日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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57 巻, 12 号
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  • 山川 達郎, 梶元 照穂, 雨宮 邦彦, 新井 健広, 古田 一徳, 林 賢, 平野 正満, 春日井 尚, 木村 泰三, 田中 純一, 津村 ...
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2861-2871
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 野並 芳樹, 佐藤 幸治, 西森 秀明, 福冨 敬, 山本 彰, 広瀬 邦彦, 山城 敏行, 小越 章平
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2872-2878
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    急性破裂性腹部大動脈瘤症例(20例)を待機手術症例(非破裂症例82例および慢性破裂症例2例を併せた84例)と性別,手術時年齢,大動脈瘤最大横径(術前CT検査施行例のみ),出血量,輸血量,尿量を比較し,更に急性破裂症例を救命群10例,術中,術直後死亡群5例,多臓器不全で周術期死亡群5例に区分し病態,手術所見を比較検討した.急性破裂例では非破裂例に比べ瘤最大横径は高値を示し手術時間は長く且っ術中出血量,輸血量は多量であった.急性破裂例のうち麻酔導入時収縮期血圧60mmHg未満の症例,乏尿例, suprarenal type, 腎動脈中枢側大動脈遮断例,結腸壊死例,十二指腸瘻形成例,下大静脈瘻形成例の手術予後は不良であった.結腸壊死例,十二指腸瘻形成例ではリファンピシン浸潤人工血管での再建,大網による隔壁或いは非解剖学的再建を行う等の工夫が必要であった.下大静脈瘻形成例は手術前からの的確な診断が大切である.
  • 前場 隆志, 前田 肇, 若林 久男, 岡田 節雄, 有岡 一郎
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2879-2883
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下大静脈(IVC)を合併切除した腹部悪性腫瘍12例(原発性肝癌2例,転移性肝癌2例,腎癌6例,転移性副腎腫瘍2例)の臨床的検討を行った. IVC病変は腫瘍塞栓7例,直接浸潤5例で,腫瘍塞栓例ではIVC壁への浸潤傾向に乏しく比較的容易に摘出可能であったが,直接浸潤例では広範囲に浸潤する傾向が認められた.手術補助手段として5例に体外循環を併用し, 3例に人工血管を用いた血行再建術を行った.術後経過は良好であり, 5例に術後1年以上の生存が得られている.
    術式上の留意点として, IVC病変が肝静脈合流部に及ぶ症例や病変の範囲が広く人工血管置換術が必要と予想される症例には,体外循環を併用すべきと思われた.このようなIVCに病変が及ぶような進行型腹部悪性腫瘍例でも,切除によって長期間良好なQOLが保たれた症例も存在することから,その適応に積極的であるべきと考えられた.
  • 近森 文夫, 渋谷 進, 高瀬 靖広
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2884-2890
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    逆行性下横隔静脈造影(RIP)から経頸静脈的逆行性胃静脈瘤塞栓術(TJO)の適応について検討した.胃静脈瘤(GV) 35例を対象にRIPを施行し, GV描出の有無とシャントの大きさから, Ia (GV描出有,シャント大), Ib (GV描出有,シャント小), IIa (GV描出無,シャント大), IIb (GV描出無,シャント小)の4型に分類し, TJO成功率について検討した. TJO成功率は1群95% (21/22)に比べてII群では38% (5/13)と低率であった(p<0.01).またIIa群ではTJO成功率は71% (5/7)であったが, IIb群では0% (0/6)であった(p<0.05).以上から, RIP上GV描出可能な症例はTJO可能でありTJOのよい適応であるが, GV描出不能でシャントの小さい症例はTJOの適応外と考えられた.またRIP上GV描出不能でもシャントの大きい症例は手技工夫によりTJOが可能となりうるものと思われた.
  • 山村 義孝, 小寺 泰弘, 鳥井 彰人, 上坂 克彦, 平井 孝, 安井 健三, 森本 剛史, 加藤 知行, 紀藤 毅
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2891-2895
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大動脈周囲リンパ節(No. 16)郭清の効果と術後経過からみた問題点を検討した. No. 16郭清123例中32例(26.0%)に同リンパ節への転移を認め,肝転移や腹膜転移がある症例, S2以上, N2以上,腫瘍径5cm以上の症例に転移頻度が高率であった. No. 16への転移が確認された32例のうち2例が5年以上の長期生存をした.術後5年生存率は8.3%であり,このうちH0, P0の22例の5年生存率は12.1%であった.根治度Bの進行胃癌297例をNo. 16の郭清程度別に3群にわけ,術後合併症を比較した. No. 16の3領域以上郭清した群では, 2領域以下の郭清群や郭清しなかった群と比較して,有意に合併症の頻度が高かった.従って, No. 16郭清は生存率からみて有効ではあるが,術後合併症も多いため,全例に行うのではなく, No. 16への転移頻度が高い高危険群のうち肝や腹膜転移のない症例に限定するべきであると思われた.
  • 小坂 健夫, 中野 泰治, 菅谷 純一, 吉田 茂, 高野 靖, 秋山 高儀, 斎藤 人志, 高島 茂樹
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2896-2901
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌156例を対象に,術中腹腔洗浄液中(以下,腹腔中)の腫瘍マーカー(以下, TM)を測定し,その臨床的意義について再発予測の面より検討した.血中TM陰性でstage Ia例のMean+SDをcut-off値とすると,腹腔中TMの陽性率は, CEA 5%, AFP 4%, CA19-9 7%, CA125 30%であった. CA19-9, CEAでは深達度が深くなるにつれて腹腔中陽性例が有意に増加した.リンパ節転移例の腹腔中陽性率はAFPおよびCA19-9で有意に高く,肝転移例ではCEA, CA19-9およびCA125で有意に高かった.腹膜播種陽性例ではCA125およびCA19-9で有意に高かった.全体としての予後はいずれのTMも陰性例が陽性例に比べ良好だった.治療切除術後の腹膜再発は腹腔中CEA陽性例で高頻度である傾向がみられ,肝再発およびリンパ節再発は,腹腔中CEAおよびCA19-9陽性例での再発率が有意に高かった.以上,腹腔中TM(殊にCEAとCA19-9)の測定は治癒切除後の再発予測に有用であることが示唆された.
