日本臨床外科医学会雑誌
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53 巻, 3 号
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  • 再発見から病型分類まで
    古味 信彦
    1992 年 53 巻 3 号 p. 481-497
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 原 普二夫, 佐々木 信義, 小林 俊三, 山川 洋右, 岩瀬 弘敬, 江口 武史, 正岡 昭
    1992 年 53 巻 3 号 p. 498-503
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    教室にて経験した先天性頸部瘻孔症例53例(甲状舌管嚢胞38例,側頸瘻12例,梨状窩瘻3例)に臨床的検討を加え報告した.性別は,女29例,男24例,手術時年齢は5カ月から70歳, 15歳以下の小児例は34例(64%)であった.
    甲状舌管嚢胞,側頸瘻では小児期発症はそれぞれ30例(79%), 7例(58%)であった.初発症状は,甲状舌管嚢胞では腫瘤,側頸瘻では瘻孔が多かった.感染は甲状舌管嚢胞14例(37%),側頸瘻4例(33%)にみられた.
    3例の梨状窩瘻は難治性の頸部膿瘍,急性化膿性甲状腺炎,縦隔膿瘍にて発症したが,梨状窩瘻との診断が困難な症例もあった.咽頭造影にて瘻管の描出されなかった1例の診断と術中の瘻管の確認に硬性気管支鏡の応用が有用であった.
    先天性頸部瘻孔症例の手術治療における最大の課題は再発防止であり,正確な解剖学的知識に基づいた確実な手術が必要である.
  • 清水 一雄, 吉川 晃, 内山 喜一郎, 井出 道也, 岩瀬 和泉, 渋谷 哲男, 庄司 佑
    1992 年 53 巻 3 号 p. 504-509
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1例の扁平上皮癌を含む23例の正中頸嚢胞にたいしその性別,初診時年齢分布,腫瘤自覚時より手術までの期間,好発部位,術式と術後経過の臨床的検討,切除標本の嚢胞壁および舌骨部の病理組織学的検索,また発生学的見地からの舌骨切除の必要性につき文献的考察を加えつつ検討した.結果として性別に男女差はなく,初診時の年齢は耳鼻科,小児外科では先天性疾患を反映して10歳未満に多かったが一般外科を受診する症例は20歳以上が多くみられた.病悩期間は1年未満に多く,好発部位は舌骨と甲状軟骨との間であった.手術は22例がSistrunk法に準じて施行され1例に再発がみられたが本例には広範囲再切除が行われ以後8年を経過し再発はない.舌骨非切除例で再発はみられなかったが,文献的には舌骨切除例に比し非切除例では再発が多い.病理検索で舌骨に接するように瘻孔が確認されることから舌骨切除の重要性は周知であるが更に舌盲孔に至るまで可及的に周囲組織を含めた瘻孔切除が再発防止に必要である.稀ではある残存甲状腺組織由来の乳頭癌,瘻孔上皮由来の扁平上皮癌の存在を忘れてはならない.
  • 神崎 正夫, 中谷 雄三, 町田 浩道, 鳥羽山 滋生, 戸田 央, 小島 幸次朗, 小助川 克次, 清水 進一, 小林 寛
    1992 年 53 巻 3 号 p. 510-517
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1976年より1985年までに当院で手術を行った組織学的リンパ節転移陰性乳癌(n0乳癌) 180例において,再発高危険群の選出を試みるために予後因子の検討を行った.観察期間中央値は94カ月で,現在までに24例(13%)の再発を認めている.
    再発率に有意差を認めた因子は腫瘤径,組織型,組織学的悪性度で,健存率では腫瘤径,組織学的悪性度には有意差を認めたが,組織型には認められなかった.この3つの予後因子をスコア化し,組織型での特殊型9例を除く171例をこの予後因子スコア合計によって3群に分類すると,各群の再発率は7.4%, 16%, 25%,健存率は92%, 83%, 74%で有意差を認めた.よってこの3つの予後因子スコア化により, 28例(16%)の早期再発死亡の傾向を示す再発高危険群が選出された.
    n0乳癌の多因子スコア化による予後解析は全身補助化学療法の適応とされる再発高危険群選出には有用であると思われた.
  • 清水 哲, 岸本 宏之, 池田 貢, 川口 廣樹, 中村 広繁, 山根 祥晃
    1992 年 53 巻 3 号 p. 518-522
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1989年までの10年間に当科で経験した消化性潰瘍手術例を対象として,その推移に関して検討を加えた.対象症例は170例で,疾患別では胃潰瘍が117例(68.8%),十二指腸潰瘍が45例(26.5%),併存潰瘍が8例(4.7%)の順であった.対象を前期及び後期の5年間に分けると,各疾患別の頻度に変化はなかったが,手術総数は難治例の激減(p<0.01)に伴い前期の103例から後期では67例と35.0%の減少がみられ,出血例および穿孔例は逆に増加(p<0.01~0.05)を認めた.緊急手術例は後期でその割合のみならず絶対数の増加(p<0.01)がみられ,特に胃潰瘍に対する緊急手術の増加が目立った.緊急手術例の増加の要因として,初発潰瘍症例の増加傾向が指摘され,それらの高齢化も同時にみられた.後期では緊急手術例の病悩期間の長期化傾向がみられた.以上より,特に初発の比較的高齢な消化性潰瘍に対しては,外科的治療を念頭においた注意深い経過観察が必要と考えられた.
