日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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53 巻, 8 号
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  • 土屋 周二
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1741-1752
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 竹末 芳生, 横山 隆, 児玉 節, 山東 敬弘, 中光 篤志, 村上 義昭, 今村 祐司, 宮本 勝也, 沖田 光昭, 津村 裕昭, 平田 ...
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1753-1757
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当施設においてMRSA分離頻度の高い外科病棟(E3),集中治療室(ICU),分離頻度の少ない内科病棟(W2)を選び,平成2年度における医療従事者のmethicillin耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)保菌者の検討を行った. MRSA保菌者はW2, ICUでは認められなかったが, E3では12.5%に検出された. E3の患者病巣分離MRSA株は過去2年間コアグラーゼII型が98%を占めており,これらはenterotoxin型でC産生株(24%), B産生株(22%), AC同時産生株(52%)に分類された. E3のMRSA保菌者分離株はC産生株, B産生株がみられたが,平成2年度に最も流行したAC同時産生株の保菌者は検出されなかった.このこととICUで保菌者が認められなかったことから, MRSAの院内感染の原因は保菌者のみではなく患者間のMRSAの交叉感染や浮遊菌などの環境汚染が重要であり,保菌者の存在はMRSAによる環境汚染の一部分現象を反映しているに過ぎないとのとらえかたも可能と考えた.
  • とくに超音波像と組織像との対比
    春次 智三郎, 藤本 泰久, 加藤 保之, 前川 仁, 妙中 直之, 東 雄三, 須加野 誠治, 曽和 融生, 梅山 馨
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1758-1764
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    微小甲状腺癌における超音波診断法の役割を見る目的で,摘出標本上1cm以下の甲状腺腫瘤13例(癌11例,腺腫2例)を対象とし,各種画像診断との比較,超音波画像と病理組織像との対比を行った.また,超音波画像上1cm以下の甲状腺腫瘤16例を対象とし,経過観察例の検討を行った.各種画像診断との比較では,超音波検査は正診率92.3%と最も微小甲状腺腫瘤の診断法では有用であった.病理組織標本との検討では,乳頭様構造の多い場合は腫瘤は内部エコーが低く,その中に点状高エコーの散在するものが多く,濾胞様構造の多い場合は内部エコーレベルの高いものが多い傾向がみられた.また,経過観察の検討から超音波検査にて良性と考えられるものは経過観察で良いと考え,悪性が考えられるものは,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行い,外科的治療の方針を決定すべきと考えられた.
  • 田口 和典, 高橋 弘昌, 佐々木 文章, 中西 一彰, 蓮実 透, 浜田 弘巳, 秦 温信, 内野 純一
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1765-1772
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1960年より1989年までの間に当科にて初回治療を行った女性乳癌症例のうち, 35歳未満を若年者乳癌群とし, 35歳以上の一般乳癌群と比較検討したところ以下の結果を得たので報告する.
    1. 若年者乳癌症例は女性乳癌症例563例中59例(10.5%)を占めた.
    2. 累積生存率については,若年者群と一般群に有意差を認めなかった.
    3. 乳房全域癌,またn1β, n2, Stage IIIa・Stage IIIbなどの進行例では若年者群の予後が不良である傾向を認めた.
  • 34症例の検討
    三浦 宏二, 高野 征雄, 工藤 進英
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1773-1778
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1989年4月より1991年1月までに34例の乳癌症例に一期的乳房再建を行った.切除は児玉法で行い,再建は広背筋皮弁法が30例,腹直筋皮弁法が4例であった.年齢は28歳から58歳で平均44.5歳,手術時間,入院日数は児玉法単独(28例)が2時間12分, 19.8日,児玉法+広背筋皮弁法が4時間48分, 20.4日,児玉法+腹直筋皮弁法が5時間25分, 26.5日で児玉法単独と広背筋皮弁による再建では入院日数に差がなかった.術後合併症は創感染を3例に,皮弁の壊死を1例に認めたが,再建によると思われる後遺症は認められなかった.局所皮膚再発例,骨転移例をそれぞれ1例に認めたが,再建乳房が再発巣の発見,および外科的治療の障害になることはなかった.術後半年以上の21例に対するアンケートでは20例が満足, 16例が再建は必要と答え,患者の満足度は高かった.以上より一期的乳房再建,特に広背筋による再建は今後推奨されるべき方法と考えられた.
  • 馬場 憲一郎, 長尾 和治, 松田 正和, 西村 令喜, 松岡 由起夫, 上野 洋一, 山下 裕也, 野村 耕一, 一口 修, 村上 明利
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1779-1785
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌切除93例を対象に再発について検討した. 29例31.2%に再発をみた.病期,組織型別再発率はstage Iが17.5%, II 80.0%, IIIA 33.3%, IV 80.0%,腺癌31.7%,扁平上皮癌19.0%,小細胞癌75.0%,腺表皮癌66.7%であった.再発様式は血行性再発が多く(82.8%),肺,骨,脳の再発例が多かった.リンパ節再発は41.4%,局所再発が17.2%にみられた.再発までの期間は1年以内55.2%, 2年内が31.0%であった. stage I, IIは1年以降の血行性再発例が多く,病期が進むにつれリンパ節再発や局所再発が多くなり, III, IV例の半数は6カ月内に再発していた.扁平上皮癌は1年以降に再発し,腺癌は分化度の低いほど再発時期が早い傾向にあった.再発例の約40%は対症療法におわり,再発後の生存期間は平均4.3カ月であった.骨,脳転移に化学療法,放射線療法の有効例がみられた.