  • 谷 雅夫, 林 政澤, 神戸 文雄, 斎藤 直也, 竹下 公矢, 遠藤 光夫
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2902-2909
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に対する内視鏡治療と縮小手術との接点(胃部分切除で根治可能な早期胃癌はあるのか)を明らかにするため, 1979年から1993年の15年間に,当科で切除術を受けた初発単発胃癌のうち,検討可能であったsm癌218例を対象として臨床病理学的特徴を検討した. n1が23例, n2が5例でリンパ節転移率は13%であった. n(+)例は全例2cmより大きく, sm2以深のものであった. OI型や混合型のsm癌にn(+)が多い(OI型: 17%, OIIa+IIc型: 23%, OIIc混合型: 22%)のに対し, OIIa単独型sm癌は大きさにかかわりなく全例n(-), OIIc単独型sm癌は9%がn(+)であった.またOIIc単独型sm癌でも大きさ3cm以下のものは3%にn(+)を認めるのみで, sm1のものにはリンパ節転移,脈管侵襲ともに認めなかった. sm早期胃癌のうち肉眼型でOIIa単独型のもの,大きさ3cm以下のOIIc単独型で深達度sm1のものに対しては,リンパ節転移,脈管侵襲を認めないことから,胃部分切除も適用可能と思われた.
  • 前田 敦行, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 堀 明洋, 金 祐鎬
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2910-2917
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性小腸悪性リンパ腫はまれな疾患であるが,小腸悪性腫瘍の37.0%を占める.術前診断は依然困離なことが多く, 65%が緊急手術時に診断されている. 31年間に当院で経験した原発性小腸悪性リンパ腫症例20例を対象に臨床病理学的検討を行い,予後に影響を与える因子と適切な治療法を考察した.平均年齢は49.9歳であり,男女比は3:1であり,全例に外科的切除を施行した.累積5年生存率は51.7%であったが,腫瘍死例は1例を除き術後1年1カ月以内に死亡していた.腫瘍径10cm以上,深達度si, Naqvi Stage 3, 4,手術根治度B, Cの症例は予後不良であった.組織学的リンパ節転移の有無,腫瘍肉眼型,組織型は予後に有意な影響を与えなかった.治療法としてはまず根治度A. Bを目指した外科的切除を行い,全例に化学療法を施行するのがよいと思われた.また術後約2年の治療および経過観察が重要であると思われた.
  • 長田 真二, 種村 廣巳, 大下 裕夫
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2918-2923
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近10年間に経験した壁深達度mp以上の大腸癌症例中,イレウス群(イ群)75例と,非イレウス群394例を比較検討した.結果: 1)イレウスの占居部位別発生数ではS状結腸が,また発生頻度は横行結腸が最も多かった. 2)背景因子,切除率に差はなかった. 3)術前CEA, CA19-9値陽性率は有意にイ群に高かった(p<0.05). 4)肉眼的には両群とも2型が多かったが, HとP陽性率はイ群に高く(p<0.05),壁深達度ss以上で比較してもイ群に転移陽性例が多かった(p<0.05). 5)組織学的にはイ群のly, vおよびn陽性率は高く(p<0.01),壁深達度を限定しても同様であった. 6)縫合不全率に差はなかったが,イ群の術後合併症発生頻度,術死率は有意(p<0.01)に高かった. 7)イ群の5生率は有意(p<0.05)に不良であったが治癒切除例では差はなく,イレウス症例にも治癒切除をめざした手術を要するものと考えられた.
  • 貞廣 荘太郎, 向井 正哉, 石田 秀樹, 徳永 信弘, 鈴木 俊之, 木村 富彦, 石川 健二, 岩瀬 弘忠, 安田 聖栄, 田島 知郎, ...
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2924-2927
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸癌に対する通常郭清を伴う手術において,自律神経温存手術で温存する骨盤神経叢を含む神経組織を組織学的に検索し,リンパ組織,癌の浸潤転移について調査した.温存されるべき神経組織中には,神経線維束,神経節,小動脈,小静脈が認められ,検索した16例中12例(75%)では,リンパ節あるいはリンパ小節が認められた.リンパ組織の残存には部位差がみられ,下腸間膜動脈分岐部から大動脈分岐部までの大動脈前神経叢,上下腹神経叢では11例(69%),下腹神経3例(19%),骨盤神経叢5例(31%)であった.これらのリンパ節,リンパ小節には癌の転移は認められなかった.びまん浸潤型の低分化腺癌の1例では,骨盤神経叢および下腹神経周囲の軟部組織中に原発巣と連続していない癌の転移浸潤が認められた.以上から,温存される神経組織の近傍には第1群リンパ節の一部が残される可能性が高く,術中にリンパ節転移の確実な診断が困難である現在,本術式を進行癌患者に適応する場合には何らかの補助療法を要すると考えられた.
  • 開腹脾摘術との比較
    下松谷 匠, 堀内 哲也, 谷川 允彦, 平松 義規, 吉田 誠, 谷口 哲郎, 宮永 克也, 横町 順, 天谷 博一, 木村 成里, 藤井 ...
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2928-2933
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科において特発性血小板減少性紫斑病に対し脾摘出術を行ったのは28例であった.開腹脾摘術は1992年まで19例に行い,腹腔鏡下脾摘はその後9例に行った.手術時間は開腹群は平均126分で腹腔鏡下群は平均244分であり前者の方が有意に短かった.出血量は開腹群は平均322ccで腹腔鏡下群は平均713ccであり前者の方が少なかった.なお腹腔鏡下群で開腹移行例はなかった.副脾は開腹群で4例(21%),腹腔鏡下群で3例(33.3%)認めた.術後入院期間は,開腹群は総入院期間は39.5日で,内科転科までは15.1日であり,いずれも腹腔鏡下群の10日に比し有意に長かった.術後遠隔期の脾摘の効果は,開腹群は著効53.3%有効13.3%,やや有効20.0%,無効13.3%であったのに対し,腹腔鏡下群では著効44.4%,有効33.3%,やや有効22.2%で無効は認めず,両者に差を認めなかった.腹腔鏡下脾摘術は本疾患の治療に積極的に選択すべき方法と思われる.
