臨床血液
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33 巻, 2 号
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臨床研究
  • 中畑 龍俊, 赤羽 太郎, 三浦 亮, 多田 啓也, 宇塚 善郎, 林 正, 柴田 昭, 四家 正一郎, 大国 真彦, 浦部 晶夫, 小椋 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 123-132
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    好中球減少症26例(Kostmann症候群4例,Shwachman症候群1例,Lonsdale 1例,糖原病Ib 1例,慢性良性好中球減少症6例,慢性低形成好中球減少症5例,周期性好中球減少症2例,免疫性好中球減少症4例,その他2例)において,KRN8601 (rhG-CSF)の臨床効果を検討した。KRN8601は点滴静注では20∼540μg/m2, 皮下投与では20∼400μg/m2の間で2∼32週間投与された。26例中23例でrhG-CSF投与により好中球数増加が認められた。Kostmann症候群,Shwachman症候群,慢性低形成好中球減少症ではほかの好中球減少症と比較すると好中球増加の反応性はやや劣っていた。安全性においては,特に問題となる重篤な副作用は認められなかった。以上よりKRN 8601は各種好中球減少症に対して有用性が示唆された。
  • 安永 睦, 寮 隆吉, 足立 昌司, 菅野 亘, 吉田 明憲, 中山 勝司, 西郷 勝康, 安永 幸二郎, 山口 延男
    1992 年 33 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    血小板無力症は血小板膜糖蛋白(glycoprotein; GP) IIbおよびIIIaの欠損もしくは著減を示す常染色体劣性遺伝性疾患であるが,その分子レベルの異常は未だ解明されていない。今回私たちは血小板無力症患者3例のGP IIbとGP IIIa遺伝子についてサザン・ブロット法で検索し,正常人と比較して大きな欠失や転座はないことを確認した。さらに患者血小板より抽出したmRNAを用いてRT-PCR法でGP IIbとGP IIIa遺伝子の増幅が確認されたので,両遺伝子のRNAへの転写過程にも大きな欠陥はないことが示唆された。血小板無力症のGP IIbとGP IIIaの量的減少のメカニズムについては今後さらに検討を要すると考えられた。
  • 大畑 雅彦, 杉浦 浩策, 大塚 証一, 野仲 清
    1992 年 33 巻 2 号 p. 139-147
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    われわれは,Fechtner症候群と考えられる2家系を経験した。家系Iでは6例にmacrothrombocytopeniaと顆粒球封入体を確認した。3例に難聴,3例に持続性蛋白尿があった。2例は他院でITPとして脾摘を受けたが無効であった。家系IIでは2例にmacrothrombocytopeniaと顆粒球封入体を確認した。1例に難聴があった。家系I, IIとも家族歴より症例のほかに難聴,腎疾患を有するものを確認した。顆粒球封入体の電顕所見は,円形∼楕円形,境界不明瞭,内部にリボゾーム様の微細顆粒を多数認め,その間に線維状構造物が不規則に走行していた。巨大血小板は,開放小管系が発達していたが,顆粒等は細胞の大きさに比例して増加を示すのみで新構造物は認めなかった。巨核球の細胞質に好塩基性で虎斑様の模様が目立ちUnna-Papenheim染色でピロニン好性であった。電顕的には,成熟巨核球胞体にリボゾームの集塊と血小板分離膜の拡張傾向がみられた。
  • 清水 勝, 藤井 寿一, 溝口 秀昭, 増田 道彦, 外山 圭助, 吉川 治, 川西 慶一, 藤巻 道男, 新井 盛夫, 半田 誠, 月本 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 148-156