  • 種村 廣巳, 佐治 重豊, 近石 登喜雄, 蔭山 徹, 古田 智彦, 東 修次, 宮 喜一, 国枝 克行, 梅本 敬夫, 鷹尾 博司, 杉山 ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 523-527
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    同時性肝転移胃癌のうち肝転移合併切除を行い相対非治癒切除となった10症例を対象に胃原発巣と肝転移巣の癌細胞核DNA ploidy patternやCEA, AFPの免疫組織染色からみた生物学的特性と予後との関係について検討した.うち3例が3年以上経過した現在生存中である.一方再発死亡7例中5例は残肝再発であった.術後長期生存5例中3例が胃原発巣,肝転移巣ともに核DNAヒストグラムがlow ploidy patternを示したが,短期死亡5例中4例は胃原発巣,肝転移巣ともにhigh ploidy patternを示し,他の1例は胃原発巣でlow ploid,肝転移巣でhigh ploidと多様性を認めた.免疫組織染色でもCEA染色にて長期生存の1例に胃原発巣で染色陽性が肝転移巣で陰性化を示した症例がみられた.胃原発巣と肝転移巣間の生物学的特性の多様性が同時性肝転移胃癌術後の予後に関係することがありうると考えられる.
  • 中根 恭司, 古形 宗久, 笠松 聡, 明平 圭司, 浜田 吉則, 山村 学, 日置 紘士郎, 山本 政勝
    1992 年 53 巻 3 号 p. 528-536
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌全摘症例を無作為に摘脾群(10例)と摘脾+脾自家移植群(9例)の2群に分け移植脾の生着再生状況および摘脾群と比べてどのような有用性があるかについて血清学的因子を中心に検討した.移植方法は脾の30~40%量を小組織片として主に横行結腸間膜,小腸間膜内に分散移植した.術後重篤な合併症はみられなかった. 99mTc-熱処理赤血球を用いた脾シンチでは3カ月以上経過例8例中6例(75%)に陽性所見が得られた.術後血小板数,免疫グロブリン,細胞性免疫パラメーター(T3, T4, T8, T4/T8, NK活性)の推移に関しては両群間に有意差はみられず,移植脾の血清学的因子に与える影響については明らかにすることができなかった.しかし本術式は胃癌手術の根治性を満足し,かつ脾再生も得られたことから胃癌の根治術式(胃全摘+摘脾+脾移植術)の一つとなりえる可能性が示唆された.
  • 増田 英樹, 林 成興, 谷口 利尚, 中村 陽一, 堀内 寛人, 林 一郎, 渡辺 賢治, 加藤 克彦, 田中 隆
    1992 年 53 巻 3 号 p. 537-542
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近10年間に教室で経験した大腸他臓器重複癌40例を対象に臨床的検討を行った.大腸他臓器重複癌40例は同時期の大腸癌手術症例835例の4.8%に相当し,同時性11,異時性27例,同・異時性2例であり,重複臓器は胃が53.5%と最も多かった.大腸癌全体に比較し,男性に多く,年齢が高く,癌家族歴陽性症例が多い傾向にあった.大腸癌が切除された32例については単発切除大腸癌と比較したが,占居部位,肉眼型,組織型において差は認められず,壁深達度や進行度についてはむしろ単発切除大腸癌のほうが進行していた.しかし,重複癌全体の累積5年生存率は34.0%,大腸癌と他臓器癌のいずれも切除しえた症例においても39.5%であり,単発切除大腸癌(63.6%)より有意に低かった.重複癌の予後を向上させるには,同時性では他臓器癌,特に胃癌の治療成績の向上に努め,異時性他臓器癌先行例では第2癌である大腸癌を早期に発見することが重要であると思われた.
  • 才津 秀樹, 牟田 幹久, 大神 延喜, 松本 敦, 重富 和治, 安藤 和三郎, 谷脇 智, 杉山 俊治, 奥田 康司, 中山 和道, 大 ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 543-548
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    手術関連死(術死,在院死)と絶対非治癒切除を除いた肝癌切除171例を対象として,肝癌の小林リスクスコアからA群(7.5以上; 29例), B群(7.4~6.0; 94例), C群(5.9以下; 48例)の3群に分け検討し,以下の結果を得た. 1) リスクスコア6.0以上のsuper high risk group (SHRG)は171例中123例(71.9%)と高率であった. 2) A群は他の2群に比べ,術後生存率,無再発生存率とも有意に不良で(p<0.05),その理由としては,再発だけでなく,再度発癌の可能性が示唆された. 3) B群からA群へとリスクスコアを増加させる因子はHBs抗原(+),アルコール歴(+),家族内集積(+), AFP≧21ng/mlの4因子で, B群からC群へリスクスコアを減少させる因子は年齢,性別の2因子であった(p<0.01). 4) A群はC群より平均腫瘍径が大きく, B, C群よりStage I, IIの割合は少なかったものの(p<0.05),腫瘍肉眼型, fc, fc-inf, vp, in, Hr, twの7因子は3群間に有意差はなかった.
  • 中迫 利明, 羽生 富士夫, 今泉 俊秀, 鈴木 衛, 原田 信比古, 羽鳥 隆, 新井 俊男, 広瀬 哲也, 大川 智彦, 喜多 みどり, ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 549-556
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膵頭部癌切除例に対する術中照射(IORT)の意義を明らかにする目的で, 1983年から1990年までに拡大膵頭十二指腸切除(拡大PD)が施行された70症例を拡大PD+IORT群16例,拡大PD単独群54例にわけ,さらに組織学的治癒切除42例を拡大PD+IORT群12例,拡大PD単独群30例,組織学的非治癒切除28例を拡大PD+IORT群4例,拡大PD単独群24例にわけ,線量25Gyの術中照射の有無で,術後生存期間,局所再発を検討した.
