臨床血液
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33 巻, 11 号
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総説
臨床研究
  • —1981年∼1991年の福島・香川両県での成績—
    内田 立身, 河内 康憲, 坂本 幸裕, 井垣 俊郎, 小笠原 望, 刈米 重夫, 松田 信, 田中 鉄五郎, 木村 秀夫, 国分 啓二
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1661-1665
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    鉄欠乏性貧血は世界においてもっとも頻度の高い貧血であるが,わが国における正確な頻度と成因についての報告はない。今回,日本人女性3,015名において鉄欠乏の頻度を検索した。貧血の基準はトランスフェリン飽和率16%以上,血清フェリチン12 ng/ml以上の健常人の平均値から求めたヘモグロビン値から判定した。従来の鉄欠乏の判定基準にもとづき,鉄欠乏性貧血8.5%, 潜在性鉄欠乏8.0%, 貯蔵鉄欠乏33.4%, 正常43.6%, その他6.5%となった。鉄欠乏性貧血の頻度は10代前半より増加し,高校生,主婦で高く,高齢に向うにつれ減少した。鉄欠乏の成因は10代から若年層にかけては不明のものが多く,他方高齢者では原因の明らかなものが多く症候性貧血を有するものも多かった。鉄欠乏症に対する対策として鉄添加の問題,ビタミンCの大量投与,高頻度群に対する鉄剤の少量投与などが論じられた。
  • —悪性腫瘍患者における検討—
    中川 克, 辻 肇, 山田 恵三, 山田 結佳, 増田 治史, 山上 正仁, 米田 充, 高田 治, 沢田 昌平, 木谷 輝夫, 中川 雅夫
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1666-1672
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    DIC発症の基礎疾患として悪性腫瘍は重要であり,本疾患における血液凝固異常を早期に診断することがDICの予防ならびに治療上求められる。プロトロンビンの活性化に伴い生成されるプロトロンビンフラグメント(F1+2)を悪性腫瘍患者においてELIZA法により測定し,その有用性をほかのTAT, D-Dimer等の凝血学的指標と比較検討した。DIC合併悪性腫瘍患者では血漿F1+2値(mean±SD)は2.38±0.55 nM/lと健常成人(0.52±0.19 nM/l)およびDIC非合併患者(0.86±0.68 nM/l)に比して有意に高値であった。血漿TAT値,D-Dimer値およびPIC値と悪性腫瘍患者における血漿F1+2値は有意な正の相関を示した。DIC患者においてヘパリン持続投与により血漿F1+2値は血漿TAT値およびD-Dimer値に比して早期に正常化した。以上より,血漿F1+2値の測定は悪性腫瘍患者における凝固亢進状態を把握する上で有用であり,本疾患におけるDICの予防ならびに治療上の有益な情報を提供するものと考えられた。
症例
  • 野村 順, 遠藤 一靖, 古山 和道, 張替 秀郎, 佐藤 彰宜, 宍戸 友明, 奥田 光崇, 菅原 知広, 目黒 邦昭, 福原 修, 渡辺 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1673-1678
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,73歳という高齢者AML (M3)に対しパルミチン酸レチノール(チョコラA®)15万単位/m2の経口投与により分化誘導療法を試みた。投与1週目より好中球増加を示し4週目には白血球20,700/μlうち好中球6,400/μlと増加を認めた。骨髄像においては白血病細胞の成熟傾向を認め,臨床的に有効であったと思われた。In vitroでの検討でも,濃度10-6 Mのall-trans retinoic acidで6日間培養し形態学的変化を示した。しかしNBT還元能はわずかな変化であった。パルミチン酸レチノール(チョコラA®)投与は多剤併用療法が難しく状態が決して良くない高齢者AML (M3)に対し新しい治療法となりうるだろう。
  • 林田 朋子, 荒木 葉子, 川野 晃一, 鎌田 徹治, 川合 陽子, 武内 恵, 渡辺 清明, 岡本 真一郎, 小川 哲平
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1679-1684
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    髄外病変を主体とし,非白血性であったため悪性リンパ腫と診断された急性単球性白血病の1例を報告する。35歳の男性で皮疹,関節痛を主訴とし,肝脾腫,鼻咽頭腫瘤,表在リンパ節腫脹を認め,骨髄,皮膚,鼻咽頭,リンパ節にCD45陽性の異形細胞の浸潤を認めた。末梢血所見はleukoerythroblastic pictureを呈したが,異形細胞は認められなかった。CHOP療法,VEPA療法を施行し,部分寛解したが,初診時より4カ月後に頭痛,複視が出現し,髄液に異常細胞を認め,細胞化学的,免疫学的に単球性であることが明らかになった。DHAP療法,髄腔内MTX投与にて中枢神経症状は軽快したが,その2カ月後,急激な白血球の増加を認め,白血病化した。CDDP-VP-16, high dose Ara-C療法にて白血病細胞は減少したが,DIC, 肝,腎不全にて死亡し,剖検にて悪性細胞の広範な肝臓浸潤を認めた。本症例の芽球は単球マーカーの他にT細胞マーカーであるCD2, 4, 8, さらにNKH-1も陽性であり,髄外病変との関連が示唆された。
