日本臨床外科医学会雑誌
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53 巻, 9 号
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  • 小澤 和惠, 森 敬一郎, 岡 隆宏, 安村 忠樹
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2013-2023
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 甲谷 孝史, 喜安 佳人, 榊原 幸雄, 斎藤 真悟, 重松 授, 田中 富雄
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2024-2029
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高齢者胃癌手術のリスクファクターを明らかにする目的で, 80歳以上の高齢者胃癌患者58例について術前検査成績,手術侵襲の程度と術後合併症の関連性を検討した.その結果,術前のリスクファクターとしての,心電図異常,呼吸機能低下例と術後合併症の間に関連性が認められた.手術侵襲としては他臓器合併切除ならびに術中出血量と術後合併症の間に関連性が認められたが,リンパ節郭清度と術後合併症との間には関係は認められなかった.以上のことから,手術では他臓器合併切除は過大侵襲となるためできるだけ避けることが望ましく,術中出血量を可及的に少なくすることにより,高齢者といえどもR2程度のリンパ節郭清を伴う胃癌根治手術の施行は可能であると思われた.
  • 迫 裕孝, 沖野 功次, 阿部 元, 小玉 正智, 中根 佳宏
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2030-2035
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1982年9月より当科では,滋賀県下において30歳以上の女性を対象に,乳癌検診と同時に甲状腺癌の集団検診を施行するようになった.そこで, 1983年から1991年3月末までに当科に施行した30歳以上の女性の甲状腺初回手術症例204例(良性120例,悪性84例)を集検例とそれ以外で発見された外来例に分け臨床的に検討した.良性疾患手術例の44.2%が集検例, 55.8%が外来例であった.バセドウ病は集検例に少なかったが,腺腫・腺腫様甲状腺腫は集検例,外来例共に多かった.悪性疾患手術例の67.9%が集検例, 32.1%が外来例であった.集検例は外来例に比べ,腫瘍径の小さいものが多いにもかかわらず,リンパ節転移が多い傾向がみられた.なお,微小癌が集検例の40.4%にみられた.
    甲状腺癌の集検は小さい癌の発見に役立つとともに,一般人や医師の甲状腺癌に対する啓蒙に役立つものと思われた.
  • 太田 安彦, 清水 淳三, 小田 誠, 林 義信, 渡辺 洋宇
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2036-2039
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近5年間に当教室では31例の胸水貯溜原発性肺癌症を経験した.全例に胸水の細胞診が施行されており,胸水細胞診陰性群18例,陽性群13例であった.両群の予後を比較検討した.陰性群・陽性群とも5生例はなくともに予後不良であり,両群の予後に有意差を認めなかった.陰性群の手術例においては胸膜の病理組織学的所見から,非手術例においては画像診断より癌性胸膜炎の有無を検討したところ,陰性群18例のうち少なくとも7例の癌性胸膜炎症例が確認でき,陰性群の予後不良の原因としてfalse negativeの癌性胸膜炎症例の混在の可能性が推考された.組織型が腺癌で無気肺,肺炎等の併存病変を認めず,胸膜に接して発生した胸水細胞診陰性例の場合false negativeあるいは非癌性胸水を伴った癌性胸膜炎症例の可能性が高い.また肺門型あるいは肺門リンパ節転移例で細胞診陰性の胸水貯溜をみた場合には,大血管浸潤の可能性に注意を払う必要がある.
  • 田辺 博, 今井 直基, 渡辺 進, 橋本 高志, 加納 宣康
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2040-2046
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃癌患者は82例を対象とし組織学的所見によりstage分類した(stage I 23例, stage II 16例, stage III 19例, stage IV 24例).これらの患者の免疫能を評価するために,モノクローナル抗体CD3, CD4, CD8, CD11b, CD16, CD45R, CD56, CD57, Leu8を用いリンパ球サブセットを測定し,各stageごとに比較し以下の結論を得た.
    胃癌患者においてT細胞のなかでは癌の進展によりCD4+ CD45R+ Leu8+ (suppressor inducer T)細胞の減少とCD8+ CD11b+ (suppressor T)細胞の減少がみられた.またnatural killer (NK)細胞については癌の進展によりCD57- CD16+ (NK+++)細胞の減少がみられた.またlymphokine activatedkiller (LAK)細胞については癌の進展によりCD3- CD16+ CD56+ (NK-LAK)細胞の減少とCD3+ CD16- CD56+ (T-LAK)細胞の増加がみられた.
    胃癌患者のリンパ球サブセットの検討では,癌の進展によりsuppressor inducer, suppressor細胞の減少, NK細胞, NK, LAK細胞の減少がみられたが, T-LAK細胞は上昇する傾向にあった.
  • 梅野 寿実, 篠原 貫之, 鳥谷 裕, 春田 淳, 田中 伸之介, 光石 和夫, 池田 靖洋
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2047-2051
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    91例の胃癌に腹部大動脈周囲リンパ節(No.16リンパ節)郭清を行い, 21例(23.1%)に転移がみられた. No.16転移症例の検討を行い同リンパ節郭清の適応を検索した.深達度ではm~ssまでにNo.16転移例は無く,転移例は全てse以上の症例であった.組織型では中分化,低分化腺癌,粘液癌例にNo.16転移がみられた. No.16転移例全てに1群, 2群リンパ節の転移がみられたが, 3群リンパ節は42.9%が転移陰性であった.また, No.16転移例のリンパ節転移度は転移陰性例に比して1群, 2群リンパ節ともに有意に高い転移度であった.転移例の予後は不良であったが,肉眼的漿膜浸潤がS2例,またはS0, S1でも2群リンパ節に転移がある例にてNo.16の一般的な郭清適応と思われた.しかし, No.16に多数転移がある例は郭清適応外とすべきで, 2群リンパ節の転移度はNo.16転移の参考となり得ると思われた.