    生存月数中央値は,全体で拡大PD+IORT群13カ月,拡大PD単独群13カ月,治癒切除で拡大PD+IORT群13カ月,拡大PD単独群14カ月,非治癒切除で拡大PD+IORT群14カ月,拡大PD単独群11カ月と差はなかった.局所再発は,全体で拡大PD+IORT群75%,拡大PD単独群50%,治癒切除で拡大PD+IORT群50%,拡大PD単独群42%,非治癒切除で拡大PD+IORT群100%,拡大PD単独群67%と差はなかった.以上より,今回の検討では,拡大PDに線量25Gy程度の術中照射のみでは手術単独の治療成績を凌駕することはできなかった.
  • 仁科 雅良, 藤井 千穂
    1992 年 53 巻 3 号 p. 557-562
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当施設で手術・治療した穿孔性腹膜炎症例170例のうち,術前に白血球数が5,000/μl以下に減少していた症例は24例であった.白血球数減少は,高齢者および大腸穿孔に多かった.白血球数減少例では術後に白血球数は増加しており,術後2日目までは幼弱好中球が増加し,その後成熟好中球が増加していた.
    白血球数減少例の死亡率は12.5%で,非減少例と統計上の有意差はなかった.しかし来院時に血圧の低下した症例では27.3%の死亡であるのに対し,血圧低下のないものでは死亡例はなかった.治療は過大な侵襲を与えない手術を選択し, γグロブリン製剤・血漿製剤・多価酵素阻害剤・H2阻害剤などを併用した.白血球数減少例は重症であるが,適切な治療により救命しうると考えられる.
  • 術前γ-グロブリン大量投与による出血抑制の効果
    山本 眞也, 河本 知二, 久米川 啓, 近石 恵三, 前場 隆志, 田中 聰
    1992 年 53 巻 3 号 p. 563-566
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    著明な血小板減少症(3,000/μl)と出血時間延長(1時間)を伴い,血小板輸血無効状態の28歳男性の再生不良性貧血患者に発症した胆嚢出血の手術に際して,術前のγ-グロブリン大量投与と血小板輪血が術中術後の出血防止に有効であった.
    γ-グロブリンは1日10gを術前3日間連続投与し,術当日に血小板を輸血した.これにより血小板数が22,000/μlに増加して,術中出血量も約500mlにとどまり,術後経過も良好であった.
    自験例において血小板数が増加した機序は不明であるが,抗血小板抗体が陰性であることから特発性血小板減少性紫斑病における機序とは異なっていると思われる.
  • 清水 忠夫, 芳賀 駿介, 蒔田 益次郎, 渡辺 修, 小林 浩司, 今村 洋, 飯田 富雄, 木下 淳, 小川 健治, 梶原 哲郎
    1992 年 53 巻 3 号 p. 567-570
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    思春期前で血性乳頭分泌を伴った女性化乳房症を経験したので報告する.症例は1歳男子,右乳腺腫瘤,血性乳頭分泌を主訴として来院,分娩授乳歴に異常なく,発育正常,外性器に異常を認めなかった.右乳輪下に青く透見され,弾性軟,可動性良好,境界明瞭,表面平滑の1.7×1.4cmの腫瘤を触知した.血清ホルモン検査では, LH, FSH, Prolactin, Testosterone, Estradiol, Progesteroneとも正常であった.血性乳頭分泌が持続するため腫瘤摘出術を施行し,病理組織学的所見で拡張した乳管と軽度に浮腫上の間質組織が乳管の周囲にみられ,女性化乳房と診断した.思春期前女性化乳房症は稀であり,その発生要因として先天異常,新生物などが報告されているが,本症例は発生要因は見当らず,特発性と診断した.また,血性乳頭分泌を伴った報告はほとんどなく,本症例は病理組織学的に意義があると考えられた.
  • 太田 正敏, 杉原 隆, 向井 正哉, 佐々木 哲二, 白石 幸治郎, 柳田 優子, 奥村 輝, 徳田 裕, 久保田 光博, 田島 知郎, ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 571-575
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳癌の手術後30年目に再発をきたした1例を経験した.症例は73歳,女性. 1960年4月, 43歳時に右乳癌にて非定型的乳房切断術を受けた. 1990年2月に右腋窩腫瘤を主訴に来院した.来院時, 5×4cmの可動性のない弾性硬の腫瘤を触知し,血清NCC-ST-439値が220u/mlと高値であった. 1990年4月4日腫瘍摘出術施行.腫瘍は5×4×3cm大,充実性で,組織学的には腺癌よりなり,リンパ節組織,乳腺組織は認められず,免疫組織化学的にα1-ラクトアルブミン, DF-3, 115D8およびNCC-ST-439が陽性であった.さらに, DCC法による腫瘍組織のエストロゲンレセプターが陽性であり,臨床的に他臓器に原発巣と考えられる病変は認められなかったことから乳癌の腋窩リンパ節転移と考えられた.腋窩腫瘍摘出術および腋窩への放射線照射後, 11カ月を経過し,再発徴候は認められず,血清NCC-ST-439値は2.7u/mlと正常範囲内にある.
  • 中西 浩三, 平塚 昌文, 波戸岡 俊三, 吉田 泰憲, 岡村 建, 白日 高歩, 石川 廣記
    1992 年 53 巻 3 号 p. 576-580
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺腺様嚢胞癌の1例を報告する.症例は45歳の女性で,右乳房の無痛性腫瘤を主訴に来院した.理学的所見では右乳房上外側領域に硬く境界明瞭な0.5cm大の腫瘤が認められた.腫大したリンパ節は触知できなかった.超音波検査所見で悪性像を得,診断確定のため生検術を施行した.腫瘍は光顕的に篩状および充実性領域よりなり,腫瘍細胞は一般に小さく均一で細胞質は乏しかった.組織化学的検査でPAS染色陰性でalcian blue染色陽性のムチンが偽腔内に存在した.広範腫瘤摘出術ならびに腋窩リンパ節郭清術が行われたが,リンパ節転移は認められなかった.術後18カ月経過した現在,再発の徴候は認められない.
