臨床血液
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34 巻, 3 号
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第34回総会
会長講演
  • 堀内 篤
    1993 年 34 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    造血器腫瘍の治療の合併症として感染症と血小板輸血不応状態について検討した。阪神造血器疾患感染症研究グループで過去13年間に扱った細菌感染症は3,346例(敗血症7.8%, 敗血症疑い71%, 呼吸器感染症13.7%)であった。起炎菌は688株が検出された。グラム陰性菌59.2%, グラム陽性菌40.3%であったが,10年前と最近3年間を比べるとグラム陰性菌は73.8%が46.8%に,グラム陽性菌は25.1%が53.2%に変化した。抗生剤は28種が単独で,併用は9通りの方法で投与された。有効率は前者が43.9∼67.2%, 後者が35.2∼64.2%であった。ある種のものは併用によって単独より有効率が下がった。真菌感染症は3年間で153例,その80%はCandida属であった。抗真菌薬2剤の有効率は45.5∼70.0%であった。頻回に血小板輸血をうけた150例の抗HLA同種抗体出現率は32.9%, 白血球除去フィルターを用いた76例の抗体出現率は17.1%であった。
特別講演II
  • —染色体から遺伝子へ—
    阿部 達生
    1993 年 34 巻 3 号 p. 251-259
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    白血病の分子細胞遺伝学的な知見を病因,診断,予後の推定,治療の順にわれわれの行ってきた知見を中心に述べた。病因に関し,neocarzinostatinで多数の均衡型転座が誘発され,この中には白血病で同定されたのと同一のものが存在する事実を確かめた。これは白血病の初期発生を考える上で重要な知見と思われる。疾病の細分類(FAB)ができた白血病では,病型に特異的な染色体が順次同定され,発がんのinitiation, progressionが染色体異常を介して起きる事実が示された。また,関連する遺伝子は切断点をhallmarkにして単離されている。このような分子遺伝学の展開をわれわれが行ってきたCML, Ph陽性ALL, FAB-M3, M5での成果を中心に述べた。最近,FISH法が開発され,新たにinterphase cytogeneticsといえる分野ができたが,これはPCR法とともに微小残存病変の検出に偉力を発揮しはじめた。異性間骨髄移植やYAC-BCRによる間期細胞でのPh染色体を中心に述べた。さらに,キメラ遺伝子の融合部位のantisense DNAを作製することでtargeting gene therapyが射程内に入ったことを報告した。
シンポジウム1
難治性貧血の臨床とその問題点
  • —Hypoplastic MDSの血液学的特色—
    大野 陽一郎, 高橋 豊, 吉田 弥太郎
    1993 年 34 巻 3 号 p. 260-264
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    対象はMDS 48例,HypoMDS 13例,AA 25例。白血化はRAEB+inT, HypoMDSで高率にみられた。鉄代謝ではMDSの69%が無効造血型,HypoMDSでは85%が低形成型,AAでは全例低形成型であった。Erythron transferrin uptake (ETU)は無効造血の例で高く,全造血能の良い指標であることを示した。MDS患者ではETUと骨髄赤芽球%の間に有意の正の相関をみとめた。赤芽球寿命は各疾患で短縮したが,MDSとAAで差はない。骨髄シンチではMDSでperipheral expansion, AAやHypoMDSでislandと異なった特徴を示した。なおMDSの白血化後にperipheral expansionのさらなる亢進を認めた。HypoMDSの臨床像は高率の白血化や芽球増加の点から明らかにMDSに近いが,鉄代謝,骨髄シンチではむしろAAのパターンであった。このことはHypoMDSの疾患としての独立性を示すものである。
  • 大橋 春彦
    1993 年 34 巻 3 号 p. 265-268