  • 上田 重春, 高橋 広, 明比 俊, 中田 達広, 佐藤 尚, 木村 茂
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2934-2937
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺乳頭癌術後のリンパ節転移再発は頸部に多くみられるが,腋窩リンパ節転移はきわめてまれである.甲状腺乳頭癌術後7年目に左腋窩リンパ節のみに転移をきたした1例を経験した.症例は45歳女性. 1987年に甲状腺乳頭癌にて甲状腺全摘,両側頸部リンパ節郭清術を施行した.左VI, VIIのリンパ節に巨大な転移があり,浸潤のあった左胸鎖乳突筋の一部を合併切除した(JT3, N3, M0). 1995年8月201T1シンチで左腋窩に集積を認め,母指頭大に腫大した腫瘤を触知したため,腫瘤を摘出した.甲状腺乳頭癌のリンパ節転移であった.術後のシンチでは異常集積を認めなかった.初発時の深頸リンパ節転移巣が径8cmと巨大であったために鎖骨上リンパ節からのリンパ流が変化し,腋窩転移を引き起こしたのではないかと考えられる.
  • 塩谷 恵一, 石田 常博, 草場 輝雄, 勅使河原 修
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2938-2941
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    頸部リンパ節転移より発見された甲状腺オカルト癌の2例を報告する.症例1は鎖骨上腫瘤の穿刺吸引細胞診(ABC)で悪性腫瘍の転移が疑われ,生検にて甲状腺乳頭癌の転移と診断された.症例2は外側頸部腫瘤のABCにて穿刺液中のサイログロブリンが高値であり,甲状腺癌の転移と考えられた. 2例とも術前に甲状腺腫を触れず,また超音波検査やシンチグラフィーでも腫瘤を検出できなかった.甲状腺亜全摘・郭清を行い,微小乳頭癌で多発病巣を認め,リンパ節転移は各々1/19, 2/22に陽性であった.腫大した頸部リンパ節を触知する場合には,頸部リンパ節転移の可能性も考慮して, ABCないし生検で確定診断を下す必要がある.
  • 鈴木 育宏, 徳田 裕, 木村 富彦, 田島 知郎, 三富 利夫, 長村 義之
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2942-2946
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性. 1976年5月,左乳癌の診断で定型的乳房切断術および放射線照射施行(病期分類,照射線量に関し詳細不明). 1993年4月から左鎖骨上部に掻痒感を自覚し,急速に増大する腫瘤を認め近医受診後,当院紹介となった.入院時,左鎖骨上部に10×8cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は分葉状で易出血性,可動性は不良であった.胸部CT, MRI,血管造影を施行し,頸横動脈,上行頸動脈を栄養血管とする腫瘍濃染像,および鎖骨の破壊を認めた. 1993年8月,腫瘍摘出,鎖骨合併切除,左広背筋弁形成術を施行した.病理組織学的にmalignant fibrous histiocytoma(以下MFH)と診断した症例を経験したので報告する.術後は皮弁の感染,左上肢運動障害を認めたが保存的に改善し,現在術後2年8カ月経過しているが再発の徴候なく外来通院中である.
  • 神保 慎, 岩瀬 克己, 辻村 享, 大谷 享, 花井 恒一, 稲垣 朝子, 小林 尚美, 三浦 馥, 黒田 誠, 高橋 正樹
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2947-2950
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性. 1992年7月中旬,右乳房のしこりに気付き当科受診.来院時,右乳房外側に小豆大の硬い可動性良好な球形の腫瘤を触知した.乳腺X線撮影では明らかな腫瘤影は認めず,超音波断層検査では表面が比較的平滑で大きさ6×4mmの内部がほぼ均一な低吸収腫瘤を認め,線維腺腫を疑った.同時に超音波下に穿刺吸引細胞診を行ったところ乳管癌の診断を得た.占居部位は外側で乳癌取扱い規約の右CD境界, T1aN0M0, 病期Iで, 8月11日右乳腺部分切除術(1/4以下)と腋窩リンパ節郭清を施行した.また,残存乳腺に対して術後照射(接線照射, 2Gy×25回,総線量50Gy)を施行した.
  • 和田 徳昭, 池田 正, 平松 秀子, 榎本 耕治, 北島 政樹
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2951-2954
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    急速に腫瘍内出血をきたし乳房が腫大,皮膚からも出血を認め緊急手術を要した骨軟骨化生を伴う乳癌の1例を経験した.症例は45歳の女性で,左乳房腫瘤,左血性乳頭分泌,貧血を主訴に来院した.左乳房は腫瘍内に出血し嚢腫状となり, 19×20cmに腫大し,伸展され発赤した皮膚から出血を認めた.腫大する乳房,出血のコントロールのため血管塞栓術を施行するも十分でなく,緊急手術を施行(定型的乳房切除術)した.組織は肉腫様の組織が優位を占めるが,骨・軟骨化生を伴うなど多彩な像を呈する浸潤性乳癌であった.
  • 石田 雅俊, 宮田 幹世, 川崎 靖仁, 高橋 良和, 吉川 憲秀
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2955-2957
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性で,左乳頭部の硬化・発赤が2年前より存在していた.マンモグラフィーでは乳頭直下に放射状に拡がる腫瘍陰影を認めた.乳房Paget病を疑い,生検・根治手術(Auchincloss手術)を施行したところ,腫瘍径は20×15mmで病理組織所見は乳腺管状癌のhomogeneous typeであった.乳頭表皮にびらんはあるが,表皮内浸潤は認められなかった.
    乳腺管状癌もPaget病もいずれも発生頻度の少ない乳腺悪性腫瘍である.乳頭直下に発生し, Paget病との鑑別が切除標本以外では困難であったhomogeneous typeの乳腺管状癌を経験したので報告した.
