臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
34 巻, 11 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
臨床研究
  • 佐藤 祐二, 三橋 彰一, 大谷 浩司, 鴨下 昌晴, 長谷川 雄一, 二宮 治彦, 長沢 俊郎, 阿部 帥
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1431-1437
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    低形成性MDSを再不貧と鑑別するために,PIDT1/2が120分以上を呈したMDS症例8例,再不貧症例39例について骨髄の造血細胞形態異常を観察した。形態異常の判定は赤芽球系,顆粒球系は500細胞,巨核球は20細胞を観察し,形態異常を示す細胞系列が1系統であれば1.0%以上,2系統以上であれば0.6%以上の頻度を占める場合を形態異常陽性と判定した。再不貧では39例中26例になんらかの形態異常が認められた。MDS症例と再不貧症例とを対比検討すると,3系統の異常,赤芽球と巨核球,顆粒球と巨核球の2系統の異常,顆粒球あるいは巨核球の1系統の異常は主にMDS症例にみられた。赤芽球系単独の異常,特に核の分葉はMDS診断上の価値は低いものと思われた。これらの成績は低形成性MDSと再不貧の鑑別上価値ある所見と考えられた。
  • 権藤 久司, 原田 実根, 峰松 俊夫, 赤司 浩一, 林 真, 谷口 修一, 山崎 和夫, 渋谷 恒文, 高松 泰, 衛藤 徹也, 長藤 ...
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1438-1444
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    同種骨髄移植後に合併した胸部異常陰影の鑑別診断におけるサイトメガロウイルス(CMV)抗原検索の有用性について検討した。移植後9日より495日の間に出現し,診断が確定した胸部異常陰影の9エピソード(7症例)を対象とした。CMV抗原検索はCMVの前初期抗原を認識するモノクローナル抗体(HRP-C7)を用いた直接免疫ペルオキシダーゼ法により行った。胸部異常陰影は病因微生物検査や臨床経過よりCMV肺炎,カリニ肺炎,アデノウイルス肺炎,細菌性肺炎,真菌・細菌性肺炎,特発性間質性肺炎,急性GVHDに伴うcapillary leak syndromeと診断した。胸部異常陰影出現時のCMV抗原血症はCMV肺炎の2症例にのみ陽性で,いずれも10/50,000白血球数以上の陽性細胞を認めた。検査結果は24時間以内に得られた。ほかの疾患ではCMV抗原血症は陰性であった。CMV抗原血症検査は胸部異常陰影とCMV感染との関連を知り,治療方針の決定をする上で有用と考えられた。
  • 山本 隆, 木下 智弘, 宮田 曠
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1445-1451
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    小児の特発性血小板減少性紫斑病患児73例を臨床経過から,group A: 発症後,6週間以内に治癒した34例。group B: 発症後,血小板減少が6週間以上持続したが,6カ月以内に治癒した10例。group C: 発症後,6カ月以後にも再燃あるいは血小板減少が持続した30例。の3 groupに分類し,おのおのの治療方法と臨床病態との関係を検討した。発症時にgroup Aの82%, group Bの56%で先行感染が確認でき,臨床症状ではgroup Cに比べてgroup A, group Bの患児に鼻出血や粘膜出血斑が多くみられた。ステロイド剤投与や大量ガンマグロブリン療法などの積極的な治療によってgroup A, group Bでは一時的に急速な血小板数の増加効果を認めたが,治療開始10日目以後から再び血小板減少を認める症例が多く,かえって無治療例に比べて血小板減少が遷延した。以上から,積極的な治療は病初期の急速な血小板増加が期待できるものの,治療による経過の修飾が危惧された。血小板数が10×104l以上に増加した時点でのPlatelet associated IgG値はgroup Cが有意に高値を持続していた。
症例
  • 藤原 俊文, 高木 省治郎, 齊藤 智彦, 植木 彰
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1452-1457
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性発症の脱髄性末梢神経障害を呈した原発性マクログロブリン血症(WM) IgMκ型の1例を報告した。49歳,女性。血液過粘稠による意識消失発作にて発症,FCOP療法により意識消失発作消失,M蛋白,血液粘稠度の低下をみたが,同時期より急速に四肢末梢に筋力低下,筋萎縮が出現してきた。知覚障害はなかった。ビンクリスチンの投与を中止したが症状は進行した。神経伝達速度は運動,知覚神経ともに著明に低下していた。腓腹神経生検では有髄神経繊維密度の低下,onion bulb形成を認め,脱髄性変化を主とするWM neuropathyに合致していたが,髄鞘にはIgMの沈着はなく,また血清IgMの抗MAG活性は陰性であった。筋力は血漿交換療法直後より改善し正常化したが,神経伝導速度は不変であった。WM neuropathyはその多くは緩徐進行性の経過をとり本例のごとく運動障害主体でかつ急速な進展を示し,症状の回復した例は極めてまれである。
  • 森 啓, 高橋 直樹, 多田 淳一, 樋口 敬和, 清水 透, 原田 浩史, 前田 剛, 三好 保由, 岡田 定, 新倉 春男, 小峰 光博 ...
