Patey法)が施行された.組織学的には乳管内に限局した1.8×1.5mm大の非浸潤性乳管癌であった.穿刺吸引細胞診は最小乳癌に対しても有用な検査法であると考えられた.
  • 岩瀬 克己, 花井 恒一, 川瀬 恭平, 宮川 秀一, 大谷 享, 鵜飼 泰光, 堀口 明彦, 辻村 享, 稲垣 朝子, 早川 真人, 水野 ...
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2929-2933
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は42歳女性.初診時リンパ節転移,多発性骨転移があり, T3aN2M1, stage IV.右定型的乳房切除術後,放射線・化学・内分泌療法を反復したが,発症後19カ月で死亡した.組織学的には,乳頭腺管状配列や紡錘形細胞主体の肉腫様所見など多彩な像を示し,その移行像もあり紡錘形細胞化生を伴った乳頭腺管癌と診断された.免疫染色では,肉腫様部分にVimentinが陽性, Keratinは陰性を示した.紡錘細胞癌(いわゆる癌肉腫)の予後は,通常型乳癌と異ならないとされるが,なお議論がある.そこで,当教室における乳癌手術例65例を対象に肉腫様成分の指標としてのVimentin免疫染色所見と予後との関係を検討した.腫瘍の一部にVimentin染色陽性を呈した例が7例あり,これらはKeratin免疫染色性に乏しく,腫瘍の上皮細胞分化度の低下が示された.またそのうち4例に転移・再発を認め, Vimentin陰性例に比べ予後不良の傾向を示した.
  • 木村 昌弘, 小林 俊三, 岩瀬 弘敬, 福岡 秀樹, 伊藤 由加志, 葛島 達也, 山下 啓子, 岩田 広治, 正岡 昭
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2934-2937
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    13年前に右乳癌根治術を受けた59歳の女性が,下肢の麻痺と排尿障害をきたして来院した.最近,上部胸髄横断麻痺が急速に進み,全く歩行ができなくなっていた.画像診断で,第1胸椎に溶骨性変化が,第2第3胸椎には造骨性変化が認められたが,椎骨の変形や圧迫骨折はなかった.脊髄圧迫の解除のために,椎弓切除と第1胸椎から下垂した硬膜外腫瘍の摘出が行われ,組織学的検査によって乳癌の転移が確認された.
    手術後に照射,化学療法剤,ホルモン製剤による集学的治療を行ったところ,脊髄横断麻痺は完全に回復した.また,症状の改善に平行して血清腫瘍マーカーが正常化したことから,腫瘍退縮が強く示唆され,病勢のモニターに有用であることが確認された.
  • 田中 邦哉, 西山 潔, 小泉 泰裕, 望月 弘彦, 長堀 優, 北川 正明
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2938-2943
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌根治術後8年目に上行結腸へ転移した症例を経験した.患者は55歳の女性で1983年8月11日,左乳癌(T2N1bM0, Stage II)のため定型的乳房切断術を施行した. 1991年7月頃より右下腹部を中心とした鈍痛が出現するようになり, 10月1日イレウスのため緊急開腹術を施行した.術中所見は,上行結腸に径3cmの腫瘤を認め全周性の狭窄を呈していた.
    1983年の乳癌組織像は一部充実腺管癌を含む硬癌で,切除標本の病理組織学的検索の結果,腫瘤の組織形態は乳癌組織像に酷似しており,乳癌の転移巣であると診断された.
    乳癌の消化管転移が患者生存時に発見されることは稀であり,なかでも結腸・直腸への転移報告は現在までに本邦および諸外国を含めて27例のみであった.転移発症時の平均年齢は56歳であり,術後,転移までの期間は平均約7年であった.転移部位では虫垂が最も多く,組織学的には小葉癌が多かった.
  • 山本 満雄, 石崎 雅浩, 竹尾 正彦, 郡 良文, 小野 一広, 水野 裕, 目黒 文朗
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2944-2947
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸骨原発の軟骨肉腫は比較的稀であり,本邦報告例は,われわれの調べ得た限りでは,本症例を含めて15例であった.
    原発性胸骨軟骨肉腫の再発症例に対して胸骨切除後, Marlex meshとPolymethyl-methacrylate (Resin)のサンドイッチ法による補填を行い,ほぼ満足すべき結果が得られたので報告する.症例は, 72歳男性.昭和61年4月に当院整形外科にて胸骨腫瘍摘出術を受けたが,平成2年7月頃より再発のため当科に紹介された.腫瘍は, 7.5×4.0cm大であり,第2肋骨付着部の上で上端を切離し,両側第2, 3, 4, 5, 6肋軟骨を含め胸骨を切除した.多数の小穴をあけたレジン板を作成し,二重にしたMarlex meshにて挟み込み,胸壁欠損部に補填ならびに縫着し,胸壁再建を行った.術後は異物反応もほとんどみられず,順調に経過した.
