日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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56 巻, 10 号
選択された号の論文の43件中1~43を表示しています
  • 長町 幸雄, 窪田 正幸, 野崎 外茂次, 小川 富雄, 藤本 隆夫, 中嶋 昭, 雨宮 邦彦, 春日井 尚, 木村 泰三, 大木 隆生, ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 1999-2012
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 浩一
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2013-2018
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道癌切除術後の高ビリルビン血症102症例を,術後の最高総ビリルビン値(T-Bil)により,I群: T-Bil<2.0mg/dl,II群:2.0〓T-Bil<3.5mg/dl, III群:T-Bil〓3,5mg/dlに分け,その発生要因を検討した.T-Bilが2.0mg/dl以上の高ビリルビン血症を示した症例は49.1%と高率であった.糖尿病の併存,術前中心静脈栄養,術前放射線療法の有無,術前後の臨床検査成績,術中の輸血量,麻酔剤の種類および術後合併症は各群で差が認められなかった.これに対しIII群では術前制癌剤投与が90.6%と有意に高率であった.またII, III群では手術時間が有意に長く, III群では出血量が有意に多かった.さらにIII群では右開胸が有意に多く, II, III群では非開胸が有意に少なく, II, III群ではリンパ節郭清の範囲も2領域以上が有意に多かった.以上より食道癌切除術後の高ビリルビン血症の発生には,手術侵襲の大きさが強く関与しており,術前制癌剤投与も危険因子となることが示唆された.
  • 田代 亜彦, 山森 秀夫, 高木 一也, 森嶋 友一, 熊野 裕司, 大坪 義尚, 杉浦 敏之, 林 永規, 古川 勝規, 中島 伸之
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2019-2024
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近10年間の当科における食道癌外科治療の変遷と治療成績を検討した.
    1981年から1991年までの胸部食道癌切除症例81例を前半28例,後半53例に分けた.前半には食道切除再建に2領域郭清を行い術前に30Gyの照射を施行した.後半には頸部リンパ節を含む3領域リンパ節郭清を導入し, Carboplatin (CBDCA), 5FU, Pe-pleomycin (Pep) による術前化学療法と,術後同一の化学療法に45Gyの照射を併用した.後期症例の56.8%に3領域郭清を, 51.0%に合併療法を施行した,直死,在院死は後期で増加しなかった.吻合術式の変更により縫合不全は39.3%から9.4%に減少した.合併療法の副作用は咽頭痛,白血球減少が主なものできわめて軽度であった.全切除例の5生率は前期の20.9%,後期32.2%,治癒切除例では前期25.0%,後期48.4%であった.以上Cisplatin (CDDP) を用いないわれわれのプロトコロールにより,少ない副作用で合併療法を完遂出来,満足出来る治療成績を得た.
  • 佐藤 宏彦, 大塩 猛人, 松村 長生, 石橋 広樹
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2025-2030
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    昭和49年から平成6年の間に当院で経験した乳児肥厚性幽門狭窄症110手術例に臨床的検討を加え報告する.男児87例,女児23例で男女比は3.8であった.出生順位では第1子,第2子に多く見られた.生下時体重では男女とも3,001~3,500gにピークがあり,低出生体重児は5例のみであった.嘔吐発症日齢は成熟児で21日,低出生体重児で28日であった.平均幽門部腫瘤は長径23.4mm,短径16.7mm,筋層厚4.7mm,術後平均嘔吐回数は4.5回,嘔吐日数は2.4日,平均入院総日数は16.4日,死亡例は認められなかった.また入院時Cl値と入院時 Na, K, pH, BE,値には相関関係が認められた.さらに術前病悩期間の短縮が軽症化の要因であり,最近では軽症例が増加していると思われた.また重症例では術前管理において水分,電解質の他に輪血や血漿製剤投与の必要性が示唆された.
  • 梅野 寿実, 田中 伸之介, 冨田 昌良, 光石 和夫, 大塚 吉郎, 池田 靖洋, 深村 俊和
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2031-2034
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌症例において,リンパ流とリンパ節転移は一致するかの問題について検討した.リンパ流の検討は,微粒子活性炭CH40を術中No. 3とNo. 6リンパ節に直接注入し,他のリンパ節の黒染率を調べた.また, 1群リンパ節のなかでNo. 3またはNo. 6 (No. 6とNo.4dの転移例も含む)のみにリンパ節転移のあった症例の2群, 3群へのリンパ節転移状況を検討し, No. 3またはNo. 6からのリンパ節転移進展とリンパ流とを比較検討した. No. 3からのリンパ流はNo.7, 9, 8aへの流れが多く, No. 3転移に伴った他のリンパ節転移率も No. 7, 9, 8aで高率であった. No. 3からのリンパ流とリンパ節転移進展は一致するものであった. No. 6からの黒染率はNo. 14v, 8a, 9で高率であったが, No. 6転移に伴った他のリンパ節転移率はNo. 8a, 9で高率であり, No. 14vは低い転移率であった. No. 6からのリンパ流とリンパ節転移進展は一致するものではなかった.原因としてNo. 6からのリンパ流が複雑なことも一因と思われた.
  • リンパ節郭清を伴わない縮小手術(内視鏡的粘膜切除術を含む)の適応に関して
    小林 利彦, 木村 泰三, 吉田 雅行, 櫻町 俊二, 礒垣 淳, 原田 幸雄, 中谷 雄三, 北村 宏, 金丸 仁, 大久保 忠俊, 梅原 ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2035-2039
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌に対するリンパ節郭清を伴わない縮小手術(内視鏡的粘膜切除術を含む)の適応を決定する目的で,手術で切除された単発m癌480例を対象とした臨床病理学的な検討を行った. 480例の平均最大腫瘍径は2.6cmであり,陥凹型が隆起型の約5倍存在した.リンパ節転移は9例 (1.9%) に認められ,転移症例では女性優位,腫瘍径が大きい(平均最大腫瘍径3.8cm),全例陥凹型(UL (+) 症例が多い)で未分化型といった特徴がみられた.