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    芽球増多のない難治性貧血の女性41例を対象として,X染色体の不活化を利用したDNA解析による造血クロナリティの検討を行った。骨髄細胞,末梢血細胞,顆粒球分画,リンパ球分画についてPGK, HPRT, M27βの各プローブを用いたサザンブロット法によるクロナリティ解析を行った。再生不良性貧血19例中8例,RAおよびRARS 6例中4例,PNH 7例中3例,形態学的特徴からはいずれにも分類できないもの9例中5例においてクローン性造血の存在が確認された。再生不良性貧血ではクローン性造血を示すものは罹病期間が長い症例に多い傾向が認められた。難治性貧血においては,クローン性造血の存在と血液細胞の形態学的特徴との間に必ずしも一定の関係を認めることができなかった。
  • 大屋敷 一馬, 外山 圭助
    1993 年 34 巻 3 号 p. 269-272
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄異形成症候群(MDS)における予後推定における染色体異常の意義を明らかにする目的で多施設共同研究を行った。複雑型染色体異常を有する症例の予後がきわめて不良で,-7/7q-, +8, 2個の染色体における異常も予後不良因子となった。以上のことより,予後推定のスコアリングを試みた。複雑型染色体異常は3点,-7/7q-, +8, 2個の染色体での異常は1点,それ以外は正常核型も含め0点とし,Bournemouthスコアリングによる点数に加算してスコアリングを試みた。その結果,有意差をもって0∼2点は予後良好群,3, 4点の比較的予後不良群,および5点以上の予後不良群に分けられた。特にRARSでは複雑型染色体異常を示した場合,70%の症例が白血病に移行し1年以内に死亡したことより,RARSの中に明瞭な亜型を形成する一群が存在することが示唆された。また,この予後判定のスコアリングには低形成骨髄のMDSにも適応できることが判明した。すなわち,低形成骨髄のMDSは定型的MDSと染色体異常の様式および予後が酷似していた。一方,形態異常の乏しいMDSの予後は再生不良性貧血と有意差を認めなかった。病型推移との関係を自験例83での検討でみた場合,早期病型移行群(診断後100日以内に病型が推移し,300日以内に多くの症例が死亡する群),比較的晩期での病型移行群,病型の移行しない群に分類することが可能であった。複雑型染色体異常を示す群では約半数は早期病型移行群で,残りは病型移行しないままきわめて早期に死亡した。比較的晩期での病型移行群では,病型移行にともない数的染色体異常が出現する症例もみられたが,病型移行時期および病型移行を予知する因子は見いだし難く,初診時の骨髄での芽球比率の高い症例に病型移行がみられた。
  • 寺村 正尚, 斉藤 博, 小林 祥子, 星野 茂, 押味 和夫, 溝口 秀昭
    1993 年 34 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    再生不良性貧血に対する抗リンパ球グロブリン(ALG), シクロスポリン(CyA)の作用機序について検討した。ALGおよびCyA有効例において,治療前患者末梢血CD8陽性細胞は自己造血前駆細胞(CFU-GM, BFU-E)に対し抑制作用を認めた。しかし治療有効時の患者末梢血CD8陽性細胞では,そのような抑制作用は認められなかった。以上より,ALG, CyAは造血前駆細胞に対して抑制的に働くCD8陽性細胞を傷害することにより造血の回復を導くと考えられた。また,ALG投与中に患者末梢血中の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)濃度の上昇を認めたが,治療効果とは関係なく,かつ一過性であった。顆粒球—マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は2例を除き増加は認めず,インターロイキン-6 (IL-6), IL-1-α, IL-1βは,すべて上昇は認めなかった。ALGがコロニー刺激因子の産生を亢進させ造血の回復を促すという機序の存在を支持する結果は得られなかった。
  • 通山 薫, 上田 孝典, 津谷 寛, 和野 雅治, 中村 徹
    1993 年 34 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    近年骨髄異形成症候群(MDS)に対してサイトカイン療法が試みられているが,その評価は定まっていない。われわれはMDS患者19例および健常者4例のCD34陽性芽球をCSF存在下に短期液体培養した結果,健常者で芽球が順調に分化成熟していったのに対して,とくにriskの高いMDS群で芽球の成熟遅延,中には芽球が著増する例や異常核型クローンが支持される例を認めた。G-CSFの臨床投与によって,短期的にはある程度の血液学的改善が期待でき,例外的に複数血球系に奏効することもある。一方G-CSFの投与と関連してMDSから白血病へ移行したと考えられる例もあり,CSFによる白血病化の危険性は確かにあると言えるが,それを予見する有効な方法はまだない。ほかのサイトカインの有効性や併用効果については今後の評価が待たれる。多施設での大規模かつ慎重な検討が望まれる。