  • 川人 宏次, 井野 隆史, 安達 秀雄, 井手 博文, 水原 章浩, 山口 敦司
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2948-2952
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.右冠動脈(RCA) #1 100%,左冠動脈(LAD) #7 90%, #9-1 75%,回旋枝(LCX) #14 100%の病変を有する陳旧性心筋梗塞,狭心症に対して3枝バイパスを施行した.右心不全のため人工心肺から離脱不可能となり,静動脈バイパス(VAB)を装着し人工心肺から離脱, 25時間後にVABからも離脱したが術後49日目に敗血症,多臓器不全により死亡した.剖検で腹腔内膿瘍を伴う重症急性膵炎が認められた.開心術後の急性膵炎は一般にまれとされてきたが,補助循環に伴う多臓器不全の一病態として,留意する必要があると考える.
  • 中口 和則, 福田 和弘, 菰池 佳史, 伊沢 光, 南屋 昌彦, 西部 俊三, 岡島 志郎, 畠中 秀雄, 陶 文暁, 赤木 愛彦, 吉原 ...
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2953-2956
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    比較的まれとされる肺のinflammatory pseudotumorの1例を経験した.症例は18歳,男性で検診にて右上肺野に異常陰影を指摘され入院した.本症の診断は術後の組織診によることが多いが,本症例は超音波ガイド下の経皮的肺生検により十分量の組織を得ることにより術前診断が可能であった.
  • 久我 貴之, 金田 好和, 縄田 純彦, 江里 健輔
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2957-2960
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肺動静脈瘻は比較的まれな疾患であるが,近年症例の報告が増加している.症例は54歳男性.胸部異常陰影で当科を受診した. CT, MRIおよび血管造影検査により単発性肺動静脈瘻と診断し手術を行った.瘻摘除術を試みたが,瘻が大きく瘻のみの完全摘除は不可能と判断し,左下葉切除術を追加した.経過良好で術後32日目に軽快退院した.
    本疾患には以前では肺葉および肺区域切除術が広く行われていたが,近年肺機能を可及的に温存する目的で瘻摘除術および瘻孔閉鎖術が普及してきた.しかし,本疾患は良性ではあるが,瘻の再発および残存を回避すべきであり,症例により術前検査および術中所見の判断で肺葉および肺区域切除術を施行する必要がある.
  • 龍田 眞行, 山田 晃正, 池田 正孝, 乾 一郎, 西 敏夫, 星 脩, 川崎 高俊, 里見 隆, 坂口 旦和, 矢野 外喜治
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2961-2966
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.慢性腎不全で約10年間家庭透析を施行.定期検診にて胸部異常陰影を指摘され,精査にて左肺癌と診断し,左上葉切除術+縦隔郭清術を施行した(pT2N1M0,大細胞癌).血清K高値のため術後7時間で血液透析を施行した.術中および術後透析中は問題なく経過した.透析中の体外循環路の抗凝固薬にはメシル酸ナファモスタットを用いた.術後経過も極めて良好であった.厳重な術前・術中・術後の管理により,透析患者の肺癌でも手術適応のある患者には積極的に手術をする意義を認めた.
  • 岩田 宏, 片岡 誠, 桑原 義之, 呉山 泰進, 川村 弘之, 三谷 真己, 坂上 充志, 篠田 憲幸, 加島 健利, 佐藤 篤司, 服部 ...
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2967-2970
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは巨大な食道平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は61歳女性で,徐々に増強する嚥下障害と呼吸困難を主訴に来院.精査の結果食道平滑筋肉腫と診断された.全身状態が不良であったため,手術は2期的に行った. 2回目手術後2カ月めにDICからMOFとなり死亡した.剖検にて全身組織の感染を認めたが,起因菌は同定されなかった.また,肉腫の再発・転移も認めなかった.本症例においては3年前より嚥下障害がありながら,呼吸困難を来し初めて近医を受診している.当科入院時すでに胸水貯留・肺機能低下が見られ,これが治療を困難にした.食道の筋原性腫瘍の良悪性の術前診断は極めて困難であるのに対し,今日では開胸手術は比較的安全に行え内視鏡的にも切除術可能な症例が増加しつつあることから,発見後早期に切除を行い組織学的に確定診断をつけ治療方針を決定すべきである.
