臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
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33 巻, 12 号
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臨床研究
  • 葛山 由布子, 薗田 精昭, 奥田 司, 高島 輝行, 三澤 信一, 加嶋 敬, 中川 均, 藤井 浩, 阿部 達生
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1789-1796
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    悪性リンパ腫10例において化学療法後の骨髄抑制を軽減する目的でrG-CSF併用化学療法を行い,その有用性とrG-CSF投与前後の末梢血幹細胞動態について検討した。6例に同一化学療法を2回行い,2回目の化学療法終了翌日より14日間,2μg/kg/日のrG-CSFを皮下注した(投与方法(1))。4例では化学療法終了後,白血球数のnadir翌日より4日間300μg/bodyのrG-CSFを静注した(投与方法(2))。また,投与方法(1)ではrG-CSF投与前,投与7日後,14日後の,投与方法(2)では前,4日後,7日後の末梢血幹細胞数を算定し比較検討した。その結果,rG-CSFの併用は骨髄抑制を著明に軽減するとともに治療期間の短縮を可能とし,感染症にも有効であった。末梢血中の幹細胞数は投与方法(2)で全例4日目に26∼60倍と著増し,PBSCTに応用可能であると思われた。
  • 南川 光三, 和田 英夫, 大岩 道明, 兼児 敏浩, 塚田 哲也, 影山 慎一, 小林 透, 留奥 誠, 加藤 正美, 南 信行, 白川 ...
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1797-1801
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症した患者の血中IL-6値を測定し,DIC症例では血中IL-6値の増加が認められた。特に,臓器不全例や予後不良例で,血中IL-6値は著しく増加した。また,非DIC症例では血中IL-6値とCRP (C-reactive protein)には正の相関がみられた。この血中IL-6値の増加は,DICの進展や臓器不全の病態に免疫系の活性化が関与していることが示唆された。
  • 白幡 聡, 椎木 翠, 中 淑子, 小野 織江
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1802-1808
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    わが国で血友病患者の家庭輸注療法が認可されてから8年が経過した。そこで本療法の利点と問題点を明らかにする目的で,九州地方に在住する血友病患者にアンケートを送付し,寄せられた197名からの回答を分析した。197名中140名が家庭輸注療法を実施していたが,家庭輸注療法の開始後,出血回数は6.8%で増加,51.1%で減少,42.1%で不変という結果であった。一方,出血の重症度は大多数(92.2%)の患者で軽減した。また,製剤の輸注量は,家庭輸注療法の開始前後で,増加24.4%, 減少20.6%, 不変55.0%であった。家庭輸注療法を実施中に,腹痛,蕁痳疹,掻痒感,悪寒,発熱,不快感などの副作用が19名に認められたが,病院へ受診したのは輸注直後に出現した腹痛の一件のみであった。ただし,患者の半数はこれまでに適切な教育を受けておらず,現在,家庭輸注療法を実施している患者とその家族に対して家庭輸注療法の教育(再教育)が必要である。
症例
  • —単クローン性EBV感染細胞の検出,T細胞受容体遺伝子の単クローン性再構成,VP16投与の奏効について—
    野間 剛, 黄 国輝, 吉沢 いづみ, 川野 豊, 伊藤 雅彦, 前田 和一, 宮下 俊之, 水谷 修紀
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1809-1817
