日本臨床外科医学会雑誌
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56 巻, 12 号
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  • 吉村 博邦, 成毛 韶夫
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2541-2545
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 飯田 辰美, 広瀬 一, 林 昌俊, 伊藤 英夫, 片桐 義文, 宮田 知幸, 東 健一郎, 酒井 聡, 千賀 省始, 不破 誠行, 林 勝 ...
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2546-2552
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科における過去4年間の一般外科(呼吸器,甲状腺,乳腺,腹部の各外科)手術症例は536例で,これらのうち狭心症,安静時・負荷心電図変化のいずれかが陽性であった症例29例 (5.4%) に冠状動脈造影を施行した. Leamanらのスコアー0.5点以上の有意な冠動脈狭窄を併存する症例は16例 (16/29, 55%) で,全例悪性腫瘍(肺癌2, 胃癌5, 大腸癌5, 肝臓癌2, 胆嚢癌1, 子宮癌1) であった.冠血行再建例は9例 (56%) で, 1期的手術4例(胃癌2, 肝臓癌1, 子宮癌1), 2期的手術3例(胃癌1, 大腸癌1, 胆嚢癌1), 経皮的冠動脈血行再建術を先行させた2症例(胃癌1, 大腸癌1) であり,一般外科手術のみ施行した症例は6例(肺癌2, 胃癌1, 肝臓癌1, 大腸癌2) であった.全例において周術期死亡はなかった.すなわち術前の冠動脈造影の適応基準の設定とともに冠動脈狭窄病変を基準化することにより,冠血行再建例と冠血行非再建例とに分類した.術中・術後管理に習熟すれば,虚血性心疾患併存例でも根治性のある一般外科手術が可能であった.
  • 佐藤 啓宏, 関根 毅, 上原 敏敬
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2553-2556
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    治癒切除し得た下部直腸のm癌17例, sm癌15例およびmp癌45例について臨床病理学的に分析し,縮小手術の適応を検討した.組織型はm癌では高分化腺癌94%, sm癌では高分化腺癌60%であったが, mp癌では高分化腺癌53%, 中分化腺癌47%で中分化腺癌が高率にみられた.手術術式はm癌ではポリープ摘除あるいは局所切除は82%に, sm癌では53%に施行された.しかし, mp癌では腹会陰式直腸切断が73%に行われた. m癌では脈管侵襲やリンパ節転移は認められなかった. sm癌はslightとmassiveともにリンパ節転移はなかった.しかし,脈管侵襲はsm癌slightはリンパ管侵襲が25%, 静脈侵襲が0%に対し, sm癌massiveではリンパ管侵襲が55%, 静脈侵襲が64%と高率に認めた. mp癌では脈管侵襲はさらに進み,リンパ節転移もmassiveに認められた.しかし,再発症例は1例もなかった.下部直腸癌の縮小手術の適応はm癌およびsm癌slightとされるが,症例により適応の拡大も考慮される.
  • 竹内 信道, 山本 裕司, 佐藤 芳樹, 福田 直人, 徳永 誠, 杉山 貢
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2557-2561
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当センターにて経験した50例の外傷性肝損傷について臨床的に検討した.
    90%の症例は鈍的外傷で,交通事故によるものが最も多かった. 31例に開腹止血を施行し,軽症例9例に対して保存的治療を施行した. 10例は開腹手術以前に死亡した.血液検査値には死亡率や重傷度に相関するものはなかったが,来院時収縮期血圧90mmHg以下のショック状態であった症例は,手術の必要な重症肝損傷であるか,重症他臓器損傷を合併しており,死亡率も高かった.重症肝損傷症例は迅速に開腹止血術を施行しなければ救命できないが,軽症例は保存的治療が可能であり,また救命初療時に手術適応の決定のために正確な種々の方法を行うことは困難である.それゆえ入院時にショック状態にある患者は開腹止血を念頭において治療にあたり,手術時期を逸しないことが必要であると思われた.
  • 廣吉 基己, 小野山 裕彦, 山本 正博, 斎藤 洋一
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2562-2567
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去22年間に当科で経験した肝門部胆管癌症例41例中の手術例は20例 (48.8%) で,切除11例,非切除9例であった.切除例のうち絶対治癒切除2例,相対治癒切除3例で6例は絶対非治癒切除であり,非治癒切除となった原因は肉眼的癌浸潤によるものが多かった.非切除例では集学的治療を試みても大部分の症例が1年以内に死亡するのに対し,切除例では1年生存率81.8%, 2年生存率45.5%であった.進行したStage IVに限っても切除例の治療成績は有意に良好であった.切除例のうち断端に癌浸潤を認めたものでは大部分が2年以内に死亡したが,断端陰性例では2年生存率75.0%であった.またStage IVで相対治癒切除の1例は集学的治療で3年9カ月の長期生存を得た.以上より肝門部胆管癌手術症例では可及的に治癒切除を目指すことが予後改善のために重要であり,また非治癒切除例においても集学的治療で長期生存を得られる可能性も示唆された.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 根塚 秀昭, 吉光 裕, 太田 長義, 森 和弘, 角谷 直孝, 広野 禎介
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2568-2574
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢隆起性病変96例を対象として隆起性病変に対する腹部超音波検査 (US) の診断能および治療上の問題点について検討した. USで結節型の病変は腺筋腫症を除けば大部分が癌であった.さらに結節型で11mm以上の癌の深達度は8例全例がすでにss以上であったことより,結節型の病変は腺筋腫症が否定できなければ,大きさに関係なく発見され次第手術すべきであると考えられた.一方乳頭型の病変では10mm以下では癌は2%であるのに対して, 11mm以上では60%が癌であった.さらにUSまたは肉眼型で乳頭型の20mm以下の癌では,全例深達度がmであった.したがって乳頭型で11mm以上の病変では癌として対処する必要があるが, 10mm以下では癌が否定できなくて10mmになるまで経過観察しても,癌の早期性は保たれていると考えられた.
  • 正木 久男, 勝村 達喜, 藤原 巍, 村上 泰治, 吉田 浩, 金沢 成雄, 福広 吉晃, 田淵 篤, 石田 敦久, 菊川 大樹
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2575-2580
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去2年間にいわゆる炎症性腹部大動脈瘤4例および腸骨動脈瘤1例の手術を経験し,以下の結果を得た.
