日本臨床外科医学会雑誌
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56 巻, 11 号
選択された号の論文の46件中1~46を表示しています
  • 層構成の基本と各部位における分化
    佐藤 達夫
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2253-2272
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 小池 綏男, 寺井 直樹, 若林 透, 土屋 眞一
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2273-2278
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去10年3カ月間に長野県がん検診センターの乳腺外来で診断した浸潤性小葉癌30例とその他の浸潤癌419例を臨床病理学的および診断学的に比較検討した.年齢的には浸潤性小葉癌の方がやや若い傾向がみられた.腫瘤の大きさ,病期などからみると,浸潤性小葉癌はその他の浸潤癌より進行例が多い印象を受けたが,リンパ節転移は陰性例が多かった.浸潤性小葉癌はその他の浸潤癌より触診で診断することが難しく, mammography より ultrasonography の方が有用であることが窺われた.穿刺吸引細胞診で悪性を疑った割合はその他の浸潤癌の94.2%に対して浸潤性小葉癌は75.0%と低かったが,他の診断法と比べると有意に高かった.また,穿刺感による診断も有用であることが示唆された.以上,乳腺疾患の診察に際しては,浸潤性小葉癌も念頭において,諸検査の他に穿刺感も参考にして診断することが有用であると考える.
  • 高瀬 真, 炭山 嘉伸, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 原 砂織
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2279-2283
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌手術における逆T字または山型横切開法(以下横切群)の有効性について従来の上腹部正中切開法と比較検討した.対象・方法:教室で1991年1月から4年間に施行した切除可能な胃癌手術症例中横切群は62症例であり,その背景因子,手術的因子,術後因子について正中法で開腹した切除可能胃癌症例190例と比較検討した.結果:横切群特に逆T字切開法は進行胃癌に対する拡大郭清術式で適応とされることが多く,術前Stageの進行したものが多かったが,その他の背景因子に差は認めなかった.手術的因子も同様に横切群で術式の拡大,手術時間の延長,出血量の増大を認めた.横切開群では術後疼痛管理が容易であった.また術後イレウス・腹壁ヘルニアの発生頻度は経過観察期間が短いものの今回の検討では,横切群では腹壁創への腸管癒着に起因するイレウスや腹壁ヘルニアは認められなかった.
  • 山口 竜三, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋, 金 祐鎬, 前田 敦行, 河合 正巳, 高野 学, 窪田 智行, 山田 達治, 松永 ...
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2284-2289
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    骨盤内臓器浸潤を認める大腸悪性腫瘍の手術では被浸潤臓器を en bloc に切除するために時に骨盤内臓器全摘術 (TPE) が必要とされる.当科ではこれまでに16例の TPE を経験した.11例は原発症例,5例は再発症例に対し施行した.原発症例では組織学的リンパ節転移がないこと,組織学的他臓器浸潤がないこと,および組織学的癌遺残がないことが5年以上の長期生存を期待できる因子であった.再発症例は原発症例に比べ予後は不良であったが,初回手術から3年以上経過して再発した症例では比較的長期の生存を期待できると考えられた. TPE後の再発形式は原発症例では遠隔転移が多く局所再発が少なかったが,再発症例では遠隔転移のみならず局所再発も多く認められた.
  • 森田 敏裕, 藤井 久男, 山本 克彦, 石川 博文, 吉川 周作, 西川 徹, 畑 倫明, 中野 博重
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2290-2295
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1983年から1992年の10年間に当教室にて経験した原発性大腸癌手術症例数は382例であり,そのうち粘液癌は12例で全体の3.1%を占めていた.今回,粘液癌12例と分化型腺癌357例を臨床,病理学的に比較検討した.
    粘液癌は全例ss以上の壁深達度を示し,またリンパ節転移率,腹膜播種率は分化型腺癌と比較し高かったが,肝転移を示した症例は1例もなかった.治癒手術症例の5年生存率は分化型腺癌(ss以上) 77.2%に対し,粘液癌は58.3%と低く,特に直腸粘液癌では40%であった.また分化型腺癌と比較し粘液癌は有意に異時性多発癌の発生率が高かった (p<0.05). 治療としては広範囲のリンパ節郭清を含む拡大切除が必要で,術後は特に局所再発に注意し,さらに残存大腸での癌発生を考慮した経過観察が必要である.
  • 平井 勝也, 河原 秀次郎, 足利 建, 木村 知行, 黒田 陽久, 佐藤 慶一, 小野 雅史, 青木 照明
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2296-2300
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1981年~1991年の11年間に当教室で経験した直腸癌に対する低位前方切除術68例を対象として,術中直腸内洗浄の意義について検討した.吻合術式のうちわけは, double stapling technique (DST) 19例, single stapling technique (SS) 39例, hand suture (HS) 10例である.腫瘍の組織型,壁深達度,脈管侵襲,リンパ節転移,腫瘍径, OW, AWなどと術後吻合部再発との間には関連性は認められなかったが,吻合術式と吻合部再発の間に強い関連性が認められ, DSTは他の吻合術式と比較し有意に再発率が高かった.そこでDST施行群で術中直腸内洗浄と吻合部再発について検討すると,吻合部再発を認めた7例すべてが術中直腸内洗浄を行わず,術中直腸内洗浄を施行した症例では吻合部再発が認められなかった.また直腸内洗浄液より多量の癌細胞が検出されたことより,腸管内遊離癌細胞が吻合部再発の発生に大きく関わっていて,とくにDSTの際にstapleの打ち込みにともなって管腔内遊離癌細胞が吻合部の腸管壁内に埋め込まれるものと考えられる.そのため術中直腸内洗浄は術後吻合部再発の回避に,不可欠であると考えられる.
  • 棚田 稔, 佐伯 俊昭, 多幾山 渉, 栗田 啓, 横山 伸二, 高嶋 成光
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2301-2305
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    下部直腸癌の側方郭清の適応について,側方郭清施行135例のリンパ節転移状況より検討した.
