臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
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33 巻, 3 号
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臨床研究
  • 斎藤 みどり, 杉田 完爾, 安倍 隆, 木下 明俊, 鈴木 敏雄, 岡崎 敏子, 水谷 修紀, 犬飼 岳史, 中澤 眞平
    1992 年 33 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    CD7陽性小児急性白血病87例のうちlineageの明確でない17例に対し,モノクロナール抗体パネルによる細胞膜抗原検索に加え,double PAP法による細胞質内抗原(CD3, CD13, βF1, δTCS1)の検索と,無刺激短期培養後の細胞膜抗原の検索を行った。17例中9例は,細胞膜CD7, 細胞質内CD3とCD13, 培養後の細胞膜CD13を発現するbiphenotypic leukemiaであった。この9症例には年長児が多く,4例が縦隔腫瘤を伴っていた。5例はTリンパ球系,3例は骨髄系,1例は巨核芽球系白血病と診断されそれぞれの診断を基に治療がなされたが,7例が比較的早期に骨髄再発し予後不良であった。これらの症例は,多能性幹細胞由来で,未分化な段階で腫瘍化した白血病と考えられる。
  • 広川 慎一郎, 鍛冶 利幸, 田沢 賢次, 藤巻 雅夫, 林 朋博, 新谷 憲治, 桜川 信男
    1992 年 33 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    ヘパリンコファクターII (HC-II)の病態生理学的意義を検索するため生体内において消費,産生,漏出の観点からDIC, 血栓症,肝機能障害例,腎機能障害例でアンチトロンビンIII (AT-III)とHC-IIの関連を考察した。AT-III活性は合成発色性基質法と新たに開発されたHC-II活性の影響を受けない凝固法の2種類の測定法を用いた。DIC, 肝機能障害例では有意にAT-III活性よりHC-II活性は低値を認めたが,腎機能障害例ではAT-III活性,HC-II活性間に差は認めなかった。肝機能障害例ではAT-III活性,HC-II活性間に高い相関関係を認め,肝臓での生合成の低下に起因すると推定された。本稿の症例ではHC-IIは各病態でAT-IIIと同様の動態を示した。HC-IIの生理学的意義については詳細な報告は少なく,今後血栓止血,凝固のみならず局所の炎症,悪性腫瘍の浸潤に関する機構の解明が必要である。
  • 高井 豊, 河田 一彦, 郡山 健治
    1992 年 33 巻 3 号 p. 288-296
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    著明な好酸球増多を呈したhypereosinophilic syndrome (HES)とアレルギー性肉芽腫性血管炎(AGA)の2症例について,凝固・線溶・キニン系諸因子の定量を経時的に行い,その変動を臨床経過と対比させつつ検討した。その結果,両症例ともprednisolone (PSL)の投与により末梢血好酸球数の速やかな減少がみられ,臨床症状も改善したが,凝血学的には治療前,軽度ながら凝固・線溶・キニン系の活性化,すなわち過凝固状態(hypercoagulable state)を示唆する所見が得られ,PSL投与後には全て正常化した。かかる2症例は好酸球内顆粒蛋白の一つであるeosinophil cationic protein (ECP)がFXIIを介して凝固・線溶・キニン系を活性化するとの報告と関連して,好酸球増多症におけるcoagulopathyの発生機序を示唆する,興味ある症例と考えられた。