  • 遠山 竜也, 岩瀬 弘敬, 小林 俊三, 住田 紀夫, 岸川 博隆, 中前 勝視
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2958-2962
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺紡錘細胞癌は比較的まれな疾患で,本邦では乳癌全体の0.12~0.15%とされている.症例は, 58歳女性で,右乳房に8×8cmの腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診にて非上皮性の悪性腫瘍が疑われたが,定乳切後には,紡錘形の細胞が錯綜した肉腫様部分と充実腺管癌部分が混在した乳腺紡錘細胞癌と組織診断された.肉腫様部分には破骨細胞様の多核巨細胞巣が散在していた.患者は術後4カ月で肺転移をきたし,術後8カ月病的骨折による肺塞栓にて死亡した.化学内分泌療法は無効であった.免疫組織学的には, KeratinとEMA, Vimentinは充実腺管癌部分と肉腫様部分で陽性であった. ERは充実腺管癌部分で陽性であったが,肉腫様部分では陰性であった.これらは通常型乳癌の存在を基盤に,より未分化な細胞に形質転換したことを支持するものと考えられた.マクロファージを認識するCD68は,多核巨細胞に陽性で貪食細胞由来を示唆した.
  • 梅津 清明, 松永 忠東, 中村 祐子, 藤井 雅彦, 日馬 幹弘, 小柳 泰久
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2963-2967
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳頭異常分泌を主訴とし,広範な乳管内進展を示すアポクリン癌と診断された1例を経験した.分泌物細胞診では,クロマチンの増量した大小不同の核を有する細胞と,背景には壊死物質が目立ち,面疱癌と診断され,乳管内視鏡では乳管壁の発赤と粗造を認めた.分泌物中CEA濃度は1,000ng/ml, CEA染色,抗Gross cystc disease fluid protein (GCDFP)-15染色による免疫染色は陽性であった.
    本邦報告例は75例で,乳頭異常分泌を主訴としたアポクリン癌は本症例で4例目であり, 2例は本症例と同様に徴小浸潤癌, 2例は非浸潤癌であり,いずれも乳管内進展を主体としていた.
  • 林 康史, 田尻 道彦, 山形 達史, 石井 治彦, 坂本 和裕, 石橋 信
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2968-2973
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は16歳,男性.画像上,巨大な前縦隔腫瘤を認め,血清AFPの異常な高値を認めたため, NSGCTと診断した.染色体検査にて,性染色体XXYのKlinefelter症候群を認めた.性腺,後腹膜などには異常を認めず,縦隔原発と診断した.右中葉の無気肺を認めたが,術前の画像診断では,周囲臓器への浸潤,肺転移は認めなかったため,切除を先行した.拡大胸腺全摘術に準じて周囲リンパ節郭清を含めて腫瘍を摘出した.術後,血清AFPを指標として,化学療法(CBDCA, Etoposide, Bleomycin)を2クール施行した.術後約5年を経過した現在,再発の徴候なく健在である.
    血清AFPあるいはhCGが高値を示す縦隔腫瘍はNSGCTと確診してよく,治療法としては,化学療法を第1選択にすべきと考えられるが,本症例のように切除を先行してもよい症例もあると思われる.
  • 平松 義規, 木村 哲也, 井隼 彰夫, 千葉 幸夫, 村岡 隆介
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2974-2978
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 67歳の男性, 6カ月前に早期胃癌により胃切除術をうけた際,結核性腸腰筋膿瘍を指摘されたが,切除せず抗結核剤にて経過観察をしていた.術後3カ月頃より,腰痛,微熱が出現し腹部大動脈瘤を指摘され,増大傾向を示したため人工血管置換術,脊椎カリエスの掻破および自家骨移植術,腸腰筋膿瘍切除術を一期的に行った.術後抗結核治療にて術後2年経過良好である.結核性大動脈瘤は,非常に稀な疾患である.そのため手術方法,時期,補助化学療法などについて,明確な指針は示されておらず個々の症例で治療方法が異なっている.しかし原因と思われる感染巣を完全切除することにより,可及的に感染源を根絶し,再建方法に関しても完全切除が可能で適切な化学療法を投与できればin situでの人工血管置換術も可能と考えられた.
  • 中尾 雅朋, 小玉 敏宏, 佐々木 学, 岡本 順子, 黒田 克彦
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2979-2983
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    発症後13日目の晩期にバルーンカテーテルを用いた塞栓除去術が奏功した腹部大動脈塞栓症の1例を経験したので報告する.
    患者は73歳の女性で心疾患の精査目的にて近医入院中であったが,仰臥位にて起き上がろうとした際,右下肢疼痛・左下肢しびれを自覚し起立不可能となった.保存的治療にても軽快しないため発症9日目に当科入院となり,腹部大動脈造影を施行したところ総腸骨動脈分岐部直上にて閉塞を認めた.腹部大動脈血栓塞栓症にて血行再建術の適応ありと診断,発症後13日目であったが,まずバルーンカテーテルを用いた血栓除去術を試みた.
    経過は良好にて,リハビリテーション後,歩行可能となり術後5週目に退院となった.
    急性動脈閉塞症は晩期手術においても塞栓摘除の効果を期待しうる症例もあり,まずバルーンカテーテルを用いた塞栓摘除術を試みるべきであると考えられた.
  • 中村 素行, 岡島 邦雄, 森田 眞照, 梁 壽男, 奥田 準二, 千福 貞博
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2984-2988
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道憩室を伴った先天性食道気管支瘻の1例を経験した.症例は61歳の女性で,腹痛の精査目的にて上部消化管造影検査を施行したところ食道憩室を伴った食道気管支瘻を認めた.手術は瘻管切除術を施行した.手術所見では胸部中部食道に憩室を認め,その先端より瘻孔が存在し,右葉と交通していた.病理組織学的には,(1)瘻孔周囲に炎症所見なく,(2)瘻孔部は重層扁平上皮から気管支円柱上皮に移行し,その下層には筋層を認め,(3)この移行部周辺には低形成な肺胞組織が認められた.本症は先天性食道気管支瘻と診断した.本邦では,食道憩室を伴う先天性食道気管支瘻は,本例を含め44例報告されているが,先天性であることの基準として上記3点が重要である.