    1. 病因は未だに不明であるが,糖コルチコイド投与にてCT上のmantle sign,炎症所見,臨床症状の改善はみられるが,糖コルチコイドを中止すると再びmantle sign,炎症所見が出現している症例や他の動脈の部位にも瘤に一致して同様の所見が出現している点,手術後には消失する事から瘤からのなんらかのしみだしによる反応ないし粥状硬化巣の何らかの自己免疫説が有力であることが示唆される.
    2. 炎症所見のある水腎症にはまず糖コルチコイドを投与すべきである.
    3. 5cm以下でも手術の適応を検討すべきである.
  • 福地 貴彦, 後藤 明彦, 多罹尾 信, 市橋 正嘉, 角 泰廣, 阪本 研一, 橋本 昌紀
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2581-2585
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近8年間の当科における60歳以上の鼠径部ヘルニア146例について,他腹部手術既往を中心に検討を行った.外鼠径102部位,内鼠径25部位,大腿22部位,内外鼠径3部位で,ヘルニア手術を除く腹部手術既往は40例45部位にあった.創別では上腹部正中切開創9例,下腹部正中切開創18例(前立腺手術13例,膀胱手術2例,子宮手術3例),虫垂切除術創19例であった.これを対照と比較すると,ヘルニア群において泌尿器科領域の下腹部正中切開創手術の既往が有意に多く,泌尿器科手術後からヘルニア発症までの期間は平均32.0カ月で,他に比べ有意に短かった.また泌尿器科手術後に発症したヘルニア16部位中15部位が外鼠径ヘルニアであった.これらから手術操作による深鼠径輪のValvular actionの障害が考えられた.同様のヘルニア発症は,外科手術後にも起こりうると思われ,高齢者における下腹部手術にはより愛護的な操作を心がける必要があると思われた.
  • 岡田 富朗, 木下 尚弘, 菅田 汪
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2586-2590
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.主訴は左膝関節痛.単純X線写真, CTおよびMRIにて,左大腿骨に骨腫瘍性病変を認めた.骨シンチグラフィーにて,全身の他の骨にも集積像を認めた.このため悪性腫瘍の骨転移等を疑い,生検を施行したが,組織診では原発性上皮小体機能充進症に合併したbrown tumorが疑われた.血清Ca, ALPおよびPTH-intactの値は上昇していたが, PTH-rPは正常値であった.頸部の超音波およびCT検査を施行し,甲状腺右葉下部に腫瘤像を認め,サブトラクションシンチグラフィーにて同部に一致した集積像を認めた.これらの所見より原発性上皮小体機能元進症と診断し手術を施行,甲状腺右葉の下極後部に小指頭大の腫瘍性病変を認め,摘出した.組織診の結果はparathyroidadenomaであった.原発性上皮小体機能充進症に合併したbrown tumorと,高Ca血症を合併した骨悪性腫瘍の鑑別には, PTH-intactとPTH-rPの測定が有用であった.
  • 山中 幸二, 公文 正光, 荒木 京二郎, 小川 恭弘, 園部 宏
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2591-2594
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の女性.左乳房の腫瘤に気づき,その後自発痛,圧痛が生じた.左乳房のBD領域に約2cmの腫瘍が触知され,弾性硬で可動性あり,表面平滑であった.マンモグラフィーでは異常はみられず,超音波検査でも辺縁平滑で内部に均一であった.乳癌を疑ったが,検査上特に所見はみられず,線維腺腫の診断のもとに腫瘍を摘出した.摘出標本では腫瘍は表面平滑,弾性硬, 2.5×2.0×2.0cm大で,割面は黄白色であった.乳腺線維腺腫内に発生した非浸潤性乳管癌との病理診断が得られたため,追加手術として乳腺部分切除を行い,その後放射線療法を施行した.自験例は線維腺腫内に発生した乳癌としては,本邦で15例目と思われるので報告する.
  • 北見 明彦, 鈴木 隆, 鈴木 秀一, 堀 豪一
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2595-2598
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌の術後に画像診断上肺転移および癌性胸膜炎を呈することなく,縦隔リンパ節転移をきたした2例を経験した.症例1は54歳男性で直腸癌に対し低位前方切除を施行,症例2は68歳男性でS状結腸癌に対しS状結腸切除を施行した.症例1, 2とも術後のフォローアップCTにて傍腹部大動脈リンパ節の腫脹と上縦隔リンパ節の腫脹によるSVCの圧排所見を認めた.症例1は傍腹部大動脈および縦隔リンパ節の摘出を,症例2は縦隔リンパ節の摘出を行った.腹腔内および骨盤内臓器からのリンパの流れは胸管に合流するが,通常は胸管と前縦隔の間には直接の交通はないとされている.しかし胸管の弁機構の破綻により,胸管から縦隔リンパ節への逆行性の腫瘍細胞の流入がおこりうることは推測されている.本症例の縦隔リンパ節の転移機序は,後腹膜リンパ節から胸管を介した逆行性転移経路として矛盾しないものと思われた.
  • 高森 信三, 林 明宏, 永松 佳憲, 都志見 睦生, 小野 博典, 大塚 祥司
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2599-2602
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    79歳,女性,左乳癌にて定型的乳房切断術を受け,術後に胸部,胸骨部,腋窩部に各々60Gy, 計180Gyの電子線の照射を受けた.その約20年後に左胸壁潰瘍を生じた.潰瘍部は10.0×8.0cmの大きさで第3~5肋骨が各々5~7cm欠損しており,心膜が露出し,外側では胸膜が露出し小瘻孔があり胸膜腔と交通していた. débridement施行後創の清浄化を待って有茎大網にて欠損部を充填し分層植皮を行った.有茎大網は心膜,胸膜へは接着し瘻孔も閉鎖できたが,一部の血行不良部位へは接着しなかった.放射線性胸壁潰瘍に対して有茎大網移植は有用な方法ではあったが,組織の状態やdébridementの範囲を慎重に判定することが大事と思われた.
