日本臨床外科医学会雑誌
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55 巻, 3 号
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  • 環境汚染,保菌者,医療業務を中心に
    竹末 芳生, 横山 隆, 児玉 節, 村上 義昭, 今村 祐司, 宮本 勝也, 沖田 光昭, 山東 敬弘, 平田 敏明, 中光 篤志, 津村 ...
    1994 年 55 巻 3 号 p. 513-518
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    MRSA 感染の各発生要因を分析し,院内感染においてどの因子がより重要な役割を果たしているのか検討した,病院全体では13病棟中10病棟で臨床分離 MRSA が検出されていた.エンテロトキシン型では, AC型65.1%, B型14.3%, C型7.9%, 非産生型12.7%であり, 10病棟中9病棟からAC型が検出されており,同型が現在病院全体で問題となっている流行株であった.しかし医療従事者92名中鼻前庭からMRSAが検出されたものは8名(8.7%)であり,そのうちB型が75%を占めており,臨床分離株と異なる傾向が認められ, MRSA 供給源として鼻腔内保菌者(chronic carriage)は大きな関与はしていないことが推察された.一方, transient carriage ととらえられる医療従事者の手指からの検出菌はAC型と臨床分離株を反映しており,また床や廊下などの環境から分離された MRSA のうちAC型が80.0%を占めていた.つまり MRSA による院内感染の原因として医療業務と環境汚染が重要と考えられた.
  • 棚橋 美文, 大和田 進, 中村 正治, 飯野 佑一, 宮本 幸男, 森下 靖雄
    1994 年 55 巻 3 号 p. 519-523
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    教室独自の管理対策で,消化器術後のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA) 感染を消滅できたので報告する. MRSA 感染予防の管理対策として, 1) 入院時に直腸,鼻腔の細菌学的検査, 2) 検査後から鼻咽頭をポピドンヨードで消毒, 3) 第1, 2世代セフェム系抗生剤を,手術前日,術中,術後第1病日の3日間のみ投与, 4) 手術当日,術後第3病日に,直腸,鼻腔粘膜擦過物と胃管内容物の細菌学的検査を行うこととし, 1991年7月より実施した.消化器術後のMRSA感染は, 1988年2.6%, 1989年8.5%, 1990年15.0%, 1991年前期19.4%, と急増したが,本対策実施後の1991年後期は66例中6例 (9.1%) と減少し, 1992年前期の発生はゼロであった. 1991年前期に4例 (6.0%) みられたtoxic shock syndromeは, 1991年後期, 1992年前期には全く経験しなかった. MRSA以外の一般細菌による感染も減少し,今回の管理対策はMRSAのみならず一般的な術後感染予防としても有用であった.
  • 南出 純二, 小泉 博義, 小沢 幸弘, 深野 史靖, 徳永 誠, 逢坂 由昭, 森脇 良太
    1994 年 55 巻 3 号 p. 524-526
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道癌術後呼吸器感染症防止を目的として,第一に1988年6月から2年間の食道癌手術症例48例を4群に(ペニシリン系,セフェム系第一,第二,第三世代)分け,挿管中の気道内経日的細菌培養を行った.セフェム系第二,第三世代では気道内が無菌となることが多く(無菌率67%, 86%)優れていると思われたが,反対に無菌状態にMRSA感染症が発生しやすいことが推測された.第二に1991年2月から1年間の食道癌手術症例22例に対してベニシリン系またはセフェム系第一世代を単独投与し,同様に細菌培養を行った.無菌率は44%と低く,気道内の常在菌は温存されMRSA感染症は発生しなかった.同時に在院死0が達成できた.常在菌を温存することはMRSA感染症の防止,食道癌手術成績の向上に有用である.
  • 宮崎 正二郎, 高崎 健, 次田 正, 山本 雅一, 大坪 毅人, 羽生 富士夫
    1994 年 55 巻 3 号 p. 527-534
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝切除術にともなう腹腔内感染症は,術後経過を遷延させるほか,重症例では,敗血症,肝不全にもいたる憂慮すべき合併症である.当施設では過去6年間の肝切除術439例中108例に腹腔内感染症を認めた.発生に関与する因子として,術前では,糖尿病合併,アルコール多飲歴,肝硬変併存といった免疫力の低下した病態に感染が有意に合併した.手術に関しては,死腔・切離面の大きい術式,出血量の多い手術, Microwave tissue coagulatorによる肝切離例,微線維コラーゲン使用例に有意に感染を認めた.術後管理に関しては,開放式ドレナージ例,広域セフェム系(石引の第5群)抗生剤の使用例に有意に感染を合併した.以上の結果に基づき,閉鎖式ドレナージ法,高周波凝固機能内蔵超音波吸引装置を用いた肝切離法の採用,広域セフェム系抗生剤の多用の中止などを順次,実施することにより,腹腔内感染症の発生率およびMRSA感染数を年度毎に大幅に減少させるにいたった.
  • 松岡 由紀夫, 長尾 和治, 西村 令喜, 松田 正和, 馬場 憲一郎, 上野 洋一, 山下 裕也, 樋口 章浩, 宮本 大典, 池辺 宗三 ...
    1994 年 55 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺疾患のコンタクト型サーモグラフィー(以下サーモ)所見を臨床病理学的に検討して,左右の温度差 (ΔT) の診断基準としての意義について考察を行った.対象は乳癌318例良性疾患216例で,異常熱血管像,局所高温域,乳頭高温の3点に空気冷却負荷法を加え判定を行い,温度差を認める例(0.4°C以上)を陽性とした.乳癌の陽性率79.2%は良性の17.6%に対して明らかに高率であった.陽性例のΔTではその分布,平均値に差はなく,乳癌では腫瘤径の増大に伴い陽性率及びΔTは高くなる傾向であった.そこで腫瘤径3cm以下例で検討した.乳頭腺管癌は硬癌に対して有意に陽性率は高く,乳管内進展例では高率に陽性となった.増殖能の強い例は陰性またはΔTも小さい例が多い傾向がみられた.これらの事よりサーモ診断基準は3項目ともΔTを0.4°C以上を陽性として検討する事で十分かつ妥当であり,かつ乳癌の持つ生物学的特性をある程度反映する事が示唆された.
