臨床血液
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33 巻, 5 号
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第33回総会
特別講演1
教育講演1
教育講演2
教育講演5
シンポジウムII
FAB分類の再評価—臨床的立場から
  • 松尾 辰樹
    1992 年 33 巻 5 号 p. 587-591
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    急性白血病の標準的形態分類法であるFAB分類にはいくつかの問題点が存在する。まずALLのL1, L2と免疫学的マーカーとの関係で明らかなように病型と細胞生物学が必ずしも対応しないことがあげられる。AMLでも同様であり例えばM1は芽球ペルオキシダーゼ陽性率で二分すると細胞性格と予後が明らかに異なり病型分類に改善の余地があることが示唆される。次に診断上の諸問題が考えられる。これには芽球の同定における技術上の問題から芽球の定義や比率の問題までが含まれる。第三にはFAB分類が包括していない疾患,たとえばmixed lineage leukemiaやAML with trilineage dysplasiaの今後の取扱の問題がある。ことに後者はAMLの10%強を占め予後不良と思われるので臨床上も重要である。しかし以上の問題点にもかかわらず免疫マーカー,染色体,遺伝子診断の基礎となる実際的かつ臨床的分類としてFAB分類はいまだに十分,有用であると思われる。
  • 竹内 仁
    1992 年 33 巻 5 号 p. 592-598
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    一定のプロトコルで治療された急性白血病のFAB分類別の治療効果と予後について解析した。AML(235例)では,各FABサブタイプ毎に特徴があり,治療上有用と思われた。以下にその特徴を示す。(1)M1の治療成績は不良で,新しい治療が必要である。(2)M2では,t(8;21)の異常をもつ群とそれ以外の群に分けて治療法を考慮する必要がある。前記の核型をもつ症例に対するDCMP85療法の成績は良好であった。(3)M3では早期死亡,とくにDICに対する対策が重要である。寛解後2年以降の再発はなかった。(4)M4では,完全寛解後2年以降も再発があり,寛解後療法の強化などの工夫が必要である。また,CNS再発に対する予防処置を行った方がよい。(5)M5では,DCMP85療法により良好な治療成績が期待される。ALL(62例)では,FAB分類よりも核型が治療効果に関係しており,治療法の選択には有用性は認められなかった。
  • 田代 聡, 許 泰一
    1992 年 33 巻 5 号 p. 599-603
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    当部門で染色分析を行った急性白血病526例,骨髄異形成症候群(MDS) 64例について,FAB分類と細胞遺伝学的分類の関連について検討を行った。またこれらの分類の有用性を検討するために,同一のプロトコールで強力な化学療法を施行した急性骨髄性白血病136例について治療予後の解析を行った。ANLLでは8;21転座とM2, 15;17転座とM3の強い関連が認められたが,急性リンパ性白血病とMDSではFAB分類と染色体異常の関連は明らかではなかった。AML136例のCox重回帰分析では,8;21転座を持つ症例の予後が良好で,Hypoplastic leukemia症例,hyperdiploid症例,5番あるいは7番染色体異常を持つ症例の予後が不良であり,予後予測の精度はFAB分類に比べて細胞遺伝学的分類の方がより良好であることが判明した。細胞遺伝学的分類が予後因子としてはFAB分類より優れてはいるものの,それぞれの分類の間には強い関連も認められ,FAB分類は臨床的になお有用であると考えられた。
  • 影山 慎一, 中瀬 一則, 北 堅吉, 那須 芳, 土肥 博雄, 白川 茂
    1992 年 33 巻 5 号 p. 604-607
