日本臨床外科医学会雑誌
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58 巻, 11 号
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  • 山折 哲雄
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2473-2477
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 診断,治療および外科的治療の必要性について
    西脇 巨記, 本多 弓〓, 田中 宏紀, 谷脇 聡, 成瀬 博昭, 伊藤 和子, 梶 政洋
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2478-2482
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    アメーバ赤痢は法定伝染病で,近年増加傾向にある疾患である.当院は名古屋市を中心とした法定伝染病患者の受け入れ施設を有する病院であり,当院にて1982年より1992年までに経験した27例の症例において診断および治療について検討した.
    大腸炎症例が19例,肝膿瘍症例が8例あり,男性例が22例,女性例が5例であった.男性例においては約半数以上が同性愛行為を有すると思われた.初診時診断での正診率は,大腸炎症例で14%, 肝膿瘍症例で25%と低値であった.血清抗体価の測定は4種類を施行し,大腸炎症例で67%, 肝膿瘍症例で100%と良好な結果を得た.
    糞便検査,血清抗体価の測定は簡便で有用と思われ,今後,海外渡航者や同性愛者などの粘血下痢便を主訴として来院する患者に対しては積極的に施行していけばアメーバ赤痢は早期に診断できると思われた.
  • 菅野 浩樹, 君島 伊造, 土屋 敦雄, 阿部 力哉
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2483-2492
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    418例の原発性乳癌症例を対象として以下の検討を行った.リンパ節転移の状況と原発巣の腫瘍径や部位別との関連性について評価した.リンパ節転移陰性乳癌185例において2種のモノクローナル抗体,抗EMA抗体および抗MCA抗体を使用し,免疫組織染色を施行し微小転移の有無について観察した.その結果,腋窩リンパ節の転移率は原発巣の大きさとの間に相関係数0.9946で有為な正の相関がみられた.腫瘍径が1.0cm以下でも14.7%のリンパ節転移率を有し,早期からのリンパ節転移発生が推測された. n0乳癌185例に対するEMA, MCA染色陽性は3例のみで再発との関連性は認められなかった. n0乳癌再発例の検討にてリンパ節の微小転移は発見されない結果より, n0乳癌の再発は必ずしも腋窩リンパ節を介さないルートによるものと推測された.これはFisherらの唱える血行が重要な役割を果たしているsystemic diseaseと考えられる.
  • 国崎 主税, 山岡 博之, 高橋 正純, 三辺 大介, 穂坂 則臣, 嶋田 紘
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2493-2498
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    右開胸により胸部食道切除術を施行した33例を対象とし,術後呼吸器合併症に及ぼす術前,術中因子を統計学的に解析分析し,術後呼吸器合併症を予測するための判別式を作成した.
    術後呼吸器合併症を1週間以上の呼吸器管理を要した症例, 2週間以上酸素投与を必要とした症例と定義すると, 9例(27.3%)に認められた.単一因子分析では術前因子のFEV1.0/m2, MVV/m2および術中因子の出血量に有意差を認めた.ステップワイズロジスティック回帰分析ではY=0.742+0.0001517×術中出血量+0.002655×開胸時間-0.796×FEV1.0/m2で求められるY値が0.36以上の場合には呼吸器合併症が有意に多く認められた.以上より閉塞性呼吸機能障害例では術後呼吸器合併症を予防するために過大侵襲を避けるよう心掛けなければならない.
  • 谷口 哲也, 澤田 隆, 清水 哲, 河村 良寛, 岸 清志
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2499-2504
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    当科における最近7年間の胃癌手術症例552例を対象に術前血清CEA, CA19-9値と予後との関係を検討した.
    全体としての術前CEA陽性率は18.5%, CA19-9陽性率は19.5%で, stageの進行とともに陽性率は上昇した.全症例を対象とするとCEAおよびCA19-9陽性例は陰性例に比べ有意に予後不良で,特にCEA 10ng/ml以上およびCA19-9 50U/ml以上の予後は不良であった.
    これらをstage別にみると,進行したstage III, IVでは予後に差がみられなかったのに対し, CEAに関してはstage I, IIで, CA19-9に関してはstage IIにおいてそれぞれの陽性例の予後は陰性例に比べ有意に不良であった.
    これらstage I, IIについてリンパ管侵襲(ly),静脈侵襲(v)との関連をみてみると, stage IではCEA, CA19-9ともに陽性例でly陽性率が有意に高く, CA19-9陽性例ではv陽性率が高かった.一方stage IIでは関連がみられなかった.
    以上より進行度の低い胃癌に関しては術前CEA, CA19-9の値は有用な予後因子になると考えられた.
  • 行方 浩二, 武井 雅彦, 岩田 豊仁, 須郷 広之, 吉本 次郎, 高森 繁, 渡辺 心, 奥山 耕一, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 ...
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2505-2511
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性肝癌切除後で,術後早期(第4~9週)に血管造影を施行した119例を検討した.残存肝に15例(13%)に腫瘍濃染像を認めた.肝癌の局所進展因子では被膜浸潤陽性症例,肝内転移陽性症例,血管侵襲のうち門脈腫瘍栓陽性症例に有意に腫瘍濃染像を認めた.肝癌のStageが進むにつれて腫瘍濃染像が高頻度であり, Stage I, II症例とStage IV症例間に有意差を認めた.また術前AFP値が21ng/ml以上の症例で腫瘍濃染像が高頻度であった.術前・術中の各種画像診断で検出不能な微小肝内転移巣が増大してきたものである可能性が高く,術後早期の血管造影検査は切除の根治性を判断するために欠かせない検査法である.また,肝切除後早期に再発をみる例もあり,術後早期の血管造影検査は残存肝に対して予防的な治療を加えることもでき,術後の補助化学療法の手段としても有用であると思われた.
