日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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54 巻, 12 号
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  • 石引 久弥, 炭山 嘉伸
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2947-2955
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 川田 志明
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2956-2961
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 今津 浩喜, 船曵 孝彦, 落合 正宏, 丸上 善久, 中村 耕治, 福井 博志, 亀井 克彦, 山口 久, 長谷川 茂, 新井 一史, 森 ...
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2962-2969
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移を伴う進行胃癌15症例55標本を用いて原発巣と各群所属リンパ節の, DNA ploidy pattern, PI, およびPCNAを測定し,パラメータ間の相関を検討, PCNAについてはホルマリン固定期間と染色率の相関を検討した.さらに転移リンパ節においては,近傍,遠位への転移と, heterogeneityについても検討した.結果:(1)原発巣及び転移リンパ節55標本中78%(43標本)がDNA aneuploidy patternを示した.(2)8症例 (53%) にDNA histogram上heterogeneityが認められた.(3)PCNA染色は55標本中96%(53標本)の染色陽性率で,腫瘍巣においては瀰漫性に染色陽性に認められた.(4)DNA aneuploidy patternの標本に有意にPI (p<0.05),PCNA陽性率 (p<0.005) が高かった.(5)PIとPCNA陽性率に有意の (p<0.05, rS=0.354) 相関があった.(6)標本のホルマリン固定期間は2週間以内ではPCNA陽性率に有意な影響を与えなかべた (rS=0.128).(7)原発巣,転移リンパ節nl, n2, n3-4の各群間においてそのDNA ploidy pattern, PI, PCNA陽性率の全てに有意差はなかった.以上の結果から,より遠位のリンパ節に転移することと,これらパラメータによる悪性度,増殖能との関連は証明しえず,これにはheterogeneityが関与していることが考えられた.
  • 池口 正英, 近藤 亮, 柴田 俊輔, 山代 寛, 辻谷 俊一, 前田 迪郎, 貝原 信明
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2970-2976
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃の癌切除例55例を,初回手術が良性疾患に対して施行されたもの(初回良性群, n=23), 悪性疾患に対し施行されたもの(初回悪性群, n=32)に分け,臨床病理,予後,再発形式につき原発性上部胃癌切除例(上部胃癌群, n=190)と対比した.組織型,進行度,壁深達度およびリンパ節転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲,腹膜播種転移,肝転移の各陽性率は3群間に差を認めなかったが,残胃の癌では上部胃癌に比べ小腸間膜への転移が高率で,逆にNo. 1, 3, 7リンパ節への転移は低率であった.予後においては,非治癒切除,治癒切除耐術生存例の5生率で3群間に予後の差を認めなかった.残胃の癌治癒切除後の再発様式では肝,肺などの血行性再発が高率で,残胃の癌では血行性再発を念頭に置いたfollow upが必要と考えられた.
  • 富田 凉一, 黒須 康彦, 青木 信彦, 丹正 勝久
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2977-2981
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌幽門側胃亜全摘術 (Billroth I法, R2リンパ節郭清)術後例において, micro-tip force transducer付きcatheterを用いて空腹期十二指腸運動,特に空腹期強収縮帯 (phase III), すなわちmigrating moter complex (MMC) を中心に検討し,同時に各種消化管ホルモンの変動も検索し,次の結果を得た. (1) MMC発生は12例に認めた.しかし残り7例ではphase IIのみが持続した. (2) 迷走神経はMMC発生に関与していないことが示唆された. (3) MMC発生にはmotilinとsomatostatinが関与し,しかも相互の協調作用が必要であることが示唆された.
  • 角谷 直孝, 小西 孝司, 辻 政彦, 黒田 吉隆, 藪下 和久, 谷屋 隆雄, 加治 正英, 三輪 淳夫
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2982-2988
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去17年間に経験した乳頭部癌20例を対象として,その進展様式を病理組織学的に検討し,特に肉眼型,予後との対比を行った.肉眼型が腫瘤形成主体のものではstage I, IIが多く,潰瘍形成を主体とするものではstage III, IVが多くみられた.さらに,癌腫が十二指腸壁内にとどまるものでは潰瘍を形成する型がなかったのに対し,癌腫が十二指腸壁を破ったり,膵実質に達するものでは潰瘍形成をともなう型が多くみられた.リンパ節転移は18例中9例 (50%) にみられ,露出腫瘤型や潰瘍形成を主とする型にリンパ節転移陽性例を多く認めた.膵頭十二指腸切除例18例の5年生存率は51.8%であり, n0症例に限るとその5年生存率は100%であった.治癒切除後の再発例は全例リンパ節転移陽性例で,再発形式としては血行性転移が特徴的であった.以上より,乳頭部癌においてはその肉眼型を考慮にいれ,外科治療にあたることが重要と考えられた.
  • 柴田 裕, 小棚木 均, 吉岡 年明, 斎藤 由理, 成澤 富雄, 小山 研二
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2989-2992
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科大腸癌手術531例を対象に,手術術式と郭清範囲を中心とする最近の治療方針が,生存率・再発様式にどの様に影響したかを検討した. 1971年~1975年までの5年間を前期, 1976年~1985年までの10年間を中期, 1986年~1990年までの5年間を後期として区別した.
    結腸癌では,後期のN0, N1症例の過半数に, R1あるいはR2のリンパ節郭清が行われたが,根治性が得られ, 5年生存率も87%と向上した.直腸癌に対しては,後期になるに従って前方切除術が増加したが,これはRb症例に対する低位前方切除術の増加によるものであった.また,リンパ節郭清が拡大する傾向にあり, 5年生存率も前期56%, 中期71%, 後期87%と改善した.