  • 石橋 守興, 久野 修資, 木村 暢宏, 森岡 英次, 鈴宮 淳司, 瓦 隆, 中島 浩昭, 内田 俊毅, 奥村 恂, 菊池 昌弘
    1992 年 33 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    1985年から1991年まで当科に入院し初回化学療法前後および再発時に骨髄穿刺,生検を施行した非ホジキンリンパ腫(ATLを含む)62例を対象とした。骨髄線維化の程度と予後因子との関係,骨髄線維化の化学療法に対する影響および予後に対する線維化の影響について検討し以下の結果を得た。1)骨髄の線維化が高度な症例では生存期間が有意に短縮していた。2)骨髄線維化の程度は,全身症状や骨髄浸潤の有無,生化学検査でのLDH値やCa値において有意な相関があった。3)効果的な化学療法は骨髄の細網線維のみならず膠原線維も減少させる。4)再発症例では,骨髄線維の増加が高頻度(64%)に認められた。この研究より悪性リンパ腫において臨床経過を通じた骨髄線維化の状態の把握が予後判定に良い指標となることを示している。
  • 中鉢 明彦, 三浦 亮, 高津 洋, 山口 昭彦, 西村 茂樹, 中山 豊, 秋浜 哲雄, 三浦 荘治, 斉藤 昌宏, 綿貫 勤
    1992 年 33 巻 3 号 p. 303-310
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    病期II以上のびまん性非ホジキンリンパ腫(NHL) 100例をAdriamycinを含んだ多剤併用療法で治療し,70歳以上の高齢者NHL (n=29)の治療反応性につき非高齢者(n=71)と比較検討した。背景因子はBUN高値例が高齢者群で高率であるほかは差がなかった。完全寛解率は高齢者群で66%, 非高齢者群で75%であった。生存期間は全症例[予測5年生存率(高齢者群:28±11%, 非高齢者群:52±7%],病期III, IVのリンパ節原発症例[予測2年(高齢者群:23±12%, 非高齢者群:62±8%]ともに高齢者群で有意に短かった(p<0.05)。寛解期間は全症例,進行期リンパ節原発症例とも高齢者,非高齢者群で差はなかった。寛解導入療法時の化学療法死は高齢者群で29例中4例で起こったのに対し非高齢者群では71例中1例であった。再発後の奏効率は高齢者で28% (2/7), 非高齢者で78% (18/23)と高齢者で有意に不良であった(p=0.03)。高齢者NHLの生存率が低い要因として寛解導入療法で高率に起こる化学療法死および再発時の治療抵抗性が考えられた。
  • 弘瀬 詔三
    1992 年 33 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,ビオチン標識一本鎖オリゴデオキシヌクレオチドプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法によリヒトTリンパ球好性ウイルスI型human T-lymphotropic virus type I (HTLV-I)の末梢血HTLV-I感染リンパ球中における発現性を検討した。対象は,HTLV-Iキャリヤー2例,成人T細胞白血病adult T-cell leukemia (ATL)患者3例(急性型,慢性型およびリンパ腫型)とし,HTLV-IpX領域mRNA上の二つの異なる塩基配列に相補な二種類のプローブが用いられた。ATL患者において末梢血白血球中に少数(1.5∼7.4%)の反応陽性細胞が認められた。HTLV-Iキャリヤーでは陽性細胞の存在は1%以下であった。HTLV-IpXはATL腫瘍発生過程において重要な役割を果すと考えられているが,これらの結果は,患者末梢血中の一部のATL細胞におけるHTLV-IpXの発現を示すものである。
  • 岡本 康裕, 高上 洋一, 安友 康二, 斎藤 慎一, 平尾 敦, 松永 慶子, 阿部 孝典, 清水 隆史, 佐藤 純子, 渡辺 力, 河野 ...