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    Mannitol, adenine, glucose, phosphate, citrateを含むMAP液で長期保存した濃厚赤血球(MAP-CRC)を,39例の慢性貧血患者に輸血し,臨床効果および安全性を評価した。対照として従来の濃厚赤血球(CRC)を用いた。輸血した血液の平均保存日数は,MAP-CRC; 38.2日(n=52), CRC; 18.1日(n=26)であった。輸血1日後の赤血球回収率はMAP-CRCで77.5% (n=46), CRCで82.5% (n=22)であり,同等の輸血効果を認めた。臨床所見および生化学検査の結果に関して,MAP-CRCとCRCの間に統計学的有意差を認めなかった。MAP-CRC使用例で輸血後発熱を認めた症例があったが,これは基礎疾患に伴うものであり,MAP液投与との因果関係は認められなかった。以上の結果から,MAP液の使用により赤血球の42日間の液状保存が可能と考えられた。この新しい添加液は,液状での自己血輸血の適応拡大,血漿確保に有用である。
  • 中山 志郎, 松下 章子, 市場 茂樹, 矢部 博樹, 永井 謙一
    1992 年 33 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    副腎皮質ホルモン不応性の特発性血小板減少性紫斑病に対する漢方製剤の効果を検討した。全例にまずツムラ補中益気湯を投与し,無効例にはツムラ柴苓湯,ツムラ人参養栄湯,ツムラ加味帰脾湯の順に変更して投与した。各漢方製剤別の有効率は補中益気湯で20.0%, 柴苓湯で20.7%, 人参養栄湯で5.5%, 加味帰脾湯で6.7%。全40症例の総合効果は12例(30.0%)で有効であり,またこの内8例での効果は6カ月以上持続した。漢方製剤の作用機序をインターロイキン-6やインターフェロンの産生との関連より論議した。
  • —PNH赤血球の染色成績—
    小林 敏貴, 中澤 正樹, 佐藤 祐二, 富山 順治, 二宮 治彦, 阿部 帥, 寺澤 崇, 七島 勉, 藤田 禎三
    1992 年 33 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    発作性夜間血色素尿症症例の赤血球は補体感受性試験において補体感受性が亢進している。Decay-accelerating factor (DAF)は分子量70kDaの補体制御性膜糖蛋白で,PNH症例血球上で欠損していると報告されている。本検討では,免疫細胞化学的方法でPNH 12症例の赤血球上のDAFを染色し,陽性細胞比率を他の検査所見と比較した。正常人赤血球はほぼすべてが陽性であったが,PNH症例では陽性細胞比率は様々であった。本法でのDAF陽性細胞比率は,enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)による赤血球上のDAF総量とは正の相関を示し,Ham試験,蔗糖水試験での溶血率,およびPNH-III赤血球の比率とは負の相関を示した。PNH症例ではDAF弱陽性赤血球の比率のやや高い症例があり,DAF部分欠損のPNH-I赤血球が含まれる可能性も考えられた。今回の免疫細胞化学的DAF染色法は,異常なPNH赤血球の識別が可能で,PNH診断の有用な補助的検査法と考えられた。
症例
  • 伊従 秀章, 小林 尚明, 藤沢 康司, 赤塚 順一, 中村 弘典, 三島 健, 神崎 暁郎, 和田 秀穂, 阿多 雄之, 山田 治, 八幡 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    遺伝性楕円赤血球症(以下HEと略)は,一般に赤血球の膜蛋白骨格の異常に起因すると考えられているが,β鎖の異常の報告例は数少ない。今回著者らは,HEの母児にβ spectrin異常の新しいタイプを認めたので報告する。発端者は8カ月の女児。入院時軽度の貧血と網状赤血球の増加,ハプトグロビン低下を認めた。発端者および母親の末梢血塗抹標本で楕円赤血球を認めHEと診断した。本症例の赤血球膜蛋白の分析をSDS-PAGEで行ったところ,母児ともにspectrin鎖直下に異常bandを認めた。さらに母親について詳細な検討を行ったところ,この異常bandはβ spectrinで,分子量は216,000 dであり,β spectrinの16%に相当していることが判明した。さらに,本症例ではspectrinの重合能の異常を認め,spectrin αの異常を合併していることが判明した。本症例の遺伝形式は常染色体優性遺伝で,従来報告されているβ spectrin異常症とは異なった疾患であると考えられた。
  • —造血能の検討—
    沢井 清, 中山 智孝, 小原 明, 沢 文博, 月本 一郎, 松永 泰子