    過去の文献も参考にして,われわれが現在考えているリンパ節郭清を伴わない縮小手術の適応は, (1) UL (-)m癌, (2)分化型では3cm以下,未分化型では2cm以下の2点である.実際の術式選択(内視鏡的切除,腹腔鏡下手術,開復切除など)や適応条件などでいまだ議論の余地は残されているが,胃を温存することによる術後の良好なQOL (quality oflife)と根治性を損なわないことの両者を満足させる必要があると思われた.
  • 残肝再発・肝所属リンパ節転移について
    加藤 博久, 梅北 信孝, 真栄城 剛, 宮本 幸雄
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2040-2046
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近5年間で41例(H125例・H211例・H35例)の大腸癌肝転移症例に対し治癒的肝切除を施行し, 5年生存率43%であった.この41例の再発形式,とくに残肝再発,肝所属リンパ節転移について検討した. 32例(78%)が再発し,残肝再発は22例(53%)で, 5例(12%)を他臓器再発のみで失い,残肝再発と他臓器再発合併例で予後不良だった.残肝再発因子として,転移区域が2区域以上で残肝再発が多かった.残肝再発8例に残肝再切除を施行し,再切除後の生存率は1年100%, 3年53%であった.肝所属リンパ節転移は5例(12%)で異時性に長期生存があり,生存率は1年100%, 3年50%だが,全例に再発を認めた.以上より,残肝再発のみならず他臓器再発も術後の課題で,原発巣の根治性を高める必要がある.また,残肝再切除は有用で,積極的に試みるべき手段と考える.肝所属リンパ節転移例では,根治性は低いものの,特に異時性では切除により良好な予後を得る可能性が示唆された.
  • 中崎 晴弘, 渡辺 正志, 前田 利道, 花輪 茂樹, 長谷部 行健, 戸倉 夏木, 大城 充, 滝田 渉, 蔵本 新太郎, 吉雄 敏文, ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2047-2052
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌自然破裂11例について治療法とその成績にっいて検討した. 11例中4例は出血性ショックで来院し, 9例に緊急transcatheter arterial embolization (TAE) を施行した. 6例はTAEにより止血可能であり, 4例には二期的に肝切除を行った. 1例は1年6月生存中, 3例は2年6月, 1年3月, 1年で死亡した. TAEにて止血出来なかった3例は緊急手術となり, 2例は止血術のみを施行したが,術後早期に肝不全で死亡した. 1例は肝切除を行い2年3月生存中である.肝細胞癌自然破裂は緊急を要する例が多く十分な肝機能の評価ができないため, TAEにてまず止血し,肝切除出来る症例は二期的に施行することが予後の改善に貢献すると思われた.
  • 保里 惠一, 羽藤 誠記, 成田 洋, 寺西 太, 伊藤 昭敏, 真辺 忠夫
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2053-2057
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌の転移巣が経過観察中に未分化転化し,再発時には舌転移も来した1例を経験したので報告する.症例は86歳女性, 1989年8月に他医にて左頸部の腫瘤摘出を受け,病理組織学的検査にて甲状腺乳頭癌と診断された.しかし,甲状腺内には明らかな原発巣は認められず経過観察されていた. 2年後,同部に局所再発をきたし当科を紹介され,同腫瘤の摘出術を受け甲状腺乳頭癌の未分化転化と診断された. 5カ月後同部に再々発をきたしたが,同時に右舌背にも同様の腫瘤が認められ,生検にて甲状腺未分化癌の舌転移と診断された.再入院後,第47病日目に肺転移による呼吸不全にて死亡した.剖検時,甲状腺はすべて腫瘍組織に置き換わっており,原発巣の検索は不可能であった.甲状腺乳頭癌の未分化転化は少なくなく,また未分化癌の転移形式は多彩であるが,舌に転移することは極めて稀である.
  • 今津 浩喜, 落合 正宏, 船曵 孝彦, 丸上 善久, 桜井 洋一, 二渡 久智, 松原 俊樹, 長谷川 茂, 菅沼 正司, 森下 浩, 黒 ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2058-2061
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    45歳女性,乳房腫瘤を自覚し当院を受診,左乳房A領域に無痛性孤立性の腫瘤を触れ,超音波検査では辺縁ほぼ整,内部はほぼisoechoic massを,乳腺撮影でも淡く球状,辺縁もsmoothなtumorを認めた.病理組織上,摘出標本は1.5×1.2cm大で,割面は乳白色調で硬く,弱拡大像で,被膜形成を認めない比較的境界不鮮明な限局性の腫瘍が既存の腺管をやや周辺に圧排し,強拡大像では腺管周囲及び間質に平滑筋束あるいは神経束様の構造がみられたが,腺管自体には二相性が明らかで,腺管及び周囲の細胞とも細胞学的な核異型や核分裂像は認められなかった. muscle-actin, α-smooth muscle actin染色では腺管周囲の腫瘍細胞の細胞質に強陽性であった.以上より平滑筋上皮細胞の増殖を主体とした限局性腫瘍でありmuscular hamartomaと診断した.