    再発死亡例をみると,いずれにおいても,後期になるにつれて局所再発が減少し,肝転移が再発形式として重要であった.
  • 圓本 剛司, 大澤 二郎, 中西 正樹, 糸島 崇博, 金岡 俊治, 深田 良一, 野中 雅彦, 篠田 正昭
    1993 年 54 巻 12 号 p. 2993-3001
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌同時性肝転移に対する皮下埋め込み型リザーパーを用いた動注化学療法の意義を検討した. 1984年より1991年までに当院で原発巣切除がなされた大腸癌同時性肝転移31例のうち,術後合併症死1例,他病死1例を除く29例を対象とし,動注化学療法を施行した14例(動注群)と全身化学療法を施行した15例(非動注群)とにわけ比較検討した.平均生存期間の検討では,両群間に有意差は認められなかったが, 1年および2年生存率の検討では,動注群で有意 (p<0.05, p<0.01) に良好であった.また, CEAダブリングタイムを用いた大腸癌肝転移のnatural historyを考慮した予後の検討では,動注群で有意 (p<0.01) に予後が延長したと考えられる症例が3例みられた.
    以上より同時性肝転移に対する動注化学療法は,予後の改善に有用であったが,有効例はまだ少なく今後動注に用いる薬剤の選択や投与方法を再検討し,可及的に肝切除を併施することが必要であると考えられた.
  • 斉藤 正樹, 具 英成, 山本 正博
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3002-3008
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝切除例134例を対象に肝切離方法,切除範囲,部位などの術式別に肺炎・胸水・膿瘍・胆汁痩などの術後合併症を比較した.肝切離方法はマイクロ波組織凝固装置 (MTC, n=25),超音波外科用吸引装置 (CUSA, n=52),そのほか (n=57) の3群に,切除範囲はHrS以下の小範囲切除 (n=70), Hr1切除 (n=20), Hr2以上の広範囲切除 (n=44) の3群に大別した.小範囲切除はS7, S8とほかの部位に細分した.MTC群は他群に比べいずれの合併症も高率となる傾向を示し,とくに肺炎は32%とCUSA群の5.8%に比ぺ有意差を認めた (p<0.01).MTC群では広範囲切除例で胆汁痩の合併が83.3%と小範囲切除 (5.3%) に比べ著しい高率を示した (p<0.01).小範囲切除例のうちS7, S8切除で胸水,肺炎,腹腔内膿瘍の合併が他に比べ多かった.以上よりS7やS8切除やMTC使用例では切離断端の感染や胆汁瘻に対する適切なドレナージがとくに重要と考えられた.
  • 大高 克彦, 舟橋 啓臣, 佐藤 康幸, 今井 常夫, 越川 卓, 高木 弘
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3009-3013
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    異所性褐色細胞腫は, Phenylethanolamine-N-metyltransferase (PNMT) を欠くため, Adrenalin (Ad) は分泌しないと考えられていた.しかしAd高値の症例がしぽしぼ認められる.この理由を調べるために, PNMTを中心にTyrosine hydroxylase, Dopamine-β-hydroxylaseを含め,カテコールアミン合成に関わる3酵素の局在を,摘出腫瘍の免疫組織染色を行い検討した.
    当科で扱った異所性褐色細胞腫12症例を対象とした.このうち,術前の尿中Adが高値であった症例は2例であった.これらの症例では術後の尿中Adは正常化しており, Ad高値は腫瘍由来と考えてよいと思われた.免疫組織染色の結果ではPNMTはこの2例含め8例に発現していた.従って,異所性褐色細胞腫症例でも腫瘍内にPNMTは存在し,そのためAd高値の症例があってもよいと考えられた.
  • 後藤 孝彦, 片岡 健, 貞本 誠治, 岡本 太郎, 松山 敏哉, 西亀 正之, 土肥 雪彦, 西阪 隆
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3014-3018
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺は転移を受け難い臓器の一つで,他臓器悪性腫瘍の乳腺転移は非常に稀である.当科で穿刺吸引細胞診を始めた昭和53年以降に転移性乳腺腫瘍は3例,いずれも女性であった.症例1: 49歳,左乳腺腫瘍.約4年前に左肺腫瘍(カルチノイド)にて手術施行.穿刺吸引細胞診で診断し以後計3回の摘出術を行ったが,乳腺転移4年2ヵ月後,呼吸不全で死亡.症例2: 54歳,左乳腺腫瘍.1ヵ月前に左腎平滑筋肉腫で左腎摘出.穿刺吸引細胞診で転移と診断,摘出術を行ったが約半年後,肺転移で死亡.症例3: 63歳,左乳腺腫瘍および肺腫瘍.一期的に切除術施行.肺原発の腺癌で乳腺転移と診断し多剤化学療法施行. 1年後,脳転移で死亡.今回これらの3症例に行った穿刺吸引細胞診が,乳腺転移の診断に有用であったので若干の文献的考察を加え報告した.
  • 進藤 俊哉, 大沢 宏, 小林 正洋, 鈴木 修, 多田 祐輔
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3019-3022
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CT-scanにて偶然発見された下大静脈血栓症の1例を経験した.患者は45歳男性, C型肝炎の治療目的で入院した際,偶然に下大静脈血栓を発見された.他の腹腔臓器に異常はなく,外傷の既往もなかった.血液凝固系にも異常は認められなかった.手術所見では,腎静脈下の下大静脈背側に約10cmにわたって帯状の血栓が見いだされた.切除標本では,白色血栓のみで異物等は認められなかった.以上より特発性と結論した.症例を報告し,血栓形成の機序,治療法について検討を加え,文献的に考察したので報告する.