  • 長谷川 洋, 小木曽 清二, 西尾 秀樹, 村田 透, 亀井 智貴, 長沢 圭一, 谷合 央, 安藤 英也, 永井 英雅, 千田 嘉毅
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2512-2515
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下に一期的に治療を行った総胆管結石症47例について検討を行った.治療法別には,胆管切開34例,経胆嚢管的切石13例であった.胆管切開例のうち30例に対しては,一期的な縫合閉鎖を行った.切石は全例成功した.手術時間は90分から622分,経胆嚢管的切石では平均282分,胆管切開では平均249分であった.最近の15例では194分と著明に短縮した.合併症としては,一期的縫合閉鎖例で胆汁の漏出を7例(23.3%)に認めたが,いずれも1~7日と短期間に停止した.ドレーンの留置期間,入院期間は,経胆嚢管例では,それぞれ4.6日, 8.2日であり,胆管切開例では, 6.2日, 10.8日であった.特に最近の胆管切開例では, 4.3日, 8.7日と極めて良好な成績であった.腹腔鏡下の一期的な治療は,安全,確実に施行可能であり,苦痛の軽減,入院期間の短縮など患者の受ける利益は大きい.今後,第一選択の術式となり得ると考えられた.
  • 原 均, 岡島 邦雄, 磯崎 博司, 森田 真照, 石橋 孝嗣, 仁木 正己, 奥田 準二, 左古 昌蔵
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2516-2521
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌切除例のリンパ節転移状況を検索し,局所進展度に応じた適切なリンパ節郭清につき検討した.
    術後病理組織学検査が十分であった40例を検索対象とした.対象を癌の組織学的壁深達度と肝および胆管への浸潤程度によりI群(早期), II群(中期), III群(晩期)すなわちI群(m, pm, hinf0, binf0), II群(ss, hinf1, binf1), III群(se, si, hinf2以上, binf2以上)の3群に分類し検討した.
    I群は9例, II群は19例, III群は12例であった. I群はリンパ節転移症例を認めなかった. II群は肉眼型が結節型と浸潤型に転移を認め,占居部位が2領域におよぶ症例に第2群リンパ節(No. 8)の転移を認めた. III群は,転移率が92%と高率で,大動脈周囲リンパ節(N0. 16b1, No. 16b2)転移が多かった.また,第2群(No. 8)からNo. 16への転移を認めた.
    進展度別リンパ節郭清は, I群: R1, II群: R2, ただし癌が2領域におよぶ症例はNo. 16郭清を追加する. III群: R3に加え大動脈周囲リンパ節郭清を原則としている.
  • 石川 雅彦, 森本 典雄, 笹嶋 唯博, 久保 良彦, 野坂 哲也
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2522-2525
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    下肢静脈瘤に対する伏在静脈結紮併用硬化療法施行後の合併症を検討した. 1991年4月より経験した一次性下肢静脈瘤症例は677例994肢であり,このうち900肢(90.5%)に伏在静脈結紮併用硬化療法を施行した.治療前合併症では造影剤ショック3例,手術合併症では大腿静脈切離1肢などを認めた.硬化療法合併症では早期合併症として硬化剤によるアレルギー反応や循環器症状を25例に,水庖形成を121肢に認めた.溶血も1例認めたが,重篤な状態には至らなかった.晩期合併症として表在性静脈炎,蜂巣炎,色素沈着などを認めたが,保存的治療にて軽快した.下肢静脈瘤に対する伏在静脈結紮併用硬化療法の合併症に関しては,全身的合併症では早期の対処により重篤な状態を回避でき,局所的合併症は保存的治療が可能であった.
  • 嶋田 昌彦, 星本 相淳, 川本 清, 松本 秀年, 森 光生, 渡辺 衛
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2526-2528
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳房温存手術後の2症例で,術後に妊娠,出産および患側の乳汁分泌を経験した.症例1は29歳の時にC領域の左乳癌T1aN0M0の診断で乳房温存手術(Bq+Ax)を施行した.組織学的には硬癌でリンパ節転移は認められなかった.当日にMMC 10mgの静注を行い, UFT300mg/dayの内服を2年間行った.術後5年目に第一子を出産し,直後より両側の乳汁分泌があり,患側は健側の約1/3の量であるが産後10カ月まで授乳を行った.症例2は32歳の時にAC領域の線維腺腫から発生したと思われる非浸潤性乳管癌の診断で乳房温存手術(Bp+Ax)を施行した.リンパ節転移は認められず,術後化学療法は行わなかった.術後3年目に第一子を出産し,両側ともに乳汁分泌を認めたが,量が少なく,出産後2カ月で離乳した.症例1, 2ともに術後に放射線療法は行わなかった.また,妊娠および出産に際し,異常は認められず,いずれも健常児であった.
  • 横井 一樹, 原田 明生, 矢口 豊久, 村上 裕哉, 青木 英明, 藤本 牧生
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2529-2533
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    極めて稀な疾患である乳腺紡錘細胞癌の1例を経験した.症例は45歳女性で左乳房の有痛性腫瘤を主訴として来院し,乳腺肉腫の診断のもとに根治術を施行した.その後局所再発,両側肺転移,小腸転移を来たし,その都度切除を繰り返したが約2年2カ月後に死亡した.特に本疾患が小腸に転移したという報告は現在までになくその診断には苦慮した.
    国内文献により再発死亡例を調査すると,本疾患は局所再発よりも血行性転移が多く,通常型乳癌の再発例よりも急な経過をたどる傾向にあった.本疾患の治療法,予後については未だ明確となっているとは言えず今後症例の蓄積が待たれる.
  • 森田 克彦, 矢野 一麿, 衛藤 隆一, 岡崎 好夫, 森田 純二
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2534-2537
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性である. 1992年12月検診の胸部レントゲン写真で右上肺野に直径3cmの腫瘤性病変を指摘され,その後1年間経過観察されるも変化なく,画像所見とその経過より良性中皮腫あるいは神経原性腫瘍が疑われた.本人の希望があり胸腔鏡下に切除した.術中所見は大きさが3×3cm,硬度軟,表面平滑な腫瘤が第4肋間壁側胸膜下に存在し,鏡視下に容易に摘出可能であった.病理組織診断はAntoni A type優位なschwannomaであった.神経鞘腫は胸腔鏡下手術の良い適応と思われた.
  • 長澤 圭一, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 村田 透, 谷合 央, 籾山 正人
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2538-2542
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術後肺塞栓症は突然発症し,致命的となりうる術後合併症のひとつであるが,迅速に診断し適切な治療を行えば救命が可能である.今回われわれは外科手術後に発症した急性肺塞栓症3例につき若干の文献的考察を加え報告する. 1例目は47歳女性.乳癌にて全身麻酔下に定型的乳房切断術を施行した. 2例目は52歳女性.甲状腺癌にて全身麻酔下に甲状腺全摘,両側頸部リンパ節郭清を行った. 3例目は76歳女性.鼠径ヘルニアにて腰椎麻酔下にヘルニア根治術を施行した. 3例とも女性で,術前に深部静脈血栓症は指摘されていなかった.いずれも術後切離床時に発症し,発症後間もなく本症と診断し,組織プラスミノーゲンアクチベイターを投与した. 2例は著明な改善を示し救命し得たが, 3例目は人工心肺等の導入の甲斐なく死亡した.線溶療法無効例に対しては外科的治療も考慮に入れる必要があると考えられた.