  • 三木 敏生, 高野 靖悟, 渡辺 善広, 河野 洋一, 常田 裕, 岩井 重富, 田中 隆
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2603-2606
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は, 16歳男性,左前胸部の腫大を主訴に来院し穿刺吸引にて一旦軽快したものの再び増大したため手術目的で入院した.術前検査で左大胸筋と小胸筋の間に存在する嚢胞状腫瘤を認めた.再発を防ぐため流入リンパ管を同定する目的で左上肢リンパ管造影及び99mTcコロイドシンチグラムを施行した.直接流入するリンパ管を描出することはできなかったが,傍胸骨リンパ管との交通を示唆する所見を得た.腫瘤摘出術を施行し破綻なく重量254g, 大きさ約15×13cmの緊満した波動性のある多房性の嚢状腫瘤を摘出した.病理検査にて,嚢状リンパ管腫の診断で悪性所見はなく,術後経過良好で約2年経過したが再発を認めていない.
  • 小野 公誉, 牧野 正人, 木村 修, 貝原 信明
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2607-2611
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌の腸管転移は必ずしも稀ではないが,十二指腸への転移は極めて稀である.今回われわれは,十二指腸腫瘍の発見が契機となって診断された肺癌症例を経験したので報告する.
    症例は79歳,男性で,食欲不振と全身倦怠感を主訴として受診,十二指腸早期癌と診断され当科に入院した.入院時の胸部X線像にて右下肺野に異常陰影が発見され,その後の精査にて縦隔リンパ節,脾臓,十二指腸および空腸転移を伴う肺低分化型腺癌と診断された.本症例は広範な遠隔転移を有する肺癌であるため手術適応はないと判断され,外来にて経過観察中である.今後,肺癌症例の増加に伴い,本例の様に転移性消化管腫瘍で発見される症例も増加すると考えられ,注意が必要である
  • 田中 勲, 増田 亮, 黒部 仁, 古畑 善章, 井上 雅晴, 武村 民子, 倉 禎二
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2612-2616
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道と皮膚に多発した顆粒細胞腫を経験した.症例は43歳の男性で,自覚症状はなく定期健康診断による食道透視で食道Ei領域に辺縁平滑な腫瘤影を指摘される.
    内視鏡検査で粘膜下腫瘍との診断を受け,切除目的で当院胸部外科に入院した.右開胸下,食道の筋層を切開し腫瘍の摘出を行い,同時に前頸部皮下結節も摘出した.食道の腫瘍は1.2×1.0×0.5cm, 頸部の腫瘍は1.0×0.5×0.4cm大で,組織像は共にやや腫大した紡錘状の細胞がみられ,胞体内には好酸性顆粒を有し, PAS陽性で組織学的な悪性所見は認められなかった.免疫組織染色でS-100蛋白, NSE陽性で,平滑筋Actin, Vimentin陰性であった.術後15カ月たった現在再発の徴なく,食道,皮膚に多発した顆粒細胞腫と考えられた.従来考えられているよりは,顆粒細胞腫は多発する事が多いと思われ,全身の充分な検索が必要と思われた.
  • 河原 秀次郎, 石川 博敏, 大野 誠, 朱 永真, 河原 弥生, 平井 勝也, 青木 照明
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2617-2620
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性.平成2年より肝機能障害のため当院で外来経過観察していたが,平成6年10月中旬より全身倦怠感,食欲不振, 3カ月間で7kgの体重減少が認められたため,精査・加療目的で入院した. CTおよび超音波検査では肝両葉に多発した腫瘍を認めたが,消化管の精査では食道,胃,大腸には病変は認められなかった. 12月になり咽頭痛が出現し,嚥下障害も伴うようになった. MRIで食道入口部近傍に直径約3cmの腫瘍を認め,内視鏡検査でも腫瘍を確認し,生検では扁平上皮癌であった.食道癌に対して放射線療法を勧めたが,本人の同意は得られなかった.狭窄症状が進行し唾液すら飲み込むことができなくなったため,平成7年2月8日Zステントを挿入した.その後全粥~常食が摂取可能となったが, Zステント挿入1カ月後肝不全で永眠された.予後が期待できない症例に対するQOLの向上にZステントが有用であった.
  • 前川 博, 卜部 元道, 溝渕 昇, 松村 理史, 榊原 宣
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2621-2624
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.心窩部痛を主訴に近医受診.胃内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍と診断され,精査,治療目的で当科入院.超音波内視鏡検査,および腹部CT検査で胃嚢胞と診断し,内視鏡下に嚢胞を穿刺した.穿刺液の検索ではAmylase 37,980IU/l, CA19-9 41,392U/ml, Elastase. 1120,000ng/dlを示し,また,細胞診の結果はClass IIであり,異所性膵に起因したと考えられる良性の胃嚢胞と診断した.開放ドレナージ目的で内視鏡的嚢胞切開術を施行した.術後の内視鏡検査と腹部CT検査で嚢胞は縮小し,症状も消失したが, 4カ月後の内視鏡検査と腹部CT検査で再び嚢胞の増大が認められ,内視鏡的嚢胞切除術を施行した.その後, 1年を経過したが症状の再現,ならびに嚢胞の増大をみていない.胃嚢胞の症状軽減に対して内視鏡的治療は有用であったと考えられた1例を報告した.
  • 湯浅 洋司, 朝田 道子, 稲葉 淳一, 伴 慎一
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2625-2627
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳女性.主訴は腹部膨満.下腹部に直径約20cmの腫瘤が触知され,腹部単純写真では下腹部全体の透過性低下が認められた.腹部CTで卵巣腫瘍が疑われ,手術が施行された.しかし,卵巣,子宮ともに正常であり,腫瘍は著明な外向性発育を呈した胃粘膜下腫瘍であった.胃部分切除術により摘除された腫瘍は5kgと巨大で,病理学的に平滑筋肉腫と診断された.本症例は胃外型に発育したために消化器症状に乏しかったことと,元来肥満があり腹部膨満が症状としてとらえられなかったことから発見が遅れ,巨大になるまで放置された.また,胃外型に発育したことと,巨大であったことから原発部位が確定できなかった.