  • 辻村 享, 岩瀬 克己, 大谷 享, 花井 恒一, 稲垣 朝子, 宮川 秀一, 堀口 明彦, 早川 真人, 神保 慎, 三浦 馥, 黒田 誠 ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2062-2066
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,独身女性,閉経後. 1992年8月左乳房のしこりに気付き来院.腫瘤は左乳房内側上方に位置し,大きさは径約2cmで硬く,表面は凹凸不整.同側腋窩リンパ節は触れなかった.超音波検査では大きさ2.2×1.2cm,辺縁は不規則,ヤツデ状,内部は不均一な低エコー腫瘤を認めた.同時に穿刺吸引細胞診を行い,疑陽性の診断. 9月21日全麻下に腫瘤摘出生検,術中迅速組織検査を施行し,若年型線維腺腫の診断を得た.永久組織標本ではダルマ型の腫瘤のくびれた部分に大きさ2×3mmの非浸潤性小葉癌を認めた.乳腺線維腺腫は若年女性に好発し,高齢者では稀である.線維腺腫内に小葉癌を併発することがあるといわれているが,本邦における乳癌併存の報告は自験例を含め12例のみで,そのうち小葉癌が6例を占める.さらに欧米の報告を合わせても50歳以上の線維腺腫内小葉癌は極めて稀である.
  • 小倉 徳裕, 平松 義文, 荒木 浩, 北出 浩章, 中川 明彦, 小島 善詞, 上山 泰男
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2067-2071
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺悪性葉状肉腫 (malignant cystosarcoma phyllodes) は非常に稀な疾患で,遠隔転移の頻度はさらに少なく,長期予後も期待できない.転移は血行性を主とし,転移臓器は肺,骨に多く,自験例のような小腸転移やリンパ行性転移はほとんどみられない.再発転移までの期間は短く,ほとんどが6カ月以内であり,転移発見後6カ月以内に死亡することが多い.症例は再発当時61歳,女性. 57歳時に左乳腺悪性葉状肉腫に対し非定型的乳房切除術を施行され, 4年3カ月後に両側肺転移,多発小腸転移を認めた.肺切除2回,小腸切除3回の計5回の手術により,再発転移を認めてから約4年を経た現在も生存中の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐々木 英二, 秋田 幸彦, 佐藤 太一郎, 北川 喜己, 瀬古 浩, 伊藤 直人, 橋本 瑞生, 芥川 篤史, 七野 滋彦
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2072-2078
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に縦隔腫瘍と診断した症例を手術し,奇静脈瘤であったので文献的考察を交え報告する.
    症例は43歳,女性.背部痛を主訴として来院,当初は白血球増多などの炎症所見があったが,まもなく消失した.各種画像診断の結果,神経鞘腫がもっとも疑わしい縦隔腫瘍として手術に望んだ.
    開胸すると,軟らかい腫瘤が奇静脈背面にあり,奇静脈との癒着が強固なため,合併切除した.病理組織学的には腫瘤は嚢状で,壁は3層構造であった.筋層が縦走しており,弾性板は認めなかったので,拡張した静脈血管と診断された.内腔は血栓が充満していた.
    術後13カ月の現在健康である.
  • 成瀬 博昭, 田中 宏紀, 谷脇 聡, 西脇 巨記, 梶 政洋, 本多 弓〓
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2079-2083
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患児は,在胎38週2日, 2,250gで出生.日齢12,哺乳障害のため当院小児科受診,特異な顔貌と外表小奇形などからCornelia de Lange症候群と診断された.反復性嘔吐はないが,緩慢な哺乳が続き著しい発育遅延を呈した. 1歳時に重篤な左肺片側性肺炎に罹患した.1歳5カ月時(体重5,135g),哺乳力低下,顔色不良,腹部の陥凹を認め,胸部X線写真にて左横隔膜ヘルニアの診断にて緊急手術を施行した.新生児期以降に発症したBochdalekヘルニアであり,ヘルニア嚢は存在せず, non-rotation typeの腸回転異常を合併していた. Bochdalekヘルニアを合併した本症候群の報告は本邦2例目である.本症例はIgG3欠乏症を合併しており,本症候群の易感染性の病態解明上貴重な症例と思われた.
  • 龍沢 泰彦, 長利 あゆみ, 宇野 雄祐, 土田 敬, 八木 真悟, 伴登 宏行, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 正昭
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2084-2088
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で, 1989年7月に粘液性膵嚢胞腺腫にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術 (PPPD) を受けた. 1991年2月に胃内視鏡検査にて膵胃吻合部のやや口側の体下部後壁に長径3cm大の隆起性病変が認められ,生検にてgroup III, adenoma with mild atypiaと診断された.さらに定期的に胃内視鏡検査を施行したところ, 1993年8月の生検にてgroup IV, well differentiated adenocarcinomaの診断を得た. strip biopsyを行うには腫瘍径が大きかったため,腹部US, CT等の画像診断上リンパ節転移のないことを確認したうえで,開腹下に胃局所切除術を施行した.病理診断はtub1, m, INFα, ly0, V0, ow(-), aw(-)で治癒切除と判断された.術後1年経過した現在,腫瘍切除部位は搬痕化しており,再発を認めていない.今後PPPD等機能温存手術の増加が予想されるが,その際にも温存臓器に対する術後の定期的なfollow upが重要であると考えられた.
  • 中崎 隆行, 飛永 晃二, 武冨 勝郎, 君野 孝二, 仲宗根 朝紀, 岸川 正大
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2089-2093
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    AFP産生早期胃癌の1例を経験したので報告する.症例は57歳男性で心窩部痛を主訴として来院した.上部消化管造影,胃内視鏡検査にて胃前庭部にBorrmann 2型の腫瘍を認めた.術前の血清AFP値は17,208ng/mlと著明に上昇していた.手術は幽門側胃切除術を施行した.病理組織所見では中分化腺癌で深達度はsmであった.免疫組織染色で癌細胞の胞体内にAFP陽性所見がみられた.術後AFPは漸減し術後3カ月めには正常となった.AFP産生早期胃癌は自験例を含め12例報告されている.肉眼型ではIIa+IIcが多く,部位は前庭部に存在するものが多かった.肝転移は12例中5例と高率に認めており,早期胃癌といえ肝転移に対しての十分な留意が必要と思われた.