    1992 年 33 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    末梢血幹細胞(PBSC)の輸注時には,混入した赤血球の破壊産物や凍害防止液として用いるDimethylsulfoxide (DMSO)などに起因するさまざまな副作用が生じる。今回33名の各種小児癌患者に計36回のPBSC輸注を行い,その副作用の発生について検討した。輸注された幹細胞浮遊液は,8.0±4.4 ml/kg (mean±SD)で,これに伴い輸注されたDMSO量は0.80±0.44 g/kgとなった。認められた副作用は,血色素尿33例(91.7%), 悪心28例(77.8%), 頭痛27例(75.0%), 嘔吐20例(55.6%)であった。また血圧低下,呼吸困難,意識障害などの前ショック状態は8例(22.2%)で生じたが,いずれもhydrocortisoneの投与によりすみやかに回復した。急性腎不全や心肺停止などの重篤な副作用はみられず,嘔吐の発生頻度のみが輸注量と相関したが,その他の副作用は相関しなかった。副作用の発生を予知することは困難であり,予備力の乏しい患者においては充分な観察が必要と思われた。
症例
  • 赤塚 美樹, 前田 拓司, 都築 忍, 杉原 卓朗, 南 三郎, 小寺 良尚, 小池 孝一
    1992 年 33 巻 3 号 p. 322-327
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    発症後12年経過した中等症再生不良性貧血の18歳の女性。輸血依存性のうえ,血小板減少による出血傾向が増悪したためHLA一致の弟より同種骨髄移植を施行し生着を得た。両親からの輸血を含む大量の輸血歴があったため拒絶予防のため移植前処置としてTLI (5 Gy)+cyclophosphamide (50 mg×4 days)にTBI (5 Gy)を施行した。長期にわたる輸血の結果患者が抗rh" (E)·hr'( ?? )抗体を有し,一方提供者がrh" (E)·hr' ( ?? )抗原を有していたため赤血球除去を行うことで骨髄輸注時の溶血を回避しえたが,骨髄生着に伴い著しい溶血をきたした。prednisolone 60 mgを投与したところ抗rh" (E)·hr' ( ?? )抗体価の低下とともに溶血は終息した。またG-CSFの投与にもかかわらず末梢血および骨髄の分節好中球分画の回復遅延を認めたが,フローサイトメトリーによる解析の結果,移植前から患者血清中に存在した抗好中球抗体がこの病態に強く関与していると考えられた。
  • —G-CSF投与による好中球の反応—
    村木 靖, 小林 敏貴, 小島 寛, 渋谷 彰, 長沢 俊郎, 阿部 帥, 森 尚義
    1992 年 33 巻 3 号 p. 328-332
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    神経性食欲不振症を有する50歳の女性が白血球減少精査目的で当科に入院した。骨髄穿刺では膠様髄で,顆粒球系細胞の低形成を認めた。この均一物質は,アルシアンブルー染色陽性であり酸性ムコ多糖類と推察された。CFU-G数,CFU-GM数は低下,好中球骨髄プールは減少,抗好中球抗体は陰性であり,好中球減少の原因は骨髄脂肪細胞が低栄養状態で萎縮し酸性ムコ多糖類におき替わることによる低形成に基づくものと考えられた。rhG-CSF 5.0 μg/kg/dayの2週間の投与により好中球は二相性を示すことなく上昇した。また血清G-CSF濃度は60 pg/ml以下と上昇はみられなかった。好中球減少をともなった神経性食欲不振症にG-CSFは有効な治療法であると思われた。
  • 中馬 好子, 宇都宮 與, 斉藤 毅, 花田 修一, 西俣 寛人, 有馬 暉勝
    1992 年 33 巻 3 号 p. 333-337
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    41歳,女性。15歳時貧血を指摘さる。昭和47年6月第1子出産。そのころより口内炎,陰部潰瘍を繰り返していた。昭和52年貧血の精査を受け,クームス試験陰性,骨髄は赤芽球の過形成を認めた。溶血性貧血の診断のもとに副腎皮質ステロイドの投与を受けたが,貧血の改善は得られなかった。昭和62年8月当科受診。血液学的には溶血性貧血に合致する所見であった。昭和63年7月12日発熱,右下腹部痛を主訴に入院。末梢血検査では,汎血球減少を示し,骨髄検査では顆粒球系,赤芽球系細胞の形態異常と芽球の増加がみられ骨髄異形成症候群(MDS)と診断した。注腸X線検査で回腸末端部に深い潰瘍を認めた。以上より溶血性貧血および不全型ベーチェット病の経過中に発症したMDSと診断した。3疾患の合併は非常にまれであり,それぞれの疾患の成因や治療法を考える上で貴重な症例と思われた。
  • 末永 孝生, 遠井 知子, 政氏 伸夫, 筑田 孝司
    1992 年 33 巻 3 号 p. 338-342