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    FAB分類の再評価の目的でAML 194例の免疫学形質について検討した。CD13, CD33はFAB各群に高頻度に発現し,CD14はM4, M5を中心に発現していた。M3は顆粒系細胞に分化した形質を有していたが他の各群はCD34/HLA-DRの発現に差異はみられず,またCD7あるいはCD19のリンパ球系抗原が全体の約1/4に発現されていた。CD7陽性AMLはCD34/HLA-DRを高頻度に発現するとともに,IL-3に対して明瞭な反応性を示し多潜能性幹細胞由来の白血病と考えられた。CD7陽性AMLは若年男性に多く発症し,寛解率および生存率が陰性例にくらべ有意に低率で予後不良と考えられた。CD7陽性AULは表面形質,造血因子に対する反応性,臨床病態上もCD7陽性AMLと類似した特徴を有し両者の連続性が示唆された。CD19陽性AMLは染色体t(8;21)転座と密接な関連がみられた。IL-2受容体α鎖(Tac抗原/CD25)はAMLの約10%にみられM1に多く発現例がみられた。CD25陽性AMLは極めて予後不良と考えられた。
  • 大屋敷 純子, 田内 哲三, 大屋敷 一馬, 外山 圭助
    1992 年 33 巻 5 号 p. 608-612
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    成人急性白血病110例について,形態学的および細胞化学的診断に加えて,細胞遺伝学的検討,表面マーカーの検索と共に,免疫関連遺伝子再構成様式からみた遺伝子型の検討を行った。その結果,FAB分類で包括し得ない領域に位置づけられる白血病としてPh陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)が浮かび上がってきた。Ph+ALLは,FAB分類ではL2に分類されることが多いが,生物学的特性は多様性を示すため,われわれはPh+ALL 7例に対してBHAC-DMPV療法を試み,さらに,major-BCR型の例にはα-インターフェロンによる維持療法を行った。急性白血病においては白血病細胞の生物学的性質の多角的な解析が,治療法の確立への第一歩であると考えられた。
シンポジウムIII
血小板生成の体液調節
  • 寺村 正尚, 溝口 秀昭
    1992 年 33 巻 5 号 p. 613-618
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    各種サイトカインのヒト巨核球産生に与える影響について検討した。IL-3, GM-CSFをT細胞除去非付着性骨髄単核細胞に添加すると巨核球コロニーが形成され,巨核球コロニー刺激因子活性が認められたが,ploidy増加作用は認めなかった。Epo, M-CSF, IL-6, IL-7, IL-11, SCFは単独添加では巨核球コロニーを形成せず,IL-3と共に添加すると巨核球コロニー数,コロニーサイズ,コロニー構成細胞のploidyの増加を認めた。すなわち,これらの因子は巨核球増幅因子活性を有すると考えられた。これらの因子の作用が巨核球系細胞に対する直接作用か否かを検討するために,純化したCD41陽性細胞にこれらの因子を添加し液体培養を行った。その結果,IL-6, IL-11, SCFにはploidy増加作用が認められ,これらの因子の作用は巨核球系細胞に対する直接作用と考えられた。さらにIL-11をマウスに注射すると血小板増加作用が認められ,IL-11はトロンボポエチン様作用を有すると考えられた。
  • 石橋 敏幸, 色摩 弥生, 濱崎 洋一, 木村 秀夫
    1992 年 33 巻 5 号 p. 619-623
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    各種純化サイトカインのin vivo巨核球・血小板造血への影響を,マウスを用い検討した。検索したサイトカインはIL-6, Epo, IL-1β, GM-CSF, M-CSF, G-CSFで,このうちIL-6, Epo, IL-1βに血小板増加作用が認められた。IL-6による刺激作用は著明であり,骨髄巨核球サイズの増加と50∼60%の血小板数増加がみられ,長期投与(∼30日)においてもその効果は持続した。Epoの作用は比較的弱く,一過性であった。IL-1βによる血小板増加作用は,IL-6を介するものと考えられた。GM-CSF, M-CSF, G-CSFには今回の実験系では血小板増加作用は認められなかった。またラット巨核球純分画を用い,IL-6およびEpoレセプターが巨核球上に証明された。In vivo血小板産生がIL-6をはじめいくつかのサイトカインの影響を受けることが示されたが,それらの分子の生理的意義づけについて今後の検討が必要とされる。
  • —アクチビンの新しい生物活性の発見—
    藤本 幸示, 河北 誠, 嘉藤 和治, 米村 雄士, 増田 哲哉, 広瀬 二郎, 松崎 博充, 高月 清
    1992 年 33 巻 5 号 p. 624-628