  • 日野 研一郎, 中牧 剛
    1993 年 34 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    培養白血病細胞により明らかにされた白血病細胞の分化誘導能は,急性前骨髄球性白血病症例におけるall-trans retinoic acidの劇的な効果,急性骨髄性白血病に対するara-C少量療法の有用性により臨床的にも確認されつつある。著者らは骨髄異形成症候群(MDS)の分化誘導療法につき検討した。対象症例はMDS56例である。RAEB, RAEB-T症例の骨髄中の芽球をin vitroで初代培養し,ara-CおよびVP16とG-CSFの併用による分化誘導能を確認した。臨床効果は,Ara-C単独投与群は全投与のべ症例数14例中3例に分化誘導効果がみられ,ara-C, VP16とG-CSFとの併用例はのべ4例中全例に分化誘導効果がみられた。またRAに対するメチルプレドニゾロン大量療法,GM-CSF, 蛋白同化ホルモンも少数ながら分化誘導効果と思われる成績がみられた。MDSに対する分化誘導療法は有用であり,サイトカインとの併用などを含め,さらに有効な治療法の確立が望まれる。
  • 武元 良整, 金丸 昭久
    1993 年 34 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    重症再生不良性貧血(SAA) 19例と骨髄異形成症候群(MDS) 19例に対する骨髄移植の成績について検討した。SAAでの移植成績の問題点としては拒絶がある。移植前処置としての照射線量を充分に行うことで拒絶は抑えられるが,後期の合併症として二次癌が認められ問題を残す。MDSの不応性貧血(RA)の移植適応を決めることは重要である。当科では,移植前に合併症があるか,または染色体異常のあるものをBMTの適応と定めている。MDS (RA)では,9例中5例が生存している。RAEB-TとMDS-overtの10例では4例が生存している。MDS (RA)例では前述のBMTの適応を満たし,HLA一致ドナーがいたらBMTを考慮する必要がある。しかし,MDSのRAEB以降ではBMTの前に化学療法を行うべきか否かについては未解決の問題である。
臨床研究
  • 田中 朝志, 山岸 哲也, 佐藤 猛, 依藤 寿, 福武 勝幸, 藤巻 道男
    1993 年 34 巻 3 号 p. 294-300
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    後天性免疫不全症候群に合併した9例のカリニ肺炎の経過を追跡し,血清乳酸脱水素酵素(LDH)を中心とした検査項目の臨床的意義について考察を加えた。発症から診断までの平均日数は約20日,治療期間中央値は29.5日間と比較的長期の経過をとった。LDHの総活性は9例中8例で増加し,アイソザイムは全例にて早期より異常パターンを示した。そのパターンはLDH3を中心とした上昇であった。一方,C反応性蛋白(CRP)の明らかな上昇は,経過を追跡しえた6例中2例のみにみられた。LDHと病状との比較では,臨床経過とよく一致し,PaO2とも強い相関関係を認めた。以上より,LDHはカリニ肺炎の診断,病勢追跡に有用であることが示され,特に注意深い観察により早期診断にも貢献するものと考えられた。
  • 石山 泰二郎, 秋本 佳久, 上野 秀之, 矢島 かおり, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 若林 芳久
    1993 年 34 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    B-PLL細胞とB-CLL細胞とをB細胞コロニー法を用いてPHAおよびサイトカイン(IL-2, IL-4, IL-6, PHA-MTCM)との反応性を検討した。B-PLL細胞は,PHA-MTCMおよびPHAの存在においてB-CLL細胞に比較し著明にコロニー形成が低かった。B-PLLコロニー形成細胞は,末梢血B-PLL細胞と同様の性状を有していた。IL-2, IL-4, IL-6は,B-PLLコロニー形成を増加させなかった。PHAで72時間培養においてB-PLL細胞ではB-CLL細胞でみられたようなCD23, CD25の発現の増強は認められなかった。B-PLL細胞は,B-CLL細胞よりPHAおよびサイトカインに対して低反応性であった。
  • 村田 道夫, 永井 雅巳, 田坂 大象, 大西 宏明, 佐々木 一乗, 田岡 輝久, 池田 和眞, 窪田 良次, 田中 輝和, 高原 二郎, ...
