日本臨床外科医学会雑誌
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  • 予防対策と創洗浄の有用性に関する研究
    小田 竜也, 河野 至明, 竜 崇正, 木下 平, 小西 大, 新井 仁秀, 与那覇 俊美, 夏目 俊之, 中面 哲也
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2751-2755
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上部消化器手術334例を対象とし,創感染発生の危険因子としての術前後の創処置,手術臓器,手術時間,閉創時創汚染の有無,付着菌種の関与を検討した.創感染の発生率は全体で12.3%で,術前ブラッシング,術後創洗浄を加えることにより13.9% (29/209)から9.6% (12/125)へ改善する傾向が見られた.胃・肝・胆道・膵の臓器間に創感染の発生率の差は無かったが, 5時間以上の手術症例(20.9%)は3時間以下の症例(42%)に比し有意に高率で,危険群として対応する必要があると考えられた.閉創時の創洗浄液を培養した125例中92例(74%)に細菌を検出した.非腸内細菌群が検出された82例中3例(3.7%),腸内細菌群が検出された10例中7例(70%)が実際に創感染を起こし,腸内細菌検出群を危険群とみなすことが出来た.逆に,創感染を起こした12例のうち9例において閉創時付着菌が創感染起炎菌と一致し,創洗浄液培養からの腸内細菌群検出を創感染発生予測マーカーとして利用できる可能性が示唆された.
  • 菊地 勤, 斎藤 裕, 黒川 勝, 長尾 信, 荒能 義彦, 村上 望, 平野 誠, 橘川 弘勝
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2756-2759
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,初回手術を施行した甲状腺分化癌155例のうち,微小癌53例について検討した.平均年齢は53歳で,男女比は3対50であった.甲状腺亜全摘兼R1頸部郭清を標準術式としてきた.組織型は,乳頭癌50例,濾胞癌3例で, 42%にリンパ節転移, 25%に周囲組織への浸潤を認めた.しかし,他病死を除く微小癌の10年生存率は100%と極めて良好であった.他方,合併症は,甲状腺機能低下42%,テタニー6%,嗄声3%にみられた.以上結果から,合併症を避けるために,葉切除兼頸部郭清に縮小しても根治性が得られるものと考えられた.
  • 林 剛, 佐藤 一彦, 田巻 国義, 望月 英隆, 玉熊 正悦, 西田 正之, 平出 星夫
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2760-2764
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺の良・悪性腫瘍の内部温度を直接測定し,腫瘍温の臨床的意義を検討した.とくに,悪性腫瘍においては内部温度と臨床病理学的進行度および腫瘍新生血管などの予後因子との関係を検討した.対象は乳腺腫瘍57例(乳癌35例,線維腺腫22例)で,穿刺吸引細胞診施行時超音波ガイド下に先端部に熱電対を封入した21ゲージ針を腫瘍内に刺入して腫瘍内温度を測定,同時に腫瘍直上の皮膚温も測定した.腫瘍新生血管は第8因子関連抗原を用いた免疫染色法により求めた.
    結果: 1)腫瘍中心温(平均)は悪性例が有意に高かった(p<0.01). 2)腫瘍径が大きいほど高温傾向がみられた. 3)腫瘍中心温は組織型による差, n・ly・vの有無による差はなかったが病期IIはIより高温の傾向がみられた. 4)腫瘍新生血管密度の高い症例は腫瘍中心温と皮膚温の差が大であった.結論:腫瘍内部温は良性例より悪性が有意に高く,その温度は腫瘍新生血管との密接な関係が示唆された.
  • 信号強度比のcut off値設定
    土屋 十次, 永田 高康, 川越 肇, 立花 進, 梶間 敏彦, 星野 睦夫, 右納 隆, 下川 邦泰
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2765-2773
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    MRI診断装置を用いた乳房のDynamic studyが病変の良・悪性鑑別を数量化して客観的に評価できることを, MRマンモグラフィーを行った41症例(乳癌13例,乳腺症21例,線維腺腫症6例,乳管内乳頭腫症1例)について病理組織診断と対応して検討した.方法はDynamic studyの各時間毎の時間強度比曲線を表示し比較検討した.その結果,極めて高い有意差を以て乳癌と乳腺症の鑑別ができた(90秒以内ではp=0.0000).更に, 95%信頼区間を推定する事により造影剤投与後30秒では投与前値の1.53倍, 60秒では2.00倍, 90秒では2.47倍をcut off値として設定し,このcut off値を越えるか否かで良悪性鑑別を行う方法をDynamic ratio法として提唱した.その診断能は感度=92.3%,特異度=89.3%,陽性予知度=80.0%であり,臨床では主病巣の良悪性診断のみならず,周囲浸潤やリンパ節転移の有無の診断,乳房温存手術の切除範囲決定に適用できることを検証した.
  • 辛 栄成, 竹田 雅司, 上田 篤史, 三嶋 秀行, 蓮池 康徳, 柳生 俊夫, 小林 研二, 小林 哲郎, 吉川 宣博
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2774-2779
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究では触診上乳房に異常なく超音波検査で異常を指摘された触知不能病変に対する超音波ガイド下Core Needle Biopsy(CNB)の有用性と問題点,さらにこれら触知不能病変の臨床病理学的特徴について検討した. 1996年5月より1996年10月までに当科外来で乳房触知不能病変に対し超音波ガイド下CNBを施行した10例, 13病変(超音波ガイド下穿刺吸引細胞診ではclass 1~3)を対象とし,次のような結果を得た. 1)超音波ガイド下CNBの病理診断可能な組織採取率は84.6% (11/13)であった. 2)超音波ガイド下穿刺吸引細胞診でclass 3であった1病変が超音波ガイド下CNBで乳癌と確定診断できた. 3)乳房触知不能病変(超音波像では腫瘤形成性低エコー像として描出される)の多くはductal hyperplasiaやlobular hyperplasiaなどの上皮成分の過形成を伴う乳腺症病変であることが明らかとなった.以上の結果から次の結論を得た.超音波ガイド下CNBは触知不能病変に対しても,病理診断可能な組織採取法としての有用性についてはサンプリングエラーの危険性はあるもののほぼ満足いくものであった.
  • 飯合 恒夫, 佐野 宗明, 牧野 春彦
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2780-2783
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺粘液癌は比較的稀で,他の浸潤型乳管癌と比べ予後の良い事で知られている.当科でも1980年から1995年の初発乳癌2,081例中67例(3.2%)の粘液癌を経験したので,その臨床的特徴並びに予後について検討した.
