日本臨床外科医学会雑誌
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53 巻, 7 号
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  • 木下 博明, 井上 清俊, 山本 良二, 月岡 一馬, 土肥 雪彦
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1501-1506
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 特に発症要因とその対策について
    森越 栄太, 佐藤 薫隆, 向井 佐志彦, 斎藤 節, 為我井 芳郎
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1507-1515
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近9カ月間に消化器手術後に発生したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症45例について臨床的および細菌学的に検討した.特に感染経路,時期を同定するため院内環境,職員の細菌検査と手術患者の術前後の咽頭培養検査を行った. MRSA腸炎の発症は術後早期が多く,治療は早期診断が重要でバンコマイシンとアヘンチンキの経口投与が有効であった.院内環境,職員の咽頭,手指からもMRSAは検出され,コアグラーゼ型は患者同様ほとんどがII型であった.しかし, MRSAのMIC値は,職員と患者とでは異なっていた. 51例の手術患者中15例でMRSA腸炎が発症したが,術前,術中にMRSAの検出された例はなかった.術後の栄養管の留置は腸炎の発症率を高めなかった.当院のMRSA感染症はII型を流行株とした院内感染で,感染は主に術後,医療従事者の手指を介して起こるものと推測された. MRSA腸炎の予防には徹底した院内感染対策が重要と思われた.
  • 金地 嘉春, 藤本 吉秀, 伊藤 悠基夫, 小原 孝男
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1516-1521
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    昭和60年1月より平成元年12月の5年間に初回頸部手術を行った甲状腺疾患971例と上皮小体疾患178例の合計1,149例を対象とした.
    術前から麻痺ないし嗄声のあったものが25例(バセドウ病1例,良性腺腫2例,癌22例)あった.
    甲状腺の手術直後に起こった嗄声は,良性甲状腺疾患患者651例中25例に生じ,内23例が回復した.甲状腺悪性腫瘍患者320例では, 58例(神経切除40例,剥離温存術19例中の11例,原因不明6例,事故で切離1例.以上のうち5例(事故1例を含む)に神経吻合を施行)に生じた.このうち29例で嗄声自然回復が見られ, 29例(悪性腫瘍全例の9.1%)で永久嗄声が残った.切離・切除後神経縫合を行った6例全てで嗄声の回復が認められた.
    初回頸部手術前後に生じた嗄声とその経過を疾患別,手術法別に検討した.
  • 江嵐 充治, 野口 昌邦, 福島 亘, 太田 長義, 小矢崎 直博, 北川 裕久, 宮崎 逸夫, 山田 哲司, 中川 正昭
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1522-1527
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近,乳房切断術後,直ちに広背筋皮弁や腹直筋皮弁など自家組織を用いて乳房再建術を行う一期的乳房再建術が普及しつつあるが,予後に関する報告を見ない.今回,これら自家組織を用いて乳房再建を行った83例と乳房切断術のみを行った153例の生存率と非再発生存率を比較検討した.その結果,一変量解析で5年生存率および非再発生存率は乳房再建症例でそれぞれ92%, 90%,非乳房再建症例でそれぞれ92%, 86%であり,いずれも両群間に有意差を認めなかった.更に多変量解析で両群症例の背景因子を補正し検討したが,両群間に有意差を認めなかった.従って,一期的乳房再建術の有無は乳癌の予後に影響を与えないことが示唆された.
  • 高橋 英毅, 日置 正文
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1528-1534
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    砕氷(ice-slush)による局所冷却を併用した心筋保護法を用いた開心術163例について術後の横隔神経麻痺による横隔膜挙上(ED)の発生頻度と予後について臨床的検討を加えた.対象は小児群59例,成人弁膜症群73例, CABG群31例で, EDの診断には入退院時の胸部X線正面像を比較し,右側では左側より2肋間挙上しているもの,左側では1肋間挙上しているものを陽性とした. EDは163例中20例(12.3%)に認められ,全例左側で小児は1例(1.6%),成人弁膜症例で10例(13.6%), CABG例では10例(29%)と最も多かった.各群のED例と正常例の手術に関する諸因子を比較すると,最低心筋温に有意差(p<0.05)を認めた.予後:外来追跡可能な19例について検討すると,術後3カ月以内5例(26%), 12カ月以内14例(70%)が正常化し術後2年以内に18例(94%)が回復した.片側のED例では術後管理上問題になることは少なく, X線像上での回復には時間を要したが肺機能の面では早期に回復した.
  • 特に死亡症例の検討
    池澤 輝男, 岩塚 靖, 松下 昌裕, 石橋 宏之, 桜井 恒久, 矢野 孝
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1535-1539
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1985. 1~1990. 12の6年間に経験した破裂性腹部大動脈瘤19例(13.7%)の成績を待機手術例の成績と比較し,死亡率に影響を与える因子について検討した.年齢は57歳から86歳で平均67.5歳で,男17例,女2例であった. 11例(57.9%)はショック状態であった. 2例は臨床症状のみで, 17例はCTで診断した. 2例は術前及び術中に心停止となり人工血管移植前に台上死した. 16例にはY型人工血管を1例には腋窩大腿動脈バイパス術を施行した. 30日以内の手術死亡は5例(26.3%)で,さらに腸管瘻を伴った細菌性動脈瘤の1例と, MNMSを合併した1例は各々34日と72日に死亡し入院死亡率は36.8%であった.いずれも待機手術例に比し有意に高かった(0.8%:p<0.0001, 3.3%:p<0.005)手術死亡5例は循環動態の不安定と急性大量出血によるcoagulopathyが主たる原因であった.従って迅速な中枢側のコントロールとcoagulopathyに対処すれば死亡率は,限界はあるものの減少できよう.
