臨床血液
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32 巻, 9 号
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臨床研究
  • 前田 義久, 相馬 正幸, 笠倉 新平
    1991 年 32 巻 9 号 p. 927-930
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
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    悪性腫瘍における線溶系の動態についての究明は,臨床上非常に興味深いものがあり,われわれは悪性腫瘍と線溶系との関連について研究してきた。現在までに,悪性腫瘍の転移症例においてt-PA antigenが高値を示す事実を報告した。今回,悪性腫瘍症例検体64例についてt-PAの特異的インヒビターであるPAI-1 antigen測定を実施した。その結果,肺癌よりの転移症例の場合を除いて,PAI-1 antigenは,非転移症例に比べ有意な(P<0.05)高値を示した。本事実は,悪性腫瘍における線溶動態について興味ある事実と思われた。
  • 田中 公夫, 武地 美保, 重田 千晴, 小熊 信夫, 鎌田 七男, 滝本 泰生, 藏本 淳, 許 泰一, 土肥 博雄
    1991 年 32 巻 9 号 p. 931-937
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    5番染色体長腕に欠失や転座の異常を持つ9症例の骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)においてc-FMS遺伝子,GM-CSF遺伝子量をデンシトメーターで測定した。5番染色体長腕に欠失を持つ5症例の全員にc-FMS遺伝子とGM-CSF遺伝子の半量化が観察された。これらの事実はc-FMS, GM-CSF遺伝子はともに5q-染色体の共通欠失領域内に存在していて,これら疾患の発症や進展に重要な役割を果していると思われた。
  • 安永 幸二郎, 粉川 皓年, 藤竹 英樹, 野村 昌作, 陰山 克, 大藪 博, 巽 典之, 任 太性, 朴 勤植, 川越 裕也, 吉岡 慶 ...
    1991 年 32 巻 9 号 p. 938-944
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    ITPに対するγ-グロブリン大量投与(IVIG)は,著明な血小板数増加を引き起こしうるが,たいていは,すぐに治療前の血小板数まで戻ってしまう。そこで,ITPに対するIVIG後の免疫抑制剤療法による血小板数維持効果について検討した。35例のITPに対しIVIG治療を行い,そのうち32例に対して,引き続いてプレドニソロン(PSL)あるいはアザチオプリン(AZP)を投与した。IVIG後,血小板数は有意に増加した。IVIG後の免疫抑制剤療法に関しては,多くの場合,血小板数が維持される傾向がみられた。特にこの効果は,前治療としてのPSLに対する反応性がみられた症例において有意であった。一方,PSLに対する反応性がみられなかった症例では,血小板数は維持されなかった。IVIG後にPSLを投与した場合,血小板数維持効果は,PSLの用量依存性であった。IVIG後にPSLやAZPを投与するのは,血小板数維持効果において有用と考えられた。
  • 林 朋博, 新谷 憲治, 櫻川 信男, 市原 和俊, 山崎 徹, 渡辺 明治
    1991 年 32 巻 9 号 p. 945-950
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    下血を主訴に入院した第VIII因子阻害抗体陽性血友病患者の止血管理および阻害抗体の性状について検討した。症例は44歳,男性。内視鏡検査で露出血管を伴う出血性胃潰瘍を認めた。入院時の第VIII因子阻害活性は66 Bethesda単位/mlで止血の目的に活性化プロトロンビン複合体製剤を輸注し,経内視鏡的に組織損傷を伴わないclippingによる止血処置を施行し効果を認めた。患者の阻害抗体はSephacryl S 200, Protein A columnで精製して,IgG分画にその存在を確認した。この抗体の認識するepitopeをmonoclonal抗体精製第VIII因子製剤を抗原として,Western blot法で検討したところ,阻害抗体は分子量160-200 kDの第VIII因子heavy chainを認識しており,またdot blot法によるサブクラス解析ではIgG1, IgG2およびIgG4に属した。一方,他例の血友病患者第VIII因子阻害抗体は,分子量約80 kDの第VIII因子light chainを認識し,IgG1およびIgG4に属した。
