日本臨床外科医学会雑誌
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54 巻, 10 号
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  • 鍋谷 欣市
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2463-2471
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 泰雄, 土田 嘉昭
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2472-2476
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 内田 久則, 杉本 久之, 西村 洋治, 福島 司郎, 西連寺 隆之, 銘形 和彦, 市川 直哉, 冨川 伸二, 長尾 桓, 松井 健, 刑 ...
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2477-2485
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前のカルシウム負荷試験が手術適応決定に有用か否かを検討する目的で,上皮小体摘出術を行った50例の腎性上皮小体機能亢進症につき分析を行った.摘出上皮小体の重量は43例が1グラム以上 (3.87±0.42SEgram), 7例が1グラム以下 (0.81±0.05SEgram) であった.組織学的には, 1グラム以上の重量の第1群は有意にnodular hyperplasia像を示し,第2群はdiffuse hyperplasia像であった (p<0.05). 術前にカルシウム負荷試験では,第1群が負荷後1時間でinteact-PTH値は前値の55±5.6%までの低下にとどまったのに対して,第2群では33±4.9%まで低下し,この差は有意であった (p<0.01). 組織学的にnodular hyperplasiaで重量が1グラム以上の例を手術適応と考え, diffuse hyperplasiaで重量が1グラム以下の例を保存的治療の適応と考えれば,術前のカルシウム負荷試験は両群の鑑別に役立つと結論しうる.
  • 成田 達彦, 舟橋 啓臣, 佐藤 康幸, 高木 弘
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2486-2489
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌におけるp53蛋白の発現を免疫組織学的に検討した.ポリクローナル抗体を用いたホルマリン固定パラフィン包埋標本における検討では, p53蛋白の発現は179例中49例(27.4%)の癌細胞核に限局して認められた. p53蛋白の組織発現と臨床病理学的背景因子, PCNA labeling indexおよび予後との有意の相関は認められなかった.以上より乳癌組織では変異型p53蛋白の発現がみられ, p53遺伝子の癌化における関与が示唆されたが,その臨床的意義に関してはさらに検討を要すると考えられた.
  • 特に内分泌化学療法との関連を中心に
    志村 賢範, 鈴木 秀, 塚本 剛, 真田 正雄, 大森 敏生, 市川 千秋, 由佐 俊和
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2490-2495
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌症例における脂肪肝の合併頻度を肥満,閉経,投与薬剤(特にTamoxifen)との関係より臨床的に検討した. 1986年10月より1992年3月までに当科で手術された乳癌症例のうちで,腹部超音波 (US) あるいはComputed Tomography (CT) が施行された75例を対象とした.術前の脂肪肝合併頻度は19.7%であったが,術後は63.7%と高率に認められた (p<0,01). 次に脂肪肝合併頻度を肥満との関係でみると,術前は肥満群36.8%と非肥満群13,0%に比してやや高い傾向にあったが,術後は肥満群64,7%, 非肥満群65.9%と共に上昇し両群間に差は認められなかった.閉経との関係では,全く差は認めなかった.投与薬剤との関係ではTamoxifen投与群66.7%, 非投与群40.0%で有意にTamoxifen投与群で高かった (p<0.05). 以上より,乳癌症例の術後には脂肪肝が高頻度に認められ,その詳細な機序は不明であるが,ひとつの因子としてTamoxifen投与の関与の可能性が示唆された.
  • 舟木 成樹, 川田 忠典, 西村 晃一, 中村 聰, 遠藤 慎一, 小山 照幸, 阿部 裕之, 三枝 隆, 岡田 忠彦, 山手 昇
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2496-2500
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1980年10月から1990年5月までにStanford A型解離性大動脈瘤21例に対して手術を施行した.急性例が14例,慢性例は7例であった.手術は上行置換が14例, Bentall手術4例,リング付グラフト使用2例, primary anastomosis 1例であった. annulo-aorticectasia以外の大動脈弁閉鎖不全 (AR) に対しては大動脈弁の吊り上げ術を行ったが,術後,ARの増大した症例は認めなかった.手術死亡は4例 (19%) であったが,全て前期の症例であり,超低体温循環停止・open distal anastomosis法を用いた1989年7月以降は手術死亡はなく,本法に起因する合併症も認めなかった. Kaplan-Meier法による100ヵ月の累積生存率は,急性期78.7%,慢性期68.6%であり,有意差はなかった.しかし,解離が広範な症例では,残存解離腔の注意深い経過観察が必要である.
  • 鈴木 一也, 豊田 太, 野木村 宏, 小林 亮, 木村 泰三, 原田 幸雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2501-2505
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    自然気胸に対し,胸腔鏡下手術を45例に施行した.術中,術後に重篤な合併症はなく,入院期間も短く,低侵襲という目的は達せられた.再発は1例 (2.2%) であり,現時点で開胸手術後の再発1.5%と比較し,遜色はない.開胸手術例の検討から,縫合,結紮の技術があれば10代, 20代の気胸の95%以上に胸腔鏡下手術が適応となると思われた.
  • 竹岡 秀生, 木多 秀彰, 大井田 宗継, 小原 靖尋, 宮田 秀夫, 門馬 公経, 小暮 洋暉, 田島 芳雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2506-2514
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右開胸による一期的切除再建術を施行した食道癌手術症例のうち,上縦隔拡大リンパ節郭清例12例(以下第I群)と標準リンパ節郭清例22例(以下第II群)を対象に,術後の肺合併症の臨床経過とSwan-Ganzカテーテルによる循環動態の推移を比較検討した.
    (1) 術後肺合併症は,第I群では8例, 9件,第II群では5例, 7僻こ発生した.肺合併症発生例の占める割合は,第I群では66.7%で,第II群の22.7%に比較して有意に高率で (p<0.05), 気管支肺炎の発生が高頻度であった.
    (2) 循環動態は,両群に特徴的な変化は認めなかったが,第I群では,第II群に比べ,術後にPWP, CI, CVPが高値を示す傾向があり,循環血液量の増加が考えられた.