  • 松本 尚, 小西 孝司, 月岡 雄治, 大上 英夫, 谷屋 隆雄, 藪下 和久, 廣澤 久史, 黒田 吉隆, 辻 政彦, 三輪 淳夫
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1540-1544
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去10年間の当施設での胃癌の膵頭十二指腸切除(PD)症例について検討した. PD施行による根治性を十分に評価するためH0, P0の症例13例(以下PD例)を検討の対象とし,同じ時期に施行された胃下部癌のうちH0, P0, Stage 3, 4でPDが行われなかった例(以下非PD例) 103例と比較検討した. 5年生存率は,非PD例21%, PD例46%,膵浸潤のみられた症例ではPD例の5生率53%に対し,非PD例では3年以内に全例死亡していた(p<0.05).また再発形式をみると,リンパ節再発はBillroth I法の9%に対し, Billroth II法では21%であった.このためPD施行により十分な郭清の可能なNo.12, 13, 14, 17のリンパ節転移陽性例について予後を検討すると2年生存まではPD例で50%,非PD例で24%であった.以上の成績から胃下部癌に対しては術中に原発巣および転移リンパ節からの膵浸潤が疑われる症例やNo.12, 13, 14, 17リンパ節転移陽性例がPDの適応と考えた.
  • 岡 正朗, 平澤 克敏, 内山 哲史, 稲葉 彰, 鈴木 敞
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1545-1549
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸癌511例のうち30歳未満の若年者大腸癌10例(2%)を対象に,その臨床病理学的特徴および予後の検討を行った.性別では,男性が7例と優位を占め,占居部位では直腸が5例と最も多かった.また, 10例中4例に大腸腺腫症が合併しており,遺伝的素因が関与していると考えられた.組織学的には全例,分化型であった. H3 3例, P3 1例と遠隔転移率が高く,病悩期間が比較的短いにもかかわらず高度進行例(stage IV, Dukes C, Astler & Coller C2が6例)が多かったことから,若年者大腸癌の進行は早いと考えられた.切除不能2例を含めた全症例の5年生存率は30%,切除例40%と予後不良であった.一方,切除例をDukes B, Cの進行例(n=5)とDukes Aの早期例(n=3)にわけ検討すると,前者では4例が2年以内に再発死亡しているのに対して,深達度pm以下でn(-)の後者では全例無再発にて長期間生存中であることから,若年者大腸癌の予後は早期発見により改善されると予想された.
  • とくにその有用性と限界について
    藤本 三喜夫, 内田 直里, 道後 正勝, 栗栖 佳宏, 河毛 伸夫, 中井 志郎, 増田 哲彦
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1550-1554
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近の1年7カ月間に当科で経験した肝癌に対する皮下埋め込み型動注リザーバーによる間欠的反復化学療法症例について検討し以下の知見を得た.
    1. 原発性肝癌および大腸癌肝転移症例に対して肝切除術後に動注療法を行うことは,残肝に手術時すでに存在する可能性のある微小転移巣のコントロールまたは新たな残肝再発を予防する意味において非常に有用な方法であると考えられた.
    2. しかし,原発性肝癌および大腸癌肝転移手術不能例に対しての動注療法は,延命効果の面では充分満足できる結果を得られたが,腫瘍の結小効果のあるいは腫瘍マーカーからの検討では満足できる結果ではなかった.
    3. 以上の結果より,手術不能の原発性あるいは転移性肝癌症例に対する動注療法については,その限界を見極めた上で, PEIT等と組合せた集学的な治療の必要性を痛感した.
  • 病理組織所見との関連を中心として
    吉川 高志, 内藤 梓, 森田 敏裕, 浅生 幸郎, 中野 博重
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1555-1559
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    壊疽性胆嚢炎の様な不可逆性の胆嚢炎を見逃さないための診断能の向上をめざして,過去約6年間に当院で手術を施行した急性胆嚢炎21症例を対象に,摘出標本の病理組織所見別に診断能の面より検討を行い以下の成績を得た.急性胆嚢炎の炎症の進行度の判定には,初診時の白血球数,超音波検査での胆嚢壁の性状,および経時的超音波検査での胆嚢腫大,胆嚢壁の性状, Debrisの変化の観察が有用で,胆嚢腫大が増強し胆嚢内debrisが消失せず,壁不整が出現する症例は壊疽性胆嚢炎であることを強く示唆している.
  • 森田 章夫, 小野山 裕彦, 宮崎 直之, 斎藤 洋一
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1560-1565
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘出術の功罪について検討する目的で,最近10年間に経験した胆石症例で胆嚢摘出術のみを施行した276例を対象として,術後合併症およびアンケート調査に基づいた遠隔成績より胆嚢摘出後症候群について検討した.術前の症状や併存疾患の有無と,術後合併症および遠隔時愁訴との間に関連性は認めなかった.術後合併症は37例(13.4%)にみられたがほとんどが一過性の軽度なものであった.アンケートは229例(82.8%)について回収し26例(11.4%)に遠隔時愁訴を認めた. 26例のうち18例に対し追跡調査を行い,慢性肝炎2例を除く16例の画像診断および血液検査上異常は認めなかった.遠隔時愁訴で最多の腹痛は14例(6.1%)に認められたが,術後5年以上経過した症例には認めなかった.以上より,胆嚢摘出術は術後合併症,遠隔成績ともに極めて満足すべきものであり,その根治性や癌合併の危険性を考慮すると手術療法が治療の原則であると思われた.