  • 菊池 嘉一郎, 飯田 修平, 荻原 裕之, 古田 達之, 宇山 一朗, 高原 哲也
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2094-2098
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    手術を要した腸石の2例を経験した,症例1:患者は63歳男性.コーヒー残渣様液の嘔吐を主訴として入院した.多発胃潰瘍を認め,禁食保存加療を行ったが,入院後7日目より腸閉塞となった.イレウス管を挿入し,小腸造影を施行したところ,小腸内に7×4×4cm大の楕円形陰影欠損像を認めた.諸検査後,腸石イレウスと診断し,手術を施行した.腸石による腸閉塞で,回腸切開腸石除去術を施行した.症例2:患者は26歳女性.右下腹痛にて入院した.白血球数が15,200/mm3と増加していた.US,CT検査で,盲腸の部位に2.5cm大の結石像を認めた.腸石による憩室炎または虫垂炎と診断し,入院当日に手術を施行した.虫垂に隣接した盲腸憩室炎で憩室内に2.5cm径の腸石を認めた.憩室および虫垂切除術を施行した.
  • 竹之内 靖, 新実 紀二, 横井 俊平, 神谷 里明, 小田 高司, 山本 竜義, 小林 尚美, 池山 隆, 鈴木 正康
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2099-2102
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性で,右鼠径ヘルニア嵌頓の為当院を受診した.用手的に整復後,待機的に腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.術後3日目に腸閉塞を起こし,保存的治療を行ったが軽快しない為,術後7日目に手術を施行した.開腹するとstaplerを用いて閉鎖した腹膜が離開し,メッシュに癒着した紐状の大網が小腸を圧排していた.絞扼はなく,メッシュに癒着していた大網を切除し,腹膜を再縫合して手術を終了した.術後経過は良好で再手術後13日目に退院した.
    腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は,諸家により従来の術式にくらべ遜色のない成績が報告されており,その利点も多く,今後さらに普及すると思われる術式であるが,自験例のように,従来の術式では起こらない腸閉塞を合併する可能性がある為,本術式を行う際にはこのことを十分に念頭におき手術,術後管理を行う必要がある.
  • 蘆田 啓吾, 豊田 暢彦, 水澤 清昭, 浜副 隆一, 貝原 信明, 清水 法男
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2103-2107
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷により,空腸膜様狭窄をきたした稀な症例を経験したので報告する.症例は, 19歳,男性.交通事故で腹部を圧挫し,来院した.腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹術が施行された.
    術後57日目,経口摂取開始したところ症状を認め,保存的治療にて軽快しないため,術後74日目再手術施行した.空腸は外見上は狭窄を認めず,膜様物による狭窄が考えられ,空腸切除術を施行した.切除標本では空腸は膜様物によりほぼ完全に閉塞していた.
    腹部鈍的外傷後の小腸狭窄は,本邦で33例の報告をみるのみの稀な疾患である.その内でも膜様狭窄をきたした症例は本症例が初めてであり,本症例は肉眼的,組織学的所見より,受傷時に粘膜,筋層に全周性の損傷があり,その修復過程で膜様物が形成されたものと考えられた.
  • 小出 直彦, 町田 恵美, 清水 忠博, 久米田 茂喜, 堀 利雄, 牧内 正夫, 重松 秀一
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2108-2113
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜悪性線維性組織球腫 (MFH) の術後経過観察中に発見された小腸平滑筋肉腫の1例を報告した.後腹膜MFHおよび小腸平滑筋肉腫は比較的稀な疾患であり,両者の合併は本邦ではみられない.症例は75歳の女性で, 1987年に右後腹膜MFHにて切除術を施行, 1989年に局所再発,さらに1993年に傍直腸再発のため2回の再手術を施行した後,経過観察中であった. 1994年,貧血と腹部腫瘤を主訴に来院し,小腸造影,腹部CT検査の後,小腸部分切除術を施行し,小腸平滑筋肉腫と診断された.
  • 廣瀬 昌博, 窪園 隆, 佐川 庸, 椿 雅光, 坂東 康生, 村尾 眞一
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2114-2118
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性,家人より顔色不良を指摘されていたが,1992年10月17日頃より発熱,黒褐色下痢便を認めた.小腸造影,腹部CT,血管造影, Gaシンチにて悪性リンパ腫と診断し同年12月14日腫瘍を含め回腸切除術を施行した.腫瘍は手拳大でBauhin弁より口側へ80cmの回腸に存在し,中心部に出血壊死による膿瘍腔を形成し,膀胱壁および腹壁に炎症性に癒着していた.組織診では,腫瘍細胞は不均一な紡錘型で,核は円形または楕円形,細胞質は好酸性で空隙を認め,平滑筋芽細胞腫の診断であった.低悪性度のため化学療法は行わず厳重に経過を観察している.
    小腸平滑筋芽細胞腫は術前に診断されることは稀であるが,本症例のように発熱および下血を主訴とする場合,その臨床的特徴から術前診断が可能であったと考えられる.
  • 芥川 篤史, 秋田 幸彦, 北川 喜己, 瀬古 浩, 伊藤 直人, 橋本 瑞生, 佐々木 英二, 佐藤 太一郎, 七野 滋彦
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2119-2124
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    若年者の回盲部巨大悪性リンパ腫を経験したので報告する.
