臨床血液
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33 巻, 4 号
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臨床研究
  • —蛍光偏光免疫法(FPIA法)の臨床的評価—
    村山 徹, 松下 慶子, 高橋 哲也, 的崎 早智子, 中川 俊太郎, 磯部 敬
    1992 年 33 巻 4 号 p. 413-417
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    シクロスポリンAは,強力な免疫抑制剤であり,臓器移植や骨髄移植後に使用され拒絶反応や移植片対宿主病予防を目的とする。しかし,副作用の出現頻度が高く,血中濃度モニタリングの必要性が強調されている。今回われわれは骨髄移植後の4症例についてRadioimmunoassay (RIA)法に加えFluorescence Polarization Immunoassay (FPIA)法にても血中濃度を測定し,FPIA法の有用性について検討した。両者の間には良好な相関が認められた。FPIA法は精度でRIA法よりも劣るものの,測定法が簡便である。したがってベッドサイドでルーチンに測定する方法として十分使用可能であると考えられた。また,免疫抑制能力のあるシクロスポリンの代謝産物の中にはRIA法で測定されないものも存在するため,両法の測定値を比較することにも意義があると考えられた。
  • 布施川 久恵, 宮地 勇人, 大島 利夫, 有森 茂, 安藤 泰彦
    1992 年 33 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    血液悪性腫瘍患者において,感染症はもっとも重篤な合併症である。その迅速な鑑別診断法は,より適切な治療に重要である。われわれは,結核菌感染症が疑われた血液疾患患者10例の臨床検体(喀痰,胃液,胸水)において,DNAの増幅とハイブリダイゼーションに基づく結核菌の迅速な検出法を施行した。従来法(塗抹染色法/分離培養法)では証明されない1例を含め,結核菌に特異的DNAは3例で検出された。従来法が陰性であり,発熱や胸部レントゲン異常陰影のため,迅速な鑑別診断が必要であったほかの7例も,本検査法は結核菌感染症の鑑別診断に役立った。血液疾患患者において,抗酸菌に特異的なDNAを増幅する結核の迅速診断は,臨床的に極めて有用である。
  • —再生不良性貧血(AA)と骨髄異形成症候群(MDS)について—
    楠本 修也
    1992 年 33 巻 4 号 p. 423-429
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    再生不良性貧血(AA)と骨髄異形成症候群(MDS)の患者16人について骨髄MRIを施行した。下部胸椎より腰椎を矢状断にてSTIR画像(IR 2000/160/20)を用いて撮像した。活動性の赤色髄に一致するSTIR画像の高信号域の分布パターンにより4型に分類した。I型:均一な低信号(4例),II型:辺縁の高信号(2例),III型:不均一な高信号(8例),IV型:均一な高信号(2例)。STIR画像の高信号域の分布と骨髄clot標本からWiebelのテスト板を用いて求めた細胞密度には密接な関係が認められた。AAの3例は全てI型を示した。またMDSの13例中8例はSTIR画像にてIII型を示した。低形成型MDSの1例は低信号であった。治療により病像の改善を認めた2例のAAではSTIR画像においても高信号域の増加を認め正常パターンへの回復を認めた。骨髄MRI像はAAおよびMDSの診断や治療効果をみる上で今後有用な検査法となる可能性がある。
  • 木下 清二, 吉岡 慶一郎, 辻野 儀一, 新堂 隆人, 笠原 素子, 田中 恒二
    1992 年 33 巻 4 号 p. 430-435