  • stage IIIの長期生存例と再発死亡例を比較して
    小玉 雅志, 作左部 大, 小山 裕文, 曽根 純之, 千田 禎佐緒, 荒川 明, 小山 研二
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2052-2055
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去14年間に教室で切除したBorrmann 4型胃癌, stage III症例の長期生存群(8例)と再発死亡群(23例)の手術所見(占居部位,腫瘍長径)と臨床病理学的所見(組織型,深達度,リンパ節転移,脈管侵襲,再発型式)を比較し,予後規定因子を検討した.腹膜因子,肝因子を除外できるstage III症例における検討により,漿膜因子がリンパ節因子よりも重みがあることが明らかになり,また,リンパ管侵襲,腫瘍長径も予後規定因子として重要であった.再発形式では腹膜播種が多かった. Borrmann 4型胃癌, stage III症例のseでは,手術時すでに播種が成立している可能性が高く,腹膜播種に対する治療が予後改善上最も重要である.
  • 特にその進展様式と予後について
    森 和弘, 永川 宅和, 竹田 利弥, 中野 達夫, 萱原 正都, 太田 哲生, 上野 桂一, 宮崎 逸夫
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2056-2061
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    過去18年間に経験した乳頭部癌治癒切除例27例について,進展様式および治療成績について検討した. 27例の5年生存率は56.4%, 10年生存率は50.1%であった.肉眼形態では,腫瘤形成群の方が潰瘍形成群に比して予後良好である傾向を認めた.膵臓浸潤,十二指腸浸潤の進行とともに予後も不良となる傾向が認められた.リンパ節転移は,膵頭後部リンパ節,膵頭前部リンパ節と上腸間膜動脈周囲リンパ節に多かった.リンパ節転移陰性例に比し陽性例は有意に予後不良であった.しかし,積極的に上腸間膜動脈周囲を含めた拡大郭清を施行してきた結果,上腸間膜動脈周囲リンパ節転移陽性例の1例に長期生存例を認めるようになってきた.現時点では,上腸間膜動脈周囲リンパ節郭清を含めた膵頭十二指腸切除術を基本術式とすべきであると考えられた.
  • 島山 俊夫, 崎浜 正人, 竹智 義臣, 小島 章弘, 冨田 裕二, 吉松 正明, 小谷 幸生, 瀬戸口 敏明
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2062-2065
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1984年4月から1991年9月までに経験した特発性大腸穿孔14例について検討した.特発性大腸穿孔は便秘傾向のある,高齢の女性に多くみられた.穿孔部位は直腸S状部, S状結腸が大部分で,腸間膜対側に多かった.ショック症状を呈した症例は5例で,このうち4例は白血球数の増加がみられなかった.発症から手術までに要した時間は24時間以内が7例で,ショックを合併した5例は全例この中に含まれていた.重症例は早期からショック症状を呈し,白血球数は正常あるいは減少した症例が有意に多かった. 14例中1例を術後合併症のため失った.死亡率は7.1%であった.手術術式と術後合併症との関係では,人工肛門を造設した症例では術後合併症が有意に少なく,人工肛門の造設は合併症の予防に有用と考えられた.術後合併症は創感染が最も多く,術後入院期間は創感染を併発した例では有意に長かった.
  • 田中 千凱, 種村 廣巳, 大下 裕夫
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2066-2070
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    80歳以上高齢者大腸癌手術例30例について,その特徴,治療成績,術前検査成績,術後合併症などについて検討した.
    1)高分化型の進行結腸癌が多く,イレウスと穿孔による緊急手術例が33.3%を占めた. 2)切除率は96.7%,治癒切除率は79.3%で,治癒切除例の5年生存率は54.3%であった. 3)術後合併症の発生率は51.7%と高く,術前検査8項目中の異常項目数が4~5と多い群とイレウス・穿孔群に術後合併症の発生頻度が高かった. 4)術前検査異常は肺と栄養に頻度が高く,これに関連して術後合併症は肺炎と縫合不全が多くみられ,さらに高齢者に特有な脳・精神障害も多く発生した. 5)これらの術後合併症と手術直死を防止できる個々の症例に応じた安全な手術と術後管理が必要と考えられた.
  • 木下 友順, 安達 亙, 宮本 英雄, 高橋 千治, 石坂 克彦, 黒田 孝井, 飯田 太
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2071-2074
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肛門括約筋温存手術施行例につき,術式別に排便,排尿障害の出現頻度を検討した.最近5年間に教室で手術を行った直腸癌64例のうち,前方切除術20例, Turnbull-Cutaitの重積貫通手術6例,計26例を対象とした.
    肛門縁から吻合部までの距離は前方切除術では6.6±2.4cm,重積貫通手術では3.3±1.1cmで前方切除術のほうが長かった.遠隔期の調査では,前方切除例では排便回数が1日4回以上7例,便屁識別不可1例,便失禁4例,残便感3例,下剤服用1例,排尿障害5例であった.これに対して重積貫通手術では排便回数が1日4回以上2例,便屁識別全例可能,便失禁1例,残便感1例,下剤服用1例で,排尿障害のみられたものはなかった.いずれの術式においても排便障害を認める症例は認めない症例よりも肛門縁から吻合部までの距離が短い傾向がみられたが,術式別には排便,排尿障害の発生頻度に有意差はみられなかった.
  • 青木 達哉, 土田 明彦, 小澤 光, 小澤 隆, 安田 大吉, 粕谷 和彦, 小柳 泰久, 木村 幸三郎
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2075-2080
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1990年12月より教室で施行された腹腔鏡下胆嚢摘出術84例を対象とし,経験した術中偶発症についてその成因と予防対策について検討した.気腹に基づく偶発症としては,大網内気腫1例と皮下気腫2例を経験したが,いずれも保存的に治癒した.手術手技に基づく偶発症には,動脈出血3例,胆嚢穿孔10例,胆嚢管損傷1例を認めた.動脈出血のうち初期の1例は開腹し止血したが,他の2例はクリッピングによって修復した.胆嚢穿孔の半数は,胆嚢摘出終了時まで穿孔の修復が不可能であり,コンドーム内に胆嚢を収納し体外に引き出した.胆嚢管損傷は,電気焼灼によるside burnが原因であり,第1病日に開腹し胆嚢管を再結紮した.胆嚢床よりの出血の処理に難渋した3例では,気腹を解除しガーゼ圧迫によって止血した.以上の症例の検討と共に,文献的考察を加えて報告する.