  • 花崎 和弘, 近藤 昭二, 中谷 易功
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1786-1789
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    検診胃癌の臨床病理学的特徴を明らかにする目的で,最近5年間に当科で手術を施行した検診胃癌30例と外来胃癌52例を比較検討した.手術時の検診胃癌の平均年齢は検診胃癌57.5歳,外来胃癌65.4歳であり,検診胃癌は外来胃癌に比べ,低年齢者に多くみられ,性別では検診胃癌および外来胃癌とも男性に多くみられた.検診胃癌の80%は早期癌であり, 90%は絶対治癒切除例で,非治癒切除例がないのに対し,外来胃癌の77%は進行癌で,治癒切除例は67%であり, 25%が絶対非治癒切除例であった.予後決定因子として検診胃癌は外来胃癌に比べ,病変が小さくかつ壁深達度が浅い特徴がみられ,リンパ節転移陽性率も14%と外来胃癌の48%に比べ明らかに低率であり, 5年生存率は検診胃癌では100%と外来胃癌の48%に比べ予後良好であった.したがってその手間とコストを考慮しても胃癌検診はきわめて有用であり,今後も積極的に取り組む必要がある.
  • 本田 一郎, 渡辺 敏, 藤田 昌宏, 渡辺 一男, 竜 崇正, 川上 義弘, 吉田 雅博, 大森 幸夫
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1790-1797
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    治癒切除が行われたにもかかわらず漿膜露出胃癌の予後は不良であり,その死亡の大半は腹膜播種によるものである. P0, H0, S2の胃切除例に対し腹膜播種を予防する目的で, cisplatin (以下CDDP), carboplatin (以下CBDCA), etoposide (以下VP-16)の間歇的腹腔内注入を試みた. (1) 治癒切除の行われた43例のstage 3, 4症例のうち11例に腹腔内注入がなされ, 11例共に最長32カ月,最短6カ月健存中である. 32例の非投与群では6例(18.8%)が再発し5例を腹膜播種で失っている. (2) P0, H0, S2の非治癒切除例は18例あり, 8例に腹腔内注入を施行した. 1例を腹膜播種, 1例を肺転移(25%)にて失ったが,残り6例は最長32カ月,最短7カ月健存中である. (3) 非投与群は10例中8例(80%)を再発で失い,その内6例が腹膜播種であった.漿膜露出胃癌に対するCDDP (CBDCA), VP-16の間歇的腹腔内注入は腹膜播種を予防出来る可能性を示唆した.
  • 早期手術の提唱
    田中 信孝, 登 政和, 柚本 俊一, 森 潔, 今中 和人, 出口 順夫, 上野 貴史, 岡本 宏之, 松本 順
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1798-1803
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去7年間に手術的解除施行した機械的腸閉塞症例のうち,術前に疾患を特定しえたものと早期癒着性イレウス症例を除く91例につき,入院後の手術決定時期により, I群(24時間以内の手術): 38例, II群(3日未満の手術): 20例, III群(3日以上の手術): 33例,の3群にわけ,手術適応の妥当性を評価した.背景因子にI群, II群間で差がなかったが, III群は既往手術からの間隔が10年未満のものが多く, 1/3は繰り返す再発症例であるという特徴を示した.絞扼性イレウスはI群23例61%, II群10例50%, III群10例30%に認められた.合併症発生頻度はI群16%, II群15%に対しIII群46%であった.死亡率はI群2.6%, II群0%, III群6.1%,全体で3.3%であった.術後入院期間はIII群絞扼性イレウスで有意の延長を認めた.以上の如くIII群症例ではデメリットが多いため,早期での手術適応の判断が重要と考えられた.
  • 初瀬 一夫, 斉藤 理, 坪井 賢治, 出井 雄幸, 小峰 規靖, 青木 秀樹, 柿原 稔, 玉熊 正悦
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1804-1810
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性胆嚢炎46例を対象として胆嚢炎発症日より48時間以内の手術を緊急手術群(17例), 3~7日の手術を早期手術群(18例), 8日以降の手術を待期手術群(11例)とし,手術時期に関し検討した.各群の手術までの平均日数はそれぞれ1日, 5日, 13日であった.急性胆嚢炎発症後1週間以内では病態改善率は30%前後に過ぎず,特に70歳以上になると病態改善例はみられなかった.また胆嚢の壊死が早期手術群では18例中8例(44.4%),待期手術群でも11例中3例(27.2%)にみられた.各群の術中出血量,手術時間に差はみられなかったが,術後合併症に関しては早期手術群が最も発生率が高かった.在院日数は緊急手術群が最も少なかった.以上のことから急性胆嚢炎に対しては原則的には緊急手術が望ましく,特に70歳以上の高齢者では緊急手術の適応であり,全身状態不良のため保存的治療を余儀なくされる場合できる限り14日以上経過してから手術すべきと考えられた.
  • 高林 直記, 木村 泰三, 吉田 雅行, 大場 範行, 梅原 靖彦, 桜町 俊二, 松田 寿夫, 和田 英俊, Tsuyoshi IMAIZ ...
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1811-1816
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LSC)の安全性を証明するためにLSCと開腹胆嚢摘出術(以下開腹術)とで術後経過,合併症等につき比較検討した. LSC群は,初期の症例を除く50例を対象とし,開腹術群は,当教室の開腹胆摘症例中,比較検討可能な50例を対象とした.
    術前診断は,両群とも胆嚢内結石が大部分であった.平均術後在院日数は, LSC群で7.5日,開腹術群で13.9日であった.術後経口摂取開始までの日数は, LSC群で1.2日,開腹術群で3日であった. GOT, GPT, LDHが両群とも術後直後に上昇したがその程度は両群で有意差はなかった.術後合併症は両群に胆汁漏,高アミラーゼ血症,一過性のビリルビン上昇等がみられたがいずれも良好な経過をたどった.
    LSCは開腹術と比べて合併症の頻度は変わらず,術後経過よりみて侵襲の軽い事が示された.今後LSCは標準術式として大部分の症例に適応できると考えられた.