    67例のうち純型は43例,混合型は24例であった.平均年齢は, 54.1±14.2歳であり浸潤型乳管癌と有意差はなかった.病期分類では,殆どがstage Iまたはstage IIであったが, stage IV症例も純型で1例,混合型で1例認められた.腋窩リンパ節転移は,純型では5% (2/40)に認めるのみであったが,混合型では50% (12/24)に認めた.再発は純型で2例,混合型で5例認められた.純型の再発は2例とも肺転移であり,再発後それぞれ11年2カ月, 4年11カ月経過した現在も生存中である.
    以上より,術前に純型粘液癌の診断がつけば,腋窩リンパ節郭清なしの手術も可能ではないかと思われた.
  • 岩田 尚士, 国安 弘基, 平井 敏弘, 山下 芳典, 吉本 晃宏, 桑原 正樹, 峠 哲哉
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2784-2790
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道再建胃(上半むきみ全胃,後縦隔経路)粘膜における術後照射の影響について,病理組織学的検討を加えた.食道癌切除症例のうち術後照射(+)26例, (-)16例を対象とした.術前より最長2年間,経時的に内視鏡下に(再建)胃より生検を行い,病理組織学的に炎症(好中球浸潤,糜爛,浮腫,壊死),腸上皮化生,異型性などの所見を数量化し,その変化について検討した.炎症所見は照射,非照射群ともに上,中,下部の順に強く,血行の影響の関与が考えられたが,両群間の比較では,いずれの部位でも照射群でより強い炎症所見が認められた.また異型性は照射群の上,中部にのみ認められた.同一症例で経時的変化を検討すると,術後に上部ほど強い炎症所見を認め,照射によりさらに炎症は増強し異型性も出現するが,時間の経過とともに炎症所見,異型性ともに消退傾向を示した.以上の結果から術後照射の再建胃に及ぼす影響は許容範囲内と考えられた.
  • 関根 毅, 川手 進, 鴨下 憲和
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2791-2797
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術症例において,胆摘既往(I群)30例を臨床病理学的に胆石非合併(胃切除既往を除く)(II群)799例と対比し,検討した.
    1. 男女比はI群では女性に高率であり,平均年齢はI群66.8歳, II群60.1歳で, I群では高齢であった.占居部位は結腸ではI群において左側結腸に有意に高率であった(p<0.05).
    2. 肉眼型において, I群では1型が有意に高率にみられた(p<0.05).組織型,壁深達度,リンパ節転移,脈管侵襲においては有意差は認められなかった.
    3. 総コレステロールの平均値は右側結腸において, I群151.0mg/dlであり, II群174.8mg/dlに比べて有意に低値を示した(p<0.01).
    4. 遠隔成績では,根治度A (curA)症例において, 5年生存率はI群59.0%, II群76.2%で,有意差はないが, I群では低率であった.
    以上より,胆摘後にみられた大腸癌は女性,高齢者に多く,左側結腸に有意に高率であり,予後は不良であることが示された.また,胆摘既往では血清コレステロールは低値であったが,大腸癌発生との関連性を示唆する所見は認められなかった.
  • 山根 正隆, 中川 準平, 塩田 邦彦, 多胡 護, 平井 俊一, 鈴鹿 伊智雄
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2798-2801
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1986年1月から1996年3月までに当院で経験した腹部大動脈,腸骨動脈領域閉塞病変に対する初回手術症例は86例で,このうち女性の症例は13例あり,全体の16.3%であった.これらの群(I群)と男性73例をII群として, 2群に分けて,年齢分布,術前合併症,術前検査成績,手術術式,術後合併症について検討した.
    手術時年齢は男性は61~70歳が多かったが,女性群は71歳以上が最も多かった.術前合併症は高血圧,糖尿病,脳梗塞に差がみられなかったが,虚血性心疾患の合併は女性に多かった.手術術式は男性群に比べて,女性群に非解剖学的バイパス手術の症例が多く,虚血性心疾患に対する合併手術も女性に多かった.術後合併症は女性に多く,手術死亡例は男性,女性各群にそれぞれ1例ずつあった.
  • 中川 芳彦, 春口 洋昭, 内田 靖子, 村上 徹, 提嶋 淳一郎, 阿部 正浩, 渕之上 昌平, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2802-2806
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,末梢血管の器械吻合器であるVCSクリップを,ブラッドアクセス手術に応用した.対象は1997年2月から5月までの間にブラッドアクセス手術を施行した10名の透析患者で,手術は内シャント造設術2例,人工血管移植術6例,内シャント閉鎖兼動脈再建術1例,人工血管閉鎖術1例であった. VCSクリップを用いて血管吻合を完了したが,吻合に要した時間は,人工血管で平均12分,内シャントで平均8.5分であった.術中,術後を通して吻合部からの出血はみられていない. VCSクリップは,取り扱いが容易で,吻合時間も短縮される.一方, VCSクリップの単価は高く,コストパフォーマンスの面で問題が残されている.ブラッドアクセス関連の手術では,人工血管植え込み術や人工血管の修復術に際して,とくに有用と考えられた.
  • 井上 真也, 吉見 富洋, 植田 英治, 小野 久之, 朝戸 裕二, 登内 仁, 黒木 義浩, 大塚 弘毅, 雨宮 隆太, 小泉 澄彦
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2807-2814
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは, 1992年6月より癌告知を積極的に進めてきた.癌告知の患者に与える影響をアンケート調査により各stage毎に比較検討した.総告知患者707人中,生存していてアンケート実施可能な患者538人にアンケートを配布し, 499人(回収率92.8%)より回答を得,そのうちstage分類の知り得た476人を対象とした.進行度に関係なく「真実を知らされてよかった」との回答は,約9割で,「癌ではないと嘘をついて欲しかった」との回答は,約1%であった.また,癌告知を望まない患者の意思を尊重する目的で, 1996年4月より外来初診時に告知希望の有無を問うアンケートを開始した.そのアンケート実施後は「癌ではないと嘘をついて欲しかった」と回答した患者はいない.
    癌告知は社会的に広められるべきであり,順調に進める上でこの報告は参考になると考える.
  • 水野 幸太郎, 中野 浩一郎, 春日井 貴雄
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2815-2818
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    ガス壊疽は,ガスの産生を伴う,皮下結合組織および筋肉の感染症の総称である.多くは四肢に発症するが今回われわれは頸部に発症した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例: 59歳男性,主訴:咽頭痛,合併症:糖尿病,慢性膵炎,現病歴:平成8年4月に口腔内を損傷したが放置, 5月に入り咽頭痛が出現したため来院した.直ちに入院して抗生剤にて治療を開始したところ, 4日目に口腔内に悪臭を伴う膿の排出があった.頸部X線写真, CTにてガス像が認められたためガス壊疽と診断し緊急手術を行った.手術は広範なデブリートメントとドレナージを行い,術後はポビドンヨードとオキシドールによる洗浄を行った.術後経過は順調であった.