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    未分化甲状腺癌より樹立した細胞株KHM-5Mが,マウス巨核芽球細胞株L8057の強力な分化誘導因子(MDA)を産生することを発見し,その純化に成功した。SDS-PAGE上25kD, 2MEで還元すると15kDの相同なsubunitに解離,失活する。N末端24個のアミノ酸配列を決定したところ,インヒビンβA鎖に一致し,MDAはアクチビンA/EDFと推定された。アクチビンはもともと下垂体からのFSH分泌刺激因子として発見されたが,最近その作用主体は,ホルモンとしてよりもむしろ,個体発生の初期胚を含む種々の細胞の分化誘導であることが明らかになった。その中で今回のアクチビンの新しい生物活性の発見は,その活性の多様性をさらに証明するとともに,L8057とMDA/アクチビン/EDFの組み合わせは,巨核球分化過程への細胞内刺激伝達系の関与,遺伝子の発現などの分子生物学的解析に極めて適したモデルの確立という意味で価値が高いと考えられる。
  • 緒方 清行, 厨 信一郎
    1992 年 33 巻 5 号 p. 629-632
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    ヒト肺癌細胞株(MC-1)の培養上清中に存在する巨核球コロニー刺激活性物質について検討した。本物質は分子量23,000前後のレクチンに対する親和性の乏しい蛋白であり,その活性および中和抗体を用いた検討などからIL-1, IL-2, IL-3, IL-6, IL-7, IL-11, G-CSF, M-CSF, GM-CSF, Epo, LIF, SCFなどの既知物質とは異なることが判明した。100LのMC-1細胞培養上清よりConA-アガロース,疎水,HA, Mono-Qおよび陽イオン交換の各クロマトグラフィーを用いて1.5×104倍に精製した本物質は,マウス骨髄有血清培養系において1 ng/ml以下の濃度で巨核球コロニー形成を刺激した。本物質はマウス骨髄無血清培養系およびCD34陽性細胞を標的としたヒト骨髄培養系においては単独では巨核球コロニー形成を刺激せず,IL-3の巨核球コロニー形成刺激作用を増強した。また単離マウス巨核球にたいしてはAch-E活性を増加させるとともにその形態の変化を惹起した。
  • 小松 恒彦, 長澤 俊郎, 星 美紀子, 阿部 帥, 三井 洋司
    1992 年 33 巻 5 号 p. 633-636
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    われわれは培養巨核球が長い細胞突起を形成し,複雑に分岐しながら血小板を産生する過程を顕微鏡映画に収めた。またin vivoでは血管内皮に生じたホールを細胞突起が貫通する様子を走査電顕にて観察した。これらの現象から血管内皮細胞の巨核球成熟促進作用を想定し1)血管内皮細胞(HUE)と巨核球系細胞株(CMK-7)の接触培養実験。2) plasma clot内の巨核球コロニーとclot上で培養した血管内皮細胞との非接触培養実験を行った。CMK-7はHUEと直接接触させた時のみATP, 5-HT量の増加,細胞突起形成が観察された。一方,HUEの存在下で成熟させた巨核球コロニーは非接触状態でも細胞突起形成が促進され,この作用は血小板減少血清の添加で増強され,抗IL-6, 抗IL-11抗体により減弱した。以上より血管内皮には細胞間相互作用と液性因子による巨核球成熟促進機構の存在が示唆された。
臨床研究
  • 佐藤 純子, 高上 洋一, 岡本 康裕, 斎藤 慎一, 平尾 敦, 松永 慶子, 清水 隆史, 阿部 孝典, 渡辺 力, 河野 嘉文, 広瀬 ...
    1992 年 33 巻 5 号 p. 637-645
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    小児悪性腫瘍患者34名に超大量化学療法を併用した自家末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を計35回行い,移植後の造血機能回復を検討した。体重1kgあたりの輸注CFU-GM数と移植後顆粒球ならびに血小板数の回復速度との間に負の相関を認めた(顆粒球:r=-0.631, p<0.001, 血小板:r=-0.590, p<0.001)。輸注CFU-GM数が1×105/kg未満の14名,1∼3×105/kgの7名および3×105/kg以上の14名で,移植後顆粒球数500/μl以上になるのにそれぞれ平均21日,14日および10日を,血小板数5万/μl以上には102日,23日および16日を要し,最後の血小板輸血日は平均60日,12日および12日であった。回復した血球数は移植後3∼7週頃に一過性の減少を示したが,7週以降には再び増加した。晩期の造血障害として2名にITPが発生したが治療により軽快し以後全例移植後1∼48カ月を経て造血機能は安定している。小児でPBSCTが安全に行われるための最小輸注CFU-GM数は3×105/kg以上と思われた。