  • 大野 伯和, 中村 毅, 田中 賢一, 河村 史朗, 森下 透, 中江 史朗, 多淵 芳樹, 斎藤 洋一
    1994 年 55 巻 3 号 p. 540-546
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃上部癌をC癌, CE癌の2群に分け比較検討し食道浸潤胃癌の臨床病理学的特徴および治療成績を分析した,対象は1980年から1992年までの間に当教室で切除された初発単発の胃上部癌131例とした,臨床病理学的因子については肉眼的分類,腫瘍の最大径,組織学的深達度,脈管侵襲,組織学的リンパ節転移,浸潤増殖様式, stage分類において両群間に有意差を認め, CE癌はC癌に比べ進行した症例が多いと考えられた.またCE癌はC癌に比べ治癒切除率が有意に低く, 5年累積生存率もCE癌34.8%, C癌64.1%とCE癌の方が予後不良であった. CE癌の予後を食道浸潤距離,口側断端距離,リンパ節転移,開胸の有無,腫瘍径,深達度について分析したところ,リンパ節転移の程度がCE癌の主たる予後規定因子であると考えられた.
  • 遠隔成績からみた外科治療上の問題点
    大谷 吉秀, 戸倉 康之, 山藤 和夫, 高橋 哲也, 愛甲 聡, 貴志 和生, 藤井 俊哉, 勝俣 慶三
    1994 年 55 巻 3 号 p. 547-554
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者 (80歳以上)の胃癌に対する外科治療上の問題点を明らかにする目的で,最近6年間に経験した胃癌切除例38例にっいて検討を加え,以下の結果を得た. 1) A領域の分化型癌が多く,早期癌が44%を占めた. 2) R2以上のリンパ節郭清が58%に行われた. 3) 治癒切除率63%でその3年生存率は74%であった. 4) 術後合併症は58%に認められ,肺合併症,精神障害の順に多かった. 5) 胃癌の再燃による在院死亡を3例 (7.9%) 認めた. 6) 遠隔成績では治癒切除後死亡例に他病死が多かった.これら他病死例では生存例に比べ術後合併症の頻度が高く,在院日数も有意に長かった.以上より,高齢者胃癌に対しては治癒切除を目指しながらも安全性を重視して,合理的なリンパ節郭清による縮小手術を基本とし,根治性の得られない進行癌症例では可及的に侵襲の少ない手術にとどめるべきである.
  • 古川 敬芳, 谷口 徹志, 中島 光一, 原 壮
    1994 年 55 巻 3 号 p. 555-559
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近3年間の鈍的肝外傷症例20例の臨床的検討をおこなった.平均年齢は40.3歳,男性16例,女性4例であった.受傷機転は交通事故が16例と多数を占めた.損傷形態では, Ia 4例, Ib 6例, II 3例, IIIa 3例, IIIb 4例であった.種々の合併損傷を伴う例が多く,肝損傷が高度のものほどinjury severity score (ISS)も高値であった.治療は, II型の1例, IIIb型の2例に手術をおこない,他の17例は保存的に加療した. II型手術例では開腹時には肝損傷部は止血されていた. IIIb型手術例2例はいずれも下大静脈・肝静脈の損傷がみられ,止血困難であった.予後は, I型に死亡例はなく, II型, IIIa型で各1例合併損傷で失ったが,肝損傷は直接死因とはならなかった. IIIb型では2例が肝出血で死亡した. I・II型では保存的治療が可能であり, III型であっても手術適応はvital signをもとに決定すぺきである.重症例では肝部下大静脈損傷部の処置が問題である.
  • 長田 明, 石川 詔雄, 山本 祐二, 辻 勝久, 大塚 雅昭, 深尾 立
    1994 年 55 巻 3 号 p. 560-563
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝癌切除56例(男性50例,女性6例,平均年齢56.2歳)を対象として,肝細胞癌(肝癌)とB型, C型肝炎の関連を明らかにする目的で, HBs抗原, HCV抗体の有無と病理学的腫瘍因子,非癌肝実質所見との関係について検討した. HBs抗原陽性例は, 11例(19.6%),陰性例は, 45例 (80.4%) であった. HCV抗体は, 25例中20例に陽性であった. HBs抗原陽性例は,平均50.6歳で, HBs抗原陰性例の59.0歳に比較して有意に若かった.肝実質所見では, HBs抗原陽性例中,肝硬変7例,慢性肝炎3例であった. HBs抗原陰性45例中,肝硬変41例,慢性肝炎1例であった. HBs抗原陰性例中,HCV抗体陽性例は17例で,すぺて肝硬変であった.すなわち肝硬変は, HBS抗原陰性例,特にHCV抗体陽性例に有意に多く,慢性肝炎は, HBs抗原陽性例に有意に・多かった.またHBs抗原やHCV抗体の有無により,病理学的腫瘍因子の程度に違いを認めなかった.
  • 稲田 高男, 安藤 二郎, 尾沢 巌, 松井 淳一, 菱沼 正一, 清水 秀昭, 固武 健二郎, 尾形 佳郎, 小山 靖夫
    1994 年 55 巻 3 号 p. 564-567
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌術後における胆石症の発生要因を多変量解析のひとつである重回帰分析を用いて検討した.対象は胃癌術後2年以上を経過し,再発のない136例である. 22例 (16.2%) において,胆石症が超音波検査において確認された. 22例中1例は有症状にて手術がなされ,他の21例は無症候性結石であった.重回帰分析において,変量とした要因は年齢,性別,入院時total cholesterol, total protein値,早期・進行癌の別,胃切除範囲,郭清度,他臓器合併切除,肝十二指腸靱帯の郭清,消化管再建法,輸血,術後補助化学療法,術後合併症および術前肥満度の指標としてBody Mass Index (BMI) の14項目である.これらの要因のうち,胆石症と有意の関連を有していたのはBMIのみであった.その他の要因のうち,素因としては高齢者,男性において発生例が多い傾向であった.手術に関しては進行胃癌,郭清度の高いもの,輸血施行症例,術後合併症の生じなかった症例に多い傾向であった.
  • 金子 哲也, 中尾 昭公, 井上 総一郎, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
    1994 年 55 巻 3 号 p. 568-574
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    組織学的に良性であった粘液産生膵腫瘍17例につき臨床的検討を行った.男性8例,女性9例.年齢は26歳~70歳.平均56歳であった.臨床病理学的分類は黒田の分類に従って行った.腺腫12例,過形成5例であった. Ia型3例, Ib型8例, Ic型3例, II型5例であった(多発による重複を含む).診断上の問題点はIa型の主膵管内進展範囲, Ib, Ic, II型の多発である.画像診断上,膵管外または嚢胞外への浸潤がない場合,良悪性の鑑別は困難である. ERCP上,嚢胞のlobulationは腺腫に特長的な所見であった.治療方針は基本的に病巣部の切除である.病変が膵頭部にある場合Ia型では全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, Ib, Ic, II型では膵頭切除が必要である.膵体尾部に存在する場合,自験例では膵体尾部切除がなされてきたが,今後,膵機能温存の目的でsegmental resectionなどの術式も考慮する必要がある.