  • 山本 英希, 松島 申治, 相田 成隆, 家所 良夫, 渋谷 哲男, 田中 茂夫
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2543-2546
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍の口腔内転移はまれである.今回われわれは,食道癌術後に口腔内転移をきたした1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は57歳,男性.胃潰瘍の経過観察中に食道癌を指摘され,狭心症も合併しているため当科紹介入院となった.経皮的冠動脈形成術(PTCA)施行後,右開胸開腹胸部食道全摘術を行った.組織学的進行度は, mp, n1(+), M0, P10, Stage IIであった.術後15カ月目に左上歯肉部に潰瘍形成を認め,上顎骨転移を主体とした,食道癌の口腔内転移と診断された.全身検索で,左鎖骨上リンパ節,縦隔リンパ節,肺,肝,胸椎にも転移が認められた.口腔内転移判明後,急速に全身状態悪化し1カ月で死亡した.悪性腫瘍術後の口腔内転移はまれではあるが,その予後は不良で,口腔内病変への留意と,早期診断,治療が必要である.
  • 山本 裕之, 田中 紘輝, 玉田 修吾, 浜田 信男, 平 明, 今村 健三郎
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2547-2551
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道癌と他臓器の重複癌についての報告は比較的多い.また食道癌切除後挙上胃管に発生した胃癌の報告も散見される.今回われわれは,食道胃重複癌術後4年目に胃管に発生した挙上胃管癌の1例を経験した.
    症例は69歳,男性. 65歳時に胸部中部食道癌,胃体下部小彎側後壁の早期胃癌に食道亜全摘術および胃部分切除術を施行した.十分なsurgical marginを確保し胃管を利用して,胸骨前食道胃吻合で再建した.術後4年目の内視鏡検査で胃管内に, IIcおよびIIa+IIc病変が発見された.胃管部分切除術を行い,残存胃管-空腸吻合で再建した.食道癌の治療成績の向上に伴い,術後の重複癌発生にも注目した経過観察が必要である.
  • 鎌田 喜代志, 渡辺 明彦, 山田 行重, 澤田 秀智, 石川 博文, 中野 博重
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2552-2556
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは食道癌術後4年2カ月目に胸骨後再建胃管に発生した早期胃管癌を経験した.患者は72歳男性,平成2年3月食道癌(Iu~Im)にて右開胸,開腹,食道亜全摘,胸骨後食道胃吻合術を施行した.術後放射線治療施行.退院後は食道胃管吻合部良性狭窄に対し,種々の拡張術が行われていた.平成6年5月の上部消化管造影にて胃管下部に隆起性病変を指摘されたが,吻合部狭窄のため内視鏡検査は施行できず消化管造影により経過観察をしていた.腫瘍径の増大を認め,胃管癌の疑診のもと平成7年3月22日胸骨縦切開による胃管全摘,右半結腸を用いた胸骨後再建術を施行した.病理診断は高分化型管状腺癌, stage I(n0, m)であった.食道癌術後の再建胃管癌は比較的稀で予後不良とされているが,今回早期に発見し根治手術が可能であった.今後食道癌術後のfollow upに際し,異時性胃管癌の存在も念頭におく必要があると考えられる.
  • 町支 秀樹, 須崎 真, 武藤 利茂, 梅田 一清
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2557-2561
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃腫瘍の十二指腸脱出例において典型像を認めず,嵌頓した場合は十二指腸原発腫瘍との鑑別が困難である.症例は87歳,男性.全身倦怠感にて近医を受診.胃内視鏡検査で胃角部のポリープ,十二指腸腫瘍を指摘され,当科に入院.入院時検査成績では便潜血陽性で貧血と低蛋白血症を認めた.胃透視,胃内視鏡,低緊張性十二指腸造影,腹部CT, 血管造影検査で十二指腸癌を疑い,開腹術を施行した.手術所見で十二指腸腫瘤は用手的に胃内に還納可能であり,幽門部腫瘤の十二指腸脱出と診断し,幽門側胃切除術, D0リンパ節郭清を施行した.幽門部脱出腫瘤は有茎性で病理組織学的には腺腫内癌で深達度mの高分化型腺癌であった.術後経過は良好で貧血,低蛋白血症も改善し術後24日目に退院した.
    自験例では患者は高齢であり,内視鏡的ポリベクトミーを第1選択にすべきであった.十二指腸腫瘍の鑑別診断に本症を念頭においた繰り返し検査も重要と反省させられた.
  • 三宅 敬二郎, 田中 聰, 橋本 哲明, 三宅 俊三
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2562-2565
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性で, 2カ月前より腹痛があり,複数の病院で精査を受けたが確診がつかず,今回3日前より腹痛があり近医を受診し,イレウス疑いで当院紹介入院となった.保存療法にて軽快し,外来で経過観察していたが,イレウスが再発し,小腸造影で空腸狭窄が指摘され,手術施行した.手術は腹腔鏡下でアプローチした.狭窄が1カ所であり,他の考えられる原因を除外でき,狭窄部を確認し同部を腹腔外で切除,再建した.術創は30mm, 10mm, 5mmであった.切除標本は,病理組織検査で虚血性小腸狭窄と診断された.
    虚血性小腸狭窄は稀な疾患であり,確定診断は容易ではない.今回腹腔鏡を併用することは,診断の補助となり,手術はより低侵襲に行う事ができた.検索し得た限り虚血性小腸狭窄の治療に腹腔鏡補助下手術を行った報告はなく,有効な方法と考えられたので文献的考察を加え報告する.
  • 津屋 洋, 村瀬 賢治, 金田 成宗, 高橋 親彦
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2566-2570
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃切除後10年目に発症したBraun吻合部空腸重積症を経験したので報告する.