    1992 年 33 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は生来健康な8歳男児,発熱,出血斑,鼻出血で発症し,汎血球減少症と著明な赤芽球減少症を呈したが,約2週間で自然治癒した。血清中抗ヒトパルボウイルスB 19 (HPVB 19) IgM抗体陽性よりHPVB 19感染症と診断した。急性期と発症から3カ月後の回復期に施行した骨髄幹細胞培養では,回復期に比し急性期のCFU-Eは抑制されていたが,BFU-E, CFU-G, GEMMは抑制されていなかった。しかし,急性期の培養14日目に釣り上げたCFU-GEMMコロニーからPCR法でHPVB 19 DNAが陽性となり,HPVB 19が赤芽球系前駆細胞のみならず,その他の前駆細胞にも感染していた可能性が示唆された。
  • —本邦第1例—
    厚井 文一, 吉田 光雄, 前田 剛, 森 由弘, 藤原 靖子, 松村 正, 吉永 浩明
    1992 年 33 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    Myelodysplastic syndrome (MDS)においてmonoclonal gammopathy(M蛋白血症)やB cell malignancyが合併する報告は諸外国では体系的な報告がなされているものの,わが国ではきわめて少ない。われわれはM蛋白血症を有する同胞内発症,しかもほぼ同時期発症例を経験した。73歳の兄はMDS (RAEB)で,IgAλ型のM蛋白血症があり,骨髄中形質細胞は2.8%であった。70歳の妹はMDS (RAEB in T)で,IgGは1,901 mg/dlと増加し,IgGκ型のM蛋白血症があり,異型性を有する形質細胞が12.8%認められた。いずれも骨病変は無く,兄例はmonoclonal gammopathy with undetermined significance (MGUS), 一方妹例はsmoldering myelomaとの合併と考えられた。いずれも輸血のみで経過観察したがAMLや形質細胞の増加はみられなかった。本症例は,MDSは顆粒球系およびT, Bリンパ球の両方へ分化し得る未分化な多能性幹細胞の異常であるとする報告を,臨床血液学的に示唆するものと考えられる。
  • 矢部 博樹, 松下 章子, 市場 茂樹, 永井 謙一, 中山 志郎
    1992 年 33 巻 2 号 p. 184-188
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    兄は19歳で,1990年5月に高熱と鼻出血のために入院。Hb 5.5 g/dl, 血小板数1.5万/μl, 白血球数1700/μl(好中球18%, リンパ球80%)。骨髄像は骨髄芽球4.8%, 赤芽球31.6%で3系統に形態異常がみられたことからRAと診断した。17歳の弟は1990年5月に2年間持続する全身倦怠のため来院。Hb 8.7 g/dl, 血小板数2.1万/μl, 白血球数2800/μl。骨髄像は骨髄芽球5.2%で,3系統に兄と同様の形態異常がみとめられたためにRAEBと診断した。若年発症で濃厚な血族結婚がみとめられたこと,および兄弟のみならず家系内にもTリンパ球の異常が観察されたことから,遺伝的要因が発症に関与している家族性MDSと考えた。
  • 田辺 寿一, 佐々木 津, 田村 智彦, 岡本 理英, 菅村 リカ, 藤田 浩之, 府川 仁哉, 金森 平和, 松崎 道男, 毛利 博, 大 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    好塩基球増多は,慢性骨髄増殖性疾患に伴うことが多く,骨髄異形成症候群(MDS)に合併することは比較的まれと考えられている。今回,好塩基球と好酸球増多をきたしたMDS (refractory anemia with excess of blasts; RAEB)と思われる症例を経験したので報告する。症例は82歳男。著明な正球性正色素性貧血(Hb 5.6 g/dl)および白血球数9,200/μlと正常だが,分画にて好塩基球34.5%, 好酸球19.5%と著明な増加を認めた。骨髄では芽球9%, 好塩基球・好酸球それぞれ6.4%と増加していた。RAEBと診断し,輸血・ウベニクス投与にて経過観察したが好塩基球・好酸球は減少せず貧血改善も認めなかった。染色体では47, XY, +8, i(17q)と異常を認めた。本染色体異常はCMLの急性転化期に付加染色体異常として認められることが多いが,本症例はPh1染色体・bcr遺伝子再構成はともに認められず,CMLは否定的であり,好酸球・好塩基球増多は,MDSに伴うクローン性異常によるものと思われた。
  • 冨塚 浩, 谷田部 道夫, 奥寺 謙一, 畠 清彦, 三輪 哲義, 坂本 忍, 三浦 恭定, 江口 光興