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    VAHSは本来,臨床兆候・病理所見で診断される場合が多いが,EBV感染細胞の単クローン性増殖を認めたことからVAHSと診断した1歳女児例の検索所見と治療経過を報告した。持続する発熱を主訴に来院し,白血球(1,500/μl)血小板(6.8×104l)減少と軽度の貧血(Hb 9.7g/dl)を認めた。骨髄像では低形成と顆粒球系大型細胞が著明であったが組織球様細胞による赤血球細胞の貪食像は認められず,血清フェリチン値の著高(40,300ng/ml)以外はVAHSを示唆する所見に乏しかった。1カ月の経過で貧血が著明となり,骨髄では組織球による血球貪食像を認めた。急性相反応の異常所見を認めず,持続する発熱と肝脾腫,肝障害(GOT 570mu/ml, GPT 261mu/ml, LDH 3,470mu/ml), FDPの上昇を伴う出血傾向の所見からVAHSが示唆された。骨髄細胞においてT細胞受容体β鎖およびγ鎖遺伝子の単クローン性増殖が認められ,さらにEBV遺伝子の終末反復配列接合部構造が一律であったことから,EBV遺伝子含有細胞の単クローン性増殖を認めた。初診時には,血清中のEBV抗体価の上昇を認めなかったが,その後の経過観察で,15∼17カ月後の再発前に,血清中抗EBNA, 抗VCA-IgG, 抗VCA-IgAが有意に上昇した。また,その時点において,骨髄細胞のヒツジ赤血球ロゼット形成細胞群の約95%以上で細胞核のEBNAが陽性を示した。EBVによるVAHSの病態およびEBウイルスのT細胞感染の可能性が示唆された。副腎皮質Steroid, vincristine, cyclophosphamideによる治療は無効であったが,VP16 (5.6mg/kg/d×5)静注療法にて症状,検査成績の改善をみた。2週間後に再発したが,VP16漸減維持療法が効を奏し,入院3カ月目に寛解を得た。VAHSの死亡率が高いことを考え合わせるとVP16投与は初期治療として用いられるべき療法であると考えられた。
  • 芦原 英司, 奥 成顕, 西尾 晃, 辻 勝弘, 中村 充男
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1818-1823
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    患者は64歳の女性,難治性の骨髄腫(IgG-λ型)の治療目的にて入院。合併症の高度の肝硬変のため化学療法は施行せず,インターフェロン(IFN; HLBI)単独治療(600万単位,28日連日投与)を行った。途中,胸水貯留を伴う肺炎を合併したが抗生剤により完治し,25日の休薬期をおいて2クールのIFN療法を終了した。M蛋白は消失し,IgA, Mは正常域にまで増加し,完全寛解を得た。本症例におけるIFNによるM蛋白消失に要した期間は過去の報告例より短く,肺炎の合併がIFNの治療効果を高めた可能性が示唆された。そこで7カ月後の再発時に,OK-432を肺炎の免疫賦活の1つのモデルとして2クールのIFN療法の休薬期に4週間投与し,NK活性とLAK活性を測定した。NK活性はIFNにより抑制されたが,OK-432により回復し,これはその後のIFN投与によってもほとんど抑制されなかった。LAK活性はIFN投与にてもOK-432投与にても増加した。本例は免疫療法を併用したIFN療法が骨髄腫治療に効果を有する可能性を示唆する症例と考え報告した。
  • 大久保 敏哉, 麻生 範雄, 鈴島 仁, 松見 信太郎, 内場 光浩, 奥野 豊, 西村 慎太郎, 高月 清, 河野 文夫
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1824-1828
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    初回寛解導入療法中に,反応性組織球症を合併した6症例の急性骨髄性白血病(AML)例を報告する。
    いずれの症例も初回寛解導入療法中に,感染巣不明の38∼40°Cの発熱が出現し,骨髄抑制の遷延化をみた。骨髄に赤血球,血小板,好中球などの貪食像を伴った成熟傾向を有する組織球の増殖を認め,反応性組織球症と考えられた。測定し得た3例の血清フェリチンは,いずれも高値を示した。3例に対しmethylprednisolone 125 mg/dayを投与し,2例はすみやかな解熱傾向と組織球の減少をみたが,1例は急性腹症により死亡した。ほか3例は特別な治療をしないで経過を観察したが,1例は自然治癒を認め,ほか2例は敗血症とDICの合併,あるいは真菌性肺炎で死亡した。AML寛解導入療法中の反応性組織球症の合併は,骨髄抑制の遷延化を招き,DICの合併などにより,予後不良の要因となり得るので,診断ならびに対策が重要であると思われる。
  • 横尾 ハル江, 岡田 豊, 富永 一則, 辻 守史, 高木 敏之, 柵木 信男, 桜井 雅温, 金子 安比古
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1829-1833