  • 松田 晃, 陣内 逸郎, 水野 ひとみ, 坂田 亨, 楠本 修也, 茅野 秀一, 竹内 仁, 別所 正美, 斎藤 昌信, 片山 勲, 平嶋 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1685-1690
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    症例は45歳男性。全身倦怠感,発熱が出現したため,9月2日当科受診,入院となる。身体所見では肝腫と巨脾を認め,入院時末梢血は白血球9,610/μl, Hb 7.5 g/dl, 血小板4.8×104lで81%のhairy cell (HC)を認めた。骨髄穿刺では,55.1%のHCと中等度の線維化を認めた。HCは,酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)反応も陽性であり,その表面形質はSmIgG+A+κ+, CD11b+, CD11c+, CD19+, CD20+, CD21-, CD25+, HC2+, HLA-DR+であり,hairy cell leukemia (HCL)と診断した。Deoxycoformycin (DCF)の投与(5.0 mg/m2, 月1∼2回投与)を開始したところ,脾腫は消失し,HCも末血から消失した。骨髄に1.2%のHCと軽度の線維化が残存する以外は,血液学的所見は正常化した。DCFは本症例に対し有用であった。欧米ではDCFはHCLに対し有効とされているが,本邦においてHCLは欧米例とは病像が異なり,まだその効果が不明なため報告した。
  • 酒井 祐子, 酒井 良, 吉田 信之, 宮崎 澄雄
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1691-1696
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    いわゆる牛乳貧血は新鮮な牛乳の過剰摂取により著明な鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を呈することで知られており,離乳期の食事指導の重要性が指摘されている。今回われわれは牛乳貧血と考えられる2症例を経験した。症例1は1歳11カ月の女児で,全身浮腫を主訴として来院。9カ月時より新鮮な牛乳を1日に800∼1,000 ml摂取していた。症例2は1歳2カ月の女児で,6カ月時より牛乳を摂取しはじめ,1歳2カ月時には1日に1,500 mlもの牛乳を摂取するようになっていた。近医で高度の貧血を指摘され当院紹介入院となった。2症例とも著明な鉄欠乏性貧血と低蛋白血症を呈しており,鉄剤の投与と食餌療法にて改善した。本症の成因として主に考えられるのは各栄養素の摂取不足,吸収障害,消化管からの漏出等であるがそれに加えて個体の素因の関与も無視できないものと思われる。
  • 石川 順一, 有岡 秀樹, 小林 良二, 内藤 広行
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1697-1702
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    重症および中等症の再生不良性貧血の小児2例にメチルプレドニゾロン,抗リンパ球グロブリン,サイクロスポリンの3剤併用療法を試みた。重症例は2コースのメチルプレドニゾロン大量療法を行われていたが無効で頻回の輸血を必要としていた。中等症は未治療例であった。2例とも治療3カ月以内にgood responseとなった。重篤な副作用は認められなかった。再生不良性貧血にたいする免疫抑制剤の3剤併用療法は有力な治療法となりうるかもしれない。
  • 岩田 信生, 井上 信正, 田村 周, 宮崎 栄二, 藤盛 好啓, 岡本 隆弘, 武元 良整, 神前 昌敏, 金丸 昭久, 垣下 榮三, 甲 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1703-1707
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    31歳男性の原発性骨髄線維症患者に対し,当初Ara-C少量療法を行い,脾腫は改善したがpancytopeniaは軽快しないため,根治を目的としてHLA matchの姉をdonorとして同種骨髄移植を行った。前処置はbusulfanおよびcyclophosphamideで行い,欧米例で行われているTBIは行わなかった。移植後骨髄は長期にわたり線維が残存し,低形成状態が続いたため,G-CSFを投与したが,随伴する全身感染症の防御という点で有用であった。移植後骨髄生検にて線維は消失し,造血組織が確認され,末梢血のleukoerythroblastosisおよびtear drop poikilocytosisも消失した。根治療法はないとされている原発性骨髄線維症にも同種骨髄移植が有効であることが確認された。
  • 藤井 浩, 中川 均, 加納 正
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1708-1713
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    原発性マクログロブリン血症ではまれな高Ca血症,腎不全,全身性アミロイド症を併発した症例を報告した。1990年5月63歳の男性が高Ca血症(13.5mg/dl)と腎不全のため紹介入院した。理学的に貧血,巨舌,リンパ節腫脹,肝腫大を認めた。検査成績で尿中BJ(κ型)蛋白陽性(0.8g/日),IgM-κ型M成分(2.8g/dl), 末梢血(5%)および骨髄(59.6%)でのリンパ球様細胞の増生,鼡径部リンパ節のリンパ腫様組織像を認めた。血清クレアチニンは8.5mg/dl。パラソルモンやビタミンD3代謝物などは正常。骨X線検査にて腰椎圧迫骨折と高度の骨粗鬆症を認めた。血液透析と血漿交換療法に加え,エルカトニンやプレドニソロン投与とCHOP療法を施行した。血清M成分は4.6g/dlに増加。同年8月死亡し,剖検にて著明な全身性アミロイド沈着を認めた。