  • 浦山 博, 原田 猛, 川瀬 裕志, 渡辺 洋宇
    1994 年 55 巻 3 号 p. 575-578
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    aortoiliac領域及びfemoropopliteal領域の閉塞を伴う重症虚血肢21肢に対して同時血行再建を行った.症例は19例,平均67.8歳であり,全例男性で疾患は閉塞性動脈硬化症であった.症状は安静時柊痛14肢,潰瘍・壊死7肢であった. aortoiliac領域に対する術式はaortofemoral bypass 13肢, extra anatomic bypass 8肢であり, femoropopliteal領域では自家静脈によるバイパス術が10肢,人工血管によるものが11肢に施行された.手術死亡はなく,術後症状は5肢で間欠性肢行を認めたが16肢では緩解した. 5年開存率(一次性)はaortofemoral bypassで90.0%, extra anatomic bypassで57,1%, 自家静脈を用いたfemoropopliteal bypassで100%, 人工血管で59.8%であった. 10年救肢率は82.6%であったが, 10年生存率は44.2%であった.重症虚血肢に対する2領域同時血行再建の成績は良好であるが,人工血管を用いた末梢側バイパスの開存率向上と生命予後の改善が望まれた.
  • 緒方 晴樹, 福田 護, 羽地 桂作, 大塚 恒博, 有村 俊寛, 清藤 啓之, 片山 憲恃, 太根 節直, 遠藤 賢
    1994 年 55 巻 3 号 p. 579-584
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌の眼転移は稀で,ほとんどが眼球脈絡膜転移であり,ついで眼窩転移が多い.本邦での眼窩転移の報告例は自験例を含め9例と少ない.今回乳癌の眼窩転移1例を含む眼転移症例2例を経験した.症例1は63歳女性,右乳癌 (T2N1bM0, Stage II) にて定型的乳房切除術施行.術後3年で右眼球突出 (19mm) と流涙出現し眼科入院,乳癌の眼窩転移と診断,放射線治療を電子線10MeV/週,総線量52Gy施行.放治後眼球突出,流涙は消失し視力障害も認めなかった.眼転移発症後14ヵ月で肝,骨転移の進行にて死亡した.症例2は40歳女性,両側進行性乳癌 (T4N3M1,Stage IV) にて両側単純乳房切除術および両側卵巣摘出術施行. 1年後皮膚,肝,骨転移にて当科入院.術後14ヵ月で右眼瞼腫脹認め眼球転移と診断,対症療法を施行したが,眼転移後4カ月で死亡した.乳癌症例に眼球突出等の眼症状を認めたら,眼転移を疑い早期に治療し,機能温存をはかることが重要である.
  • 岩渕 裕, 三村 孝, 鳥屋 城男, 長浜 充二, 河野 通一, 杉野 公則, 尾崎 修武, 伊藤 国彦
    1994 年 55 巻 3 号 p. 585-588
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは乳房Paget病術後に甲状腺転移を来たした1例を経験したので報告する.症例は46歳女性で他院にてPaget病の診断のもと乳房切断術を受けた.術後経過は順調であったが3年目に甲状腺腫を認め精査のため当院へ紹介となった.頸部には弾性硬の甲状腺腫以外に左内深頸リンパ節腫大を認めた.甲状腺腫に対して穿刺吸引細胞診を施行したところ胞体が広く,円形で大小不同著明な核を持った腫瘍細胞が小乳頭状の集団を形成して観察でき,転移性甲状腺癌と診断された.甲状腺全摘術が施行され,術後病理所見で乳房Paget病からの甲状腺転移と診断された.術後,全身化学療法および放射線治療が追加され,現在外来で経過観察中である.
    文献的検索では乳房Paget病から甲状腺転移をきたした臨床報告例はこれまでのところ見られていない.
  • 山川 卓, 篠藤 満亮, 谷木 利勝, 伊藤 健造, 北市 雅代, 浜垣 仁, 山本 彰芳, 沼本 敏
    1994 年 55 巻 3 号 p. 589-593
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    極めて稀な疾患である乳腺間質肉腫の1例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.左乳房腫瘤を主訴とし当科を受診した.病期1期,左乳癌の術前診断にて,非定型的乳房切除術 (Patey法)を施行した.病理所見にて本症例は乳腺間質肉腫の診断であった.経過は一時良好であったが,術後1年5ヵ月に左前胸部に5.0×3.0cmの充実性腫瘤を認めた.局所再発の診断にて胸壁切除術を施行した.切除標本の組織所見は原発巣と同様であった.その後,補助化学療法を行ったが,再手術後3ヵ月に再度の局所再発及び両側肺転移を認めた.局所再発に対し放射線療法,肺転移に対し化学療法を施行したが効なく初回手術より約1年11ヵ月にて死亡した.本症の予後は比較的良好とする報告が多い.しかし,自験例では種々の治療にもかかわらず急速な経過をとった,本症の治療として,手術療法に加え何らかの補助療法が必要な症例があると考えられた.
  • 西脇 巨記, 本多 弓〓, 梶 政洋, 成瀬 博昭, 谷脇 聡, 田中 宏紀, 広瀬 雅雄, 小林 俊三
    1994 年 55 巻 3 号 p. 594-598
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大な血腫を合併し多彩な組織像を呈した乳癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳女性,右乳房に巨大な腫瘤を形成し当科を受診した.腫瘤は11×8.5cmの嚢胞状の腫瘤とその内側に3cm大の硬い腫瘤を認めた.病理組織学的検査では嚢胞は血腫と診断され,その血腫内外に乳頭腺管癌を認めまた内側の腫瘤は硬癌であった.嚢胞周囲には管内乳頭腫及び管内乳頭腫から癌への移行部を認めた.本症例のごとく乳腺症から癌への移行部,さらにより悪性度の高い硬癌への移行を1症例中に認めることは比較的珍しく,また乳癌と血腫の合併症例も本邦報告例は3例のみと稀であった.
  • 富山 泉, 中山 治彦, 石井 治彦, 諸星 隆夫, 加瀬 昌弘, 今田 敏夫, 松本 昭彦, 原 正道
    1994 年 55 巻 3 号 p. 599-604
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    気管支内腔に易出血性のポリープ状発育を呈した,比較的珍しい肺良性線維性組織球腫の1例を経験した.症例は20歳男性.検診の胸部X線写真で左肺門部異常影を指摘され,精査治療目的のため当科を受診した.胸部CTでは左肺門部に不均一にenhanceされる3cm径の腫瘤を認めた.気管支鏡で腫瘤の一部が左上区支内腔にポリープ状に突出し,周囲気管支粘膜に著明な血管増生を伴っていた.非常に易出血性であり,生検は困難であった.出血の危険と診断確定のため,手術を施行した.切除標本では,腫瘤は黄色,境界明瞭で軟らかく,内部に出血を伴っており,腫瘤の一部は舌区支内腔ヘポリープ状に突出していた.組織学的検索では主として紡錘形細胞よりなる血brousな部分と組織球よりなるxanthomatousな部分が混在し,一部に形質細胞の浸潤を認めた.核分裂像や核細胞異型はほとんど見られず,良性線維性組織球腫と診断した.