    側方向リンパ節転移は,深達度mp以上の症例で出現,直腸傍リンパ節,上方向リンパ節転移が陰性例では,側方向リンパ節転移の可能性は少なかった.深達度ai症例では,27%と高頻度に側方向リンパ節に転移を認めた.一方,側方向リンパ節転移陽性例の5年生存率は25%と不良であった.
    以上より,下部直腸癌における側方郭清の適応としては,深達度mp以上a2まででリンパ節転移陽性と診断した症例と,深達度aiの症例であり,側方向リンパ節転移陽性と診断したなら,徹底した側方郭清が必要であろう.
  • 甲谷 孝史, 鈴木 秀明, 日前 敏子, 島瀬 公一, 宮内 勝敏, 高橋 広, 木村 茂
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2306-2312
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症20例における肝及び総胆管病理学的変化を検討し,病理学的変化と臨床項目との相関性を検討した.肝病理学的変化は全例に認め,細胞性変化より間質性変化が多く認められ問質性変化は相互に相関していた.総胆管炎症程度では炎症中高度例が多いが,肝病理学的変化との間には相関性はなかった.肝病理学的変化と臨床項目の相関では細胞性変化と手術時年齢に,間質性変化と手術時年齢,病悩期間, GOT値,血清,胆汁アミラーゼ低値とに相関性があったが,総胆管炎症程度と臨床項目には相関性はなかった.これらより先天性胆道拡張症の肝組織障害は肝間質性変化に反映されると考えられ,この肝組織障害は膵管胆管合流異常による膵液の逆流の影響により,発生学的及び免疫学的問題に影響された重症の逆行性胆管炎やその他の因子による閉塞性肝障害の関与が大きいと推測される.
  • 池田 文広, 飯野 佑一, 鯉淵 幸生, 菅又 徳孝, 茂原 淳, 森下 靖雄, 横江 隆夫, 小山 徹也
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2313-2317
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    嚢胞性リンパ管腫は先天性素因で発生すると言われ,約90%は2歳以下で発症し,成人例は稀である.今回,著者らは成人の頸部嚢胞性リンパ管腫を2例経験した.症例1は33歳の女性. 3歳時に穿刺吸引で消退した右頸部の腫脹が再び出現したため,近医を受診した.切開したところ,出血が止まらず,当科に紹介された. MRIで嚢胞性リンパ管腫と診断し,手術を行った.症例2は31歳の女性.左頸部の腫脹を主訴に近医を受診し,精査の結果,嚢胞性リンパ管腫と診断された.経過観察下にあったが,最近,腫脹が増大してきたため当科に紹介された. MRIで腫瘤を確認,切除範囲を決定して手術を施行した.術前診断にMRIが有用であった頸部嚢胞性リンパ管腫の2成人例を報告した.
  • 脇田 和幸, 河野 範男, 佐古田 洋子, 寒原 芳浩, 中谷 正史, 石川 羊男, 指方 輝正
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2318-2321
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血性乳頭分泌を伴いさらに乳頭分泌液中CEAが高値であった女性化乳房症を経験したので報告する.症例は48歳男性.平成5年9月左乳頭分泌を主訴に来院.初診時血性乳頭分泌と1.7×1.5cmの乳房腫瘤を認めた.
    Mammography, 超音波では辺縁の整な腫瘤影を認めた. ductgraphyでは悪性所見を示さず,乳頭分泌液ならびに腫瘤穿刺細胞診もclass IIであったが,分泌液中CEAが7,000ng/mlと高値を示した.血中CEA, エストロゲン,テストステロン値は正常であった.分泌液中CEAが高値であったため男性乳癌を疑い摘出生検を施行したところ,病理診断はgynecomastia with mastitisであった.
    女性化乳房で血性乳頭分泌を認め,分泌液中CEAが高値をとった症例は今までに報告がなく,本例は興味深いと思われた.
  • 博多 尚文, 前野 良人, 立岡 寿比古, 平尾 隆文, 清水 潤三, 河合 稔, 今本 治彦, 山崎 恵司, 大島 進, 半田 節子, 小 ...
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2322-2325
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右乳癌術後照射後1カ月目に発生した左側乳房の血管肉腫の1例を報告する.
    症例は43歳女性で,1993年2月23日右乳癌に対し右乳房温存療法 (Quadrantectomy) を行い, 3月17日から総量50Gy (25回分割)の術後照射を行った. 5月初め頃より左乳房AB領域に小血管腫が出現した.米粒大に大きくなったため6月23日切除し,血管肉腫と診断された. 10月頃より切除創周囲に数個の再発巣が出現したため, 1994年1月20日左乳房全切除術を行った.現在再発なく経過中である.乳腺の血管肉腫はきわめて珍しくわが国では20例を数えるだけであるが,術後照射後の対側乳房症例の報告は全くない.近年わが国でも乳房温存療法の症例が増えつつあり,乳腺の血管肉腫も増加すると予想され,上肢などの血管肉腫 (Stewart-Treves syndrome) とともに,厳重な注意が必要と思われる.
  • 久留宮 康浩, 服部 龍夫, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 深田 伸二, 湯浅 典博, 濱畠 望, 亀井 桂太郎, 林 祐次, 小出 恭裕, ...
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2326-2330
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は26歳,女性.右乳房CD領域の腫瘤に対し, 2回の腫瘍摘出術を施行したが,再発を繰り返した.病理組織標本を再検討した結果,葉状腫瘍(境界病変)と診断された.十分なsurgical marginをとりつつ,乳房を温存すべく, quadrantectomyを施行した.腫瘍は嚢胞内に乳頭状に増殖する形態を示し,病理組織学的所見では前回の標本と比べ間質細胞のmitosisが多数みられ,核異型が強くなり,多核巨細胞も認められたため悪性葉状腫瘍と診断した.切離断端に腫瘍細胞は認めず,リンパ節転移も認めなかった.
    quadrantectomyは葉状腫瘍に対しても有用な術式であると考えられる.