  • 宮田 博志, 岡川 和弘, 西岡 清訓, 青木 太郎, 請井 敏定, 上村 佳央, 宮内 啓輔, 寺島 毅, 金子 正, 水谷 澄夫
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2989-2994
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    骨形成を伴った食道偽肉腫の極めてまれな1症例を経験したので報告する.症例は58歳女性.胸部上中部食道の隆起型腫瘍に対し,食道亜全摘・胸骨後経由胃管利用食道再建術を施行した.腫瘍は5.5×3.0cm大の隆起性病変であり,中分化型扁平上皮癌と多彩な間葉系細胞の増殖を認めたが移行像はみられなかった.免疫組織化学染色でkeratin, epithelial membrane antigen (EMA)の上皮性抗体は癌腫のみで, α1-antichimotrypsin (α1-ACT), α-smooth muscle actin (α-SMA), vimentinの非上皮性抗体は肉腫様部分のみで陽性であり,さらに肉腫病変には平滑筋様部分,骨形成像もみられたが細胞の異型度は乏しかったことより食道偽肉腫と診断した.本病変は,癌巣中央に潰瘍を形成し,間葉系細胞の急速な過剰増殖が惹起されpolyp状を呈し,内腔に突出する口側部分は機械的刺激によって欠落し肉芽形成反応によって再生されたと推測された.
  • 吉田 一成, 梁 英樹, 秋山 和宏, 山下 由紀, 末永 洋右, 井手 博子
    1996 年 57 巻 12 号 p. 2995-2999
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道のいわゆる癌肉腫は,多くがポリープ状腫瘤を呈するため比較的浅い深達度での発見頻度が高いも,深達度に比して予後は不良である.再発形式は扁平上皮癌のリンパ節再発を主体としている.今回経験した症例は治癒切除を施行,術後合併化学療法を行うも,急速に増大する巨大な縦隔腫瘍を形成し再発した.症例は56歳男性.胸部不快感を主訴に来院,巨大な食道のポリープ状腫瘤を認め入院.生検所見より紡錘形細胞を認め,肉眼所見と合せ癌肉腫と診断.切除標本では, 8.1×5.2×3.9cmの茎を有するポリープ型腫瘍であり,病理組織像では紡錘形細胞と扁平上皮癌が混在し,その間に移行像があった.組織学的には, mp, ly (+), v0, n (-), ow (-), aw (-), P10 stage Iであった.術後4カ月目にCDDP+5FU+Leucovorinの3剤併用化学療法を施行するも, 9カ月目に後縦隔を占める巨大な腫瘍形成再発し,右胸腔へ穿破出血した.まれな再発形式と考えられた.
  • 橋本 瑞生, 秋田 幸彦, 北川 喜己, 伊藤 直人, 佐々木 英二, 芥川 篤史, 七野 滋彦, 佐藤 太一郎
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3000-3004
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    粘液産生膵腫瘍を合併した表在食道癌を二期分割で根治手術施行した.症例は71歳男性,主訴胸痛.術前診断は部位Im, 深達度sm, 0-IIc型の食道扁平上皮癌と膵体部粘液産生腫瘍.まず頸部リンパ節郭清,膵体尾部切除脾摘出術施行.癒着防止に膵剥離面ヘフィブリン糊散布,胃大彎をゼラチンフィルムで包んだ.第2手術時,フィブリン糊散布部は癒着なし.胃大彎はゼラチンフィルムがずれて高度に癒着,胃管作製できず,胸部食道亜全摘,右半結腸間置の後縦隔経路再建とした.食道は中分化型扁平上皮癌, sm2, ie(-), ly1, v0, n(-), 膵はadenoma.術後食道回腸吻合部の狭窄生じるも内視鏡的バルーン拡張術施行し退院.フィブリン糊は癒着防止に有効,ゼラチンフィルムは腸管運動のある腹腔内での固定法が課題.
  • 安部 要蔵, 古川 正人, 酒井 敦, 三根 義和
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3005-3008
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    消化管重複症の多くは回腸末端にみられ,胃には比較的稀で消化管重複症全体の約3~10%程度といわれている.われわれは最近胃重複症の1例を経験したので文献的考察を加え報告した.症例は25歳男性で平成4年9月,上腹部痛を主訴に近医受診し十二指腸潰瘍と診断され,その際に施行された腹部超音波検査にて後腹膜腫瘍を疑われ当院へ紹介入院となった.入院後の腹部超音波, CT, MRIにて膵尾部に接してその上方に, 5.8×5×4cmの単房性の嚢腫を認め,膵仮性嚢腫と診断し, 12月10日開腹した.嚢腫は腹腔内にあり,膵の前面で胃と共通の漿膜を有して存在し表面平滑で柔らかく肉眼的には他の臓器との間に交通はなく血管の流入も認めず,胃後壁側より発生したものと考えられた.嚢腫を胃壁より剥離すると,胃内腔との交通はなく,胃壁よりの流入血管を認めるのみであった.病理組織検査では,腺管や絨毛を有する円柱上皮を認め,筋層など消化管構造を有し胃重複症と診断した.
  • 平岡 邦彦, 阿部 道夫, 新谷 史明
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3009-3013
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    盲腸癌にて右半結腸切除術後,早期に胃重積をきたした1例を経験したので報告する.症例は73歳,男性.腹痛を主訴に某病院を受診し,イレウスの診断で入院した.約1カ月後,盲腸癌の診断下に右半結腸切除術が施行された.術後8日目から頻回に嘔吐が出現し,精査加療のため当院に紹介入院となった.上部消化管造影上,胃幽門側の変形と閉塞を認め,胃内視鏡では胃体下部から前庭部前壁の幽門への陥入がみられた.胃外部からの圧迫による幽門閉塞を疑い,開腹術を行った.大腸癌手術時に留置されたドレーンの胃圧迫による胃重積と考えられ,胃重積解除術を施行した.
    胃重積としては胃腫瘍による胃十二指腸重積,幽門側胃切後の胃空腸重積が一般的であるが,胃外部からの圧迫による胃胃重積の報告はなく,ドレーン合併症からみても極めてまれな症例と思われた.