  • 瀬川 正孝, 草島 義徳, 広野 禎介, 中村 裕行, 杉原 政美, 高柳 尹立
    1994 年 55 巻 3 号 p. 605-611
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    限局性胸膜中皮腫の4切除例について,臨床病理学的検討を行った.平均年齢は54.8歳で,男1例,女3例であった.いずれも臨床症状はなく,検診で胸部異常影を指摘された.種々の画像診断・針生検にても術前に確定診断がつかず,肺良性腫瘍.横隔膜腫瘍,縦隔腫瘍などの診断のもとに手術された,症例1は右S10の肺胸膜, 2は右S6の肺胸膜, 3は右横隔膜胸膜, 4は右Slの肺胸膜からの発生であった.症例1は,有茎性で大きさは2.8×1.7cm, 2は広基性で3.5×3.0cm, 3は広基性で13×7cm, 4は有茎性で4.7×4.5cmであり,健常組織または横隔膜とともに完全切除された.腫瘍は線維芽細胞様細胞の増生からなり,細胞異型・核分裂・浸潤性は認めず,良性限局性胸膜中皮腫の線維型と診断された.電顕所見では腫瘍細胞は線維芽細胞と中皮細胞の性格がうかがわれ,本腫瘍は間葉系由来である可能性が高いと考えられた. 4症例の経過は, 4年経過例を筆頭に良好である.
  • 中島 清一, 宗田 滋夫, 吉川 幸伸, 籾山 卓哉, 戸田 宏一, 澤井 勉, 大嶋 正人
    1994 年 55 巻 3 号 p. 612-616
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    第7肋骨に原発し,第6, 8肋骨への浸潤を示した軟骨肉腫の1症例を経験した.患者は53歳の女性で,右乳房~側胸壁痛を主訴に平成元年5月当科受診,乳腺超音波検査で右乳腺症と診断された. 2年間の経過観察中平成4年に入り同部の硬い腫瘤を自覚し,腹部超音波, CT, 血管造影等の諸検査の結果,肋骨腫瘍と診断され, 7月21日腫瘍,肋骨合併切除,メッシュによる胸壁再建術を施行した.術後病理検索にて軟骨肉腫と診断された.術後経過は良好である.
    軟骨肉腫はほとんどが骨盤や四肢末梢骨を中心に発生し,肋骨原発のものは約5%程度と稀である. 肋骨内での好発部位は前胸壁の肋軟骨接合部であるとされている.治療は腫瘍より約3cm離しての広範囲切除が第一選択であり, 化学療法,放射線療法は効果を期待できない. 切除後の胸壁欠損部が大きい場合はメッシュを用いた再建法により良好な結果が得られている.
  • 久保 章, 金 正文, 瀧本 篤, 亀田 久仁郎
    1994 年 55 巻 3 号 p. 617-620
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    狭窄を伴ったBarrett潰瘍に対して,逆流防止手術を施行し良好な結果を得た.症例は, 71歳,女性.主訴は嚥下困難.食道造影では,胸部食道下部の狭窄と食道裂孔ヘルニアが認められた.食道内視鏡検査では,切歯列より約32cmの部位に全周性の輸状狭窄と,その部位に一致して白苔を伴った不整形の陥凹性病変を認めた.狭窄部と食道胃接合部の間は円柱上皮で被われていた. Barrett潰瘍と診断した. H2 receptor拮抗剤で4カ月間治療したが軽快せず,術前の狭窄部の拡張と逆流防止手術としてNissen法を施行した.術後,狭窄と潰瘍は軽快したが, Barrett上皮の退縮は認められなかった.このように,逆流防止術後も,癌化の危険性は残存しているため長期にわたる経過観察が必要であると考えられた.
  • 石井 祥裕, 佐藤 仁一, 下田 勝広, 荒巻 政憲, 斉藤 貴生, 小林 迪夫
    1994 年 55 巻 3 号 p. 621-625
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道裂孔ヘルニアは滑脱型がほとんどを占め,他はまれである.今回われわれは胃軸捻転症を伴い前庭部が脱出した極めてまれな1例を経験した.症例は81歳女性で,労作時息切れを主訴に来院,タール便の既往があり,貧血を認めた.上部消化管造影で胃体部から前庭部が臓器軸性に180度捻転して脱出した傍食道型の食道裂孔ヘルニアと,滑脱型ヘルニアの合併と診断された.急性嵌頓の危険性を考慮し, Nissen法による手術を施行した.術中所見では胃軸捻転および傍食道型ヘルニアは寛解しており,滑脱型ヘルニアのみを認め,全身麻酔による寛解が推測された.術後経過は良好でヘルニアの再発を認めていない.
  • 杉本 圭司, 高見 元敞, 藤本 高義, 高田 俊明, 北田 昌之, 塚原 康生, 奥村 幸康, 柴田 高, 斉藤 真文, 渡辺 康則, 木 ...
    1994 年 55 巻 3 号 p. 626-630
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    悪性腹膜中皮腫の1例を報告する.症例は55歳男性で上腹部腫瘤を主訴として当科を受診した.上腹部に15×13cmの腫瘤を触知し,上部消化管造影では胃体下部から幽門部にかけて壁外性の圧迫を認めた.腹部CTでは胃と肝左葉との間に大きな腫瘤を認め,胃壁外発育型粘膜下悪性腫瘍と診断した.開腹による術中細胞診にて悪性腹膜中皮腫と診断した.
    開腹時所見は,非常に粘稠な腹水と播種を認め,胃の壁外性腫瘤は肝左葉に浸潤していた.術中細胞診により悪性腹膜中皮腫と診断し,巨大な腫瘤は胃亜全摘術と肝部分切除術により摘出できたが,多数の腫瘍を残すためCisplatin 100mgとMitomycin C 10mgを腹腔内に投与した.術後化学療法を施行したが術後4ヵ月で死亡した.
  • 花崎 和弘, 町田 恵美, 中田 伸司, 清水 忠博, 宮崎 忠昭, 大塚 満洲雄, 渡辺 正秀
    1994 年 55 巻 3 号 p. 631-634
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫のうち最大径が15cm以上のものは文献上,巨大胃平滑筋肉腫とされている.今回われわれは巨大胃平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.