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1458-1463
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例78歳女性:平成3年2月に汎血球減少を指摘された。骨髄は正形成でblast 11.7%, 巨核球に異形成あり骨髄異形成症候群のRAEBと診断される。輸血とubenimexを投与したが7月に急性白血病に移行した。同年10月に入院。Hb 8.0g/dl, Plt 2.1万/μl, WBC 38,900 (blast 93%), 骨髄は過形成でblast 74%, 光顕MPO(-), 電顕MPO(+), CD13 42.6%陽性でFABのM0に対応した。染色体は,46 XX, t(9;22)(q34;q11)のPh1染色体が分析細胞中3/3に陽性で,Southern blot法でいわゆるbcr再構成がみられ,RT-PCR法でmajor bcr messenger RNAが検出された。輸血とmethylprednisoloneによりblastの減少とPh1染色体も1/12に減少を認めたが肺炎のために12月に死亡した。これまでにMDSにおけるPh1染色体陽性の報告は11例ある。Ph1染色体陽性急性白血病は幹細胞レベルでの変異に基づく不均質な疾患であることが示唆される。
  • 和気 敦, 山崎 嘉宏, 小川 亮介, 森 直樹, 永田 一彦, 塚田 順一, 中田 浩一, 三砂 將裕, 和泉 洋一郎, 藤田 一之, 織 ...
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1464-1469
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    ranimustine (MCNU)にて寛解が得られたprolymphocytic leukemia (PLL)の1例を経験したので報告する。症例は66歳女性。リンパ球増多(31,050/μl)と貧血,脾腫を認め,リンパ球の88.5%は核の中心に核小体を有し,細胞表面マーカーはCD19, CD20, FMC7陽性で免疫グロブリン遺伝子再構成を認めB-PLLと診断した。染色体分析は48, XX, +3, +18とhyperdiploidだった。α-interferon無効のためMCNU 100mg投与を3クール施行したところ白血球増多は著明に改善し,prolymphocytes, 脾腫も消失し,完全寛解となった。その後無治療で約1年後再発をみたが,再発後もMCNU再投与にて完全寛解中である。MCNUは一般に予後不良といわれる本疾患において今後試みる価値のある治療法と考えられる。また再発時本例は,系統的リンパ節腫大,IgM-λ typeのM蛋白血症およびCD11b, CD13, CD25など初診時認められなかった表面形質の発現が認められ,興味ある症例と考えられた。
  • 加納 正, 加藤 久宗, 和泉 俊明, 辻 将公, 大熊 稔
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1470-1473
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    腎に発生した髄外性形質細胞腫はまれである。今日までに11例の報告がある。最近第12例目を経験した。これは京大病院で診察された第3例目である。文献を検索した。43歳男性例で,IgG-λを産生する頚椎の孤立性形質細胞腫が脊髄を圧迫したことによる四肢麻痺のため入院した。腫瘍剔出に次いで放射線療法と化学療法が行われた。2年後には,胸椎,左鎖骨,後頭部と新しい腫瘍病変が次々と発生した。Bence Jones (λ)蛋白陽性であったが,血清中にIgG (λ)型M成分を認めなかった。髄外病変を検索するため,Ga-67シンチを施行し,著しい集積像を示す腹腔内腫瘍が発見された。CTにより右腎腫瘍(73 cm×53mm)と数個のリンパ節腫大と判明した。右腎の超音波検査でも水腎症を伴う腫瘤であり,RIレノグラムでは右腎の排泄遅延を認めた。尿沈渣中には骨髄腫細胞の集簇像が繰返し観察された。かくして腎形質細胞腫と診断した。放射線療法単独で十分な効果が得られた。
  • 小林 昭一, 山本 敏晴, 秋葉 千代美, 片山 典子, 坂井 慶子, 山口 正直, 丸田 壱郎, 小川 浩司, 藤沢 信, 酒井 リカ, ...