  • 術前危険因子の検討と手術成績
    横田 和彦, 内田 久則, 刑部 恒男, 中山 義介, 佐藤 光史, 柿田 章
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1817-1822
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1971年9月より1989年8月まで,慢性腎不全による血液透析中の患者88例に種々の開腹手術を行った. 1984年8月までの前期62例とその後の後期26例につき比較検討した.患者の平均年齢は,前期43.5歳,後期50.6歳と高齢化しており,緊急手術例が前期32.2%から後期57.6%と有意に増加したが,手術死亡の増加(16.1%:19.2%)は有意差を認めなかった.手術適応となった疾患では,後期には,小腸と大腸疾患が増加し,これらに緊急手術が多かった.術前の合併症,異常病態および異常検査値14項目について,術後1カ月以内の手術死亡との関連を後期例で検討すると,緊急手術,ショック状態,消化管出血,心機能異常が手術死亡と有意に相関していた.それぞれの危険因子を1点のscoreとすると, 4点までは,死亡率0%に対し, 5, 6点ではそれぞれ25, 20%で, 7点以上では100%であった.
  • 岩瀬 和裕, 竹中 博昭, 矢倉 明彦, 別所 俊哉, 西村 好晴, 吉留 克英, 石坂 透, 高垣 元秀, 大西 隆仁, 大畑 俊裕, 井 ...
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1823-1827
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化器外科術後methicillin-cephem耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)腸炎においては,白色水様下痢ならびに発熱が特徴的な症状であるとされている.しかし,下痢を伴わない便中MRSA検出症例5例を経験したので報告した. 3例は下痢を認めないのみならず,発熱や腹部愁訴など一切の症状を呈することなく,無治療にて便中のMRSAは陰性化した.他の2例は,下痢は認めないものの消化管MRSA感染症に起因すると考えられる発熱を認め,塩酸バンコマイシンの経口投与により速やかに軽快した. MRSAの院内感染が危惧される病棟での消化器外科手術後においては,下痢を呈さない消化管MRSA感染症も存在し得る可能性が示唆された.
  • 市川 英幸, 林 四郎
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1828-1835
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞の既往をもつ患者の手術を行う場合,梗塞後6カ月以後まで手術の実施を延期するという方針が認められている.しかし,手術をなるべく早く行いたい消化管の癌などに対して,もう少し早期時期に実施して差支えないのではないかと考えてきた.そこで,心筋梗塞発作後比較的早い時期(最長発作後7カ月,平均3.7カ月)に胃切除,胆摘,腸切除などの手術を行わざるを得なかった60歳以上の6例について, retrospectiveに検討を加えた.全例手術に耐え,術後心房細動,心室性期外収縮などの循環器合併症が発生したが,再梗塞例は1例も無かった.従って,心筋梗塞2カ月前後であっても,発作後の回復過程が順調であり,循環動態も安定し,梗塞後のリハビリテーションも予定通り実施されているような状態で,左室駆出率も50~60%前後以上であるような症例に対しては,きめ細かい周手術期の管理を前提にして,手術の実施を是認しても良い現状とみなした.
  • 相吉 悠治, 牛尾 浩樹, 菅間 博, 植野 映, 平野 稔, 田中 秀行, 八代 享, 森島 勇, 石川 智義, 添田 周吾
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1836-1841
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1cm以下の微小甲状腺癌の中で,甲状腺周囲組織に浸潤していた2例を経験した.症例1は41歳女性.乳房超音波検査に際して行われた甲状腺超音波検査で,右葉中部に8mm大の腫瘤が発見された.超音波ガイド下穿刺吸引細胞診で甲状腺癌と診断された.甲状腺腫瘤は触知されなかった.甲状腺右葉・峡部切除を行ったが,気管面に腫瘍の遺残が認められた.気管粘膜を残して, 2気管輪の部分切除を行った.病理学的診断では硬化癌で,気管軟骨の近傍に腫瘍の浸潤が確認された.症例2は46歳女性.乳房超音波検査に際して行われた甲状腺超音波検査で両葉に腫瘤が発見された. 3年後に行われた左葉中部腫瘤の超音波ガイド下穿刺吸引細胞診でclass IIIとされた.甲状腺左葉に1cm大の結節を触知した.甲状腺左葉切除と右葉結節の核出を行った.病理組織学的診断は5mm大の硬化癌で,甲状腺周囲の脂肪組織に浸潤を認めた.
  • 千賀 脩, 疋田 仁志, 木下 友順, 原 克実, 宮川 信, 西村 秀紀, 土屋 真一
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1842-1847
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺の管状腺腫は極めて稀な疾患であり,本邦では現在まで16例の報告がみられるにすぎない.今回われわれは乳腺の管状腺腫を4例経験したので報告する.これら症例はいずれも女性であり,年齢は14~67歳で平均32.8歳である. 3例は術前良性腫瘍と診断されたが,高齢者の1例は諸検査にて癌が強く疑われた.これら管状腺腫4例のうち腫瘤径が2cm以上の2例に201Tl-chlorideシンチグラフィを施行したところ,いずれも強い集積が認められ線維腺腫との鑑別に有効であった.また,管状腺腫の大きなものは癌との鑑別に困難なこともあり,特に高齢者の場合注意すべき疾患と考えられた.
  • 久保 章, 伊東 重義, 山内 毅, 鈴木 良人
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1848-1852
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺原発悪性リンパ腫は本邦で155例とまれであるが,両側発症例は33例とさらにまれである.われわれは同時性両側乳腺原発悪性リンパ腫を経験した.