    症例は74歳の女性で,左上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.腹部US, CT, MRIでは左上腹部に巨大嚢胞性腫瘤病変が疑われ,胃内視鏡検査にて胃体上部後壁にdelleを形成した隆起性病変を認めた.血管造影では胃体部にhypervascularな像がみられた.手術所見は胃体部に充実性の腫瘍がみられ,胃外性に巨大な嚢胞を伴っていた.脾臓合併切除, R2リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した.摘出標本は重量1,580g,大きさは胃体部後壁の充実性腫瘍が10×10×8cmで,同部より胃外性に連続発育した嚢胞性腫瘍が18×14×13cmであった.病理組織学的には胃平滑筋肉腫と診断された.
  • 橋村 千秋, 松尾 進一郎, 野中 杏栄, 緒方 秀昭, 若林 峰生, 継 行男, 野中 博子
    1994 年 55 巻 3 号 p. 635-639
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌転移のなかで,骨髄癌症の形をとることは比較的まれであるが,発症後の病態変化は急激で予後は不良である.今回,われわれは,胃癌骨髄癌症3例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は,いずれも50歳代の男性で,腰背部痛が全例に認められ,入院までの経過中に血尿や硬膜下血腫等の出血症状が出現している.胃癌手術時の胃病巣はIIc 1例, Borr III 2例で,本症発症までの期間はIIc例は約10年であったが, Borr III例では約1~2年と短期間であった.組織型はいずれも低分化型腺癌である.診断は病歴や臨床症状の他,血液学的検査や骨シンチグラム等で確定する.治療は出血症状の対策が主となるが,教室例では発症例19~34日の間に症状増悪し全例が死亡している.胃癌骨髄癌症の多くは術後5年前後で発症するが,今回の報告例のなかの1例は10年を経過していた.本症の診断は比較的容易であるが効果的治療法はなく予後は極めて不良である.従って術後経過観察中に本症を念頭においた検索も必要であり,また転移巣への積極的な治療が重要である.
  • 鈴木 孝雄, 落合 武徳, 榎本 和夫, 長島 通, 永田 松夫, 軍司 祥雄, 磯野 可一
    1994 年 55 巻 3 号 p. 640-642
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Positron emission tomography (PET) にて診断し得たm早期胃癌根治術後10年目の腹腔動脈リンパ節再発の1例を経験したので報告する.
    症例は61歳男性で, 1982年4月にm早期胃癌にて幽門側亜全摘術を施行された. P0H0n0s0 stage I絶対治癒切除であった. 1991年12月にdynamic CTが施行され,腹腔動脈リンパ節の転移が疑われたものの確診は得られなかった.そこで1992年5月 18F-fluorodeoxyglucose (FDG)-PETを施行したところ, FDGの腫瘍集積を認めたため,リンパ節再発と診断した. 5-FU, adriamycin, cisplatin併用療法を1クール施行したところFDG-PET像でFDGの腫瘍集積が消失し化学療法有効と判断した.
    m早期胃癌といえど常に再発の危険性を念頭に置いた経過観察と,再発診断,化学療法の効果判定におけるFDG-PETの有用性を強調したい.
  • 石塚 直樹, 高崎 健, 次田 正, 山本 雅一, 大坪 毅人, 中上 哲雄, 小林 秀規, 浜谷 弘康, 羽生 富士夫
    1994 年 55 巻 3 号 p. 643-647
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸乳頭部癌の診断で膵頭部温存十二指腸乳頭部切除を施行した症例を経験したので報告する.症例は85歳男性.検診で胆道系酵素の異常を指摘され精査にて十二指腸乳頭部癌と診断された.病変は十二指腸乳頭部から主膵管・総胆管合流部近傍までに限局した腫瘤として認められた.術中超音波検査にて明らかな膵浸潤はないものの,膵頭後部リンパ節転移が認められた.患者は高齢かつ心・腎機能低下というrisk factorを有することから術後quality of lifeを考慮し,膵頭部を温存する十二指腸乳頭部切除を施行した.膵頭部から十二指腸を遊離するには,膵十二指腸アーケードより分枝する十二指腸枝を切離することにより可能であった.術後経過では, 5週間目には術前と同等の経口摂取と社会生活が営まれた.本術式の適応については議論のあるところだが,乳頭部癌の縮小手術として成り立つものと思われた.
  • 楠山 剛紹, 高見 元敞, 藤本 高義, 高田 俊明, 北田 昌之, 塚原 康生, 奥村 幸雄, 柴田 高, 木村 正治, 花田 正人
    1994 年 55 巻 3 号 p. 648-651
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌に合併した閉塞性回腸炎を経験したので報告する.症例は63歳女性, 75歳男性の2例でそれぞれ,ほぼ全周性の上行結腸癌,盲腸癌で右半結腸切除術,回盲部切除術が施行された. 2症例とも切除標本にて,回腸末端部に数個の潰瘍病変を認め,病理組織学的に閉塞性回腸炎と診断した.本邦における閉塞性回腸炎の報告は,自験例を含めて8例のみである.全周性の右側結腸癌の手術に際しては,本症の存在を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 篠木 信敏, 福田 一郎, 直井 正紀, 山本 秀樹, 藤村 博信, 西澤 征夫, 衣田 誠克
    1994 年 55 巻 3 号 p. 652-655
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 50歳女性.上腹部痛を主訴に来院.上部消化管造影で空腸に陰影欠損が認められ,内視鏡及び腹部血管造影にて粘膜下腫瘍を疑い開腹術を施行した.開腹時小腸重積を合併しており整復後空腸部分切除術を施行した.病理組織診断は空腸脂肪腫であった.小腸脂肪腫について若干の文献的考察を加えて検討した.