  • 長田 啓嗣, 岡島 邦雄, 梁 壽男, 金本 裕吉, 三好 和裕, 岩本 伸二, 田口 忠宏
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2081-2085
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺乳頭部腺腫(adenoma of the nipple)は稀な疾患で,臨床的には乳頭にびらん,潰瘍,痂皮形成をきたしPaget病と粉らわしく,病理学的にもsyringomatous adenoma, intraductal papillona, well differentiated adenocarcinoma等と間違われやすい.今回,われわれは左乳頭の8×8mm大の腫瘤およびびらんと血性乳頭分泌を主訴として来院した60歳既婚女性の1治験例を報告する.本邦報告例は本症例を含め22例にすぎず,われわれはこれら22例を集計し臨床病理学的に検討を加えた.
  • 朴 英進, 池田 正, 尾澤 巌, 稲田 高男, 松井 淳一, 菱沼 正一, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 尾形 佳郎, 小山 靖夫, 北濱 ...
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2086-2090
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    発見に画像診断が有用であった同時性原発性両側乳癌を3例経験したので報告する.症例1は63歳の女性.右C領域に46×36mm大の腫瘤を触知したが,左は触知せず.超音波検査にて左側にも径約5mmの低エコー域を認め,術中迅速にて癌と診断した.症例2は76歳の女性.右C領域に20mm大の硬結を,また左AE領域に20×20mm大の腫瘤を触知.マンモグラフィーおよび超音波検査上右側にも不整型の腫瘤陰影を認め癌を疑った.症例3は53歳の女性.右C領域を中心に全領域にかかる80×80mm大の腫瘤を,また左D領域に24×22mm大の腫瘤を触知.マンモグラフィーおよび超音波検査上両側に不整型の腫瘤陰影を認め癌を疑った. 3症例はいずれも左右とも癌の乳管内進展像を示したため原発性両側乳癌と診断した.
    乳癌の発見・診断にはマンモグラフィーや解析能力の向上した超音波検査が有用であり,同時性両側乳癌を念頭におき対側乳房も十分精査する必要がある.
  • 前川 宗一郎, 下田 倖嗣, 古山 正人, 池尻 公二, 竹尾 貞徳, 市吉 裕二, 朔 元則, 吉田 尊久
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2091-2094
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは乳腺嚢胞症に乳癌が合併し,腫瘍血管が嚢胞内に破錠して出血し,巨大な嚢胞を形成した興味ある1例を経験した.症例は42歳女性,急激に増大した左乳房の出血性腫瘤を主訴として当院に入院した.腫瘤は11×15cmで,皮膚糜爛から黒赤色の血液の漏出を認め, CTおよび超音波検査では腫瘤の殆どが嚢胞性成分で,胸壁側に一部充実性の部分が認められた.また,嚢胞穿剰により約400ccの古い血性液が吸引された.手術は非定型的乳房切除術を施行し,病理組織検査では,腫瘤の殆どが壁を有する真性嚢胞で,嚢胞の頭側皮膚側と胸壁側に乳頭腺管癌が認められた.癌の嚢胞内浸潤部位には血管が露出しており,これからの嚢胞内への出血が疑われた.乳腺嚢胞症の女性が乳癌になる確率は,そうでない人の2~4倍高いといわれているが,このように,巨大な嚢胞を形成した症例の報告は,われわれが検索した範囲では見当たらず,非常に興味深い症例であると考えられた.
  • 朝蔭 直樹, 原口 美明, 百瀬 隆二, 小林 滋, 長濱 徴, 和田 了
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2095-2099
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は35歳,女性.平成3年5月に左乳房に無痛性腫瘤を触知,増大傾向を認め近医を受診,腫瘤摘出術を施行.病理組織学的に悪性リンパ腫と診断,当院に転院.入院時両側乳房に腫瘤は触知せず,表在リンパ節も触知しなかった.全身ガリウムシンチグラフィーなど諸検査の結果,他に腫瘍および腫脹リンパ節を認めなかった.病理組織学的にはBリンパ球由来, LSG分類のdiffuse type, medium-sized cell typeであった.以上よりAnn-Arbor分類でStage IEAの乳腺原発悪性リンパ腫と診断,平成3年6月13日に左単純乳房切除術+左腋窩リンパ節郭清を施行.術後化学療法として第1病日に塩酸エピルビシン10mg,第8病日にシクロホスファミド100mgをそれぞれ静注,第6病日よりシクロホスファミド100mgの経口投与を開始.術後経過は順調で平成3年6月27日に退院,現在まで再発,転移の徴候は認められていない.
  • 浜田 史洋, 西山 宜孝, 藤原 恒太郎, 高須 伸治, 井上 文之, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2100-2103
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Castleman lymphomaは1954年Castlemanにより縦隔リンパ節の過形成として最初に報告され,比較的稀な疾患とされている.今回,われわれは後縦隔に発生したCastleman lymphomaを経験したので報告する.
    症例は28歳男性で,自覚症状はなく検診にて胸部異常陰影を指摘された. CT検査上,第7胸椎の椎体右前方に4.0×3.0cmの充実性腫瘍を認め,造影剤にて均一に濃染された. MRIでT1強調画像上は均一な腫瘍として, T2強調画像上は高信号域と描出された.手術所見では腫瘤は4.0×2.8×2.5cm,赤桃色表面平滑で割面は灰白色充実性であった.組織学的検査上は, Kellerらのいうhyaline vascular typeと診断された.本邦に於ける本疾患の報告は, 1957年に稲田らにより最初に行われている.今回われわれは,自験例を含め検索し得た218例の集計を行い,その結果もここに併せて報告する.