  • 楠山 明, 梨本 篤, 若林 真理, 土屋 嘉昭, 筒井 光広, 田中 乙雄, 佐々木 壽英
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2628-2632
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃全摘術後の吻合部再発に対して左開胸開腹アプローチにて再切除が可能であったまれな2症例を報告する.症例1は初回切除時に肉眼的・組織学的に切除断端陰性であったが, 4年4カ月後より嚥下困難が出現し,局所再発と診断されて下部食道空腸切除術を施行した.再手術から1年8カ月後再度吻合部に局所再発し,放射線療法と化学療法を施行するも,再切除から2年7カ月後,初回切除から7年後に癌性胸膜炎,頸椎転移により死亡した.症例2は初回切除時に肉眼的に切除断端陰性と判定したが,表層進展のため組織学的には陽性であった.術後同部位に放射線療法を施行した.しかし嚥下困難が出現し吻合部再燃と診断され, 1年8カ月後に下部食道空腸切除術を施行した.再切除後5年7カ月経った現在,再発徴候はなく外来通院中である.
    胃全摘後吻合部再発に対して,他臓器転移がなく,患者のQ.O.L. の改善が見込まれるならば積極的な再手術が望まれる.
  • 西川 勝則, 羽生 信義, 成瀬 勝, 大平 洋一, 水崎 馨, 青木 洋, 二村 浩史, 鈴木 裕, 中山 一彦, 時田 威, 梁井 真一 ...
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2633-2636
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性.腸閉塞の診断で入院し,イレウス管にて吸引療法を施行した.一時的に症状は改善したが,イレウス管挿入後4日目に左上腹部に痔痛を訴え同部に腫瘤を触知した.緊急ECHO, CT検査を施行したところ,イレウス管留置部の腸重積と診断し緊急手術を施行した. Treitz靱帯より約70cmの空腸が約30cmにわたり肛門側空腸へ腸重積を起こしていた.重積を解除し,腸管壊死部の腸切除を施行した.また同時に横行結腸の脾彎曲部に癌が認められ,結腸部分切除を施行したイレウス管が原因と考えられた腸重積症の1例を経験したので報告する.
  • 加藤 一哉, 松田 年, 青木 裕之, 葛西 眞一, 水戸 廸郎, 小林 達男
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2637-2640
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜脂肪織炎 (Mesenteric panniculitis) は,比較的まれな疾病である.今回われわれは,急性汎発性腹膜炎にて発症した膿瘍形成を伴った小腸の腸間膜脂肪織炎を経験したので報告する.
    症例は65歳,男性で主訴は下腹部痛,理学的所見では左上腹部に5cm×4cmの弾性軟の腫瘤を触知し,かつ腹部全体に筋性防御およびBlumberg's signを認めた.腹部エコー検査, CT検査にてcystic componentを形成したlow density massが左上腹部に認められた.血液検査所見では,著明な炎症反応を示したため緊急手術を施行した.手術所見では小腸の腸問膜脂肪織炎が進行し,膿瘍を形成しその一部が穿孔したための急性汎発性腹膜炎と診断され,腸間膜膿瘍とともに空腸の一部を切除した.急性汎発性腹膜炎にて発症した非常にまれな,小腸の腸間膜脂肪織炎の1症例を報告した.
  • 田中 穣, 高橋 宏明, 矢嶋 幸浩, 岡村 一則, 小坂 篤, 水本 龍二
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2641-2645
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Recklimghausen病に合併した多発性小腸平滑筋腫の1例を報告する.
    症例は49歳の女性,下血を主訴に入院した.患者は幼児期よりRecklinghausen病と診断されていた.腹部超音波検査およびCTで左上腹部に腫瘤を認め,上腸間膜動脈造影にて空腸動脈の支配領域に腫瘍濃染像がみられた.小腸腫瘍からの出血の診断で緊急手術を施行した.手術所見では空腸および回腸に壁外性に発育した5個の腫瘍を認め,最も大きい5cm大の腫瘍は空腸とともに切除し,他の腫瘍は腫瘍のみを切除した.腫瘍は組織学的に平滑筋腫と診断された.
    Recklinghausen病における消化管腫瘍の合併は神経原性腫瘍の報告が多いが,小腸平滑筋腫の合併は稀である.本例を含む29例の本邦報告例で,最も多かった症状は消化管出血であった. Rccklinghausen病に消化管出血を合併した場合は小腸腫瘍の可能性を考慮し,また多発性にも留意することが重要である.
  • 金田 好和, 西 健太郎, 宮国 宣也, 守田 信義, 江里 健輔
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2646-2649
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    87歳の男性が腹痛を主訴に当院を受診した.理学的所見で汎発性腹膜炎を疑った.腹部単純X線検査で両側横隔膜下にfree airを認め,また小腸の拡張と鏡面形成を伴っていた.消化管穿孔と診断し緊急手術を施行した.術中所見では小腸から上行結腸までが虚血に陥っており,トライツ靱帯より約3m肛門側の小腸が腸間膜により絞扼され,この部位が穿孔していた.また,腹膜に癌性腹膜播種を思わせる病巣を認めた.トライツ靱帯約1.5m肛門側の小腸から上行結腸までを切除した.
    病理学的検索では癌性腹膜播種および絞扼による虚血で生じたと想定される穿孔が小腸に認められた.また穿孔部の口側に小腸癌が存在し,免疫染色でCA19-9産生小腸癌と診断された.
  • 半田 齊, 森田 眞照, 岡島 邦雄, 〓 壽男, 小林 正直
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2650-2654
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結腸の腹膜垂に炎症が発生し,これが臨床上問題となることは非常に稀である.今回われわれは, S状結腸の腹膜垂炎の1例を経験し,本邦報告28例と合わせてその特徴を考察した.症例は65歳の女性で,食欲不振, 38°C近い発熱に続いて,左下腹部痛,下痢を認めた.保存的治療で改善せず,腹膜刺激症状が出現したため開腹したところ, S状結腸に腫大した暗赤色の腹膜垂とS状結腸漿膜面の発赤を認めた.憩室の存在も否定できず,病変部を含めS状結腸の部分切除を行った.組織学的検索では,腹膜垂には,うっ血,出血,壊死,炎症細胞浸潤の所見があり,結腸壁の炎症の程度は腹膜垂と比べると軽度で,腹膜垂炎と診断した.
