臨床血液
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33 巻, 6 号
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第33回総会
シンポジウムIV
プロテインCとプロテインS—基礎と臨床
  • —プロテインSとC4bp結合蛋白質の構造と機能について—
    鈴木 宏治
    1992 年 33 巻 6 号 p. 741-744
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    プロテインC制御系は,血管内凝固制御にもっとも重要な反応系であり,この制御系に異常をきたすプロテインC欠乏症およびプロテインS欠乏症は高頻度に血栓塞栓症を招来する。プロテインC凝固制御系は,プロテインCが血管内皮細胞膜蛋白質のトロンボモジュリンとトロンビンの複合体によって活性化され,開始される。活性化プロテインC (APC)による凝固Va因子およびVIIIa因子の分解・失活化反応には,プロテインS (PS)が補酵素として不可欠である。PSは血小板や内皮細胞上のAPCのレセプターとなり,またAPCのVa因子/VIIIa因子分解速度を高める。他方,PSの活性は補体系制御因子のC4b結合蛋白質(C4bp)によって阻害される。本稿では,主にプロテインSとC4bpの構造と機能についてわれわれの研究成果とともに最近の知見を紹介する。
  • 石井 秀美, 堀江 修一, 風間 睦美
    1992 年 33 巻 6 号 p. 745-749
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    トロンボモジュリン(TM)のプロテインC (ProC)活性化における補酵素作用は,内皮細胞膜を構成しているリン脂質によって大きく影響を受けていると考えられているが,TMの機能をリン脂質組成やその特異性の点から詳細に検討した報告はない。本研究では,ホスファチジルエタノールアミン(PE)によってTMのProC活性化に対する補酵素作用が著しく促進し,そのPEを構成する脂肪酸としては不飽和度の高い脂肪酸に活性化促進作用の大きいことが明らかになった。PEによるProC活性化促進作用はTMあるいはProCとPEとの結合性の増大に依存していた。内皮細胞が外的刺激を受けたときPEの局在性が変化し,そのPEによってTM-トロンビン-ProC活性化系が著しく促進する可能性が考えられた。
  • 山本 晃士, 松下 正
    1992 年 33 巻 6 号 p. 750-755
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    先天性プロテインC欠乏症の2家系においてプロテインC遺伝子の解析を行い,それぞれの第9エクソン内に一塩基欠損および一塩基置換を同定した。第一の患者では,一塩基欠損がアミノ酸コドンのフレームシフトを起こして381番のグリシンからのアミノ酸配列が変化し,81個の異常なアミノ酸が付加されて正常よりも分子量の大きいプロテインCが生成されていると予想された。第二の患者では,ほかのセリン・プロテアーゼでもよく保存されている292番のグリシンがセリンに置換しており,この一アミノ酸置換がプロテインC欠乏の病因と考えられた。さらに培養細胞を使ってこの2つの異常プロテインCの発現実験を行った。また,プロテインC遺伝子のエクソン内に4つの遺伝子多型部位(Sequence polymorphism)を発見し,これを利用して先天性プロテインC欠乏症家系において家系内診断(正常者と欠乏者の鑑別)を行った。
  • —病態との関連について—
    小林 勲, 浜岡 里美
    1992 年 33 巻 6 号 p. 756-762
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    後天性プロテインC, プロテインS欠乏症として後天性血栓嗜好症(糖尿病,SLE, PNH, 原発性血小板血症,ネフローゼ症候群,慢性腎不全血液透析,肺炎,肺癌,L-Asparaginase投与,妊娠,経口避妊薬投与)および,その他の疾患(経口抗凝血薬投与,肝硬変,劇症肝炎,DIC, 臍帯血,体外循環)のプロテインC, Sの活性,抗原量,C4b結合蛋白と他の分子マーカー(TAT, PIC, D-dimer)を測定し,病態を検討した。後天性血栓嗜好症ではL-Asparaginase投与でプロテインC, S欠乏を,糖尿病,ネフローゼ症候群,PNH, 肺癌,妊娠,避妊薬投与によりプロテインS欠乏を認め,分子マーカーの上昇と合わせて過凝固状態が示唆された。その他の疾患ではプロテインC, プロテインS両者の欠乏がみられた。後天性プロテインC欠乏は産生障害と消費のバランスにより生ずるが,プロテインS欠乏はそれ以外にC4b結合蛋白,血糖,性ホルモンなどが関与していた。