  • 江本 宏史, 上野 正義, 金泉 年郁, 杉森 志穂, 八木 正躬, 下村 英明, 中野 博重
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3014-3018
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.脊髄小脳変性症にて他施設にて療養中であったが,持続する大量嘔吐を主訴に精査目的にて当科に入院となった.腹部単純X線でイレウス像を認めなかったが,上部消化管透視で胃体中部から幽門前部にかけての圧排像を認めた.胃内視鏡,腹部CTおよび腹部超音波検査にて巨大胃粘膜下腫瘍と診断し開腹術を施行した.開腹所見では,上腹部全体をしめる大脳回転様の巨大な腫瘍で隣接臓器への直接浸潤を認めなかったため胃体中部前壁の一部を含めて腫瘍を全摘出した.摘出標本は最大径25.5cm,重さ1.8kgで中心部は壊死に陥っていた.胃原発平滑筋肉腫を疑ったが,病理組織標本では平滑筋腫と診断した.
  • 植田 史朗, 原 育史, 野阪 善雅, 金 良根, 山家 健一
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3019-3024
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃・十二指腸同時性早期重複癌を報告する.症例は64歳の男性,悪心を主訴に受診し精査にて胃幽門部にIIa+IIc型早期胃癌,十二指腸球部にBorrmann 2型様十二指腸癌の診断を得て膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には胃病変は高分化型腺癌,深達度mで,十二指腸病変は乳頭腺癌,深達度smでリンパ節転移を認めなかった.本邦では胃・十二指腸同時性重複癌は27例が報告されており,平均年齢64歳で,男性17例,女性10例であった.胃癌の特徴としては幽門部, IIc, 高分化型腺癌,十二指腸癌では球部, Borrmann 2型様,高分化型腺癌が多かった.術式は膵頭十二指腸切除および球部切除を含んだ胃切除が多く用いられていた.胃癌と比較し,十二指腸癌は隆起性病変が多く,早期癌ではリンパ節転移の頻度が非常に少ない.したがってこの点を考慮にいれた全身状態に応じた術式を選択することが重要であると考えられた.
  • 法水 信治, 武田 秀夫, 黒柳 裕, 小島 良宏, 久保田 仁, 多米 英介
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3025-3028
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は消化器癌の中でも比較的まれな疾患であり,また早期発見,早期診断される症例が少なく予後不良な疾患の一つである.症例は54歳の女性で悪心・腹部不快感を主訴として入院した.血中CA19-9は49.9U/mlと高値を示した.上部消化管造影検査にてTreiz靱帯より約50cm肛門側の空腸に腫瘍性狭窄がみられ,上腸間膜動脈造影検査にて中等度の血管新生像を認めた.空腸癌の診断にて,リンパ節郭清を伴う空腸切除術を施行した.病理組織学的には乳頭状に増殖する高分化腺癌で,漿膜下層まで浸潤していた.術後血中CA19-9は低下し,また酵素抗体法によるCA19-9染色で陽性の結果を得た.原発性小腸癌の中でCA19-9を産生するものはまれであるが,本症例を経験し, CA19-9の測定が小腸癌の存在診断ならびに経過観察の指標として有用であると考えられた.
  • 池田 正視, 島田 長人, 柴 忠明
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3029-3032
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    10年前に幽門側胃切除術を受けた29歳の男性.夕食のおでんでシラタキコンニャクの球を2つ続けて食べ,翌日の昼より腹痛.嘔気,嘔吐が出現し来院した.腹部診察,単純撮影, CT scan所見より,絞扼性イレウスと診断し同日開腹術を施行した.開腹所見はシラタキコンニャク塊が回盲弁より口側約60cmの回腸を閉塞し,口側の腸管が拡張して捻転し,食事に起因する絞扼性イレウスであった.食物によるイレウスの多くは緩徐な発症経過をたどり術前に癒着性イレウスの診断にて開腹となる症例がほとんどであるが,今回のように捻転絞扼することも念頭に入れるべきであると考える.本症の診断にCT scanは有用であった.また本症を回避するには,胃切除術の再建法を充分配慮すべきで,胃切除後患者に対しては食事指導を徹底することが大切と考えられた.
  • 永井 盛太, 林 実夫, 梅田 裕之, 久留宮 隆, 谷川 寛自, 今井 俊積
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3033-3037
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.主訴は腹部膨満感.腹部CTで下腹部に同心円状に重積した腸管とその内腔にCT値が-98HUの腫瘤像を認めた.小腸透視では回腸中部に重積像を呈し,圧迫にて容易に解除され,内腔に表面平滑な有茎性腫瘤を認めた.腫瘤のCT値より回腸脂肪腫と診断し,これによる腸重積症と考え手術を施行した.開腹所見では,腸重積は解除されていたが,回腸中部に比較的柔らかい拇指頭大の分葉状腫瘤を2個触知したので,回腸部分切除術を施行した.組織学的に両者は28×45×25mm, 48×50×20mmの脂肪腫であり,これを先進部とした腸重積症と考えられた.術前診断が可能であった回腸脂肪腫はまれであり文献的考察を加えて報告する.
  • 芝原 一繁, 宗本 義則, 浅田 康之, 飯田 善郎, 森田 克哉, 笠原 善郎, 三井 毅, 三浦 将司, 藤沢 正清
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3038-3041
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で肛門出血を主訴に近医を受診し,直腸腫瘍を疑われ手術目的で当科に紹介,入院となった.直腸指診で半周性の柔らかい腫瘤を触知した.注腸透視では下部直腸を中心に約5cmのカリフラワー状の腫瘤陰影を認めた.大腸内視鏡検査では肛門縁より約5cmに易出血性の比較的柔らかい粗大顆粒状の隆起性病変を認めた.生検の結果, tubulo-villous adenomaであった.入院後は排便,いきみなどの腹圧上昇で腫瘍の肛門外脱出を繰り返した.手術は腰椎麻酔下で経肛門的腫瘍切除を施行した.切除標本は病理組織学的に一部で構造異型および細胞異型ともに高度な組織像を認めたため,腺腫内癌と診断された.本疾患は大腸腫瘍の中でも比較的稀で,その癌化率の高さが治療上問題となる.本症例においては臨床病理学的所見から局所切除が適当であったと思われた.