  • 木下 清二, 吉岡 慶一郎, 新堂 隆人, 笠原 素子, 田中 恒二
    1991 年 32 巻 9 号 p. 951-957
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
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    血小板無力症患者9家系10症例(type I 7例,type II 3例)およびその家族18例(両親11例,同胞6例,子供1例)の血小板膜GPIIbIIIaを3種類の市販FITC標識モノクロナール抗体(PLT1, TP80, P2)を用いflow cytometryにて測定した。GPIIbIIIa量はmean channel値より正常血小板を100%として算出した。type I 6例では血小板膜GPIIbIIIaは正常の19%以下への低下が見られた。1例はTP 80でのみ46.5%の高値を示した。type IIではtype I同様低値を示すもの1例,TP 80で30.9%, P 2で28.2%を示すもの1例,ほかの1例は抗体の種類に関係なく常に正常値を示しvariant症例と考えられた。本症type Iの両親は正常人対照に比し低値を示し,同胞2例が保因者と診断された。血小板無力症は予想されたよりもheterogeneityの多い疾患であり,flow cytometry法は本症variant症例の診断,またtype I症例の保因者診断に簡便で有用な方法と考えられた。
症例
  • —文献的考察を加えて—
    杉浦 ゆり, 川島 祐子, 渡辺 勝美
    1991 年 32 巻 9 号 p. 958-963
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
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    23歳女性。主訴;四肢の点状毛細血管拡張と過多月経。1983年,手掌に赤色点状皮疹が出現し,四肢,躯幹に広がる。1987年下血,血尿,抜歯後の止血困難,長時間歩行後の下腿の赤紫色の変色があった。頻回の鼻出血が兄と父方の従兄弟に認められた。出血時間延長,APTT延長,vWf: Ag低下,F VIII: Ag低下,F VIII: c低下,毛細血管抵抗減弱,Rcof正常下限,血小板粘着能低下,F VIIIプロファイル;multimetric compositionは正常,抗原低下。血小板凝集能はristocetin, collagenで低下する時があった。本例をOsler病にvon Willebrand病type Iを合併していると診断した。今までに同様の合併例が28例(8家系)ある。vW因子は血管内皮細胞で産生され,Osler病でみられる血管内皮障害は,vW因子に異常を引き起こす可能性を推測させる。この場合,二次的なvon Willebrand病といえる。von Willebrand病以外の出血凝固疾患を合併している報告もあり呈示した。
  • 脇田 待子, 小谷 重光, 瀬崎 達雄, 村上 元正, 石井 廣文, 星島 俊彦, 中山 志郎
    1991 年 32 巻 9 号 p. 964-969
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    77歳,女性。1983年1月右鎖骨髄瘤の生検により比較的成熟した形質細胞よりなる形質細胞腫と診断され,肋骨腫瘤と多発性の骨融解像を認めた。血清蛋白量7.5 g/dl, M蛋白は2.1 g/dl, IgA (κ)型であった。骨髄像では,有核細胞数31.3×104l, 成熟型形質細胞が21%であった。同年3月より化学療法を開始,4カ月後には腫瘤は縮小,M蛋白は免疫固定法でも消失したが,その後γ-globulinは24.6%, IgGは1,980 mg/dlと増加した。同年12月右鎖骨,次いで肋骨腫瘤は再度増大し,1984年5月の生検所見では未熟な形質芽球様細胞がびまん性に増殖し,酵素抗体染色では抗κ鎖にのみ陽性であった。1984年8月から全身性多発性皮下腫瘤の急速な増大に伴って,IgGは3,356 mg/dlで,polyclonalな増加を示し,骨髄像では成熟形質細胞が7.4%であった。同年12月,多発性の腸管膜腫瘤によるイレウスを合併し死亡した。腫瘤形成型骨髄腫における化学療法によるM蛋白の消失と,正常免疫globulinの変動について考察した。