  • 菅原 寧彦, 木島 泰興, 飯塚 秀彦, 遠藤 剛, 岡崎 護, 紙田 信彦, 赤池 康
    1994 年 55 巻 3 号 p. 656-660
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,右下腹部痛,嘔吐を主訴に来院した.入院後,腹部超音波検査,腹部CT検査,注腸検査にて,回盲部の腸重積症を疑い,手術を施行した.手術所見では,回盲部において,回腸が回腸に嵌入して重積しており,この重積部位が盲腸からさらに上行結腸まで先進していた.用手的にできるだけ重積を解除した後,重積部位を中心に,回腸を部分切除し,回腸回腸端々吻合を行った.切除後に,重積を解除したところ,回腸末端部から約18cm口側の粘膜下腫瘍を先進部とした回腸回腸結腸型腸重積症であった.病理組織学的診断は,過誤腫性のポリープであり,粘膜下層,筋層内に,異所性粘膜が存在し,内部に粘液嚢胞の形成があることから, enteritis cystica profundaと考えられた.以上,われわれは,小腸腫瘍 (enteritis cystica profunda) が原因となった成人腸重積症を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 啓宏, 関根 毅, 真船 健一, 須田 雍夫, 岸 紀代三
    1994 年 55 巻 3 号 p. 661-665
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    空腸悪性神経鞘腫の1切除例を経験したので報告する.患者は67歳,女性.主訴はタール便,血液検査で貧血を指摘され入院した.腹部は平坦,軟で腫瘤は触知せず,臨床検査成績では腫瘍マーカーは正常で,上部消化管内視鏡検査と注腸検査で異常所見を認めなかった.腹部CT検査所見は膵尾部下方で空腸上部に連続する3×2cm大の低吸収域腫瘤で,均一,著明に造影された.上腸間膜動脈造影検査所見は腫瘍内に多数の新生血管像とA-Vシャントを認めた.手術所見ではTreitz靱帯より肛門側8cmの空腸上部に壁外性に発育した表面平滑,瓢箪型鶏卵大で弾性軟の腫瘍を認め,腫瘍を含めて空腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見は空腸粘膜下組織と連続性を有する腫瘍で,紡錘形細胞の索状増殖像と柵状配列を呈し,免疫組織学的にS-100蛋白陽性であった.以上より,空腸原発の悪性神経鞘腫と診断した.
  • 堅野 国幸, 正木 忠夫, 工藤 浩史, 西土井 英昭, 石黒 稔, 村上 敏, 谷口 遙, 前田 宏仁
    1994 年 55 巻 3 号 p. 666-669
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前診断が可能で,特発性と考えられた成人腸重積症の1例を経験したので報告する.
    症例は, 56歳男性.突然の右下腹部痛を主訴として来院,入院となった.腹部単純X線検査で複数の鏡面像を認め,腹部超音波検査で右下腹部にtarget like appearanceを認めたため,腸重積症によるイレウスと診断,開腹術を施行した.手術所見では回腸結腸型の重積を認め,重積部外の回腸に母指頭大の腫瘤を触知し,重積部および腫瘤を含め回結腸切除術を施行した.腫瘤は脂肪腫であった.
    成人腸重積症は多くの場合,腫瘍性病変をはじめとした何らかの器質的病変が関与しており,その場合,病変が重積の先進部となっていることが多い.しかしわれわれの症例では,回腸の脂肪腫は重積部とは外れた部位に存在したことから,重積の誘因となったとは考え難く,重積は特発性と考えられた.術前診断において,超音波検査はその非侵襲性,簡便性などから有用性が高いと思われた.
  • 八十島 孝博, 中野 昌志, 奥 雅志, 白松 幸爾, 今 信一郎, 平田 公一
    1994 年 55 巻 3 号 p. 670-674
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 45歳,男性.発熱,右側腹部痛,腹部膨満感を主訴に近医入院.症状が改善しないため当科転院.腹部X線検査で鏡面像を認め,腹部CT検査で腹腔内膿瘍を認めた.穿刺ドレナージ後の造影で腸管との交通を認めたため,腸管の穿孔による腹腔内膿瘍と,それによるイレウスの術前診断にて開腹手術施行.手術所見は,急性虫垂炎穿孔による腹腔内膿瘍と化膿性虫垂炎であった.病理組織学的には虫垂のgoblet cell carcinoidと診断された.報告例のなかった,穿孔を伴った虫垂goblet cell carcinoidの1例を経験したので報告する.
  • 保田 尚邦, 桜井 俊宏, 鈴木 恵史, 渋沢 三喜, 小池 正, 草野 満夫
    1994 年 55 巻 3 号 p. 675-678
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は49歳男性,便潜血陽性にて昭和63年6月に来院し,注腸検査および大腸内視鏡検査を施行し大腸ポリポーシスと診断,大腸内視鏡検査時の生検にてGroup 1~2であった.その後3年間,注腸検査,大腸内視鏡検査にて経過観察するも著変はなかった.平成3年12月の大腸内視鏡検査でポリベクトミー施行したところ4/11個に腺腫内癌を認めたため,手術(全結腸切除,回腸直腸吻合術, J pouch作成)を施行した.摘出標本にてポリープを134個認めた.今回われわれは,大腸内視鏡検査にて3年間経過を観察し,社会的,身体的に手術時期を決定しえた大腸ポリポーシスの同時性多発癌を経験したので報告した.
  • 大澤 亨, 毛利 靖彦, 鈴木 康弘, 梅原 規子, 黒田 道夫, 福田 宏司, 千賀 雅之
    1994 年 55 巻 3 号 p. 679-682
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は73歳の男性である.昭和60年11月に右乳癌にて定型的乳房切断術を受けた.外来にて経過観察を行っていたが,平成2年11月頃から下血を認めるようになった.精査の結果S状結腸癌の診断にて, S状結腸切除術を施行した.本症例は病理組織学的に異時性重複癌であり,男子乳癌とS状結腸癌の異時性重複癌は本邦では極めて稀と考えられたので報告した.
  • 渡辺 俊一, 村上 望, 常塚 宣男, 加藤 明之, 斉藤 裕, 平野 誠, 橘川 弘勝, 川東 正範, 岡部 洋子, 増田 信二
    1994 年 55 巻 3 号 p. 683-687
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の女性で,近医にて下行結腸に腫瘍を指摘され当科紹介されたが,血小板が1.9×104/mm3と減少を認め,当院内科にて精査の結果ITPと診断された. Imbachらの報告した方法に準じて,術前5日間にわたり, 400mg/kg/dayのγ-globulin大量投与が行われ, 15.6×104/mm3に血小板が増加した時点で右半結腸切除術と脾摘が施行され良好な術後経過をたどった.術後1年以上経過した現在,患者は元気に社会復帰しており,血小板数も十分保たれている. γ-globulin大量療法は,短期間で血小板を大きく増加させ,しかも副作用の報告もないため,外科治療が必要なITP患者の術前管理として極めて有用な方法であると考えられた.
  • 郡司 健, 大矢 和光, 知念 信昭, 上杉 仁, 矢吹 由香理, 小幡 知行, 関澤 裕人, 重田 博, 湯浅 英樹, 山田 恭司, 岩崎 ...