  • 村上 義昭, 横山 隆, 児玉 節, 竹末 芳生, 沖田 光昭, 中光 篤志, 今村 祐司, 山東 敬弘, 津村 裕昭, 宮本 勝也, 平田 ...
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1566-1572
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腫瘍性膵嚢胞11例(膵管内腺癌2例,膵管内腺腫2例,粘液嚢胞腺癌1例,粘液嚢胞腺腫3例,漿液嚢胞腺腫1例, solid and cystic tumor 1例,嚢胞合併膵癌1例)の術前診断について考察を行った.膵管内腺腫・腺癌は男性の膵頭部に,粘液嚢胞腺腫・腺癌は女性の膵体尾部に多くの発生を見た. US・CTでは,腫瘍性膵嚢胞症例は,隔壁,壁在結節を有するものが多く,非腫瘍性嚢胞との鑑別に有用と考えた. ERPでは,膵管内腺腫・腺癌は,膵管内の透亮像を伴う主膵管の拡張と粘液の流出を伴う十二指腸乳頭の開大が特徴的であった.血管造影では,膵外の動脈の壁不整,脾静脈の閉塞をきたした症例に悪性症例が多かった.
    以上より,膵嚢胞においては,隔壁,壁在結節を有するものには,腫瘍性嚢胞を考慮し,悪性嚢胞の指標としては,膵外動脈および門脈の壁不整・閉塞の所見が有用と考える.
  • 進藤 俊哉, 登 政和, 田中 信孝, 村上 信乃
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1573-1575
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者の内シャントにできた感染性仮性動脈瘤を経験した.症例は28歳の女性で,内シャントを作成し10年間慢性透析を行ってきた. 1991年2月より前腕穿刺部に感染を起こすことがあり, 6月になって内シャントが急激に腫大し,菌血症を共なった仮性動脈瘤となったため緊急手術を施行した.術後は神経障害や運動麻痺を残すことなく軽快した.作成後10年を経て内シャント部に感染性の仮性動脈瘤を形成した例は文献上報告がなく,本症例が本邦で第1例目である.
  • 金 成弼, 芝 英一, 宮内 啓輔, 小林 哲郎, 森 武貞, 高井 新一郎
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1576-1579
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Werner症候群は比較的稀な疾患であり,高頻度に悪性腫瘍を合併することが知られている.今回,われわれはWerner症候群に合併した乳癌の症例を経験した.患者は, 38歳女性で右乳房腫瘤を主訴として当科受診した.触診, mammography,超音波検査,穿刺吸引細胞診で乳癌と診断され,大胸筋温存によるPatey法を施行し,術後経過良好で2週間後退院となった.本症候群においては癌腫系に比べて肉腫系が多く,また乳癌を合併した報告は少ない.
  • 岸本 弘之, 澄川 学, 狩野 卓夫, 日野原 徹, 小松 健治, 山代 昇
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1580-1584
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌術後9年目に発症した男子早期乳癌症例を経験した.患者は68歳の男性で, 1982年,前庭部胃癌の診断で胃切除術を受けた.組織学的には中分化腺癌で深達度ss, INFβ, ly0, v0, n (-)のstage Iの進行度であった. 1991年3月,右乳腺CE区の1cm大の圧痛を有する腫瘤に気付き受診した.超音波検査と穿刺吸引細胞診で乳癌と診断し,大胸筋温存乳房切除術を施行した.組織学的には硬癌で,女性化乳房を合併していた. t1, n0, m0のstage Iであり,ホルモンレセプターはER, PgRとも陽性であった.男子乳癌は1%程度の頻度とまれで,女性よりも発症年齢が高い.一般に予後不良とされていたが,最近は女性乳癌と同程度と報告されている.胃癌との合併は本邦で10例目であったが,両癌腫ともstage Iであり,予後は良好と考えられた.早期発見のためには男子乳癌に対する啓蒙がさらに必要である.
  • 外川 明, 鈴木 秀, 塚本 剛, 志村 賢範, 真田 正雄, 加藤 厚, 平田 正雄
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1585-1590
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺原発悪性リンパ腫は極めて稀な疾患であり,画像上特徴に乏しく,その術前診断は困難とされている.最近,われわれは穿刺吸引細胞診により,術前確定診断された症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は57歳女性,右乳房腫瘤を主訴に当科受診,腫瘤はCAE領域45×45mm弾性硬,表面平滑であり,患側腋窩に20×15mmのリンパ節1個触知した.穿刺吸引細胞診にて,悪性リンパ腫と確定診断され,定型的乳房切断術が施行された. LSG分類びまん性中細胞型, Ann-Arbor分類IIE期であった.術後CHOP療法を行い,顆粒球減少に対しては, G-CSFを投与して, 8クール行った.術後, 6カ月を経過した現在,再発の徴候はない.
  • 渡辺 秀裕, 山本 英希, 清水 一雄, 酒井 欣男, 北浜 秀男, 陳 光永, 北村 裕, 長浜 充二, 松井 聡, 江連 司, 大場 英 ...
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1591-1596
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    短期間に悪性化再発を来した稀な乳腺葉状腫瘍を経験したので若干の文献的考察を加え報告した.症例は46歳女性で,右乳房C領域の腫瘤(2×1cm)摘出を受け線維腺腫と診断. 2年8カ月後再発(8×7cm)し,再摘出をうけ良性葉状腫瘍と診断. 1年3カ月後C (4×2cm), AB (4×4cm), D (6×5cm)の3領域に再発し乳腺全切除,乳房再建術を行った.摘出乳腺に悪性所見はなかった. 9カ月後AB (6×5.5cm), DB (8×5cm), E (6×5cm)の3領域に再発し急速増大した.術中組織診で悪性と診断,大胸筋浸潤やリンパ節腫大を認め,定型的乳房切除術を行った.