  • ex vivoでの抗血栓性および医用素材への応用—
    丸山 芳一, 副島 安子, 明石 満, 丸山 征郎
    1992 年 33 巻 6 号 p. 763-766
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    Thrombomodulin (TM)は血管内皮細胞上のトロンビンレセプターであり,トロンビンを抗凝固因子へと変換させる。TMと結合したトロンビンはプロテインC (PC)を活性化し活性化PCはAT IIIによって失活されないVa, V IIIaを失活させる。このTMは今回クローニングされたcDNAからrecombinantヒトTM (rTM)として合成された。このrTMのex vivoでの抗血栓性の検討およびglass beadsに固相化することにより,医用素材への応用を試みた。微小フィブリン塊の懸濁液を用いてAT III-ヘパリンの抗トロンビン活性をclotting timeにて比較したがモル比でrTMはAT III(+5単位ヘパリン)の約12倍の抗トロンビン活性を示した。また,rTM固相化glass beads 0.1 μg/μl存在下では部分トロンボプラスチン時間は152秒(コントロール112秒)で約35%延長した。トロンビン血小板凝集率は2.9 μg/mlで70%, 8.8 μg/mlで50%(コントロール80%)とトロンビン血小板凝集も抑制した。これらの抑制はrTMの濃度に依存した。以上よりrTMはex vivoでも抗血栓作用を有し,固相化することによって医用素材への応用が期待される。
  • 岡嶋 研二, 古賀 震
    1992 年 33 巻 6 号 p. 767-769
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    重要な抗凝固物質である活性型PC (APC)の過凝固状態および微小循環障害に対する治療薬剤としての有用性を検討した。
    ラットの腸間膜の細動脈壁を機械的に傷害した際に形成される微小血栓や,活性化白血球が病態形成に関与すると考えられているカラゲニン足浮腫およびラット水浸拘束潰瘍に対してAPCはこれらを著明に軽減した。ラットにAPCを投与後,凝固時間(APTT)は軽度の延長を示したが,抗PC抗体を共存させると,抗体非存在下で認められたAPTTの軽度の延長は有意に抑制された。健常人にAPCを投与しても,出血症状や血漿VおよびVIII因子の減少は認められなかった。ヘパリンが無効であったDIC症例にPCおよびAPCは出血を惹起することなく,過凝固状態を著明に改善した。著明な消化管出血を認めるDIC症例にAPCを投与すると,出血傾向の改善とともに,過凝固状態を改善した。これらの事実は,APCが凝固能を低下させずにDICにおける過凝固状態や組織傷害を軽減させる可能性を示す。
臨床研究
  • —自験6例の臨床病理学的検討—
    渋谷 彰, 村木 靖, 佐藤 祐二, 小林 敏貴, 小島 寛, 長沢 俊郎, 阿部 帥, 富山 順治, 工藤 秀樹, 足立 山夫, 森 尚義
    1992 年 33 巻 6 号 p. 770-775
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    6例のmantle zone lymphoma (MZL)につき臨床病理学的検討を行った。年齢は41歳から71歳(中央値62歳)で男子3例,女子3例だった。表在リンパ節腫脹を認めたものは2例のみだったが腸間膜や鼠径部などの巨大なリンパ節腫脹を4例に認め,5例に骨髄浸潤を認めた。臨床検査成績ではIgM κ型のM蛋白を2例に認め,そのうちの1例ではIgGのpolyclonalの高値も認めた。免疫組織学的検索ではLN-1-∼+, LN-2+∼++, sIgM+, sIgD+, CALLA±∼+, DRC-1+∼++であり,small lymphocytic lymphomaやfollicular lymphomaの表面形質に類似していた。6例中完全寛解に達したのは1例のみだったが,化学療法後の肺炎,癌で死亡した2例を除いて4∼100カ月現在生存していた。MZLは巨大なリンパ節腫脹と骨髄浸潤を認めるものが多く治療に反応が悪いが緩慢な経過をとるlow grade non-Hodgkin lymphomaと考えられた。
  • 海渡 健, 西脇 嘉一, 増岡 秀一, 島田 貴, 吉田 真弓, 落合 成正, 片山 俊男, 小林 正之, 斉藤 篤, 渡邊 禮次郎, 酒井 ...