  • 伊藤 浩明, 加藤 泰, 久保田 冽, 宮内 正之, 篠原 正彦, 森 敏宏, 加藤 裕, 久野 泰, 大島 健司, 菊森 豊根, 金光 幸 ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 581-584
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    16歳男性に発症した乳癌症例について報告する.
    主訴は腫瘤触知.触診所見,画像診断でも悪性所見に乏しく,細胞診でもClass I~IIであった.穿刺後一旦縮小した腫瘤が再び大きくなったことにより腫瘤摘出術を行ったところMucinous carcinomaと診断された.単純乳房切除術を行い,腋窩リンパ節郭清は行わなかった.現在特に化学療法を行わず外来にて経過観察中であるが, 2年を経過して再発の兆候は全く無い.
    男性乳癌は高齢者に多く,特に60歳台が最も多いといわれており, 20歳以下の男性乳癌は本邦4例目である.病因については種々の意見があるが本症例についてははっきりした要因は不明であった.予後は早期に診断され,根治手術が行えれば女性の乳癌に比して特に悪くないといわれている.
  • 岡本 真司, 浜田 吉則, 中村 元, 畑埜 武彦, 日置 紘士郎
    1992 年 53 巻 3 号 p. 585-588
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Recklinghausen病に合併した乳癌の1例を報告するとともに,自験例を含む本邦報告例14例を集計し,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は72歳,女性.幼少時より全身に多数の腫瘤を認めている.右乳房の無痛性腫瘤にて来院.生検にて乳癌と診断され,定型的右乳房切断術施行. t2n1αm0, stage IIであった.
    Recklinghausen病は良性疾患であるが,様々な悪性腫瘍との合併が報告されている.
    特に,乳癌を合併した場合,病変の主体が両症ともに近接している為に,乳癌の発見は比較的困難である.本邦報告例を見ても,記載のあるうちでは4例以上生存例の報告は無い.
    従ってRecklinghausen病には,全身的な検索,特に乳癌においては病変病変により発見が遅れるので,注意深い検索が必要であると考えられた.
  • 長瀬 慈村, 川崎 恒雄, 兼信 正明, 木田 孝志, 林 政澤, 芦川 敏久, 桜沢 健一, 上江田 芳明, 菊池 正教
    1992 年 53 巻 3 号 p. 589-593
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Recklinghausen病は,皮膚に多発する神経線維腫とCafé au lait spotsと呼ばれる色素斑を特徴とする遺伝性疾患であり,悪性腫瘍の合併がしばしば見られるが,乳癌との合併は比較的少ない.今回われわれは, R病に乳癌の合併をみた1治験例を経験したので報告する.症例は, 46歳女性.左乳腺腺瘤(浸出液を伴う)を主訴に当科受診,左腋窩リンパ節転移,胸壁浸潤および多発骨転移も認め, T4cN1bM1 Stage IVの進行乳癌と診断.抗癌剤,ホルモン剤の術前経口投与にて,切除可能の状態まで改善させてから,左定乳切,両側卵摘を施行した.文献上, R病と合併した乳癌は, Stege II以上の進行癌であることがほとんどである.これは,体表に神経線維腫が多発しており,発見が遅れるのが原因の一つであると思われた.さらに進行乳癌に対する術前ホルモン・化学療法の有効性を示唆する症例と思われた.
  • 森田 一郎, 藤原 巍, 野上 厚志, 山根 尚慶, 吉田 浩, 勝村 達喜
    1992 年 53 巻 3 号 p. 594-598
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右室二腔症は,一般的には小児の疾患で成人例はめずらしい.われわれは, 46歳, 46歳, 62歳の3例に外科的治療を施行したので報告する.各々の右室内圧較差は,症例1が110mmHg,症例2が80mmHg,症例3が150mmHgであった.手術アプローチは,症例1と症例3では,右室低圧部切開にて行い,症例2はVSDを合併しており右室低圧部から高圧部にかけて縦切開にて行った.術後,全例で右室内での圧較差は消失したが,拡張末期圧が上昇した.それは,術後の右室拡張期障害を示したものと思われたが,現在右心系の機能障害を認めるものはない.
  • 鈴木 弘治, 宮崎 卓哉, 笠原 彰夫, 奥川 保, 森永 聡一郎, 野口 芳一, 山本 裕司, 今田 敏夫, 天野 富薫, Jiro KO ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 599-604
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性横隔膜腫瘍は非常に稀な疾患のためもあり,近隣臓器の腫瘍との鑑別診断に難渋することが多い.
    今回,われわれは肝腫瘍との鑑別が困難であった横隔膜線維腫症を経験したので報告する.
    患者は15歳男性.右季肋部腫瘤を自覚し来院した.胸部X線撮影では右横隔膜の軽度挙上を認め,腹部超音波, CT,血管造影などの諸検査にて肝腫瘍を疑い開腹手術を施行した.腫瘍は右横隔膜から発生し,主に腹腔に突出し肝を圧排していたが癒着や浸潤はなかった.腫瘍は前方では横隔膜付着部まで達していたので横隔膜,胸壁と共に切除した.