    術後肺合併症は,上縦隔拡大リンパ節郭清例では標準リンパ郭清例よりも高率に発生した.特に気管支肺炎への対処と循環血液量増加を考慮した輸液管理の必要性が示唆された.
  • 藤森 恭孝, 木元 正利, 牟礼 勉, 岩本 末治, 笠井 裕, 今井 博之, 忠岡 好之, 小牧 隆夫, 吉田 和弘, 山本 康久, 佐野 ...
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2515-2523
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    川崎医科大学消化器外科で経験した小腸穿孔23例(外傷性, 7例,非外傷性, 16例)について臨床病理学的に検討した.術前の理学的所見で穿孔部位がある程度予測されることが多く,開腹部位の決定に重要であると思われた.腹腔内遊離ガスは23例中15例, 65.2%にみられ,遊離ガスの出現と穿孔部位,穿孔口の大きさとの間に相関はなかった.ステロイド内服例が5例あり,発症との関係は明らかではなかったが,白血球数は低値の傾向であった.外傷例の受傷機転は,交通外傷を主とした鈍的外傷で,手術は5例に穿孔部縫合閉鎖, 2例に小腸切除を施行, 7例中6例生存と予後は良好であったが,非外傷例の元疾患は,悪性腫瘍や膠原病を主に多岐にわたり,手術は12例に小腸切除, 3例に小腸瘻造設, 1例にバイパス手術を施行したが,予後は元病に左右され不良であった.
  • 小嶋 一幸, 藤田 毅, 今成 芳郎, 井上 淳, 安田 滋, 中村 孝哉, 三島 好雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2524-2528
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1990年1月から1991年3月までの15ヵ月間に榛原総合病院外科において急性虫垂炎の診断で手術を施行した91例について,術前の白血球数, CRP, 理学所見,超音波診断および病理学所見を比較検討した.超音波所見は虫垂の描出の有無,短軸径のほか,湯浅らの分類に準じて粘膜下層に相当する高エコー帯の状態により3型に分類し検討を加えた.
    その結果,カタル性はI型が76%を,蜂巣炎性はII型が82%を,壊疽性はIII型が94%を占める結果となった.術前に超音波検査を施行することにより急性虫垂炎の重症症の判定が可能で,不要な手術を避けることができた.さらにCRP, 筋性防御,超音波診断を組み合わせることにより,診断能は向上した.このように,超音波診断は急性虫垂炎の手術適応の決定に有用であった.
  • 藤川 亨, 片山 隆市, 穴沢 貞夫, 岡部 紀正, 斎藤 玻瑠夫, 桜井 健司
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2529-2534
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1962年から1991年までに当科および関連病院が経験した完全直腸脱18例の手術症例について,再発率と症状の改善度より各術式の有効性を検討した.症状として排便時直腸脱出が全例に認められたが,その他便通異常を伴うものが18例中11例に認められた.また括約筋不全を伴うものは13例あった.若年者には主として開腹直腸剥離挙上仙骨前固定術を,高齢者でリスクの高い者にはThiersch法もしくはGant-三輪法を施行した. 18例中5例に8回の再発が認められ,合計26回の手術を施行した.「Thiersch法」10回の施行に対して5回の再発,「Gant-三輪法+Thiersch法」併用4回の施行に対して2回の再発,開腹直腸剥離挙上仙骨前固定術8回の施行に対して1回の再発があった.開腹直腸剥離挙上仙骨固定術は再発に関して,おおむね良好な成績をあげたが,いずれの術式も術前にあった便通異常を改善するまでには至らなかった.
  • 岡 正朗, 内山 哲史, 森近 博司, 飯塚 徳男, 鈴木 敝
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2535-2539
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹膜播種合併大腸癌18例(P(+)例)を対象に,その病理学的特徴を,腹膜播種のない同時性肝転移例26例(H(+)例)と比較することにより解析し,予後の面から手術療法の意義について検討した. P1は3例, P2は8例, P3は7例であり,これらP(+)例のうち13例が肝転移を合併していた. P(+)例の病理学的特徴は, 1) Rb症例が少ない, 2) 浸潤型(3型)が多い, 3) si (ai) 症例が多い, 4) リンパ節転移はn2以上が多い,ことが挙げられ, P(+)例は局所だけでなく血行性およびリンパ行性にも進展していることが判明した.予後の検討では, P3症例が最も予後不良であり,また, P1およびP3,症例で腹膜転移切除を施行した6例は,切除非施行5例に比較して予後良好であった.以上より, P1およびP2の腹膜播種を合併した大腸癌では肉眼的な完全切除を行うことが,延命に結び付くと考えられた.また, P3症例では病巣切除による延命効果は認められず,姑息的処置以外の必要性はないものと思われた.
  • 花崎 和弘, 梶川 昌二, 堀米 直人, 塩原 栄一, 巾 芳昭, 黒田 孝井, 飯田 太, 宮崎 忠昭, 大塚 満洲雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2540-2545
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌切除の術後合併症と肝不全との関連について検討した.肝細胞癌切除107例中術後合併症は26例 (24%) に認め,合併症26例中6例 (21%) が肝不全となった.肝不全の誘因となった合併症は,呼吸不全5例中4例 (80%),大量腹水10例中4例 (40%),術後腹腔内出血4例中1例 (25%), 消化管出血6例中1例 (17%) であった.また高ビリルビン血症7例中6例 (86%), 腎不全4例中3例 (75%), DIC4例中3例 (75%), 消化管出血5例中3例 (60%) が肝不全に続発した合併症であった.なお肝不全を伴わなかった合併症は胆汁瘻と腹腔内感染であった.肝不全死例はいずれもその誘因となる術後合併症を有していた.したがって肝細胞癌切除後に発症する肝不全の予防として術後合併症の防止はきわめて重要であり,特にARDSによる呼吸不全対策,大量腹水の防止,術後腹腔内出血に対する止血術を早期に行うことが重要であると考えられた.