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    10例の血小板無力症患者のうち有意の血小板膜GPIIbIIIaが存在する亜型例と考えられる3症例の血小板につき,GPIIbIIIaに対するmonoclonal抗体を用いたflow cytometryにてその結合能を検討した。使用した抗体は,IIbIIIa complexのみに結合するPLT-1, AP-2; IIbに結合するTP80, P2, AP-4; IIIaに結合するAP-5; RGD結合部位のごく近傍に結合するOP-G2および3F11。症例1はTP80, AP-2, AP-4, AP-5, 3F11にて正常血小板の28∼63%の結合能を示した。症例2もまたTP80, P2, AP-2, AP-4, AP-5, 3F11の抗体に対し16∼44%の結合能を示した。症例1, 2はcomplex, IIbα, IIIaに対する抗体にある程度反応するにもかかわらずOP-G2に反応しないところからGPIIbIIIaの機能部位の構造異常が示唆された。症例3は8種類の抗体にまったく正常に反応するが,thrombinおよびADPによる血小板の活性化によるOP-G2結合能の増加が,正常血小板のようにはみられないところからIIbIIIaのfibrinogen結合部位の活性化能に障害があると考えられた。
  • —同種骨髄移植症例について—
    中村 こずえ, 水谷 修紀, 末永 孝生
    1992 年 33 巻 4 号 p. 436-444
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    同種骨髄移植(BMT)後の慢性骨髄性白血病(CML) 33症例について,Reverse transcriptase-polymerase chain reaction (RT-PCR)法によるbcr/abl遺伝子解析を行った。BMT後臨床的完全寛解を持続している33症例のうち22症例でbcr/abl mRNAが検出された。6症例では一過性の検出であった。白血病細胞はBMTの前処置で完全に根絶するのではなく,移植片対白血病細胞(GVL)効果で臨床的寛解を持続することが推測された。今後,molecular relapseを呈する症例が臨床的再発を呈するか否か症例を増やして検討する必要がある。
  • 東野 洋一, 広重 幸雄, 田中 雅久, 西村 葉一郎, 田仲 弘行, 植田 浩平, 西村 学, 岡藤 浩一郎, 瀬口 雅人, 吉田 剛, ...
    1992 年 33 巻 4 号 p. 445-450
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
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    anthracycline系薬剤による心筋障害をもつ急性前骨髄球性白血病症例の再発時にHLA一致の同胞より同種骨髄移植を施行した。前処置はcytarabine 2g/m2を3日間,4g/m2を3日間,全身照射を1,200 cGy, etoposideを50mg/kgで行い,併存したDICに対してはヘパリンを使用し,また心不全予防の目的でドパミン少量持続点滴を使用した。前処置による副作用は重篤なものはなく,移植前後で心機能に変化を認めなかった。生着は性染色体により確認した。移植後8カ月後の現在,再発および心不全の徴候なく経過している。本症例のようにanthracycline系薬剤による心筋障害のある患者においても,前処置および支持療法の工夫により同種骨髄移植は可能であり,救命的に試みる価値のある方法と考えられた。
  • —白血球除去血小板製剤専用フィルターを用いた多施設共同プロスペクティブスタディ—
    半田 誠, 池田 康夫, 倉田 義之, 椿 和央, 堀内 篤, 降旗 謙一, 木村 之彦, 外山 圭助, 高本 滋, 月本 一郎, 吉田 尚 ...