    切除標本は大きさ16×12.5×8cm,重さ640gであった.組織学的には,紡錘細胞と膠原線維の束状配列をしめす増殖で,線維腫症と診断した.
    横隔膜腫瘍の本邦報告例53例を集計したところ,横隔膜線維腫症は1例のみであった.
  • 村松 友義, 上川 康明, 森木 康之, 合地 明, 井上 文之, 川真田 修, 舟木 直人, 淵本 定儀, 阪上 賢一, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 3 号 p. 605-610
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    甲状腺癌を合併した頸部食道癌の2例を経験した.
    2例とも中年女性,食道癌はstage IVの進行癌であった.また2例とも同時性重複癌であるが, 1例は6年前より前頸部腫瘤に気付いており,甲状腺癌発生が食道癌発生よりも数年先行しているように思われた.
    食道と甲状腺の重複癌は少なく,自験例を含めた詳細な報告10例を検討すると,同時性7例,異時性3例で,男女比は3:7,平均年齢61.7歳であった.また, Stage IVの進行癌が多く予後が悪かった.異時性重複癌3例は,全例第一癌が甲状腺癌であり,食道癌発生までの期間が約6年, 3例中2例は頸部食道癌であった.また, 3例とも甲状腺癌治療として放射線照射を受けており,リンパ節結核の治療として放射線照射を受けた自験例の1例を含め放射線誘発癌の可能性が示唆された.
  • 鈴木 眞一, 有壁 譲, 岡本 二郎, 遠藤 辰一郎, 小山 善久, 安藤 善郎, 井上 典夫, 石井 芳正, 二瓶 光博, 君島 伊造, ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 611-614
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    舌癌,乳癌,食道癌による同時性3重複癌の1例を経験した.症例は58歳,女性.第1癌は舌癌にて右舌部分切除術施行され, T1N0M0 Stage I,高分化型扁平上皮癌であった.第2癌は右乳癌であり,第1癌術後約2カ月後に発見され右非定型乳房切断術を施行された. T2N1aM0 Stage II,充実腺管癌であった.第3癌は食道癌であり,第2癌術後4カ月頃より食思不欲出現し,体重減少が徐々に進行したその3カ月後に診断された.病理組織像は中分化型扁平上皮癌ですでに進行し,手術不能であった.全身化学療法を施行するも効果なく,半年後永眠した.この同時性3重複癌の経過を報告すると共にこれら3つの癌の核DNA量をパラフィンブロックを用いたフローサイトメーターによって測定した.さらに3重複癌につき若干の文献的考察を加え検討した.
  • 水谷 郷一, 堀江 修, 櫻井 与志彦, 花上 仁, 幕内 博康, 田島 知郎, 三富 利夫
    1992 年 53 巻 3 号 p. 615-619
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳男性でタール便を主訴に来院した.内視鏡検査では,胃噴門部に凝血塊を認めたが明らかな出血源は認められず,原因不明の上部消化管出血の診断で入院となった.貧血を認め,またタール便が続くため輸血を施行し,内視鏡検査を数回施行したが,やはり明らかな出血源は確認できず保存的治療の限界と判断し入院15日目に緊急手術を施行した.術中内視鏡検査では,胃噴門側に少量の出血を認めたが出血源は確認できず,その他腹腔内に異常を認めないため,除外診断から出血源は胃噴門部付近にあり, Dieulafoy潰瘍を疑い胃全摘術を施行した.切除標本の肉眼所見と病理組織学的検索にて出血源は噴門より約2cm肛門側の前壁大彎寄りの径1.5mmのULIIの微小潰瘍から露出する径1.5mmの太い血管と判明し, Dieulafoy潰瘍と診断された.術後は経過良好で第21病日に退院となった.病理組織学的に診断されたDieulafoy潰瘍は,まれで貴重な症例であるので報告した.
  • 村国 均, 清宮 清治, 若林 峰生, 金光 裕幸, 島田 長人, 小沢 哲郎, 継 行男, 工藤 玄恵, 竹山 照尚
    1992 年 53 巻 3 号 p. 620-624
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸癌は稀な疾患であるが,なかでも多発癌の報告例は少ない.私どもは十二指腸乳頭上部にBorrmann 2型(主病変)とIIa型(副病変)を併せもつ多発性の原発性十二指腸癌を経験したので報告する.症例は68歳の女性.胃十二指腸造影,内視鏡ならびに生検所見にて原発性十二指腸癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.肉眼所見で十二指腸乳頭上部の後壁に1.0×1.1cm大のIIa型腫瘤(sm)がみられ,その遠位側に隣接して輪状狭窄像を呈した3.7×2.2cm大のBorrmann 2型の進行癌(pm)を認めた.組織学的にはいずれも高分化管状腺癌で相互に連続性はなかった.腫瘍および十二指腸粘膜に腺腫成分の混在はなく,リンパ節転移も陰性であった.併せて1985年から1990年までの本邦文献報告から原発性十二指腸癌115例を集積し若干の検討を加えた.
  • 七島 篤志, 伊藤 重彦, 大江 久圀, 添田 修, 安武 亨, 岡田 代者, 松本 佳博, 辻野 直之
    1992 年 53 巻 3 号 p. 625-628
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸管嚢胞様気腫症Pneumatosis cystoides intestinalisの1例を経験したので報告した.
    患者は84歳の女性で,右季肋部から側胸部にかけての疼痛で来院し, X線検査上free airを腹腔内に認めた.腹膜刺激症状は軽度であったが,高齢でもあり激しい腹痛が持続するため消化管穿孔を否定できず手術を施行した.開腹すると胆石を伴う胆嚢炎,十二指腸憩室及び回腸壁内の多数の小嚢胞が存在したが,消化管穿孔の所見は認められなかった.病理組織診断では小腸粘膜下に嚢胞様気腫がありPneumatosis cystoides intestinalisと診断した. free airは本症によるもので疼痛の原因は胆石発作によるものと考えられた.術後は良好に経過し退院した.