    1994 年 55 巻 3 号 p. 688-692
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは, 2例のアメーバ肝膿瘍を経験した.症例はいずれも男性で,同性愛行為経験者であり, 39°C代の発熱にて発症し, CTにて肝膿瘍と診断された.いずれもCTガイド下膿瘍ドレナージを施行し,血清アメーバ抗体価は,いずれも陽性であったが,栄養型アメーバの膿汁よりの検出は1例のみであった.ドレナージ後メトロニダゾール投与にて両症例とも軽快し,血清抗体価も下降した.アメーバ肝膿瘍は近年増加しSTDとして注目され海外渡航歴のない症例が多くなっている.よって膿汁細菌培養陰性の肝膿瘍の診断に際しアメーバ性肝膿瘍を念頭にいれ,血清抗体価の測定が不可欠であり,同性愛行為の有無などのSTDに関する病歴聴取も必要である.
    治療にはCT又はUSガイド下穿刺ドレナージが効果的である.また,メトロニダゾールは抗体価を指標に投与する必要がある.
  • 相原 智彦, 梅下 浩司, 門田 守人, 金井 俊雄, 後藤 満一, 左近 賢人, 森 武貞, 若狭 研一, 桜井 幹己
    1994 年 55 巻 3 号 p. 693-697
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.検診にて肝機能異常を指摘され,精査の結果肝S4に径2cmの腫瘤を認めた.高分化型肝細胞癌または胆管細胞癌との診断で,手術を施行した.術中迅速組織診断で脂肪化を伴う高分化型肝細胞癌が否定できず,肝拡大左葉切除術を行った.病変部は,肉眼的に周囲の正常肝実質と色調が異なる,径1.5cmの腫瘤として識別された.固定後は病変部は肉眼では識別不能となり,組織学的に限局性脂肪肝と診断された.
    限局性脂肪肝は, CTやUSなどの画像診断技術の向上によって,その報告例が増加している.その多くは肥満,肝硬変,糖尿病,アルコール性肝疾患,悪性腫瘍などの基礎疾患に伴う.現時点では,腫瘍との鑑別が困難な症例もあるため,今後の検討が必要である.
  • 豊田 暢彦, 皆木 真一, 竹内 勤, 貞光 信之
    1994 年 55 巻 3 号 p. 698-701
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝右葉前区域切除術により,術後良好な成績を得た肝内結石症の1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性.右季肋部痛,発熱を主訴として来院.急性胆嚢炎を疑い入院. USおよびPTCにて肝右葉前区域枝に結石を認め,肝内結石症と診断した.保存的加療では再発するため,全身麻酔下に手術を施行した. US下に結石を確認しながら肝右葉前区域切除術を施行し,経過良好にて退院となった.肝内結石症はその病態が複雑であり,個々の症例に対して治療法を選択していく必要がある.治療の原則は結石と胆管狭窄の除去および胆汁うっ滞の解除であり,観血的治療,非観血的治療を含む多くの治療法がある.近年,外科治療として肝切除術も行われるようになり,自験例のように肝切除により根治が期待できる場合には,積極的に肝切除を施行すぺきであると考える.
  • 大谷 博, 石川 哲郎, 西野 裕二, 高 勉, 李 龍彦, 西森 武雄, 曽和 融生
    1994 年 55 巻 3 号 p. 702-707
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    超音波ガイド下肝生検は,画像診断にて良・悪性の鑑別が困難な場合などに極めて有用な検査であるが,合併症として胆汁性腹膜炎・肝内血腫・癌細胞のimplantation・膿瘍破裂後の腹膜炎などに注意する必要がある.今回われわれは,肝生検後に肝癌細胞のimplantationで胸壁に転移巣を形成したと思われる症例を経験した.症例は59歳男性で,画像診断にて肝癌とhemangiomaとの鑑別が困難であった肝腫瘤に対し,超音波ガイド下肝生検を行い,肝細胞癌の確定診断がえられ, 1988年1月10日,肝切除術が施行された,術後経過観察中, 1991年11月に右胸壁腫瘤が認められ,同部の吸引細胞診にて肝細胞癌の胸壁転移と診断し胸壁合併切除術が施行された.文献的には,肝生検後に肝細胞癌が胸壁へimplantationし,転移をきたしたという報告例は5例と少ないが,今後,穿刺術の普及とともに増加する可能性も危惧され,いくつかの配慮が必要と思われた.
  • 田中 恒雄, 岡本 英三, 山中 若樹, 折山 毅
    1994 年 55 巻 3 号 p. 708-712
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    転移性肝癌症例は広範囲切除に問題無く耐術するのが通常であるが,今回,長期間にわたりlipiodolを混じた動注化学療法を行った後に肝右葉切除を施行し不良な経過をたどった症例を報告する.症例は48歳男性.直腸癌(Stage III)で前方切除術を施行, 3年後に肝転移が認められたため肝喫状切除とリザーバー付き肝動注入カテーテルを留置,術後lipiodolを混じた化学療法を反復施行したが,肝切除から半年後肝切除断端に再発を認めたため当院紹介となった.肝再切除前の検査成績では,胆道系酵素の著明な上昇を認めたが,安全かつ根治性をもった手術と考え右葉切除術を施行した.術後持続する熱発と遷延する黄疸を認め最終的には不幸な転帰をたどった.原因としては頻回の動注化学療法,特にlipiodolによる肝内胆管及び門脈域結合織の梗塞による胆管炎が切除を契機に発生したものと考えられた.
  • 光定 誠, 伊賀 徹, 竹内 豊, 若山 達郎, 福島 康正, 奥山 正治, 香宗我部 滋
    1994 年 55 巻 3 号 p. 713-715
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.右季肋部痛を主訴に来院し胆嚢結石と診断された.術前のスクリーニング検査で活性化部分トロンボブラスチン時間が著明に延長しており,凝固系の精査の結果,抗リン脂質抗体陽性と診断され,原発性抗リン脂質抗体症候群が疑われた.胆嚢摘出術を施行し,術後ヘパリン,アスピリンの投与等の血栓形成予防処置を行い,術中術後を通して特に出血傾向も血栓形成も認めなかった.
    抗リン脂質抗体のLupus anticoaglant陽性血漿はin vitroでAPTTなどの凝固機能検査で見かけ上の異常値をしめすが, invivoでは出血傾向よりもむしろ血栓形成が問題になるとされている.外科周術期管理においても念頭において対処すべき病態であるとおもわれるので,若干の文献的検索を含めて報告する.
  • 瀬尾 泰雄, 有地 茂生
    1994 年 55 巻 3 号 p. 716-723
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大卵巣嚢胞腺癌に併存した陶器様胆嚢の1例を経験したので,陶器様胆嚢の本邦報告例149例の臨床的検討を併せ報告する.