    1992 年 33 巻 6 号 p. 776-782
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド抵抗性,依存性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者に対してα interferon (IFN) 300万単位連日12日間皮下投与を行いIFN療法の有用性につき検討した。9例の患者に合計13回行った結果,血小板数は平均1.39万から10.9万に増加し,PAIgGは151.7 ngから59.7 ngまで有意に低下,血小板が最高値に達するまでの期間は10日∼42日,平均19.1日であった。完全寛解は13回中3回(23.1%), 部分寛解は8回(61.5%)で,完全寛解例の一例は治療終了後20カ月以上無治療にて寛解を維持しているが,もう一例には維持療法が必要であった。部分寛解症例では効果はすべて一過性であったが臨床上問題となるような副作用はみられなかった。血小板数の変化量と,PAIgG値,血清IgG値の変動との間には負の相関が認められたことから,IFNの作用機序として自己抗体産生の抑制が考えられた。以上より難治性のITP患者に対してIFN療法は有用で安全な治療方法であると考えられた。
  • 福島 幸隆, 三浦 亮
    1992 年 33 巻 6 号 p. 783-790
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    われわれはpure erythrocytosis (PE)とストレス多血症(SP)の診断基準を設定し,5年以上の臨床経過を有する各4例について相違点の有無を検討した。循環赤血球量はSP群よりPE群に多いが,有意差はなかった。しかし,循環赤血球量の実測値と予測値の比較では,SP群で有意差はないが,PE群では実測値が有意に高値であった(p<0.01)。検査成績では,赤血球数,Hb, Hct, 網状赤血球数,骨髄像のM/E比,NAPの陽性率とscore, 骨髄CFU-E数に有意差なく,血清EPO値がPE群はSP群に比し有意に低下していた(p<0.01)。臨床経過では両群ともに入院するとHctは直線的に下がったが,外来ではPE群2例,SP群1例で持続的赤血球増加を呈していた。両群ともに,血管障害性病変の合併はなかった。以上のことより,両者に大きな相違点はなく,内因性赤芽球系幹細胞のないPEはSPと変わらない臨床経過をとると考えられる。
  • 坂入 和豊, 宮地 勇人, 田中 由美子, 川田 勉, 権藤 和美, 矢部 普正, 矢部 みはる, 加藤 俊一, 安藤 泰彦
    1992 年 33 巻 6 号 p. 791-795
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    骨髄移植に際し,骨髄抑制から生着または造血回復を早期に知ることは適切な患者管理において重要である。われわれは,同種骨髄移植患者8例において網赤血球の蛍光強度分画比の変動を網赤血球自動測定装置Sysmex R-1000にて検索した。RNA含有量の多い,つまり未熟な網赤血球の分画を示すhigh fluorescence ratio (HFR)または,成熟度の指標となるmaturation index (MI)の変動は,白血球,好中球や網赤血球の変動と比較した。HFRおよびMIによる生着の基準は,それぞれ5%, 15%と設定できた。HFR(13.5±2.4日)とMI(13.1±2.9日)による生着確認日は,有意差をもって好中球(17.1±3.2日)(P<0.05)や網赤血球(20.4±6.2日)(P<0.01)より早期であった。骨髄移植において網赤血球成熟度は,生着または造血回復の早期の指標となりうると考えられた。
  • 岡本 隆弘, 田村 周, 宮崎 栄二, 藤盛 好啓, 井上 信正, 武元 良整, 神前 昌敏, 金丸 昭久, 垣下 榮三, 永井 清保, 甲 ...