  • 今井 信行, 宮崎 睦雄, 岡田 三徳, 浦瀬 百合子, 大畑 早苗, 松本 真利子, 服部 加苗, 久堀 周治郎
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1714-1719
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    寛解導入にvincristine (VCR)投与が有効であった血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の一例を報告した。症例は40歳の女性である。主訴は紫斑であり,血小板減少症,溶血性貧血,断裂赤血球,発熱,意識障害,腎障害を伴いTTPと診断した。入院当日より血漿交換を開始し,第22入院病日までに12回の血漿交換をふくめ,のべ120lの凍結血漿をもちいるも改善しなかった。そこで第23入院病日にVCR (2mg)を投与したところ,3日後より血小板は著増した。病状再燃のため第38入院病日に再びVCR投与したが,VCR単独では血液学的改善を認めないために,凍結血漿投与量を増やしたところ血小板は増加し以後寛解に至った。経過より考えて本例では寛解導入にVCR投与が有効と考えられた。TTPの治療としては血漿交換,血漿輸注などが最も効果的な治療法と考えられているが,これらに抵抗性を示す症例にはVCR投与も有効と思われ文献的考察を加えて報告した。
  • 尾崎 修治, 河内 康憲, 坂本 幸裕, 井垣 俊郎, 小笠原 望, 内田 立身, 森 将晏, 瀬津 弘順
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1720-1724
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    70歳,男性。1980年2月(59歳時)より全身倦怠感と黄疸が出現し,1981年2月,当科に入院した。Hb 11.4 g/dl, RBC 318万/μl, 網赤血球17‰, 間接ビリルビン1.4 mg/dl, 寒冷凝集反応1:2,048, 血清IgM 267 mg/dlより慢性寒冷凝集素症(CCAD)と診断した。外来にて無治療で経過観察し,Hbは夏期11 g/dl, 冬期9 g/dl程度であった。1990年4月より貧血が増強し,同年7月再入院した。肝脾腫あり,Hb 4.6 g/dl, RBC 72万/μl, 網赤血球200‰, 間接ビリルビン3.1 mg/dl, 寒冷凝集反応1:262,144, 血清IgM 1,065 mg/dlでκ型の単クローン性,末梢血および骨髄には表面免疫グロブリンIgM-κのリンパ球様細胞が増加し,原発性マクログロブリン血症(PMG)と診断した。M-2 protocolにて治療し血清IgMと寒冷凝集素値は低下したが,1991年2月,心不全で死亡した。Bリンパ球系異常であるCCADとPMGの関係につき考察を加えた。
  • 橋本 光司, 池田 弘和, 角辻 暁, 小谷 光, 辻 求, 川上 房男, 青笹 克之, 金山 良男, 多胡 基
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1725-1729
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    48歳女性が頸部腫瘤,皮膚結節を主訴に来院。皮膚結節の組織診断は未分化癌が疑われたが,免疫組織検査を施行したところKi-1 (+), IL-2 R (+), leukocyte common antigen: (LCA) (+), CD3 (+), CD4 (+), CD8 (-)であり,Ki-1陽性未分化大細胞型リンパ腫を疑った。しかし鹿児島県出身者でATLA抗体陽性であり,腫瘍細胞DNAのSouthern blot解析にてHTLV-1のproviral DNAのmonoclonalな組み込みを認めた。以上より本症例をhelper/inducerの表面形質を示し活性化Tリンパ球の性格を有するATLと診断した。Ki-1陽性未分化大細胞型様組織像を呈するリンパ腫症例にATLの一部の症例が含まれる可能性がある。
  • 佐藤 靖, 佐久間 淳, 壺井 功, 平野 仁志, 山崎 哲男, 芦谷 正栄, 蔵 良政, 入江 哲也, 沢田 海彦, 竹内 仁, 堀越 昶 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1730-1735
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は32歳女性。1984年7月中旬に発熱,全身リンパ節腫脹が出現し当院受診。リンパ節生検および骨髄生検で,malignant lymphoma (follicular, small cleaved cell), stage IVと診断し,メルファランの経口投与およびMACOP-B療法で部分寛解を得た。その後,メルファランまたはエンドキサンの経口投与を継続していた。1989年10月発熱,歯肉腫脹が出現,末梢血では白血球数80,200/μl(芽球7.5%, 単球85.5%),骨髄は芽球47.9%, 単球系細胞46.5%によって占められ,ペルオキシダーゼ反応は陽性,NSE反応陽性,染色体分析では核型,46, XX, t(9;11)を認め,血中リゾチームは高値でAML (M4)と診断。DCMP-85療法を行ったが反応がみられず,MEC療法に変更し完全寛解を得た。一般に,二次性白血病は化学療法で寛解を得ることは困難とされている。本症例も従来の併用薬であるDCMPには反応を示さなかったが,mitoxantrone, etoposideを用いたMEC療法で完全寛解が得られたので報告する。
  • 高月 浩, 安部 康信, 後藤 達郎, 定村 伸吾, 田口 文博, 牟田 耕一郎, 身吉 剛, 勝野 誠, 梅村 創, 西村 純二, 名和田 ...