    症例は65歳,女性.両側乳房腫瘤を主訴に来院した. mammography, echographyを施行し,両側乳癌を疑いexcisional biopsyを施行した.病理組織学的所見は,悪性リンパ腫LSG分類のdiffuse lymphoma, medium sized cell typeで, Rappaport分類ではpoorly differentiated, lymphocytic, diffuse typeであり, B cell typeであった.術前の全身検索では異常所見を認めず乳腺原発と診断した.以上の所見より両側の非定型的乳房切断術を施行した.リンパ節転移はなく,病期は両側ともAnn Arbor分類のstage IIE-Aと診断した.術後, VEMP療法を4クール施行した.現在, 4年3カ月経過したが,再発の所見も認めず健在である.
  • 大石 正博, 田中 紀章, 小林 元壮, 竹内 仁司, 後藤 精俊, 種本 和雄, 小長 英二
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1853-1857
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは過去5年間に, 4例の特発性食道破裂を経験したので報告する.症例は44歳から62歳の男性で,いずれも嘔吐の後激しい腹痛と胸痛が出現したが,早期診断は症例4を除き困難であった.症例1, 2, 3では胸腔ドレナージの排液から食道破裂を疑い,症例1, 2では食道透視にて確定診断に至った.症例3, 4では内視鏡を行い,その安全性と有効性を確認した.症例4の胸部CT検査では発症初期の両側の胸水および縦隔気腫像を的確にとらえることが可能であった.治療としては症例1では下部食道噴門部切除,胸腔内吻合,症例2では縫合閉鎖を選択したが満足のいく結果が得られず,症例3, 4では食道切除,頸部食道瘻,胃瘻造設および二期的再建とした.これは症例2で経験した重篤な縦隔炎を重視しているからであり,食道切除により縦隔を広く開放し,炎症の消退を待ち二期的に再建することが症例によっては必要であるとわれわれは考えている.
  • 八木 雅夫, 佐原 博之, 竹田 利弥, 桝谷 博孝, 橋本 哲夫, 桐山 正人, 清水 康一, 泉 良平, 宮崎 逸夫
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1858-1863
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌切除術後に遊離空腸移植術を用いて消化管を再建した3例を経験し,術後合併症はみられなかった.術後経過期間は9カ月から4年6カ月で,術直後の透視では移植空腸の拡張は良好であった.術後3カ月目には食物嚥下直後に移植空腸の逆蠕動や収縮が認められたが,術後6カ月以内に消失し,それ以後の食物の通過状況は良好であった.内圧検査では順蠕動性に移行する陽圧波が認められた.術後4カ月目と2年6カ月目の症例の消化管筋電図では,空腹期に間歇的スパイクが見られ,嚥下時には多重スパイクが見られた.内視鏡的に生検した粘膜には通常の粘液が観察された.
  • 白崎 功, 斉藤 文良, 山下 厳, 三浦 二三夫, 斎藤 寿一, Kiyoko SAITO
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1864-1868
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスの肉芽腫病変とほぼ同一の組織学的変化(サルコイド反応)が悪性腫瘍の所属リンパ節に認められることがまれにある.その成因や,意義に関しては明らかな報告がない.今回われわれは早期胃癌の所属リンパ節にサルコイド反応を認めた症例を経験したので報告する.症例は59歳の女性でIIa型重複早期胃癌の診断にて手術を施行した.術後の病理検索にて所属リンパ節には癌転移はなかったが,類上皮細胞よりなる肉芽組織が存在し,壊死・乾酪巣を認めなかった.症例は基礎疾患としての胃癌が存在することからサルコイド反応と診断した.胃癌における所属リンパ節のサルコイド反応の本邦報告例は34例あり,詳細の判明している12例に自験例を加えた13例について検討を加えたが,胃癌病変の肉眼型,組織型,壁深達度,リンパ節転移の有無などとは特に傾向を認めなかった.
  • 向井 正哉, 近藤 泰理, 生越 喬二, 野登 隆, 幕内 博康, 田島 知郎, 三富 利夫
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1869-1873
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳男性.突然の上腹部痛を主訴に受診した.来院時,腹部所見は板状硬で,単純X線写真上free airを認めたため,穿孔性の汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.開腹時の所見は,胃体上部小彎前壁に径6cm大の硬結を触知し,その中心に径8mm大の穿孔部を認めた.術中施行した内視鏡所見でIIc類似進行型の胃癌穿孔(P0H0N2S2)と診断し,胃全摘リンパ節郭清R2切除術を施行した.病理組織学所見では,穿孔部の辺縁にのみ深達度smの中分化型管状腺癌を認めたが,その他には癌細胞を認めずIII+IIc型早期胃癌穿孔と診断した.胃穿孔症例では,術中内視鏡検査が良悪性の鑑別,術式の選択に有用であると思われるが状況により困難なこともある.以上より可能な限り積極的に凍結切片による迅速病理組織検索を行い,また単純閉鎖術を施行した症例には,術後十分な内視鏡による追跡が必要であると思われたので本邦報告例45例の検討を加えて報告する.
  • 岸本 弘之, 澄川 学, 狩野 貞夫, 日野原 徹, 小松 健治, 山代 昇, 柴田 俊輔
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1874-1877
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    体部Borrmann 3型胃癌に対し,胃全摘術・膵脾合併切除術後10カ月目に発症した髄膜癌腫症の1例を経験したが,髄腔内への制癌剤投与が有効であった.患者は62歳の男性,組織学的には印環細胞癌で,深達度se, ly3, v0とリンパ管侵襲の著明な胃癌の術後10カ月目に,激しい頭痛で発症し,髄液細胞診で印環細胞癌を確認した.血清CEA値は正常であったが,髄液中のCEA値が高値を示し診断上有用であった.髄腔内へのmeth-otrexate, cytosine arabinoside投与により癌細胞は著明に減少, CEA値も正常化し,約8カ月の効果期間が得られた.文献的には発症後3カ月以内にほとんどの症例が死亡するとされており,全身的な化学療法と髄腔内への制癌剤投与によって,本例のように延命効果が期待できる症例があり,積極的な治療が重要と考えられた.