    症例は28歳,男性.高度貧血,右下腹部腫瘤を主訴に当院に入院となった.入院時検査所見にて,著明な貧血,便潜血強陽性を示した.腹部US,腹部CTにて右下腹部に径20cmほどの充実性腫瘍像を認め,注腸検査,内視鏡検査では回盲部の粘膜下腫瘍の様相であった.生検では確定診断は得られなかったが回盲部悪性リンパ腫の疑いで右半結腸切除術施行.褐色透明の腹水を少量認めた.腫瘍は大きさ27×17cm,重さ1,800gで,病理組織学的に,瀰漫性中型細胞型悪性リンパ腫と診断された.リンパ節転移は認めなかったが腹水細胞診はclass Vであり,術後にCHOP療法を6クール施行.現在再発徴候は認められていない.
  • 岸本 浩史, 田内 克典, 勝山 新弥, 新保 雅宏, 斎藤 文良, 湯口 卓, 坂本 隆, 山下 芳朗, 唐木 芳昭, 田沢 賢次, 藤巻 ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2125-2129
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管嚢胞様気腫は比較的稀な疾患で,酸素療法が著効するとされているが,全身麻酔の術中,直視下に気腫の変化を観察した報告は見られない.われわれは残胃癌と併存した大腸嚢胞様気腫の1例を経験し,残胃癌術中の気腫の興味ある変化を観察しえたので報告する.
    症例は72歳男性.腹部膨満感と便秘を主訴に近医受診し, S状結腸腫瘍を疑われ当科に紹介となった.注腸造影,下部消化管内視鏡検査,超音波内視鏡検査でS状結腸の嚢胞様気腫と診断し高圧酸素療法を施行し病変の縮小を認めた.経過中,上部消化管内視鏡検査にて残胃癌を認め残胃全摘術を施行した.術中所見で, S状結腸と横行結腸に嚢胞様気腫を認め,約6時間後の閉腹時にはいずれの病変も縮小していた.術後酸素療法を継続し嚢胞様気腫は完全に消失した.
  • 佐藤 典宏, 上田 祐滋, 河野 竜二, 東 高弘, 豊田 清一, 結城 康弘
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2130-2134
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸憩室からの大量出血は稀であり,ほとんどが保存的治療のみで止血する.症例は70歳男性で,高血圧,糖尿病を合併し,アスピリンを長期内服中であった.平成6年2月28日,下血を主訴に当科緊急入院となった.直腸診および肛門鏡検査では内痔核等の出血性病変はなく,検査成績では軽度の貧血を認めるのみであった.経過観察していたところ,翌朝大量に下血し,出血性ショックに陥った.上部消化管内視鏡検査では出血性病変を指摘できなかった.直ちに緊急血管造影を行ったところ,上行結腸の直動脈から血管外漏出を認めたため,経カテーテル動脈塞栓術を行い,完全止血に成功した.術後消化管精査にて大腸に多発憩室を認め,憩室からの出血であったと推察された.大腸憩室大量出血例では,血管造影による迅速な診断および経カテーテル止血療法が安全かつ有効であり,特に本症例のようなpoor risk患者では不可欠である.
  • 森屋 秀樹, 柳田 優子, 幕内 博康, 田島 知郎, 三富 利夫
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2135-2138
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    CTにて先進部を横行結腸癌と術前診断しえた成人腸重積症の1例を経験したので報告する.症例は84歳の女性で,腹痛と下血で発症し,注腸検査において典型的な蟹爪状陰影を呈したため,当院に転院となる.腹部CT検査において,上腹部の腫瘤に一致した部位に腸管壁と腸間膜脂肪組織で形成される3層構造と中心に約3cm大の腫瘤を認め, Borrmann 1型の横行結腸癌を先進部とする横行結腸腸重積症と診断し,開腹した. miliing backにより容易に整復され,横行結腸癌による結腸結腸型腸重積を確認し,横行結腸切除, 1群リンパ節郭清および横行結腸人工肛門を造設した.成人腸重積症は稀な疾患だが多くは器質的疾患を有し,大腸腸重積症の原因の多くは悪性腫瘍であるため,治療は開腹,腸切除を原則とする.切除に先立ち重積を整復の是非は議論のあるところであるが,術後のqualityや,全身状態等より個々の症例に則した手術を行うべきと考える.
  • 長野 郁夫
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2139-2142
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍と術前診断された腹部放線菌症の1例を報告する.患者は61歳男性で,左下腹部に腫瘤を触知し,注腸造影検査でS状結腸の不整狭窄像を認めた.その後イレウス症状を呈し, S状結腸のび漫浸潤型大腸癌か転移性大腸癌の診断で,悪性腫瘍に準じた手術を施行した.切除標本の病理組織学的検索にて放線菌塊が証明され,腹部放線菌症と診断された.腹部放線菌症は,最近では比較的まれな疾患で,口腔内常在菌である放線菌による慢性肉芽腫性炎である.本症の術前診断は極めて困難であり,腹部腫瘤の診療に際しては常に念頭におくことが重要であると考えられた.また,病理組織学的検索は,多数切片を作成し,詳細に検討する必要があると思われた.