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1736-1740
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    妊娠中期および妊娠後期に急性前骨髄球性白血病(APL)を発症し,大量のアントラサイクリン系薬剤(AC)を使用した2症例を報告する。症例1: 38歳,女性。1988年妊娠12週時に,DICを伴うAPLと診断され,ダウノマイシン(DNR)総量440 mgを含む多剤併用化学療法を施行。治療開始後22日目(妊娠19週)に胎児死亡をきたした。児の剖検所見では高度の貧血と骨髄低形成を認めた。母体はその後の化学療法にて完全寛解に至った。症例2: 27歳,女性。1990年妊娠29週時にDICを伴うAPLと診断され,DNR総量440 mgを含む多剤化学療法を施行,完全寛解に到達後,帝王切開にて健児を出産した。2症例ともにDICを伴うAPL症例で,大量のACを含む多剤併用療法にかかわらず,妊娠後期に白血病を合併した症例2は健児を出産し,一方,妊娠中期に合併した症例1は胎児死亡をきたした。ACの胎児に及ぼす影響を中心に文献的考察を加えた。
  • 魚嶋 伸彦, 木村 茂, 平盛 法博, 赤荻 照章, 迫 雅美, 原 洋, 林 英夫, 近藤 元治
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1741-1746
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳女性,平成2年2月吐血を主訴に当院受診,内視鏡検査にて食道静脈瘤を指摘,同時に著明な好中球減少を認め入院。肝脾を2横指触知。末梢血はWBC 1,400(好中球2%)Hb 6.5 g/dl, PLT 21.1×104。骨髄像NCC 422×103, M/E比2.7, Seg 0.4%。ANA, 抗ENA抗体,抗RNP抗体陽性,免疫複合体陰性。Flow cytometryを利用した免疫蛍光法による抗好中球抗体検査NBIgG陽性。以上より自己免疫性好中球減少症(AIN)と診断。rhG-CSF 125 μg/bodyの連日皮下投与開始8日後好中球は2,109/μlまで上昇,骨髄像はNCC 684×104l, M/E比4.5, Seg 1.6%。翌日内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)を施行,以後rhG-CSF連日投与下に7日間隔で4回のEISを感染症の併発なく実施し得た。rhG-CSFはAIN患者における感染症予防および治療に有効であると考えられた。なお,経過中PA-IgG高値と血小板減少および直接クームステスト陽性を認め,本例には多彩な自己抗体産生機序が存在すると考えられた。
  • 佐々木 雅也, 加藤 洋一, 庭川 光行, 安藤 朗, 程原 佳子, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄, 細田 四郎, 加納 正
    1992 年 33 巻 11 号 p. 1747-1752
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    74歳,女性。1989年8月に多発性骨髄腫IgAλ型Stage III Aと診断され,化学療法をうけた。その後,外来通院により,インターフェロン-αの治療をうけていたが,1991年2月3日,II度からIII度の房室ブロックにより,経静脈的体外式ペースメーカー(VVI型)植え込み術が行われた。術後約6カ月経過した1992年2月3日頃よりペースメーカー皮下ポケット部に腫瘤が形成され,次第に増大した。この腫瘤は,細胞診と生検にて,骨髄腫細胞からなる腫瘤形成と診断された。腫瘤は,化学療法に一応反応したが,3, 4週間で増大傾向を繰り返したため,1991年8月6日,ペースメーカーを含めて腫瘤を摘出した。その後,同部位には,腫瘤の再発はなかったが,1991年10月頃から全身性の多発性皮下腫瘤と右上顎部の腫瘤が出現増大し,1991年12月19日心不全により死亡した。とくにペースメーカー皮下ポケットに腫瘤を形成した機序について考察した。
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