  • 西村 好晴, 岩瀬 和裕, 竹中 博昭, 矢倉 明彦, 吉留 克英, 大西 隆仁, 高垣 元秀, 石坂 透, 大嶋 仙哉, 田中 智之
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1878-1880
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌の単発性肋骨転移に対し,胸壁切除,再建を施行し,癌性疼痛を除去した症例を経験したので,報告した. 68歳,男性の胃ならびにS状結腸重複癌に対する切除手術後,初回手術時より認めていた肋骨転移巣による疼痛が増強してきたため,疼痛除去を目的に手術を施行した.手術は腫瘍と周辺の肋骨3本を含めて切除し, Marlex sandwich法に広背筋弁による被覆を併施して胸壁を再建した.術後,疼痛は消失し,呼吸機能も良好に保持された.
  • 田中 昭吉, 舘林 欣一郎, 宮下 洋, 工藤 明敏, 長谷川 博康, 相川 裕之, 秋山 紀雄, 山下 吉美
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1881-1885
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋芽細胞腫は現在200数例の報告を認めるが,その中でも腹腔内大量出血を伴った症例は比較的少ない.今回我々は腹腔内大量出血をきたした胃平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので報告する.
    症例は61歳の男性で,手術の約1年前に当院内科で上部消化管造影,腹部超音波検査,腹部Computed Tomography (以下CT),腹部血管造影等の検査を受け,左胃動脈より栄養される胃粘膜下腫瘍を疑われた.しかし自覚症状が乏しいため患者が手術を希望せず,経過観察していたところ,平成2年6月初め心窩部痛,腹部膨満感を訴え再入院となった.進行する貧血および腹部CTにて腫瘍からの出血と診断し緊急手術を施行した.腹腔内には1,750gの出血を認め,胃角部前壁より胃外へ発育した12×12×4cmの腫瘍を認めた.正常胃壁を含め腫瘍を摘出した.病理組織学的診断は,胃平滑筋芽細胞腫であった.
  • 清水 久和, 石川 正美, 久代 裕史, 横川 京児, 田村 清明, 飯島 恒司
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1886-1890
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫は比較的稀な疾患であり,しかも予後は必ずしも良好ではなく治療に難渋することが多い.今回,われわれは胃平滑筋肉腫の異時性肝転移に対し, 3回の肝切除を行った1例と, 2回の肝切除を行った1例との2症例を経験したので報告する.症例1は52歳女性.胃全摘術施行し,術後13カ月目に腹部超音波検査にて肝右葉に肝転移を指摘し切除した.同様に初回手術より21カ月目に肝左尾状葉切除と左外側切除を施行し,さらに34カ月目にも肝右葉の部分切除を施行した.症例2は36歳女性.胃全摘術施行し,術後7カ月目, 12カ月目の2回肝転移を指摘されいずれも切除した. 2症例とも術後の経過は良好で,その後の再発も認めていない.肝切除後も綿密な経過観察によって,新たな肝転移の発見に努め,肝転移を認めた場合でも適応を満たせば,肝切除は予後改善に十分役立つものと思われた.
  • 西山 眞一, 中尾 照逸, 松並 展輝, 喜多岡 雅典
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1891-1896
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は6歳の女児で,自転車走行中転倒し,ハンドルにて上腹部を打撲した.来院時出血性ショック症状を来しており,受傷約20時間後に開腹手術を行った.腹腔内出血,十二指腸空腸曲部の穿孔を伴った十二指腸・空腸壁内血腫を認め,十二指腸・空腸部分切除術,十二指腸空腸側々吻合術を行った.経過は良好で術後18日目に退院した.
    小児では,本症例のように腹部へのわずかな鈍的外力によっても重篤な内臓損傷を引き起こすことがある.そして十二指腸穿孔(特に後腹膜側への穿孔)は,しばらく無症状あるいは軽い症状で経過する場合があることを念頭に入れる必要がある.十二指腸損傷を疑った場合,十二指腸を充分授動し後腹膜側も精査する必要がある.術式は,患者の全身状態,損傷部位・程度により決定される.
  • 画像診断を中心として
    春口 洋昭, 本田 宏, 林 武利, 星野 智昭, 佐藤 純彦, 市岡 四象, 片山 修, 扇 和之, 山中 桓夫, 吉田 行雄
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1897-1901
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    粘膜下腫瘍の形態を呈した十二指腸球部Brunner腺腫の1例を経験した.症例は36歳,男性.自覚症状なく集団検診にて発見された.上部消化管造影および内視鏡検査で,十二指腸球部に正常粘膜に覆われた粘膜下腫瘍を認めた.生検では正常な十二指腸粘膜のみ採取され確定診断ができなかったため,超音波, CT,内視鏡的超音波検査(EUS), MRIを施行した. EUSでは内部均一で比較的高エコーレベルを呈した粘膜下層の腫瘍として描出され, Brunner腺腫が最も疑われたが,悪性腫瘍も完全に否定出来ないため,胃十二指腸切除術を施行した.腫瘍の大きさは, 30×20×20mmで,組織学的にはBrunner腺の結節性の過形成を呈し, Brunner腺腫と診断した.生検にて確認できないような十二指腸Brunner腺腫の診断にEUSが有用であった.
  • 利野 靖, 城島 標雄, 安部 雅夫, 武 浩志, 今田 敏夫, 松本 昭彦
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1902-1906
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれはVater乳頭腺腫の診断で切除術を行った症例を経験したので報告する.
    症例は59歳女性で右季肋部痛を主訴に来院,諸検査により胆石症,胆嚢炎と診断. ERCPを施行したところVater乳頭部に腫瘤を認め,生検にて腺腫と診断,総胆管切開,腺腫核出術,乳頭形成術を施行した.