    1992 年 33 巻 6 号 p. 796-800
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    骨髄移植患者7人からBusulphan (BU)を含む前処置施行中,血液および髄液を採取しそれぞれのBU濃度をガスクロマトグラフを用いて測定し,嘔吐や移植後経過との関係を検討した。嘔吐が頻回の患者の血中BU濃度は,嘔吐の少ない患者の血中濃度より低い傾向にあり,嘔吐は血中BU濃度のピーク値を低下させると考えられた。一方,BU服用6時間後の血中troughレベルでは,BU濃度が500 ng/ml前後に一定に推移し,嘔吐による影響はピーク値に比べあまり認められなかった。髄液BU濃度は,同時に採取された血中濃度とほぼ同じ値を示し,髄液/血漿の平均値は1.06であった。veno-occulusive disease (VOD)は1例もなく,移植片の拒絶は骨髄線維症を合併した1例に認められたが,血中BU濃度でみる限りBUの前処置が拒絶の原因となるものではないと考えられた。
症例
  • 井上 文彦, 三宅 直樹, 山岨 道彦, 大野 辰治, 高松 輝行, 岡田 隆道, 水本 孝, 古川 裕夫, 坂 洋一, 青木 弥寿弘
    1992 年 33 巻 6 号 p. 801-805
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は49歳男性,発熱,黄疸で近医入院,急速に貧血,呼吸困難が進行するため本院へ転院。結膜に貧血,黄疸あり,両肺野に湿性ラ音聴取,肝脾腫なし。検査でHb 4.6g/dl, Ht 13.9%, Ret 11.5%, 塗抹標本で赤血球凝集,球状赤血球を認めた。総ビ2.1 mg/dl, LDH 1,347 U(1型上昇),フェリチン1,223.2 ng/ml, ハプトグロビン38 mg/dl。胸部レ線上,両肺野にびまん性細粒状陰影あり。また,直接・間接クームス試験陽性,寒冷凝集反応2,048倍(抗I特異性),マイコプラズマ抗体640倍,抗グロブリン試験は,広範囲IgおよびC3で陽性,抗IgGで陰性であった。マイコプラズマ肺炎に合併した自己免疫性溶血性貧血と診断,保温に努めミノサイクリンとステロイド剤の併用にて肺炎像は消失,貧血も改善した。当時の気温の検討により,溶血には寒冷曝露が強く関与したと考えられた。
  • 張替 秀郎, 野村 順, 古山 和道, 宍戸 友明, 奥田 光崇, 佐藤 彰宜, 菅原 知広, 遠藤 一靖, 吉永 馨, 一迫 玲, 玉手 ...
    1992 年 33 巻 6 号 p. 806-810
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    今回われわれは肋骨の髄外腫瘤にて発症した慢性骨髄性白血病単芽球性急性転化の1例を経験したので報告する。症例は63歳,女性で1984年にCMLと診断され,1986年から古川市立病院にてブスルファンの投与を受けていた。1990年2月胸部腫瘤にて同院入院,生検にてCMLの髄外性急性転化と診断された。この時点での骨髄標本で芽球は4.6%であった。入院後化学療法を受けたが効果なく当院放射線科に3月5日転科したが3月16日死亡した。転科時骨髄は採取不能で末梢血中に出現していた芽球を検討したところ,ペルオキシダーゼ染色陰性,ナフチルブチレートエステラーゼ陽性で表面マーカーではCD13, CD33が陽性であった。さらに芽球は貪食能を有していた。染色体分析ではフィラデルフィア染色体(Ph1)陽性で付加的異常を認め腫瘍細胞のサザンブロット法によるDNA分析ではBCR再構成を認めた。以上より本症例は慢性骨髄性白血病単芽球性髄外性急性転化のまれな1例と考えられた。
  • —治療効果の確認—
    八木澤 雅子, 壹岐 聖子, 三谷 絹子, 大林 由明, 佐藤 宏, 浦部 晶夫
    1992 年 33 巻 6 号 p. 811-816
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    骨髄cellularityの検索におけるMRIの有用性を検討する目的で,antithymocyte globulin (ATG)が奏効した再生不良性貧血の2症例に対し,治療前後で腰椎のMRIを施行し,骨髄MRIの変化を評価した。症例1は25歳の特発性の再生不良性貧血で,発症6カ月後にATG療法を開始した。治療1カ月後に末梢血所見および骨髄所見が回復し,MRI上でも正常な骨髄像に回復しているのが認められた。症例2は78歳の薬剤性の再生不良性貧血で,発症4カ月後にATG療法を開始した。治療3カ月後より末梢血所見が回復し始め,5カ月後には骨髄およびMRI上で年齢相応の骨髄像に回復しているのが認められた。症例2では末梢血所見がさらに回復した7カ月後のMRIで,椎体辺縁に造血巣がさらに回復していることが確かめられた。MRIは再生不良性貧血の治療効果を評価する上で有効な画像診断法と思われた。
  • 尾崎 修治, 河内 康憲, 井垣 俊郎, 小笠原 望, 内田 立身, 森 将晏, 薛 昭亮, 待井 隆志
    1992 年 33 巻 6 号 p. 817-822