  • 渡辺 正明, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 緑川 博文, 小野 隆志, 星野 俊一, 井上 仁
    1992 年 53 巻 3 号 p. 629-633
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本邦において腹腔内蔵領域における医原性動静脈瘻の報告は稀である.われわれは虫垂切除後の腸閉塞により小腸切除を施行後7年目に拍動性腹部腫瘤の検索中,偶然に発見された無症候性の上腸間膜動静脈瘻を経験した.動静脈瘻切除と動脈瘤切除兼人工血管置換術を二期的に施行し,術後連続性雑音の消失及び腹部CT,動脈造影にて上腸間膜動静脈,門脈径の縮小を認めた.本例における上腸間膜動静脈瘻は小腸切除術におけるmass ligationによるものと考えられた.
  • 坪井 賢治, 望月 英隆, 柿原 稔, 玉熊 正悦, 古井 滋, 寺畑 信太郎
    1992 年 53 巻 3 号 p. 634-638
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Dieulafoy潰瘍は元来胃の病変として報告されたものであり,空腸における報告は極めて稀である.今回空腸Dieulafoy潰瘍症例を経験したので,手術時に行った出血部位同定のための工夫とともに報告する.症例は39歳,女性.腹痛と大量下血を主訴として入院.緊急腹部血管造影により空腸第一枝領域の出血と診断.一時的止血を得るためのTAE施行後に手術施行. TAEに用いた金属コイルを指標に術中X線撮影を行って出血部位を同定.同部の空腸壁楔状切除を行った.
    切除標本では,微小な粘膜の欠損と血管の露出とが認められた.病理組織学的には粘膜下に中等大の蛇行した動脈が認められ,この血管の破綻による出血と判断,空腸Dieulafoy潰瘍と診断された.
  • 楠本 宏記, 神代 龍之介, 左野 千秋, 犬塚 貞光
    1992 年 53 巻 3 号 p. 639-643
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室に伴うMesodiverticular bandを手術中に確認することは困難である.われわれはmesodiverticular bandにより絞扼性イレウスをきたしたMeckel憩室を経験したので報告する.症例は15歳男性で,腹痛を主訴として発症1日後に入院した.腹部全般に圧痛がみられたが,筋性防御は認められなかった.腹部単純X線像上niveauを認めた.絞扼性イレウスを疑い,開腹したところ回盲弁から80cm口側の回腸にMeckel憩室が存在し,その先端より腸間膜にかけて索状物を認めた.憩室と索状物の間に口側回腸が30cmにわたって嵌入し,絞扼されていた.手術は索状物を結紮切断して絞扼を解除し,憩室を楔状に切除した.摘出標本には異所性胃粘膜が存在した.症例報告と共に過去10年間に報告されたMeckel憩室482例,このうちmesodiverticular bandによる絞扼例38例を文献的に検討した.
  • 伝野 隆一, 平田 公一, 水島 康博, 秋山 守文, 望月 洋一
    1992 年 53 巻 3 号 p. 644-647
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    56歳女性の回腸に発生したinflammatory fibroid polypを報告した.本症例は食後の腹痛をくり返した.腹部単純撮影にて鏡面像を認めたため入院となる.水溶性造影剤服用後のCTで消化管内腫瘤を認めたため手術を施行.回腸に回腸・回腸型の腸重積を認め,広範囲小腸切除術を行った.
    病理組織学的には腫瘤(3.2×2.8×2.8cm)は粘膜下を占拠し,頂部に潰瘍が存在し,腫瘍組織内には好酸球,リンパ球などの炎症性細胞浸潤が著しかった.また線維芽細胞の粘膜下層での増生も伴っていた. IFPを中心とした小腸粘膜下腫瘍の診断法,腸切除のあり方などについて文献的な考察を加え報告した.
  • 勝峰 康夫, 世古口 務, 中濱 貴行, 山本 敏雄, 稲守 重治
    1992 年 53 巻 3 号 p. 648-652
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腫重積にて発症した小腸悪性黒色腫の1例を経験した.症例は28歳の男性. 3カ月前よりときどき心窩部痛があり,内科にて貧血を指摘され,腹部超音波検査,上部消化管造影検査を行ったが異常は認められなかった.平成2年11月16日強い上腹部痛出現し入院となる.入院時腹部超音波検査では,腹部中央部に低エコー腫瘤を認め,腫瘤内部は同心円状の層状構造呈し, CTでも同様の所見を認めた.腸重積と診断し緊急手術を行った.回腸に3cm大の腫瘍を先進部とする腸重積を認め,小腸部分切除を行った.組織検査では未分化癌を疑った.術後貧血が改善しないため小腸造影を行ったところ,空腸に隆起性病変が多数認められた,再開腹術を行い小腸部分切除を施行した.組織検査にて腫瘍は小腸悪性黒色腫(amelanotic melanoma)と診断され,化学療法はDTIC, ACNU, VCRによりDAV療法を施行した. 6カ月目の現在元気に日常生活を過ごしている.