    腹膜垂炎は全結腸に起こりうるため腹痛の部位は一定せず,術前診断は困難で,自験例を含めて本邦で術前に腹膜垂炎と診断できた報告はない.急性腹症診断困難例には本症を念頭におくことが必要と考えられる.
  • 遠近 直成, 公文 正光, 荒木 京二郎
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2655-2658
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Gardner症候群の1例を報告する.患者は32歳の男性で,主訴は特になく,父親が大腸腺腫症にて手術を受けている.大腸の検査を当院で行ったところ,注腸造影および大腸内視鏡検査にて,多数のポリープと下行結腸下端に約5cmの絨毛状腫瘍を認めた.体表に軟部腫瘍を認めず,骨レントゲン写真にて骨腫も認めず,家族性大腸腺腫症と診断した.手術は結腸亜全摘,上行結腸・直腸吻合術を施行した.また,小腸間膜に腸管壁に強固に癒着した直径3cm大の腫瘤が存在したので,小腸壁とともに合併切除した.病理組織学的に下行結腸の腫瘍は,腺管絨毛腺腫内腺癌 (tub1, m, n0) で,他のポリープは腺管腺腫であった.小腸間膜の病変はデスモイド腫瘍であった.術後は合併症もなく,便通は術後3週目に1日2~3回で,固形便となった.術後28日目に退院, 50日目に再入院し,残存大腸ポリープのうち5mm以上のものを全て摘出した.
  • 目黒 英二, 小芝 章剛, 山本 政秀, 葛西 敏史, 玉澤 佳之, 貝塚 広史, 金森 裕
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2659-2663
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    皮下気腫を伴った結腸癌はわれわれが検索し得た限り9例にすぎず,上行結腸癌においては報告が見られない.われわれは上行結腸癌が腹壁へ浸潤し皮下気腫を来たした症例を経験したので報告する.症例は75歳,男性で嘔気と熱発を主訴に来院.腹部単純X線検査にて,遊離ガス像はないものの右下腹部に皮下気腫を認めた. CT検査において上行結腸に巨大な腫瘍と皮下気腫の形成を認め,腫瘍の腹壁への直接浸潤が強く疑われた.注腸透視では上行結腸のほぼ中央に,完全閉塞に近い強い狭窄像を認めた.大腸内視鏡検査でも同様の所見を得,組織生検では高分化腺癌であった.入院後25日目に手術を施行したが,患者の全身状態が悪く,腫瘍が腹壁へ強固に浸潤していたため切除を断念し回腸一横行結腸吻合術 (by-pass) のみを行った.患者の食欲は改善し皮下気腫および腹壁膿瘍は抗生剤にて消失した.この様な皮下気腫形成は消化管穿通の診断に重要であると思われた.
  • 国府 育央, 福田 一郎, 岸本 慎一, 三宅 泰裕
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2664-2667
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌の多くは血便,下血などで発症するが,今回,直腸膣瘻で見いだされるというきわめてまれな症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.主訴は,帯下多量.平成3年1月末より帯下が多量となり近医(婦人科)を受診.内診にて直腸膣瘻を指摘され当院紹介となった.直腸診にて肛門縁より2cmに限局潰瘍型腫瘤を触知,潰瘍底は膣へ穿通していた. CT検査で肝両葉に多発性に転移を認めた. 2月22日に直腸切断術,子宮・膣後壁合併切除術,肝動脈tubingを行った.病理組織学的所見は中分化から高分化腺癌であった肝動注は, 5-FU (243, 486mg) を持続で行ったが,ほとんど効果なく,肺転移,水腎症をきたし12月27日原病死した.
    自験例は,直腸膣瘻という直腸側ではなく膣側の症状で見いだされるというまれな経過をたどった.直腸膣瘻を有する直腸癌は進行癌であることが多く自験例も肝転移を有し動注療法にも反応しなかった.
  • 野村 昌哉, 中尾 量保, 仲原 正明, 荻野 信夫, 前田 克昭, 弓場 健義, 宮崎 知, 江本 節, 黒住 和史, 榊原 哲夫, 辻本 ...
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2668-2672
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Budd-Chiari症候群の1例に対して,部分体外循環を用いた直視下根治手術前後の肝血行動態を,超音波Doppler法により観察し得たので報告する.症例は46歳,女性.難治性腹水と腹壁静脈怒張を認めた.超音波検査,血管造影にて肝静脈流出部の閉塞と肝部下大静脈の高度狭窄を認めた.部分体外循環下に上方到達法による直視下閉塞部除去,下大静脈パッチ縫着術を施行した.超音波Doppler法により測定した血流量は,術前後で肝静脈は0.73l/min. から1.75l/min., 下大静脈は1.59l/min. から2.38l/min., 門脈本幹は0.70l/min. から1.26l/min. と術後に増加し,肝静脈と下大静脈の血流波形は定常流から拍動流に変化した.
    本症例において超音波Doppler検査は,術前後の血行動態の把握,治療効果判定に有用であった.
  • 松本 勲, 平野 誠, 斉藤 裕, 村上 望, 小泉 博志, 持木 大, 橘川 弘勝
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2673-2676
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.腸閉塞にて入院し,症状軽快後に突然原因不明の汎発性腹膜炎を発症し,緊急手術を施行した.開腹すると腹腔内に胆汁性腹水を認めた.胆嚢には周囲との癒着や索状物などは認めなかったが胆嚢体部に径0.3cmのピンホール状の穿孔部を認めた.このため胆嚢摘除および胆管にTチューブ挿入を行った.胆道造影では通過障害をおこす原因は認められず,胆嚢内腔も結石や胆砂および腫瘍などは認めず,胆汁は清澄であった.病理組織学的にも急性および慢性の炎症性変化がなく,また,胆嚢小動脈に血栓形成も認めなかった.胆汁細菌培養も陰性であった.穿孔の原因は不明で,特発性胆嚢穿孔と診断された.胆嚢穿孔のうち特発性胆嚢穿孔は極めて稀であり,本邦報告例は14例である.腸閉塞との関連は明らかではないが,腸閉塞による脱水状態などが起因となった胆嚢体部の微小動脈の虚血が原因である可能性が考えられた.