  • 渡部 誠一郎, 古川 正人, 中田 俊則, 酒井 敦, 草野 敏臣, 林 〓欽, 田代 和則, 大井 明, 山田 雅史, 藤井 秀治
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2971-2975
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道アカラシア合併食道・胆嚢の同時性重複癌の1例を経験した.症例は73歳の男性.約50年間,食物の通過障害があったが放置していたところ,突然の吐血にて来院した.内視鏡,食道造影にて,食道アカラシアに伴う食道癌が発見された.食道癌は, Imに存在する潰瘍型で,アカラシアは, FIII型であった.ただちに食道亜全摘術が行われ,胃管にて再建した.病理組織学的に,癌は,深達度mpの扁平上皮癌で,非癌部の中・下部食道のAuerbach神経叢には正常の神経節細胞は消失していた.術後6カ月目の腹部エコーにて,胆嚢に隆起性病変が認められ, 8カ月目に胆嚢癌の診断にて拡大胆嚢摘出術を行った.病理学的に腺扁平上皮癌であった.
    食道アカラシア合併食道癌の報告は,本邦では自験例が53例目にあたると思われるが,さらに胆嚢癌との重複例は,著者らが検索した限りでは見あたらず,非常に稀な1例であると思われた.
  • 中川 辰郎, 下田 忠和, 大野 直人, 桜井 健司
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2976-2980
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
  • 植木 匡, 須田 武保, 鰐淵 勉, 佐藤 巌, 前田 裕伸, 青柳 豊, 野田 裕
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2981-2985
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前に, alpha-fetoprotein (AFP)が14,656 (ng/ml)と非常に高値を示し,術後肝転移を来したAFP産性胃癌症例に対し生化学的検索を施行したので文献的考察を加え報告する.
    術後AFP値は, 1,057 (ng/ml)に低下し, peroxidase-antiperoxidase (PAP)法にてAFP陽性細胞がみられたことよりAFP産生胃癌と診断した.組織学的に, AFP産生細胞は未分化なhepatoid型を示した部位に多くみられた.さらに,親和性免疫電気泳動による血清AFPのレクチン結合性の検索では, concanavalin-Aに対する非結合性分画が15%と分化型AFP産生胃癌に比して低値を示し肝細胞癌のそれ(5±7%)に近い値であった.
    しかし, AFP値は再上昇し術後4カ月後のCT検査にて肝転移を認めた. AFP産生胃癌の特性より本症例のように血清AFP値が術前に高値を示した場合肝転移に対する予防的治療が必要であると考えられた.
  • 岸川 博隆, 西脇 巨記, 伊藤 和子, 成瀬 博昭, 田中 宏紀, 本多 弓〓
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2986-2989
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    分娩時期に一致して急性腹症を呈し,当初胎盤早剥と診断された胃癌穿孔症例を報告する.患者は28歳,経産婦.妊娠37週にて急性腹症を呈し,翌日誘発分娩した.しかしその後も腹痛は持続し,腹部単純X線写真にてfree airを認めた為開腹術を施行した.胃角部の穿孔及び胃壁全体の腫大を認めた為大網充填術を施行した.術後の胃透視像にて胃体部より前庭部にかけて筒状の狭窄像が進行する為スキルス胃癌を疑い再開腹術を施行したが切除不能であり,患者は初回手術後13カ月で死亡した.
  • 川平 洋一, 中尾 量保, 濱路 政靖, 仲原 正明, 荻野 信夫, 宮崎 知
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2990-2994
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例: 82歳,男性.既往歴: 1979年脳出血発作が起こり,この際,真性多血症を指摘された.現病歴: 1989年,胃部不快感を自覚し,上部消化管透視,内視鏡検査で胃癌と診断され,手術目的で当科入院した.末梢血:ミトブロニトールの投与下に,赤血球数401万/mm3,白血球数6,200/mm3,血小板数66.8万/mm3. 1990年5月15日,胃癌の診断で胃全摘術を施行した.手術所見:硬膜外併用全身麻酔下に開腹すると,腹水なく,胃癌の進行度はP0H0S2N2, stage IIIであった.術後経過:術直後からウリナスタチンを1日量20万単位で開始,また術当日の血小板は73.2万/mm3まで上昇し,活性化凝固時間は46秒に短縮したため,術後2日目から11日目まで活性化凝固時間を150秒前後に保つべく,ヘパリン400~600単位/h持続静注した.ミトブロニトールは経口可能となった術後9日目から再開した.梗塞,出血などの続発症なく,術後20日目に略治退院した.