  • 市川 敏郎, 久米 進一郎, 永山 隆一, 松本 俊一, 宮川 昭平, 石田 秀行, 岩間 毅夫
    1992 年 53 巻 3 号 p. 653-656
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌の診断で開腹手術を行い,手術中,空腸癌が発見された同時性重複癌の症例を報告した.症例は56歳の男性.健康診断にて便潜血反応陽性と軽度の貧血が認められた.精密検査によってS状結腸癌が発見され,更に手術時トライツ靱帯から約10cmの空腸に癌が認められた. S状結腸癌は骨盤腔腹膜,左尿管への浸潤性転移があったためS状結腸の姑息的切除を行った. II型の癌で,組織型は高分化型管状腺癌であった.空腸癌は3×4cm大の潰瘍型で,組織型は高分化型管状乳頭腺癌であった.臨床症状に乏しいとされている原発性小腸癌がS状結腸癌の手術を契機として発見されたことにより,術中の腹腔内検索の重要性が示唆されたので報告した.
  • 高橋 章之, 中野 且敬, 井岡 二朗, 田部 志郎, 中根 佳宏, 谷村 智彦, 藤森 千尋
    1992 年 53 巻 3 号 p. 657-661
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    後腹膜炎は大腸などの消化管や腎に起因する各種疾患の術後に生じることが多い.今回直腸穿孔から直腸周囲膿瘍を形成し,漸次後腹膜腔から胸部,頸部,縦隔へと炎症が波及し,胸部皮下気腫で発見された後腹膜炎の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は57歳,男性で会陰部痛と全身倦怠感を主訴に来院し,胸部X線写真で皮下気腫を認めた. CTで頸部から縦隔,胸腹壁,後腹膜腔,直腸周囲におよぶ,内部にガスを含む膿瘍を認め,抗生物質の投与と,ドレナージ術により救命した.
    後腹膜炎は蜂窩織炎状に急速に拡大進展しやすく,また消化管穿孔に起因する場合は嫌気性菌とグラム陰性桿菌の混合感染になることが多い.そのため抗生物質に抵抗を示し,予後不良なことも多く,早期発見と早期の適切な治療が肝要であると考えられた.
  • 若松 慶太, 横山 勲, 松本 賢治, 大上 正裕, 深川 裕明, 北川 裕章, 有沢 淑人, 榊原 維聡, 篠崎 広嗣, 納賀 克彦
    1992 年 53 巻 3 号 p. 662-666
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管の神経鞘腫は稀な疾患であり,特に大腸に発生する神経鞘腫は非常に稀である.最近,直腸に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は56歳女性.尾骨部腫瘤触知,便柱の扁平化を主訴に当科を受診し,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡, CT検査,およびNeedle Biopsyにより直腸原発,壁外増殖性の神経線維腫として手術を行った.術中の迅速病理検査によっても悪性所見は見られず,腫瘍摘出のみとした.腫瘍はダンベル型であり永久標本にて神経鞘腫と診断された.組織型はAntoni A, B型が混在しており悪性所見は見られなかった.
  • 松崎 正明, 村瀬 正治, 神谷 勲, 堀尾 静, 佐久間 温巳
    1992 年 53 巻 3 号 p. 667-670
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    卵巣の線維腫に胸・腹水が合併し,その腫瘍を摘出すれば,胸・腹水が速やかに消失する病態はMeigs' syndromeと呼ばれている.線維腫以外の骨盤内腫瘍の場合は, pseudo-Meigs' syndromeと呼ばれている.
    39歳女性,便秘・下痢を主訴に来院し,直腸指診,バリウム注腸X線造影にて直腸癌と診断され,他部位への転移の有無を検索中胸・腹水の貯留,卵巣腫瘍が認められた.直腸癌の卵巣,腹膜転移と診断され手術となる.肝,腹膜に転移なし,右卵巣にKrukenberg腫瘍あり,腹会陰式直腸切断術,右卵巣摘出術を行った.術後早期に胸・腹水が消失し,再貯留を認めないことより,この症例は広義のMeigs症候群であった.
  • 松井 祥治, 芦田 博雄, 森垣 驍, 田畑 文平, 藤盛 孝博
    1992 年 53 巻 3 号 p. 671-675
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は44歳女性で体格中等度.下腹部痛を主訴として来院した.注腸透視,下部消化管内視鏡検査を施行したところ肛門輪より約5cm,歯状線より約1cm口側に乳頭状腫瘤を有す直腸偏平隆起性病変を認めた.生検結果はgroup V腺癌で周囲に比較的幅広い腺腫が認められたために内視鏡的ポリペクトミーは不可能と判断され手術的治療を施行した.手術方法は肛門括約筋温存術式のうち腫瘍を直視下に直腸切離が可能な重積手術が選択され同時に横行結腸にcovering colostomyを造設した.結腸肛門吻合部に縫合不全が無い事が確認された後初回手術49日目に人工肛門を含む横行結腸切除術を施行した.以後の排便機能は良好で1日の排便回数が2~3回に安定した時点で退院となった.
  • 塚田 一博, 清水 武昭, 吉田 奎介, 長谷川 滋, 武藤 輝一
    1992 年 53 巻 3 号 p. 676-679
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    47歳,男性.食道静脈瘤出血に対して胃全摘術が施行されている.その術後10年目の昭和58年食道空腸吻合部から食道にかけての静脈瘤出血を来した. 5%エタノールアミンオレイトによる硬化療法を繰り返すも出血をくりかえすため,輸入脚の離断とつり上げ空腸の静脈の結紮術を行い一時的な止血を得た.さらに再出血を来したためつり上げ空腸の静脈枝と腎静脈とのシャント術を施行.術後硬化療法を追加した.平成元年4月筋萎縮性側索硬化症による呼吸不全にて死亡したが剖検にてシャントの開存が確認された.経過中脳症は認められなかった.食道静脈瘤症例に対する胃全摘術は出来るだけ避けるべき術式と考えるが,胃全摘術後の静脈瘤再発に対してはこの新しい選択的シャント術が有効であると考えられた.