    Vater乳頭部の腺腫はまれな疾患とされているが,診断法の進歩にともない時に発見されるようになった. 1991年7月までの本邦における報告は自験例を含め54例である. Vater乳頭部腺腫は臨床的に良性病変ではあるが,腺腫の一部に癌が合併することがあり,また組織学的にも癌との鑑別が困難な場合がある.それゆえ手術式にも議論のあるところである.しかし手術侵襲などを考慮すると,まず腫瘤摘出術を行い詳細な組織学的検索を施行し,悪性所見が得られたならば二期的に膵頭十二指腸切除を施行すべきであると考えている.
  • 冨木 裕一, 長濱 徴, 後藤 達哉, 中嶋 孝司, 矢吹 清隆, 忽滑谷 通夫
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1907-1911
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    虚血性小腸炎をきたした腹部アンギーナの1例を経験した.症例は54歳,男性. 1990年7月,朝食後,突然の腹痛,下痢が出現し,近医に入院. Crohn病の疑いで保存的治療を受け症状軽快し, 9月初旬退院となった.その後精査目的で当院消化器内科に入院となった.小腸X線検査で,回腸末端に約50cmにわたり全周性の管状狭窄が認められた.また腹部血管造影検査では,上腸間膜動脈本幹起始部の狭窄と中結腸動脈および回結腸動脈の閉塞を認め,これらの所見と食後の症状発現などから,虚血性小腸炎をきたした腹部アンギーナと診断した.手術は回腸部分切除術および右胃大網動脈と上腸管膜動脈空腸枝との動脈バイパス術を施行した.腹部アンギーナはまれな疾患であり,原因不明の腹痛患者に対しては,本疾患を考慮に入れ,積極的に血管造影検査を試みることが望ましいと思われる.
  • 土屋 邦之, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 川合 寛治, 荻野 敦弘, 梅田 朋子, 伊志嶺 智子, 上田 泰章
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1912-1915
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性回腸癌症例で穿孔性腹膜炎をきたしたという比較的稀な1例を経験したので報告する.症例は72歳,女性で,約1年前より腹痛があり便潜血と貧血を認められていた. 1990年6月22日の腹部エコー検査で膀胱の頭背側に腫瘤陰影を認め子宮腫瘍の疑いで通院していた. 1990年7月1日に穿孔性腹膜炎として緊急開腹手術を施行した.腫瘍は回盲弁から6cmの回腸にあり,腸間膜側に突出していた.また,腫瘍は膀胱,直腸,右卵巣卵管に癒着していた.右卵巣卵管とともに回盲部切除を施行した.肉眼所見は狭窄のない全周性の潰瘍形成限局型の腫瘍で,潰瘍底が突出しており(いわゆる動脈瘤型)そこで穿孔していた.病理所見はムチン産生を伴う高分化型腺癌(s3 (右卵巣,卵管), n0, P0, H0)であった.
  • 近松 英二, 松田 真佐男, 清水 泰博, 佐原 達也, 渥美 隆之, 高柳 和男, 石搏 秀勝
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1916-1920
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    消化管動静脈奇形に起因する消化管出血の報告はその診断技術の向上により増加しつつある.その治療に関しては外科的切除が一般的に行われているが,大量出血時の緊急手術はしばしば困難となることが多い.われわれは46歳男性の大腸AVMよりの大量下血の1例を経験し,腹部血管造影でその診断を得,全身状態不良であった為,ひきつづき超選択的にカテーテルを留置し, vasopressin持続動注により止血せしめた.約2年経過した現在再出血を認めない.本療法の大腸動静脈奇形に対する永久的な効果は長期のfollow upおよび症例の積み重ねをまたなければならないが,少なくとも本症例のように手術に危険がある様な重症例においてはfirst choiceとなり得るであろう.
  • 石川 雅彦, 稲葉 雅史, 山崎 弘資, 久保 良彦, 後藤 幹雄
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1921-1924
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    特発性大腸穿孔は比較的稀な疾患であるが,敗血症ショックに陥ると予後不良である.われわれは1982年4月より1989年10月までの間に8例の特発性大腸穿孔を経験した.穿孔部位はS状結腸4例,直腸2例,横行結腸1例,盲腸1例であった.術前検査では白血球減少例が5例(62.5%)であり,増多例は1例(12.5%)のみであった.手術術式はexteriorization 4例, Hartmann手術3例,穿孔部縫合閉鎖+S状結腸人工肛門造設術1例であった.術後経過は2例(25%)が敗血症ショックにより死亡した.大腸穿孔症例では,早期診断,早期治療を施行することが予後向上に極めて重要と考える.
  • 増山 喜一, 田沢 賢次, 新井 英樹, 山本 克弥, 斉藤 光和, 鈴木 修一郎, 藤巻 雅夫, 五十嵐 雅秀, 山崎 徹
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1925-1929
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性白血病と固形癌の合併はまれであるが,その抗腫瘍療法中に発見されることが少なからず報告されている.今回,急性骨髄芽球性白血病完全寛解維持中に大腸癌を併発した1例を経験したので報告する.症例は, 64歳の男性で1989年2月に急性骨髄芽球性白血病にて入院治療した.退院後,外来通院していたが発症より1年7カ月後の1990年9月ごろより腹痛および右下腹部に腫瘤を自覚するようになり,同年10月入院となった.精査にて盲腸癌と診断され,白血病の完全寛解状態であることより同年12月に右半結腸切除術を施行した.術後経過良好で,術後第37病日に施行した骨髄穿刺所見でも完全寛解を維持していた.造血器腫瘍の患者では,化学療法の進歩により長期の予後が期待されるようになった反面,第2癌に罹患する危険性が増加してきており厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 本邦273例の検討
    内藤 梓, 吉川 高志, 西川 徹, 浅生 幸郎
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1930-1935
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性. 6年前,左尿管腫瘍のため左腎臓及び左尿管摘出術を施行,一年後,膀胱に再発を認め, 70Gyの外照射を実施.腹部膨満感,下腹部痛を主訴とし,イレウス状態にて当院入院となった.注腸造影, CT,内視鏡検査にてS状結腸-Rs部に全周性狭窄,潰瘍形成を認め,放射線直腸炎の診断にて低位前方切除術を施行した.患者は順調な経過にて退院後,現在良好な社会生活を送っている.この10年間に報告された外科的治療を受けた放射線直腸炎273症例の検討では,本症例のような括約筋温存直腸切除術が施行される例は少なく,前方切除術4例, pull through術7例であった.放射線直腸炎は血管変化を伴う虚血性病変であるため,術前の血管造影,術中の迅速病理検査は必要であり,患者のquality of lifeの向上に留意し,括約筋温存術式を志向すべきと考える.