  • 石田 也寸志, 横田 佳子, 田内 久道, 松田 博
    1991 年 32 巻 9 号 p. 970-975
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は11歳女児で,細胞形態(特殊染色所見),免疫表面マーカー分析および遺伝子解析の結果,骨髄系とリンパ系のhybrid acute leukemiaと診断した。2回目の骨髄再発の後,再導入療法を施行中に抗生物質不応性の弛張熱と肝脾腫を呈した。骨髄中の成熟した組織球の著明な増加と血清フェリチン値の著明な上昇から反応性組織球症と診断した。Etoposide (VP-16)を投与したところ完全に解熱し,そのほかの臨床症状も消失した。その後血小板輸血不応状態となったが,VP-16の経口投与に伴い血小板輸血効果の改善がみられた。この結果は白血病治療中の反応性組織球症およびそれに伴う血小板輸血不応症に対してVP-16の有効性を示唆している。
  • 近藤 英樹, 岡川 和人, 武市 俊彰, 林 正, 河内 康憲, 斎藤 史郎, 佐野 寿昭, 香川 典子, 白神 〓
    1991 年 32 巻 9 号 p. 976-980
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    患者は52歳,女。37°C台の発熱と全身の淡紅色の小斑状疹,有痛性の頸部リンパ節腫脹で発症。約1週間で皮疹は消失したが,全身に小豆大から3 cm大のリンパ節腫脹が認められるようになり,四肢遠位部に点状出血を認めた。肝・脾腫も認めた。赤沈45 mm/h, Hb 10.0 g/dl, RBC 345万/μl, WBC 22,600/μl(異型リンパ球47.0%, CD 8, HLA-DR陽性),PLT 1万/μl, GPT 91 U/L, γ-globulin 34.3%, EBV-VCA (IgG)×2560, EBNA×20, 抗風疹ウィルス抗体×512と陽性であった。リンパ節生検で,リンパ節基本構造の破壊,樹枝状血管の増生,immunoblastの増殖がみられIBL型病変と診断した。methylprednisoloneのパルス療法とγ-globulin大量(20 g×6日)療法によりリンパ節腫脹の消失,血小板と網状赤血球の増加がみられ,病態は改善した。本例は,ウィルス感染に伴う腫瘍性格の明確でないIBL型病変を,より良性な“真のIBL”との関連で検討し,またIBLの発症機序を検討するうえに貴重である。
  • 上野 博久, 阿佐美 雅子, 米田 良二, 村岡 章弘, 織辺 敏也, 鈴木 和文, 前田 光雄, 鎮西 忠信
    1991 年 32 巻 9 号 p. 981-985
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳,女性。昭和60年3月に性交後の持続出血にて入院。プロトロンビン時間16.7秒,活性化部分トロンボプラスチン時間92.1秒と延長,凝固因子活性はF. V:C 14%, F. VIII:C 12%と低下していた。vWF:Ag, Protein C抗原,Rcofは正常,Protein C inhibitorは軽度低下を示し先天性第V第VIII因子合併欠乏症と診断した。DDAVP投与により,Rcof, vWF:Ag, F. VIII:Cは上昇したがF. V:Cには変化を認めなかった。4年後妊娠期間中にF. V:Cは低値を持続したがF. VIII:Cは70%へと自然上昇し経膣分娩が可能と考えられた。しかし,前期破水と回旋異常をきたしたため,第VIII因子製剤投与下での帝王切開術を施行,異常出血は認めなかった。DDAVPと第VIII因子製剤は本疾患の分娩管理に有用であると考えられたが,正常婦人の妊娠経過と同様にF. VIII:Cが上昇した点は,その機序と共に無処置での分娩の可能性を示すと思われた。
  • 藤川 透, 堀口 順子, 飯塚 拡応, 根本 忠, 岩瀬 さつき, 山村 成子, 稲葉 敏, 山崎 泰範, 佐野 茂顕, 山田 尚
    1991 年 32 巻 9 号 p. 986-990