  • 河本 知二, 田中 聰, 前場 隆志, 山本 眞也, 久米川 啓, 山根 雅彦, 小林 省二, 森 誠治, 岩井 隆行
    1992 年 53 巻 12 号 p. 2995-3000
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者は42歳の女性で,主訴は上腹部腫瘤と腹痛であった. X線検査で胃小彎側の圧排像を認めたが,内視鏡検査では粘膜面の変化はなく,腫瘍マーカーに異常値も認めなかった.超音波, CT, MRI検査上,上腹部に内部構造の不均一な10cm径の腫瘤が存在し,平滑筋肉腫の診断のもとにリンパ節郭清とともに胃全摘術を行った.リンパ節転移はなかったが,組織学的には悪性胃平滑筋芽細胞腫と診断された.術後4カ月目のCTで膵尾部上縁に転移巣と考えられる腫瘤が出現して急速に増大し,術後5カ月目の再開腹によって肝外側区域にも同様の再発巣を認め,膵体尾部・脾合併切除および肝部分切除を施行した.
    本腫瘍は癌腫に比べて悪性度が低く,縮小手術で良いという意見もあるが,胃癌に準じたリンパ節郭清を含んだ術式を選択し,また本症例のような核分裂像が高頻度で悪性度の高いものは何らかの補助化学療法も必要ではないかと考える.
  • 須崎 真, 倉田 稔, 酒井 秀精, 加藤 憲治, 北川 真人
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3001-3004
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性,腹痛を主訴に来院.腹部単純X線撮影で腸閉塞の所見を認めたため,ロングチューブを挿入した.小腸造影で回腸に辺縁の比較的滑らかな7cmの狭窄像を認めた.注腸造影では異常所見を認めず,回腸の病変が単発であることから小腸腫瘍を疑い手術を施行した.開腹すると回腸未端より90cm口側の小腸の漿膜面の一部に乳白色の鶏卵大の腫瘤が認められ,腸間膜に小指頭大の柔らかいリンパ節を数個認め,腫瘤およびリンパ節を含めて約30cmの回腸を切除した.摘出標本では小腸壁は著明に肥厚し,長軸に直角の深い下掘れ潰瘍を認めた.組織学的には潰瘍はU1 IIIで,ラングハンス型巨細胞と乾酪性肉芽腫を認めた.リンパ節にも同様の所見を認め,小腸結核と診断された.本症例の胸部単純X線写真には肺結核を疑わせる所見はなく,ツベルクリン反応も陰性であった.最近の傾向として腸結核症例の胸部単純X線写真では異常を認めない場合が多い.
  • 菅野 正彦, 大森 勝寿, 井坂 晶, 土屋 敦雄
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3005-3007
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    アニサキス幼虫が原因の急性虫垂炎症例を経験した.症例は16歳女性で, 5日前に生寿司を食べ,急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行したところ,アニサキス症と判明した.アニサキス症の臓器別頻度は,胃92.7%,腸4.4%と腸では少ないが,中でも虫垂アニサキス症の本邦報告例はこれまでになく,きわめてまれな症例であると考えられた.
  • 椎木 滋雄, 淵本 定儀, 岩垣 博巳, 日伝 昌夫, 浜田 史洋, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3008-3011
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    教室で経験したCrohn病手術症例6例について検討した.病変部位では小腸型2例,小腸・大腸型2例,大腸型2例(直腸クローン1例を含む)であった.手術理由は狭窄が4例,膿瘍,瘻孔が各1例であった.狭窄は小腸型2例,小腸・大腸型1例,大腸型(直腸) 1例にみられ,膿瘍は小腸・大腸型に,瘻孔は大腸型にみられた.手術術式は全例主病変から10cm前後を切除断端とする小範囲切除を行った.術後再発は1例に認められたが保存的治療で軽快し,再手術例,死亡例はみられなかった.自験例の術後観察期間は1年6カ月~10年と短いが全例就労可能となっている.
    Crohn病に対する手術適応,手術法,予後など外科治療上の問題点について若干の文献的考察を加え報告する.
  • 白井 聡, 五十嵐 達紀, 渡辺 和義, 河野 史尊, 林 朋之, 吉田 勝俊, 羽生 富士夫, 小林 誠一郎
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3012-3016
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期胃癌の治癒切除後2年9カ月を経て孤立性脾臓転移を認め脾摘し得た1例を報告した.