  • 秋山 典夫, 長町 幸雄, 石崎 政利, 加藤 広行, 真木 武志
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2819-2823
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.交通事故で破裂腸管切除を受け,その際中心静脈カテーテルを挿入された.抜去2カ月後刺入部を中心とする発赤腫脹が出現し,鎖骨骨髄炎の診断で入院,鎖骨内側および胸骨を一部切除掻爬し治癒した.中心静脈カテーテル挿入に起因する合併症の中で鎖骨骨髄炎は,きわめて稀な合併症で内外の報告を併せてもわずかに7症例である.発症の原因としては,カテーテル挿入時の骨膜損傷または周囲の血腫形成が最も重要であり,ここに血行性または刺入部皮膚から直接細菌が侵入生着すると考えられる.予防的には,無菌法の実施と穿刺手技の向上はいうまでもないが,近年安易に行われる傾向にある中心静脈カテーテルの適応基準を厳格にし,末梢静脈で管理できる症例には適用とすべきではない.鎖骨骨髄炎の頻度は低いが,治療に当たっては抗生剤による治療に拘泥すると敗血症を併発して死亡する報告もあり,手術の時機を逸しないように注意すべきである.
  • 村川 知弘, 登 政和, 田中 信孝, 鈴木 良夫, 大江 健二
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2824-2827
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺原発の血管肉腫は非常に稀な疾患であるが,その病理学的診断は困難である場合が多いとされる.その一方で悪性度は乳腺原発悪性腫瘍中,最悪とされ,診断・治療には注意を要する.われわれの経験した症例は46歳,女性で右乳房腫瘤を主訴に来院した.臨床所見・画像所見からは良性・悪性の診断がつかず, excisional biopsyを施行した.当初はcavernous hemangiomaの診断であったが,その後乳腺の血管腫ではangiosarcomaとの鑑別が必須と判明し更に検討した結果angiosarcoma of the breastの診断を得た.確定診断後,右乳房単純切除を施行し再発なく5年半生存している.乳腺原発の血管腫様病変に遭遇した場合に血管肉腫の可能性を常に考える必要があることを反省させられた症例であった.症例を報告すると共に若干の文献的考察を加えた.
  • 堀井 理絵, 福内 敦, 西 常博
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2828-2830
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳房温存療法後に46~60Gyの放射線照射を行った201例の中4例(2.0%)の放射線肺炎を経験した.いずれも照射終了後7週から20週で咳漱で発症し,胸部X線写真でも照射野に一致した間質性肺炎像を示した. 3例に副腎皮質ステロイドの内服を要したが,いずれも重篤化せず転快した.乳房温存手術後に乳房照射を行った場合に咳漱等の症状が続いた時には,放射線肺炎を念頭に置き診断,治療にあたることが必要である.
  • 中島 真太郎, 奥道 恒夫, 木村 厚雄, 池田 政宣, 梶原 博毅
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2831-2835
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性.近医で喘息発作時に胸部X線異常陰影にて縦隔腫瘍を疑われた.血清中の腫瘍マーカーのうちSCCおよびCA19-9が高値を示した.胸部CT, MRIにて心膜に接して右胸腔の下半を占める11×11×9.5cm大の多房性腫瘤を認めた.前縦隔奇形腫の疑診下に,腫瘍摘出術を行った.摘出標本は被膜を有し,油脂,毛髪を含む腫瘍で,病理組織学的に表皮組織,骨,軟骨,骨髄,脳,胸腺,膵,子宮内膜,卵管粘膜,脂肪織が混在する良性成熟奇形腫であった.免疫組織化学的にCA19-9およびCEAが上皮性細胞の一部に陽性であった.術後,両腫瘍マーカーはいずれも正常化した.
  • 日馬 幹弘, 海瀬 博史, 浅見 健太郎, 三室 晶弘, 青木 達哉, 小柳 〓久, 永井 秀三, 今給黎 篤弘, 清水 亨
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2836-2840
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性で,左側胸部の腫瘤を主訴に来院した.腫瘤は側胸部の第VIII肋骨を主に肩甲部に至っていた.術中迅速診断にて悪性像は認められず,腫瘤の完全切除が施行された.永久標本にて細胞異型のない紡錘状細胞が膠原線維を伴って増殖しており,筋肉や肩甲骨にも浸潤していた.最終診断はextra-abdominal desmoid腫瘍と診断された.術後6カ月後の現在まで再発は認めていない.胸壁原発のextra-aabdominal desmoid tumorは稀で,本邦報告例は17例にすぎない.治療においては局所再発が多いことより十分な切除が必要である.
  • Tチューブ食道外瘻造設および瘻孔内フィブリン糊充填法を中心に
    水上 健治, 大谷 博, 谷村 慎哉, 李 光春, 山崎 修, 藤本 泰久, 平田 早苗, 奥野 匡宥, 福田 淑一, 吉村 高尚, 月岡 ...
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2841-2850
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    過去4年間に特発性食道破裂6例を経験した.性別は全例男性,年齢分布は35歳から50歳で平均44.0歳であった.全例,飲酒に起因する嘔吐が発症誘因であった.初発症状は上腹部痛が4例に,急性腹症様の腹部症状が3例に,背部痛が2例に見られた.胸部X線像で縦隔気腫が5例に,水気胸が3例に,皮下気腫が2例に,胸水貯留が2例に見られた.食道造影で造影剤の食道外への漏出が確認されたのは6例中4例に過ぎず,他の2例では胸腔穿刺が診断根拠となった.発症から診断確定までに平均33時間を要していた.食道壁損傷の強い3例に破裂創縫合閉鎖時,食道内腔にTチューブを留置し食道外瘻を造設したところ, 2例に良好な結果を得た.さらにTチューブ抜去時,瘻孔内にフィブリン糊を充填し瘻孔の早期完全閉鎖を得た.治療成績向上には早期診断が最も重要であり,初診時,本症についての認識をもって対処することが大切である.
  • 田川 努, 伊藤 重彦, 松尾 誠司, 木戸川 秀生, 羽田野 和彦, 大江 久圀
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2851-2855
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道狭窄に対するendoprosthesisとして, expandable metallic stent (EMS)を用いた治療効果について,人工食道(plastic prosthesis, PPS)と比較検討した. EMSは結腸癌転移,腐食性食道炎,食道癌の3症例に, PPSは食道癌,胃癌再発,胃噴門部癌による食道狭窄の3症例に用い,局所麻酔ないしは全身麻酔で挿入した. EMSの3症例では摂食度増加は1例にみられ, 2例は挿入直後の内腔の再狭窄と逆流性食道炎により摂食量増加は認めなかつた.合併症は食道気管支瘻,滑脱を各1例に生じた. PPS症例では摂食度増加は2例で得られたが,合併症として腫瘍再増殖による遠位端の狭窄と軽い逆流性食道炎を各1例生じた. EMSは挿入が容易だったが,内腔の再狭窄を生じ,抜去が不可能であった. PPSは挿入に全身麻酔が必要な場合があるが,内腔の再狭窄はなかった.また一般に滑脱,出血,穿孔は双方で起こりうる.挿入に際しては,これらの特徴を十分認識した上で,適切なendoprosthesisを選択し,適応症例を厳選し慎重に行うべきである.