    過去32年間で検索し得た悪性136例中,悪性化再発例は20例(14.7%)であった.悪性では血行性転移が多く死亡率も高いことから,良性といえども再発悪性化を考慮すると周囲組織を含めて切除することが重要で,厳重な経過観察を行うべきである.
  • 中野 聡子, 内田 賢, 長原 修司, 山下 晃徳, 武山 浩, 南雲 吉則, 篠崎 登, 桜井 健司
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1597-1601
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1990年に当科で経験した胃癌の乳腺転移1例に,本邦報告例18例を加え,臨床的検討を行った.原発巣の胃癌は全例進行癌であり,組織型は低分化型が多かった.転移巣の乳腺腫瘍は進行したものが多かった.乳腺以外の転移は,リンパ節,卵巣,皮膚,骨に多くみられた.胃癌の乳腺転移発見後は治療にかかわらず予後不良であり,転移巣の手術適応は他に転移を認めず,局所のコントロールが必要である場合に限られるべきであると思われた.
  • 野中 誠, 門倉 光隆, 谷尾 昇, 山本 滋, 成澤 隆, 小林 聡, 久米 誠人, 高場 利博
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1602-1605
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,女性. 15歳時,胸痛と喀血を主訴に近医を受診し,前縦隔に腫瘤陰影を指摘されたが,その後の大量喀血後に陰影が消失した. 1990年に再度喀血し,当院に入院した. CTにて左前縦隔腫瘤を認め,左気管支動脈・左内胸動脈造影で同腫瘤部位の濃染像を認めた.これらの精査から喀血は縦隔腫瘍の肺内穿破によるものと思われ,手術を施行した.胸骨正中切開にて開胸すると,胸腺左葉に,左肺(S3)や心膜と線維性癒着を示す前縦隔腫瘍を認め,これらを合併切除した.病理組織診断は成熟奇形腫であり,合併切除した左肺S3には慢性炎症反応および出血巣を認めた.縦隔腫瘍は一般に検診や圧迫症状で発見され喀血をきたすことは稀とされるが,本症例のように,慢性炎症性線維性癒着が原因となって,肺内穿破により喀血をきたす縦隔腫瘍が存在することも念頭に置き,精査を進めることが重要であると思われた.
  • 横山 和子, 森 秀樹, 日下部 輝夫
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1606-1609
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは胃癌患者の胃全摘術に対し,硬膜外麻酔併用インフルレン麻酔下に完全房室ブロックを来した1症例を経験したので報告する.
    症例は63歳,男性で,胃癌の診断のもとに胃全摘術を予定した.手術前心電図に異常はなかった.麻酔は胸部硬膜外麻酔とイソフルラン,笑気,酸素による吸入麻酔を併用した.手術開始約20分後,心電図モニターのアラームがなり,完全房室ブロックであることが判明,著明な徐脈と低血圧を呈した.直ちに硫酸アトロピン0.5mgの静脈注射により改善,以後問題なく経過,無事手術は終了した.術後不整脈の出現もなく,良好な経過をとり退院した.
    本症例は心電図モニターが早期診断の決め手となったもので,適切な処置ができたと考えられる.
  • 堀越 淳, 藤井 毅郎, 横室 浩樹, 鹿野 純生, 鈴木 直人, 塩野 則次, 渡邊 善則, 吉原 克則, 徳弘 圭一, 小山 信彌, 高 ...
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1610-1614
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Björk-Shiley弁による僧帽弁置換術14年後血栓形成による弁機能不全に対し,緊急手術で救命し得た1例を経験した.症例は44歳女性,僧帽弁閉鎖不全症の診断にて昭和51年Björk-Shiley弁による僧帽弁置換術後,外来通院抗凝固療法を施行していたが,平成元年8月出血性胃潰瘍での入院を契機に心不全症状が増悪.心エコー図, Swan-Ganzカテーテル検査等により人工弁機能不全と診断し緊急手術, minor-strut部の新鮮血栓による著しい弁可動性制限が認められたため, St. Jude Medical弁29mmにより再弁置換を施行した.術後は経過良好で第20病日に退院した.本症例は14年間特に心愁訴なく経過していたものであるが,出血性胃潰瘍のため抗凝固療法中止,止血剤投与,輸液などの過剰水分負荷によって誘発された心不全と血液凝固能亢進により形成されたと推測される新鮮血栓が,決定的な人工弁機能不全を招いたものと考えられた.
  • 沖津 宏, 輿石 晴也, 坪井 正博
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1615-1618
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    発症後12日間を経過し,膿胸を伴った特発性食道破裂の1手術例を経験した.症例は54歳,男性で発症7日後に当科に転院し,保存的治療にては膿胸腔の拡大を認めたため手術を施行した.手術は横隔膜切開を伴う左開胸,開腹下に肥厚した壁側胸膜の切除と食道破裂部位の縫合を施行し,縫合不全防止対策として縫合部を含む食道周囲を有茎大網弁により被覆した.術後経過は良好であり,食道の縫合不全,大網弁被覆部の食道狭窄,逆流性食道炎などは認めず,術後の入院期間も24日と短期間であった.すなわち,特発性食道破裂で診断遅延のため破裂部位の直接縫合時期を逸した症例に対する治療として,今回の手術術式はきわめて有用であった.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修, 石川 隆, 淵本 定儀, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1619-1623
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは胃癌を催吐因子として発症した特発性食道破裂の1例を経験し,保存的治療を行い治癒せしめたので報告する.