  • 樫村 弘隆, 小野 敏孝, 平井 勝也, 高橋 恒夫, 青木 照明
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2331-2335
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    出血にて緊急手術を施行した悪性葉状腫瘍例を経験した.症例は44歳女性.左乳房腫瘤を近医にて摘出,良性葉状腫瘍と診断された. 4年7カ月後より同部にきずいていた腫瘤が急激に増大したため当科紹介となった.左乳房に12cm大の柔らかい腫瘤を認め腫瘍あるいは血腫を疑がって切開し凝血塊を排出したが,以後出血が続き乳房の腫脹著明で局所感染も併発し緊急に単純乳房切除術を施行した.病理学的に悪性葉状腫瘍であり,以前の良性葉状腫瘍の悪性化と考えられた.本例は腫瘍内に出血をきたしたため診断が困難となり,緊急手術を余儀なくされた.経過より良性葉状腫瘍の悪性化も十分考慮すべきであったものと反省させられた.
  • 笠原 善郎, 芝原 一繁, 浅田 康行, 森田 克也, 宗本 義則, 三井 毅, 飯田 善郎, 三浦 将司, 藤沢 正清, 木村 顕子
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2336-2339
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,女性.左血性乳頭分泌を主訴に来院.触診,マンモグラフィー,超音波検査にて腫瘤を認めず,乳頭分泌液細胞診も陰性であったが,経過観察中,乳頭分泌液CEAの上昇を認めたため, microdochectomyを施行した.病理組織学的に,一部に浸潤像を伴い左乳房内上領域に広く乳管内進展を有する乳癌であり,癌の進展する乳管内や小腺腔内にPAS染色陽性, Alcian-blue染色陽性の分泌物の貯留を認め分泌癌と診断した.胸筋温存乳房切断術を施行し,組織学的リンパ節転移は認めなかった (T0n0m0). 乳腺の分泌癌は極めて稀で,本邦報告例31例を検討すると,その典型的臨床像は若年者に好発する石灰化を有さない境界明瞭な限局性乳腺腫瘍で,線維腺腫と誤診しないことが重要である.また本症例のように広汎な乳管内進展を示す例もあり,乳房温存療法を選択する際は十分な注意が必要である.
  • 尾浦 正二, 櫻井 武雄, 吉村 吾郎, 玉置 剛司, 梅村 定司
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2340-2344
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本邦では比較的まれな乳癌癌性髄膜症の1例を経験した.症例は59歳,女性.再発乳癌に対して化学内分泌療法施行中に頭痛,めまい,舌下神経麻痺が出現. CT, MRIにても中枢神経系の異常を指摘しえず入院のうえ対症療法を行っていた.入院後1カ月目のMRIにて左大脳半球の硬膜および左側テントの肥厚を認め癌性髄膜症と診断した.中枢神経系の症状の増悪が見られたためMethotrexateの髄膜内注入を2回施行したが症状の改善が得られる事なく癌性髄膜症発症から7カ月で死亡した.本邦でも浸潤性小葉癌の増加や術後補助療法の改善により今後本病態が増加することが予想されるため乳腺外科医は本病態の存在を常に念頭におき中枢神経系への転移の検索には積極的にMRI検査を行うべきと考える.
  • 横室 仁志, 海老根 東雄, 城間 賢二, 田村 進, 鈴木 博雅, 大槻 実, 内田 真, 村岡 麻樹
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2345-2350
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    真菌性心内膜炎は本邦では稀な疾患とされてきたが,重症弁膜疾患の外科治療が行われるようになった現在,その数は増加傾向にある.しかし三尖弁に発症したものは未だに少なく,われわれが探し得た範囲では自験例を含め7例だけであった.症例は66歳の男性で,急性化膿性胆管炎,多発性肝膿瘍に続発した真菌性(candida glabrata)三尖弁心内膜炎に対してCarpentier-Edwards弁による三尖弁置換術を行った.しかし第5病日に両側肺化膿症を合併し,胸腔ドレーンからcandida glabrataが検出された.胸腔洗浄等を行ったが,第11病日に多臓器不全にて失った.真菌性心内膜炎のvegetationは巨大化しやすく,栓子となりやすい.本例においても外科治療の遅れから術前に肺塞栓症を併発し,術後肺化膿症を合併したものと考えられた.真菌性心内膜炎の治療の要は,早期診断,早期外科治療及び術後の徹底した薬物療法にあると考える.
  • 草島 義徳, 瀬川 正孝, 広野 禎介, 藤田 秀人
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2351-2355
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    対側荒蕪肺患者の開胸手術にPCPS (Percutaneous Cardiopulmonary Support sys-tem) を用い術中管理を行い,ほぼ満足すべき結果を得たので,若干の考察を加え報告した.患者は46歳の男性で,肺結核の放置により右荒蕪肺となっていたが,当科入院中,左肺ブラ破裂によりショック状態となったものである.緊急胸腔ドレナージにより回復したが,肺の再膨張は不良で,胸腔鏡その他の治療法によっても著明なair leakageを防止することは不可能であった.そこでPCPS施行下,開胸的根治手術を行った. PCPSは遠心ポンプ,膜型人工肺より構成されたV-A bypassで, PCPS施行時間は2時間26分,灌流量は2~4.8L/minでコントロールした.術中のPaO2, SaO2, P〓O2, S〓O2, 血圧などの変動からみて,極めて安全に手術が可能であった.術後3カ月目に,患者は完全に社会復帰した.本法は今後,呼吸器外科領域での応用が期待される.