  • 池永 誠, 高野 康雄, 西 八嗣, 立石 晋, 比企 能樹, 柿田 章
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2143-2148
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸のMALTリンパ腫を経験した.症例は71歳の女性で,下血を主訴として来院し,諸種検査の後, RLHと診断し,腫瘤が大きく半球状で便通障害があるため手術を施行した.病理組織診断では, 1) lymphoepithelial lesionがみられること. 2) 異型細胞が中型でmarginal zoneの細胞に類似していること. 3) 萎縮したリンパ濾胞が残存していること.などからMALTリンパ腫と診断された.通常の胃におけるMALTリンパ腫に比し大きく,発育形態も異なるが,発生部位の違いによるものと考えられた.直腸では悪性リンパ腫の発生頻度も低く,低悪性度の特殊なリンパ腫であるMALTリンパ腫の報告はまれである.本邦では,直腸のMALTリンパ腫の報告は未だみられない.本症例は貴重であり,直腸にもMALTリンパ腫があるとの注意を喚起するため報告した.
  • 中口 和則, 陶 文暁, 畠中 秀雄, 能浦 真吾, 山田 良宏, 川西 賢秀, 大間知 祥孝, 西部 俊三, 岡島 志郎, 吉原 渡
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2149-2152
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸癌術後の左副腎転移に対し,初回手術後1年9カ月目に摘出術を施行,長期生存を得ている症例を経験したので報告する.症例は60歳女性.直腸癌で腹会陰式直腸切断術を施行, 1年2カ月後CEAの上昇を認めた.再発と考え諸検査を行ったところ, CT検査にて左副腎に腫瘍を認めた.転移性副腎腫瘍を疑い,初回手術から1年9カ月目に左副腎摘出術を施行した.術後の病理組織学的検査にて直腸癌の転移再発と診断された.術後CEA値は正常に復し,再手術後4年経過するが,再再発の兆候無く通院している.原発巣の治療が十分で,他に転移巣のない直腸癌術後の副腎転移症例は,良好な予後が期待できるので積極的に手術するべきであると考えられた.
  • 武川 悟, 関 英一郎, 李 慶文, 岩沼 佳見, 岡原 由明, 佐藤 雅彦, 劉 星漢, 矢吹 清隆, 巾 尊宣, 前川 武男
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2153-2157
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨盤内腫瘤を伴った直腸肛門部悪性黒色腫を1例経験したので報告する.
    症例は55歳の女性.肛門部腫瘤を主訴に近医を受診し局所切除を行われ,直腸平滑筋肉腫と診断された.術後に下血が続いたため当院を受診.経肛門的に切除した残存腫瘍の病理組織学的検索で悪性黒色腫と診断した. 1年後局所再発と骨盤内腫瘍(リンパ節転移)を認め,腹会陰式直腸切断術,両側鼠径リンパ節郭清,骨盤内腫瘍切除術を施行した.
    直腸肛門部悪性黒色腫は稀な腫瘍であり,極めて予後不良といわれているが,早期に確定診断を得られず痔核や肛門ポリープとして経過観察されている症例も少なくない.切除の機会があれば病理組織学的検索を行うべきである.また確定診断後には速やかに根治手術,すなわち両側鼠径リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を行うべきであろう.
  • 山本 達人, 新庄 泰孝, 土生川 光成, 瀬山 厚司, 長谷川 博康, 宮下 洋, 舘林 欣一郎
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2158-2162
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は,58歳男性.慢性肝炎で外来通院中,腹部USにて肝前上区域 (S8) の腫瘍を指摘された. CT,血管造影にて肝細胞癌と診断し肝部分切除術を施行した.腫瘍は,最大径1.7cm,細小肝癌であった.
    肝切除1年6カ月後,GIFにて胸部上部食道癌と診断.右開胸開腹胸部食道全摘術を施行した.手術侵襲を考慮して,残胃を温存し,右有茎結腸を胸壁前で挙上し再建した.病理所見は, sm, ly0, v0, n (-),早期食道癌であった.現在再発なく外来通院中である.
    本症例は,重複癌のなかでも極めて稀である.重複癌の治療にあたっては,治療効果と手術侵襲を考慮した術式の選択が重要であると思われた.
  • 松井 祥治, 杉本 武巳, 西田 勝浩, 中沢 健, 福田 裕, 藤本 彊, 公文 佳子
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2163-2168
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    若年者巨大肝癌の1切除例を経験した.患者は24歳男性でHBe抗原陰性, HBe抗体陽性であった.肝癌は肝右葉の大部分及び一部肝左葉内側区域にも及んでいた.腫瘍が巨大なことより,右第7肋間開胸,開腹アプローチによる肝右三区域切除術を施行した.術後2日目より肝切除断端付近のドレーンから1日約300ml~400mlの胆汁漏出が持続し,それに引き続いて右横隔膜下肝切除断端に膿瘍を形成した.術後24日目にUS下ドレナージ術を施行.以後発熱もおさまり術後57日目に軽快退院となった.しかし術後6カ月で残肝再発をきたし計3回のTAEが施行された.
  • 土山 智邦, 竹内 一雄, 佐藤 裕英, 渡辺 進一郎, 中村 康孝
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2169-2172
    発行日: 1995年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症に対して入院期間の短縮を目的として,当院では症例を選んで,総胆管砕石後にTチューブを留置せずに総胆管一次縫合を施行している.その結果について若干の文献的考察を加えて報告した.
    一次縫合術の適応は総胆管径が15mm以上で,術中の胆道内視鏡及び胆道造影検査で総胆管内に胆砂・胆泥及び結石の遺残がなく,透視下で造影剤の十二指腸への排出が良好なものとした.
    1991年9月から1994年10月までに,総胆管一次縫合術を10例に施行した.いずれの症例にも術後の総胆管狭窄症状・胆管炎症状は認められなかった.T-チューブ管理を必要とせず術後管理の負担が軽減された.経過観察期間は,最長40カ月と短期間ではあるが,いずれの症例も経過良好である.総胆管一次縫合術は適応を誤らなければ,有用な術式であると考えられた.