  • 青木 洋, 門馬 公経, 福富 京, 今田 俊哉, 小暮 洋暉, 冨田 茂樹
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2856-2859
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.主訴は嚥下困難. 32歳頃から時々嚥下困難が出現し,約10年前からは症状が増悪した. 1996年3月には食事摂取不能となり,近医にて食道アカラシアと診断され入院した.食道造影検査ではIII度のS状型食道アカラシアであった.内視鏡検査では,上切歯列から25~29cmの2時方向中心に発赤を伴うO-IIc病変を認め,ヨード染色では明らかな不染帯として認められた.生検では, moderately differentiated squamous cell carcinomaであった.表在型食道癌を併発したアカラシアと診断し,食道抜去術を施行した.切除標本では,胸部中部食道の右壁に3.6×2.8cm大のO-IIc病変を認め,深達度はmm3, poorly differentiated squamous cell carcinomaであった.
  • 小森 康司, 松浦 豊, 河野 弘, 北川 喜己, 西垣 美保, 野田 徳子, 伊藤 直人, 石川 和夫, 横山 真也
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2860-2864
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.平成8年11月2日午前5時頃,エアバック装備車を飲酒運転し中央分離帯に衝突.シートベルトの装着はなかったが,エアバックは作動していた.いったん職場にでかけるが,腹痛増強し,午前11時救急車にて当院受診.腹部膨満強く,全体に圧痛を認め,腹部CT検査にて腹腔内出血および胃後壁にhigh densityとlow densityの混在した腫瘤を認めた.緊急手術施行.約1.5lの血性腹水を認め,また胃体中部大彎後壁に壁外性に発生している95×85×62mm大の腫瘤を認めた.表面不整かつ弾性硬で,腫瘤自体血腫の状態になっており,出血していた.胃平滑筋肉腫と診断し,胃切除施行.病理組織学的所見では,低悪性度の平滑筋肉腫と診断された.術後経過良好にて第24病日に退院した.シートベルトを装着せずエアバックのみ作動した場合,大半は顔面,頸部,胸部損傷であり,腹部損傷は極めて珍しく,また胃平滑筋肉腫のみ損傷があり,その他の臓器に損傷が認められなかったのは特異的な例と思われた.
  • 黒崎 哲也, 鈴木 旦麿, 保谷 芳行, 山崎 洋次, 古里 征国, 岡部 紀正
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2865-2869
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性.吐血にて近医に緊急入院した.その後当院転院となり上部消化管内視鏡検査にて胃体上部前壁に巨大潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.潰瘍以外の隆起面は正常粘膜で覆われ,粘膜下腫瘍が疑われた.同時に施行された生検で平滑筋腫の診断であった.また胃体下部前壁にも有茎性の粘膜下腫瘍を認めた.生検では悪性所見を証明できなかったが肉眼的,画像診断的に平滑筋肉腫と診断し,胃全摘術+2群リンパ節郭清を施行した.術中所見では肝転移,腹膜播種,浸潤は認めなかったが腫大したリンパ節を数個認めた.病理組織学的検索では2個の粘膜下腫瘍はどちらも独立した平滑筋肉腫で同時多発性病変と考えられ,リンパ節転移も認めた.これまで多発性胃平滑筋肉腫の報告は少なく検索した範囲では自験例を含め10例のみであった.
  • 林 光弘, 梨本 篤, 田中 乙雄, 土屋 嘉昭, 佐野 宗明, 佐々木 壽英
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2870-2874
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは1966年1月から1995年12月まで当科で経験した胃癌6,174例中,食道癌術後に発生した吊り上げ胃管癌5例を対象とし,それぞれの食道癌手術時の年齢,局在,術式,再建経路,および,胃管癌手術時の年齢,組織型,内視鏡所見,局在,術式,予後を検討した.食道癌手術時の平均年齢は62歳,局在はImに多く,早期癌が4例であった.全例右開胸による胸部食道切除術を施行され,再建経路は3例が胸骨後, 2例が後縦隔経路であった.胃管癌手術時の平均年齢は68.4歳,局在は幽門側が4例と多く,術式には3例にSurgical Local Resection (SLR)を施行した.内視鏡所見に特徴は認めなかった.予後は1例が現病死, 1例が他病死, 3例が生存中であった.今回われわれが施行した縮小手術は他に報告例がないが早期の症例に行えば有用な術式と思われた.また,早期発見のためには長期にわたる内視鏡検査が重要である.
  • 清水 公裕, 横森 忠紘, 家里 裕, 小林 功, 大和田 進, 森下 靖雄
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2875-2879
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は下血を主訴とした66歳,女性.平成3年9月と平成5年5月の2回,当院入院,内視鏡検査で十二指腸憩室が確認されたが,出血源は不明であった.平成7年5月に再度大量の下血があり入院した.内視鏡検査では,十二指腸下行脚に多量の凝血塊と,下行脚外側とVater乳頭近傍に憩室を認めた.十二指腸憩室よりの出血と診断し手術を施行した.手術は大きな憩室2個については,憩室切除を,小憩室については,大きい2個に憩室埋没術を行った.下行脚の狭窄を考え,十二指腸離断, Roux-en-Y式に十二指腸空腸吻合術を行った.十二指腸憩室の発生頻度は大腸憩室に次いで高いが,合併症としての出血の頻度は低い.今回,十二指腸憩室より出血を来した稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 米沢 圭, 横尾 直樹, 白子 隆志, 二村 学, 米山 哲司, 森 茂
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2880-2883
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    多量の乳糜腹水を伴う小児小腸捻転症の1例を経験したので報告する.
    症例は13歳女児、突然の下腹部痛を主訴に来院.下腹部に圧痛・筋性防御が著明で, CT・USにて腹水を認めた.緊急手術施行したところ,多量の乳糜腹水・時計回り360度の小腸軸捻転・小腸の虚血性変化・および腸間膜と小腸漿膜のリンパ管の怒張を認めた.