    症例は52歳の男性で胃癌の診断で胃切除術を受けている.主訴は突然の腹痛と嘔吐であった.上部消化管透視,腹部超音波検査,腹部CT検査から空腸重積症と診断し,受診13時間後開腹術を施行した.前回の手術再建はBillroth II法(結腸前, Braun吻合付加)が行われていた. Braun吻合部から肛門側約12cmのところで輸出脚空腸が逆行性に重積し,その先端はBraun吻合部を交叉し輸入脚側から残胃空腸吻合部に達していた.重積空腸を用手的に整復したところ,整復した空腸に損傷は無く色調も良好となったので腸切除は行わず輸出脚の固定を行った.
    本症は術前検査で特徴的な画像を呈することから診断はそれ程困難ではないと考えられるが,胃切除後の上腹部痛の鑑別診断には本症を考慮に入れることが肝要と考えられた.
  • 村川 知弘, 登 政和, 田中 信孝, 古屋 隆俊, 水田 耕一, 大江 健二
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2571-2573
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Clostridium perfringens type Cに起因するenteritis necroticans (Pig-bel/Darmbrand)はパプア・ニューギニアなど発展途上国では生命を脅かす疾患として知られているが,先進国では報告例を散見するのみである.われわれは,特発性回腸穿孔と考えて腸切除し,腹腔内容の培養による菌の同定および病理組織標本よりenteritis necroticansの診断に至った1例を経験した.本邦に於いては希有な症例と考えられたため報告する.
  • 横井 公良, 森山 雄吉, 京野 昭二, 山下 精彦, 吉行 俊郎, 恩田 昌彦
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2574-2579
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)は急速な身長の伸び,神経性食思不振症,脊推前彎症などを発生原因とすることが多いが,それらに共通する病態は“やせ”である.本邦では過去11年間101例報告されており,小児を含む29歳以下の若年者(74例, 73.3%)に多く, 60歳以上(12例, 11.8%)の高齢者に少ない.症例は67歳,るい瘻著明な男性で,腹痛,嘔吐を主訴に緊急入院した.種々の検査の結果,早期胃癌,多発性胃潰瘍を合併したSMA症候群と診断し, Billroth I法及び前方転位術を施行した. SMA症候群の治療の第1選択は保存的治療であるが外科的治療をせざるを得ない場合もある.術式として十二指腸・空腸吻合(側側吻合)が75%と多く行われている.今回われわれが施行した前方転位術は10%しか行われていないが,病態生理からみると最も理想的な術式と思われる.
  • 梅原 靖彦, 木村 泰三, 大久保 忠俊, 佐野 佳彦, 鷲山 直己, 大端 考
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2580-2584
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Recklinghausen病にVater乳頭部癌と,この癌腫直下および空腸の平滑筋腫を合併した症例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.黄疸にて当院内科へ入院となった.精査の結果Vater乳頭部癌の診断のもとに外科転科となり,膵頭十二指腸切除および第2群までのリンパ節郭清術,また術中所見で空腸に漿膜下腫瘤を認めたため空腸部分切除術を施行した.病理組織診断ではVater乳頭部腫瘤は大きさ3.5×3cmで一部に印環細胞癌を含む低分化型腺癌であり,またこの癌腫直下および空腸粘膜下腫瘤はS-100蛋白染色陰性, Muscle specific actin染色陽性の平滑筋腫と診断された.自験例を含めた過去報告例の検討の結果, Recklinghausen病における消化管病変の検索に際しては, Vater乳頭部の観察は不可欠であり,小腸平滑筋腫を合併した場合に多発する傾向にあることを念頭に置くべきと思われた.
  • 井上 慎吾, 草間 俊行, 茂垣 雅俊, 名取 宏, 松川 哲之助
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2585-2588
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性で,右下腹部痛を主訴に受診した.臍右側に径5cmの境界不明瞭で軟な腫瘤を触知した.腹部超音波・CTでは同心円状の層状構造像を認め,注腸では上行結腸に円形陰影欠損像を認めたため,腸重積症と診断した.注腸での整復が不可能であったため開腹した.用手的に整復すると, 2×8cmの腫大した虫垂を認め,その根部が回盲部内腔に球状に突出し,この部分が先進部と考えられた.悪性疾患の可能性も考え,回盲部切除術を施行した.切除標本では,拡張した虫垂内腔にゼラチン様の物質が充満している虫垂粘液嚢胞であった.病理組織所見では,虫垂粘液嚢胞腺腫の診断であった.合併した腸重積を契機に発見された虫垂粘液嚢腫は比較的稀な疾患と考えられた.
  • 山村 浩然, 石田 文生, 関 健一郎, 服部 昌和, 関 征夫
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2589-2592
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    成人の腸回転異常症(以下,本症と略)は無症状で他の消化器疾患の精査や開腹時に偶然発見されることが多い.今回,術前に診断が得られた本症に,急性虫垂炎穿孔を合併した1例を経験したので報告する.
    症例は66歳女性.下腹部痛を主訴に近医を受診し,穿孔性腹膜炎と診断され当科へ紹介された.腹部CTでは,骨盤内膿瘍と上腸間膜動脈の左側を上腸間膜静脈が走行するSMV rotation signを認めた.本症に合併した穿孔性腹膜炎と診断し開腹するとnonrotation typeの本症を認め,上行結腸は正中に存在し回盲部は骨盤内にあった.また急性虫垂炎穿孔による膿瘍を合併しており,虫垂切除と骨盤内ドレナージ術を施行した.
    急性腹膜炎の診断にあたっては,稀ながらも本症を念頭に入れておき,腸管の走行異常特に回盲部の強い可動性に注意する必要があると考えられた.
  • 河島 秀昭, 高梨 節二, 原 隆志, 山崎 左雪, 細川 誉至雄, 平尾 雅紀
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2593-2596
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,術前に単純潰瘍と腹腔内膿瘍の診断で手術を行った上行結腸から横行結腸に及ぶ放線菌症の1例を経験したので報告する.症例は42歳の女性,主訴は右下腹部痛,前医で虫垂切除術をうけたが右下腹部痛が改善しないため当院へ1996年5月15日に入院となった.注腸造影検査にて,横行結腸に狭窄と上行結腸に潰瘍を伴う降起性病変を認めた.臨床症状,造影検査,内視鏡検査, CT検査などより単純性潰瘍と腹腔内膿瘍の診断で手術を施行した.肉眼的には直径15cm大の膿瘍を伴う炎症性腫瘤であったが,組織学的検索にて放線菌の菌塊を認め大腸放線菌症と診断した.術後に化学療法を5カ月施行した.