  • 岩塚 靖, 桜井 恒久, 久世 真悟, 近松 英二, 牧 篤彦, 松下 昌裕, 池澤 輝男, 矢野 孝
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2104-2107
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    大動脈-下大静脈瘻は,大動脈瘤のまれな合併症の1つであり,時に循環動態に大きく影響を及ぼす.今回われわれは,腹大動脈瘤が下大静脈へ破裂し,大動脈-下大静脈瘻をきたした症例を経験したので報告する.
    症例は, 68歳男性,心不全に伴う急激な全身倦怠感が主訴である.腹部に拍動性腫瘤を認め,腫瘤の右側にthrill,血管雑音を認めた.造影CTにて明瞭な瘻孔形成の所見が得られたため,大動脈-下大静脈瘻と診断した.
    瘻孔は大動脈瘤内より縫合閉鎖し, Y型ダクロングラフトにて血行再建を行った.
    脈圧の増大, CVPや心拍出量の高値,頻脈は術後に速やかに改善された.
    大動脈-下大静脈瘻の確定診断は通常,血管造影を必要とするがCTは大動脈瘤の診断に有用であるばかりでなく,大動脈-下大静脈瘻を証明し得る.
  • 川野 亮二, 甲斐 良樹, 瀬分 均, 小浦 義彦, 今井 徹, 吹野 陽一, 井藤 久雄, 松浦 雄一郎
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2108-2112
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    中縦隔に発生した気管支と交通を有しない気管支嚢胞の1切除例を経験したので報告した.症例は65歳,女性,右背部違和感を主訴に来院した.胸部X線検査にて縦隔異常陰影を指摘され,精査の結果,気管分岐部付近に大きさ約7.0×6.5cmの腫瘤が認められ,中縦隔腫瘍の診断にて手術を施行した.腫瘤は前方で右主気管支に,内側で食道側壁に,後方で奇静脈に囲まれる領域に存在していた.腫瘤摘出術を行ったが,この際気管支との交通は認められなかった.病理組織学的に嚢胞内面に線毛円柱上皮を認め,気管支嚢胞と診断された.本症は一般に,嚢胞と気管支との交通の有無により臨床症状が異なるとされ,さらに画像診断上,嚢胞が好発部位以外に孤立発生する場合や,典型的な嚢胞像を呈さない場合があるため,これらの点に留意して本症の診断を進めていく必要があると思われた.
  • 酒井 聡, 荒川 博徳, 松本 興治, 廣瀬 一
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2113-2117
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    当科において,最近12年間で経験した肺多発癌症例は4例であり,同時性2例,異時性2例で,組織型は扁平上皮癌の多発例が2例,扁平上皮癌と腺癌が1例,腺扁平上皮癌と腺癌が1例であった.症例1は60歳男性,気道系に発生した扁平上皮癌で, 7年前に右中下葉切除術施行した後,左下葉切除術を行った.症例2は67歳男性で同時性,右中葉の扁平上皮癌と下葉の腺癌で1期的に手術を行った.症例3は75歳女性で3年前に腺扁平上皮癌で右中下葉切除術施行した後,左舌区の腺癌を認めたが,患者の手術拒否により放射線治療を行い担癌生存中である.症例4は65歳男性で,クロム暴露による扁平上皮癌で両側下葉にあり,術前照射とBAI治療後,左下葉切除術を行い,右下葉に対してはレーザー治療を予定していたが,術後肺炎にて死亡した.肺多発癌の4例について,若干の検討を加え報告する.
  • 森脇 義弘, 新明 紘一郎, 細井 英雄, 北川 正明, 山口 孝治, 小尾 芳郎, 長堀 優, 小泉 泰裕, 清水 彰一郎, 西山 潔, ...
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2118-2124
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    月経随伴性気胸(Catamenial pneumothorax)の3例を経験したので報告した.症例は40歳, 25歳, 33歳の女性で,いずれも病歴から月経随伴性気胸と診断し開胸手術を行った. 2例が右側, 1例が左側の気胸であった.全例,横隔膜には異常は認められず,肺胸膜に異常所見(2例に癒着, 1例にプレプ)を認め,組織学的に子宮内膜症が証明されている.本邦では,月経随伴性気胸の報告は50例あり,自験例を含めると53例となる.組織学的に子宮内膜症が証明されているのは25例であるが,このうち19例は横隔膜病変によるもので,肺胸膜に異常所見を認めたものは自験例を含めても6例である.
  • 岡本 康久, 八木 孝仁, 大江 新野, 橋本 雅明, 井上 文之, 上川 康明, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2125-2129
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肋骨原発の悪性リンパ腫は比較的稀な疾患である.今回,本症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    39歳,男性.右背部痛を主訴として来院.胸部X線, CT, MRIより右第5肋骨原発の悪性腫瘍と診断し,動注化学療法を行ったところ,腫瘍は著明に縮小し,根治手術が可能となった.病理組織学的にはびまん性大細胞型悪性リンパ腫であった.全身化学療法を併用し,術後10カ月を経過した現在,再発も見られず健在である.
  • 松井 祥治, 西山 裕康, 藤田 伸輔, 田畑 文平, 藤盛 孝博, 石川 羊男
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2130-2134
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    upside down stomachを呈する食道裂孔ヘルニアの1例を経験した.患者は87歳女性で主訴は胸部圧迫感と心窩部痛であった.上部消化管透視にてupside down stomach型の食道裂孔ヘルニアと診断され,食道・胃内視鏡検査で多発性の胃潰瘍を合併しているのが観察されたため手術適応と判断された.手術はHill法に準じて行い,多発性の潰瘍に対して広範囲胃切除術を同時に施行した.術後肺合併症を起こしたが回復しその後ヘルニアの再発も見られない.
  • 古川 勝規, 安倍 已紀男, 田代 亜彦, 真島 吉也, 山森 秀夫, 西沢 正彦, 奥井 勝二, 竹田 賢
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2135-2139
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞既往例または狭心症合併例の手術前後の心筋梗塞の発症率は高い.よって,冠動脈疾患合併症例では,外科手術に消極的になりがちである.