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は54歳,男性。1986年10月よりリンパ球増多(WBC 15,700/μlうち核小体明瞭なリンパ球様細胞76%)があり,1990年9月呼吸困難にて入院した。頚部,腋窩に紅斑があり,リンパ節腫,肝脾腫,胸部X線上,両側に胸水を認めた。白血球数は232,900/μlうち99%が核小体を有するリンパ球様細胞であった。表面形質はCD2+, CD3-, CD4+, CD7+, CD8-。Southern blot法にてT細胞受容体β鎖遺伝子のmonoclonalな再構成を認めた。皮膚生検にて,MT1陽性の細胞浸潤あり。腋窩リンパ節生検は,T細胞型のびまん性中細胞型悪性リンパ腫の像を呈した。抗human T-cell lymphotropic virus type 1 (HTLV-1)抗体とHTLV-1 proviral DNAは陰性であり,T-cell prolymphocytic leukemia (T-PLL)と診断した。化学療法を施行し,皮疹,リンパ節腫,肝脾腫,胸水は消失したが,prolymphocyteは910,000/μlに増加し,1991年7月脳出血にて死亡した。本例は,5年間の経過を観察し得たT-PLLと考えられた。
  • 嶋崎 明美, 吉本 健朗, 巽 英二, 米田 規子, 山口 延男
    1992 年 33 巻 6 号 p. 823-828
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    77歳男性が急性上気道炎のためNFLXを服用後,全身紅斑を呈し,ステロイドで軽快せず入院,Stevens-Johnson症候群と診断された。末梢白血球数は115,400/μlと著増,リンパ(Ly)球61%(異型Ly球39.5%),好中球34.5%であった。骨髄は過形成で異型Ly球と好酸球が増加していた。軽度の肝腎障害,LDH高値,IgE値上昇を認めた。病因と考えられるウイルス抗体価の上昇を認めず,Ly球亜群は,CD3 82%, CD4 39%, CD8 43%, 4/8比0.9であった。服薬中止により諸症状は改善し,約3週間で検査所見も正常化して退院した。Ly球刺激試験でNFLXが陽性を示した。薬剤アレルギーは伝染性単核球症(IM)型反応の一因であるが,増加T細胞亜群について記録は少ない。本例では,4/8比0.9と著明な低下はなく,EBV起因IMとは異なり,CD4+とCD8+の両者の細胞の活性化と増加が認められた。EBV起因IMおよび薬物起因IM型反応における反応機構の異同を考案する上に本例の記録は有意である。
  • 松永 卓也, 柵木 信男, 金子 安比古, 三比 和美, 土持 恒人, 桜井 雅温, 服部 理男, 高山 昇一郎
    1992 年 33 巻 6 号 p. 829-833
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    自己免疫疾患の経過中に非Hodgkinリンパ腫(以下NHL)を発症した6症例(B細胞性3例,T細胞性1例,非T非B細胞性1例,判定不能1例)を報告する。症例は43∼70(中央値61)歳の女性で,先行する自己免疫疾患では,慢性関節リウマチがもっとも多く,自己免疫疾患発症後NHL発症までの期間は,10∼36(中央値20)年であり,前治療で免疫抑制剤を投与されていたのは1例のみであった。多クローン性高ガンマグロブリン血症を4例に,リンパ球減少を3例に,ツベルクリン反応陰転を2例に認めた。副腎皮質ステロイドを投与されていたのは1例のみであり,免疫抑制剤が自己免疫疾患患者の悪性リンパ腫発症に寄与したとは考え難かった。
  • 富岡 匡子, 清水 弘行, 松崎 勉, 湯浅 圭一朗, 入内島 徳二, 森 昌朋, 村上 博和, 成清 卓二
    1992 年 33 巻 6 号 p. 834-837
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は59歳,女性。1991年1月,腹部膨満感を訴え,2月15日当院入院。直接Coombs試験陽性の溶血性貧血,血小板減少,脾腫を認め,Evans症候群と診断。入院第28病日よりprednisolone (PSL) 50 mg/日による治療を開始後,脾腫の縮小に伴い急激なリンパ球増加を認めた。この時点におけるリンパ球表面形質の検索によりB cellのmonoclonalな増加を,また遺伝子解析によりJH, Jκのrearrangementを認めたため慢性リンパ性白血病(CLL)と診断した。特にCLLの化学療法を施行することなく,PSLの減量に伴いリンパ球数は正常化し,脾腫も治療前の大きさに復した。PSL投与後のリンパ球増加は,脾臓から末梢血へのリンパ球の移行によると考えられた。以上,Evans症候群の診断のもとに副腎皮質ステロイド治療中,一過性のリンパ球増加を認め,CLLと診断しえた1症例を経験したので報告した。
短報
  • 武元 良整, 金丸 昭久, 垣下 榮三, 善本 知広, 中西 憲司, 東野 一彌, 富部 克彦
    1992 年 33 巻 6 号 p. 838-840
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    The authors measured the level of interleukin-6 (IL-6), endotoxin and CRP from 7 patients of documented sepsis with hematological disorders. IL-6 was higher in patients who developed septic shock, compared with patients who had only sepsis. These data revealed the importance in the level of IL-6, rather than endotoxin and CRP, in managing the patients with septic shock.
  • 大月 哲也, 西松 寛明, 水上 浩明, 槇島 誠, 大西 真由美, 木村 文彦, 元吉 和夫, 永田 直一
    1992 年 33 巻 6 号 p. 841-843