    症例は65歳男性.突然の吐血で来院.緊急CT検査と緊急内視鏡検査を行い,胃前庭部の進行胃癌と胸水を認め,胃切除術を施行した.術後食道透視にてバリウムの漏出が認められ,特発性食道破裂および特発性食道破裂に伴う胸腔内膿瘍と診断された.緊急手術後のため, intravenous hyperalimentation (IVH)と胸腔ドレナージにて保存的に治療し良好に経過した.
    特発性食道破裂は,早期診断と外科的治療が原則ではあるが,本症例のような全身状態不良の場合には,保存的治療が選択されるべきと考えられた.
  • 黒木 嘉人, 山田 明, 榊原 年宏, 山崎 一麿, 山下 巌, 斉藤 光和, 清水 哲朗, 坂本 隆, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤巻 ...
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1624-1628
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    全周狭窄型食道癌のほとんどは進行癌であるが,表在癌で全周狭窄を呈した稀な1例を経験したので報告する.症例は54歳男性. 2年6カ月前より時々嚥下困難が出現していたが,約2カ月前からほとんど食事摂取不能となり入院.下部食道EaEiに全周性の狭窄を認め,全周狭窄型(深達度MP)食道癌と術前診断した.しかし術中所見で触診にて表在癌と判断し,腹腔内リンパ節転移や臓器転移を認めなかったため,非開胸食道抜去,食道胃吻合術が施行された.切除標本では,癌巣は2.0×2.7cm大で食道全周を占める0-IIc型癌であった.病理組織検査では,ほとんどが粘膜内に限局し,わずかに粘膜下に達している低分化型扁平上皮癌であった.脈管侵襲無く,摘出されたリンパ節には転移は認めなかった.アカラシアを示す所見は認めず,粘膜固有層の線維化が認められ,これが狭窄の成因と考えられた.
  • 平園 賢一, 奥村 輝, 水谷 郷一, 藤本 隆夫, 花上 仁, 宮北 英司, 岡田 敬司, 田島 知郎, 三富 利夫
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1629-1633
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,術前に胃・腎重複癌を同時に診断し,両癌に対して一期的根治手術を施行し得た1例を経験したので報告する.症例は70歳男性で,吐気を主訴とし,上部消化管造影・胃内視鏡生検にて胃癌を診断, CTスキャンおよび血管造影にて右腎癌を診断し,胃・腎同時性重複癌の診断にて胃亜全摘術および右腎摘術を一期的に施行した.
    このような臨床報告例は,自験例を含めわれわれの調べた限り本邦では7例で,そのうちの5例が一期的根治術を施行していた.寿命の延長や診断の進歩により重複癌の臨床例は増加するものと考えられるが,その診断は必ずしも容易ではない.これらの点を加味し本症例について考察した.
  • 秦 怜志, 黒須 康彦, 野中 倫明, 松田 健, 遠藤 潔, 天野 定雄, 森田 建, 須永 進
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1634-1638
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大量吐血をきたした十二指腸海綿状血管腫の1例を経験したので本邦報告例6例と併せ文献的考察を加えて報告する.
    症例は69歳女性で,突然の吐血を主訴に救急受診した.緊急内視鏡検査にて十二指腸球部前壁からの出血を認めたため止血処置を行い,その後の再検および総肝動脈造影にて海綿状血管腫と診断し十二指腸球部部分切除を行った.標本は14×9mm大で軽度の凹凸不整を認めた.病理組織所見で海綿状血管腫と診断された.
    消化管血管腫は消化管腫瘍の0.3%に過ぎず,十二指腸血管腫はそのうちの2.7% (7例)ときわめて稀な疾患である.しかし大量出血をきたしやすく積極的な手術療法が必要であるが,術前術中検査により侵襲が過大にならぬよう配慮することが肝要と考えられた.
  • 川口 貢, 坂崎 庄平, 西森 武雄, 朴 利敦, 吉井 友季子, 前川 仁, 梅山 馨
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1639-1643
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸管型Behçet病は比較的稀であるが,穿孔の合併率は高いと言われている.今回われわれは,腸管型Behçet病の小腸穿孔例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は63歳女性,約2.5年前よりBehçet病にて加療中であった.主訴は腹痛,来院時腹部は軽度膨隆し,全体に圧痛,抵抗および筋性防御を認めた.また腹部単純X線にてfree airを認めた.消化管穿孔の診断にて緊急手術を施行した.初回手術時に回腸に穿孔を認めた.腸壁の炎症性変化が強く,また穿孔原因が不明であったために穿孔部の縫合閉鎖,回腸瘻造設および腹腔ドレナージを施行した.初回手術後ステロイドホルモンなどの投与にてコントロールを行った.回腸瘻造影や大腸内視鏡を施行して病変部の確認を行った.二期手術は回盲部切除を行い,初回手術後104日目に軽快退院した.
  • 大山 司, 大口 善郎, 中場 寛行, 飯干 泰彦, 北川 透, 奥村 賢三, 大下 征夫, 高尾 哲人, 辻村 享, 片山 正一, 羽田 ...