    われわれは狭心症合併食道癌に対し,術前に経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)を施行した後,食道癌根治術を施行し得た症例を経験した.症例は64歳男性,主訴:上腹部痛.既往歴: 53歳下壁心筋梗塞, 2カ月前より狭心発作出現.食道造影,内視鏡等より早期食道癌の診断.冠動脈造影では右冠動脈の segment 2に90%の狭窄を認めた.同部位にPTCAを施行し, 1週間後に胸部食道全摘術を施行,後縦隔経路にて再建した.術後24カ月目を経過した現在,再発の徴候や狭心発作もなく,健在である.
    食道癌治療にあたっては,冠動脈疾患合併例でもPTCAが成功すれば,積極的に根治術を施行すべきと思われる.
  • 秋岡 清一, 栗岡 英明, 内山 清, 山本 拓実, 塩飽 保博, 李 哲柱, 池田 栄人, 橋本 京三, 武藤 文隆, 大内 孝雄, 田中 ...
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2140-2144
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    食道癌はリンパ行性転移が主であり,血行性転移は少なく脳転移はさらに稀である.今回,われわれはCEA高値で脳転移を認めた下部食道癌の1切除を経験した.症例は69歳男性,嚥下困難を主訴とし上部消化管造影.同内視鏡にて下部食道癌を指摘された.上腹部リンパ節転移は認めたが,肺・肝転移は認めず,食道亜全摘・胃管胸腔内吻合を行った.術後,急速な神経症状の進行を認めたため頭部CTを行い多発性脳転移を認めたが,急速な脳幹症状の出現が考えられたため積極的に脳腫瘍切除と術後放射線療法を行ない良好な結果を得た.遠隔転移を有する進行食道癌であっても患者のquality of lifeを考慮し積極的な切除を行うべきと考えられた.
  • 西村 好晴, 竹中 博昭, 岩瀬 和裕, 矢倉 明彦, 吉留 克英, 大西 隆仁, 高垣 元秀, 石坂 透, 別所 俊哉, 大畑 俊裕, 井 ...
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2145-2148
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    肝動脈再建を伴うAppleby手術により切除し得た進行胃癌の1例を報告した.肝外側区域と横行結腸間膜への直接浸潤を有する74歳の胃癌症例に対し,胃全摘,膵体尾部切除,脾臓摘出,胆嚢摘出,肝外側区域切除,ならびに横行結腸部分切除を施行した.総肝動脈は腫大したリンパ節に巻き込まれていたため,腹腔動脈を根部にて切離し,固有肝動脈ならびに胃十二指腸動脈を切離した.虚血性肝障害を回避するため,自家大伏在静脈を用いて肝動脈を再建した.術後,肝機能は良好に維持された.
  • 菅野 浩樹, 安藤 善郎, 野水 整, 吉田 典行, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2149-2154
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    教室における原発性消化管悪性リンパ腫15例(胃10例,小腸3例,大腸2例)について,主として予後の面から検討を行った.腸管悪性リンパ腫は胃悪性リンパ腫に比較して予後不良の傾向があったが,これは症状が発現しにくいこと,および検査が困難で発見時に既に進行した症例が多いためと考えられた.予後因子について検討した.深達度との関係は明らかでsmまでの症例の生存率は100%でpm以上の症例に比べて有意に良好であった.臨床病期分類では,癌取扱い規約に準じた分類が明確に予後を示していた.
    自験例では, 2年以内に死亡する予後不良群に対し, 2年以上経過した症例はほとんどが5年以上生存しており,術後2年間の経過観察が予後を向上させるために重要であると考えられた.
  • 箱田 滋, 山本 透, 谷口 智行, 武山 直志, 田中 孝也
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2155-2158
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    本態性血小板血症は慢性骨髄増殖性疾患に属する疾患であり,血小板機能異常を高頻度に認めることが多い.本症の病態,治療,予後については不明な点が少なくなく,本症では出血と血栓という一見相反する現象がみられるのが特徴とされている.症例は52歳男性で,血小板増多症により門脈圧亢進症をきたし,巨大脾腫・食道静脈瘤・胃静脈瘤を合併,食道離断術・摘脾術を施行した.術後13年目に十二指腸静脈瘤破裂にて吐血,上腸間膜静脈瘤,脳梗塞を合併し,破裂静脈瘤は内視鏡的硬化療法にて止血し得た.
  • 真田 正雄, 鈴木 秀, 塚本 剛, 志村 賢範, 外川 明, 加藤 厚, 平田 正雄
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2159-2162
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは16年前に胃潰瘍にて胃切除術(Billroth I法)をうけた,臍周囲痛を主訴とする65歳,男性に対して,腹部単純X線写真および腹部CT検査より,誤嚥異物による十二指腸穿通にともなう後腹膜膿瘍と診断し,緊急手術にて救命しえたので報告した.手術は,上腹部正中切開にて開腹し,十二指腸下行脚後壁の穿孔と後腹膜膿瘍を認め,術中胃内視鏡検査にて残胃内に異物を確認し,胃切開術を施行して摘出した.摘出した異物は全長58mmの魚骨であり,本邦における誤嚥魚骨による消化管損傷症例中最大長であった.また誤嚥魚骨の十二指腸穿通による後腹膜膿瘍は,本邦2例目の報告であり非常に稀な症例であった.さらに誤嚥魚骨による消化管損傷をきたした本邦59報告例を検討したところ,誤嚥魚骨の大きさから,消化管損傷部位および形成される病巣の形態を推定することは困難であると思われた.
  • 麻沼 和彦, 藤田 ひろ子, 花村 直, 関 龍幸
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2163-2166
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は,近年その報告例が増加しているが,比較的稀な疾患である.われわれはその1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
    症例は37歳の女性で,主訴は嘔気,嘔吐であった.小腸追跡,および腹部超音波検査で小腸癌と診断し,手術を施行した.腫瘍はトライツ靱帯より約40cmにあり,全周性の狭窄を呈していた.小腸部分切除,リンパ節郭清,空腸端々吻合を行った.リンパ節転移,遠隔転移は認めなかった.