    1992 年 33 巻 4 号 p. 451-460
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    頻回血小板輸血を必要とする造血器疾患患者を対象として血小板専用フィルター(セパセルPL)の有効性を検討する目的で多施設共同によるプロスペクティブスタディーを施行し,抗HLA抗体発現の予防効果について検討した。フィルター使用群(F群)は全て血小板製剤をフィルター処理して使用,対照群(C群)では全て通常の血小板製剤を用いた。赤血球は両群とも白血球除去製剤を使用した。登録患者111名のうち評価可能であったF群49例,C群23例中同抗体が陽性となったものは,それぞれ4例(8%), 9例(39%)で,両群間でその発現率に有意差(p<0.01)が認められた。また,血小板輸血不応状態に陥った患者は,それぞれ2例(4%)と6例(26%)で同様に両群間に有意差(p<0.05)を認めた。以上より血小板専用フィルターを使用した血小板製剤よりの白血球除去は抗HLA抗体の発現予防に有効であることが示唆された。
症例
  • 塚本 憲史, 猪瀬 和人, 松島 孝文, 内山 俊正, 杉田 裕, 竹内 季雄, 佐藤 貞夫, 小峰 光博, 成清 卓二
    1992 年 33 巻 4 号 p. 461-466
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    ビタミンB12欠乏を伴い,B12投与,輸血とともに8カ月のうちに芽球比率と造血状態が変動した非定型白血病症例を報告した。患者は76歳女性で5.5年前に膵頭部癌摘出の既往がある。1989年1月汎血球減少と軽度の芽球増加が発見された。染色体異常はなかった。B12投与と輸血により末梢血所見の改善と芽球の比率低下がみられた。その後再び汎血球減少症と芽球増加が徐々に進行し,7月には芽球比率が30%こえた。このときB12値は90 pg/ml以下であった。輸血とB12投与により芽球比率が再び減少したが,間もなく劇症肝炎を併発し死亡した。PGK遺伝子をprobeとしたRFLP-メチル化法で骨髄細胞のクローン構成を検討したが単クローン性ではなかった。白血病クローンと正常クローンが混在し,それぞれがB12欠乏とB12投与に対して異なった挙動を示したため,芽球比率と造血能に特異な変動がみられたものと考えた。
  • 堀口 順子, 山村 成子, 根本 忠, 藤川 透, 稲葉 敏, 山崎 泰範, 山田 尚
    1992 年 33 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    頚部リンパ節腫脹を初発症状とした急性骨髄性白血病M0の1症例を報告する。59歳男性で初診時末梢白血球数93,500/μl, 骨髄有核細胞数35.5×104l内96%を白血病細胞が占めていた。急性腎不全に陥っていたため,人工透析を施行しつつ化学療法を開始したがCRに至らず白血病再燃と感染症を繰り返し6カ月で死亡した。白血病細胞はペルオキシダーゼ染色陰性,非特異的エステラーゼ染色陰性,PAS陰性でFAB分類上L2に相当したが表面マーカーをみるとCD7, 13, 33が陽性でNCIによる新たなAMLの定義によりM0と診断された。白血病細胞DNAのTCR-beta鎖はgerm line patternを呈しており,腫瘍細胞RNAにmyeloperoxidase遺伝子の発現は認められなかった。癌遺伝子としてはc-fms, c-fosが陽性にc-mybが弱陽性に出現していたが,c-myc, c-junはみられなかった。c-fmsc-fosがこのような未分化細胞にみられたことは興味深い。
  • 吉田 明, 内田 三千彦, 福島 俊洋, 田中 経雄, 松山 文男, 李 鍾大, 上田 孝典, 堂前 尚親, 中村 徹
    1992 年 33 巻 4 号 p. 473-477
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    血小板減少をきたす血液疾患で剖検により5症例(骨髄異形成症候群2例,再生不良性貧血1例,原発性骨髄線維症・急性転化1例,急性骨髄性白血病1例)において急性心筋梗塞を認めた。これらの症例では,急性心筋梗塞の発症が推定される時点の血小板数は全例において2.5×104l以下であった。全例64歳以上の高齢者で,剖検により5例中4例に冠動脈硬化病変が認められた。5例中4例においてFDPが高値を示していた。全例に感染症によると思われる発熱が認められた。胸痛の訴えは全例において認められず,急性心筋梗塞の臨床診断は困難であった。心筋梗塞発症の原因としては,DICが認められなかった1例では特定の因子をみいだせなかったが,DICが疑われた2症例,さらにDICと確診された2症例では,心筋梗塞発症にDICが関与している可能性が考えられた。
  • 西村 慎太郎, 松崎 博充, 藤本 幸示, 河北 誠, 高月 清
    1992 年 33 巻 4 号 p. 478-482