    患者は63歳男性で,発熱と左側腹部痛を主訴に来院し,腹部超音波検査, CT検査,血管造影検査により脾膿瘍および脾腫瘍と診断され脾摘術を施行した.肝転移,リンパ節転移,腹膜播種は認めなかった.摘出標本は脾実質内部に5×4.5cm大の腫瘤を認め,病理組織所見では高分化腺癌であり2年9カ月前切除した早期胃癌病理組織像と酷似しており胃癌の脾臟転移と診断された.
    脾臓転移は末期癌では他に複数の転移巣を伴った状態でみられることがあるが,孤立性脾臓転移は極めてまれであり,特に原発癌が消化器癌で脾摘し得たものは検索し得た限りでは本邦では自験例を含め12例であり,なかでも早期癌は他には報告されていない.
  • 河内 康博, 飯尾 里, 吉村 耕一, 江里 健輔, 西田 健一
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3017-3021
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性で,全身倦怠感,嗄声をきたし,精査目的に入院した.左前頸部に表面平滑,弾性軟の甲状腺腫を触知し,画像診断で良性甲状腺腫と判断した.しかし腹部超音波検査で脾と左腎との間に境界明瞭,不均一な内部エコー像を呈する9×7cmの充実性腫瘤を認めた. CT, MRIでは,境界明瞭,内部はほぽ均一な副腎腫瘍と考えられた.内分泌学的検査では血中DHEA-sulfate,プロゲステロンおよび尿中17-KSが高値を示した.甲状腺腫を合併した症状を欠くステロイド産生副腎皮質腫瘍の診断で左副腎摘出術を施行した.腫瘍の大きさは10×8×7cm,重さは295gで,薄い線維性被膜で覆われていた.割面は褐色,弾性軟の充実性腫瘍で,出血や壊死巣を散在性に認めた.病理組織学的には副腎皮質癌と診断された.
  • 上野 富雄, 内山 哲史, 西原 謙二, 柳生 岳志, 鶴見 征志, 村上 卓夫, 鈴木 敞, 根木 逸郎
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3022-3026
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    化膿性尿膜管嚢胞の腹腔内穿破は稀であり,検索し得た範囲では自験例を含め9例であった.今回その術前超音波検査が有用であった症例を経験したので報告する.症例は41歳男性.初診時,下腹部ほぼ正中に3cm大の有痛性腫瘤を触知するも腹膜刺激症状は認めなかった.腫瘤はCTでは腹腔内か腹壁内かの鑑別が困難であったが,超音波検査では腹直筋直下で腹膜前組織内の尿膜管由来の膿瘍が疑われた.保存的治療で経過観察するも,腹膜刺激症状および熱発発作が現れたため,超音波検査を再度行ったところ,化膿性尿膜管嚢胞の腹腔内穿破による急性腹膜炎が疑われ,緊急手術を施行した.上記診断のごとく化膿性尿膜管嚢胞が腹腔内に穿破しており,尿膜管全摘術を行った.術後は順調に経過し軽快退院した.一般的に化膿性尿膜管嚢胞は抗生剤投与後に一期的に根治手術が施行されることが多いが,この間,超音波を用いて経過観察することは非常に有用であると思われた.
  • 江本 節, 高尾 哲人, 中島 信一, 山口 時雄, 砂田 祥司, 植田 隆司, 藤吉 理夫
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3027-3032
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    縦隔異常陰影で発見された小網嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は52歳,男性.集団検診にて,胸部レ線上,縦隔異常陰影を指摘され,精査目的に当科入院となった. CTおよび血管造影にて小網嚢胞の縦隔内脱出と診断し,開胸,開腹にて手術を施行した.開腹時,小網内に10×6cmの嚢胞を認め,食道裂孔を介して縦隔内に容易に脱出する事を確認した.嚢胞を摘出した後,食道裂孔ヘルニアの発生を予防する目的で, Nissenの胃底部形成術を施行した.病理組織学的には,嚢胞はリンパ管腫であり,悪性の所見は認めなかった.術後経過は良好であった.