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    MDSの1症例について経時的癌遺伝子の発現変化を検討した。患者の骨髄は初期には末梢血,骨髄ともに臨床病態に反応しており,ある程度その機能が保たれていた。しかし,造血機能はAMLへの病態進行とともに徐々に障害されていった。このMDSからAMLへの移行を研究するため,患者の3病期,早期RAEB-t, RAEB-tおよびAMLについて単核球における4つの癌遺伝子の発現を調べた。早期RAEB-tにおいては検討した癌遺伝子のうちc-mybを除きすべての発現を認めた。しかし,RAEB-tではc-mycのみの発現であった。AMLではc-fmsを除きすべての発現を認めた。早期RAEB-tにおけるc-fmsおよびc-junの発現は感染症により惹起された単球増多を反映しているものと考えられ,また,AMLにおけるc-mybやc-mycの発現は,腫瘍細胞のより悪性化した証拠とみなせた。これらのことはMDSからAMLへの転化が,癌遺伝子の異常な発現に左右されていることを示唆しているものと考えられる。
  • 杉山 ひろみ, 中畑 龍俊, 久保 徹夫, 菊地 俊実, 天野 芳郎, 奥村 伸生, 小宮山 淳
    1991 年 32 巻 9 号 p. 991-995
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は3歳男児。1989年10月,発熱,腹痛,全身の骨痛を主訴に入院。入院時,血液検査ではHb 8.7 g/dl, WBC 5,300/μl(好中球9%),血小板5.5×104lを示した。生化学検査では,CRP, LDH, FDP, FDP-Ddimer, Fibrinogenが異常高値を示した。骨髄穿刺および生検で著明な壊死状態を認めた。また,Tc99mによる骨シンチでは全身骨にびまん性の異常集積を認めた。3週間後,臨床症状は消失したが,貧血のみが持続していた。骨髄壊死より2カ月経過した同年12月,骨髄穿刺にて白血病細胞を認めAML (M3)と診断され,化学療法は開始された。現在治療中である。本症例は,骨髄壊死にともない,急性期蛋白やFDP, FDP-Ddimerなどの著明な上昇を認めており,病態を考える上で興味深い。
  • 豊田 英嗣, 大槻 剛巳, 神山 憲王, 福島 達夫, 白戸 りさ, 神崎 暁郎, 山田 治, 八幡 義人
    1991 年 32 巻 9 号 p. 996-1000
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    Aclarubicin (ACR)少量療法は,骨髄異形成症候群や非定型白血病に対して,cytosine arabinoside少量療法や,活性型vitamin D3, retinoic acidなどとともに,分化誘導療法として注目されている化学療法である。今回,低形成性白血病例に対し,ACR少量療法を試み,良好な臨床的効果を認めたので報告する。症例は,36歳,女性。全身倦怠感を主訴に入院。末梢血検査にて,汎血球減少症と23%の骨髄芽球を認め,骨髄穿刺では,有核細胞の35.4%に骨髄芽球を認めるも,低形成性骨髄であり,低形成性白血病(急性骨髄性白血病型)と診断した。ACR少量療法(20 mg/日,10日間one shot静注)にて,末梢血中の骨髄芽球の消失,汎血球減少症の改善がみられ,骨髄穿刺では有核細胞数の増加を伴い,完全寛解と判定された。その後再度同療法を施行後,地固め強化療法を継続,現在も完全寛解を維持している。症例の概要を報告するとともに,本例におけるACR少量療法の作用機序を考察する。
  • 高田 雅史, 梅田 正法, 志越 顕, 白井 達男
    1991 年 32 巻 9 号 p. 1001-1005
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    血小板増多を伴った骨髄線維症を合併したIgGλ型多発性骨髄腫の1例を報告する。72歳の男性が,右背部痛と舌からの出血を主訴として受診,1989年5月18日に当科に入院した。入院時,肝脾腫を認めた。RBC 3.80×106l, Hb 12.2g/dl, Ht 36.9%, Plt 753×103l, WBC 22,100/μlでleukoerythroblastosisがみられた。NAPは正常,血清ビタミンB12, 血漿PDGF値高値であり,骨髄生検にて細網線維の増生を認めた。レ線上,第8胸椎および第6, 8肋骨に打ち抜き像を認めた。IgG 3,900 mg/dlで,免疫電気泳動にてIgGλ型のM蛋白がみられた。10月25日に頸部の激痛を訴え,レ線にて第6頸椎の骨折をみたため病巣郭清術を施行,生検にて形質細胞腫と診断された。VCAP療法,IFN-αにより治療,M蛋白の減少,腫瘤の縮小がみられた。
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