    小腸捻転の整復により虚血は速やかに改善したため,腸切除は要しなかった.他に移動盲腸・Meckel憩室を認め,小腸捻転の原因と考えられたため,虫垂切除術および憩室切除術を併施した.術後の経過は良好で, 13日目に退院,約4年経過する現在も再発は見られない.乳糜腹水発生の原因は不明であるが,移動盲腸の存在が小腸捻転を誘発し,小腸のリンパ流が障害された結果,乳糜の漏出を来したものと考えられる.
  • 飯田 豊, 嘉屋 和夫, 松友 寛和, 松原 長樹
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2884-2886
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷による腸間膜損傷において,腸管支配血管が障害され腸管に遅延性に異常を生じることがある.今回われわれは,受傷後3日目に腹膜炎症状を呈し,術中に腸間膜損傷による回腸壊死と診断した1例を経験した.症例は51歳,男性.車が電柱に衝突,胸腹部をハンドルで強打し,当科を受診した.入院時検査では白血球, CRPの上昇を認めた以外,臓器損傷の所見は認められず経過観察していたが,入院後3日目より腹痛が増強,腹膜刺激症状も出現し,血液検査では炎症所見も著明となったため,腹膜炎の診断にて手術を施行した.回腸末端から口側へ約90cmの部位で回腸が約7cmの範囲で全層性の壊死に陥っていた.病変部と正常腸管との境界は鮮明で腸間膜に裂傷を認めたが,回腸には穿孔等の所見は認められず,回腸切除術を施行した.鈍的腹部打撲により腸間膜が損傷され腸間膜血管に障害を起こし,血流障害から小腸壊死を形成したものと考えられた.
  • 伊藤 誠二, 加藤 知行, 平井 孝, 紀藤 毅, 中山 敏
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2887-2890
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    右半結腸切除術後の難治性回腸皮膚瘻に対し,二層の局所皮弁術を用いてその閉鎖を図り,良好な結果を得たので報告する.
    症例は78歳男性.腹壁浸潤と回腸浸潤を伴う上行結腸癌に対して,右半結腸切除,腹壁,回腸合併切除術を施行.術後,正中側に小腸瘻を形成,長期間にわたり絶食,中心静脈栄養管理を行い,腸瘻からの排液の減少,停止をみたが,経口摂取を開始すると瘻孔が再発し,最終的に閉鎖が得られなかった.瘻孔形成後6カ月を経過し,保存的治療の限界と判断,再手術を施行.局所麻酔下にdoor flapにより腸瘻を閉鎖,新たに生じた皮膚欠損をrhomboid flapで被覆し,二層の局所皮弁術により瘻孔閉鎖を図った.術後1カ月で経口摂取を開始,瘻孔の再発なく治癒,退院した.
  • 頼木 領, 青松 幸雄, 金廣 裕道, 畑 倫明, 中野 博重
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2891-2895
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.主訴は右下腹部痛.石綿肺にて当院内科で加療されていたが,右下腹部痛出現し当科に紹介された.腹部に強い反跳痛を,胸部X線写真にてfree airを認めたため,消化管穿孔による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.開腹時,右横隔膜を主病巣とする径5cm大の腫瘍を,また腹腔内に最大径2cm大の多数の播種性転移巣を認めた.回腸末端より口側20cmの部位の転移巣に穿孔を認め,この部位を含む回腸部分切除術および端々吻合術を施行した.病理組織検査にて,中心が壊死に陥り穿孔を起こした腹膜中皮腫の播種性転移を認めた.コロイド鉄を用いた免疫組織化学染色にて中皮腫との確診を得た.腹膜中皮腫は比較的稀な疾患であり,播種性転移による小腸穿孔という興味深い症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中城 正夫, 春木 哲哉, 岩田 英理子, 庄司 剛
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2896-2900
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性で,熱発,右下腹部痛,下血を主訴に来院した.膿瘍形成を伴う虫垂炎あるいは憩室炎の術前診断で手術を施行した.開腹するとBauhin弁より約2m70cmの回腸腸間膜に腫瘤が存在した.大きさは11.5×9.0×8.5cmであった.腫瘤と腸管とは交通があり,腫瘤内には血腫が充満していた.腫瘤の割面は嚢腫状で腫瘤壁の一部は肥厚し赤褐色を呈していた.組織所見より平滑筋芽細胞腫と診断した.手術後5年,再発なく健在である.小腸平滑筋芽細胞腫は本邦で51例の報告がある.平均年齢54.3歳,男性34例,女性18例,平均最大腫瘍径7.8cm,発生部位は上部小腸に多い傾向にある.症状として,下血,黒色便が多く,半数以上の症例に貧血を認める.腹部腫瘤,腹部膨満感を16例に,発熱を8例に認めた.ほとんどの症例で術前診断は困難で,術後に診断がついている.
  • 辛島 誠一郎, 高橋 良彰, 岩田 敏伸, 大宅 宗治
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2901-2903
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍は比較的稀な疾患であり,術前診断に難渋することが多い.今回,われわれは下血で発症し,術後の病理学的検索で平滑筋芽細胞腫と診断された症例を経験したので報告する.症例は57歳男性.下血とフラつきを主訴に外来受診.検査の結果高度の貧血を認めた.入院後,腹部エコー, CT,注腸透視, GF, CFなどを施行したが有意な所見は得られなかった.小腸からの出血の可能性が高いと考え,本人,家族と相談のうえ手術を施行.回盲部より約1m口側の回腸に腫瘍を認め,切除術を行った.術後の病理学的検索にて腫瘍は平滑筋芽細胞腫で,これによる出血であったことが判明した.上部,下部消化管精査で有意な所見が得られなくても,下血,貧血などの症状が持続する場合,小腸腫瘍も念頭に置く必要がある.
  • 中坪 直樹, 山口 博紀, 佐藤 宗勝, 奥村 稔, 高橋 敦
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2904-2908
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌は,生物学的特性のみならず発生母地である肺組織構造の特異性のため他臓器に比べて遠隔転移をきたしやすい.転移臓器としては肺,肝,骨,腎,副腎,脳などの順に多いが,小腸への転移は比較的まれである1). 今回われわれは下血のため小腸切除を施行した肺癌小腸転移症例を経験した.
    症例は54歳,男性で1993年2月に左B6原発の肺癌(rt〓U)に対し左肺全摘術(P-T2N2M0, stage IIIA)が行われた. 1996年5月より下血が出現し当科を受診した.高度の貧血が認められたため内視鏡検査を施行したが上部消化管,大腸に出血部位は認められなかった.小腸造影検査で空腸に狭窄所見が認められ転移性小腸腫瘍の疑いで手術を施行した.開腹するとトライツ靱帯より100から130cmの空腸間膜に径7cmの腫瘤を認めた.腫瘤は一部腸管壁を巻き込む形で存在していた.腫瘤を含め約40cmの小腸切除を行い端々吻合を施行した.組織学的には,中分化型腺癌であり,肺癌からの転移と診断された.文献上検索しえた肺癌の小腸転移巣を切除した症例を集計し臨床病理学的に検討を加えた.