  • 御江 慎一郎, 神殿 哲, 大塚 一成, 牛島 賢一, 菊池 昌弘
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2677-2680
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は脳梗塞の既往がある61歳の女性で,突然の腹痛を主訴に来院した.来院時,腹膜炎症状を呈し,腹部US, CT検査にて腹水貯留を認めた.確定診断は得られなかったが,急性汎発性腹膜炎の診断にて,緊急試験開腹手術を施行した.術中,胆嚢底部の漿膜面より胆汁の漏出を認めたが,明らかな穿孔は認めなかった.胆嚢摘出術および腹腔内ドレナージ術を施行した.術中採取した胆嚢内胆汁,及び腹水の細菌培養の結果は陰性で,胆汁細胞診,及び腹水細胞診の結果は, Class Iであった.摘出標本では,胆嚢内に結石を認めず,底部に直径1cm大の粘膜,筋層の打ち抜き状欠損部を認めた.漿膜面は脆弱であったが,明らかな穿孔は認めず,その周囲の静脈内に血栓を認めた.患者は,術後6日目に心筋梗塞を併発し,死亡した.本症例は,虚血性病変が関与したと思われる胆嚢の部分梗塞による特発性胆嚢穿孔と考えられた.
  • 佐々木 章公, 大野 靖彦, 繁光 薫, 石井 辰明, 須崎 紀一, 松尾 嘉禮
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2681-2685
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性気腫性胆嚢炎はガス産生菌による壊疽性炎症を生じ,腹部画像検査で胆嚢内や胆嚢壁周囲に異常ガス像を呈する比較的稀な疾患である.今回われわれは,本症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術で治癒を得た症例を経験した.症例は66歳男性.右季肋部痛を主訴に来院し,腹部単純X線検査および腹部CT検査で胆嚢周囲のガス像と胆嚢内腔にガス鏡面像を認めた.以上より急性気腫性胆嚢炎と診断し緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢は大網に覆われ赤褐色に腫大するも,穿孔なく膿性腹水は認めなかった.術中に経皮的に胆嚢穿刺し胆汁を吸引し, 5本目のtrocarを挿入した.この操作は,術野の汚染防止と視野の確保に有用であった.胆汁培養によりClostridium属が検出されたが,合併症なく経過し術後8日目に退院した.今後は急性気腫性胆嚢炎に対する外科治療として,腹腔鏡下胆嚢摘出術も施行可能であり患者のQOLに貢献すると考えられた.
  • 藤野 泰宏, 長田 裕, 荻野 和功, 吉川 恵造, 斉藤 正樹, 黒田 勝哉
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2686-2689
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.原因不明の胆汁うっ滞型肝炎にて発症し,消長性黄疸をくり返した.既往歴は,胆石症で8年前に胆摘術.逆行性胆管造影で,遺残胆嚢管合流部から総肝管にかけて壁の不整狭窄像を認め,経口胆管鏡では粘膜面の軽度発赤がみられた.断端神経腫または胆管良性腫瘍との診断のもと,開腹術施行.遺残胆嚢管合流部から総肝管に直径2.0×1.1cmの弾性硬な腫瘤を認め,その部位を含めて胆管切除した.術中迅速診断で断端神経腫であったため,総肝管空腸吻合にて胆道再建を施行した.原因不明の胆汁うっ滞型肝炎にて発症し,消長性の黄疸を繰り返した胆管断端神経腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 宇野 雄祐, 長利 あゆみ, 大沢 武, 土田 敬, 龍沢 泰彦, 伴登 宏行, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2690-2694
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    陶器様胆嚢に合併した多発性胆嚢癌の1例を経験した.症例は62歳,女性.右季肋部痛を主訴に来院し,同部位に圧痛を認めた.血液生化学検査ではCA19-9が120U/mlと高値であった.腹部超音波検査, CT検査, DIC検査で陶器様胆嚢,および,胆石,腫瘍性病変の合併と診断され,胆嚢摘出術,総胆管切除, 2群リンパ節郭清を施行した.摘出した胆嚢は大きさ17×8cmで,胆嚢壁は体部から底部にかけて硬く肥厚しており,頸部に1.5cmの結石が陥頓していた.底部に1.7×0.9cmの結節型隆起,胆嚢管に0.5×0.5cmの乳頭型隆起を認め,いずれも深達度mの高分化型腺癌であった.胆嚢壁は黄色調の肉芽組織であり,石灰化がみられた.
    陶器様胆嚢は, 1%前後の頻度で発見されるが,その10~20%に胆嚢癌を合併するので,症状の有無にかかわらず,外科的切除が望ましいと考えられる.陶器様胆嚢に合併した多発性胆嚢癌は,本邦では自験例が初例であり,貴重な症例と考え報告した.
  • 文 由美, 轟 健, 川本 徹, 吉田 貞夫, 小池 直人, 福永 潔, 近藤 匡, 物井 久, 湯沢 賢治, 大塚 雅昭, 深尾 立
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2695-2699
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    粘膜内に限局した肝門部胆管癌の根治切除例を経験した.症例は61歳の女性で,右季肋部痛を主訴に受診し,血液生化学検査では肝胆道系酵素およびビリルビン値の軽度の上昇を認める程度で,無黄疸であった.腹部超音波検査で肝内胆管~総肝管の拡張と内腔の隆起像を認め,さらにPTCや造影CT等の検査を施行した.左右肝管合流部に主病巣をもつ多発性乳頭型胆管癌で,肝門部胆管切除と尾状葉合併切除で根治が可能であると診断した.組織学的には乳頭型腺癌で,深達度はmであった.早期肝門部胆管癌の報告例はわずかに3例のみで,きわめて稀なものと考えられる.いずれの症例も自覚症状に乏しく,無黄疸で,腹部超音波検査が診断に有用であった.乳頭型胆管癌は多発例が多く,肝内外胆管の精緻な術前診断が根治治療に必須である.