  • 森脇 稔, 鈴木 義真, 野口 肇, 鳴海 賢二, 落合 匠, 安田 一彦, 杉谷 通治, 岡野 匡雄
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2356-2360
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃に腺筋腫様変化をきたすことは稀であるが,今回われわれは,噴門部の粘膜下腫瘍で,その大部分に腺筋腫様の変化をきたした1例を経験したので報告する.症例は82歳男性,主訴は食物通過障害,現病歴は平成5年8月頃から,食物摂取後につかえ感が出現するようになる.上部消化管内視鏡検査にて胃噴門部の粘膜下腫瘍の診断で,平成5年10月7日入院となる.入院後再度内視鏡検査にて, polypectomyしようとするも,大きすぎて施行できず,手術適応と考え, 10月22日左開胸開腹手術にて,下部食道及び噴門部胃切除術を施行した.術後一時逆流による食思不振が出現するも,その後順調にして平成5年11月28日退院した.術後の病理組織学的検査にて,粘膜下腫瘍は粘膜下層にadenomyomatousな増殖を呈する稀な病変で,特殊免疫染色にて,筋線維と腺組織が濃染される部分が混在していた.
  • 衣笠 哲史, 篠原 徹雄, 前川 隆文, 酒井 憲見, 城戸 和明, 秀島 輝, 平城 守, 長濱 俊一, 山下 裕一, 北川 晋二, 白日 ...
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2361-2365
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃迷入膵病変部粘膜に発生した早期胃癌の1例を報告する.
    症例は70歳女性で,胃検診にて異常陰影を指摘され精査目的で入院となった.X線胃透視,上部消化管内視鏡および超音波内視鏡検査により胃前庭部大轡に径1.5cm大の粘膜下腫瘍を認めた. 8カ月後の経過観察中に同部位胃粘膜の不整形陥凹を認め,生検によりGroup Vと診断されたため幽門側胃部分切除術を施行した.術後の病理診断で粘膜下腫瘍の直上の胃粘膜に5×3mmの高分化型腺癌の存在を認め,深達度mであった.一方, sm層を主座とする粘膜下腫瘍は陥入した胃粘膜よりなり,一部に異所性の膵腺組織と導管と思われる組織を認められHeinrich II型の迷入膵の所見であった.
    本症例のように迷入膵の存在する直上の胃粘膜に癌が発生した症例の報告はなく,極めて稀な症例と考えられた.
  • 下松谷 匠, 増田 靖彦, 谷川 允彦, 谷口 哲郎, 奈良 雅文, 村岡 隆介
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2366-2370
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ヘルペス脳炎の治療中大量出血,穿孔をきたし,手術にて救命しえた幼児の十二指腸潰瘍症例を経験した.症例は1歳3カ月の女児で,嘔吐を主訴に近医受診し,意識障害を認めたため本院紹介入院となった.意識は深昏睡に陥り,ヘルペス脳炎と診断し, dex-amethasone, acyclovirの投与を開始した.治療開始後大量のタール便を認めたため内視鏡検査を行ったところ,十二指腸からの出血で凝血塊が幽門輪より胃内へ膨隆していた.保存的治療にもかかわらず出血が持続したため緊急手術を行った.十二指腸球部から下行脚にかけての前壁に径約2cmの穿孔を認め,凝血塊などにより覆われていた.胃半切術を行い,再建法はビルロートII法に準じて行ったが,十二指腸断端は閉鎖できず,空腸を十二指腸断端に吻合した.術後経過は良好で3カ月後退院した.
  • 大橋 修, 石田 英文, 高瀬 至郎, 森田 晋介, 神垣 隆, 長谷川 恭久, 山本 正博, 斎藤 洋一
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2371-2375
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大量下血によって発見され,術前に診断しえた十二指腸脂肪腫の1例を報告する.症例は73歳男性. 1994年3月5日,特別な自覚症状なく大量の下血が出現した.緊急内視鏡により十二指腸下行脚に表面平滑でほぼ中央に潰瘍形成を伴い,鉗子の圧迫にて変形する亜有茎性粘膜下腫瘤を認めた.また,超音波内視鏡においてもhyperechoic massとして描出され脂肪腫と診断し,術前の大量下血から考慮し開腹手術にて腫瘤を摘出した.病理組織所見では核異型を認めない脂肪細胞からなり, Spindle cell lipomaと診断された.術後経過は良好で,現在外来にてfollow up中である.本邦報告79例を集計し,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 菊池 嘉一郎, 飯田 修平, 荻原 裕之, 古田 達之, 宇山 一朗, 高原 哲也
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2376-2380
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵管内に腫瘍発育し,閉塞性黄疸で発症した十二指腸乳頭部カルチノイドの1例を経験した.本例は,予後不良のいわゆる内分泌細胞癌と呼ぶべきものであった.患者は50歳男性.発熱,黄疸を主訴に入院した.減黄術後,膵頭十二指腸切除術を施行した.乳頭部腫瘍径は1.5cmで,さらに膵管内に2cmの乳頭状発育を見た.所属リンパ節転移を認めた.組織像は,充実性一部柵状の配列で粘膜下増生し,リンパ管侵襲は高度であった.核は円形で核型の不整が目立ち,胞体は乏しく多くの顆粒を有した.腫瘍は, Somatostatin染色で弱陽性を示した. 40病日に軽快退院したが,術後4カ月で肝転移を認めTAE施行. TAE後2カ月半で癌死した.剖検所見で,肝,後腹膜リンパ節,および腹膜転移を認めた.乳頭部カルチノイドは再発予後不良例が多く,手術は広範囲の郭清が必要と思われた.
  • 土山 智邦, 関 弘明, 佐藤 裕英, 粟田 浩史, 広瀬 和郎, 礒部 芳彰, 山口 明夫, 中川原 儀三
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2381-2384
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,Meckel憩室症による絞扼性イレウスを3例経験したので報告した.
    症例1) 7歳男児. 6歳時虫垂切除術の既往あり.突然の腹痛,嘔吐にて発症した.保存的療法では軽快せず, 5日目に開腹した.回腸末端のMeckel憩室と卵黄嚢胞遺残による絞扼性イレウスであった.症例2) 83歳男性. 40歳時虫垂切除術の既往あり.嘔気により発症し,イレウス管による保存療法を行ったが改善せず,第9病日に開腹した. Meckel憩室と索状物による絞扼性イレウスであった.症例3) 76歳男性. 56歳時胃切除術の既往あり.約1カ月前より腹痛,嘔気,嘔吐を繰り返し, 2日前より増強したために開腹した. Meckel憩室と横行結腸が癒着し,小腸が捻転していた. 3症例とも開腹の既往があり,症状等から癒着性イレウスの診断のもとに保存的治療を施行しており,診断に難渋した症例であった.