  • 吉田 勝彦, 岩瀬 仁一, 村上 文彦, 碓氷 章彦, 日比 道昭, 川村 光生, 河合 孝尚
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3023-3025
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺動脈弁の石灰沈着による肺動脈弁狭窄症例の報告は比較的少ないが,今回,同症例を経験した.症例は67歳の男性で, 1992年3月に心不全となり,内科的治療にて軽快した.胸部単純X線, CTにて肺動脈弁に石灰化を認め,心臓カテーテル検査にてASD(シャント率32%)と,肺動脈弁性狭窄を認めた. 7月に開心術施行.肺動脈弁をHancockIIにて置換し, ASDをパッチ閉鎖した.肺動脈弁尖は石灰化強く,交連の癒合があり,弁輪にも硬化を認めた.術後経過は順調であったが, 12日目に心タンポナーデとなり,再手術を施行した.明らかな出血はなく,ドレナージにとどめたが,次第に腎不全, DICをひきおこし34日目に死亡した.
  • 小島 康知, 松田 正裕, 寺田 和貴, 郷力 和明, 坂田 正之, 西亀 正之
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3026-3029
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Morgagni孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアの3%前後を占め,その頻度は低い.ヘルニア内容が腸管の場合は術前正診率も高いが,大網のみを内容とする場合の正診率は20%と低率である.今回前縦隔脂肪腫という術前診断のもとに手術を行ったところ,大網のみを内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断された1例を経験した.自験例では術前診断で正診を下すことはできなかったが,術前診断にはCT検査が特に有用であると考えられた.
  • 矢崎 潮, 斉藤 裕, 加藤 明之, 村上 望, 平野 誠, 橘川 弘勝
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3030-3033
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    39歳女性が交連事故にて入院し,左血胸を認めたため,ドレナージした.その翌日胃穿孔を伴う横隔膜ヘルニアと判明し,直ちに開胸術を施行した.術後経過は良好であった.本症例における胃穿孔の原因として,胸腔穿刺による可能性もあり,外傷性血胸でドレナージする際,横隔膜ヘルニアを充分に留意する必要があると思われ,報告した.
  • 種村 匡弘, 山崎 芳郎, 橋本 純平, 坂本 嗣郎, 山崎 元, 宮崎 知, 森本 芳和, 田中 知徳, 桑田 圭司, 川口 学永, 小林 ...
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3034-3039
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.多発性脳膿瘍の治療中,長期にわたる飲水時咳喉の既往と胸部異常陰影に対し精査を行い食道気管支瘻を発見した.手術は瘻管と右肺S6切除を行った.瘻管壁は,扁平および円柱上皮に覆われ2上皮移行像を認め組織学的に先天性と診断した.成人の先天性食道気管支瘻は,まれな疾患で本邦では1992年までに自験例を含め104例を数えるにすぎない. Braimbridge分類に基づくと1型42例, II型46例とほぼ同数でIII型13例, IV型3例,不明1例であった.瘻管開口部位は右肺, B6, 下葉優位であった.本疾患の確定診断には瘻管壁の病理所見が重要で,唐沢らの提唱している気管食道両粘膜および筋層の3成分を持つ症例または気管食道両粘膜の移行像を有する症例は,自験例を含め104例中わずか44例であり残り60例については再検討の必要性が考えられた.
  • 山本 達人, 磯和 剛平, 安藤 静一郎, 国部 伸也, 野坂 誠志, 都志見 久令男
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3040-3045
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    縫合閉鎖兼被覆法によって救命しえた特発性食道破裂を2例経験したので報告する.症例1は, 41歳男性,観光バス内で嘔吐し胸痛を主訴に当院を受診した.発症約10時間後,左胸水貯留を認め,食道透視によって特発性食道破裂と診断し手術を施行した.破裂部を縫合閉鎖し,同部にFundic patchを追加した.第39病日軽快退院した.症例2は26歳男性,連絡船内で嘔吐し上腹部痛をきたし当院に搬送された.発症約4時間後,縦隔気腫,気胸が出現したため食道透視を施行し,食道破裂と診断.緊急手術を施行した.破裂部を縫合閉鎖し,同部にPericardial patchを追加した.縫合不全をきたしたが,保存的に治療し第77病日軽快退院した.本症例のような早期診断例では破裂部の一期的縫合閉鎖兼被覆法は有用な術式であると思われた.
  • 黒田 勝哉, 嶋田 安秀, 太田 恭介, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3046-3050
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診し,内視鏡検査にて食道粘膜下腫瘍を指摘され当科に紹介された.食道透視,内視鏡検査で下部食道に長径約4cmの柔らかい広基性の隆起性病変を認めた. CTでは同部にlow densityの腫瘤像を認め,食道脂肪腫と考えられた.右開胸により食道に到達し,食道筋層に縦切開を加え食道粘膜を損傷せずに腫瘍を核出した.摘出標本は黄色の柔らかい腫瘍で,腫瘍径は3.2×1.7×1.5cmであった.病理学的検査では良性の脂肪腫であった.