    本症例では,症状出現より確定診断まで, 5カ月を要している.消化管の閉塞症状のある時はもちろん,腹部の不定愁訴があったり,便潜血が陽性の場合は,小腸腫瘍も考え,検査を進めるべきである.
  • 浦 英樹, 南田 英俊, 平田 公一
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2167-2171
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,腹部症状を伴わない貧血患者の精査において,比較的稀な4cm未満の小さな空腸原発性平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.
    症例は58歳女性,易疲労感を主訴に来院.一般血液検査で中等度の貧血を認めた.胃・十二指腸および大腸に異常を認めなかったが,腹部血管造影で上部空腸動脈の末梢に胡桃大の腫瘤様濃染像を認めた.空腸腫瘍の診断で開腹術施行.手術所見として, Treitz靱帯より70cm肛門側に管内・外性に発育した4.0×2.5×2.5cmの腫瘍を認め,空腸部分切除で摘出した.術後経過は順調で,貧血も改善した.
    一般に本症の予後は不良であり,早期発見,早期切除以外に有効な治療法はない.したがって,貧血や便潜血反応陽性例などで,胃・十二指腸・大腸に異常がない場合には,積極的な小腸の検索が必要である.本症の診断については,存在診断,質的診断の両面で血管造影検査が有用であると考えられた.
  • 水谷 郷一, 堀江 修, 桜井 与志彦, 町村 貴郎, 幕内 博康, 田島 知郎, 三富 利夫
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2172-2175
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは腹膜偽粘液腫を伴った原発性虫垂癌のまれな1例を経験したので報告する.
    症例は65歳,女性.主訴は右下腹部痛.理学的所見では右下腹部に著明な圧痛と腹膜刺激症状を認め, iliopsoas signが強陽性であった.腹部超音波検査で,一部hyperechoicの部位を含むhypoechoic lesionを認めたが虫垂像は明かでなかった.以上より急性虫垂炎穿孔による後腹膜膿瘍の診断で緊急手術を施行した.術中所見は右側後腹膜腔に浸潤を認める腹膜偽粘液腫の状態であり右半結腸切除術を施行した.切除標本の検索で6.5×4.0cmの虫垂腫瘍を認めた.病理組織所見は虫垂の粘液嚢胞腺癌であった.術後は経過良好で第19病日に退院となった.
  • 佐藤 公司, 坂口 国隆, 金井 正男, 村田 貞史, 岡 敬三, 鴨井 博
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2176-2180
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    粘液水腫性昏睡は,甲状腺機能低下症が長期間治療されず放置された結果発症する進行性意識障害を主徴とした重篤な病態である.最近, S状結腸軸捻転症術後,本症による呼吸不全を呈した1例を経験したので報告する.症例: 79歳,女.下腹部膨満感を主訴として来院. S状結腸軸捻転症にて緊急開腹.術後麻酔覚醒遅延原因検索の為,内分泌機能検査を施行.原発性甲状腺機能低下症と診断.突然呼吸不全に陥ったが,甲状腺剤,副腎皮質ホルモン併用投与にて全身状態は安定化した.粘液水腫性昏睡は,外科治療の際遭遇することは極めてまれであるが,死亡率は50~80%と予後不良である.治療はまず本疾患の存在に気づくことであり,ただちに甲状腺剤投与を開始することである.術後麻酔覚醒遅延,呼吸不全を呈した症例には,本疾患の存在も考慮し,甲状腺機能検査を実施すべきである.
  • 森田 章夫, 岩本 忠, 高田 孝好, 高雄 清人, 斉藤 洋一
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2181-2185
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性下腸間膜動脈閉塞症の1例を経験したので文献的考察を加え報告した.症例は79歳,女性.主訴は腹痛,下血,嘔吐.入院時,ショック状態であり,腹部は膨隆著明で板状硬であった.腹部単純X線写真では,小腸・大腸ガス像が著明であった.イレウスと診断し緊急手術を施行した.下腸間膜動脈領域の腸管壊死を認め,下腸間膜動脈の拍動は認めなかった.下腸膜動脈閉塞症と診断し,左半結腸切除術,人工肛門造影設術を施行した.術後は良好に経過し退院した.本例を含めて本邦では13例が報告されているが,予後不良であり,早期診断および早期治療が重要であると思われた.
  • 石川 隆, 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修, 白川 靖博, 折田 薫三
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2186-2189
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは,妊娠に合併した結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は37歳,女性.主訴は,下痢と血便.妊娠後期になって下痢と血便をきたし,近医にて妊娠中毒症の診断にて帝王切開を受けたが,血便が続くため当院を紹介受診した.各種検査にて,肝彎曲部にBorrmann 1型進行癌と診断され,右半結腸切除術(R3)を施行した.内眼診断は上行結腸のBorrmann 1型の進行癌(S2, N1, P0, H0, Stage III)であった.病理所見では,高分化腺癌で, pm, ly1, v0, n1, ow(-), aw(-)であり,絶対治癒切除と診断された.妊娠合併大腸癌はまれで,その発生頻度は10万例の妊娠に対して1~2例といわれている.とくに結腸癌の合併はまれで,今回集計できたものは,自験例を含めて37例にすぎなかった.日常の診療に際して本症の存在を念頭に置き,早期発見,早期治療に努める必要があるものと考えられた.
  • 鹿野 実, 尾崎 公彦, 谷口 勝則, 大同 毅, 伊藤 昌彦, 前田 武昌, 春日 正己, 佐藤 秀一郎, 庄林 智
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2190-2194
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    膀胱浸潤を伴う進行直腸癌患者52歳男に低位前方切除と代用膀胱を造設し,社会復帰して2年7カ月経過したので報告する.患者は肺結核で右上葉肺切除と胸部形成の既存歴があった. 1998年経尿道的に前立腺摘出術を受けている.当時より膀胱後壁にあった小潰瘍が治癒しないため, 1年後に大腸内視鏡検査を行い,肛門より口側10cmの直腸前壁に小指頭大の腺癌(Borr II)を認めた.骨盤CTスキャンでは膀胱後壁,回盲部,右尿管への癌浸潤が考えられた.この様な進行癌に対しては骨盤内臓器全摘出術が考えられたが,患者の強い社会復帰の希望があり,直腸前方切除膀胱後壁と回盲部切除を行い,再建は直腸S字結腸吻合回腸上行結腸吻合を行った後, 30cmの回腸でループを作り,両側尿管移植.この回腸ループと膀胱前壁を縫合して代用膀胱とした.膀胱容積600ml,内圧最高50mmHg,下腹部膨満感があれば腹圧で排出を行い.排尿回数は1日4~5回.夜間の尿失禁も認めていない.