  • 杉浦 勇人, 末永 昌宏, 国場 良和, 久留宮 隆, 山中 秀高, 初野 剛, 信田 俊英
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2385-2388
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    三重複悪性腫瘍切除後3年目に肝左葉に転移した小腸平滑筋肉腫に対して拡大肝左葉切除を施行した症例を経験した.症例は79歳男性で,初回手術では大腸癌,腎孟癌および小腸平滑筋腫の診断であったが,画像上肝病変の鑑別診断が困難なため肝腫瘍部の生検を施行し,その結果平滑筋肉腫の肝転移と診断され,初回手術の病理標本を再検討の結果平滑筋肉腫で矛盾のないことが確認された.以上から初回手術時診断が大腸癌,腎孟癌に小腸平滑筋肉腫が合併した三重複悪性腫瘍ということになったが,この組み合わせは検索した限り報告はない.小腸平滑筋肉腫と平滑筋腫の病理組織学的診断が困難な症例のため,肝転移部の原発巣の診断に困難を感じた1例であり報告する.
  • 石和 直樹, 今田 敏夫, 福澤 邦康, 森永 聡一郎, 竹鼻 敏孝, 宮崎 卓哉, 天野 富薫, 松本 昭彦
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2389-2393
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは小腸癌を合併し,ポリープによる腸重積をきたしたPeutz-Jeghers症候群の1例を経験したので報告する.
    症例は44歳の男性で,腹部膨満を主訴に近医入院.腹部単純写真にて鏡面像を認めたため腸閉塞症と診断した.イレウス管を挿入し保存的に加療したが改善なく,当科転科となった.腹部CTにて重積した腸管を認め,腸重積による腹膜炎が疑われ緊急手術を施行した.開腹し重積した腸管を徒手整復したが,腸管は壊死に陥っており約150cm切除した.更に腹腔内を検索すると, Treitz靱帯より10cm肛門側に癌腫を認め小腸を追加切除した.
    Peutz-Jeghers症候群は腸重積を合併しやすく,生涯に複数回の手術を施行する可能性が高い.またポリープの癌化を含めた悪性腫瘍の合併も数多く報告されており,定期的かつ慎重なfollow upが必要であると思われた.
  • 岡本 康久, 高畑 隆臣, 赤在 義浩, 戸田 耕太郎, 三村 哲重, 木村 秀幸, 大原 利憲, 筒井 信正, 広瀬 周平, 片岡 和男, ...
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2394-2397
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸軸捻転症を契機に発見されたS状結腸glomus腫瘍を経験したので報告する.
    症例は82歳,女性. 7年前に腸間膜中皮腫の手術既往あり.腹満感,腹痛を主訴として来院し, S状結腸軸捻転症の診断で緊急開腹したところ,捻転基部に腫瘍を認め, S状結腸切除を行った.病理組織学的にS状結腸固有筋層から漿膜面,間膜にかけて発生したglomus腫瘍で,悪性所見はなかった.
    Glomus腫瘍は,四肢の皮下や爪床に好発する有痛性腫瘍で,稀ながら消化管にも発生するが,その大部分は胃で,大腸は極めて稀である.われわれの調べた範囲内では,大腸glomus腫瘍の報告は, 1988年Baruaによる1例のみで,本症例は2例目の貴重な症例である.
  • 増山 喜一, 柚木 透, 山田 明, 阿部 要一, 長谷川 剛
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2398-2401
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    所属リンパ節にサルコイド反応がみられたS状結腸癌の1例を経験した.症例は46歳,女性.便秘を主訴に来院した.大腸内視鏡検査にてS状結腸癌と診断し, S状結腸切除術を施行した.術後の病理検索にて第1群リンパ節に癌転移を認めたが,第2群リンパ節には転移を認めず類上皮細胞よりなる非乾酪性肉芽腫がみられた.臨床的にはサルコイドーシスを疑わせる所見はなく,サルコイド反応と診断した.サルコイド反応は,腫瘍に対する宿主の何らかの免疫学的反応であり予後良好とする報告がある.また,サルコイドーシスの肉芽腫やその周辺ではT細胞などの免疫担当細胞が活性化され,インターフェロン-γなどのサイトカインを産生しているとの報告もある.サルコイド反応を呈するような担癌生体は腫瘍もしくは損傷をうけた腫瘍を免疫学的に認識し,腫瘍の増殖,転移をある程度抑制している可能性もあるものと考えられた.
  • 木下 敬弘, 浦山 博, 大村 健二, 片田 正一, 原田 猛, 笠島 史成, 俵矢 香苗, 渡辺 洋宇
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2402-2405
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部解離性大動脈瘤に合併し,総胆管穿破をきたした肝動脈瘤の1例を経験した.症例は58歳,男性で突然の吐血と上腹部痛で発症した.腹部血管造影にて総肝動脈から分岐直後の左肝動脈に動脈瘤を認め,引き続きスチールコイルを用いた経カテーテル動脈塞栓術を施行した. 7カ月後に側副血行路を介した再開通を認め塞栓術を施行した.その40日後,再び再開通を認め緊急開腹下に流入血管の結紮と瘤内腔の閉鎖を行った.
    肝動脈瘤に対する動脈塞栓術では再開通は稀とされてきたが,本症例のように比較的短期的に発生する場合もあり,厳重な経過観察が必要である.また再破裂を未然に防ぐためにも,全身状態が許せば積極的に外科的治療を行うべきと考えられた.