  • 大田 早苗, 矢島 幹久, 牛島 康栄, 朝戸 裕
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2546-2549
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    らい患者に発生した乳腺原発悪性リンパ腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は68歳,女性,主訴は右乳房腫瘤である.腫瘤は硬く,表面平滑,無痛性でよく動く.
    生検にて乳癌と診断され,定型的乳房切断術を施行せるも,最終的の病理組織所見は悪性リンパ腫(ぴまん性,B細胞型,中細胞型)であった. Wisemanらの診断基準に照し,乳腺原発悪性リンパ腫と診断した.
    術後1年6ヵ月を経過した現在も健在である.
    らいと悪性リンパ腫との因果関係は明らかでないが,細胞性免疫抑制状態にある「らい腫型らい」患者では,加齢とともに悪性リンパ腫の発生の増加が考えられる.
  • 竹本 直明, 浜崎 尚文, 古谷 素敏, 中村 嘉伸, 石黒 真吾, 佐々木 成一郎, 黒田 弘明, 森 透
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2550-2553
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    70歳男性,縦隔嚢状リンパ管腫の1例を経験した.左鎖骨上窩に腫瘤を触知した.その腫瘤は拍動性であること,また患者は,胸部に鈍的外傷の既往をもつことより胸部仮性大動脈瘤が疑われた.胸部CT, MRI, DSAにて胸部大動脈瘤は否定され縦隔嚢胞と診断された.さらに嚢胞穿刺にて乳びが吸引され縦隔嚢状リンパ管腫と診断された.腫瘤全摘出術が施行され,現在再発の兆候もなく良好な経過を経ている.
  • 杉山 和義, 八木 義弘, 板谷 久雄, 木所 昭夫, 福永 正氣, 富永 滋, 石 和久
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2554-2559
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma: MFH) は成人の軟部組織に好発する悪性腫瘍である.しかし肺原発のMFHは極めて稀で,本邦報告例は29例であった.今回われわれは, 68歳男性の肺原発MFHの1例を経験したので報告する.腫瘍は,左上葉S3に存在し,気腫性肺嚢胞を合併していた.手術は左肺上葉部分切除を施行した.術後の病理,免疫組織学的検査でMFHと診断されたが,術前・術中検査では診断が困難であった.摘出標本の病理組織学的検討は,紡錘形細胞が典型的な花むしろ様構造を呈していた.現在術後9ヵ月が経過したが,再発の兆候は認めていない.
  • 林 悟, 佐竹 信祐, 西 純雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2560-2565
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Osler-Weber-Rendu症候群に合併した肺動静脈瘻の1例を報告する.患者は34歳の女性で胸部X線上右下肺野に異常陰影を認めたため当院を紹介された.胸部断層撮影及びCTで右中葉の動静脈瘻と診断された.胃内視鏡検査では粘膜に多発性毛細血管拡張を認めた.また,患者の長男には脊髄の動静脈奇形破裂の既往があった.以上よりOsler-Weber-Rendu症候群と診断した.右中葉切除術を施行,術後は順調に経過した. Osler-Weber-Rendu症候群に合併した肺動静脈瘻の本邦報告例47例の文献的検索を行った. 47例中28例 (60%) が女性であった.平均年齢は34歳で29例 (62%) は40歳以下であった. 26例 (55%) において肺動静脈瘻は多発性であった.多血症は15例 (32%) でみられたが,反復する出血のために貧血を呈した症例もみられた.肺動静脈瘻は脳合併症(膿瘍,塞栓)の原因となるため,可能なら外科的な切除が望ましい.
  • 枝國 源一郎, 堀田 圭一, 伊藤 翼
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2566-2569
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,胸部X線写真にて増大傾向を呈したため肺癌の可能性を否定できずに手術を施行した肺犬糸状虫症の1例を経験した.
    症例は, 80歳女性.胸部X線単純写真にて肺野異常陰影を指摘され,当院受診となった.胸部CTにて,右上葉S2に径2.5cm大の腫瘤陰影を認めた.気管支鏡検査,肺針生検にても確定診断が困難であり胸部X線単純写真にて銭型陰影の増大傾向を認めたため,肺癌の疑いを否定できずに右上葉切除を施行した.摘出標本より虫体が確認され,肺犬糸状虫症と診断した.
    近年,人畜共通感染症の一つである肺犬糸状虫症の報告例が急激に増加しつつある.胸部X線単純写真にて銭型陰影を認めた場合,肺犬糸状虫症をも考慮する必要があると考えられる.
  • 田淵 篤, 藤原 巍, 土光 荘六, 正木 久男, 野上 厚志, 吉田 浩, 三宅 隆, 勝村 達喜, 福屋 崇
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2570-2573
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.健康診断にて左上肺野の異常陰影を指摘され当科に入院した.発熱,炎症所見なく,喀痰検査では細菌培養が陰性,細胞診がClass Iであった.胸部CTでは腫瘤の胸膜陥入像,肺門・縦隔リンパ節腫脹を認めなかった.
    肺癌を否定できず,腫瘤を含めて左上葉, S1+2の部分切除術を施行した.
    切除標本の病理学的所見から肺クリプトコッカス症と診断した.直ちに抗真菌剤フルコナゾールの投与を開始し, 3ヵ月間継続した.術後経過は順調であった.
    再発,特に髄膜炎予防のために術後の抗真菌剤投与と経過観察が重要と思われた.
  • 舘林 孝幸, 大貫 恭正, 伊藤 秀幸, 笹野 進, 西内 正樹, 新田 澄郎
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2574-2577
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Morgagni孔ヘルニアは比較的稀な疾患である.症例は71歳,女性,肥満体型で分娩歴2回であった.外傷による右第4, 5肋骨骨折後9ヵ月目頃より徐々に呼吸困難,胸痛を訴え,胸部X線上,受傷直後には不明瞭だった右心横隔膜部の腫瘤影が,境界明瞭な大きな腫瘤影となり, CT上にても前縦隔に脂肪濃度の腫瘤影を認めたが確診できず,胸骨縦切開にて手術を行い大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断した.ヘルニア門が大きく横隔膜も脆弱であったため, Marlex Meshによる横隔膜補填術を施行した.本症例は,外傷を契機として症状が発現したMorgagni孔ヘルニアと思われる.