    食道脂肪腫はまれな疾患で,本邦報告例も自験例も含め21例にすぎない.今回われわれはまれな開胸による食道脂肪腫の摘出例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 島田 英雄, 青木 明人, 岡芹 繁夫, 金井 歳雄, 小野 崇典
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3051-3055
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左胃大網動脈瘤破裂による腹腔内出血の1例を経験した.症例は49歳,男性,歩行中に突然意識消失,その回復後より腹部に激痛が出現し本院に搬送された.腹部は板状硬であり超音波検査で腹腔内に液体成分の貯留を認め緊急開腹手術とした.腹腔内に凝血頻塊は認めるもすでに止血しており出血源は同定できなかった.術後の腹部血管造影で左胃大網動脈に1cm大の動脈瘤を認めたが,造影剤の血管外漏出はなかった.術後16日目再び同様の経過で腹痛が出現,緊急手術では血管造影で指摘された大網内に直径2cmの血液の漏出する血腫を認め左胃大綱動脈瘤破裂と診断,同部を含めた大網の部分切除を施行し術後の経過は良好であった.胃大網動脈瘤の本邦報告例は7例にすぎず,左胃大網動脈瘤は自験例のみであった.診断には血管造影が不可欠であり,術前検査としての血管造影の重要性が再確認された.
  • 岩崎 誠, 山際 健太郎, 草川 雅之, 野口 孝
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3056-3060
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性,貧血と心窩部の腫瘤を認め,入院時の血清AFP値243.2ng/ml, 血清CA19-9値350U/mlと高値を示した.しかし血液生化学検査並びに画像検査にて肝・胆道系及び膵に異常所見なく,胃透視と内視鏡にて胃前庭部後壁のBorrmann 1型胃癌と診断した.開腹時の肉眼的所見はH0P0S1N0で幽門側胃切除とR2リンパ節郭清を施行した.病理組織学的検索で腫瘍は高分化型管状腺癌で,深達度ssγ, n(-), stage IIであり,免疫組織学的に胃癌細胞内にAFPとCA19-9の局在が証明された.術後,血清AFPとCA19-9は速やかに正常化し, AFP及びCA19-9産生胃癌と診断した.また腫瘍の核DNA ploidy pattemはdiploid typeを示し,術後3年目の現在も無再発生存中である.一般的にAFP産生胃癌や2種以上の腫瘍マーカーを産生する胃癌は極めて予後不良とされているが,自験例のごとく組織型が分化型で核DNA ploidy patternがdiploid type のものは,良好な予後を期待できるものと思われた.
  • 椎木 滋雄, 中川 和彦, 佐々木 寛, 山下 裕, 湯村 正仁, 小谷 穣治
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3061-3065
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋芽細胞腫と早期胃癌の共存した症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は77歳,男性.心窩部膨満感で来院し, IIc型胃癌の診断で当科紹介となった.開腹手術時,胃前壁漿膜側に4.5×2.5×1.5cm大の腫瘤を認めた.胃癌は胃前庭部後壁に存在し,胃亜全摘で両病変の切除を行った.病理組織学的に深達度mの早期癌と平滑筋芽細胞腫と診断された.
    自験例の平滑筋芽細胞腫は周辺への浸潤像がなく核分裂像もほとんど認めず,また共存した胃癌は深達度mの早期癌であったことより,予後は十分期待できるものと思われれる.
  • 森脇 稔, 岩渕 正之, 重松 恭祐, 吉井 克己, 落合 匠, 鈴木 隆文, 野口 肇, 岡野 匡雄
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3066-3070
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝癌で門脈に腫瘍栓を認めることはあるが,胃癌で門脈に腫瘍栓を認めることは稀である.今回われわれは,進行胃癌に伴った門脈腫瘍栓の1例を経験したので報告する,症例は, 61歳男性で,貧血と両下肢の浮腫にて近医受診した.精査にて,胃体下部から胃体上部に及ぶBorrmann 3型胃癌の診断にて,当院へ紹介入院となる,入院後腹部超音波検査にて,門脈内に2.5×4.5cm大のhyperechoic massと肝尾状葉に転移が認められたため,門脈腫瘍栓を疑い,腹部CT検査を施行したところ,門脈本幹に腫瘍栓が認められ,肝にも転移が認められた.腹部血管造影にても,門脈本幹は全く造影されず,総胆管に沿う静脈が,側副血行として静脈瘤様に拡張していた.
    手術は胃全摘膵脾合併切除,肝尾状葉切除を行い,門脈腫瘍栓の摘出を試みたが,結果として不十分な核出しか出来なかった.
  • 友田 信之, 内野 良彦, 池田 秀郎, 島 弘志, 原 雅雄, 大橋 昌敬, 平安 明, 赤岩 正夫, 柴田 栄次郎, 杉原 茂孝
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3071-3076
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去8年間に当科にて行った胃癌手術379例中,癌穿孔8例 (2.1%) を経験したので臨床病理学的検討を加え報告する.
    術前診断可能であった症例は2例のみであった.手術所見では癌占居部位はM領域が4例と最も多かった.肉眼的進行度ではStage I 2例, Stage ll 1例, Stage III 3例, Stage IV 2例と進行例が多かった.手術は6例に胃切除術が施行されたが,治癒切除例は2例のみであった.深達度はsm 2例, ssβ 3例, ssγ 1例, se 2例で早期胃癌穿孔例を2例認めた.治療成績では手術死亡例2例,入院時死亡例1例で, 80歳以上の高齢者であった. 5年生存例の2例はともに治癒切除例であった.穿孔部の分類(大澤分類)では,直接穿孔型の症例は間接穿孔型に比し予後不良と思われた.胃癌穿孔例でも状態の許す限り一期的根治手術により,その予後は十分期待できる.そのためには正確な診断法と状況に見合った適切な郭清手術が重要と思われた.