  • 奥 邦彦, 尾田 一之, 柴田 邦隆, 松田 泰樹, 太田 俊行, 島野 高志
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2597-2601
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    左側大腸癌によるイレウスにおいては,経鼻用イレウスチューブでは短期間に十分な減圧が得られず,緊急手術となることが多い.また一期的切除および根治度の高い手術を施行するのが,困難な事も少なくない.
    当院では左側大腸癌イレウスに対しガストログラフィンによる注腸造影にて閉塞部位およびその性状を確認し,大腸内視鏡下にガイドワイヤーを閉塞部位口側に挿入し内視鏡を抜去, X線透視下にガイドワイヤーを内筒に,先端に工夫を凝らした経肛門用イレウスチューブを挿入している.
    減圧チューブ挿入後は直ちにイレウスを解除でき,十分な術前検査と大腸前処置が可能となる.一期的手術が安全に行えた3例につき,その挿入手技と有用性を報告する.
  • 安藤 英也, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 村田 透, 長澤 圭一, 谷合 央
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2602-2605
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小細胞癌は,肺原発の癌としては,よく知られているが,肺以外の臓器原発例はまれである.今回われわれは,まれな直腸原発の小細胞癌の1例を経験したので報告する.
    症例は, 81歳女性.平成7年6月に便秘を主訴として受診した.直腸診で肛門管に全周性の腫瘤を触知し,生検にて小細胞癌と診断された.精査の結果肺を含めた他の臓器には,病変を認めず,直腸原発の小細胞癌と診断した.高齢で全身状態不良なため根治術を断念し,イレウス解除を目的として腸瘻造設術を施行したが,肺炎を併発して術後7日目に死亡した.剖検を行ったが,その所見からも直腸原発の小細胞癌と診断された.われわれが検索しえたかぎりでは大腸原発の小細胞癌の本邦報告例は,自験例を含めて14例であった.これら14例を集計し若干の検討を加え報告する.
  • 武山 聡, 子野日 政昭, 沼田 昭彦, 平 康二, 伊藤 紀之, 加藤 紘之
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2606-2610
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Appleby手術には,まれに肝不全に起因する致死的合併症が報告されている.当科では膵癌切除例に本法を予定し,術前に肝血流,肝機能を評価した.方法としては術前血管造影時に腹腔動脈にバルーンカテーテルを,また肝静脈にサンプリングカテーテルを挿入した.腹腔動脈を閉塞させた後,経時的に肝静脈酸素飽和度を測定し,その変化率から推定肝動脈血流を算出した.同時に動脈血ケトン体比(AKBR)と生化学検査を行った.その結果,腹腔動脈閉塞後20分で推定肝動脈血流は前値の56%に低下し, AKBRは0.51まで低下したが, 18時間後にはほぼ前値に復帰し,本症例の安全性を確認し得た.これらの結果を得て膵体尾部脾,腹腔動脈合併切除を行ったところ術後の一過性の虚血性胃潰瘍を合併したが,肝機能障害は呈さず良好な術後経過をたどった.
  • 足立 淳, 吉村 清, 多田 耕輔, 佐伯 俊宏, 内山 哲史, 村上 卓夫
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2611-2615
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    多発性肝結節性再生性過形成を伴った術前診断に難渋した限局性結節性過形成(以下FNH)の1切除例を経験した.患者は全身倦怠感を主訴とし,肝機能障害を持つ33歳男性である.腹部エコー, CT, MR,および,血管撮影を施行したが, FNHに特徴的な所見に乏しく,腫瘤が肝全体にあるため診断に難渋し開腹した.術後切除標本の組織診断により, 1つの腫瘤はFNHで,他の腫瘤は再生結節という診断を得た. FNHは比較的稀な肝の良性疾患であり,診断がつけば小さいものは経過観察でもよいと思われる.しかし,悪性化例,腹腔内破裂例もあり,確定診断がつかないときや急速に増大するときは,積極的な治療が必要であると考えられる.
  • 山田 良宏, 中口 和則, 西部 俊三, 古川 順康, 陶 文暁, 吉原 渡
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2616-2620
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    ゴム腫は第3期以降の梅毒に認められる特徴的な病変である.今回,肝ゴム腫の1例を経験したので報告する.
    症例は45歳の女性で右側腹部痛を主訴に受診した.超音波検査, CT, MRI,血管造影検査にて肝臓のS5, S6に巨大な腫瘤を指摘された.悪性も否定出来ず,肝S5, S6亜区域切除を施行した.腫瘤は径約6cmで弾性硬,境界は不明瞭で灰白色を呈した.病理組織学的には,中心に凝固壊死を有する類上皮細胞肉芽腫と細動脈の閉塞性内膜炎を認め梅毒と診断された.本症例は他の炎症性腫瘤や転移性肝癌との鑑別は困難であると言われている.検査上,梅毒が疑われる症例においてはゴム腫も念頭におく必要があると思われた.
  • 岡本 亮爾, 阿部 好弘, 菅野 元喜, 坂田 晃一朗, 東山 洋, 福山 訓生
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2621-2624
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    特異な肝内胆管分岐異常を伴う肝内結石症の1例を経験したので報告する.症例は30歳,男性.心窩部痛,黄疸を主訴に来院, US, CTで左内側区域および右後区域の肝内胆管の拡張と結石を認め,肝内結石症と診断した.さらに, ERCPにて右後枝と右前下行枝が左外側上行枝に合流する解剖学的異常が示された.右斜切開による開胸開腹下に,肝左内側区域および右後区域切除術を施し,経過良好にて術後21日目に退院した.肝内結石症の治療の原則は結石の完全除去と胆汁うっ滞の解除であり,自験例のように肝内胆管分岐異常を伴う両葉型の肝内結石症に対しても,肝切除により根治が期待できる場合には,術中US,および胆道内視鏡を駆使して積極的に罹患部の切除を行うべきであると考える.