  • 渋谷 均, 西田 陸夫, 中野 昌志, 岡田 洋次郎, 西森 英史, 樽見 研
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3042-3046
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)の発症19年後に大腸癌を合併した1例を経験した.症例は50歳,女性. 32歳時(1973年)に粘血便を主訴として来院,全大腸炎型UCと診断され治療を受けていた. 50歳時(1992年)左側腹部痛,便秘を訴え,精査を施行.左側横行結腸に全周性の腫瘍を認め,生検の結果,低分化腺癌であった.開腹所見で腹膜播種陽性のため,姑息的に左半結腸切除を行い,術後化学療法を施行したが, 9カ月後死亡した.この症例の経過で1986年5月の大腸内視鏡(CF)ではmild dysplasiaが見られたが,その後,同年12月,および1991年8月の検査ではdysplasiaが見いだされなかった症例であり, dysplasiaの発見時点での対応の問題が挙げられる. UCの長期経過観察中の癌発症例は欧米に比較して本邦では数少ないが, 1995年12月末まで自験例を含め200例を越える報告がみられる.これらの症例を集計し,合わせて検討した.
  • 北村 聡児, 神谷 保廣, 宇佐見 詞津夫, 村元 雅之, 長谷川 毅, 石井 利治, 佐竹 章, 竹内 寧, 大久保 憲, 小谷 彦蔵
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3047-3050
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸肛門部の無色素性悪性黒色腫は非常に稀な疾患で,本邦ではこれまでに17例の報告を認めるだけである.
    症例は58歳,女性で,肛門出血,肛門痛を主訴に来院した.肛門管の10~2時方向に弾性軟な隆起性の腫瘤を触知し,生検標本にて無色素性悪性黒色腫の診断が得られた.腹会陰式直腸切断術(R3リンパ節郭清)を施行した.腫瘍は, Rb, Pの6.5×3.5×2.2cmの隆起性の腫瘍で, S-100蛋白, HMB-45陽性の無色素性悪性黒色腫と診断された.組織学的進行度はP0H0a1n2ly1v1M(-)で, stage IIIbであった.術後, DTIC, CDDP, Tamoxifenによる多剤併用化学療法を施行したが術後7カ月目に悪液質をきたし死亡した.予後向上のため術前診断,特に肉眼所見より本症を疑う診断態度が重要であることを強調した.
  • 延澤 進, 松本 日洋, 大林 日出雄, 酒井 英樹, 田中 昇
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3051-3056
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    S状結腸粘液癌による全周狭窄と多量の腹水を伴う癌性腹膜炎を呈した若年男性の初発症例に対して,化学療法の後に,姑息的切除術を施行し,初診後1年以上の延命効果を見,かつ良好なquality of lifeを保っているので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は25歳の土木作業員で, 7年3月6日,血便,腹満感を主訴にして当院内科を初診し入院.超音波検査とCTで肝転移や大動脈周囲のリンパ節の腫大は見られなかったが,癌性腹膜炎が疑われた.注腸検査でS状結腸に9cmにわたる不整な狭窄像を示し,腹水細胞診はクラスVで, mucinous carcinoma由来と考えられた. 5FU,ロイコボリン, CDDPの化学療法を2クール施行し,腹水の著明な減少を認めたが,腸管の狭窄症状はとれず, 7月3日, S状結腸切除術を施行.術後経過は良好で, 8月1日退院し, 8年3月現在経口摂取も可能で仕事にも復帰している.
  • 中川 英刀, 蓮池 康徳, 三嶋 秀行, 小林 研二, 柳生 俊夫, 辛 栄成, 福田 和弘, 小林 哲郎, 吉川 宣輝
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3057-3061
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性尾状葉肝癌の頻度は少なく,尾状葉の脈管構築の特異性から,容易に門脈内へ撒布し,血管へ浸潤を来しやすく,その予後は不良である.転移性の尾状葉肝癌はさらに稀でその実態は不明である.今回,大腸癌の尾状葉単発性転移を経験したので報告する.症例は62歳男性で2年前に多発性大腸癌で大腸全摘術を施行し,超音波検査にて尾状葉の約4cmのSOLを指摘された.腫瘍は中肝静脈,左門脈に接しており,下大静脈内シャント準備下にて拡大左葉切除+尾状葉切除を施行した.術後,強力な肝動注化学療法を施行中である.自験例を含めて大腸癌の尾状葉単発性転移は6例報告されているが, 4例が残肝に再発しており, 3年生存例はない.尾状葉転移は,尾状葉の原発性肝癌と同様,主要な脈管と隣接することから2次的な肝内進展の可能性があることと考え,そして手技上の点,予備肝機能の点からも考えて,近接した方の肝葉切除も施行し,術後に残肝に対して強力な補助化学療法が必要と考える.
  • 山野 寿久, 宮出 喜生, 三角 俊毅, 平松 靖史
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3062-3066
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    脾部分切除術を行った真性脾嚢胞症例を経験したので報告する.
    症例は45歳男性で,左季肋部痛を主訴として来院.腹部超音波検査,腹部CT検査等の諸検査の結果,脾嚢胞と診断した.自覚症状を有し,また,破裂や感染の危険性も考えられたため,手術を行った.手術は摘脾後感染症,血栓症の点を考慮し,脾機能を温存する目的で,脾部分切除術を行った.病理組織学的には,まれな真性脾嚢胞と診断された.術後経過は良好で,脾機能は十分に温存されたと思われる.脾嚢胞に対する外科的治療法として,脾部分切除術は,積極的に試みるべき治療法と考える.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 中村 陽
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3067-3068
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    69歳の女性が約1年間繰り返す,排尿時痛を主訴に当科を受診した.膀胱鏡検査では膀胱頂部に小さな嚢胞状腫瘤を認め,生検で異形細胞が見られた.臍尿膜管摘除と膀胱部分切除とを行い,病理組織学的には壁に癌を合併した尿膜管小嚢胞であった.