  • 溝江 昭彦, 田中 公朗, 浦 一秀, 冨岡 勉, 井沢 邦英, 角田 司, 兼松 隆之
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3077-3080
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎に合併した異時性重複胃癌の1手術例を経験したので報告する.患者は75歳男性.昭和52年Borrmam 2型胃癌の診断で他院にて幽門側切除術・Billroth I法再建を受けた.平成3年3月両下肢の関節痛,腫脹,両手指の腫脹を訴え長崎大学第1内科に入院し,筋生検で皮膚筋炎と診断された.入院中に食思不振,心窩部のつかえ感があり,消化管精査で残胃小彎にBormann 3型癌を指摘された.外科転科のうえ,平成3年6月残胃全摘・膵尾部脾合併切除・胆嚢摘出術を施行した.手術後CPK値は正常値まで低下したが, 12月には皮膚筋炎症状が再び増悪し,同時にCPK, CEA値が平行して上昇し,平成4年3月再発死した.
    皮膚筋炎は悪性腫瘍合併が比較的高頻度であり,皮膚筋炎診断時には悪性腫瘍を念頭に置いて,十分な精査を行う必要がある.
  • 江里口 直文, 西田 博之, 吉田 浩晃, 木通 隆行, 原 雅雄, 福嶋 賢治, 宮崎 卓, 中山 和道, 大石 喜六
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3081-3084
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性十二指腸癌の発生頻度は消化器癌の0.8~2.9%で多い疾患ではない. 1976年1月より1990年12月までに当科にて診断された原発性十二指腸癌症例は15例でそのうち12例が切除可能であった.この切除12例を対象として臨床病理学的に検討した.性別では女性に多く,年齢は60歳代が多く平均64歳であった.主訴は腹痛,悪心嘔吐が7例と狭窄や潰瘍症状が多く,また黄疸を主訴とした例も見られた.病悩期間はほとんどが3ヵ月以内で,病巣診断方法は透視で可能であったが,確定診断には内視鏡,血管造影などが有用であった.発生部位は乳頭上部が下部に比較して多く,肉眼型ではほとんどが腫瘤潰瘍型であった.予後は不良で肝転移や癌性腹膜炎にて死亡する例が多く,今後は放射線や化学療法を組み合わせた治療法が必要と考えられた.
  • 橘 秀光, 星川 義人, 藤井 宏一, 竹内 克彦, 尾畑 弘美, 山口 潤
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3085-3090
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に小腸平滑筋肉腫を合併した極めてまれな症例を経験した.症例は48歳,男性で主訴は下血.全身にcafé au lait spotsと皮膚腫瘤が存在しR病と診断した.小腸造影, CT, 血管造影にて空腸起始部に小腸腫瘍を認めたため手術を施行した. Treitz靱帯より2cm肛門側の空腸に6.0×5.2×5.5cmの管外性に発育した腫瘤を認め,空腸部分切除術を行った.病理組織学的には平滑筋肉腫と診断された.術後は抗癌剤adriamycin 60mg投与後tegafur 600mg/日の経口投与を行い術後2年の現在再発の所見なく健在である. R病に合併した小腸平滑筋肉腫の本邦報告例は自験例を入れて8例と極めてまれであり若干の文献的考察を加えた.
  • 平田 敬治, 坂田 高, 日暮 愛一郎, 岡本 好司, 後藤 誠一, 伊藤 英明, 大里 敬一
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3091-3094
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸平滑筋肉腫は主に管外性に発育し,特異的な症状がなく,診断に難渋することが多い.今回,術前超音波検査が有用であった回腸平滑筋肉腫破裂の1例を経験したので報告する.症例は80歳男性,下腹部痛にて当科受診し,下腹部圧痛・筋性防御・腸雑音低下を認めた.腹部超音波検査で下腹部正中に一部高エコー域を含む分葉状の低エコー域を認めた.緊急手術施行したところ,回盲部より50cm口側の回腸に10×7×6cmの管外発育型腫瘍が存在し,腫瘍被膜の一部が裂け同部より出血を認めた.腫瘍を含む回腸部分切除を行った.肉眼的に腫瘍内部は充実性で一部壊死巣を含み,被膜破裂部に一致し凝血塊を認めた.病理組織学的に平滑筋肉腫と診断された.術後経過は順調で, 3年6ヵ月経過した現在,再発を認めない.
  • 新居 利英, 加藤 一哉, 松田 年, 山下 晃史, 水戸 廸郎, 新堀 大介, 小林 達男
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3095-3098
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患であり,術前の診断率は低く死亡率も高い.今回われわれは術前Computed Tomography (CT) 検査にて閉鎖孔ヘルニアによる腸閉塞と診断し手術し得た1例を経験したので報告する.
    症例は93歳女性.平成4年2月12日他医より尿閉にて当院に入院.腹部単純写真にて小腸ガス像を認め,腹部CTにて左側の恥骨筋と外閉鎖筋との間に低濃度の腫瘤を認め左閉鎖孔ヘルニアによる腸閉塞と診断, 2月18日に全身麻酔下に開腹手術を施行した.回腸末端部より約1m口側の回腸壁が閉鎖孔へ嵌頓しているのが認められ,嵌頓部の小腸切除及びヘルニア根治術を施行した.