  • 岩井 和浩, 下沢 英二, 奥芝 俊一, 道家 充, 高橋 利幸, 奥芝 知郎, 大野 耕一, 本原 敏司, 加藤 紘之
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2700-2704
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵腺扁平上皮癌の2例を経験したので文献的考察を加え報告した.症例1は51歳の男性で腹痛,黄疸を主訴に入院,膵頭部腫瘍の診断にて門脈合併切除を伴う膵全摘術を施行した.症例2は77歳の男性で体重減少,胸部不快感を主訴に入院,膵体部腫瘍の診断にて門脈合併切除を伴う膵体尾部切除を施行した.術前再像診断では症例2に造影CT上腫瘍周囲のenhancementが認められた点が特徴的であった.術後の組織学的検査にて,はじめて膵扁上皮癌と診断されたが, 2例とも術後9カ月以内に癌死した.膵扁平上皮癌はまれな疾患であり,通常型膵癌にくらべ予後不良である.膵腺平上皮癌の術前診断は困難であるが,画像診断などにて本疾患が疑われたらできるだけ速やかな治療開始が望まれる.また,本疾患を含め,膵癌の早期発見が切望される.
  • 駒田 尚直, 今村 敦, 奥野 雅史, 永濱 隆, 土屋 英人, 權 雅憲, 上辻 章二, 上山 泰男, 弘田 登志也, 是枝 ちづ
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2705-2709
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前の画像診断にて肝細胞癌と診断され,術中迅速病理検査にて副脾と診断された異所性副脾の1例を経験したので報告する.症例は56歳男性.既往歴として21歳時に交通事故による外傷性脾破裂にて摘脾術を受けている. 45歳頃より肝機能障害を指摘され, 55歳時にHCV抗体陽性のためインターフェロン療法を受けた.その後の外来通院中に血清α-fetoproteinの上昇があり,腹部超音波検査にて肝S6のSOLを指摘され,血管造影にて肝S6下縁に2.0×3.5cmの血管新生を伴う腫瘍濃染像を確認し,同部にLipiodolの集積を認めるため肝細胞癌と診断された.開腹時,腫瘍は肝S6下面に接する後腹膜上の腫瘍であるが,肝S6動脈枝より栄養動脈を受けており,術中迅速病理検査にて脾臓組織が確認された.切除術後のCTにてリピオドールの集積は消失し,血清α-fetoproteinも低下した. Lipiodolの集積を伴う異所性副脾として文献的考察を加えた.
  • 竹政 伊知朗, 玉木 康博, 吉川 宣輝, 月川 真, 高羽 津, 竹田 雅司
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2710-2715
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は, 63歳男性で,血尿を主訴とし,膀胱悪性腫瘍に対する手術目的にて入院した.術前の腹部CT,腹部超音波検査にて脾に孤立性病変を認め,脾原発性腫瘍あるいは,膀胱腫瘍を含む悪性腫瘍の脾転移の両方の可能性を考え,膀胱腫瘍手術時に診断と治療をかねて脾摘術を施行した.脾腫は認めず,腫瘍は脾に限局していた.病理組織学的には,非Hodgkin悪性リンパ腫,末梢性T細胞リンパ腫のうちいわゆるLennertリンパ腫の像であった.既存のLSG分類, WFでは分類困難であり,脾原発の悪性リンパ腫としては本邦ではこれまでに報告例のない極めて稀な組織型であった.患者は,術後5カ月の現在,明らかな転移,再発を認めず健在だが,膀胱悪性腫瘍も合併していることより,今後,術後化学療法を行う予定である.
  • 竹之内 靖, 小田 高司, 神田 裕, 池山 隆, 小林 尚美, 山本 竜義, 坂部 知代, 神谷 里明, 横井 俊平, 新実 紀二, 鈴木 ...
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2716-2720
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    連続携行式腹膜透析中に消化管疾患に起因する腹膜炎を発症した2症例を経験した.
    症例1は48歳男性で,腹膜透析導入9カ月後に上腹部痛で発症した.透析排液の混濁が見られ,急性虫垂炎,汎発性腹膜炎と診断し,虫垂切除術,腹腔内洗浄を行った.
    症例2は63歳男性で,.腹膜透析導入16カ月後に腹痛,下血で発症した.大腸内視鏡検査で結腸脾彎曲部に縦走潰瘍を認め,虚血性腸炎と診断した.臨床所見,画像診断からは穿孔の確証は得られず,保存的治療を行ったが,発症11日目にショックとなり死亡した.剖検の結果,虚血性腸炎穿孔と診断された.
    腹膜透析患者では透析液で腹腔内洗浄を行っている為,腹膜炎の重症度と腹部理学所見が相関せず,手術適応を決めるのが困難な場合がある.腹膜透析患者の腹膜炎では,鑑別診断上,常に手術適応となる疾患の存在を考慮し,手術時期を逸しないことが重要である.
  • 町支 秀樹, 須崎 真, 武藤 利茂, 梅田 一清
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2721-2725
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜脂肪肉腫は比較的稀な疾患で,その予後は組織型と相関すると言われ,高分化型や粘液型の予後は良好である.今回,粘液型後腹膜脂肪肉腫の1例を経験し,予後の指標として核DNA量の解析を行った.症例は64歳,男性で心窩部痛,嘔吐を主訴に来院.左上腹部に腫瘤を触知し入院.腹部超音波検査,腹部CT検査,腹部血管造影検査にて後腹膜脂肪肉腫を疑い,開腹術を施行.腫瘍は被膜に被われ,周囲と強い癒着なく比較的容易に完全摘出し得た.摘出標本では径17×11×8cm, 1,150gで組織学的には粘液型で核DNA量の解析ではDiploidでS期細胞比率は10%と低値であった.術後経過は良好で,術後31カ月目の現在,再発の徴なく外来通院中である.自験例では腫瘍の完全摘出ができ,組織型や核DNA量の解析から良好な予後が期待されるが,術後10年以上を経て再発する例もあるので今後も慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 横井 健二, 川上 和之, 川浦 幸光
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2726-2730
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸間膜リンパ管腫破裂による急性汎発性腹膜炎にて腫瘍切除術を施行後, 3年目に再発を来した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は72歳,男性.上記術後3年目に腹部膨満感が出現し,再発が疑われ当科入院となった.腹部超音波検査,腹部CT検査にて右側腹部に辺縁不明瞭な多房性嚢胞性腫瘤を認めた.上腸間膜動脈造影で腫瘤部に一致して無血管領域がみられた.血管新生像, tumor stainはなかった.開腹すると腫瘤は回腸から右結腸間膜の根部にあり,内部には淡黄色漿液性の液体が貯留し緊満していた.腫瘤のみを切除することは不可能と判断し,腫瘤および回腸を約60cm, 上行結腸を約20cm合併切除した.病理組織学的検査では腫瘍内部にスポンジ様の網目構造がみられ,組織学的に海綿状リンパ管腫と診断された.