  • 津嶋 秀史, 窪田 敬一, 有園 さおり, 中尾 健太郎, 太田 秀二郎, 照屋 正則, 梶浦 直章
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2578-2582
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.平成3年12月頃より食欲不振,嘔気,嘔吐出現.上部消化管造影にて下部食道の狭窄及び胃噴門部の腫瘤陰影を指摘され,精査,加療目的で入院となった.上部消化管内視鏡施行すると, ECJ部はピンホール状で,胃側への内視鏡の挿入は不可能であった. ECJ部の生検結果はGroup IIであった.腹部エコー及びCTで,肝左葉に直径約4cmの嚢胞が認められ,エコーガイド下に嚢胞内容を穿刺吸引すると,噴門部の腫瘤陰影はほぼ消失したため, ECJ部の良性狭窄及び肝嚢胞による胃の壁外性圧迫と診断し,平成4年3月11日,噴門側胃切除術を施行した.肉眼的には噴門部のkissingulcerと口側の白色の肥厚がみられた.病理組織学的には,粘膜下層の広範な線維化がみられ,胃潰瘍瘢痕による線維性狭窄と診断された.術後は順調に経過し,術後第46病日退院となった. ECJ部の胃潰瘍瘢痕が原因となったと思われる珍しい噴門狭窄の1例を経験したので報告した.
  • 坂田 博美, 水戸 廸郎, 草野 満夫, 斉藤 孝成
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2583-2587
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳男性.1990年6月9日,心窩部痛出現し来院.胃内視鏡にて急性胃炎と診断され入院となった.入院後,投薬にて一時的に症状は軽減したが,間欠的な心窩部痛を繰り返した.その後,胃X線,腹部超音波および腹部CT検査で,胃体上部の胃壁に硬化および肥厚を認め, Borrmann 4型胃癌が疑われた. 6月20日,再度胃内視鏡を施行したところ,胃体上部大蛮側に巨大な浮腫状腫瘤と,その中心部にアニサキス様虫体を認めた.虫体を摘出後,症状は直ちに消失した.虫体は, Pseudoterranova decipiensであった.本症例は,胃テラノーバ症により好酸球性肉芽腫が形成され,いわゆる胃vanishing tumorとなる経過をとった稀な症例であった.
  • 柳瀬 豊, 児玉 一成, 土田 勇, 有島 史芳, 久米川 浩, 福島 駿, 掛川 暉夫
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2588-2591
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    誤嚥魚骨による胃穿孔2例を経験したので報告する.症例1は80歳男性,持続する心窩部痛と腹膜刺激症状を呈し,腹膜炎の診断で開腹した.長さ3cmの魚骨が胃角部前壁に穿通し,小弯を中心に少量の腹水と膿汁を認め,腸管全体に白苔の付着を認めた.幽門側胃切除と, Billroth-I法による再建を行った.また術後見直した腹部X線にて魚骨陰影が確認された.症例2は55歳男性,約一週間前より心窩部異和感と悪心嘔吐を呈し,その後急に腹痛をきたし来院,イレウス及び腹膜炎の診断にて開腹した.腹腔内に少量の腹水と膿汁の貯留を認め,胃前庭部に穿通した魚骨はさらに肝左葉に刺入していた.幽門側胃切除とBillroth-I法の再建を行った.これらの診断に際し,詳しい現病歴また腹部単純X線が診断の助けとなり得ることが考えられた.
  • 小倉 豊, 高 勝義, 樋口 耕造, 片山 信, 清水 信明, 山口 洋介, 野村 了, 久納 孝夫, 中島 伸夫
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2592-2596
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    性器外,特に胃原発の絨毛癌は稀で,極めて予後不良な疾患である.今回われわれはその1例を経験したので報告する.症例は45歳男性で主訴は心窩部痛である.生検所見が低分化型腺癌の胃体部後壁のBorrmann 2型胃癌の診断で胃全摘,膵脾合併切除,肝左葉部分切除を施行した.切除標本では中央に出血性壊死性の柔らかい組織に覆われたBorrmann 2型の腫瘍で病理組織所見絨毛癌を主体とし腫瘍辺縁に連続する低分化型腺癌の像を認め,両者の間に組織学的な移行が認められた.免疫染色では絨毛癌にHCG (Human Chorionic Gonadotropin) 陽性細胞を認めた.術後30日目より血中HCG, LDH値の異常高値と肝両葉に散在性転移を認めたため肝動注で5FU・MMC・epi-ADMを隔週投与したところ,一時期肝転移巣は著明に縮小し血中HCG, LDH値も低下した.しかしその後肝転移巣の増大,肺・脳の多発性転移を認め経静脈的にCDDP・VP-16を投与したが効果なく急速に全身状態が悪化し,術後9ヵ月で死亡した.
  • 清水 義博, 田中 承男, 中江 晟, 松井 英, 下出 賀運, 吉田 潤, 関川 進
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2597-2601
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃角部に発生した扁平上皮癌の1例を経験した.症例は59歳男性で,上腹部不快感を主訴とし,胃内視鏡にて胃角部にBorrmann 2型の腫瘍が認められた.同部の生検にてGroup V (扁平上皮癌)と診断され,胃幽門側切除, R2郭清を施行した,病理組織学的には,角化を伴う中分化型扁平上皮癌であり,他のどの部分にも腺癌組織は認められなかった.
    本症のように,腺癌組織を全く認めない純粋な扁平上皮癌は稀で,本邦では,現在までに16例の報告をみるのみである.胃扁平上皮癌の特徴及び組織発生につき,免疫組織化学的考察を加えて報告する.