    1992 年 33 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,37歳女性。1988年9月妊娠20週の時貧血(Hb 9.3 g/dl)を指摘された。貧血は鉄剤不応性でかつ進行性のため12月24日入院。末梢血はWBC 8,300/μlで,うち芽球を4%認めた。Hb 7.6 g/dl, PLT 50.8×104l。骨髄像では,幼若で異型性の強い赤芽球を50%認め,骨髄芽球を有核細胞中の20%認めたため,赤白血病(FAB分類のM6)と診断した。このため,妊娠34週1日に帝王切開術により女児(体重2,175 g)を得,同時に単純子宮全摘術並びに左側附属器摘出術を施行した。その後BHAC-DMP療法により部分寛解,さらにG-CSF·BHAC-DMP療法後完全寛解を得た。強化療法後,7月20日退院した。本例は,その後に再発して死亡するまで約25カ月生存した。この間,児は正常に成育している。妊娠中に発症した赤白血病はこれまで報告がない。また本例は,完全寛解を得て長期生存し得たということで貴重な症例と思われる。
  • 小松田 敦, 李 宗泰, 西成 民夫, 西村 茂樹, 中鉢 明彦, 遠藤 安行, 中本 安, 三浦 亮
    1992 年 33 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,74歳,男性。主訴は,貧血の精査。現病歴:平成2年7月の検診で初めて貧血を指摘され,7月20日当院を受診。末梢血液像で白血球数11,100/μl, ヘモグロビン11.5 g/dl, 血小板数2.6×104lと異常を認め,7月24日入院。リンパ節,肝脾は触れず。当初,血小板関連IgGは794.2 ng/107 cellsと著明に上昇し,ほかの血小板減少をきたす疾患が否定的であったため,ATPと診断しプレドニゾロン40 mg/日の投与を開始。しかし,3週間後も効果がみられず,アザチオプリン100 mg/日の投与を開始。この間,白血球数が徐々に増加し32,000まで上昇。分画でリンパ球が80%以上を占め,骨髄穿刺では,有核細胞数66,000/μlで,小型リンパ球が約70%あり。骨髄のリンパ球表面マーカー解析でCD19が79.4%, HLA-DR 82.2%と強陽性を示し,遺伝子解析では,H鎖,L鎖ともに再構成あり。これらより,本例はATPを合併したB細胞性CLLと診断。アザチオプリンの投与後,血小板数は3万/μl台にあり,白血球数も1万/μl以下にある。
  • 中田 浩一, 小川 亮介, 和気 敦, 佐藤 忠嗣, 永田 一彦, 森 直樹, 塚田 順一, 三砂 將裕, 是木 一也, 森本 勲夫, 織田 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳の男性で,平成1年1月より発熱,全身表在リンパ節の腫大,上腹部腫瘤,右胸水の貯溜を認め,3月リンパ節生検で非Hodgkinリンパ腫(follicular medium sized cell type, B cell)と診断され,3月9日当科入院。LAK細胞は血液成分分離装置を用いて週1回,計3回採取した末梢血単核球をIL-2 (7×103 JRU/ml), 非働化患者同型血清10%含有RPMI 1640にて8日間,37°Cで濃縮回転培養し総数7.7×109個を経静脈的に投与した。IL-2はLAK細胞投与2日前より17日間1.4×106 JRU/日を持続的に静注した。終了4日後の超音波検査にて,全身の表在リンパ節腫大は消失または縮小していることが確認された。しかし上腹部腫瘤の縮小は認められなかった。より効果的に本治療法を施行するためには,さらに大量のLAK細胞を得ることが必要であると考えられた。
  • 河本 里美, 寺田 秀夫, 新倉 春男, 熊坂 利夫, 斎木 茂樹
    1992 年 33 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例。43歳,男性。昭和63年5月,両膝,足,肘,手関節痛が出現した。平成元年2月眼のかすみが出現し,虹彩網様体炎および網膜血管炎を指摘された。同年6月,歯根および陰茎の潰瘍,右下腿の結節性紅斑と両前腕の血栓性静脈炎が出現し,Behçet病と診断された。prednisolone投与により症状は改善した。同年11月より発熱,胆道系酵素の上昇がみられ,CT, エコーで肝脾内の多発性腫瘤と横隔膜脚後方のリンパ節腫大を認めた。頸部リンパ節生検より,Hodgkin病(混合細胞型)と診断した。ABVD療法(THP-adriamycin, bleomycin, vinblastine, dacarbazine)により,症状の改善と肝脾内の腫瘤および横隔膜脚後方のリンパ節腫大の消失がみられた。また口唇の小唾液腺の生検で,Sjögren症候群の所見を認めた。Behçet病の経過中に,Hodgkin病を発症し,また同時期にSjögren症候群を伴ったまれな症例と考え報告した。