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1644-1647
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    放射腺腸炎による晩期消化管障害により,狭窄,穿孔,瘻孔形成,出血等が発生し,時として外科的治療を要する場合があるが,回腸皮膚瘻の報告は非常に稀である.今回,放射腺腸炎に合併した回腸皮膚瘻に対し瘻孔部腸管切除を施行し,良好な結果を得たので報告する.症例は, 68歳の女性で,子宮頸癌に対し拡大子宮全摘術及び放射線療法を施行後,狭窄の症状を繰り返し, 10年目に回腸皮膚瘻を来した.放射線腸炎による2カ所の狭窄部に挟まれた部分と手術創の間で瘻孔が形成されていた.狭窄部を含めた瘻孔部腸管切除及び端々吻合により症状の改善を認め,現在も良好に経過している.本症例における瘻孔形成は,狭窄が主たる原因と考えられ,狭窄部を含め放射線障害の認められた腸管の切除を施行した.
  • 山守 暢子, 成田 洋, 吉冨 裕久, 保里 恵一, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏, 由良 二郎
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1648-1653
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,男性.主訴は右下腿のフルンケル様丘疹.既往歴として10年前より潰瘍性大腸炎にて時々サラゾピリンを服用していた. 2週間前に出現した右下腿のフルンケル様丘疹が抗生物質治療にもかかわらず急速に増大してきたため当科を受診した.来院時同丘疹は直径8cm大の類円形潰瘍となっており,壊疽性膿皮症に特徴的な所見を呈していた.全身所見では微熱,頻脈,下痢を認め,便潜血反応も陽性,注腸,直腸鏡検査でも潰瘍性大腸炎の所見が得られた.よって,潰瘍性大腸炎活動期に合併した壊疽性膿皮症と診断,直ちにサラゾピリン治療を開始した.その結果,皮疹は急速に改善し,同時に潰瘍性大腸炎の全身症状も消失した.
  • 清水 喜徳, 李 雨元, 李 雅弘, 安藤 進, 亀山 秀人, 村上 雅彦, 小池 正, 諸星 利男
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1654-1659
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性.左下腹部痛,水様性下痢を主訴に入院し,注腸造影検査,大腸内視鏡検査及び生検にて,横行結腸からS状結腸に病変が存在する大腸型Crohn病と診断した.入院後Salazopyrin, IVHによる内科的治療を開始したが, Salazopyrinによる薬疹が出現したためこれを中止し, Corticosteroid, Flazylを投与した.しかし, 2カ月間の内科的治療でも改善傾向がなく,頻回の下血を繰り返すため左半結腸切除術を施行した.摘出標本では,結腸漿膜面に異常はなく瘻孔形成もなかった.粘膜面はcobblestone appearanceが認められたのみであった.術後自覚症状は消失し, 3カ月後の注腸造影検査でも再発はなく退院した.高齢者に発症する大腸型Crohn病は極めて稀であり,また,下血といった症状の悪化をきたしたため,予備能力の低い高齢者であることを考慮して内科的治療に固守せず,外科的切除を行って治癒せしめることができた.
  • 大橋 一雅, 出月 康夫, 奥山 正治, 今井 龍雄
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1660-1664
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結腸静脈の石灰化を伴った結腸炎の症例を経験した.症例は77歳の男性でイレウス症状にて発症した.腹部単純X線写真にて,右側腹部の石灰化陰影を認め,又注腸造影上,上行結腸から横行結腸にかけて,辺縁の鋸歯状化と内腔の狭窄像を認めた.保存的治療にてもイレウス症状の改善がみられないため,虚血性腸炎の術前診断にて手術を施行した.開腹所見で盲腸よりS状結腸までが暗黒色となり壁の浮腫が認められたので,同部の通過障害によるイレウスと判断し結腸を広範に切除した.摘出標本の軟線X線像を石灰化陰影の局在部位を同定する目的で撮影したところ,盲腸より横行結腸にかけて結腸の壁内の静脈より辺縁静脈にかけ,あたかもバリウム注入後に撮影したかのような石灰化像をみとめた.病理所見では粘膜下層を主体とする壁全層に及ぶ炎症性の変化であった.
  • 田辺 博, 今井 直基, 渡辺 進, 橋本 高志, 下川 邦泰, 池田 庸子
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1665-1669
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性腹症にて発症した成人の腸間膜リンパ管腫の1例を経験したので報告する.症例は42歳,男性.上腹部痛と発熱を主訴として近医を受診,急性胆嚢炎の診断に当院を紹介された. WBC 13,900/mm3, CRP 3+と炎症所見を認めた.腹部超音波検査では上腹部に胆嚢とは異なる,境界明瞭で内部に蜂巣様構造を示す嚢胞性の病変を認めた.腹腔内に発生したリンパ管腫に感染が加わったものと診断し,保存的治療をした後手術を施行した.
    開腹すると網嚢内に横行結腸間膜から発生した超手拳大の腫瘤を認めた.腫瘍は周囲と強固に癒着していたが剥離可能であり,これを摘出した.摘出標本は暗赤色で表面平滑な腫瘤で,割面は蜂巣様構造を呈していた.組織学的には炎症を伴ったリンパ管腫の像であった.本邦における成人の腸間膜リンパ管腫の報告は極めて少なく,その臨床的特徴について検討した.
  • 斎藤 雄史, 丹羽 傅, 丹羽 篤朗, 大和 俊信, 内藤 明広, 角岡 秀彦
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1670-1675
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結腸癌による消化管内瘻は稀な合併症であるが,最近私共は横行結腸癌による空腸結腸瘻の1例を経験した.本例は下痢を主訴とする49歳男性である.注腸造影・上部消化管造影・大腸内視鏡検査にて悪性腫瘍による空腸結腸瘻の診断を得た.術中所見では左側横行結腸に存在する手拳大の腫瘍がトライツ靱帯肛門側10cmの空腸へ瘻孔を形成していた.手術は横行結腸および腫瘤部空腸切除を施行した.組織学的には中分化型腺癌, si・n (-)・P0・H0・stage IIIであった.