  • 西 敏夫, 乾 一郎, 山田 晃正, 池田 正孝, 龍田 眞行, 星 脩, 川崎 高俊, 里見 隆, 坂口 旦和
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2602-2606
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性骨髄性白血病の寛解期に発症した胃癌の切除例について報告する.症例は55歳の男性で, 1986年12月12日に急性骨髄性白血病にて入院治療した.その後は完全寛解を維持していたが,発症より5年後の1991年12月ごろより胃部膨満感があり,胃X線検査及び内視鏡検査で胃体中部前壁に不正形の陥凹を有する病変を認めた.手術は第2群リンパ節郭清を伴う胃亜全摘を施行した.術後経過は出血傾向や感染などの重篤な合併症もみられず良好であった.
    急性骨髄性白血病と胃癌の合併例は,自験例を含めて本邦で28例の報告があるが,白血病の寛解期に胃切除が行われたのは本症例が2例目であると思われる.
  • 竹内 謙二, 我山 秀孝, 村田 一素
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2607-2610
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸捻転は絞扼性イレウスの原因の一つに数えられ,迅速な外科的処置が必要とされる.しかし腹部診察や腹部X線検査での診断が困難なため手術的治療は遅れがちである.
    今回われわれは腹部CTにてwhirl signを認めた事より早期に外科的治療にふみきれた回腸末端の続発性小腸捻転の1例を経験し,この疾患におけるCTの有用性を痛感したので報告する.
    症例は66歳の女性で主訴は臍周囲痛. 20年前に胃潰瘍で胃切除術の既往があった.腹部触診では臍右側に圧痛のある腸管様の腫瘤を認めた.血液生化学検査に異常はなく,腹部CT検査では腫瘤部にwhirl signを認め,小腸捻転と診断して緊急手術を施行した.開腹所見は癒着により発生した続発性の回腸捻転で腸管の壊死は認めなかった.
  • 森田 克哉, 山下 良平, 酒徳 光明, 小杉 光世, 原田 猛, 向 歩, 中島 久幸, 清原 薫, 小林 長, 安念 有声
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2611-2613
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で, 1991年6月13日,左鼠径ヘルニアの嵌頓を来たしたが,医療機関にかかることなく約24時間後に自然に還納した.その6日後,近医にてヘルニア根治術を受けたが,術後3日後より腹痛出現し嘔吐するようになった.症状および画像所見よりイレウスと診断され,症状が持続するため精査治療目的で当科へ紹介された.当科での保存的治療によってもイレウス症状が寛解しないため, 8月28日手術を施行した.開腹所見では回腸末端より約40cm口側の回腸に全周性の狭窄を認め,狭窄部を含めて回腸を約20cm切除した.病理組織学的検索では狭窄性変化を伴った陳旧性の虚血性腸炎と診断され,ヘルニア嵌頓時の絞扼がその原因と考えられた.
    嵌頓鼠径ヘルニアの合併症として,還納整復した腸管に後に虚血性狭窄を生じ,イレウスを来したとの報告は極めて稀である.嵌頓既往のある鼠径ヘルニアの手術時には,本合併症の可能性に留意して,ヘルニア門付近の腸管を十分に観察すると共に,術後も慎重に経過観察すべきであると考えられる.
  • 安江 幸洋, 伊藤 善朗, 島田 脩, 樫塚 登美男, 宮 喜一, 古田 智彦, 佐治 重豊, 青木 敦
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2614-2617
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎症状で来院した72歳,女性を開腹した結果,虫垂に葡萄房状小結節が多数みられ,病理組織学的所見から虫垂原発の脂肪腫と診断された.同様症例の報告は文献上検索し得た限り発見できず,極めて稀な症例と考えられた.
  • 前川 陽子, 具 英成, 斉藤 洋一, 橋本 真侍, 藤盛 孝博, 前田 盛
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2618-2622
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    低血糖症状は種々の腫瘍にともなって見られる腫瘍随伴症候群の一つであることが知られている.しかしその機序については依然として明確にはされていない.今回われわれは頻回の著明な低血糖発作を繰り返した小腸原発平滑筋肉腫の1例を経験したので,これを報告した.患者は57歳男性で,小腸原発の平滑筋肉腫の切除術をおこなったが, 8ヵ月のちに腹膜播種性の再発をきたし,この頃より低血糖発作を起こるようになった.発作は糖負荷によっても軽減せず,その頻度はさらに増加した.糖代謝に関与するホルモンは正常値を示した.低血糖発作には増大した腫瘍による糖の大量消費あるいはインスリン様物質の産生等が考えられた.
  • 光吉 一弘, 浅尾 寧延, 高村 宙二, 奥平 勝, 久家 雅治, 高村 はるか
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2623-2626
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    特発性大腸破裂は稀な疾患であり術前診断が困難なことが多く,糞便性腹膜炎で発症することが多い.今回われわれは後腹膜腔に穿孔し何ら腹部症状を呈することなく腰痛を主訴として術前診断を困難にした特発性下行結腸破裂を経験したので報告する.症例は74歳の女性で元来近医で腰痛加療をしていたが突然左腰背部痛が増強し当院入院となる.入院時腹部異常所見を認めず発熱もなかったがCRPが高値であった.また発症3ヵ月前の注腸透視では異常がなく,他臓器の検索より開始していたが入院8日後熱発および腰背部痛の増強が認められ,その後のCTにて左後腹膜腔に膿瘍を認め注腸再検査により下行結腸穿孔と診断しえた.診断後ただちにHartmann手術を施行し,切除標本の病理組織学的検査にて本症の診断を得た.術後経過は良好で人工肛門閉鎖後退院となったが,本症の存在の認識が大切と思われた.
  • 佐藤 智丈, 森 宣陽, 鬼塚 康徳, 小原 直, 渡辺 尚, 生野 信弘
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2627-2630
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全および多発性骨髄腫経過中に上行結腸の狭窄型虚血性大腸炎を来たし手術を施行した1例を経験した.