  • 角田 明良, 藤森 聡, 柏瀬 立尚, 渡辺 誠, 渋沢 三喜, 草野 満夫
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2909-2914
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    管腔外発育型小腸癌を2例経験した.症例1は61歳,女性で腹痛を主訴に来院した.小腸造影で空腸に憩室様の不整な造影剤の貯留を,腹部CTで腫瘤内のガスを認めた.腹部血管造影では空腸動脈にencasementが認められた.症例2は72歳,男性で全身倦怠感を主訴に来院した.小腸造影で回腸に不整な造影剤の貯留を伴う狭窄像が認められた. CTと血管造影は症例1と同様の所見であった.手術所見では2例とも管腔外発育が顕著で,隣接臓器に浸潤を認め,合併切除を行った.病理組織学的検査では2例とも中分化腺癌であった.管腔外小腸悪性腫瘍の鑑別には平滑筋肉腫,悪性リンパ腫の他に管腔外発育型小腸癌の存在を認識した上で術前検査をすすめることが肝要と思われる.
  • 倉地 清隆, 長嶋 孝昌, 水上 泰延, 生田 宏次, 近松 英二, 八木 崇人
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2915-2919
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    術前に確定診断しえた若年者回腸悪性リンパ腫の1例を報告する.症例は23歳の男性で右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を自覚し来院.超音波検査およびCT検査にて回腸末端に充実性腫瘍を認めた.注腸では回盲部の壁不整像を呈し,大腸内視鏡下生検にて悪性リンパ腫と診断された.開腹所見では回腸未端に6×6×5cm大の腫瘍を認め,中結腸動脈根部までのリンパ節郭清をともなう右半結腸切除術を行った.病理組織学的にはdiffuse mediumsized B-cell typeと診断された.
    術後はTCOP療法5クール施行し,現在まで再発なく経過中である.
    本疾患は術前診断が困難かつ予後不良な疾患であり,急性腹症にて術前検索が不十分なままに手術に至る症例が多い,そして,病期・組織型・根治度により予後に明らかな差異が認められるため,術前に全身検索を含めた総合診断を行うことは治療上有意義である.
  • 山内 希美, 田辺 博, 可知 宏隆
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2920-2925
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎は小児急性腹症の中で頻度の高い疾患でありながら,成人に比して症状も定形的でない場合が多く,急速な悪化をみるために診断および治療において慎重な対応が求められる.近年,腹腔鏡下手術の発展はめざましく,腹腔鏡下虫垂切除術(LA)もその域にもれない.しかし小児に対するLAの報告は散見されるにすぎず,適応と意義についても議論のあるところである.今回われわれは21例の小児虫垂炎に対しLAを施行し良好な成績を得たので報告する.対象症例の年齢は6~15歳であり,男女比は13:8であった.トロカールは成人と同じものを使用し, 3トロカール法にて施行した.腹腔鏡診断はカルタ性10例,縫巣炎性11例であり,手術時間は12~42分であった.術後合併症はトロカールによる皮下血腫が1例に認められるのみであった.腹腔内膿瘍や創感染は認められなかった. LAは小児に対しても十分に対応可能でかつ有効な手術手技と考えられる.
  • 山下 和城, 浪花 宏幸, 大塚 昭雄
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2926-2930
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌,特に粘液嚢胞腺癌は様々な臨床症状を呈し,術前診断は困難といわれている.その原因は, 1. 虫垂が解剖学的に腹腔内遊離臓器であるため, 2. 粘液嚢胞腺癌の産生する粘液の進展方向により異なった症状を呈し得るためと考えられる.近年,われわれの施設で進展方向が異なる3例の虫垂粘液嚢胞腺癌を経験した.症例1: 59歳,男性.主訴は右下腹部痛で虫垂炎疑いで開腹した.診断は虫垂間膜内に穿通した粘液嚢胞腺癌であった.症例2: 53歳,女性.主訴は嘔吐,下痢で腹膜偽粘液腫の疑いで開腹した.虫垂先端で穿孔した粘液嚢胞腺癌であった.症例3: 80歳,女性.主訴は発熱で大腸癌,後腹膜穿通の疑いで手術した.診断は後腹膜に穿通した虫垂粘液嚢胞腺癌で上行結腸に瘻孔を形成していた.以上の3例は同疾患でありながら,産生した粘液の進展方向が異なったため,全く異なった臨床症状を呈したと考えられた.
  • 井上 慎吾, 草間 俊行, 茂垣 雅俊, 名取 宏, 松川 哲之助
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2931-2934
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    近年閉塞性大腸炎の認識が高まっているが,本疾患による穿孔例は稀であるため報告する.症例は67歳,男性で,急激な下腹部痛で来院した.下腹部に筋性防御,圧痛,反跳痛を認め,低血圧を示した.腹部単純X線所見では,遊離ガス像や小腸ガス像を認めなかったが,腹膜炎によるショック状態が疑われ,緊急手術を施行した.開腹時所見では,大腸内容物によって汚染された腹水を認め,直腸前壁部の穿孔とそれより肛門側に直腸癌(Ra)を認め,閉塞性大腸炎による穿孔性の汎発性腹膜炎と考えられた.全身状態が不良のため,ハルトマンの手術を施行した.切除標本では,直腸癌と穿孔部は約3cmの正常粘膜を有し,病理組織学的に穿孔部は虚血性腸炎の所見を呈していた.術後に偽膜性腸炎を発生した.また腹壁創離開により再手術を施行したが,術後50日目に軽快退院した.
  • 矢野 達哉, 佐川 庸, 窪園 隆, 坂東 康生
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2935-2938
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは特異な形態を呈した若年者大腸癌の1例を経験したので報告する.
    症例は26歳の女性,イレウス症状にて来院.精査にて横行結腸癌と診断,イレウス管にて減圧を図りつつ, Neoadjuvant chemotherapyを行い,根治術を施行した.摘出標本では横行結腸は完全閉塞に陥っていたが閉塞部の長さは5mm程であり,肉眼的に明らかな隆起性病変,潰瘍性病変は認められず,肉眼型は5型と考えられた.組織学的には粘膜面ではごく小範囲に高分化型腺癌の所見を認めるのみであったが,粘膜下層以下ではより広範囲に癌細胞が浸潤していた.本症例は第1度近親者に大腸癌患者はいないが, HNPCCの発端者である可能性もあると考えられた.