    本邦の結腸癌による空腸結腸瘻の報告例は自験例を含め7例あったが,リンパ節転移,肝転移,腹膜播種を認めた症例はなく,組織学的にも比較的悪性度の低い腫瘍により内瘻が形成されると考えられた.
  • 松井 祥治, 黒田 大介, 張 麗月, 田畑 文平, 藤盛 孝博, 石川 羊男
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1676-1680
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性で体格中等度, 8年前に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断されたが,内科的治療にて数カ月で軽快した.しかしその後は大腸精査を受けずそのまま放置していたが,今回腹部膨満感と粘血便を主訴として再来院した.注腸透視と下部消化管内視鏡検査で全結腸に及ぶ潰瘍性大腸炎とそれに合併した進行直腸癌(Rs~Ra~Rb)と診断された.全結腸切除兼直腸切断術を施行し右下腹部に永久回腸瘻を造設した.一且軽快退院したものの約10カ月後に局所再発,多発性肺転移,肝転移で死亡した.
  • 藤井 秀則, 山本 広幸, 田中 猛夫, 谷川 允彦, 村岡 隆介
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1681-1686
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年腹部超音波検査の進歩と普及により肝嚢胞の診断が容易となり,発見の機会は増加している.当院における1990年1年間の腹部超音波検査件数は約5,100件で168例(3.3%)に肝嚢胞を認め,大きさでは直径4cm以下がほとんどで8cm以上は3例であった.巨大肝嚢胞例2例に対し超音波ガイド下によるエタノール少量注入を施行し良好な結果を得た.
    自験例を含めた本邦報告例66例の検討では,注入薬剤はエタノール62例,塩酸ミノサイクリン4例であった.注入方法としては超音波ガイド下に7~8Frのピッグテールカテーテルを嚢胞内に挿入して行うのが一般的で,注入後10~30分の体位変換を行い排液する.
    エタノール注入例を検討すると, 1回の注入量は少量にとどめ,注入後は排液を充分に行い,持続ドレナージを行い2回あるいは3回以上の反復注入をするのが最適と考えられた.
  • 原 均, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 森田 真照, 石橋 孝嗣, 谷村 雅一, 秋元 寛, 仁木 正己
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1687-1692
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    早期胆嚢癌を組織学的壁深達度がm, pmまでの胆嚢癌と定義し,自験8例につきその診断,手術術式につき検討した.なお,自験例の組織学的壁深達度はm 6例, pm 2例である.術前診断は,胆石症7例,胆嚢ポリープ1例であり,胆嚢癌との術前診断例はなかった.癌の診断時期は,術中診断例が2例で,その肉眼型は,いずれも隆起型であり,大きさは, 0.5cmと1.7cmで迅速病理組織検査で癌と診断した.その他の6例は,術後,病理組織検査で癌と判明したもので,その肉眼型は, 6例中5例が平坦型であり,残り1例は大きさ0.5cmの隆起型で術中肉眼的に良性と判断したものである.施行術式は,術中診断群2例中1例には,肝床側で深達度の判定が困難なため胆摘とリンパ節郭清に肝床切除を付加した.残り1例は,腹腔側であったため胆摘とリンパ節郭清を施行した.術後の病理組織検査では,いずれも深達度mで, n (-)であった.一方,術後診断群6例(m: 4, pm: 2)のうち,深達度mであった4例には2期的に追加手術は行わなかった.深達度pm 2例中で肝床側の1例に肝床切除とリンパ節郭清を追加した.他のpm 1例は,腹腔側であり追加手術は行わなかった.全例n (-)で,遠隔成績は, 8例生存中である.
  • 秋山 高儀, 竹川 茂, 加藤 真史, 斉藤 人志, 喜多 一郎, 小島 靖彦, 高島 茂樹, 木南 義男, 谷野 幹夫, 加藤 修
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1693-1697
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆管,膵同時性重複癌を有し,さらに腸回転異常を合併し,膵癌による門脈閉塞のため著明な求肝性側副血行路の形成をみた1例を経験したので報告する.症例は68歳女性.黄疸を主訴に来院した. PTCでは肝門部胆管に径2cmの狭窄部を認め, PTCDを施行した. PTCDからの胆汁および胆管擦過細胞診でclass Vが得られた. ERCPでは主膵管は膵頭部で断裂しており,血管造影では総肝動脈,脾動脈にencasementを認め,門脈は膵頭部で閉塞し肝十二指腸靱帯に沿う側副血行路の形成を認めた.手術所見では肝門部胆管に腫瘍があり,膵は全体癌で胆管切除,胆管空腸吻合術を施行した.腸管はnonrotationの状態で膵頭部,十二指腸,上行結腸はまったく後腹膜に固定しておらず,このため膵癌による門脈閉塞に伴い肝十二指腸靱帯内に著明な求肝性の側副血行路が形成されたものと推察された.病理組織所見では胆管,膵ともに高分化腺癌で重複癌と考えられた.
  • 坪野 俊広, 福重 寛, 武藤 輝一
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1698-1701
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈に穿通した膵仮性嚢胞の1例を経験した.
    症例は60歳の男性で,心窩部痛を主訴に当科に来院した.初診時すでに膵鈎状突起に嚢胞内出血を伴う膵仮性嚢胞を認めた.経過中に消化管内や腹腔内への出血は認めず,腹部血管造影などでも出血血管は同定できなかったが,破裂の危険が大きいと考え手術を施行した.術中に出血源が上腸間膜動脈頭側の大動脈であることが判明し,穿孔部を直接縫合して止血を行った.膵嚢胞は膵頭十二指腸切除術により摘出した.