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    著明な鉄欠乏性貧血を示したホラ吹き男爵症候群(Münchhausen syndrome)の1例を報告した。症例は31歳主婦で,不正性器出血を主訴に来院した。婦人科的・血液凝固学的に特に重大な異常は認められなかったが,あらゆる治療に抵抗性で,輸血でも貧血は改善しなかった。トイレで倒れていることが数回あり,その度に貧血が進行することから自己瀉血を疑ったが,確定診断には至らなかった。治療にたいし常に拒否的で,本人の希望で退院したが,外来時の血液検査で,本人が検体を運ぶたびに稀釈されていることが判明し,Münchhausen症候群の診断に至った。
  • 松井 俊和, 丸山 文夫, 宮崎 仁, 野村 俊之, 江崎 幸治, 平野 正美, 溝口 良順
    1992 年 33 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    76歳男。悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫び漫性リンパ腫中細胞型,B細胞)と診断されCHOP療法を施行したが無効。末期各種抗生剤に抵抗を示す高熱が持続し,麻痺性イレウス,肝障害,膵機能障害,消化管出血を併発死亡した。全経過を通し皮疹や小水疱はみられなかった。剖検では病理組織像で巨細胞やCowdry type Aの核内封入体が消化管,肝,脾,膵,骨髄にみられた。また電顕にて胞体内ではエンベローブを被り,核内ではそれを被っていないウイルス粒子を確認した。抗varicella-zoster抗体を用いた免疫染色でこれらの組織は陽性であった。このことより末期にみられた多臓器障害は全身性varicellazoster感染によるものと考えた。
  • 片山 俊夫, 増岡 秀一, 吉田 真弓, 渡邊 禮次郎, 西脇 嘉一, 島田 貴, 海渡 健, 落合 成正, 小林 正之, 酒井 紀
    1992 年 33 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は38歳女性。耳痛を主訴に1987年9月当科受診した。身体所見では肝脾腫を認めず,血小板数414×104lと著増していた。骨髄は正形成で巨核球は859/μlと増加していた。染色体分析はPh1陽性でDNA解析でbcrの再構成を認めた。Carboquoneにて血小板数100×104l前後に維持していたが,31カ月後原因不明の発熱,汎血球減少のため入院となった。骨髄生検で骨髄線維症が確認され,etoposide少量療法により改善がみられた。以上より本症例は臨床的にはいわゆるPh1陽性ETに相当すると考えられたが,DNA解析結果および新たに考案された慢性骨髄増殖性疾患に対するHannover分類を適用するとCML megakaryocytic predominance typeに相当すると思われた。
  • 古家 寛司, 土山 真一, 佐藤 利昭, 石橋 里江子, 野津 和巳, 高木 千恵子, 山本 裕之, 加藤 讓
    1992 年 33 巻 4 号 p. 494-499
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    57歳女性が,全身倦怠感を主訴に入院した。リンパ節腫脹や肝脾腫は認められなかった。検査所見では,貧血と白血球減少を認め分画では白血病細胞が4.5%を占めていた。骨髄には白血病細胞が34.4%認められた。白血病細胞の直径は20から28 μmであった。顆粒球系の異形成を伴う急性骨髄性白血病(FAB:M2)と診断した。染色体異常が認められ,2倍体で構造異常を有するものと4倍体で構造異常を有するものが認められた。構造異常にはdel(5)(q22q33), del(15)(q22q24), t(3;12)(q25;p13)が含まれた。少量aclacinomycin-A療法により骨髄の白血病細胞は減少し,貧血と白血球減少症は改善した。
  • 日野 研一郎, 佐藤 聖哲, 坂下 暁子, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 小池 正
    1992 年 33 巻 4 号 p. 500-506
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳男性。真性赤血球増加症の診断のもとにpipobroman, carbazilquinon, busulfanの投与を受けていたが,診断10年後,発熱,貧血,血小板減少のため再入院した。骨髄はdry tap, 生検で線維化が認められたが,幼若細胞の増加はなかった。入院第11病日より急速に末梢血中に芽球が増加し,白血病の像を呈した。細胞学的検討では,ペルオキシダーゼ陰性,電顕血小板ペルオキシダーゼ陽性,血小板特異抗原GPIIb/IIIa陽性,アセテートエステラーゼ,PAS陽性,リンパ系マーカーは陰性であり,巨核芽球性白血病と診断した。抗白血病剤治療に抵抗し,DICを合併して短期間で死亡した。アルキル化剤による二次性白血病の可能性も否定できないが,真性赤血球増加症の経過中に巨核芽球性白血病を発症した報告例はきわめて少なく,さらにDICの合併例は報告例がない。
  • 今井 康文, 山本 晃, 鈴木 謙, 東田 修二, 三木 徹, 中村 裕一, 加藤 淳, 広沢 信作, 奈良 信雄, 青木 延雄, 松原 修 ...