  • 山本 寛, 山本 明, 坂本 力, 藤村 昌樹, 森 渥視
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2406-2411
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    63歳女性で胆嚢癌に対する拡大胆嚢摘出術後9日目に,大量下血で発症した術後仮性肝動脈瘤の破裂例を経験した.ショック状態を改善しつつ,経動脈カテーテル塞栓術により止血,救命することができた.自験例を含め術後仮性肝動脈瘤破裂の本邦報告24例につき検討を加えた.
    肝動脈周囲リンパ節郭清を伴う胆道系などの悪性腫瘍手術の施行に際しては,極めて予後不良な本症を念頭に置き,より慎重な手術操作と適切な術後ドレナージ術の重要性が痛感された.また,術後仮性肝動脈瘤を疑う場合,手術操作による癒着や炎症のため再手術は困難なことが多いと思われ,血管造影による部位診断に引き続き動脈塞栓術による止血術をまず考慮すべきであると思われた.
  • 山本 隆行, 福浦 竜樹, 北川 達士, 松本 好市, 入山 圭二
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2412-2416
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の女性で,妊娠28週時に上腹部腫瘤を指摘された.非侵襲的な検査であるMRIとUSが施行され,肝左葉の巨大血管腫が疑われた.妊娠35週時に帝王切開が行われ, 2カ月後のCTや血管造影所見では肝血管腫よりも血管肉腫や悪性血管内皮細胞腫などが疑われた.肝内や両肺に多発転移が認められたため, cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, 5-nuorouracil, cisplatinやinterleukin-2を用いた化学療法が行われたが無効で,出産8カ月後に脳転移で死亡した.死亡後の病理組織診断で肝腫瘍は中分化型の肝細胞癌と判明した.本症例では, 1) 画像診断上,肝細胞癌と血管性腫瘍との鑑別が困難であったこと, 2) 肝腫瘍が妊娠中に発見されたために諸検査が制約され,適切な診断や治療が遅れたこと,の2点が問題となった.
  • 竹内 邦夫, 長嶋 起久雄, 長町 幸雄
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2417-2421
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性.発熱,黄疸を主訴に来院.血液・生化学検査では,白血球10,500/mm3,血清総ビリルビン9.4mg/dlと上昇しており,血清CA19-9も530U/mlと高値であった.腹部超音波検査では,胆嚢壁の肥厚と胆嚢内隆起性病変を認め,腹部CT検査では,胆嚢頸部に結石の存在を認めた.胆石胆嚢炎の診断で,胆嚢の悪性腫瘍も念頭におきながら,炎症消退後に,胆嚢摘出術を施行した.切除標本の病理組織検査では悪性所見は認められず,慢性胆嚢炎の所見であった.また免疫染色では, CA19-9が上皮細胞で強陽性に濃染された. CA19-9高値の理由として炎症と胆管閉塞による黄疸により上皮細胞中のCA19-9と胆汁中のCA19-9が血中へ逸脱したためではないかと考えられた.日常の臨床では,血清CA19-9は膵胆道系悪性腫瘍マーカーとして普及しているが,胆石症などの良性疾患において高値を示し炎症及び黄疸の消退とともに低下することもあるので,診断に際しては,画像診断,臨床経過等を考慮した総合的判断が重要である.
  • 重盛 千香, 喜畑 雅文, 森山 茂, 藤岡 正樹, 三浦 悟
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2422-2426
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵内Lymphoepithelial cystは国内外で20数例の報告をみる稀な疾患である.本疾患の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は63歳の男性で主訴は背部痛.腹部US, CT及びMRI検査上,膵頭部及び尾部に周囲を圧排する10cm大と5cm大の嚢胞性病変があり,血清CEA, CA19-9が上昇していたことから悪性を否定できず手術を施行した.両嚢胞は単房性で表面平滑で周囲への浸潤なく,壁及び内容物の細胞診が陰性であったことから膵頭部嚢胞核出術並びに膵尾部脾合併切除を施行した.内容物は粉瘤内容様の角化物であった.嚢胞は組織学的に重層扁平上皮に被覆された真性嚢胞で,上皮下層に濾胞形成を伴うリンパ球浸潤像を認め,膵内Lymphoepithelial cystと診断された.上皮のCEA及びCA19-9の免疫組織化学染色は陽性であった.術後,自覚症状並びに血清CEA, CA19-9値は改善している.
  • 佐々木 栄一, 斎藤 節, 斎藤 肇, 渡辺 晃, 草野 満夫
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2427-2431
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸狭窄を呈した腫瘤形成性膵炎の1例を経験したので報告した.慢性膵炎の合併症で十二指腸狭窄をきたす例の報告は散見されるが稀である.症例は53歳の男性で,慢性膵炎の急性増悪で入退院をくり返していた.主訴は右季肋部痛と嘔気で,各種検査で膵頭部の腫瘤と十二指腸下行脚の狭窄が認められた.長年にわたる臨床経過と画像診断より慢性膵炎による腫瘤形成を強く疑ったが悪性を否定しきれないことと,内科的治療に抵抗しつづけてきた頑固な腹痛を考慮して全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.摘出標本から十二指腸壁は浮腫,細胞浸潤,繊維化などの炎症所見は認められず,狭窄の原因として十二指腸の器質的変化より膵頭部の仮性嚢胞を伴う腫瘤による圧迫が考えられた.
  • 竹元 伸之, 浅岡 善雄, 青柳 豊, 若林 邦夫, 手嶋 伸一, 宮田 道夫
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2432-2437
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は意識消失を主訴に来院した50歳女性. Whippleの3徴を認め, CT, 血管造影で膵体部にφ3cm大の腫瘍を,膵尾部に小腫瘍を数個指摘された.諸検査の結果から,インスリノーマ,副甲状腺機能亢進症に,甲状腺腫瘍,右副腎腫瘍を合併したMEN I型と診断された. 2回に分けて手術を施行する方針とし,まず膵体尾部切除・脾摘・右副腎腫瘍摘出術を,次に副甲状腺亜全摘・甲状腺左葉切除術を施行した.膵腫瘍は一部悪性であり,甲状腺腫瘍は乳頭状腺癌,濾胞癌であった.術後,肺癌,乳癌が発見され,右肺上葉切除術,非定型乳房切断術も施行した. 4重複癌を合併したMEN I型の報告は本邦ではなく,貴重な症例と考え報告する.