    膵嚢胞内出血の症例は最近報告例が増加しているが,大動脈に穿通していた症例は本邦で初めてであり,診断及び治療に苦慮したので若干の考察を加えて報告した.
  • 中村 勝隆, 清水 一太, 斎藤 寛, 武田 義敬
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1702-1705
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    極めて稀な,膵尾部内副脾の嚢胞形成例を経験したので報告する.症例は28歳,男性.上腹部痛・背部痛を主訴として来院.入院時理学的所見では右上腹部に圧痛を認めたが腫瘤は触知せず.血液検査は著変無し.腹部CTおよび超音波検査で膵尾部に一部石灰化を伴った,表面平滑な単房性嚢胞を認めた. ERPでは膵管は狭窄・拡張ともにみられず,膵管と嚢胞との交通も認められなかった.膵嚢胞の診断のもとに開腹すると,膵尾部に,非薄化した膵実質に覆われた直径約25mmの嚢胞を認め,膵尾部切除術を施行した.嚢胞の内容は薄茶色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず, amylaseは低値であった.組織学的に膵尾部内の類表皮嚢胞で,嚢胞周囲に脾組織が認められ,嚢胞を形成した膵尾部内副脾と診断された.副脾は剖検例の約10%にみられ,その約20%が膵尾部にみられ,稀なものではないが,嚢胞形成例は世界で4例目である.
  • 米永 史代, 小代 正隆, 岩谷 真宏, 年永 隆一, 竹之下 満, 有村 耕一, 岩重 弘文, 島津 久明
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1706-1711
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    馬蹄腎合併腹部大動脈瘤の2例を報告した. 66歳と75歳の男性であり, 2例とも他疾患の加療中に腹部腫瘤を指摘されて来院した.超音波, CT,血管造影などの検査によって腹部大動脈瘤が証明され,同時にその腹側に騎乗するように馬蹄腎の存在が認められた.大動脈瘤は大動脈分岐部に達していたが, 2例とも腎峡部を切離することなく処置することができた.通常の血管支配のほかに異常腎動脈が数本分布していたが,これらは術前検査によっては完全に同定することはできなかった.第1例では腎動脈を再建したが,第2例では分布範囲が下極の一部に限局していたため結紮・切離した.手術に際しては,腎峡部の切離の必要性の有無,腎血管の処置の2点が問題になるが,最終的な判断は術中に下さねばならないことが稀ではないので,いろいろな可能性を考慮して充分な準備を整えたうえで手術に臨むことが肝要と思われた.
  • 小出 章, 寺西 正, 鈴木 宏志
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1712-1716
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    副腎皮質腺腫によるCushing症候群は,一側性,単発性によるものがほとんどである.今回われわれは両側多発性副腎腺腫によるCushing症候群の1例を経験したので報告する.症例は, 39歳女性,主訴は肥満と高血圧.中心性肥満,満月様顔貌,皮膚線条, buffalo humpを認め,内分泌学的検査,腹部CT,副腎静脈造影,副腎シンチ等の検査にて両側副腎腺腫によるCushing症候群と診断し,上腹部横切開にて両側副腎全摘術を施行した.摘出標本は,右側に15×10×10, 30×20×20mm,および左側に13×10×10mmの計3個の被膜を覆われた境界明瞭で割面黄褐色の腫瘍を認めた.病理組織では,大型のclear cellの領域と充実性のcompact cellの領域が不規則な地図状に混在しており,典型的なadenomaであった.両側副腎腺腫によるCushing症候群は本邦では自験例を含め8例と稀であり,結節性過形成との鑑別において留意すべき疾患である.
  • 小野 隆男, 金 潤吉, 大野 勝之, 中崎 忠, 高 用茂, 岡 寿士, 仲吉 昭夫
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1717-1720
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.上腹部腫瘤を主訴として来院.腫瘤は鶏卵大,半球状で弾性軟であり,初め腹壁脂肪腫と考えたが,腹圧により腫瘤が増大するため腹壁ヘルニアと診断した. CT所見,超音波所見では腫瘤が左右の腹直筋の間を通って皮下に達しており,正中腹壁ヘルニアと診断した.手術では白線より腹膜前脂肪が脱出していたが,ヘルニア嚢はなく腹膜前脂肪を切除し,左右腹直筋鞘を縫合,修復した.自験例を含めた本邦報告例27例を検討し報告する.
  • 小出 直彦, 草間 次郎, 丸山 雄造
    1992 年 53 巻 7 号 p. 1721-1724
    発行日: 1992/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    開腹創瘢痕内異所性骨形成の1例を経験したので,その成因に関する検討を加えて報告する.症例は61歳の男性,約13年前に胃切除術を受けた.術後約5年目より上腹部正中切開創痕に一致して硬結を認めるようになり,腹部単純X線検査で創痕のほぼ全長に長管骨状の所見を認めた.本症の圧迫によると考えられた上部消化管通過障害症状を伴うため,切除を行った.切除標本は大きさ16×3.2×2.8cmで,組織学的に骨髄組織を伴った骨,軟骨組織であった.本症の成因には諸説があげられているが,本例の病理組織所見より化生説が有力と考えられた.すなわち瘢痕組織において間葉系幼若細胞が線維芽細胞,骨芽細胞へと化生し,この際変性筋組織等より供給される基質(糖質)と線維芽細胞より産生される膠原原線維にカルシウムの沈着がおこり,硝子様組織から骨組織の形成に到ると考えられた.
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