    1993 年 34 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,1985年6月より1991年12月までに当科に入院した成人急性リンパ性白血病20症例に対し,DNR, ara-C, VCR, PSL, 1-aspからなるDCVP-1-asp療法を施行した。結果:(1)成績:CR率85% (17/20)。Kaplan-Meier法による無再発生存率は5年で30%。(2)再発:7例が再発し,うち4例は治療開始後1∼2.5年の間に再発した。(3)染色体異常群では生存期間中央値15カ月で全例死亡した。(4)定期的に治療が施行し得た例では,髄膜再発はみられなかった。(5)副作用:全例に高度の骨髄抑制がみられたが,治療による早期死亡はなかった。結論:DCVP-1-asp療法は,高齢者も含め成人の急性リンパ性白血病に対して有効であった。染色体異常を示すなど,予後不良群には,骨髄移植を含め,維持強化療法をさらに改良することが必要と思われた。
  • 小林 昭一, 関 邦子, 片山 典子, 秋葉 千代美, 山本 敏晴, 坂井 慶子, 山口 正直, 丸田 壱郎, 野口 太平, 小川 浩司, ...
    1993 年 34 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1985年7月から1991年12月までのde novo AML 54症例につき,初診時の骨髄塗抹標本でmegakaryocyteを原則として25個数え,直径30 μm以下で単核あるいは2核のmicromegakaryocyte (mMgk)の有無について検討した。de novo AML 54症例中17例(31%)にmMgkが存在した。mMgk (+) de novo AMLの内訳はM1:1/11例,M2:5/18例,M3:0/4例,M4:5/13例,M5:1/3例,M6:4/4例,M7:1/1例であった。年齢の中央値はmMgk (+) de novo AMLで57歳,mMgk (-) de novo AMLでは41歳とmMgk (+) de novo AMLはmMgk (-) de novo AMLに比べ高年齢層に多かった(p=0.014)。染色体異常では,mMgk (+) de novo AMLにt(15;17), t(8;21)およびinv(16)は認められなかった。-5あるいは5q-, -7あるいは7q-を認めた症例はすべてmMgk (+) de novo AMLであった。de novo AML with trilineage myelodysplasiaの症例10例中9例はmMgk (+) de novo AMLであった。またmMgk (+) de novo AML 17例のうちde novo AML with trilineage myelodysplasiaは9例であった。BH-AC·DMP療法でのmMgk (+) de novo AMLの完全寛解率は33%, mMgk (-) de novo AMLの完全寛解率は86%であり,両群間に有意差が認められた(p=0.001)。またMDSを経て発症したことが確認できたAML7症例すべてにmMgkがみとめられた。mMgkの存在するAMLは,de novo AMLの中の予後不良の一群であり,MDSと関連の深いことが示唆された。
症例
  • 小林 朋子, 堀越 昶, 遠藤 ますみ, 芦谷 正栄, 飯塚 芳一, 竹内 仁, 大島 年照, 堀江 孝至
    1993 年 34 巻 3 号 p. 321-327
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    脳内腫瘤形成で再発した56歳男性AML (M1) t(8;21)の1例を経験し,その臨床検査所見および剖検所見を報告するとともに,本邦既報告例13例を含めその特徴を検討した。本例は剖検において,両側睾丸,消化管の腫瘤形成も認められ,肝,脾,腎への芽球浸潤も高度であった。脳内腫瘤形成で発症する症例は本例のように巣症状を呈することがあり,出血,浸潤による症状とは異なっている。腫瘤形成は,CTスキャンでほぼ診断可能である。平均年齢は38.9歳,9対5で男性に多く,FAB分類の明らかな9例中5例がM2であり,染色体を検索した6例中t(8;21)を有するものは1例であった。治療としては放射線照射が有効である例が多いが,予後は不良である。本例ではCD56陽性であり,その細胞間接着因子としての性格と,髄外腫瘤形成との関連は興味深い点である。