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    A 64-year-old woman was admitted for treatment of malignant lymphoma involving the pharynx and abdomen. Lymphoma disappeared after chemotherapy and radiotherapy, but she had central nervous system symptoms; euphorism, left facial nerve palsy, right hemiplesia, and disturbance of micturition. Magnetic resonance imaging (MRI) revealed a diffuse dural thicking and a subdural fluid retention. The subdural fluid was determined to be an exudate, and a biopsy of the dura mater revealed a normal dura and a fibrin clot containing lymphoma cells and neutrophils. MRI can be very useful to detect the meningeal involvement of malignant lymphoma.
  • 小野田 倉三, 高井 和江, 真田 雅好, 青木 定夫, 渡部 透
    1992 年 33 巻 6 号 p. 844-846
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    A 47-year-old male case of IgG-κ type multiple myeloma was treated with VMCP and recombinant human alpha-interferon (IFN-α2a). The direct Coombs test was positive before treatment. Hemolytic anemia associated with massive hematuria was observed during the administration of 9 million IU IFN-α2a per day for 2 weeks. The hemolytic symptoms rapidly improved after withdrawal of IFN-α2a. This clinical course suggests that IFN-α as an immunomodulator was responsible for the progression of autoimmune hemolytic anemia in a case of multiple myeloma.
  • 大月 哲也, 木村 文彦, 水上 浩明, 元吉 和夫, 永田 直一, 松浦 喜房
    1992 年 33 巻 6 号 p. 847-849
    発行日: 1992年
    公開日: 2009/04/24
    ジャーナル 認証あり
    A 70-year-old female was found to have class V cytology on an endometrial smear, and a histological diagnosis of malignant lymphoma was made by endometrial biopsy. The pathological diagnosis was malignant lymphoma, diffuse large cell-type according to the Working Formulation classification. Immunohistochemical staining showed lymphoma cells to be positive for CD 20 (B 1), indicating B cell lineage. Two cervical lymph nodes were palpable, and swelling of a para-aortic lymph node was also found by abdominal CT scan. The clinical stage was determined to be III according to the Ann Arbor classification. After three courses of CHOP chemotherapy, lymphoma cells could no longer be detected by endometrial biopsy, and the para-aortic and cervical lymphadenopathy also disappeared. Primary malignant lymphoma of the uterus, especially of the uterine body, is very rare. Only eight cases of primary malignant lymphoma of the uterine body were reported in the literature. The cell lineage was decided in only one case, which was B cell type.
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