  • 折田 雅彦, 竹中 博昭, 飯尾 里, 小林 哲郎, 榎 忠彦, 平岡 博, 守田 信義, 江里 健輔
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2195-2198
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.肋骨転移を初発として発見され,転移巣および原発巣を切除し得た原発性肝細胞癌の1例を報告する.主訴は右背部腫瘤.第10胸椎右縁を中心に小児手拳大の腫瘤を触知した.第9, 10, 11肋骨及び胸壁合併切除を施行,その後放射線療法も併用した.病理組織検査では原発性肝細胞癌が最も疑われ腹部エコー, CT等を施行し, Ssに約3cm大の低吸収域が認められたためこれを部分切除し,動注リザーバーを留置した.病理組織検査ではEdmondson II型原発性肝細胞癌であった.
    原発巣が小さく早期に骨転移を合併する原発性肝細胞癌の中には比較的予後が良好なものもあるとされ,本症例も積極的な切除を中心とした集学的療法により,良好な予後が期待された.
  • 岸本 弘之, 澄川 学, 狩野 卓夫, 日野原 徹, 小松 健治, 山代 昇
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2199-2203
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症のうちのAlonso-Lej III型であるcholedochoceleの1例を経験したが,嚢腫内のみに結石を伴っていた.患者は39歳の女性で,以前より時々軽い右季肋部痛があったが放置,検診の内視鏡検査で十二指腸の粘膜下腫瘍を指摘されて入院した.腹部超音波検査, CT検査, ERCP検査にて嚢腫内に結石を伴ったScholz B型のcholedochoceleと診断して手術を施行した.開腹時の胆嚢内胆汁中のアミラーゼなど膵酵素は高値であった.乳頭形成にて共通管の後壁に1mm大の開口部を認め,嚢腫内に3コの結石を確認した.嚢腫壁を切除して十二指腸壁と縫合したが,組織学的に嚢腫内面は十二指腸粘膜よりなり,胆嚢にも悪性所見はなかった.本邦で59例目であるが,結石や膵炎,さらに比較的高率に癌を合併している.嚢腫壁や胆道系への膵酵素の作用が推察され,術中・術後の組織学的な検索も必要と考えられた.
  • 森浦 滋明, 池田 修平, 平井 正文, 内木 研一, 酒井 隆, 横地 潔
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2204-2207
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外傷性総胆管閉塞の1例を報告する.症例は38歳男性で交通事故による腹部打撲,肝膵損傷のため入院した.受傷後10日目のCTで膵嚢胞を認めた. 1カ月後に膵嚢胞はCT上ほとんど消失したが, ERCPで総胆管と膵管の狭窄を膵頭部に認めた.生化学検査の異常を認めなかったため一旦退院したが,受傷3カ月後閉塞性黄疸のため再入院しPTBDにより減黄した. PTBDチューブとERCP両方からの造影で7mm長にわたって膵内胆管の完全閉塞を認めた. PTBD瘻孔を拡張し胆道内視鏡下に胆管の開通を試みたが成功しなかったため,総胆管十二指腸吻合を施行した.本例で総胆管閉塞は胆管損傷と膵挫傷,仮性嚢胞の治癒過程での線維化に起因すると考えられた.
  • 佐藤 裕, 宮崎 耕治, 薬師寺 浩之, 湯ノ谷 誠二, 伊山 明宏, 原岡 誠司, 久次 武晴
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2208-2213
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,高齢化と診療技術の進歩により重複癌症例が増加しているが,胆管癌と肺癌が重複して認められ,両者とも切除し得た症例は極めて稀である.最近,肝外胆管の腺癌と肺の扁平上皮癌とが同時性重複した1例を経験したので報告する.症例は68歳の男性で,血痰,胸部異常陰影と黄疸を主訴に精査入院.経皮経肝的胆道鏡下生検にて腺癌,気管支鏡下擦過細胞診にて扁平上皮癌を認め,同時性胆管肺重複癌と診断した.両者を一期的に切除することは手術侵襲の面から不可能と考え,肺癌に対して気管支動脈より動注化学療法を行った後,先に膵頭十二指腸切除を施行し,本術後42日目に左肺下葉切除兼胸壁肋骨合併切除を行った.
    重複癌の場合,担癌患者の予後を決定すると考えられる,より進行した癌の治療を優先することが,重複癌患者に予後の向上をもたらすものと考えられた.
  • 木田 英也, 三田 孝行
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2214-2219
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近の医療機械の発達に伴い胆嚢癌も比較的早期に発見されるようになってきたが,依然進行癌として発見される症例が多いのが現状である.胆嚢結腸瘻を合併した進行胆嚢癌に根治手術を施行したので報告する.
    症例は79歳,女性.主訴:腹部腫瘤. US, CT,注腸透視, ERCPより胆嚢癌,胆嚢結腸瘻,総胆管結石と診断し手術施行.胆嚢は肝から遊離し,大半が癌で占められ横行結腸に浸潤し,頸部に径7mmの胆嚢結腸瘻を認め,総胆管にビリルビンカルシウム石を3個認めた.胆嚢摘出,総胆管切開, T字管挿入,横行結腸部分切除を行った.組織学的には7×4×2cm大の中分化型乳頭腺癌で横行結腸筋層まで浸潤していたが,瘻孔部は炎症性変化が主体で,癌に合併した胆嚢炎による内胆汁瘻と考えられた.患者は術後1年の現在再発の兆なく外来通院中である.