    1992 年 33 巻 4 号 p. 507-513
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    5年前に肝内の濾胞性リンパ腫(medium size)を発症し,放射線療法と化学療法の併用で寛解中の49歳の男性が,乾性咳嗽と胸部異常陰影を主訴に入院。表在性リンパ節腫脹や臓器腫大は認めず,画像診断で,右肺中下葉の腫瘤陰影と同側胸水を認めた。検査所見上はほぼ正常。開胸肺生検を施行し,Lymphomatoid Granulomatosis (LYG)と診断した。病変部の細胞は表面形質上T cellが主体であったが,clonalityは不明確であった。T細胞型リンパ腫との鑑別,および既往の濾胞性リンパ腫との関連を検討する目的でDNA解析を行った。濾胞性リンパ腫と診断したパラフィン包埋切片のPCR法による検討ではJHの再構成が認められたが,LYG病変部細胞には再構成バンドがみられなかった。prednisolone投与により,胸部腫瘤は消失し,以降CHOP療法を定期的に繰り返しており,病変は寛解の状態にある。
  • 丸山 英晴, 河野 清秀, 宇野 久光, 松岡 均, 山下 良三, 玉置 昇, 石崎 淳三, 前田 宏一, 津田 和矩
    1992 年 33 巻 4 号 p. 514-519
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳,女性。悪心,嘔吐,腰痛のため近医受診したところ高Ca血症を指摘され,1987年11月当院初回入院。貧血,腰椎の骨陰影濃度低下と骨梁の狭小化がありPTHrP (parathyroid hormone related protein)も高値を示したが,末梢血および骨髄には異常細胞を認めなかった。prednisolone (PSL)とcalcitoninで病態改善し退院。その後,再び同症状出現し1988年2月当院再入院。リンパ芽球を末梢血で1%, 骨髄で98%認めALL (L1)と診断。PSL, vincristine, daunorubicin, L-asparaginaseで治療開始し完全寛解した。血中CaとPTHrPは正常化し,症状も軽減した。その後,cyclophosphamide, methotrexateを加え維持療法を行った。一般に急性白血病に高Ca血症を合併することは稀とされている。本例は高Ca血症が先行したALLで,しかも高Ca血症の原因として腫瘍細胞に由来するPTHrP産生による骨吸収が考えられ,ALLの高Ca血症の機序を示唆する貴重な1例であると考えられた。
  • 秋本 佳久, 石山 泰二郎, 佐野 元春, 上野 秀之, 中牧 剛, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹
    1992 年 33 巻 4 号 p. 520-524
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    著者らは本態性血小板血症の発症3年後に骨髄線維症に移行した症例を経験した。症例は,66歳,男性,1988年2月9日,某医で血小板増多を指摘され入院。白血球数17,700/μl, 血小板数274.4×104l, 骨髄巨核球は1294/μlと増加を認めた。フィラデルフィア染色体は陰性で骨髄の線維化はみられなかった。以上より本態性血小板血症と診断した。Thrombopheresis, carboquoneにより治療し血小板数は100×104l前後に減少した。その後,ranimustine (MCNU)に変更し,血小板数は65∼100×104lを推移していたが,1991年2月4日,発熱,左季肋部痛をきたし再入院した。入院時,肝脾の増大は著しく,末梢血はleukoerythroblastosisを呈し,涙滴赤血球もみられた。骨髄はdry tapで著明な線維化を認めた。以上の所見から,本態性血小板血症から骨髄線維症へ移行したものと判断した。本態性血小板血症から骨髄線維症への移行は,比較的まれと考えられるので報告する。