  • 柴田 寿彦, 堀田 知光
    1992 年 33 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    1989年5月,34歳の男性が巨脾による左上腹部痛を主訴に入院した。入院時検査では白血球増多(13,400/μl)が認められ,その60%はhairy cellであった。この細胞は骨髄中にも64%認められ,hairy cell leukemia(本邦型)と診断され,その表面マーカーはB細胞系であった。治療としてはまず摘脾を行ったが,術後に末梢血中のhairy cellはかえって一過性に著増し,効果は対症的なものでしかなかった。次にα-インターフェロンおよびベストラブチル(KM 2210)がそれぞれ4カ月間投与されたが,効果は不十分であった。しかしその後,2'-deoxycoformycin (2'-DCF)による治療で著効が得られた。すなわち5カ月間に7.5 mgの静注を12回実施した結果,すみやかな完全寛解が得られ,その後6カ月以上無治療で完全寛解を続けており,副作用はほとんどみられなかった。
  • 溝呂木 ふみ, 服部 晃, 小笠原 久隆, 高木 敬三, 田中 照二
    1992 年 33 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    38歳男性が1984年頚部リンパ節腫大とIgG 2,872 mg/dlの高γグロブリン血症のため精査入院したあと,原因不明のリンパ節腫脹として外来で経過観察されていた。89年4回目のリンパ節生検でidiopathic plasmacytic lymphadenopathy with polyclonal hyperimmunoglobulinemiaと診断された。このとき血清IgGは8,090 mg/dlであった。血清インターロイキン-6 (IL-6)は21.1 pg/mlと高値を示した。本例には血小板増加,血尿,CRP陽性が認められたが,それぞれthrombopoietin作用,メサンジウム細胞の増殖誘導,急性期蛋白の生合成誘導,などIL-6の作用によるものと考えられた。IL-6は形質細胞腫の発癌に関与しているので,本例の血清IL-6の高値は興味深い。この患者はprednisolone·melphalan投与後も投与前と同様リンパ節腫大以外は無症状で,6,000 mg/dl前後の高γグロブリン血症が続いている。
  • 小山 覚, 森山 美昭, 青木 あずさ, 古川 達雄, 成田 美和子, 和田 研, 岸 賢治, 高橋 益広, 小池 正, 柴田 昭
    1992 年 33 巻 2 号 p. 227-231
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    57歳,女性。1986年5月右足のしびれを主訴に神経内科を受診,理学的に異常なく血液所見でWBC 8000/μl (myelo 1%, meta 1%, stab 4%, seg 53%, baso 7%, eosino 2%, lymp 25%, mono 7%)と好塩基球増加が認められた。6月11日内科に紹介されNAP (score 37, rate 19%)が低値でありCMLが疑われ7月29日入院した。入院時肝脾腫大なく,WBC 7,200/μl, Hb 11.8 g/dl, Plt 28.0×104lとほぼ正常域で,骨髄はNCC 21.9×104l, Meg 93.6/μl, M/E=4.7, 染色体分析でPh1が認められた。病初期のCMLと診断し経過観察していた。1987年3月10日よりIFN-α 600万単位連日皮下注を開始し徐々に減量1988年11月よりは300万単位週1回投与を維持療法としている。血液所見は正常域に保たれ,4月後よりPh1陽性率が減少し9月後に0% (0/20)となった。1991年3月現在寛解を維持している。病初期よりのIFN-α投与開始が寛解の導入と維持に重要な意義があったと思われ,IFN療法では早期診断と病初期よりの積極的な治療が重要と思われた。
  • 橋爪 誠, 壹岐 聖子, 八木澤 雅子, 大林 由明, 佐藤 宏, 浦部 晶夫
    1992 年 33 巻 2 号 p. 232-237