  • 天谷 奨, 平野 誠, 村上 望, 花立 史香, 荒能 義彦, 橘川 弘勝
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2625-2629
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性.腹痛を主訴に近医を受診し,腹部単純X線写真にて右横隔膜下にfree airを認め,消化管穿孔の診断で,当科に紹介となった.腹部は全体に圧痛著明で筋性防御を認めた.腹部超音波検査,腹部CT検査にて肝右葉にガス像を伴う膿瘍性病変を認め,肝膿瘍破裂による汎発性腹膜炎と診断した.経皮経肝ドレナージの後,開腹ドレナージ術および胆嚢摘出術を施行した.膿瘍内溶液の培養ではKlebsiella pneumoniaeが検出された.術後経過は良好で, 52日目のCTでは肝膿瘍はほぼ消失した.肝膿瘍の原因としては,血行性細菌感染が考えられ,また膿瘍破裂の原因としては産生されたガスの緊満によるものと推測された.
  • 森浦 滋明, 中原 錬三, 市川 敏男
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2630-2632
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者はC型慢性肝炎の69歳男性で,前区域10cm径の肝細胞癌に対して肝右3区域切除術を予定し,経皮経肝門脈塞栓術を施行した.腫瘍浸潤のため門脈前区域枝が閉塞していたため後区域枝のみを塞栓したところ残存予定の外側区域体積は7日間で42.8%増加し552cm3となった.塞栓術後8日目に肝切除術を施行,経過良好で術後15日に退院した.本例の様にきわめて迅速な肝肥大をきたす症例では治療期間短縮が可能である.
  • 牧内 明子, 花崎 和弘, 袖山 治嗣, 好沢 克, 五十嵐 淳, 天野 純
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2633-2636
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    総胆管拡張症を合併したITP症例に対して一期的手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は58歳,男性.ステロイド抵抗性となったITPに対し脾臓摘出術(脾摘)の適応として当科に入院した.総胆管拡張症の合併がみられたため,一期的に脾摘,および総胆管切除術+胆嚢摘出術(肝管空腸吻合, Roux-en-Y再建)を施行した.周術期の血小板は一過性に上昇したが,その後徐々に低下を認め,寛解には至らなかった.
    術前脾摘によるITPの寛解の可能性を正確に予測することは困難であるため,手術を必要とする他疾患を合併するITP患者に対しては,可能な限り一期的手術を行うべきである.
  • 中澤 久仁彦, 松尾 聰, 梅北 信孝, 真栄城 剛, 宮本 幸雄, 山田 福嗣, 粟根 康行
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2637-2640
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は42歳,女性で平成7年6月朝4時頃突然の下腹痛があり,当院に入院す. CT, USでは胆嚢に結石や腫大の所見はなく胆管拡張もなく,腹水もなし. 16時頃より38.0°Cに熱発し,痛みが腹部全体に広がり腹満も出現す. USで腹水の貯留がみられ穿刺すると血性腹水であり, 21時過ぎ緊急手術施行す.開腹すると約1lの胆汁性腹水を認め,胆嚢は収縮し穿孔部はわからなかったが胆摘施行す.摘出標本では胆嚢に結石はなく底部に穿孔を認めた.組織学的にはR-Asinusの発達と軽度の炎症がみられたが,小動脈の血栓形成はなかった.腹水細菌培養は陰性だった.胆嚢穿孔のうち特発性胆嚢穿孔は極めて稀であり,本邦報告例は21例である.初診時に腹膜炎症状に乏しく診断も難しかったが,本症は放置すれば致死的になるため早期手術が大事と思われた.
  • 吉田 基巳, 松山 秀樹, 杉山 勇治, 手塚 秀夫, 丸山 千文, 増田 浩
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2641-2645
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性,高血圧にて内服治療中であった.主訴は心窩部痛.腹部単純X線検査にて,腹腔内遊離ガス像,右上腹部に鏡面像とその周囲に異常ガス像を認めた.腹部CT検査で,胆嚢は腫大し,胆嚢内に鏡面像を認め,胆嚢壁は肥厚し,壁内,総胆管内,腹壁下にガス像を認めた.腹腔内遊離ガス像を認めたことにより消化管穿孔の疑いと気腫性胆嚢炎の診断で緊急手術を施行した.腹腔鏡下にて手術を開始した.腹腔内に消化管穿孔の所見はなく,胆嚢は暗紫色で緊満しており,鉗子で穿刺するとガスの流出を認めた.壁が脆弱なため,開腹し胆嚢摘出術を施行した.病理では壊疽性胆嚢炎の所見で,胆嚢壁のGram染色でClostridiumを疑う細菌を認めた.気腫性胆嚢炎の報告は散見されるが,われわれが文献検索した限りでは腹腔内遊離ガス像を伴うものの報告はなく自験例は極めて稀な症例と思われた.
  • 高井 惣一郎, 乾 広幸, 今村 敦, 權 雅憲, 上辻 章二, 上山 泰男
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2646-2650
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性で,右季肋部痛・発熱を主訴に来院した.腹部超音波検査および内視鏡的逆行性胆道造影では左外側区域肝内胆管の拡張とB2B3合流胆管内の陰影欠損を認めた.以上より,肝内結石症の診断下,手術(外側区域切除術)を施行した.術中切離面を決定する目的で術前の陰影欠損に一致して肝内胆管を切開したところ,結石ではなく粘膜下腫瘍様の腫瘤性病変が認められた.術中迅速生検にて乳頭状腺癌の診断を得た.改めてリンパ節郭清(R1),ならびにS4切除を追加した.病理診断上,肝内胆管癌が本例のように正常粘膜下に増殖することは極めて稀で,われわれが検索したかぎりでは報告例がなかった.