    症例は69歳女性で,週3回慢性透析中であり,その経過中に多発性骨髄腫と診断されている.今回,回盲部痛と下痢で入院し,注腸透視と内視鏡検査にて上行結腸に全周性の狭窄を認めた.質的診断には至らなかったがイレウス症状を来たすようになったため,手術にて回盲部切除及び1群のリンパ節郭清を行った.病理学的には小血管増生とヘモジデリン沈着,著明な線維化を伴った浅い潰瘍がみられ,狭窄型虚血性大腸炎と診断した.
    透析患者の虚血性大腸炎本邦報告例は自験例を含め17例で,一方,骨髄腫合併虚血性腸炎の報告は2例のみである.自験例は,合併する慢性腎不全と多発性骨髄腫が虚血性大腸炎の誘因と考えられたので報告する.
  • 光定 誠, 福島 康正, 竹内 豊, 若山 達郎, 和田 哲明, 船津 秀夫, 奥山 正治, 田中 道雄
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2631-2635
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾臓に直接浸潤し経脾的に腹腔内に遊離穿孔をおこした結腸癌の1例を報告する.患者は68歳,女性.排便の為にいきんだ後の急激な腹痛を主訴に救急外来を受診した.腹部単純X線写真にてfree airを認め,消化管穿孔の診断にて緊急手術を施行した.結腸脾湾曲部癌が脾に直接浸潤しており,脾の下極付近の表面に遊離穿孔を確認した.腫瘍は膵尾部,および胃後壁にも浸潤を認めたが全身状態が比較的に安定していた為,合併切除をおこない一期的に再建をおこなった.術後経過は比較的順調で42日目に退院した.
    脾臓直接浸潤を介しての結腸癌穿孔の本邦報告例はわれわれが調べえたかぎりでは見当たらず大変まれであると考えられたため報告した.
  • 三輪 博久, 青木 重憲, 松浦 多賀雄, 北原 浩, 篠崎 伸明, 渡辺 和巨, 前川 貢一, 相沢 信行
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2636-2641
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的:超高速CT (イマトロン社製C-100) を使用し, 1回の造影剤注入で多断層のダイナミックCTを撮影し, 2個の肝腫瘤を検出し,両者共に肝血管腫であることが質的に診断できた1例を報告する.症例:患者は48歳女性で, 5年前に空腸平滑筋肉腫の手術既往があり,通常の造影CTで,肝S8区域に直径3cmの腫瘤が認められ,転移性肝腫瘍が疑われた.超高速CTを用いた検査台移動式多断層ダイナミックCTでS8の腫瘍は,時間経過と共に辺縁から中心に向けて斑状の増強領域が拡大して行く,典型的な海綿状血管腫の所見が認められた.更にS4の横隔膜直下に直径1cmの腫瘤が認められ,ダイナミックCTの初期から約4分後まで遷延して増強されており,小血管腫に典型的な所見と判断され,転移性肝腫瘍は否定された.考察:超高速CTは,体動や呼吸性移動の影響を受けず, 1回の造影剤注入で多断層のダイナミックCTを撮影することが可能であり,臨床応用が広い.
  • 今井 茂, 渋谷 哲男, 秋丸 琥甫, 内山 喜一郎, 岩瀬 和泉, 前田 隆志, 宮入 健, 鈴木 章一, 高橋 英毅, 山本 英希, 須 ...
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2642-2649
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾機能亢進症により汎血球減少を来した原発性胆汁性肝硬変症に乳癌を合併した1症例を経験した.症例は64歳の女性,皮膚掻痒感,腹部膨満,乳房腫瘤を主訴に他院を受診し諸検査の結果,原発性胆汁性肝硬変および左乳癌と診断された.しかし手術は困難とされたため当院に紹介入院となった.入院時所見として黄疸,腹水を認め,血液検査では汎血球減少,胆道系酵素の著明な上昇, HBS抗原・HCV抗体は共に陰性,腫瘍マーカーはNCC-ST439, CA72-4が高値を示し,免疫学的検査ではAMA陽性,抗核抗体陽性, IgAの高値を認めた.乳癌はE-portionにあり直径5cm, 乳頭陥凹,皮膚浸潤を認め,左腋窩リンパ節を4個触知した.T2, N1b, M0, stage IIIaであった.術前に脾機能亢進による血小板減少症の改善が不可欠と判断し脾動脈部分塞栓術 (PSE) を行った.これにより血小板数の回復し,胆道系酵素値の改善がえられ,かつ肝機能に急激な悪化を認めなかったため,定型的乳房切断術を施行した.摘出標本の病理組織所見はScirrhous carcinoma s. p., n2, invasive carcinomaであった.今回,脾動脈部分塞栓術 (PSE) のPBCに及ぼす影響を調べるため血清中のリンパ球サブセットの検索も行ったので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 石田 数逸, 須田 学, 浦上 淳, 諸國 眞太郎, 河島 浩二, 三原 康生
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2650-2654
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.右季肋部痛を主訴に来院.腹部CT・US検査で左肝内胆管の拡張を認めた.入院経過中,閉塞性黄疸を発症し, PTCDを行ったところ,多量の粘液が排出された.胆道鏡検査で左肝内胆管に乳頭状の隆起性病変あり,生検はClass IIIであった.また胃内視鏡検査で胃角部と胃体中部に陥凹性病変あり,造影により左肝内胆管-胃瘻孔を認めた.
    以上より胆管-胃瘻孔を合併した粘液産生肝内胆管腫瘍と診断し,肝左葉切除,胃切除術を行った.病理組織診断は,ムチン産生性乳頭状腺癌であった.
    胆管-胃瘻孔を合併した粘液産生肝内胆管癌の本邦での報告はなく,極めて稀な症例と考えられた.