  • 川崎 浩資, 中島 立博, 吉岡 卓治, 折野 真哉, 大坂 直文
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2438-2442
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性.心窩部痛と悪心を主訴として来院した.臨床所見や超音波, CT, 血管造影の所見から遊走脾茎捻転による脾梗塞と診断し,緊急手術を施行した.開腹所見では脾固定靱帯は存在せず,脾は脾門部で反時計方向に2回転捻転し,捻転を解除しても血流の再開通がないため脾摘出術を施行した.
    遊走脾茎捻転は比較的まれな疾患で,本邦文献上確認できたのは45例であった.遊走脾茎捻転の痔痛や腫瘤触知部位は左上腹部が中心であるが,症例によっては下腹部のこともあり,他の多くの疾患との鑑別が必要となる.治療は, 45例中44例に脾摘出術が施行されていた.近年脾摘出術後の重症感染症や血栓症の問題が指摘されるようになり,特に重症感染症に関しては小児は成人に比し発生率も死亡率も高率であると報告されている.遊走脾茎捻転は小児発症例が多く,今後手術に際し脾温存術式や脾部分移植術などの脾機能温存術式も考慮し対処する必要があると思われた.
  • 木村 正幸, 小澤 弘侑, 佐野 友昭, 森川 丘道, 中島 光一, 岩崎 好太郎
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2443-2447
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性,平成3年8月膀胱癌の診断で膀胱部分切除術を受け外来治療中であったが,平成4年5月左季肋部痛出現したため当科に紹介された.腹部US及びCT検査にて脾腫瘍と診断し平成4年5月脾摘出術を施行した.病理組織学的診断にて膀胱癌の脾転移と診断された.合併症を併発する事なく術後第27病日退院したが,平成4年8月肺に再発し術後5カ月で死亡した.転移性脾腫瘍の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 山中 秀高, 五嶋 博道, 冨田 隆, 苔原 登, 太田 正澄, 高木 啓介, 黒田 久弥
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2448-2452
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    感染性尿膜管嚢胞の治療において,術後合併症である創感染に関与する因子を検討した.
    1984年から1993年までの10年間に当院外科で手術を行った感染性尿膜管嚢胞8例を対象とし,術後創感染合併例3例と非合併例5例の年齢,性別,病型分類(Perlmutter分類),治療法及び起炎菌について比較検討した.
    その結果,年齢,性別,男女比,病型分類では術後創感染の合併に特に影響はなかった.起炎菌では尿膜管嚢胞への感染がグラム陰性桿菌の場合, 4例中1例も無いのに対し,グラム陽性球菌である場合,術後創感染合併例が4例中3例と高率であった.術後創感染を合併しなかった1例は,治療法として全例に嚢胞切除による根治的療法を施行したが,その時期として切開ドレナージ及び抗生物質投与による炎症消退後の待機的手術であり,グラム陽性球菌の感染では術前の保存的治療による炎症消退が肝要であると思われた.
  • 道家 充, 早川 直和, 梛野 正人, 北川 茂久, 小松 俊一郎, 二村 雄次
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2453-2457
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.突然左側腹部痛が出現し,当科を受診した.血液検査所見で軽度貧血と腹部超音波検査で左上腹部に巨大な腫瘤を認めた.腹部CT検査では13×11×20cm大の内部不均一な脂肪成分に富む腫瘤が存在した.腫瘤の周囲には血腫と考えられる病変を認め,腎腫瘍破裂による後腹膜出血と診断し,血管造影検査を施行した.血管造影検査で腫瘤は拡張蛇行した左腎動脈の分枝に栄養され,腎血管筋脂肪腫(以下腎AML)と診断した. 3本の栄養血管を超選択的に造影し, 5mlの無水エタノールで塞栓した.術後正常腎組織の血流温存が確認され,副作用も軽微であった.患者は9病日のCT検査で腫瘤の縮小と貧血の改善が確認され退院した. 5年後の現在無症状で,経過観察中である.
    無水エタノールによる経動脈的塞栓術は,腎AMLに対する有用な治療法と思われた.
  • 竹村 隆夫, 土肥 直樹, 斉藤 玻瑠夫, 吉田 二教, 井上 康一, 金井 正樹
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2458-2462
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは魚骨の消化管穿孔による腹腔内膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.左下腹部痛,発熱を主訴に入院した.入院時,腹部超音波検査および腹部CT検査にて左下腹部に腹腔内膿瘍を認め,また腹部CTでは,膿瘍内に線状のhighdensityの異物が認められた.魚骨による消化管穿孔と診断し,保存的治療を行い腫瘤の縮小,症状の軽快を認め退院した.退院後のCTで腫瘤はほぼ消退したが異物像は消失せず,手術を施行した.手術では大網部分切除と,穿孔部と思われる回腸の漿膜縫合を行った.その大網内より約1.5cmの魚骨を摘出した.術後経過は良好で第10病日に退院した.魚骨による消化管穿孔は比較的稀な疾患で,術前診断は困難とされていたが,近年CTなどの発達に伴って比較的容易になってきた.本症例は待機的手術によって侵襲の少ない外科的治療を加えることができた.
  • 佐々木 賢二, 吉田 金広, 三浦 連人, 寺嶋 吉保, 田代 征記
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2463-2466
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.腹部膨満感を主訴に当科を受診した.腹部CTおよび超音波検査で,多量の腹水と大網,腸間膜のびまん性肥厚を認めた.腹水中ピアルロン酸が800,000ng/mlと高値であったため腹膜悪性中皮腫を疑い,大網生検および皮下埋め込み式portを用いた腹腔内持続注入用カテーテルの留置を行った.組織学的には,ヒアルロニダーゼで消化されるalcian-blue陽性の腫瘍細胞を認め,腹膜悪性中皮腫の確定診断を得た. CDDP 100mgの腹腔内投与に温熱療法,および放射線療法を併用し腹水はほぼ消失した.本療法は腹膜悪性中皮腫における腹水のコントロールおよび延命に対して有効な治療法になると考えられた.