  • 西山 宗一郎, 平山 克, 中島 芳道, 高野 亮, 寺島 秀夫, 和田 直文, 高橋 さつき
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2651-2655
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 73歳女性.胃内視鏡検査で胃壁外からの圧排所見を認めたため精査加療目的で平成7年9月28日当院に紹介入院となった.超音波検査で肝外側区に最大径12.4cmの巨大な肝腫瘍を認めた.肝腫瘍はCT検査で低吸収を示し, MRI検査では, T1強調像で低信号を示し, T2強調像で高信号を示した. ERCP施行時の観察では, Vater乳頭部が腫脹し粘液の流出を認めた. Vater乳頭部からの生検では,採取時の組織の変性を癌と判断したために,肝内胆管癌と乳頭部癌の診断で平成7年11月16日に肝左葉切除兼膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査では,膵頭領域には癌を認めなかったが,肝腫瘍は肝内胆管粘液癌であった.肝内胆管粘液癌の頻度は稀で,報告例も少ないため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 古田 斗志也, 西原 一善
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2656-2660
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,胆道癌の中でも極めて稀な原発性胆嚢管癌の1例を経験したので報告する.症例は64歳の女性で右季肋部痛を訴え来院した.胆石症,急性胆嚢炎の術前診断にて手術を施行した.胆嚢摘出後の術中胆管造影にて胆管の一部に陰影欠損が認められた為,総胆管を切開し偶然胆管内に腫瘤を発見した.術中迅速細胞診にてadenocarcinomaの診断を得,所属リンパ節の郭清を伴う胆管切除術を施行した.切除標本では胆嚢管部に乳頭状増殖を示す1.4×1.0cmの腫瘤を認めた.組織学的には乳頭腺癌で深達度は線維筋層(fm)までで,リンパ節転移は認められなかった.胆嚢管癌は,術前診断が困難で術中あるいは術後にはじめて診断がつく事も多い.特に,胆嚢造影にて胆嚢が描出されない時は,胆嚢管癌の存在を念頭におき,術前検査,術中の対処を行わなければならない.
  • 上山 直人, 中尾 武, 小林 経宏, 前田 裕仁, 籠島 忠, 中野 博重
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2661-2666
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 41歳,男性.重症急性膵炎で搬送され,腹部CTで,炎症像は膵周囲から横行結腸間膜根部および左後傍腎腔まで波及していた.早期の保存的集中治療(10日間)により一時的に改善したが,感染性膵壊死に移行したためnecrosectomy with close lavageを施行した.術直後は良好に経過したが,術後2週に膵炎の増悪, ARDS, 循環不全を呈し,副腎ステロイドのパルス療法,膵酵素阻害薬と抗生剤併用の持続動注療法,持続血液濾過透析が奏効した.しかし,その後に腹腔ドレナージが不良となり腹腔内の遺残壊死性物質と膵仮性嚢胞に再感染を伴い,全身状態が悪化したためnecrosectomy with open drainageを行った.術後は,連日腹腔内のdebridementを徹底的に行い,膵からの有害物質を除去した.以後,全身状態は改善して閉腹し,治癒した. necrosectomy with open drainageは,難治性の重症膵炎において炎症が膵周囲を越えて広範囲に波及する場合,また,本例のようにnecrosectomy with close lavage後の再感染症例に対しても積極的に試みるべき治療法であると考えられる.
  • 小林 健一, 大島 亮, 佐野 真, 鈴木 啓一郎, 梅本 俊治, 松本 純夫, 堀部 良宗
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2667-2671
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    比較的稀な背側膵動脈瘤の2例を経験した.症例1は53歳男性.献血時にHCV抗体陽性が判明したため,腹部超音波検査および上腸間膜動脈造影を施行した.背側膵動脈瘤が診断され,瘤切除術を施行した.病理組織学的には動脈壁内に動脈硬化性変化と膵組織の迷入を認めた.症例2は50歳女性.検診の腹部超音波検査で脾動脈瘤を疑われ,腹部血管造影を施行したところ背側膵動脈瘤を認め,瘤切除術を施行した.病理組織学的には動脈硬化の所見であった.
    腹部内臓動脈瘤は全動脈瘤の4~5%を占め,うち背側膵動脈瘤は3%以下とされ,今回われわれが検索し得た本邦報告は自験例を加え5例であった.発生原因については,明確な見解は得られていないのが現状である.われわれの経験した2例のうち1例の動脈壁内に異所性の膵組織が認められた.このような報告はわれわれの調べる限りは他にはなかった.
  • 中塚 昭男, 山口 幸二, 千々岩 一男, 住吉 金次郎, 田中 雅夫, 米増 博俊
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2672-2675
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃・十二指腸に瘻孔形成した粘液産生膵癌の1例を経験した.症例は56歳,男性.組織学的に瘻孔部(胃・十二指腸壁)への直接浸潤が確認されたが,瘻孔部を含めた膵全摘術,脾摘術を行い,術後5年以上経過した現在,局所ならびに転移性再発はみられていない.非浸潤性粘液産生膵癌は予後良好であるが,浸潤性粘液産生膵癌は通常型膵癌と同様に予後不良であるといわれている.しかし,本症例の如く浸潤例に対し拡大手術を施行することにより長期生存を得ることができ,浸潤性粘液産生膵癌も積極的に切除する意義があることが示唆された.
  • 恵木 浩之, 住元 一夫, 石川 哲大, 若杉 健三, 松坂 俊光, 久米 一弘
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2676-2679
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である大動脈炎症候群に併発した腎血管性高血圧と腎機能低下に対して,血圧のコントロールと腎機能救命を目的とした自家腎移植を施行した症例を経験した.患者は43歳女性で23歳時から大動脈炎症候群と診断され近医にて経過観察されていた.腎動脈狭窄の進行による血圧のコントロール困難と腎機能低下を生じたため,腎機能救命と血圧のコントロール目的で手術施行した.術後血漿レニン活性は正常に戻り,血管造影において腎動脈吻合部の狭窄は認めなかった.移植外科の発展に伴い自家腎移植は安全に行われるようになった現在,血行再建の方法として大動脈炎症候群に対しても積極的に行うべきであると考えられた.
  • 栗栖 泰郎, 山代 寛, 田村 英明, 清水 哲, 岸 清志
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2680-2684
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    壊死性筋膜炎は,穿孔のない消化管の手術後に合併することは稀である. S状結腸癌によるイレウスの手術後に合併した壊死性筋膜炎の1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性. S状結腸切除,一期吻合術施行後2日目に右下腹部に皮下気腫が出現した. 3日目に右大腿部に広がり,次第に皮膚壊死と浮腫が進行した. 8日目にDICが合併し, ICUのある他施設に転院した.同日,試験開腹を受けたが腹腔内に異常はなかった.右大腿部から下腿,右側腹部におよぶ皮下脂肪織層に広範に膿汁が貯留していたため,壊死切除と解放ドレナージが行われた.その後,敗血症状態は次第に制御されていった.壊死部滲出液と血液とからは腸内常在菌であるProvidencia rettgeriが培養・同定された.壊死性筋膜炎は,早期に適切な外科的治療が行われない場合には死亡率が高く,術後管理を行ううえで念頭におくべき疾患の一つである.