  • 藤村 隆, 嶋 裕一, 沢崎 邦広, 巴陵 宣彦, 藤田 秀春, 岡田 英吉
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3033-3037
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    私どもは比較的高齢の女性に発生した腹壁デスモイド腫瘍を経験したので報告する.症例は60歳の女性で右下腹部腫瘤を主訴として来院した.右下腹部に径9×9cmで可動性の乏しい硬い腫瘍が認められた.腹部超音波検査では境界不明瞭で,内部echoが不均一の腫瘤像として描出され,腹部CT検査では周囲の軟部組織よりややhigh densityを示し造影剤で強く増強される腫瘍としてとらえられた.全身麻酔下に手術を施行した.右腹直筋内に境界不明瞭な腫瘍が存在し,腹腔内で大網,横行結腸との間に癒着が認められた.腫瘍より約1cmのsurgical marginを取って切除した.腹壁欠損部はpoly-propylene性mesh (Marlex mesh®)にて再建した.病理組織学的には周囲の筋肉,脂肪を破壊して浸潤性に増殖する線維性組織がみられたが,細胞異型は認められず腹壁デスモイドと診断された.手術後1年8カ月後の現在も再発の徴候なく通院中である.
  • 西村 好晴, 別所 俊哉, 清水 達也
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3038-3041
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    難治性潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症に対し体内埋め込み型動注リザーバーを使用した1例を経験したので報告した.症例は96歳,男性.右第2, 3, 4趾にFontaine IVの潰瘍を認めた.血管造影では膝窩動脈より末梢が閉塞し, run offは不良であった. Lipo PGE1の静注を試みたが改善傾向が認められず,人工血管によるバイパス術も困難と判断し,体内埋め込み型動注リザーバーを留置し, Lipo PGE1の間質的投与を繰り返した.最小限の趾切断術を要したが潰瘍は治癒し,創治癒も良好であった.
  • 古谷 四郎, 大守 規敬, 宇高 徹総, 今井 茂郎, 辻 尚志, 川上 俊爾, 小野 監作, 大塚 康吉, 佐藤 泰雄
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3042-3047
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    真性の大腿深動脈瘤を経験したので本邦報告例の集計を加えて報告する.症例は79歳男性で主訴は左大腿部腫瘤.末梢動脈の閉塞はなかったので瘤切除のみ行い,血行再建は行わなかった.瘤は9.5×7.0×8.0cmの動脈硬化性の真性大腿深動脈瘤であった.術後1年9カ月現在他に動脈瘤の発生を認めていない.
    本邦では現在まで自験例も含め64例が報告されている.平均年齢は68.1歳と高く, 58例が男性であった.両側に発生したのが9例,併存動脈瘤が31動脈22例,破裂が29例に認められた.原因としては動脈硬化が49例ともっとも多かった.治療はカテーテル塞栓が1例に行われ,他は瘤切除か動脈結紮が施行された.またそのうち24例で血行が再建された. 2例が四肢切断に陥ったが他は予後良好である.
  • 綿引 洋一, 馬場 恵, 才川 義朗, 泉 陽太郎, 小原 誠, 小坂 昭夫, 蜂谷 貴
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3048-3052
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左総腸骨静脈に破裂穿破し心不全を呈した孤立性腸骨動脈瘤の1例を経験した.症例は85歳,男性. 2年前に突然心不全を発症し治療中であった.早期胃癌を合併し直腸診及びCTにて動脈瘤が診断された症例である.動脈造影では動静脈瘻(左内腸骨動脈~左総腸骨静脈)を認め,これによる心不全と考えられた.患者の全身状態・年齢・予後等を考慮し,一期的手術を施行した.総腸骨動脈瘤に対しては左総腸骨動脈~左外腸骨動脈間を単管人工血管にて置換,内腸骨動脈瘤は切開して瘻孔を瘤内より縫合閉鎖した.早期胃癌に対しては,幽門側の胃部分切除を施行した.心負荷が消失し心胸郭比(CTR)は著明に減少した.また人工血管への感染もなく術後経過は良好で,本症例に対する一期的手術は非常に有用と考えられた.
  • 鈴木 雅之, 寺田 信國, 石橋 治昭, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1992 年 53 巻 12 号 p. 3053-3056
    発行日: 1992/12/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    会陰部に発生する脂肪肉腫は非常に稀である.症例は72歳男性で会陰部の腫瘤を主訴に来院した.種々の画像診断の結果,傍直腸腫瘤の診断で手術を施行した.病理組織学的には硬化性高分化型脂肪肉腫と診断された.会陰部に発生した脂肪肉腫は,われわれが検索し得た限りでは本邦初であり,諸外国の5例の報告があるのみである.又, 1904年~1988年の本邦報告例について発生部位を検討し,脂肪肉腫に関する文献的考察を加えた.
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