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1474-1479
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    May-Giemsa染色上形態学的に好中球と考えられる細胞の66.5%がNaFにより阻害される非特異性エステラーゼ染色陽性であったRAEB in Tの1例を経験した。症例は34歳,男性。1992年11月10日腰痛,貧血にて当センター入院となった。末梢血ではヘモグロビン9.2g/dlと中等度の貧血を認めた。白血球数は13,500/μlで,そのうち芽球が33%を占め,単球数は3,400/μlであった。骨髄は過形成で芽球が21.8%を占めていた。末梢血の細胞化学的染色では,好中球様細胞はperoxidase染色陽性率4.0%, alkaline phosphatase染色陽性率75.0%であった。末梢血の免疫細胞化学的染色による好中球様細胞の表面マーカー検索では,単球には表出されず顆粒球の細胞上に表出されるCD16, CD24の陽性率がそれぞれ94.5%, 91.0%であり,また一般的に成熟顆粒球には表出されず単球の細胞上に表出されるCD14, CD33, CD36, HLA-DRの陽性率はそれぞれ52.5%, 39.0%, 16.5%, 17.0%であった。以上の結果より本症例の好中球様細胞は,単球の性格を合わせもつ好中球と考えられた。骨髄異形成症候群は多能性幹細胞のレベルの異常であり,腫瘍性変化に伴う分化過程の異常としてこのような好中球が出現する可能性は考えられるが,実際の報告例はきわめて少なく貴重な症例と思われる。
  • 佐伯 明子, 海渡 健, 小林 正之, 西脇 嘉一, 増岡 秀一, 島田 貴, 吉田 真弓, 落合 成正, 酒井 紀
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1480-1485
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    多発関節炎,血管炎,急性腎不全,DICなど多彩な病態を呈し,ステロイドパルス療法が奏効したPRCAの1例を経験した。症例は55歳の女性,1991年9月ごろから関節痛,朝のこわばり,微熱を自覚し,その後全身倦怠感と発熱が増強するため入院となった。入院時Hb 4.4/dlと著明な貧血を認め,網赤血球と骨髄赤芽球の消失などからPRCAと診断。また著明な白血球,血小板の増加,抗核抗体陽性,γグロブリンやCRPの上昇,さらに多発関節炎や腎血管撮影所見などから,血管炎を伴う自己免疫疾患が基礎疾患と考えられたが診断基準に合致するものはなかった。患者はステロイドパルス療法により全身状態と貧血の急速かつ著明な改善が観察され退院した。全身性ループスや関節リウマチなどにまれにPRCAが合併するが,本症例では種々の自己免疫疾患の診断基準は満たさず,またこのように多彩な病態を伴うPRCAの報告はまったく認められず,興味ある症例と考えられた。
  • 秋山 昌希, 鈴木 裕子, 山口 朋子, 玉井 佳子, 苅谷 克俊, 高見 秀樹, 吉田 豊
    1993 年 34 巻 11 号 p. 1486-1490
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳の中等症血友病Aの男性である。22歳の時,外傷後の腹部血腫にて輸血を受け,40歳の時,大腿血腫を契機に中等症の血友病A, 非A非B型慢性肝炎(後にC型慢性肝炎と診断)と診断された。平成元年1月,腹部不快感で当科を受診し腹部超音波検査にて肝細胞癌を疑われ入院となった。入院後,肝右葉S6領域の肝細胞癌と診断され経カテーテル動脈塞栓療法および肝部分切除術を施行した。その後,同年8月,肝S8に,平成2年8月,肝S6, S8に,および平成4年2月,肝S2, S3に肝細胞癌の再発を認めエタノール局注療法,経カテーテル動脈塞栓療法を施行した。その後,肝細胞癌の再発をみることなく自宅療養をしている。血友病患者におけるC型肝炎ウイルス感染は高率であり,今後,患者の高齢化に伴い肝細胞癌の増加が危惧される。肝細胞癌の早期発見のために腹部超音波検査による定期検査が必要であると思われる。
短報
地方会
feedback
Top