  • 山下 好人, 有本 裕一, 国頭 悟, 西口 幸雄, 李 在都, 冬廣 雄一, 馬場 満
    1992 年 53 巻 3 号 p. 680-684
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前に局在診断し得たインスリノーマの2例を経験した. 2症例とも意識消失発作で来院し,空腹時血糖値,血中インスリン値などからインスリノーマが疑われた.超音波検査,経皮経肝門脈採血法(PTPC)血管造影,ダイナミックCTにて膵頭部に単発したインスリノーマと診断し,術中超音波検査を用いることにより主膵管を損傷することなく腫瘤核出術を施行した.
    インスリノーマの治療の原則は腫瘤の完全摘除である.しかし,腫瘤は小さく,多発例も存在するため,その局在診断は容易ではなく,超音波, CT, PTPC,血管造影などの検査を組み合わせて局在を判明する努力が必要と考えられた.
  • 三谷 真己, 片岡 誠, 桑原 義之, 谷脇 聡, 呉山 泰進, 春日井 貴雄, 三井 敬盛, 川村 弘之, 岩田 宏, 坂上 充志, 加島 ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 685-694
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1972年より1990年の18年間に経験した7例の膵島細胞腫瘍(インスリノーマ3例,ガストリノーマ2例,非機能性腫瘍2例)を報告するとともに非機能性腫瘍本邦報告例のうち悪性経過例及び嚢胞形成例を検索し,主に術前画像診断について検討した.血管造影における血管の侵襲像(encasement, occlusion, AVshunt) ERCPにおける膵胆管の途絶,狭窄は腫瘍の良悪性の判定上有用であった.非機能性腫瘍のうちに嚢胞形成例は約30%あり他の膵嚢胞性疾患と誤診される事が多い.しかし血管造影にて濃染する部分, CT, USにて嚢胞構造の中にも充実性部分を見いだす事により膵仮性嚢胞等良性嚢胞とは鑑別され手術治療は選択され得る.しかし他の腫瘍性嚢胞との鑑別は困難である.
  • 勝山 新弥, 鈴木 修一郎, 齋藤 光和, 藤巻 雅夫, 酒井 剛
    1992 年 53 巻 3 号 p. 695-699
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性で全身倦怠感を主訴に来院し,心窩部の巨大な腫瘤を指摘された.腹部computed tomographyにて心窩部中心に15cm×12cm×6cmの内部不均一な腫瘤像を認め,腹部超音波エコー下生検では平滑筋肉腫の診断であった.肝平滑筋肉腫を疑い手術を施行した.腫瘍は肝下面と胃小弯との間に存在し肝・胃壁とは明確に区別され,その表面は凹凸不整,嚢腫状であった.腹腔内に発生する平滑筋肉腫は,まれな疾患であるが,小網原発の平滑筋肉腫は極めてまれである.今回,自験例を含めた本邦報告例14例についての統計的考察および小網原発の根拠に関し若干の文献的考察を加え報告する
  • 打越 史洋, 中尾 量保, 藤田 修弘, 前田 克昭, 濱路 政靖, 西村 正, 仲原 正明, 岸本 康朗, 中 好文, 林 鐘学, 辻本 ...
    1992 年 53 巻 3 号 p. 700-704
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    排便困難をきたした仙尾部の巨大なmucinous cyst adenomaの1切除例を経験したので報告する.症例は41歳,女性で生直後に腎部腫瘤の摘出術を受けた. 39歳頃より左臀部に緩徐に増大する腫瘤を自覚するようになり,排便困難が出現した.画像診断から再発仙尾部奇形腫を疑った.腫瘍は境界明瞭な1070gの巨大な腫瘍で病理組織学的にmucinous cyst adenomaと診断された. mucinous cyst adenomaは卵巣に比較的多い腫瘍であるが,卵巣以外では後腹膜に発生した報告例があるのみで,仙尾部に発生した報告例はなく,本症例の腫瘍組織発生は興味深い.また腫瘍摘出後の組織欠損は腎部大腿筋膜皮弁を用いて形成を行ったが,この方法は組織欠損を充填するとともに,腫瘍切除,肛門挙筋一部切離によって生じた骨盤底の脆弱性を補強するうえで有用であった.
  • 坂本 啓彰, 野沢 博正, 永井 健一, 立野 政雄, 土田 明彦, 日馬 幹弘, 小柳 泰久, 木村 幸三郎
    1992 年 53 巻 3 号 p. 705-709
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    盲腸癌経過中に発症し,急激な転帰をきたした壊死性筋膜炎症例を経験したので報告する.症例は72歳の男性で右下腹部腫瘤を主訴として来院した.入院精査にて盲腸癌の診断を得ていたが手術前夜より右大腿部に暗紫色の水泡を伴う皮膚壊死が出現した.盲腸癌の右大腿部への穿通を疑い,翌日,右大腿部を切開排膿および壊死した筋膜の切除をした後,右半結腸切除除を施行したところMOF, DICを併発し術後第2病日に死亡するに至った.壊死性筋膜炎は比較的稀な皮膚軟部組織感染症であり,消化器外科領域の疾患に合併することは極めて稀である.本症は極めて予後が不良なことより外傷の有無にかかわらず,全身症状を伴う広汎な皮膚壊死の出現に際しては,本症及びその類縁疾患を念頭におき対処することが必要である.
  • 1992 年 53 巻 3 号 p. 710-719
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 3 号 p. 720-730
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 3 号 p. 731-738
    発行日: 1992/03/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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