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    MDS, AMLなどでみられる1;7転座は7番染色体の短腕と1番染色体の長腕で形成されている。私たちは,der(1;7)(q10;p10)を認めたMDS, AML, MPDの計3例を経験したので報告する。症例1は76歳男性,IgG骨髄腫の治療終了後に,ペルオキジダーゼ弱陽性の芽球が骨髄に63%出現し,AMLと診断された。症例2は39歳男性,骨髄異形成症候群(RAEB)と診断された。症例3は56歳男性,原発性骨髄線維症の経過中にRAEB-Tに移行した。3例の骨髄細胞の染色体分析でder(1;7)(q10;p10)が観察された。3例とも化学療法に反応せず,診断後4カ月以内に死亡した。der(1;7)は悪性血液疾患患者において,極めて不良な予後を予測させる。
  • 村田 興, 原野 浩, 橋本 佳巳, 松崎 道男, 毛利 博, 工藤 純, 清水 信義, 大久保 隆男
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1834-1838
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳,男性。著明な腹水貯留にて来院。入院時検査にてBUN 39 mg/dl, Cr 2.2 mg/dlと腎機能の低下が認められ,UA 19.7 mg/dl, LDH 1,569 U/lと著増していた。また腹水は黄褐色で,細胞は大型の核をもつ大小不同のリンパ球で胞体に多数の空胞が認められた。悪性リンパ腫の診断にてVEPA療法を施行したが,治療に反応せず急性腎不全にて死亡した。著者らは遺伝子解析にて診断を試みたところ,c-mycに遺伝子再構成を認め,さらに免疫グロブリンH鎖遺伝子とhead to headに接合していることがわかった。この形の遺伝子再構成はバーキットリンパ腫に特徴的であり,第1イントロン内に切断点を認めたためアメリカ型バーキットリンパ腫が疑われた。
  • 水口 隆, 高野 尚之, 滝下 誠, 小阪 昌明
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1839-1844
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    T細胞受容体,および免疫グロブリン遺伝子の再構成を認めた悪性組織球症の1例を報告する。症例は69歳,女性。2週間にわたる各種抗生物質,ステロイド剤の投与に抵抗性の発熱があり入院した。入院時の検査成績では肝機能障害とDICが認められた。骨髄では各種血球を貪食した単球様大型異型細胞が認められた。この細胞は非特異的エステラーゼ陽性だがペルオキシダーゼ,PASは陰性。免疫組織化学ではα1-アンチトリプシン,α1-アンチキモトリプシン,リゾチーム,LeuM 1が一部陽性,Ber-H2, S-100蛋白,UCHL-1, MT-1, MB-1は陰性であった。しかし,骨髄単核細胞のDNA解析ではT細胞受容体β鎖,免疫グロブリン重鎖,κ鎖遺伝子の再構成が認められ,二重遺伝子型を示した。
  • 花村 明利, 前田 秀明, 桑山 和加子, 高野 康雄
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1845-1850
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は80歳,男性。平成元年10月,左頸部,左腋窩,右胸壁,両側鼠径部,左大腿部に表在性腫瘤を触知。左腋窩,右胸壁の組織より悪性リンパ腫(diffuse, medium-sized cell type)と診断された。肝,骨髄にも浸潤を認めStage IV Aであったが化学療法により8週後には完全寛解となった。平成2年5月,右頸部に腫瘤触知。同時に両眼の前房水の混濁を認めた。左前房水の穿刺吸引より悪性リンパ腫のブドウ膜浸潤と診断され,再び化学療法を施行。9日目には右前房水の混濁も消失したが,右頸部の腫瘤は完全には消失せず,再寛解は得られないまま平成2年12月9日肺炎で死亡した。悪性リンパ腫の眼科領域への浸潤の多くは眼球外浸潤で,眼球内浸潤はまれである。特に,本例のように房水混濁のみを眼症状とする例はきわめてまれであり,また化学療法により視力が回復したことは注目された。詳細を報告するとともに,腫瘍細胞の前房水中への浸潤の機序,および治療法について考察を加えた。
  • 近藤 春樹, 高相 豊太郎
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1851-1856
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    56歳の男が小腸平滑筋肉腫で手術。術後サイクロフォスファマイド2年間投与後汎血球減少進行。Hb 7.4 g/dl, ret. 0.8%, WBC 1,700/μl (leucoerythroblastosis), plt 2.8×104l, 骨髄穿刺はdry tap。骨髄生検は線維化を伴う過形成で,10.2%の芽球,巨核球系の異型性,軽度の赤芽球の異型性あり。芽球および異型巨核球でPPO, GPIIb/IIIa染色ともに陽性。巨核球系の異常を伴うMDSと診断。活性型D3治療の効果も一時的で,後期に至り芽球増加しM7へ移行した。この報告は,巨核球系の異常が主体で線維化を伴ったMDSからM7へ移行するTRLが存在するのを示している。本症例でPAS陽性の赤芽球も存在したことは,分化可能な幹細胞での障害がこのような多岐に渡る異常を起こす可能性を示唆している。今後TRLに関しては詳細な免疫電顕的手法による正確な診断とそれに基づく治療法の開発が望まれる。