  • 平野 淳, 高橋 功, 春田 祐郎, 中村 達, 仲田 浩之, 依光 聖一, 関藤 典子, 木村 郁郎
    1992 年 33 巻 4 号 p. 525-531
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    血液所見,染色体分析,3'側ならびにTransprobe-1を用いたDNA検索から分類不能型慢性骨髄増殖性疾患(UCMPD)とした2例を経験した。症例1は63歳,女性。1988年6月白血球増多(96,800/μl)を主訴とし入院。骨髄では顆粒球系細胞増多を認め,成熟抑制なく,NAPスコア121, 染色体分析で46, XX, i(17q)を認め,19カ月の慢性期の後急性転化をきたし,その4カ月後に死亡した。症例2は48歳,男性。1989年4月発熱,白血球増多(20,000/μl)を主訴とし入院。骨髄では顆粒球系細胞増多を認め,成熟抑制はなく,NAPスコア33, 染色体分析で47, XY, +8を認めた。症例1, 2ともPh1陰性(-) bcr再構成陰性(-)であったが,UCMPD, CMPD, Ph1 (-) bcr再構成(-) CMLなどの病態解析あるいは相互関係を検討する上で興味ある症例と考えられた。
  • 桐戸 敬太, 進藤 弘雄, 千葉 直彦, 小山 敏雄, 横山 宏
    1992 年 33 巻 4 号 p. 532-536
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は65歳男性で,昭和61年よりMMにて加療中のところ平成1年9月,意識消失にて当科へ緊急入院。心電図上洞停止および補充調律を認めSSSと診断し,直ちに緊急ペースメーカー(PM)を挿入するも,敗血症を併発した。MMによる易感染性の存在を考慮し,永久体内式PMの使用は適応外と考え,内科的治療を行ったが,患者は2カ月後,死亡した。剖検所見より,アミロイドの沈着が洞房結節,作業心筋および冠動脈壁に認められ,SSSをきたした原因と考えられた。MMに併発する心アミロイドーシスは,臨床的には難治性心不全をきたすことが多く高度伝導障害をきたした報告はまれである。一方,治療については,永久式PMの使用を有効とする報告もあるが,原発性アミロイドーシス例等ではPM挿入によりアミロイド沈着が進展したとの相反する報告がなされている。感染症併発の問題も含めPM使用については今後の検討が必要と考えられた。
  • 森 直樹, 浦 一美, 村上 修一, 小川 亮介, 和気 敦, 永田 一彦, 佐藤 忠嗣, 塚田 順一, 中田 浩一, 三砂 將裕, 織田 ...
    1992 年 33 巻 4 号 p. 537-541
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の1例を報告する。患者は49歳,女性。成人T細胞白血病(ATL)に対する化学療法の経過中,1991年2月26日,右眼視力低下と視野異常を自覚。両眼底は白色滲出斑,散在性網膜出血からなる滲出性壊死性網膜炎を呈していた。CMVは尿からshell vial法にて検出された。抗ウイルス剤としてganciclovirとCMV高力価免疫グロブリンを投与し,網膜の滲出病変は次第に吸収された。これらの眼症状は,全身的な免疫機能不全状態と関連して発生したものと考えられた。免疫不全状態下にある易感染宿主に認められる網膜炎の原因の一つとしてCMVを念頭におくべきと思われ,免疫抑制療法,臓器移植の普及に伴い,本症に遭遇する機会は今後増加することが予想される。
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