  • 山田 卓史, 山口 敬史, 石橋 経久, 菅村 洋治, 國崎 忠臣
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2939-2942
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Budd-Chiari症候群に対する外科治療は,直接閉塞部位を解除する直達手術と,門脈系,下大静脈系の減圧をはかるbypass手術があるが,手術成績や遠隔予後にはいまだ問題があり,議論の余地を残している.今回,肝硬変を合併した本症例に対し,部分体外循環下に直達手術を施行し良好な結果を得たので報告する.
    症例は67歳女性で,腹壁および両下肢の静脈怒張と肝機能障害を呈し,血管造影にてBudd-Chiari症候群の診断を得た.手術は部分体外循環を用いて,肝部下大静脈閉塞部を自己心膜パッチにて拡大する直達手術を施行した.
    本症に対する手術の要点は,(1)下大静脈血流遮断時間の短縮,(2)術中の肝庇護,(3)肝静脈の再開通であり,部分体外循環を用いた本法はこの観点からも,また術中の出血量の減少の点からも有用な方法と考えられた.
  • 長谷川 洋, 北川 喜巳
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2943-2947
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.検診で肝腫瘍を指摘され入院した. 16歳時頬部腫瘍にて検査,治療を受けたが,詳細は不明であった.入院時,右頸部に硬い腫瘤を触知した.腹部単純写真では,腹腔内に点状の石灰化を認め,脾は萎縮し点状の石灰化を呈していた. USでは,肝はやや高エコーでS6に40×31mmの腫瘍を認めた.単純CTでは肝のCT値は80HUと高値で,脾とリンパ節に石灰化を認めた.超音波誘導下生検では,胆管細胞癌と診断された.以上よりトロトラスト肝癌と診断し,肝部分切除術を施行した.病理組織検査では,混合型の肝癌と診断された.術後3年で再発死亡した.
  • 牧角 良二, 山田 恭司, 今村 智, 野崎 久充, 大舘 敬一, 柴山 英一
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2948-2952
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    われわれは,約三年にわたり肝機能異常を繰り返し術前に胆管癌と診断,根治術を施行しえた比較的稀な粘液産生胆管癌の1症例を経験した.症例は59歳男性,平成3年7月腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.その後肝機能異常を認めたが保存的治療にて軽快.平成4年5月再度同症状があり超音波検査(以下US)施行.肝内胆管拡張を伴う胆管内腫瘤陰影あり経内視鏡的胆道鏡にて胆管内に黒緑色のゼリー状物質を認めた.経内視鏡的乳頭切開術を施行し大部分を除去した.その後肝機能は改善した.平成6年6月再度同症状ありUS施行したところ左肝内胆管および総胆管の拡張と胆管内の腫瘤陰影を認めた.胆管の吸引細胞診にてclass V, 胆管癌と診断し肝左葉切除,総胆管切除を行った.腫瘍による胆管の狭窄は軽度であり産生された粘液による閉塞が肝機能異常の原因と考えられた.
  • 田嶋 勇介, 上野 信一, 才原 哲史, 今給黎 和典, 愛甲 孝, 草野 満夫
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2953-2957
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    比較的稀な非機能性内分泌腫瘍の2例を経験した.症例1は38歳男性.背部痛を主訴に来院.精査にて膵体尾部を中心に巨大でhypervascularな腫瘤を認め,胃,脾・後腹膜・左腎への浸潤及び右腎への転移が見られた.開腹下生検を行い,非機能性膵内分泌腫瘍の診断を得た.術後1年6カ月担癌生存中である.症例2は34歳女性.人間ドックで膵腫瘤を指摘され当院受診.精査にて膵鈎部に約3cmのhypervascularな腫瘍を認めた.膵頭十二指腸切除術を施行し,非機能性膵内分泌腫瘍と診断した.
    さらに上記2例と当院の剖検例で偶然発見された,カルチノイド・グルカゴノーマを併せて病理学的検討を行い,症例1については有意な単位面積当たり細胞数の増加,症例2については明らかな核の増大が認められた.
  • 川辺 昭浩, 木村 泰三, 小林 利彦, 伴 覚, 数井 暉久, 森岡 幹登
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2958-2961
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,高CA19-9血症を呈した比較的稀な脾嚢胞の1切除例を経験したので報告する.症例は, 38歳男性で胸部膨満感と便秘を主訴に来院し,腹腔内腫瘍の疑いで入院となった.入院時現症として,腹部膨満を軽度認めたが,腹部腫瘤は触知しなかった.腫瘍マーカーとして, CA19-9 1,666U/ml, CEA 5.5ng/mlと高値を示す以外,血液生化学検査に異常は認められなかった.腹部超音波検査およびCTにて脾門部に約10cm径の嚢胞性病変が認められた.術中所見では,腫瘍は脾門部の膵背側に位置し強固に膵と癒着していたため,膵尾部+脾合併切除術が行われた.腫瘤の大きさは7×7×7cmで,嚢胞内CA19-9は24×104U/ml以上と異常高値を示した.組織学的に脾嚢胞と診断され,免疫染色では, CA19-9およびCEAともに嚢胞内上皮に陽性所見を認め,同部から血中への逸脱が疑われた. CA19-9は,術後10カ月には正常値となった.
  • 李 俊尚, 井関 貞文, 堀内 修三, 泉田 洋司
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2962-2965
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性. H8年8月,交通外傷による脾臓破裂で脾全摘術を施行.入院時,軽度の血小板増多があり,摘出脾は147gと軽度の脾腫を認めた.術後,血小板増多が著しく血栓症予防のため,アスピリン,ジピリダモールを投与したが14病日には195万/mm3に達した.術後31日目,急にヘモグロビン尿が出現,検査では相対的血小板減少, LDH高値, BUN上昇,破砕赤血球出現を認め,溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome以後HUS)と診断した.チクロピジン,ヘパリンの投与にてHUSは比較的軽症のうちに改善したが,術後3カ月経過した現在も血小板は120万/mm3前後の高値を示しており,抗血小板剤を継続投与している.血小板増多症に起因したHUSは検索しえた限りでは報告例はなく,稀な症例と考えられた.本症例の骨髄像では巨核球の増加が認められ,血小板異常増多の背景に原発性血小板血症の存在が示唆された.