  • 佐藤 忠嗣, 若林 芳久, 佐藤 敏美, 西川 哲男, 田代 征夫, 千葉 省三
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1857-1862
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    エリスロポエチン(Erythropoietin: EPO)投与による新たな副作用として骨髄増殖性疾患における脾臓の増大が報告されている。今回われわれはEPO投与により脾臓の急速な増大を認めた骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome: MDS)の1例を経験した。症例は65歳,男性。1991年7月8日汎血球減少の精査目的で入院し,MDS (Refractory anemia: RA)と診断された。退院後Hb 9.2 g/dlと低下したため同年8月1日よりEPO 3,000 U連日皮下投与を開始したが無効のため,8月15日より6,000 Uに増量したところ徐々に左季肋部痛が出現し,8月22日にEPO投与を中止した。左季肋下に2横指ふれた脾臓が4.5横指へと増大しており,骨髄検査ではEPO投与前はやや低形成だったが著明な過形成を示していた。末梢血には変化はみられなかった。本症例はEPO投与により髄外造血が亢進し脾臓が増大したまれなMDS例と考えられた。
  • 藤沢 信, 松崎 道男, 原野 浩, 本村 茂樹, 大久保 隆男, 丸田 壱郎, 児玉 文雄, 生田 孝一郎, 佐々木 秀樹
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1863-1868
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳,男性。1984年に近医にて真性多血症(PV)と診断され加療を受けていた。その後,巨脾,成熟好中球の著増などがみられ再検討した結果,骨髄穿刺にてPh1染色体陰性でかつ骨髄線維化は認めず,三浦らの示す慢性好中球性白血病(CNL)の診断基準に合致したため,PVよりCNLへの移行例と診断された。その後の加療にも巨脾は改善せず,成熟好中球の著増と肝機能の増悪により1991年6月4日死亡した。本症例の病態についてcolony assay法を用いた造血前駆細胞レベルの検討を行った。その結果,コロニー刺激因子無添加でCFU-E, BFU-E, CFU-GM, CFU-Mix colonyの形成を認め,染色体異常を伴うことと併せ本症例が骨髄多能性幹細胞の段階で腫瘍性増殖を来していることが示唆された。PVよりCNLへ移行した症例は検索し得た限りでは2例が報告されているのみでまれであり,本症例はCNLの病態を考えるうえで興味深いと考えられた。
  • 中島 文明, 高屋 和志, 日比 成美, 東道 伸二郎, 今宿 晋作
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1869-1874
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    右肘部の骨膜炎と脾膿瘍を合併した慢性肉芽腫症の9歳男児例を報告した。脾膿瘍は腹部CT上,33×36 mm大に描出され,骨膜炎はレ線上透過性の増強として認められた。治療には,抗生物質,支持療法に加えて,rhG-CSF 200 μg/m2/日を点滴静注にて投与した。治療開始後,白血球数は20,000∼25,000/μlに維持され,DCFHを用いたフローサイトメトリー法で,H2O2の存在からみた好中球活性酸素生成能は経過中2回,ほぼ正常まで改善された時期を認めた。骨膜炎に由来する腫脹,熱感,叩打痛は1週間で改善し,脾膿瘍は漸次縮小を示し平成4年2月には消失したことが確認された。rhG-CSF投与後,好中球数の増加が認められただけでなく,間欠的ではあるが好中球活性酸素生成能の改善がみられた時期もあり,慢性肉芽腫症に合併した感染症の治療に有用と思われた。rhG-CSFはIFN-γとともに本症に合併する感染症の治療に有用な薬剤と思われる。
  • 鈴宮 淳司, 森岡 英次, 木村 暢宏, 石橋 守興, 内田 俊毅, 秋吉 都美, 久野 修資, 奥村 恂
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1875-1879