  • 泉 俊昌, 石田 誠, 安川 ひろ美, 小島 靖彦, 中川原 儀三
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1936-1940
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.約1年前から肛門より腫瘤脱出を認め,近医で直腸脱と診断されていた.今回手拳大の腫瘤が肛門より脱出,嵌頓し来院, saddle block下にこれを還納した.直腸(Rb)のほぼ全周性の柔らかい腫瘍で,一部に潰瘍形成を認めた.浸潤癌を伴う絨毛腺腫と診断し,直腸切断術を施行した.病理組織学的には9×7cmの絨毛腺腫であり,潰瘍部分にはsmに浸潤する高分化型腺癌を認め,傍直腸リンパ節転移陽性であった.
    絨毛腺腫は本邦では比較的稀な疾患とされているが,近年報告例の増加が認められる.本疾患の主症状は肛門出血,下痢,粘液便であり,腫瘤脱出も比較的多い症状であるが,嵌頓したとの報告はきわめて稀である.治療上の問題点はその癌化率の高さと術式の選択にある.肉眼的に浸潤癌を示唆する所見(硬結,潰瘍)がみられ,組織学的にも癌が証明された場合には,当初よりリンパ節郭清を伴う根治的手術を行うべきである.
  • 岸本 秀雄, 大橋 大造, 入谷 勇夫, 小川 弘俊, 中村 従之, 大谷 享, 織田 誠, 都築 尚生
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1941-1946
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    孤立性肝結核腫は非常に稀で,本邦報告例は33例に過ぎない.著者らの経験した1例を本邦報告例の検討と併せて報告する.
    患者は36歳女性で,発熱を主訴として入院精査した.腹部CT,腹部超音波検査,総肝動脈造影より, S4とS5にまたがる腫瘤が指摘された.肝腫瘤の診断のもとに腫瘤を含めた肝部分切除,胆嚢摘除を施行した.病理組織学的には類上皮細胞,ラングハンス巨細胞を中心とする乾酪化を伴った肉芽腫で,孤立性肝結核腫と診断した.文献的には孤立性肝結核腫の画像診断上の特徴には一定の傾向を認めなかったが,本例は急性期としての画像診断上の特徴が得られたものと考えられた.
  • 吉村 高尚, 多田 出, 中島 公洋, 御手洗 義信, 金 良一, 小林 迪夫
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1947-1951
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,癌の診断技術の向上により重複癌の発見が増加している.そこで,原発性肝細胞癌症例に注目し肝と他臓器の重複癌症例について検討した..当科で最近10年間に経験した原発性肝癌207例中,肝と他臓器の重複癌症例は6例(2.9%)であった.性別・年齢は,男性3例女性3例,平均年齢69歳であった. 6例はすべて同時性重複癌であり,原発性肝癌との組合せは早期胃癌4例・肺癌1例・大腸癌1例であった.肝癌に対する手術としては肝左葉切除術1例,肝部分切除術2例,腫瘍核出術1例,肝動脈挿管術1例であった.両癌とも一期的に切除可能であったのは胃切除術の行われた早期胃癌の1例のみであり,早期胃癌1例と肺癌1例は二期的に切除が行われた.予後は平均11カ月であった.術後28カ月生存中である1例を除き,他の5例はすべて肝癌死および肝不全死しており,同時性肝重複癌の予後は原発性肝癌の予後により規定された.
  • 倉谷 徹, 宗田 滋夫, 吉川 幸伸, 籾山 卓哉, 山邉 和生, 戸田 宏一, 大嶋 正人
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1952-1955
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は,腹部不快感のため腹部超音波検査を行い,胆嚢ポリーブと診断された.経過観察していたが,ポリーブが増大傾向を示すため,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後病理検査により,深達度mの早期胆嚢癌と診断された.術後経過良好で退院し,現在再発を認めない.これまで手術侵襲のことを考え躊躇されてきた胆嚢摘出術も,腹腔鏡下胆嚢摘出術の出現により,開腹手術に比し手術侵襲が少ないため早期に手術施行でき,さらに早期胆嚢癌発見のためのtotal biopsyとして小病変より施行すべきと考える.
  • 堀井 淳史, 山本 博史, 本村 昇, 足立 省三, 北浦 一弘, 久津見 弘, 小山 邦彦, 八城 博子, 本井 重博, 佐藤 伸一, 山 ...
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1956-1961
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは特発性の後腹膜腔,腹腔内出血に対して,術前に血管造影検査を行い膵頭部の動静脈奇形を診断した53歳男性の1治験例について報告する.
    胸内苦悶,眩暈を主訴としショック状態で当院に転送され,腹部所見や超音波, CT検査より後腹膜腔,腹腔内出血を疑い腹部血管造影検査を行ったところ,膵頭部に血管形成異常を認め,緊急で開腹止血術を行った.膵頭部前面の大きな血腫の為,病態の診断は術中所見からは困難で術前の血管造影検査が診断及び治療上有用であった.