    閉鎖孔ヘルニアは高齢で多産の女性に多く局所症状に乏しいため術前診断は困難な疾患とされる.自験例においても症状に乏しくCTにて確診を得ることができた.術前診断に苦慮する本疾患ではCTが非常に有効な診断法と考えられた.
  • 高橋 修, 下田 司, 新田 宙, 遠藤 幸夫, 中島 透
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3099-3103
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性.数日間にわたる下血を主訴に来院.入院時貧血なく,腹部超音波検査, CT検査で腹腔内液体貯留をともなう腫瘤を認めたが突然ショックとなり緊急手術となった.手術所見では腹腔内に多量の出血を認め横行結腸間膜の広範な血腫と後壁の奨膜の裂傷,この部に手挙大の凝血塊を認め血腫を含め横行結腸切除を施行した.横行結腸には発赤,びらんが散在し粘膜に炎症性細胞浸潤,杯細胞の減少,陰窩膿瘍,粘膜下層に浮腫を認め間膜の血腫ほぼ中央に破裂した動脈瘤が見られた.腸間膜動脈瘤は腹痛や消化管,腹腔内出血で気づかれることが多いが,この消化管出血は動脈瘤の消化管内への直接破裂によりひきおこされる.今回の症例は初診時に見られた下血が動脈瘤の腸間膜内破裂により形成された血腫で横行結腸に虚血性変化をおこしたことにより生じたと思われる稀な例であり,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 津嶋 秀史, 照屋 正則, 大淵 俊朗, 有園 さおり, 中尾 健太郎, 太田 秀二郎, 窪田 敬一, 梶浦 直章
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3104-3107
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.平成3年9月27日,大量の下血を主訴に当科緊急入院.緊急大腸内視鏡検査にて, S状結腸に山田III型のポリープを認めたが,明らかな出血点は同定できなかった.超音波検査, CT検査にて両側総腸骨動脈瘤を認めたが,出血源とは考えがたかった.出血部位の検索のため出血シンチ施行, S状結腸部での出血と診断した. 10月1日S状結腸切除,人工肛門造設術施行. S状結腸に10×8mm大の山田III型のポリープを認め,表面に凝血塊が付着していたことから,このポリープからの出血と診断した.病理組織学的には深達度mのcarcinoma in adenomaであり, sm浅層に出血した血管と考えられる動脈が認められた. 1cm以下の小さな腺腫内癌からの大量出血は極めて稀であり,また出血部位の診断に,出血シンチが有用であった興味ある症例を経験したので,文献的考察を加え報告した.
  • 長浜 充二, 清水 一雄, 渡辺 秀裕, 陳 光永, 北浜 秀男, 北 俊典, 渋谷 哲男, 庄司 佑
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3108-3112
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉塞性大腸炎を伴った横行結腸癌と早期胆嚢癌の同時性重複癌の1例を経験した.患者は77歳の男性で,血便を主訴に入院.注腸造影検査および大腸内視鏡検査にて横行結腸癌と診断し,さらに癌病巣から口側約25cmまでの腸管に内腔狭小化と敷石像を認めた.また超音波検査で直径2cm大の胆嚢結石像を認めた.胆石症を随伴した横行結腸癌と診断し,横行結腸切除術と胆嚢摘出術を施行した.病理検査にて横行結腸癌巣はtub1, se, ly0, v0, n0で,口側の狭窄部は肉芽腫を伴う炎症性細胞浸潤が全層にみられた縦走潰瘍病変で腫瘍による閉塞性大腸炎と診断した.一方胆嚢にも結石以外に軽度の隆起性病変があり,高分化型腺癌, pm, hinf0,binf0であった.高齢のため胆嚢癌に対しての追加手術は行わず経過観察としたが,4年4ヵ月を経た現在でも再発の徴候がなく健在である.
  • 三澤 健之, 吉田 和彦, 栗原 英明, 河野 修三, 松田 実, 〓村 泰樹, 小林 進, 桜井 健司
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3113-3117
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症候性肝嚢胞の治療として経皮的穿刺吸引あるいはエタノール注入術があるが再発率が高く,確実性の点からは開腹による嚢胞開窓術が優れている.当科ではより少ない侵襲で確実な効果を得る目的で腹腔鏡下肝嚢胞開窓術 (laparoscopic fenestration of hepatic Cyst; LF) を施行した.対象は症候性の単発性肝嚢胞を持つ4患者で,患者の男女比は2:2, 平均年齢は65歳であった. 4例中2例は胆石症を合併していたため腹腔鏡下胆嚢摘出術 (laparoscopic cholecystectomy; LC) とLFを同時に施行した.通常のLCに準じ,二酸化炭素による気腹を行った. Trocarは3ないし4本挿入し,腹腔鏡下に電気メスを用いて嚢胞壁を切開した. LFを施行後,すべての患者に症状の改善を認め,術後2~6ヵ月の経過観察では肝嚢胞の再発は見られていない. LFは患者への侵襲が少なく,技術的にも容易なため今後は肝嚢胞に対する標準的な治療法のひとつとして位置づけられると考えられた.
  • 高橋 節, 角 賢一, 田村 英明, 西江 浩, 白井 博之
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3118-3121
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    黄色肉芽腫性胆嚢炎は比較的稀な疾患であり,悪性腫瘍との鑑別において難渋することが多いが,術前の鑑別診断に吸引細胞診が有用であった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は63歳の男性,主訴は腹痛で,麻痺性イレウスの状態で来院した.画像診断では,胆嚢底部に腫瘤状の病変を認め悪性腫瘍を否定できなかった.このため吸引細胞診を行い,炎症性細胞のなかに細胞質が明るく泡沫状を呈する大型の細胞を認めた.これらより黄色肉芽腫性胆嚢炎を疑い胆嚢摘出術のみを行った.摘出標本では胆嚢底部に黄白色の腫瘤を認めた.組織診断にても悪性所見は認められず,黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断された.