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    骨髄移植後の早期の睾丸再発したAMLに対して,再移植を行い寛解を維持している症例を経験したので報告する。症例は26歳の男性でAMLと診断後14カ月後にブスルファン,エンドキサン大量療法のコンデショニングのもとにHLA一致の弟より骨髄移植を受けたが,3カ月後に睾丸にて再発した。睾丸再発につづいて骨髄再発も認められたため,ノバントロン,エトポシド,キロサイド,プレドニンを用いた化学療法により寛解導入した。さらに睾丸に17.5 GyのX線照射後,ブスルファン,エトポシド,キロサイド大量療法にてコンデショニングを行い再度同一ドナーより骨髄移植を行った。移植後重篤な粘膜障害や肺炎を認めたが生着が得られ,再移植後18カ月後も寛解を維持している。以上の事より本症例に用いられたブスルファン,エトポシド,キロサイド大量療法の組合せは再移植に際して試みられてよい方法と思われた。
  • 渡部 一郎, 酒井 郁也, 松本 勲
    1992 年 33 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は,48歳女性。急性リンパ性白血病にてL-アスパラギナーゼ(L-ASP)を含む多剤併用療法を行った。L-ASP投与終了後プロトロンビン時間,活性部分トロンボプラスチン時間が延長し,フィブリノーゲン,アンチトロンビンIIIも高度に減少したため新鮮凍結血漿の輸注を行った。しかし,その後左頭頂葉を中心とする梗塞さらに右頭頂葉を中心とする出血性梗塞を生じて死亡した。病理解剖の結果,上矢状静脈洞血栓症およびそれに起因する両側脳梗塞と診断した。他の臓器には明らかな血栓形成は認められなかった。L-ASP投与後に凝固障害をきたすことはよく知られている。本症例も初回発作時の検査では,新鮮凍結血漿の投与にもかかわらず,種々の凝固系,抗凝固系,線溶系の蛋白が減少していた。しかし,DICを示唆する所見は認められなかった。以上より本症例における血栓形成の原因として,L-ASPの関与が強く疑われた。
  • 杉田 記代子, 奥井 雅人, 田口 信行, 宮内 潤
    1992 年 33 巻 3 号 p. 349-353
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    第2回目の骨髄再発で治療抵抗性となった急性巨核芽球性白血病に,遺伝子組換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)とVP-16, Ara-Cを併用して完全寛解の得られた1例を報告する。症例は4歳女児。化学療法はVP-16 [100 mg/m2]とAra-C [100 mg/m2]を10日間投与し,G-CSF [100 μg/m2/day]を化学療法の24時間前より開始し,好中球数が十分回復するまで継続投与した。この結果,化学療法のみでは不可能であった完全寛解の導入が治療開始後1カ月で達成され,さらに2カ月後には血液像の正常化がみられた。in vitroにおける白血病芽球コロニー法では,本症例の白血病細胞に対するG-CSFの有意な増殖刺激作用は認められなかったが,造血因子投与による白血病細胞の薬剤感受性亢進の機序はまだ解明の余地もあり,難治性白血病には造血因子と化学療法の併用は試みる価値があると考えられた。
  • 高橋 浩之, 関口 晴之, 甲斐 純夫, 生田 孝一郎, 佐々木 秀樹, 松山 秀介
    1992 年 33 巻 3 号 p. 354-359
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は14歳女児,急性リンパ性白血病の治療のために入院した。完全寛解を確認し,発症後7カ月の時点で,一卵性双生児の妹より同系骨髄移植を施行した。前処置としてbusulfan, etoposide, nimustineの大量療法を使用した。移植の2カ月後に急激に咳嗽と呼吸困難が出現し,胸部X線等の所見から肺水腫と診断した。このとき,体重増加と眼瞼および下腿の浮腫を認め,いわゆるcapillary leak syndrome (CLS)に合併した肺水腫であると思われた。利尿剤,アルブミン製剤,methylprednisoloneパルス療法,人工呼吸を施行することにより軽快した。さらに,その5週間後に再び肺水腫が出現したが,同様の治療で軽快し,治療中止後6カ月まで再燃していない。CLSの発症機序は現在まで不明であるが,本症例においては化学療法による血管障害に移植の前処置が加わって発症し,さらに強度の食欲低下による低蛋白血症のために重症化したものと考えられた。
  • 野沢 佳弘, 宮澤 正紹, 田崎 和洋, 小野 伸高, 阿部 正文, 若狭 治毅
    1992 年 33 巻 3 号 p. 360-364