    症例は51歳,女性,腹部膨満感を主訴に来院した.超音波, CT検査で,腹腔内は巨大多房性嚢胞で占拠され,さらに,胆嚢は壁が肥厚し全周性に石灰化を認めた,嚢胞は左卵巣原発で, 30×28×20cm, 4,500g,割面は多房性で,一部に2×1.5cmの黄色充実性小結節を認めた.胆嚢は萎縮し軟骨様硬で,胆嚢管に純コレステロール結石が嵌頓し,胆嚢管は閉塞していた.組織学的に,卵巣嚢胞は嚢胞内の充実性結節に悪性像があり,全体的には粘液性嚢胞腺癌を呈し,胆嚢は慢性炎症が強く,粘膜面から粘膜下層にかけて散在性の顆粒状石灰化巣があり,悪性所見を認めなかった.
    陶器様胆嚢は胆嚢癌を主とする癌併存が多く,詳細な術前検査のもとに手術的治療を優先することが重要である.また,陶器様胆嚢と卵巣嚢胞腺癌の併存は本邦第1例目である.
  • 数井 啓蔵, 佐治 裕, 倉内 宣明, 有里 仁志, 高田 譲二, 内野 純一, 湊 正意, 広瀬 邦茂, 田口 和之
    1994 年 55 巻 3 号 p. 724-729
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    手術を施行した膵仮性嚢胞(以下,本症) 8例を対象とし,本症における画像診断上の問題点について検討を行った.
    診断のきっかけは全例USであったが, USで本症と診断できたものは5例で,他の3例は嚢胞壁あるいは内腔に充実性部分を認め腫瘍性嚢胞と鑑別が困難であった.この3例の嚢胞内容液は血性1例,血腫1例, debris 1例で鑑別には嚢胞の内容液の性状を知ることが重要と考えられた. MRIは腫瘍性嚢胞が疑われた3例のうち2例に施行した. 1例は嚢胞内血腫と診断でき,他の1例では壁構造がUS・CTより明瞭に描出され,嚢胞内に血液の存在が示唆された.
    本症は,内容液が血液またはdebrisの場合, USで腫瘍性嚢胞との鑑別が困難なことがある. MRIは壁構造の描出に優れ,内容液の診断にも有用であると考えられた.
  • 弥政 晋輔, 松崎 安孝, 日江井 賢, 坂口 博美, 新田 一豊, 山口 喜正, 大岩 昇
    1994 年 55 巻 3 号 p. 730-734
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    中皮性脾嚢腫の1例を経験したので本邦脾嚢胞343例の集積結果を加えて報告する.症例は23歳女性.上腹部不快感を主訴に来院.腹部超音波検査にて左上腹部に径12cm大の腫瘤を認め, CT検査,血管造影検査により脾嚢胞と診断,脾臓摘出術を施行した.嚢胞は単房性で脂質に富んだ黄色の液を容れ,一層の扁平な細胞により裏打ちされていた.この細胞は免疫染色でcytokeratin, vimentin, EMA (epithelial membrane antigen) に陽性, CEA, 第VIII因子関連抗原に陰性であり中皮性の真性脾嚢胞と診断した.本邦では1890年の報告以来,文献上343例の脾嚢胞報告例があるが,この中には本症例のように中皮由来が疑われ類上皮嚢腫とは明らかに異なる真性脾嚢胞が散見される.これらは従来より繁用されているMcClure分類では分類が暖昧であり,今回特に真性脾嚢胞を中心に,その細胞由来から見た分類に関する検討を行った.
  • 倉立 真志, 高井 茂治, 鈴江 省三, 折野 俊介, 橋根 勝義
    1994 年 55 巻 3 号 p. 735-739
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的まれな発生学的にも興味深い後腹膜漿液性嚢胞の1例を経験したので報告する.
    症例は66歳,男.主訴は腹部腫瘤.既往歴は肺結核,虫垂切除術.現病歴は1992年4月腹部腫瘤に気づき当科受診し入院した.腹部に13×15cmの腫瘤を認め,その性状は,表面平滑,硬度軟,辺縁明瞭,可動性良好,波動あり,圧痛なし.入院時臨床生化学的検査に異常なし.腹部超音波,腹部CT検査で腹腔内に15×7cmの腫瘤陰影を認め,消化管透視で腫瘤と消化管との直接関係なし.手術施行したところ, 15×7×6cmの後腹膜嚢胞で,比較的容易に摘出しえた.内容液は650gの漿液で,病理組織学的に嚢胞壁は単層扁平または立方上皮であり,悪性所見なし.後腹膜漿液性嚢胞と診断された.
    自験例の発生起源は,泌尿性器原性が疑われるものの不明であった.後腹膜漿液性嚢胞の治療は摘出術が一般的であり,予後は良好である.
  • 片寄 友, 斉藤 善広, 椎葉 健一, 伊勢 秀雄, 松野 正紀
    1994 年 55 巻 3 号 p. 740-745
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人の後腹膜原発の奇形腫は小児に比し稀な疾患である.今回われわれは右季肋部痛にて発症した巨大後腹膜奇形腫を経験したので若干の文献的検討を加え報告する.
    症例は28歳男性で主訴は右季肋部痛であった.平成4年1月,右季肋部痛を自覚し近医受診.検査にて,後腹膜に巨大な腫瘤を認められ,質的診断及び手術目的にて当科紹介となる.入院時,右季肋部に弾性硬の小児頭大の腫瘤を触知し,強く圧迫すると鈍痛を自覚した.腹部超音波検査, CT, MRIなどの各種画像診断により,腫瘍は隔壁に石灰化を伴い内容は液状の脂肪を示唆する所見であり,奇形腫を第一に考え,発生部位より脂肪を主成分とする骨髄脂肪腫も疑い手術施行となった.切除標本は表面平滑な嚢胞状の腫瘍であり,内壁は皮膚様であり一部石灰化を伴う骨髄を思わせる部分を認めた.病理組織学的所見で皮膚付属器を認め,成熟型の奇形腫と診断された.
  • 小縣 正明, 石川 稔晃
    1994 年 55 巻 3 号 p. 746-750
    発行日: 1994/03/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内ヘルニア嵌頓による腸閉塞症5例の超音波所見を報告するとともに,その術前診断および手術適応の判断における超音波検査法の役割について検討した.嵌頓腸管が絞扼状態にあった4例は超音波検査にて絞扼性腸閉塞または限局的腸壊死が疑われ,緊急手術が施行された.そのうち腸壁の強い肥厚像が描出された3例では嵌頓腸管が出血壊死に陥っており,腸切除を必要とした.超音波検査上,拡張小腸全体に腸管の動きを認め,単純性腸閉塞と診断された1例では小腸造影でも不完全閉塞所見を呈し,開腹時にも嵌頓腸管に血行障害は認めなかった.超音波検査にて内ヘルニアを診断しえた症例はなかったが,内ヘルニア嵌頓に伴う絞扼性腸閉塞の診断に超音波検査法は有用であった.
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