  • 渡部 祐司, 佐藤 元通, 阿部 康人, 立花 真理, 木村 茂
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3122-3125
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌の門脈浸潤により, 99%門脈狭窄をきたした72歳女性に対して,術中照射とEMSによる門脈拡張術,および結腸部分切除術を施行した.回腸静脈末梢枝から術中イメージ下に直径10mm, 3連のGianturco-Roesch Biliary Z-Stentを狭窄部に留置し,肝門部に20Gyの術中照射を施行した.ガイドワイヤーがやっと通過できる程の狭窄であったが, stentにより十分な拡張が得られた.術後経過は良好で術前ほぼ完全閉塞に近い高度の狭窄部は, 7mm (70%) に拡張した.
    悪性門脈狭窄に対するMetallic stentの報告はないが,その手技と問題点について考察を加え報告した.
  • 西連寺 隆之, 長尾 桓, 渡邊 建詞, 福島 嗣郎, 銘形 和彦, 吉見 富洋, 杉本 久之, 内田 久則
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3126-3130
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1: 65歳,男性.閉塞性黄疸に対し,左右の肝内胆管にPTCDを受けた後, 1992年1月28日当科へ入院した.各種画像診断および胆汁細胞診で肝門部胆管癌と診断したが,局所進展高度のため切除不能であった.肝門部胆管は完全閉塞で,ステントによる内瘻化は困難であった. PTCDチューブから5-FU 250mg/dayを投与した.なお5-FU注人後30分間はチューブをクランプした.治療開始後17日目,内瘻化チューブを用いて左右肝内胆管の非手術的内瘻化に成功した.
    症例2: 83歳,女性.腫瘤径約3.6cmの肝門部胆管癌のため,閉塞性黄疸をきたした.術前の評価で,局所進展,高齢および低栄養状態のため手術は困難と判断された.症例1と同様に5-FUの胆管内投与を25日間行った後, 1992年4月2日,左右肝内胆管の内痩化に成功した.
  • 野中 杏栄, 山口 宗之, 北原 信三, 畠山 知昭, 橋村 千秋, 高塚 純, 野中 博子
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3131-3135
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは最近,比較的稀な膵内分泌腫瘍であるインスリノーマ3例を経験し,全例切除し治癒し得た.症例1, 2は成人例で経皮経肝門脈血採血法 (PTPC) により腫瘍の局在を明確にし得た.そして症例2の切除標本の組織学的診断で,主病変周囲に複数微小な病変が認められていることから,明らかな腫瘍核出のみでなく,一定量の膵切除を要することもあると考えられた.インスリノーマの治療は適切な外科切除であるので局在診断が重要であるが,症例3の如く小児例では局在診断までの術前の内科的血糖調節も必要,かつ重要である.
  • 小林 英昭, 森 秀樹, 久米 誠人, 伊達 淳, 前田 隆志, 日下部 輝夫
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3136-3140
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高脂血症を伴った急性膵炎の報告は,本邦では46例であるが20歳以下の症例は4例のみである.今回われわれが経験した症例は12歳及び17歳の女子でともに激しい上腹部痛と嘔吐を主訴として来院し,急性膵炎と診断され入院した.また入院時の血清が2例とも強乳糜を呈し,ともにリポ蛋白分画検査でpre-βリポ蛋白の著増を認め, IV型の高脂血症と診断した.高脂血症と膵炎との因果関係については,未だ確立されず,高脂血症が膵炎の原因となるのか,膵炎により二次的に高脂血症が惹起されたのか,また膵炎と高脂血症が合併しても因果関係は無い場合の3つに分類,考えられている.しかしながら膵炎の発症を契機にして高脂血症が初めて発見された場合にその因果関係の決定は極めて難しく,今回われわれは高脂血症と膵炎の合併について,若干の文献的考察を加えた.
  • 小野 久之, 吉見 富洋, 菱川 修司, 朝戸 裕二, 太田 岳洋, 古川 聡, 雨宮 隆太, 小泉 澄彦, 長谷川 博, 小林 尚志, 松 ...
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3141-3146
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は34歳の女性で,右側腹部痛,背部痛,貧血を主訴に当科外来を受診した.腹部CTとMRI検査で肝右葉背側と右腎上極の間に径約10cmの腫瘤が認められ,腫瘤の造影による増強効果はなかった.血管撮影では下大静脈が腫瘤により背側から腹側への圧排され,右下横隔膜動脈から分岐する右上副腎動脈および右下横隔膜動脈分岐後の右腎動脈から直接分岐する右下副腎動脈が腫瘤の辺縁を取り巻くように走行し,腫瘤内部に血管は認められなかった.さらに3D-volume CTで,再構築された造影腫瘤と周囲脈管がともに描出され,腫瘤と周囲血管系との三次元的位置関係が容易に認識された.右副腎嚢胞の診断で,平成4月7月21日に手術を施行し,腫瘤を摘出した.腫瘤と周囲血管系間の三次元的位置関係は術前診断どうりで,腫瘤は病理組織学的には副腎仮性嚢胞であり,術前検査において腫瘤と周囲脈管との立体的イメージを描く上で3D-volume CTが有用であった。
  • 遠近 裕宣, 平田 恵三, 中尾 丞, 石井 俊世, 栄田 和行, 高原 耕
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3147-3150
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    78歳,男性.平成3年6月,胸やけを主訴として当院内科受診.精査にて噴門部直下.小彎側にBorrmann 2型胃癌を認め.平成3年8月6日.胃全摘術を施行した.病理組織学的には低分化腺癌,ssβ, INFβly0, v1, n2であった.退院後外来で経過観察していたが,平成4年2月のCTで左副腎に腫瘤を指摘され,同年6月のCTで腫瘤の増大を認め,胃癌の副腎転移を疑い,平成4年7月15日,左副腎摘出術を施行した.摘出標本は60×44×30mmで重量55g,割面は黄白色分葉状で,一部に正常の副腎組織が残存していた.病理組織学的に胃癌の副腎転移と診断された.術後経過は良好で,平成4年8月6日に退院した.現在当科外来で経過観察中であるが,初回手術後18ヵ月現在再発なく健在である.