  • 岡山 順司, 藤井 久男, 森田 敏裕, 石川 博文, 小山 文一, 中野 博重
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2966-2970
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    大腸癌の脾臓転移は文献上30例が報告されているが,被膜下出血を伴った脾臓転移の報告はなく,若干の文献的考察を加え報告した.症例は76歳の男性.肺転移を伴った下行結腸癌で,左上葉切除および左半結腸切除術施行.組織学的には3型(3/4周性),高分化型腺癌, stage IV (ss, n1(+), P0, H0, M(+))であった.術後6カ月目にCEAの上昇をきたし,上腹部CT検査で脾臓に大きさ4.0×3.0cmの腫瘍を認めた.腹部超音波検査ではモザイク状パターンを示す円形像を認めた.再三手術を勧めたが患者が手術を拒否した.平成7年9月5日に左上腹部に激痛が出現し,超音波検査, CT検査で脾腫瘍の破裂による脾被膜下血腫を認め,患者も手術に同意し当科入院. 9月25日脾臓摘出術を施行した.病理組織学的に下行結腸癌と同じ高分化型腺癌の組織像であったため大腸癌による転移性脾腫瘍と診断した.
  • 辻 研一郎, 佐々木 誠, 古川 正人, 酒井 敦, 宮下 光世, 藤井 秀治
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2971-2975
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    正所性の副腎皮質腺腫はクッシング症候群の1つとして多い疾患であるが,異所性の腹腔内副腎皮質腺腫は文献を検索しえた範囲では極めて稀である.今回われわれは切除しえた副副腎原発の巨大副腎皮質腺腫の1例を経験したので報告する.症例は74歳女性.平成6年9月ショック状態を伴う急性腹症にて当院に救急搬送. CT, MRIにて,少量の腹腔内出血,腫瘍内出血を伴う18cm大の後腹膜腫瘍を認めた.保存的に経過を観察した後,平成7年2月血管造影にて流入動脈(L2~5の腰動脈),流出静脈(下大静脈)を把握できたので,同年3月切除術を施行した.腫瘍は18cmの大きさで病理学的には副腎皮質腺腫であった.副腎皮質は腎と同様に中胚葉性腹腔上皮から生じ,発生学的見地から異所性に副腎皮質腺腫が発生するのは稀である.
  • 伊勢 一哉, 金沢 幸夫, 吉野 泰啓, 佐藤 志以樹, 井上 仁
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2976-2981
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小児腎腫瘍では比較的まれな先天性間葉芽腎腫(CMN)の1例を経験し報告した.症例は1カ月の男児で,主訴は右上腹部腫瘤.腹部CT, IVPおよび超音波検査で右腎外側より発生した腎腫瘍と診断し,右腎摘出術を行った.腫瘍は腎被膜に被われ,周囲への浸潤およびリンパ節の腫脹を認めなかった.腫瘍は大きさ9.0×6.5×6.0cmで,重さは212gであった.病理診断はCMNの混合型であった.後療法は行わず,現在8歳になるが再発を認めない.
    CNMは,一般に腫瘍摘出術後の予後は良好とされるが,まれに再発転移をきたす症例もあり術後注意深い経過観察が必要である.
  • 塩澤 学, 今田 敏夫, 利野 靖, 田中 淳一, 高橋 誠, 近藤 治郎
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2982-2985
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    進行胆嚢癌術後,長期経過し異時性に大腸および子宮内への転移を認めたまれな症例を経験した.症例は, 75歳,女性.不正性器出血を主訴に受診し精査目的にて入院した.腹部CT上,子宮頸部に不整な腫瘤を認め手術を施行した.術中所見は子宮頸部に主病巣をもち,直腸および膀胱への浸潤を認め,子宮,卵巣切除に加えて,膀胱の一部と直腸を合併切除し,人工肛門を造設した.病理組織学的所見では, 7年前の胆嚢癌および1年前の大腸転移と類似した低分化型腺癌であった.胆嚢癌の他臓器転移は比較的まれであり,特に子宮頸部への転移は極めてまれとされている.術後経過良好だが,今後さらに他臓器転移の可能性があり,厳重な経過観察が必要である.
  • 高原 秀典, 邉見 公雄, 實光 章, 吉田 圭介, 横山 正, 熊野 公束
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2986-2990
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肛門周囲膿瘍から発生し,左上肢から左下肢に及ぶ広汎な皮下気腫像を呈したFournier's gangreneの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は51歳男性で肛門周囲および陰嚢の疹痛,腫脹,発赤を主訴に来院した.炎症反応が著明で,頸部から左下肢まで握雪感を認め, CT検査にて左上肢から左下肢まで連続して皮下気腫像を認めた.即日,緊急手術を行い,肛門周囲および陰嚢の壊死組織を除去するとともに胸壁から下部腹壁まで切開,ドレナージを行った.術後8日目に炎症範囲の拡大が認められたため,切開,排膿術を追加した.
    本症は重篤な経過をとることが多いため,膿瘍部分の切開,排膿と壊死組織の除去を含む早期の適切な治療および創部汚染の回避や全身管理が必要であると思われた.
  • 西島 弘二, 藤村 隆, 谷 卓, 八木 雅夫, 三輪 晃一
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2991-2994
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸間膜より発生する原発性腫瘍は比較的稀な疾患であり,なかでも腸間膜線維腫症の報告例は少ない.今回,われわれは,腸間膜線維腫症術後の再発の1例を経験したので報告する.症例は, 36歳の男性で1979年よりWegener肉芽腫症にて治療中であった. 1992年に腸間膜線維腫症に対して当科にて回盲部切除術および小腸切除術を施行した. 1995年4月中旬より臍部右側に卵円形の腫瘤を自覚するようになり,腹部CT検査にて均一に造影される腫瘤が認められ,腫瘍を含め小腸および結腸切除術を行った.病理組織学的所見は著明な膠原線維化を伴う線維芽細胞の増生よりなり,細胞異型は乏しく,核分裂像も認められず,腸間膜線維腫症の再発と診断された.
  • 竹長 真紀, 内藤 伸三, 古池 幸司, 森田 晋介
    1997 年 58 巻 12 号 p. 2995-2998
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    CTにて閉鎖孔ヘルニアと術前診断された症例を3例経験したので報告する.症例1は85歳の女性.腹痛,嘔吐で内科に入院. CTにて右閉鎖孔ヘルニアの嵌頓と診断され外科に転科.手術施行.回盲部より約60cm口側の腸管が右閉鎖孔に嵌頓しており壊死を認めていたため,小腸切除を行った.症例2は77歳の女性.腹痛,嘔吐で発症.イレウスの診断にて近医より紹介. CTにて右閉鎖孔ヘルニアの嵌頓と診断.手術施行.回盲部より約8cm口側の腸管が右閉鎖孔に嵌頓しており壊死を認めていたため,小腸切除を行った.症例3は74歳の女性.腹満感,嘔吐にて発症.イレウスの診断にて近医より紹介. CTにて右閉鎖孔ヘルニアの嵌頓と診断.手術施行.回盲部より約40cm口側の腸管が右閉鎖孔に陥入していたが,壊死は認めなかったため,小腸切除は行わなかった. 3例ともCTにて本症と診断されており診断に有用な検査であるといえる.
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