  • 武久 良史, 梶川 愛一郎, 十亀 徳, 梅本 淳, 宇山 正, 門田 康正, 谷木 利勝, 宇都宮 俊介
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2173-2178
    発行日: 1995年
    公開日: 2012/08/03
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌を基礎疾患とし,腹壁に腹嚢痩を形成した症例を経験した.患者は72歳の女性.右季肋部痛及び同部腫瘤形成,痩孔形成を認め,胆嚢腹壁穿孔と診断した.平成5年2月15日手術施行,胆嚢頸部に全周性の腫瘍性病変を認め,これを基礎にして外胆嚢痩を形成したものと考えた.本例には胆道外傷や胆道系に対する手術の既往は無く,いわゆる自発性外胆嚢痩の範躊に入るものである.自発性外胆嚢痩は稀な病態で,著者らの検索し得た限りでは,本邦報告例は現在迄30例に過ぎない.その多くは胆嚢結石を基礎に発症しており,胆嚢癌に伴った本症は自験例を含めても5例に過ぎない.また,過去4例の報告例は全例胆石症を合併していたが,自験例は胆嚢癌単独症例であり,極めて稀な病態であると考えられた.
  • 佐藤 元一, 松村 幸次郎, 蔭山 徹, 鴻村 寿, 本多 俊太郎, 佐治 重豊, 梅本 敬夫, 九嶋 亮治, 服部 隆則
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2179-2184
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総胆管非拡張型の膵胆管合流異常症に合併した早期胆嚢癌の1例を経験した.症例は50歳男性, 1992年11月18日心窩部痛のため当院を受診し,同部の圧痛と血清アミラーゼの異常高値を指摘され入院した.腹部US, CT検査にて胆嚢内に数個のポリープを認めたが,胆管には特記すべき所見はなかった.ERCP検査にて共通管の長さは23mmで総胆管径は8mmであり,総胆管非拡張型の膵胆管舗異常症と診断された.手術は術中胆嚢内および総胆管内胆汁アミラーゼ値がそれぞれ9,7001U/l, 177,7001U/l,と異常高値を示したので,胆嚢摘出術に加え,胆道変更術を追加した.術後の検索にて胆嚢壁の一部に乳頭状腺癌 (m, ly0, v0)が認められた.総胆管非拡張型の膵胆管合流異常症に合併した早期胆嚢癌の本邦報告例は,検索し得た限りでは自験例を含め11例であった.
  • 山口 和哉, 石本 邦夫, 井上 正也
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2185-2188
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性. 1994年4月,右下腹部痛をきたし近医を受診し,虫垂炎の疑いにて当院に紹介された.注腸,超音波検査,およびCTで重複癌(盲腸癌および胆嚢癌)と診断し, 5月16日手術を施行した。盲腸癌はP0, H0, N1(+), S2, Stage III, 組織学的にはwell differentiated adenocarcinoma, se, ly2, v1, aw(-), ow(-), n(-),胆嚢癌はS0, Hinf0, H0, Ginf1, Panc0, D0, V0, N(-), M(-), St(-), StageII, 組織学的にはpapillary adenocarcinoma, ss, n1-2(-), ly0, v0であった.術後経過は良好で術後9カ月の現在再発を認めない.わが国における胆嚢重複癌の報告例は自験例を含めて過去10年間で92例であるが,盲腸癌との合併は2例であった.
  • 田島 秀則, 近藤 治郎, 今田 敏夫, 井元 清隆, 戸部 道雄, 内田 敬二, 田辺 浩悌, 松本 昭彦
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2189-2194
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内臓動脈瘤のなかでもまれな膵十二指腸動脈瘤の破裂例を経験した.症例は65歳男性.腹部大動脈瘤,両側総腸骨・内腸骨動脈瘤の診断で瘤切除,人工血管置換術を施行した.術後6日目に突然腹部及び背部痛を訴えショック状態となった.腹部CT検査で腹腔内血腫を認め緊急手術を行った.術中所見は,膵頭部背側に血液の噴出を認め,存在部位から膵十二指腸動脈瘤破裂と判断した.破裂孔を縫縮,止血し救命し得た.術後の血管造影で後下膵十二指腸動脈に途絶した所見があり,最終的には後下膵十二指腸動脈瘤破裂と診断した.腹部大動脈瘤に合併した本邦初の症例なので報告した.
  • 塩崎 滋弘, 森山 裕煕, 小野田 正, 大野 聡, 二宮 基樹, 檜垣 健二, 池田 俊行, 小林 直広, 岡村 進介, 朝倉 晃
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2195-2199
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.主訴は倦怠感.検診を受けた際,血清アミラーゼ値の上昇を認め,精査にて膵腫瘤を指摘され,当院入院となった.腹部CTでは膵体部上縁腹側で胃背側に2cmの腫瘤陰影を認めた.血管造影, ERCPでは異常は認めなかった.手術では膵体部上縁で腹側に突出する柔らかい腫瘤を認めた.腫瘤は膵より容易に剥離され摘出された.割面では多胞性の嚢胞で内容物は角化物質を含んでいた.組織学的には嚢胞壁は重層扁平上皮に被覆され,上皮下にはリンパ性組織の増生を認め膵lymphoepithelial cystと診断された. Lymphoepithelialcystは鰓溝性嚢胞と呼ばれ側頸部,耳下腺などに発生するが,膵領域では極めてまれで文献で調べ得た限りではわずか28例の報告を見るのみであった.