  • 川崎 博之, 浜田 伸一, 直木 一朗, 小林 道也, 上岡 教人, 荒木 京二郎, 緒方 卓郎
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2655-2659
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の急性再燃にて,後腹膜に広範な膿瘍を来し,エコー下後腹膜穿刺ドレナージと保存的治療にて治癒しえた症例を経験したので報告する.
    症例は61歳,男性. 10年前より,慢性膵炎にて他院にて経過観察中,現在まで3回の急性再燃をみたが,いずれも保存的治療にて軽快していた.今回,上腹部痛・背部痛・発熱が出現し,慢性膵炎の急性再燃による後腹膜膿瘍と診断され,当科へ転院となる.超音波検査, CTにて骨盤腔にまで達する広範な後腹膜膿瘍と診断し,手術的にはhigh riskと判断し,エコー下穿刺ドレナージと保存的治療を行ったところ,入院より約2ヵ月にて超音波検査, CT上膿瘍は消失し,治癒しえた.
  • 藤田 美芳, 森田 高行, 奥芝 知郎, 坂本 尚, 下沢 英二, 加藤 紘之, 井上 善之, 田辺 達雄, 宮坂 史路, 西沢 正明, 堀 ...
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2660-2665
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾嚢胞は比較的まれな疾患であり,種々の成因からなる嚢胞性病変を包括している.今回血清CA19-9が著明な高値を示し,腹腔内を遊走する巨大脾嚢胞の1例を経験した.
    症例は24歳男性で,平成4年2月,不快感で発症した腹部腫瘤が左季肋部に触知され,体位により右季肋部へ移動した. US, CT, MRIで嚢胞性病変を認め, ERCPで腫瘤の移動とともに尾部主膵管が右前方へ屈曲した.脾シンチ及び血管造影にて脾嚢胞と診断した.血清CA19-9が13,834U/mlと著明な高値を示した.摘出脾は17×14×10cm, 重さ1.8kg,嚢胞内容液は淡黄色油状で内容液のCA19-9は5,983, 118U/mlと高値を示した.組織学的に嚢胞内面は1層及び2層の扁平細胞からなり,類上皮嚢胞腫と診断された.本症例はCA19-9を産生し,また腹腔内を遊走するという脾嚢胞のなかでもまれな症例であった.
  • 愛甲 聡, 戸倉 康之, 山藤 和夫, 高橋 哲也, 大谷 吉秀, 貴志 和生, 藤井 俊哉, 勝俣 慶三, 田宮 誠
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2666-2672
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌膵頭部転移の稀な症例を経験したので報告する.患者は19年前に左腎摘の既往のある63歳の女性で,吐血,下血を主訴に当院に入院し血液検査所見で著明な貧血を認めた. CT, 超音波,血管造影より膵頭部に径6cm大のhypervascular tumorを認め,これより十二指腸内腔への出血が考えられた.出血のコントロールが困難なため緊急で膵頭十二指腸切除術を施行し,病理組織学的検討より腎細胞癌の膵転移と診断した.文献的検索による同様の膵転移切除報告例31例を集計し検討した結果,原発巣手術から平均で9.5年の長期を経て発見され,他臓器転移のない膵頭部転移が比較的多いこと,報告例のすべてがhypervascularな造影所見を有し,大部分がclear cell subtypeの組織型であることがわかった.このような遅発転移例では外科的切除により予後の改善が期待でき,厳重な経過観察と早期診断が肝要と思われた.
  • 喜安 佳人, 鈴木 秀明, 加洲 保明, 酒井 堅, 重松 授
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2673-2676
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無脾症候群に小腸腸間膜の欠損を合併した67歳の女性例を報告した.患者は突然発症した腹痛と嘔吐で当科を受診した.入院後の緊急X線検査, CT scan, 心エコー,血液検査で心血管奇形のない無脾症候群に合併した絞扼性腸閉塞が疑われ,緊急開腹手術が行われた.手術により脾臓の欠損,胃十二指腸の右側位,対称性肝,胆嚢の正中位などの無脾症候群に合併しやすい奇形に加えて小腸腸間膜の異常裂孔を原因とする腹腔内ヘルニアによる絞扼性腸閉塞が確認された.無脾症候群の多くは重篤な心血管系の奇形と内蔵逆位を合併して生後1年以内に死亡する症例が多いとされているが,本例では無脾症候群の一般的な奇形に加えて小腸腸間膜の欠損を合併していたことと,重症の心血管奇形を合併していなかったために長期生存が可能であった点で非常に稀な症例である.
  • 冨永 洋平, 千々岩 一男, 黒木 祥司
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2677-2681
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜嚢胞は比較的稀な疾患である.今回われわれは,極めて可動性良好な腸間膜嚢胞の1例を経験した.症例は, 69歳,女性.腹部全体に可動性のある腫瘤を認め,超音波検査, CTにて嚢胞状腫瘍を指摘された.開腹するに空腸腸間膜に径5cm大の嚢胞を認めた.嚢胞が空腸に接していたために,空腸の一部と共に切除した.肉眼的には薄い被膜を有し,一部に隔壁がみられ,病理組織学的検査においても悪性の所見はなく,腸間膜嚢胞と診断された.腸間膜嚢胞は治療としては診断がついた時点で外科的切除を行うのが一般的であるが,有効かつ侵襲の少ない画像診断が可能となった現在では,腫瘤触知以外に無症状であれば,経過観察でよいと思われる.しかしながら約1%と稀ではあるが,悪性の例も報告されており注意を要する.
  • 高田 孝好, 酒井 哲也, 多田 康之, 岩本 忠, 高雄 清人, 岩崎 信吾
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2682-2686
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは子宮溜膿腫の穿孔によれ汎発性腹膜炎の2例を経験したので報告する.