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    本態性血小板血症(ET)におけるα-インターフェロン(α-IFN)の血小板減少機序は詳細不明であるが,類縁疾患である慢性骨髄性白血病や真性多血症などでもα-IFNによる血小板数抑制効果の報告がある。今回,われわれはETに対してα-IFNを投与し,速やかな血小板低下傾向を認めた2例を経験した。1例ではα-IFN 600万U隔日皮下投与により速やかな血小板の減少を認めた。しかし全身の掻痒症が出現したため,投与継続を断念した。1例は300万U連日皮下投与後,血小板は速やかに減少し,血小板数のコントロールは良好であった。2例ともα-IFN投与前後での骨髄clot sectionでは治療前後で巨核球数に大きな変化を認めなかった。このことは,α-IFNを投与すると早期から巨核球からの血小板産生が抑制される可能性を示すものと考えられる。α-IFNは巨核球前駆細胞の分裂増殖を抑制するだけではなく巨核球からの血小板産生をも抑制するのではないかと思われた。
  • 内藤 広行, 比嘉 エリザベット, 小林 良二, 鹿野 高明, 石川 順一, 野島 孝之
    1992 年 33 巻 2 号 p. 238-243
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    初発時に高度な骨髄浸潤を伴った,胞巣型横紋筋肉腫の9歳女児例を報告した。症例は腹痛と臀部の腫瘤を主訴として某外科に入院し,骨盤部のCTスキャンで異常陰影が認められた。当科に転科し,血液検査で汎血球減少を認め,血液生化学検査では高カルシウム血症と高尿酸血症を認めた。骨髄は100%が腫瘍細胞で占められており,骨髄から採取した腫瘍細胞の染色体分析の結果,t(2;13)(q37;q14)染色体転座を認め,この所見から進行性の胞巣型横紋筋肉腫の診断が確定した。ビンクリスチン,シクロホスファミド,エピルビシンにより治療を行い寛解となったが,再発し診断から3カ月で死亡した。
  • 竹内 仁, 宮嶋 剛, 河村 俊明, 佐久間 淳, 遠藤 ますみ, 飯塚 芳一, 西成田 進, 堀越 昶, 大島 年照, 堀江 孝至, 横山 ...
    1992 年 33 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,45歳男性。1989年9月APLと診断。DCMP-85療法で完全寛解(CR)し,4回の寛解後療法を受け1990年3月退院。同年9月再発。再寛解導入療法としてDCMP-85, MEC (MIT, ETOP, Ara-C)を施行したが,骨髄の白血病細胞は35.4%であった。末梢血はHb 11.0g/dl, Plt 13.0×104l, WBC 5,100/μlで,白血病細胞を認めず,DICの所見もなかった。薬剤性の左心機能低下のため,12月28日よりATRA 45 mg/m2を経口投与し1991年1月21日にCRが得られた。この間,骨髄の低形成はなく,白血病細胞の減少とともに成熟顆粒球が増加し,DICの合併はなかった。CR時の骨髄細胞染色体分析では,再発時に29/30細胞に認められたt(14;17;15)(q24;q11.2;q22)を含む異常核型が4/30細胞残存していた。副作用は,口渇,口唇乾燥,眼球周囲の掻痒感がみられ,生化学検査でGOT 178 IU/l, GPT 231 IU/l, 中性脂肪451 mg/dlと上昇したが,治療の障害にはならなかった。
  • —All-trans retinoic acidによる寛解2症例—
    清水 宏之, 〓 志敏, 金野 浩二, 北野 浩, 榊原 吉峰, 川井 進, 藤本 孟男
    1992 年 33 巻 2 号 p. 250-255
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    初回化学療法に抵抗性の急性前骨髄球性白血病の2小児例にall-trans retinoic acid (ATRA, 45 mg/m2/day)を投与し寛解導入に成功した。ATRA投与開始後1週以内にDIC所見が消失した。血液像ではまず白血球数の増加がみられ,それぞれ20日,16日目に1回目の白血球数のピークに達したが,増加した白血球は分化傾向を示すもののアウエル小体陽性など異形性が強く,赤血球,血小板系の正常化も伴わなかった。このピークの後に両症例とも一過性の白血球数減少の時期があり,その後初めて3系統が揃って回復し4∼5週で形態的に完全寛解に至る2相性の経過をたどった。また1症例では,白血球減少時から寛解に至る過程で骨髄に白血球を盛んに貪食する組織球が出現した。この2相性の経過はATRAで分化誘導された白血球細胞の死滅と網内系による処理,その後の正常幹細胞の分化による骨髄再生過程を反映すると考えられた
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