  • 井坂 直秀, 高垣 俊郎, 宮本 寛, 岡村 隆夫, 深尾 立
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3069-3072
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    成人の腸間膜乳び嚢胞の1例を経験したので報告する.症例は38歳の女性,腹痛と発熱を主訴に受診.腹部超音波およびComputed tomographyにより,術前,腹腔内嚢胞と診断し,開腹術試行した.術中,腸間膜嚢胞と診断し摘出した.病理組織学的には,炎症を伴い,リンパ管の嚢胞状の拡張と増殖を伴う単房性の腸間膜嚢胞で,嚢胞内容物は乳び様の液体であり,診断は腸間膜乳び嚢胞であった.成人の腸間膜嚢胞とくに乳び嚢胞は,比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 亀井 智貴, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 村田 透, 長澤 圭一, 谷合 央
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3073-3077
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は42歳,男性. 1年前からの腹部膨満感と腰痛を主訴に来院.初診時腹部は著明に膨満しており, CT, MRIより後腹膜原発の脂肪肉腫と診断した. 92年12月手術施行.腫瘍は35×30×15cm重さ9kgで病理学的にも脂肪肉腫と診断された.術後経過は順調であった. 94年2月低血糖発作にて内分泌内科入院となった. IVH管理下に経過観察していたが,極度の低血糖値が続いた.それに伴い再発腫瘍も急激な増大を示したため,腫瘍が血糖を消費するための低血糖と診断した. 94年3月手術施行.切除した腫瘍は総重量13.5kgあった. 2カ月後に施行した腹部CTでは,すでに腫瘍が再発していた. 9月のCTでは,後縦隔にも腫瘍を認め増大も著しいため, 11月に再度手術を施行した.腫瘍は総重量2.2kgであった.術後順調に回復し退院した. 95年2月には巨大な肝転移を認め,切除不能となり1カ月後に死亡した.
  • 塩澤 俊一, 土屋 嘉昭, 田中 乙雄, 牧野 春彦, 筒井 光廣, 梨本 篤, 佐野 宗明, 佐々木 壽英, 本間 慶一
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3078-3081
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    傍神経節腫(paraganglioma)は副腎髄質以外のparaganglion組織より発生する稀な腫瘍で,カテコールアミン過剰分泌のない無症候性の本症の術前診断は困難なことが多い.今回われわれは,術中操作により初めて高血圧を呈し後腹膜paragangliomaと診断した症例を経験したので報告する.症例は49歳,女性で腹部不快感を主訴に内科受診.精査の結果,神経原性の後腹膜腫瘍と診断され当科入院となった.開腹すると腹部大動脈と下大静脈の間に7×3×5cm大の充実性腫瘍を認め摘出術を施行した.術中,剥離開始とともに高血圧および心拍数増加を呈し,血中カテコールアミン分画はすべて高値を示した.また摘出終了前には血圧の低下とともにすみやかに正常化した.臨床経過からparagangliomaを疑い,術中の病理組織診にて確診した.無症候性でもfunctionalなparagangliomaは術中・術後の急激な循環動態の変化への対応が必要であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 安東 立正, 飯野 佑一, 大和田 進, 横江 隆夫, 小山 徹也, 森下 靖雄
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3082-3085
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性. 1994年9月,腎の精査目的で入院中,腹部CTで偶然に大動脈左側の腫瘤を指摘され,後腹膜腫瘍の診断で摘出した.摘出物は弾性軟で,内部に暗赤色の液体を有する嚢胞状の腫瘍で,病理学的には, Antoni A型とAntoni B型が混在する良性の神経鞘腫であった.本腫瘍は術中所見および術後の愁訴より腰神経叢より発生したと考えられた.術後経過は良好で,現在外来で経過観察中である.腰神経叢より発生した後腹膜神経鞘腫の本邦報告例は,自験例を含め5例と稀であることから,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 小林 直之, 吉野 肇一, 正村 滋, 篠原 正明, 小川 信二, 大森 泰, 小野 成夫, 田中 豊治, 豊田 圭子, 小出 紀
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3086-3090
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔内出血をきたしたが塞栓術により止血し,待期的に切除した骨盤内悪性線維性組織球腫Malignant Fibrous Histiocytoma(MFH)の1例を報告する.症例は71歳の女性.主訴は上腹部痛.既往歴として12年前に子宮筋腫にて子宮全摘,両付属器切除を施行.高血圧にて内服中.上腹部を中心に圧痛を認め,腹部CT, USで骨盤内に径7cmの腫瘍,腹腔内出血を指摘された.入院4日目に同腫瘍より再出血をきたし,両側内腸骨動脈に塞栓術を施行し,止血した. 19日後に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は易出血性で,左小骨盤壁側腹膜と茎状の構造で交通しており,割面は充実性であった.病理組織学的には, storiform patternを呈し,多核巨細胞および異常核分裂像を認め,後腹膜原発のMFHと診断された.術後経過は良好で,術後23日目に軽快退院した.しかし,術後5カ月目に局所再発を認めた.
  • 山本 貴章, 田中 宝, 竹中 能文, 森 俊雄, 篠田 昌宏
    1996 年 57 巻 12 号 p. 3091-3094
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,男性.左腎部腫瘤を主訴として来院した.尾骨の左下方に弾性軟の卵円形腫瘤を認め,穿刺吸引にて暗緑色の内容液が確認された.超音波, CT, MRI検査にて,不完全な隔壁を有するが単胞性で,大きさが約12×7×6cmの前仙骨部嚢胞性腫瘤を認め,経仙骨的に腫瘤を摘出した.腫瘤表面は平滑で暗緑色粘液を充満しており,壁内面に腫瘍性成分を認めなかった.組織学的には嚢胞壁は繊維性組織からなり,内壁の大部分で上皮は剥離していたが,一部保存されていた上皮は線毛円柱上皮であった.壁内に筋層や漿膜は認められず, tailgut cystと診断した.
    Tailgut cystの報告は極めて少なく,本症例は成人男性に発症したtalgut cystの稀有な症例であり,報告した.
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