    時間的制約のあるショック状態の患者においても可能な限り術前の血管造影検査が必要と考える.
  • 朝日 俊明, 岩城 和義, 加賀 城安, 三谷 政彦, 山鳥 一郎, 小林 省二
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1962-1965
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高齢者にみられた膵のsolid and cystic tumor (SCT)の1例を経験した.症例は64歳の女性で,胃部不快感をきたし近医を受診.上腹部腫瘤を指摘され当院に入院した.入院時血液検査にて糖尿病を認めたが,その他に特に異常は認めなかった.腹部超音波, CT検査にて膵に嚢胞状腫瘤を認め,膵嚢胞腺癌を疑い手術を行った.術後の病理組織学的検索で, SCTと診断された.
    SCTは若年女性にみられることが多く,今回のように高齢者で診断・手術を行ったのはまれである.
  • 西田 俊朗, 奥田 彰洋, 野村 文一, 大川 淳, 線崎 敦也, 山際 健司, 田中 智之, 元木 賢三
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1966-1971
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌は,比較的高頻度に静脈内腫瘍塞栓を伴っているが,この予後に関しては,積極的な外科治療を行えば,良好であるとの報告が近年多い.しかし,腫瘍塞栓が,肝上部の下大静脈を越えると,外科的根治術は難しくなる.今回,肝上部の下大静脈に至る腫瘍塞栓を伴った58歳男性の腎細胞癌症例に対し,体外循環を用い根治術をおこない良好な結果を得たので報告する.あわせて,下大静脈に腫瘍塞栓を伴う疾患に関し,文献学的に検討を加えた.
  • 田口 宏一, 近藤 征文, 安原 満夫, 内野 純一, 栗林 弘, 藤岡 保範
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1972-1976
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大網脂肪織炎は極めて稀な疾患であり,報告例は非常に少ない.われわれは術前に大網腫瘍の診断で切除し,組織学的検査にて大網脂肪織炎と診断された1例を経験したので報告した.症例は58歳の男性.上腹部の腫瘤を主訴に来院した.既往歴に4歳頃馬に腹部を蹴られたことがある.右季肋部から臍部にかけて14×10cmの表面平滑な弾性硬の腫瘤を触知し,用手的に左上腹部に移動できた.腹腔動脈造影で右胃大網動脈の拡張を認めたが,壁の不整,狭窄,腫瘍濃染像は認めなかった.大網腫瘍の診断で腫瘍摘出及び胃部分切除術を施行した.腫瘍は10×10×12cmで表面平滑な被膜で覆われており,胃とは強固に癒着していた.割面は充実性部分と嚢胞性部分が混在していた.組織学的検査で炎症細胞と線維芽細胞の増殖を伴う脂肪織炎と診断された.原因は明らかではないが,幼児期の外傷に起因したものと推測された.
  • 西脇 慶治, 神谷 保廣, 佐藤 幹則, 松本 幸三, 三島 晃, 竹内 寧, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1977-1981
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニアに起因した大網捻転症の1例を報告し,本邦報告70例の文献的考察を加えた.
    症例は40歳男性で下腹部痛を主訴に来院した. 3年前より右鼠径ヘルニアが存在したが,腹部不快感が出現した2日前よりヘルニアの脱出はみられなくなった.下腹部全体に腹膜刺激症状を伴う圧痛があり,最強点は右側にあった.急性虫垂炎の診断にて開腹するに,右内鼠径輪部,前腹壁および直腸前壁の3カ所に癒着した大網が, 2カ所で捻転を起こし循環不全に陥っていた.捻転部大網を切除し,鼠径ヘルニア根治術を行い軽快退院した.
  • 宇田 憲司, 難波 康男, 藤原 恒弘
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1982-1985
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室がヘルニア内容となるものをLittréヘルニアと呼ぶが,本邦で29例の報告を認めるのみの比較的まれな疾患である.今回我々は,大腿ヘルニアの嵌頓で手術を行ったところ, Meckel憩室が嵌頓していたLittréヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は78歳,女性,主訴は著明な痛みを伴う右大腿部腫瘤で,腹部は全く無症状であった.このためリンパ節炎との鑑別が困難であり, CT検査にて大腿ヘルニアの嵌頓と診断し,緊急手術を行った.ヘルニア嚢を開くとMeckel憩室が嵌頓しており,憩室切除およびヘルニア根治術を行った. Littréヘルニアは,他のヘルニアに比べ局所症状が強いため,ときに他の疾患との鑑別に難渋することがあるが,本症例ではCT検査が有用であった.
  • 中村 勝隆, 清水 一太, 斎藤 寛, 武田 義敬
    1992 年 53 巻 8 号 p. 1986-1991
    発行日: 1992/08/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    子宮内膜症が女性生殖器以外にみられることは比較的稀である.今回,極めて稀な臍部子宮内膜症の1例を経験したので報告する.
    患者は2回経妊,経産の45歳女性で,臍部腫瘤を主訴として来院した.腫瘤は示指頭大で硬く,褐色の色素沈着がみられ,月経時に発赤,圧痛を伴っていた.臍部子宮内膜症を疑い,腫瘤摘出術を施行した.摘出標本は弾性硬, 20×20mmで,割面は灰白色,充実性であり,組織学的に子宮内膜症と診断された.術後スプレキュア投与にて経過観察しているが, 1年の現在,再発は認めていない.
    臍部子宮内膜症は全子宮内膜症の0.3~3.0%の頻度であり,本邦では自験例を加え42例と極めて稀であるが,女性に発生した臍部腫瘤では子宮内膜症が最も多い.従って,女性の臍部腫瘤を見た場合,まず子宮内膜症を疑い,月経周期に一致した症状の有無などの問診を詳しく行うべきである.
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