  • 倉橋 三穂, 三好 康敬, 倉立 真志, 岩坂 尚仁, 村澤 正甫, 井口 博善, 松本 隆裕
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2467-2471
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜平滑筋肉腫は比較的稀な疾患であり腹部腫瘤,腹痛などで発見されることが多く予後は不良である.今回われわれは,後腹膜平滑筋肉腫の診断で外科的切除を施行した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は72歳,女性.右下腹部に手挙大の腫瘤を触知され入院した.腹部USでは径10cmの腫瘤が指摘され,腹部CT造影像では不均一に造影された. MRIではT1強調像で低~等信号, T2強調像で大部分肝実質と等信号で中心にまだらな高信号を有す腫瘤として描出された.血管造影では軽度血管増生を伴うhypovascular massを示し,右第2, 3腰動脈からの栄養血管を認めた. CT, MRI, 下大静脈造影いずれにおいてもIVCの著明な圧排がみられた.腫瘍は経腹的に摘出され,病理組織診断は比較的高分化な平滑筋肉腫であった.
  • 小川 明臣, 高野 正博, 高木 幸一, 藤本 直幸, 近間 英樹, 黒木 政純, 樋高 克彦, 久次 武晴
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2472-2476
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で下血を主訴に来院し,背部を中心としたcafe au lait spotsを認め,腹部触診にて右下腹部に硬い腫瘤を触知した. CT, MRIで右腸腰筋と椎体との問に直径約15cmの腫瘍を認めた. von Recklinghausen症に合併した後腹膜神経原性腫瘍と診断し,開腹手術を施行した.腫瘍は右の腸腰筋上に位置し,骨盤腔を占めるように存在し,右L4, L5神経根より発生していると思われた.大きさは小児頭大,硬さは弾性硬,表面はほぼ平滑であり,周囲臓器への浸潤は認めなかった.病理組織学的診断は良性の神経線維腫であった. von Recklinghausen病に合併した後腹膜神経線維腫は稀な疾患で,本邦では21例が報告されているにすぎない.そのほとんどは悪性で比較的早期に再発している.術後の病理診断で良性であった場合でも,後に悪性化をきたした報告もあり,今後厳重な経過観察が必要と思われた.
  • 松田 正裕, 平田 雄三, 杉 桂二, 高橋 護, 高橋 信
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2477-2479
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腰ヘルニアは,比較的稀な疾患である.その治療法としては手術しかなく, Dowd法をはじめ種々の術式が報告されている.
    今回,われわれは, 52歳男性で,外傷後に発症した下腰ヘルニアに対して,近年普及しつつある腹腔鏡下手術を施行した.術後経過も良好であり,現在術後1年であるが,再発も認めず,腰ヘルニアに対して有用な手術法の1つと考える.
  • 酒井 浩一, 西村 寛, 小中 敏生, 柚木 利紀, 犬塚 清久, 片山 達生, 高宮 博樹, 掛川 暉夫
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2480-2484
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に診断し得た閉鎖孔ヘルニアの2症例を経験したので報告する.
    症例1は81歳女性でイレウス症状, Howship. Romberg徴候を認め,イレウス管からの造影で左恥骨上で小腸像が途絶し,腹部CTで左恥骨筋下に小腸と連続した小腫瘤陰影を認め閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し開腹手術を行った.回腸が左閉鎖孔に嵌頓し,小腸が約150cm壊死に陥っていたため,小腸切除,閉鎖孔の縫合閉鎖を行った.症例2は84歳女性でイレウス症状を呈し,イレウス管からの造影で右恥骨部直上で小腸像が途絶し,腹部CTで右恥骨筋直下に小腫瘤を認め閉鎖孔ヘルニア嵌頓を疑い,開腹手術を行った.回腸が右閉鎖孔に嵌頓し血行障害を起こしていたため,この部分の回腸の切除と閉鎖孔の縫合閉鎖を行った.本疾患の予後は不良であるため,高齢女性のイレウス症例に遭遇した場合,まず,本疾患を念頭におき早期に骨盤部CTまたはMRI検査を行い診断を確定することが重要である.
  • 近藤 匡, 植野 映, 森島 勇, 田中 秀行, 矢澤 卓也, 相吉 悠治
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2485-2489
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    55歳女性,左腋窩腫瘤を自覚し来院し,脂肪腫と診断された. 4年後左上肢の痺れを主訴に,当院に入院となった.画像上脂肪肉腫が疑われた.術前の切開生検にて血管筋脂肪腫と診断されたため,左上肢機能を温存しつつ腫瘍を摘出することができた.左腋窩発生の血管筋脂肪腫は国内外においてこれまで報告はなく,文献的考察を加え報告する.
  • 谷口 雅彦, 福島 靖典, 吉岡 誠, 早瀬 崇洋, 竹智 義臣, 古賀 保範
    1995 年 56 巻 11 号 p. 2490-2494
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    発症後3日経過した下肢急性動脈閉塞症の患者に対し,血栓除去後, myonephropatic metabolic syndrome (以下MNMS)の重篤化を回避する目的でlimb wash-outを施行した症例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.右下肢痛,チアノーゼ出現3日後当院紹介受診.血管造影にて右膝窩動脈以下の急性動脈閉塞症と診断し,緊急手術を施行した.血栓除去後,ヘパリン加乳酸リンゲル液2,000mlによるlimbwash-outを行った.術後MNMSによる重篤な合併症を呈することなく救肢救命し得た. MNMSは虚血肢から放出される有害物質によって発症するとされる予後不良の疾患である. limbwash-outはこの有害物質を除去することよりMNMSの重篤化回避に有効であると考えられた.
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