    症例は, 78歳と92歳の女性で,共に腹痛を主訴として入院した.症例1では下腹部に子宮様腫瘤を認めたが,確定診断が得られず,消化管穿孔の疑いにて手術を施行した.症例2は,画像診断上から子宮の腫大を認め,直腸診ではDouglas窩に圧痛著明な,軟らかい腫瘤を触知した.以上から子宮溜膿腫穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.手術所見は2症例共に,子宮底に直径1cm大の穿孔部位を認め,膿汁が噴出していた.病理組織学的には,悪性所見はなく子宮内膜,筋層に炎症が著明であった.本邦での子宮溜膿腫穿孔例は自験例を含め22例報告があるが,術前正診例は3例のみであった.高齢婦人の急性腹症には,本症を念頭に入れておく必要があると思われた.
  • 金沢 守, 平岡 博, 江里 健輔, 山本 修, 神徳 真也
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2687-2689
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腰部における抵抗減弱部は,腰三角として解剖学的によく知られているが,この部位にヘルニアが発生することは極めてまれである.今回,われわれは上腰ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を加えてこれを報告する.患者は70歳,男性.約1年前より,左背部の腫瘤を触知するようになったため当科を受診くした. CT検査にて腎周囲脂肪組織を内容とする腰ヘルニアであると考えられた.腰ヘルニアの診断の下に手術を施行した.ヘルニア門は第12肋骨,下後鋸筋,内腹斜筋,固有背筋に囲まれた上腰三角に存在し,腹横筋腱膜に径3cm大の欠損を認めた.脱出脂肪組織を切除した後に,ヘルニア門を直接縫合閉鎖した.術後経過は良好で,術後5ヵ月目の現在,再発を認めていない.
  • 水原 章浩, 井野 隆史, 井手 博文, 山口 敦司
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2690-2692
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は62歳男性. Buerger病による難治性潰瘍悪化のため右下肢膝上部切断を施行された.以降右腋窩に体重をかけての松葉杖歩行を余儀なくされた.右腋窩の拍動性腫瘤の増大を認めたため当センターを受診した.腋窩動脈瘤と診断し,瘤を切除し,大伏在静脈を用いて血行再建術を行った.瘤は60×30mmの難動脈瘤であった.病理検査ではBuerger病に特異的な所見は見いだせなかった.患者は術後愁訴なく日常生活に復帰した. Buerger病患者に合併した腋窩動脈瘤の報告は文献上見あたらず,成因として松葉杖による慢性鈍的外力が考えられた.
  • 古川 敬芳, 中島 光一, 谷口 徹志, 原 壮
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2693-2696
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内腸骨動脈より外腸骨動脈へ逸脱したコイルを経皮的に摘出した1例を報告する.症例は22歳男性で,交通事故にて当院へ搬送された.脊髄・骨盤骨折とともに肝損傷,腹腔内・後腹膜出血がみられた.血管造影にて右内腸骨動脈からの出血像がみられたため,コイルにて塞栓術をおこなった.この際,コイルが外腸骨動脈に逸脱したため,後日,確保しておいた血管造影用シースより内視鏡用異物把持鉗子を用いて摘出した,経動脈的塞栓術をおこなう際には,カテーテルを目的血管内に十分に挿入し,血管径にあったコイルを用いることが重要である.またコイルの逸脱があった場合には,まずは種々の鉗子を用い,経皮的摘出術を試みるべきである.
  • 西山 勝彦, 川田 雅俊, 島田 順一, 佐藤 伸一, 園山 輝久, 村山 祐一郎, 神吉 豊, 和田 行雄, 大賀 興一, 岡 隆宏, 楠 ...
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2697-2701
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右横隔膜に転移を来した骨肉腫に対して浸潤した肺と肝臓を一塊に切除しえた症例を経験したので報告する.症例は19歳の女性で, 12歳時に右大腿の骨肉腫と診断され切断術を受けている. 13歳と16歳時に肺転移を認め,転移巣の切除術を受けた.今回背部痛が出現し,精査の結果右横隔膜に腫瘤があり,右肺下葉と肝右葉に浸潤していた.下大静脈にパイパスポンプを設けて,腫瘍を浸潤部位と一塊に切除できた.右の横隔膜の欠損に対してはMarlex mesh sheetを用いて再建した.他に転移巣がなく,切除可能であれば,肺転移と同様に積極的に外科治療を行うことで予後の向上が期待できると考えられた.
  • 菅原 英次, 菅 正人, 曽田 益弘, 寺本 滋, 古城 昌義
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2702-2704
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    完全皮下埋め込み式静脈カテーテルの自然断裂を経験したので報告する.症例は62歳の男性で短腸症候群のため完全皮下埋め込み式静脈カテーテルを用いて在宅静脈栄養法を施行していた.カテーテル埋め込みの13ヵ月後に,胸部X線でカテーテルが断裂し右房内に迷入しているのが発見された.カテーテル片は経皮的にバスケット鉗子を用いて摘出した.本例は鎖骨下静脈穿刺法で挿入したカテーテルが,狭小な鎖骨・第1肋骨間隙で長期間圧迫を受け切断されたものと推察された.完全皮下埋め込み式静脈カテーテルの自然断裂はまれな合併症ではあるが,外側から鎖骨下静脈を穿刺することによって回避できると思われた.
  • 札場 保宏, 田中 恒夫, 小出 圭, 市場 康之, 八幡 浩, 浅原 利正, 土肥 雪彦
    1993 年 54 巻 10 号 p. 2705-2709
    発行日: 1993/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血友病患者における止血管理として高純度の濃縮第VIII因子製剤が開発されて以来,血友病患者の寿命も延びつつあり外科的手術の機会も増えてきている.血友病患者に対する開腹術の報告はいまだ多くはないが,適切な第VII因子補充療法下に安全に開腹術も行えるようになってきた.今回,われわれは特発性門脈圧:亢進症による食道静脈瘤を呈した重症血友病患者に対し,食道静脈瘤硬化療法をより効果的にまた血小板および白血球の増加を図るため,第VIII因子製剤を用いた補充療法下に脾摘術を施行し良好な経過を得ることができたので,文献的考察を加え報告する.
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