  • 佐久間 正祥, 古内 孝幸, 佐藤 宏喜, 内田 智夫, 古川 和男, 加藤 悠太郎
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2200-2204
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    17歳女性に発生した肝転移合併,膵 solid cystic tumor (以下SCT) を経験したので報告する.主訴は左上腹部膨隆.腹部超音波検査, CT, MRIにて膵尾部の被膜を有する充実性,一部嚢胞性の約12cm径の腫瘤であった.同時に肝S4からS5にかけ約6cm径の腫瘤を認めた.腹部血管造影ではいずれもhypervascular massであった.脾温存膵尾部切除,肝部分切除を行った.病理組織学的にSCTと診断された,被膜浸潤は認めたものの,核異型は著明ではなかった.若年女性で肝転移を有するSCTは極めて稀である.生物学的悪性度が低いといわれるので,肝転移を有するSCTに対して積極的な切除が勧められる.
  • 伊藤 剛, 宮内 卓, 山田 明, 小林 雅夫, 藤 信明
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2205-2209
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸癌の副腎転移は比較的まれである.大腸癌術後約6カ月に孤立性の左副腎転移に対して外科的切除を施行した1例を経験したので本邦報告例についての若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は65歳女性.平成5年5月に盲腸に原発した大腸癌に対して結腸右半切除を施行している.組織学的にはmoderately differentiated adenocarcinoma ss, n(-), stage IIであった.退院後外来通院中にCEA, CA19-9の上昇を認め腹部CT上左副腎腫瘍を認めた.諸検査の結果非機能性腫瘍と判明し,転移性副腎腫瘍の疑いで左副腎摘出術を施行した.組織学的検査および臨床経過より大腸癌の副腎転移と診断した.悪性腫瘍の副腎転移は多いが,大腸癌のそれは比較的稀であった.さらに大腸癌術後の転移性副腎腫瘍に対して外科的切除がなされたのは本邦報告例で8例であった.
  • 成田 洋, 寺西 太, 保里 恵一, 羽藤 誠記, 伊藤 昭敏, 真辺 忠夫
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2210-2214
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は急性虫垂炎の術前診断にて開腹された43歳の女性.術中所見および術後の病理組織学的所見より虫垂原発のmucinous cystadenocarcinomaによる腹膜偽粘液腫と診断された.閉腹時,腹腔内に大量のゼラチン様粘液塊が残存したためその洗い流しを目的としてCAPD(連続携行式腹膜透析)システムによる腹腔内洗浄を術後自宅にて連日行わせた.その間, 5-FUによる腹腔内化学療法も併せ行った.同術後補助療法により術後2年3カ月経過した現在も再発の徴候なく極めて良好な結果を得ることが出来たので報告する.
  • 沢井 博純, 中村 司, 林 周作, 真辺 忠夫
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2215-2219
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは後腹膜に原発したリンパ管腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は74歳男性で,腹部腫瘤を主訴として来院.腹部超音波検査,腹部CT,腹部MRIにて後腹膜より発生したリンパ管腫を強く疑い手術を行った.腫瘤は周囲組織との癒着もなく,容易に全摘出できた.内容液は乳白色の混濁した乳糜であった.後腹膜リンパ管腫の本邦報告例は本症を含め123例であり,このうち乳糜を内容とするものは13例と,比較的稀である.術前,本症と診断されるものは稀で,腫瘍の試験穿刺やリンパ管造影を行うことによってなされている.最近では各種画像診断法,中でもMRIの発達によりその診断率は高くなるものと考えられる.本症の治療法は原則的には外科的切除が行われるが,合併切除が必要な症例や,全摘除が不可能な症例については,プレオマイシンやピシバニールの局所注入法併用が有用と考えられる.
  • 荻野 隆史, 佐藤 尚文, 三島 敬明, 長谷川 紳治, 大和田 進, 石北 敏一, 佐藤 啓宏, 森下 靖雄
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2220-2222
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性で, 1983年の直腸診で直腸後壁に小指頭大の弾性軟の腫瘤を発見されたが,直腸粘膜面が正常であり経過観察下にあった. 1993年4月の直腸診で,腫瘤は3cm大に増大しており, CT所見で辺縁整の多胞性の低吸収域を認め,前仙骨部嚢胞と診断した.肛門括約筋の3cm口側にある腫瘤を経仙骨的に摘出した.摘出標本は多胞性の嚢胞で,内容物は乳白色の粘液であった.病理組織学的に,嚢胞内腔上皮は円柱上皮で被われており,粘液分泌嚢胞と診断された.成人の前仙骨部粘液分泌嚢胞は極めて稀なことから,本邦報告例を含め文献的考察を加えて報告した
  • ulinastatinの応用
    宮崎 要, 安部 龍一, 呉 兆礼, 石井 伸江, 浜野 恭一, 亀岡 信悟, 河 一京, 釘宮 睦博, 宮川 隆平, 藤田 竜一, 矢野 ...
    1995 年 56 巻 10 号 p. 2223-2227
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者術後せん妄の予防にウリナスタチンの応用を試み,その効果を検討するためprospective randomised clinical trialを施行した.当科にて全身麻酔による手術を施行した患者のうち70歳以上の症例100例を対象とし,これをウリナスタチン使用群と非使用群の2群に50例ずつ封筒法により無作為に振り分け,比較検討した.その結果, 1) 2群問の背景因子に差はなかった. 2)ウリナスタチン使用群では,術後せん妄発生例はなく,非使用群では50例中5例 (10%) に術後せん妄が発生した.この結果につき有意差検定を行うと危険率 p=0.0563 であり,有意差はなかったものの有意差傾向が認められた. 3)ウリナスタチンによる副作用は認められなかった.
    以上より高齢者術後せん妄に対し,ウリナスタチンが予防効果を有する可能性が示唆された.
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