  • 慢性骨髄性白血病の急性転化およびPh陰性急性リンパ性白血病との比較
    岡田 定, 清水 透, 原田 浩史, 三好 保由, 森 啓, 新倉 春男, 小峰 光博, 藤田 和博, 寺田 秀夫
    1992 年 33 巻 5 号 p. 646-654
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    フィラデルフィア染色体陽性急性白血病(Ph+AL) 8例について,Ph+慢性骨髄性白血病の急性転化(BC) 13例およびPh陰性急性リンパ性白血病(Ph-ALL) 10例と臨床的,分子生物学的に比較検討した。Ph+ALの白血球数は147.9×103l(中央値)ともっとも多く,また腫瘤形成と好塩基球増加はBCのみに認められた。Ph+ALの芽球はPh-ALと同様のBリンパ系マーカーを示した。寛解時のPh残存率はPh+ALでは0∼28%, であったのに対し,BCでは100%であった。Ph+ALの4例でmajor bcr遺伝子の再構成が陰性(Mbcr-)であったが,Ph+AL4例とBC6例ではMbcr+であった。PCR法によって検索できたMbcr-の3例にminor bcr/abl mRNAを,またMbcr+の4例にはMbcr/abl mRNAが検出された。寛解率はPh+ALで63%, BCで38%, Ph-ALLで100%であり,50%生存期間はそれぞれ12カ月,5カ月,29カ月であった。結論としてPh+ALは寛解によるPhの消失ないし著減によってBCと鑑別でき,またその予後はPh-ALLに比し不良だがBCよりは良好と考えられた。
  • —初期導入療法(MP, IFNα, Steroid pulse)と維持療法(VMP, MP持続,VEP, MCNU)—
    田中 英夫, 河野 道生, 岩戸 康治, 麻奥 英毅, 田辺 修, 石川 秀明, 信吉 正治, 坂井 晃, 藏本 淳
    1992 年 33 巻 5 号 p. 655-661
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    未治療の多発性骨髄腫患者20名に対し以下のプロトコールによる治療を行った。初期導入療法:MP持続あるいはMP間欠→IFNα→steroid pulse。維持療法:(V) MP→(MP持続)→(V) EP→MCNUと,交叉耐性のないアルキル化剤を順番に投与。初期導入療法のMP療法終了時の奏効率(CR+PR)は45%, IFNα療法とsteroid pulse療法まで含めた初期導入療法終了時のそれは50%であった。50%生存期間は34カ月であった。今回のプロトコールは初期にMP療法により骨髄腫細胞を減少させ,それに続くIFNα療法によりさらに骨髄腫細胞を減少させることをめざした。一部の症例で経時的に骨髄腫細胞の3H-TdR uptake測定をし,治療中の増殖能の抑制を実際に確認できた。またM蛋白量からみるとこの維持療法により初期導入療法の成績をほぼ維持でき,50%寛解持続期間は22カ月であった。このように骨髄腫細胞の増殖能を視点に入れて治療法を考えることは重要と考える。
  • 森 正光, 阿部 敬, 武井 崇, 柴田 香織
    1992 年 33 巻 5 号 p. 662-665
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    未治療の多発性骨髄腫患者(MM) 10例の骨髄塗抹標本を検討し,7例に骨髄異形成の所見を認めた。そのうち5例は貧血のみを,ほかの2例は貧血と白血球減少を認めた。おのおのの症例の異形成を認める細胞の頻度は骨髄異形成症候群(MDS)より少なかったが,MDSにおけると同様に多系統にわたって異形成が認められた。異形成の所見は治療効果の有無に関わらず継続して認められた。詳細にMMの骨髄塗抹標本を検討することにより,多くの症例に異形成の所見を認めたことから,これまで,MMにおける異形成の所見の多くは見すごされていたと考えられた。以上より,MMがリンパ球系以外にも異形成を起こし得る病態であることから,これらの症例をMMとMDSの同時合併と考えるより,MMが幹細胞レベルの異常に関連していると推察された。
症例
  • 芦原 英司, 大川 克則, 後藤 秀夫, 奥 成聡, 稲葉 亨, 村頭 智, 伊藤 邦彦, 藤田 直久, 島崎 千尋, 西尾 晃, 中川 雅 ...