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は15歳の男性で,昭和63年5月ころから38°Cの発熱が続き,両頸部のリンパ節腫脹,季肋下3横指の肝腫大,臍高までの脾腫大で発症した。頸部リンパ節生検にてmalignant lymphoma, diffuse mixed, small and large cellと診断され,化学療法が施行された。一時症状の改善がみられたが,末梢血中に異型リンパ球が34%と増加し,死亡した。剖検では,肝(3,122 g), 脾(2,434 g)は著明に腫脹し,リンパ節は系統的に腫大していた。腫瘍細胞はリンパ節および脾臓の正常構造を破壊しびまん性に増殖し,その表面形質は,CD2(+), HLA-DR(+), CD56(+), CD3(-), CD4(-), CD8(-), CD20(-)であった。TcR遺伝子の検討では再構成は認められなかった。電子顕微鏡像では細胞内小器官の発達が乏しく,electron denseな小顆粒が散在性にみられた。本症例は急速は経過を辿ったCD3(-)NK細胞型白血病で,最近検討がなされている新しい臨床疾患群に属する可能性が示唆された。
  • 安山 雅子, 川内 喜代隆, 杉山 始, 森 治樹, 榎本 康弘, 渡辺 陽之輔, 待井 隆志, 木谷 照夫
    1992 年 33 巻 3 号 p. 365-370
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    61歳,男性。労作時息切れと歯肉出血を主訴に入院。汎血球減少,巨脾を認め,腫瘍細胞はTRAP陽性でhairy cell (HC)の形態を示し,骨髄に線維化を伴うHCのびまん性増殖が認められたことより欧米型hairy cell leukemia (HCL)と診断。Interferon-α (IFN-α) 300万単位/日を連日投与開始。各血球系統の改善がみられ脾臓も縮小したが,HCの消失は得られず血小板の回復も頭打ちとなったため摘脾術施行。摘脾後血球数は正常化し,末梢血,骨髄におけるHCの著しい減少が得られた。本例のHCは,巨核球で認められるPPO活性と類似の活性が陽性であった。本邦では欧米型HCLはまれであり,腫瘍細胞がPPO様反応陽性を示す報告はきわめて少ない。また,IFN-α投与後tubuloreticular structureやtubular confronting cisternaeなどが末梢血単核細胞に認められた。
  • 藤井 浩, 彌重 博巳, 加納 正, 浦田 洋二
    1992 年 33 巻 3 号 p. 371-376
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    原発性肺アミロイド症(PA)発見10年後に限局型原発性マクログロブリン血症(PMG)を併発した症例を報告した。患者は61歳の日本人男性。1977年検診で孤立性肺腫瘤陰影を指摘された。1981年経皮的肺生検で結節型肺アミロイド症と確診。この時すでに慢性寒冷凝集素症(CCAD)の臨床症状あり。寒冷凝集素はIgM-κ型の特異性を示した。1986年少量のIgM-κ型血清M成分を検出。1987年胸水貯留にて入院。胸水のIgM-κ型M成分3,341 mg/dl, 寒冷凝集素価32,000倍。胸水細胞診で単クローン性(IgM-κ)のリンパ球,リンパ球様細胞,形質細胞が多数出現。1988年3月剖検でいずれも胸腔内に限局したPAとPMGの合併が認められた。PMGの前腫瘍段階としてのPA, CCADあるいはMGUSを考える上で,示唆に富む症例である。
  • 藤原 正博, 曽我 謙臣, 黒川 和泉
    1992 年 33 巻 3 号 p. 377-383
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    78歳,女性。平成元年5月30日,掻痒を伴う紅皮疹が出現し近医受診。プレドニンにて皮疹は消失したが,全身リンパ節腫脹,白血球増多および異常リンパ球様細胞の出現を認められ,当院紹介されて6月14日入院。入院時著明な肝脾腫と全身リンパ節腫脹を認めた。検査にてWBC 40,400/μlと著増し,形質細胞と思われる細胞が42%を占めていた。骨髄塗抹標本上も形質細胞が32.6%と増加していた。総蛋白は7.9 g/dlであったが,アルブミンが低下し,β-グロブリンが23%, γ-グロブリンが38.4%と著増していた。多クローン性の増加でM蛋白は認められなかった。免疫グロブリン定量ではIgG 5,100 mg/dl, IgA 1,680 mg/dl, IgE 7,960 IU/mlと著増,IgM, IgDは正常であった。全身状態不良のためリンパ節生検は施行できず,形質細胞性白血病に準じて化学療法を行ったところ,急速にリンパ節は縮小し全身状態も改善,末血の形質細胞は消失してγ-グロブリンも正常化した。
  • 藤田 浩之, 松崎 道男, 村田 興, 野口 太平, 橋本 佳巳, 田辺 寿一, 毛利 博, 大久保 隆男, 渡辺 真一郎, 平林 容子, ...