    胃癌術後の副腎転移巣の切除例は極めて稀であり,検索し得た範囲では自験例を含めて3例のみであった.
  • 神谷 保廣, 寺田 順二, 野村 則和, 浅野 実樹, 三島 晃, 佐竹 章, 竹内 寧, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小谷 彦蔵
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3151-3156
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小児巨大卵巣奇形腫にgliomatosis peritoneiを伴った1例を経験し,治療に関し考察を加えた.
    患児は14歳,女児で,腹部膨満感を主訴に入院となった.腫瘤は腹部全体を占め表面平滑で,左右にわずかに可動性を認めた.腫瘍マーカーは, CA19-9 224U/ml,α-フェト蛋白22.9ng/ml, CA-125 190U/mlで高値を示した.腹部超音波, CT検査で腹水を伴い,充実性,嚢胞状の陰影が混在した境界明瞭な腫瘤像が認められた.左卵巣腫瘍で被膜は正中部で穿破し大網が被覆していた.腹膜および十二指腸漿膜に顆粒状の白色の硬結を多数認めた.病理組織学的には,未熟奇形腫grade 1, 播種巣は神経膠細胞でgrade 0であった.腫瘍マーカーは術後1週目に正常値となり術後18日目に退院した.化学療法は施行しなかった.現在術後1年2ヵ月を経過するが再発なく元気に学校生活を送っている.
  • 田内 克典, 鈴木 修一郎, 長田 拓哉
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3157-3160
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    臍上腹壁にいたる広範な直腸肛門周囲膿瘍を形成したFoumier's症候群の1例を経験したので報告する.症例は30歳男性で,基礎疾患として糖尿病が存在し発症後1週間を経過し,発熱および肛門周囲痛を主訴とし来院した.切開排膿術後も炎症反応継続し敗血症を合併し, CTおよび超音波検査にて陰嚢および臍上腹壁にいたる膿瘍を認め再ドレナージにより軽快した.肛門周囲膿瘍の治療では,急速に進展拡大するFournier's症候群の存在を念頭におき,早期の十分なドレナージのためにも, CT, 超音波等による膿瘍腔の評価が必要と考えられた.
  • 佐藤 太一郎, 秋田 幸彦, 瀬古 浩, 北川 喜己, 江畑 智希, 伊藤 直人, 橋本 瑞正, 佐々木 英二, 七野 滋彦, 社本 幹博
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3161-3166
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,女. 17年前から断続的に贋周囲痛があったが,疼痛が激化したので来院した.腹部は平担軟,麟左側に鶏卵大,表面平滑,弾力軟,可動性のある腫瘤を触知した. US, CT, MRI, 腹部血管造影,消化管造影などの画像診断から良性の腸間膜嚢胞と診断し,開腹した.腫瘤はパウヒン弁から口側10cmの腸間膜内にあり容易に核出出来た。嚢胞は4×4×2.5cm,内容は透明,漿液性であった.病理組織所見では腹膜中皮腫と診断された.術後1年4ヵ月の現在,全く異常を認めていない.
    腹膜中皮腫による腸間膜嚢胞は極めて稀で過去20年間の国内では石塚の7例と田中の症例,自験例を加えて9例にすぎない.今までに術前診断が出来た症例はないが,最近の画像診断法の進歩により,いづれ術前に確定診断が可能になるであろう.
  • 藤本 康二, 西川 俊邦, 松末 智, 武田 博士
    1993 年 54 巻 12 号 p. 3167-3172
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は44歳,男性.発熱,黄疸,腹痛にて本院入院.腹部超音波検査にて膵頭部周囲のリンパ節腫大および胆管拡張を認めた.膵癌のリンパ節転移あるいは悪性リンパ腫を疑い,開腹手術施行した.膵頭部を中心に一塊となったリンパ節を認め,術中迅速組織診にて結核性リンパ節炎の可能性が示唆された.
    症例2は20歳,女性.左頸部リンパ節腫脹にて本院入院. CTにて膵頭部周囲のリンパ節腫大と左腸腰筋内に巨大な膿瘍を認めた.ツベルクリン反応強陽性,頸部リンパ節生検および左腸腰筋内膿瘍の吸引細胞診にて結核と診断し,膿瘍ドレナージ術施行した.
    結核は化学療法の進歩により激減したが最近再び,若干の増加傾向にある.膵頭部周囲リンパ節腫大の鑑別診断のなかに,結核性リンパ節炎の存在も考慮しておく必要のあることを今回の2症例は示唆している.
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