  • 植松 正久, 岡田 昌義, 安宅 啓二, 杉本 貴樹, 井上 享三, 畠山 理, 伊舎堂 用大
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2731-2735
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小伏在静脈に発生したvenous aneurysm (v. aneurysm) を経験した.症例は76歳女性.左膝窩部の柔らかい腫瘤を主訴として来院した.超音波および血管造影検査でv. aneurysmと診断され,瘤切除および血行再建術が施行された.本症は肺梗塞症の誘因となることから,積極的に手術を行う必要があると考えている.また,本症例は末梢領域に発生した静脈瘤であったが,血行再建術を行い良好な結果を得た.
  • 斉藤 光和, 坂本 隆, 岸本 浩史, 笹原 孝太郎, 笠木 徳三, 新井 英樹, 山田 明, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2736-2739
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    回腸inflammatory fibroid polyp (以下IFP) を併存したRichterヘルニアの1例を経験した.症例は75歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に入院.開腹手術の既往歴を有し,腹部単純X線写真にて小腸鏡面像を認め,両側鼠径部に腫瘤,圧痛を認めなかったため,腸閉塞と診断しイレウス管による減圧療法を行った.イレウス管造影にて,嵌頓したRichter型左大腿ヘルニアと診断した.手術は鼠径法にて行い,回腸末端より約60cm口側の回腸がRichter型ヘルニアとなっており,約45cm口側に小指頭大のポリープを認めた.嵌頓腸管およびポリープを含めた小腸を約30cm切除,端端吻合を行い腹腔内に還納しMcVay手術を施行した.ポリープは組織学的にIFPと診断した.本例においてIFPとRichterヘルニアの因果関係は特に認められなかった.回腸IFPとRichterヘルニアの併存例を経験したので報告した.
  • 竹重 俊幸, 遠藤 豪一, 塩 豊, 浅野 宏, 佐藤 洋一, 阿部 俊文, 浜田 修三, 千葉 惇, 佐々木 信博
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2740-2743
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    同時性に認められた食道,胃, S状結腸の早期癌を根治的に切除しえた症例を経験したので報告する.症例は53歳の男性で,検診にて便潜血を指摘され,近医受診.大腸透視,大腸内視鏡にて, S状結腸癌と診断された.術前検査として他病変の有無を精査した結果,食道癌および胃癌の重複が明らかになり,手術目的で当科紹介された.手術は,腹部正中切開に左開胸を付加して,下部食道および胃全摘術施行したのち, S状結腸切除術施行した.組織学的には,各腫瘍ともsm, n0の早期癌であり,発生部位や発生時期などから同時性3重複癌と考えられた.術後経過は良好であり,第46病日退院した.
  • 齊藤 英一, 溝渕 昇, 渡辺 英章, 榊原 宣
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2744-2748
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性. 1991年7月早期胃癌で幽門側胃切除術を施行. 1993年2月CEA 5.3ng/mlの上昇を認め当科へ入院.腹部CT検査で肝右葉に5.0cm大の腫瘤を認め,超音波ガイド下肝生検で肝細胞癌と診断.胸部X線検査で右中肺野に3.5cm大の異常陰影を認め原発性肺癌と診断. 4月8日肝右葉後区域切除肝癌および右肺上葉部分切除を施行. 3癌の病理組織学的所見は互いに異なり,免疫染色で肺癌組織のみCEA陽性であった.よって異時性の三重複癌と診断した.本邦では自験例を含め28例の胃癌を第1癌とする三重複癌切除の報告があるが,性差では男性,重複臓器としては消化管が多い.第2, 3癌の発見の契機は,ほとんどが第1癌の術前検査であった.重複癌では遺伝的要素が検討されているが,自験例に癌家族歴は認められない.抗p53抗体による免疫染色で, 3癌ともにp53蛋白の過剰発現を認めた.第1癌術後化学療法を施行しておらず,免疫能の低下は認められなかった.
  • 松下 耕太郎, 北村 宗生, 葦原 作治
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2749-2752
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性腹症として発症する結核性腸間膜リンパ節炎は近年では稀であり,その診断に苦慮することがある.われわれは,急性虫垂炎との鑑別が困難で,開腹・生検により結核性腸管膜リンパ節炎と診断された1例を経験したので報告する.
    症例は28歳女性で,主訴は発熱と右下腹部痛であった.腹部理学的所見より急性虫垂炎を疑ったが,血中白血球数が6,400/mm3であったため,入院経過観察とした.発熱と腹痛が持続するため,入院2日目に手術を施行した.腹水を少量認め,回盲部腸間膜に鶏卵大から小指頭大のリンパ節の腫大を認めた.生検より結核性腸間膜リンパ節炎と診断された.
    腸間膜リンパ節炎の起炎菌はエルシニアが多く,結核菌は稀だと言われている.結核の化学療法が確立された今日では,いかに早期に結核性だと診断し,治療を開始するかが問題であると考えられる.
  • 西村 重彦, 林 宏輔, 河村 哲雄, 辻村 崇浩, 石川 哲郎, 曽和 融生
    1995 年 56 巻 12 号 p. 2753-2756
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総肝動脈周囲リンパ節転移にて手術を施行した原発不明腺癌の1例を経験した.患者は53歳の男性で,腹部膨満感を主訴に来院し各種画像診断にて腹腔動脈周囲に6.0×3.0cm大の孤立性腫瘤を指摘された.摘出術が施行され,病理組織学的に腺癌のリンパ節転移と診断されたが,術前,術後精査を通じて原発巣は確認されなかった.術後5-FU,マイトマイシンCにて化学療法を, OK-432にて免疫療法を施行し術後10年を経て生存中で,原発巣は未だ不明であるが,新たな転移巣の出現も認めていない.
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