    1992 年 33 巻 3 号 p. 384-390
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    血清中に3種類のM蛋白を同時に認めた悪性リンパ腫を報告する。症例は64歳の女性。末梢血液検査にて貧血,および血清免疫電気泳動にてIgGκ, IgAκ, IgMκを同時に認めたため1989年6月入院。胃および回腸の悪性リンパ腫(lymphoplasmacytic lymphoma)と診断した。腫大した回腸所属リンパ節標本を免疫染色したところ,大型の形質細胞はIgAに,小型の形質細胞はIgGに,リンパ球様細胞はIgMに染まる傾向がみられ,同一の細胞がIgG, IgA, IgMのうち2種類以上を同時に産生している所見は検索の範囲内では認められなかった。本症例の3種類のM蛋白の起源は断定できないが,少なくとも単一クローンが3種類のM蛋白を産生している可能性は否定的であった。
  • 小山 孝則, 嶋本 義範, 松崎 美和子, 山口 雅也
    1992 年 33 巻 3 号 p. 391-395
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    自己免疫疾患と悪性リンパ腫の合併が注目されるなか,外国では慢性関節リウマチ(以下RA)も有意に悪性リンパ腫を合併するとの報告がみられる。今回,われわれは15年の病歴のあるRA患者にB細胞リンパ腫と腸管アミロイドーシスを合併した症例を経験した。症例は66歳女性。全身倦怠感と体重減少を認め,当科受診。この際,腹部の広範な圧痛,両手・手指関節に固有な変形を認めた。リウマチ反応弱陽性。左鼠径部リンパ節生検より悪性リンパ腫(濾胞性大細胞型,B cell type)と診断。また胃内視鏡下生検で胃・十二指腸にアミロイド(AAタイプ)沈着が証明された。本症例では,RAとリンパ腫ともに発症への関与が示唆されているEBウイルスの特異抗体値に注目すべき有意な上昇を認め,両者の合併の背景を考えるうえで興味深い症例と考えられた。
  • 田村 雅仁, 壹岐 聖子, 八木澤 雅子, 三谷 絹子, 大林 由明, 佐藤 宏, 浦部 晶夫
    1992 年 33 巻 3 号 p. 396-401
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    62歳の男性が全身リンパ節腫脹,発熱,発疹のために入院した。右頸部リンパ節生検の組織像はimmunoblastic lymphadenopathy (IBL)-like T cellリンパ腫を示していた。検査所見は,ヘモグロビン7.1g/dl, 赤血球数185万/μl, 網赤血球4.2%, 総ビリルビン2.6mg/dl, 直接ビリルビン0.5mg/dl, ハプトグロビン10mg/dl以下,クームス試験陽性であった。自己免疫性溶血性貧血を伴ったIBL-like T cellリンパ腫と診断し,Pro-MACE療法で治療したところ,リンパ節腫脹と溶血性貧血は消失した。現在まで6ヵ月以上寛解を保っている。
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