    胆嚢結腸瘻を合併した胆嚢癌を報告するとともに本邦報告20例を集計し若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 渋田 健二, 平林 雅彦, 古賀 善彦, 犬塚 貞明, 牛島 賢一, 塩飽 徳行, 森 幸司, 松浦 泰雄
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2220-2226
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤は画像診断の進歩普及に伴い発見される頻度が増加している疾患であるがその胃内破裂の報告は本邦において4例にすぎない.
    今回われわれは脾動脈瘤の胃内への破裂例を経験し根治手術を施行し得たので症例を報告し,本邦における脾動脈破裂例49例について文献的考察を加えた.
    症例は51歳の男性で大量の吐下血を繰り返し一時は軽快したが内視鏡にて胃体上部の粘膜下腫瘍を疑われ当科を紹介された. ECHO, CTにて脾門部の球形腫瘤を認め血管造影にて脾動脈瘤と診断した.手術は胃体部および動脈瘤と共に膵尾部と脾の合併切除を行った.術後経過は良好で現在も健在である.
    大きな動脈瘤や妊婦の場合はもちろんのこと3.0cm以下の小さな動脈瘤も破裂の危険性があり早期の治療が必要と思われた.
  • 小林 達則, 毛利 宰, 藤井 喬夫
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2227-2231
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性. 1990年12月5日,下行結腸癌にて結腸部分切除術を施行した.術後8日目より突然発熱し,中心静脈カテーテルの先端より真菌が検出されたが,血液培養が陰性であり,抗真菌剤は投与されなかった.術後1カ月頃より腰痛,下肢痛が出現,術後90日頃下半身麻痺が発生した.真菌指数および血清D-アラビニトールは高値を示し,髄液よりCandida tropicalisが検出された.レントゲンで第6・7胸椎および第4・5腰椎の椎体破壊像と椎間板の不整狭少化を認め, MRIでは第6・7胸椎の部分で前方より脊髄の圧迫所見が認められた.カンジダ脊椎炎およびカンジダ髄膜炎と診断し抗真菌剤を4カ月投与し軽快した.自験例は中心静脈カテーテルが原因と考えられる極めて稀な深在性真菌症であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 山下 裕也, 長尾 和治, 松田 正和, 馬場 憲一郎, 西村 令喜, 松岡 由紀夫, 上野 洋一, 一口 修, 桑原 暢宏
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2232-2237
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,動脈硬化症の増加に伴い心臓カテーテル検査を含む血管造影を施行する機会が多いが,それに伴う穿刺部合併症は憂慮すべき問題点である.われわれは2症例で動静脈瘻,急性血栓症および仮性動脈瘤の3合併症を経験したので報告する.鼠径部の動静脈瘻は,浅大腿動脈起始部を穿刺したのに加え大腿静脈がそのほぼ背側を走行していたことが主因であった.急性血栓症は, atheromatous plaqueが圧迫止血の際に脱落し内腔を塞ぐことで発症したと考えられた.上腕動脈の仮性動脈瘤は穿刺孔が動脈外径に対して大きく,高血圧合併もあり圧迫止血が不完全であったことが発生要因となっていた.いずれの合併症も動脈硬化が深く関与していた.すなわち,これに伴う内膜病変,動脈壁の弾性低下,動脈の易可動性などに加え高血圧,血液凝固能の亢進などが穿刺部圧迫を潜在的に困難としていた.従って,合併症予防には正確な穿刺とともに的確な圧迫止血が重要であると考えられた.
  • 佐原 達也, 太田 敬, 別府 和重, 杉本 郁夫, 岡崎 信彦, 近藤 三隆, 数井 秀器, 加藤 量平, 土岡 弘通
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2238-2242
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    高位動脈に発生した壁在血栓が塞栓子となり,末梢動脈に動脈塞栓症を来した2症例を経験した.症例1は53歳男性,両下肢急性動脈閉塞の診断で紹介,受診した.腹部大動脈造影にて,腹大動脈分岐直前の右側壁に血栓による陰影の欠損と,下肢動脈造影にて右深大腿動脈,膝窩動脈に閉塞を認めた.手術所見では大動脈の血栓付着部の内膜にはわずかな隆起を認めた.血栓摘除,切開部のパッチ形成を行った.症例2は48歳男性で,右下肢急性動脈閉塞にて発症,受診した.骨盤動脈,右下肢動脈造影にて,右総腸骨動脈に壁在血栓と,右深大腿動脈,前,後脛骨動脈に分節状の閉塞を認めた.手術所見では,右総腸骨動脈の血栓付着部の内膜に軽度膨隆と出血斑を認めた.血栓摘除後,切開部のパッチ形成を行った.
  • 矢埜 正実, 矢野 隆郎, 中村 義人, 和氣 典雄, 井上 正邦
    1992 年 53 巻 9 号 p. 2243-2247
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    最近でも,マムシ咬傷後による多臓器不全や死亡症例の報告がある. 1989年8月にマムシ咬傷後,腫脹が著しく下肢から躯幹に及んだ68歳男性症例を保存的に治療した.回復しつつあり生存が期待できたが不幸にも13病日突然敗血症になり15病日に死亡した.減張切開をしていればもう少し続発症や合併症が少なかったと反省した.その後1年間に9例のマムシ咬傷があり,うち腫脹の著しい4症例に減張切開を施行した. 3例には続発症や合併症は無かった.減張切開直後より3例では腫脹は軽減し始めた.手を咬まれた1例は頸部,胸部まで腫れて呼吸抑制を起こした.減張切開した4症例中マムシ抗毒素血清を投与したのは1例のみであった.減張切開はマムシ毒による浮腫液摘出を容易に,ひいては二次的障害であるcompartment syndromeも防げる.上肢では上腕,下肢は大腿まで腫脹に及び,末梢側のしびれや,痛みが強い場合は減張切開を行うべきである.
  • 1992 年 53 巻 9 号 p. 2248-2257
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 9 号 p. 2258-2267
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
  • 1992 年 53 巻 9 号 p. 2268-2276
    発行日: 1992/09/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
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