    1992 年 33 巻 5 号 p. 666-670
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳の男性で,発熱と歯肉出血を主訴として当科へ入院。末梢白血球13,300/μl中80.5%に,骨髄有核細胞102×104l中86.4%に前骨髄球を認め,Auer小体を有する前骨髄球レベルより分化した異常好中球が散見された。急性前骨髄球性白血病(APL)の診断のもとBHAC-DMP療法を施行したが,血球減少後,前骨髄球の再増加と共にAuer小体陽性の異常好中球が末梢血へ出現し,前骨髄球の分化傾向を認めた。ビタミンD3による分化誘導療法は無効で,BHAC-AMP療法により前骨髄球および異常好中球は消失し完全寛解となった。本例は初診時よりAuer小体陽性の異常好中球を認め,化学療法によりその分化傾向が促進されたと考えられる。本例よりAPLの病態の特殊性が伺われ,今後さらに症例の蓄積とこのような症例に対する治療を含めて検討が必要と思われ報告した。
  • 橋本 真一郎, 川野 英一郎, 平澤 晃, 森尾 聡子, 青墳 信之, 中村 博敏, 王 伯銘, 伊藤 国明, 浅井 隆善, 吉田 尚, 田 ...
    1992 年 33 巻 5 号 p. 671-676
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    悪性リンパ腫寛解後に多発性骨髄腫を合併したまれな症例を経験した。症例は75歳男性。1986年2月に右頸部腫瘤を主訴に当院入院。同部の生検で,悪性リンパ腫(diffuse, large cell: LSG分類,免疫染色はpan B, lgG, κで陽性)と診断した。骨髄浸潤は認めず,形質細胞も0.2%であった。臨床病期IIAで,CHOP療法開始し,完全寛解に達した。1988年10月23日左足皮下腫瘍のため,再入院した。鼠蹊リンパ節腫張あり,生検施行したが,悪性リンパ腫の再発は認められなかった。免疫電気泳動で,lgA-κ typeのM蛋白を認め,骨髄穿刺を施行したところ,形質細胞が76.8%を占め,多発性骨髄腫と診断した。化学療法を開始し,1991年4月現在外来通院加療中であるが,リンパ腫の再発はみられていない。両悪性腫瘍の関連は不明であるが,3年間の間にBリンパ球由来の2種類の異なる悪性腫瘍を発症し,興味あるまれな症例と考えられる。
  • 日野 研一郎, 佐藤 聖哲, 上野 秀之, 秋本 佳久, 坂下 暁子, 友安 茂, 望月 照次, 神野 一郎, 鶴岡 延熹
    1992 年 33 巻 5 号 p. 677-682
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は64歳男性。発熱と四肢の筋力低下を主訴として入院した。末梢血所見では白血球数10,300/μl, 単球32%, 赤血球数195万/μl, 血色素7.9 g/dl, 血小板数12.8万/μl, 3系統のdysplasia, 著明な血小板凝集がスメア上に観察された。骨髄は正形成,幼若型を含む単球系細胞が25.7%認められた。単球系細胞はペルオキシダーゼ,エステラーゼ二重染色陽性であり,慢性骨髄単球性白血病と診断した。染色体分析で46, XY, -7, +der (1) t(1;7)(11p;11p)がみられた。また血漿クリオフィブリノーゲン陽性,フィブリノーゲン高値,トロンボエラストグラムで凝固亢進が認められた。患者精製クリオフィブリノーゲンは4°C, 25°Cで正常者血小板の凝集を促進させた。経過中,プレドニゾロン,VP16により単球系細胞の減少とともに四肢筋力の回復,クリオフィブリノーゲン陰性化がみられたが,診断後9カ月目にDIC, 肺炎,肺化膿症,敗血症で死亡した。
  • 河野 文夫, 西田 健朗, 栗崎 寛治, 塚本 敦子, 佐藤 昌彦, 眞田 功, 紫藤 忠博, 小畑 伸一郎, 木村 圭志, 佐々木 康雄, ...