  • 鷲尾 一浩, 岡田 富朗, 菅田 汪
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2685-2689
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大量の後腹膜出血を合併した後腹膜脂肪腫の1例を経験した.症例は39歳男性,激しい左上腹部痛があり受診した.画像上,左腎血管筋脂肪腫の破裂が疑われ,血腫の吸収を待ち腫瘍摘出術を施行した.術中,腎周囲脂肪組織原発の脂肪腫が疑われた.摘出標本は径9×8×7.5cm, 320g,薄い繊維性の被膜に覆われた内部黄色で繊維性の隔壁をもつ腫瘤であり,病理検査で診断が確定した.
    後腹膜腫瘍は比較的稀な疾患であり,なかでも後腹膜脂肪腫は少数とされる.文献的に検索し得た範囲では本邦報告例は自験例を含め88例であり,自駅験例を除き大量の後腹膜出血を合併した後腹膜脂肪腫の報告例を認めなかった.
  • 八木 美徳, 白鳥 敏夫, 山竹 正明, 曽山 鋼一, 亀岡 信悟
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2690-2694
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫(MFH)は腹部,後腹膜に発生するのは10%ほどといわれる.今回われわれは8年後に再発した巨大後腹膜MFHを切除し得たので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は87歳男性.主訴は左季肋部痛.左季肋部より下腹部にかけ巨大な腫瘤を触知した.既往歴で8年前に後腹膜MFHにて切除術を施行されている. CT・MRIでは左腹部に直径20cm程の巨大な腫瘤を認めた.注腸造影ではS状結腸から横行結腸にかけ腫瘤による圧排を認めた.血管造影はhypovascularであった. MFH再発の診断にて腫瘍摘出術,左半結腸・脾台併切除術を施行.病理ではStoriform-pleomorphic typeのMFHであった.巨大な後腹膜MFHは局所再発・転移が多く予後不良とされ,化学療法,放射線療法は効果につき一定の見解はなく,外科的手術療法が第一選択とされる.検索し得た範囲内では巨大な後腹膜MFHに関し初回手術の8年後に再切除しえた症例はなかった.
  • 松倉 史朗, 湯ノ谷 誠二, 中間 輝次, 宮崎 耕治, 江口 尚久
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2695-2699
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性で,既往に腹部外傷や手術歴などはない. 1996年3月5日腹痛,嘔吐にて近医を受診し,腹部単純X線写真にて小腸ガス,鏡面像を認めたためイレウスと診断された.血液・生化学検査では脱水および腎機能障害が認められた.イレウス管を挿入し保存的に加療するも改善傾向なく,小腸造影を施行したところ,門歯より260cmの部位に辺縁不整な狭窄像を認め,小腸腫瘍が疑われた.手術目的にて当院に紹介され開腹手術を施行したところ,左下腹部,腹直筋外縁に小腸が嵌頓しており強い癒着を認めた.本症例は腹直筋外縁と半月状線の間の腱膜部分に発生するSpigelヘルニアであった.本疾患は極めて稀な腹壁ヘルニアで,本邦では現在までに12例が報告されているに過ぎない.術前に小腸腫瘍と鑑別困難で,しかもイレウスにて発症したきわめて稀なSpigelヘルニアのRichter型嵌頓の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 沢井 博純, 倉橋 伸吾, 山中 雄二, 神谷 厚, 真辺 忠夫
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2700-2703
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    極めて稀とされているSpigelヘルニア(半月状線ヘルニア).の1例を経験したので,本邦報告13例を集計し,文献的考察を加えて報告した.症例は81歳女性で,平成7年4月より右側腹部に疼痛が出現,さらに膨隆を認めるようになり,当院受診した.腹部所見では,右側腹部に径4.0×4.0cmの柔らかい膨隆を認め,腹部CTにて検索すると,膨隆部の腱膜は欠損しており,腹腔内容が腹壁皮下に脱出していた.以上の所見よりSpigelヘルニアと診断し手術を施行した.手術所見としては,菲薄化した外腹斜筋腱膜下にヘルニア嚢を認め,ヘルニア門は径5.0×4.0cmで,ヘルニア内容は小腸であり,ヘルニア嚢は小腸と癒着していたためこれを剥離した.術後1年9カ月の現在,再発の徴候は認めない.
  • 廣松 伸一, 菅 記博, 亀井 英樹, 小池 健太, 笹原 弘子, 池田 純啓, 小野 崇典, 福島 駿, 山名 一有
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2704-2708
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    鈍的外傷に起因した珍しい下腿動静脈瘻を経験したので報告する.症例は34歳,男性.左下腿腫瘤に気づき来院した. 32歳時に軟式野球中にボールで左下腿を打撲した.腫瘤は,約8×7cm大の弾性硬で,左下腿内側に突出し中心部に小潰瘍を形成していた.触診上拍動は認められなかったが,超音波カラードップラーでは,腫瘤内にモザイク様の血流信号が認められた.血管造影では,後脛骨動脈及び腓骨動脈の筋肉枝を導入動脈とする, micro-fistula typeの動静脈瘻が認められた. CTにて動静脈瘻を含む拡張した瘤状の血管腫は,筋膜上の軟部組織に認められた.手術は腹臥位でエスマルヒ駆血帯下に腓腸腹部に約15cmの縦切開を加え,動静脈瘻と血管腫を一塊に切除した.術後1年8カ月の現在,経過は良好である.
  • 池田 直也, 渡部 高昌, 仲川 昌之, 佐道 三郎, 本郷 三郎, 中野 博重
    1997 年 58 巻 11 号 p. 2709-2715
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性.下血を主訴に来院した.初診時,直腸指診にて内痔核および直腸後壁に弾性軟の腫瘤を触知した.注腸造影,大腸内視鏡検査にて下部直腸に背側よりの圧排所見を認めたがその他特に異常所見は認めず,主訴の下血は内痔核由来のものと診断した.骨盤部CT,経直腸的超音波内視鏡検査, MRIにより,前仙骨部嚢胞性腫瘤の術前診断のもとpara-sacral approachによる腫瘤摘出術を施行した.摘出標本は嚢胞性腫瘤であり,腫瘍性部分を認めず,内容は黄白色の粥状物であった.病理組織学的には嚢胞内腔は重層扁平上皮で被われているものの,汗腺や皮脂腺等の皮膚付属器は認めず,類表皮嚢腫(epidermoid cyst)と診断した.
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