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    化学療法後にヒトマクロファージコロニー刺激因子(hM-CSF)を投与し,好中球増加に先行して血小板数の増加をみとめた急性前骨髄性白血病(APL)の1症例を経験した。症例は50歳男性。出血傾向にて発症。末梢血および骨髄に多数のアウエル小体を有する前骨髄球が認められ,染色体検査では15;17転座が認められた。AML (M3)と診断し,daunorubicin, Ara-Cによる寛解導入療法を2コース,地固め療法にAra-C中等量療法を施行した。各コース終了後hM-CSF 800万単位をそれぞれ14日間投与した。いずれも血小板の回復が顆粒球,網状赤血球の回復に先行して認められ,また血小板と単球の動きは一致していた。経時的にそれぞれ血清中の顆粒球および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G-CSF, GM-CSF)とインターロイキン3および6 (IL-3, IL-6)を測定した。hM-CSF投与によりG-CSFは増加したがGM-CSF, IL-3, IL-6は測定感度以下であった。
  • 塚田 哲也, Nadim MAHMUD, 谷口 正益, 高橋 隆宏, 紀平 久和, 北 堅吉, 小林 透, 出口 克巳, 白川 茂
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1880-1883
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    41歳の急性前骨髄球性白血病(APL)未治療例に対してall-trans retinoic acid (ATRA) 80 mg/body/dayで寛解導入療法を行った。ATRA投与開始16日目に完全寛解となり,29日目に染色体異常t(15;17)が消失した。寛解導入時に汎発生血管内凝固症候群の悪化や重篤な合併症は認められなかった。APLの寛解導入がATRAの使用によって従来の化学療法よりもより安全に行えるものと考えられた。寛解後療法は通常の強力な化学療法を行い,寛解後11カ月で寛解を維持している。
  • 佐田 栄司, 柳沢 浩介, 長谷川 均, 藤田 繁, 小林 譲, 河野 秀久, 近藤 俊文
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1884-1889
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    36歳の男性で貧血,白血球数および好酸球増多,肝脾腫で入院。末梢血ではHb 7.1 g/dl, Plt 6.8×104lと低値を示し,白血球数は53,700/μlと著増し,好酸性顆粒の分布異常,細胞質内に空胞を認め核が分葉傾向を示す好酸球が32.0%と増加しており,IgE低値,ビタミンB12高値より好酸球性白血病と診断した。染色体は46, XYと正常でbcr遺伝子の再構成もみられなかった。さらに,この症例では末梢血の白血球数が周期的に増減を繰り返しながら増加傾向を示した。この周期性白血球増加の機序を調べるために,正常人骨髄細胞に好酸球増加期と減少期の患者血清および血漿を加えてコロニーアッセイを行ったがコロニー形成刺激因子は証明されなかった。また,患者骨髄を用いたコロニーアッセイではG-CSF, CM-CSF, IL-5を添加してもコロニーの形成がみられず,患者骨髄細胞の異常が示唆された。
  • 安藤 佐知子, 安藤 精章, 大谷 宜人, 神戸 忠
    1992 年 33 巻 12 号 p. 1890-1894
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は58歳男性,白血球増多と頸部腫瘤にて入院となった。入院時,脾腫と頸部膿瘍を認め,血液検査ではWBC 55,000/μl, Hb 7.9 g/dl, PLT 4.5×104lであった。膿瘍治癒後,白血球数は減少するも依然として17,000∼20,000/μlと高値で,貧血および血小板減少も同様であった。また末梢血単球数は1,500∼2,000/μlと増加していた。骨髄は顆粒球系の過形成および3系統の異形成を示していた。Ph1(-)でもあり,以上よりCMMoLと診断しetoposide経口投与を開始した。25 mg/日を2週間投与後,50 mg/日に増量し,以後血液検査の結果により増減した。治療開始直後よりWBCは減少し,7,000∼12,000/μlを維持,Hb, PLTも次第に正常化した。また骨髄の異形成は減少,脾腫もほぼ消失した。投与9カ月後の現在も25 mg隔日投与にて寛解を維持しており,etoposideはCMMoLの治療に有用な薬剤と思われた。
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