    1992 年 33 巻 5 号 p. 683-687
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    イソスポーラ・ベリ感染を合併したATL症例を報告する。患者は65歳の男性で水様便を主訴とし,平成2年12月に当院に入院した。入院時現症では,リンパ節腫大,肝脾腫はなかった。白血球数5,500/μlで,10%が異常リンパ球であった。末梢血ATL細胞の表面マーカーはフローサイトメトリーによるtwo color analysisによりTac+, CD4+, CD8+を示した。抗HTLV-1抗体陽性,末梢血リンパ球のDNA解析でHTLV-1 proviral DNAのモノクローナルバンドが証明され,慢性型ATLと診断された。その後,イソスポーラ・ベリ感染が診断され,ST合剤の投与で下痢は消失した。現在まで本邦でイソスポーラ・ベリ感染を伴ったリンパ増殖性疾患の報告は,5例のATL症例を含めて9例である。これらの報告の内容を検討すると残りの4例もATLの可能性が強く,9例ともにATLであったと思われた。
  • 吉本 静雄, 竹内 誠, 多田 敦彦, 田口 博國, 真鍋 俊明
    1992 年 33 巻 5 号 p. 688-693
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳の男性。胃癌にて胃全摘,脾切除を受けてから11年後に貧血を指摘され,鉄剤,Vit剤(B1, B2, C)の投与を受けていたが改善しないため入院。RBC: 136×104l, Hb: 5.3 g/dl, Ht: 16%, と高度の大球性貧血とともに著明なleukoerythroblastosis (WBC: 11200/μl (Pro: 1%, Myl: 6%, Met: 4.5%), Ebl: 421/100 WBC)を認めた。骨髄は赤芽球系の過形成を呈し,ringed sideroblast: 15%を認めたが,巨赤芽球性変化は軽度であった。Vit B12は44 pg/mlと著減し,抗内因子抗体,抗壁細胞抗体が陽性であった。直ちにCH3-B12の投与を開始したところ貧血は急速に改善し,leukoerythroblastosisとringed sideroblastも2週後に消失した。胃切除後Vit B12欠乏性貧血は初診時に著明なleukoerythroblastosisを呈することはまれであり,ringed sideroblastは認められないといわれている。本症例はVit B12欠乏性貧血としてはきわめてまれな血液所見を呈したが,その原因として摘脾の関与が示唆される。
  • 鵜池 直邦, 山下 早百合, 小浜 浩介, 高比良 宏之, 中井 浩之, 稲沢 譲治, 梅村 創, 赤司 浩一, 小鶴 三男
    1992 年 33 巻 5 号 p. 694-699
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    36歳女性。1989年2月脾腫と出血傾向で発症。WBC 55,500/μl(blast 30%で白血病裂口なし),Hb 14.1 g/dl, Plt 0.7×104lでNAP scoreは29と低値であった。骨髄は骨髄系過形成で異形成はなく核型は46, XX, BCR (-), BCR/ABLメッセージ(-)。Ph1 (-) BCR (-) CMLと診断,VCR+6MPでの治療で約7カ月間慢性の経過をとったが1990年3月には46, XX, i(17q)なる異常核型が100%まで増加し治療抵抗性となり6月死亡した。本症例はBCR (-)に加えBCR/ABLメッセージも(-)でありPh1 (-) BCR (+) CMLと確実に鑑別し得た。i(17q)は17番染色体短腕(17q13にはp53癌抑制遺伝子が存在)のモノソミーと長腕(17q11.2-12にはG-CSF遺伝子が存在)のトリソミーを結果する。急転時の腫瘍細胞において,DNAレベルでp53遺伝子の片方のallelic lossを認めたがG-CSFが細胞増殖にautocrine factorとして作用している証拠は得られなかった。Ph1 (-) BCR (-) CMLにおいてもi(17q)は腫瘍の発生ではなくその進展に関わっていると思われた。
  • 坂野 章吾, 仁田 正和, 脇田 充史, 岩木 理, 高田 勝利, 御供 泰治, 山本 正彦, 森田 明理, 辻 卓夫, 国松 己歳, 佐々 ...
    1992 年 33 巻 5 号 p. 700-705
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    不応性貧血と診断されていた46歳,男性が高熱と大腿部の潰瘍を伴う浸出性紅斑で入院した。末梢血はWBC 31,500/μl(好中球90%)の白血球増加,Hb 8.6 g/dlの貧血を認めた。抗生剤の投与にもかかわらず皮膚潰瘍は壊死を伴い大腿部に拡大した。皮膚病変は無菌的で組織は真皮に好中球浸潤を認めた。副腎皮質ステロイド剤の投与により解熱し皮膚病変も改善した。減量に伴い他部位に結節,紅斑ができ再発したがステロイド剤の増量により軽快した。臨床的にはSweet症候群と壊疽性膿皮症の両方の要素をもつ皮膚病変であった。好中球機能(好中球遊走能,O2-産生能)の低下をはじめ免疫能の低下を示した。本例における皮膚病変はneutropilic dermatosis of MDSとしてとらえることができ,これらの皮膚病変にはステロイド剤が著効する。
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