  • 金谷 泰宏, 鈴木 洋司, 初瀬 一夫, 中村 治雄
    1993 年 34 巻 3 号 p. 328-334
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは全身播種を呈した乳房原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する。患者は46歳,女性。左乳房腫瘤にて来院し,穿刺生検にて非ホジキンリンパ腫と診断した。放射線照射後,定型的乳房切除術を施行し,術後12カ月は寛解状態にあったが下腿浮腫および呼吸困難にて当院再入院となった。心エコー,胸部単純撮影にて心嚢液,胸水の貯留を認めた。両滲出液の細胞診にて悪性リンパ腫細胞を多数認め,VEPA-M療法の施行に伴い滲出液は消失した。3クール終了時より左片麻痺,左顔面神経麻痺が出現した。髄液中の細胞数は著増し,悪性リンパ腫細胞が占めていた。頭部MRIにて左視床,左側頭葉にT2強調画像で高信号を呈する病巣を認めた。中枢神経浸潤の2カ月後に多数の異常リンパ球が末梢血中に出現し,細胞表面抗原解析,免疫グロブリン遺伝子解析にてB細胞性悪性リンパ腫白血化と診断し多剤併用療法を施行したが,初診より24カ月後に死亡した。
  • 辻 直樹, 茂木 良弘, 中谷 玲二, 倉 敏郎, 藤田 宏之, 平山 眞章, 渡辺 直樹, 高後 裕, 新津 洋司郎
    1993 年 34 巻 3 号 p. 335-340
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳,男性。動悸を主訴に1989年2月に近医を受診。末梢血検査所見ではWBC 3200/μl, RBC 213×104l, PLT 11.4×104lと汎血球減少を示し,骨髄穿刺所見では正形成であるものの,Myelodysplasiaとblast 2.2%を認め,骨髄異形成症候群(MDS)-RAと考えられた。その後,外来にて輸血などの対症的な治療を受けていたが,経過中,汎血球減少が高度となり,1990年1月当科へ入院となった。入院時の末梢血検査所見,WBC 2,000/μl, WBC 134×104l, PLT 2.9×104lであり,骨髄穿刺はdry tapであった。骨髄生検像では高度の線維化を,また染色体検査では47XY, +8, 13q-, 14p+, 48XY, +8, +19, 13q-と多彩な異常を認めた。そこで,BHAC-AMP療法を3クール施行したところ汎血球減少の改善と染色体異常の消失を認めた。本症例はMDSの病態から急性骨髄線維症(AMF)へ移行したと考えられるが,強力な化学療法が著効したことから若干の文献的考察を加えて報告する。
  • —文献的考察を含めて—
    横山 健次, 小島 勝, 小松本 悟, 奈良 昌治, 大屋敷 一馬, 池田 康夫, 外山 圭助
    1993 年 34 巻 3 号 p. 341-347
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性巨核芽球性白血病(AMKL)とSweet症候群(SS)が合併した1例を経験した。症例は66歳の男性。皮疹,咽頭痛を主訴として入院した。皮疹は有痛性隆起性紅斑様であった。血液検査では汎血球減少を認め,骨髄検査の結果CD41陽性の芽球の増加,線維化を認めAMKLと診断した。その他高γ-globulin血症,低補体値などの異常があった。皮疹は生検の結果真皮への好中球の浸潤を伴い,血管炎の所見はなくSSと診断した。SSに対してはPSLの経口投与が著効を示した。AMKLに対してはlow dose Ara-Cを施行したが無効であり,72病日に死亡した。SSと急性骨髄性白血病の合併例は今までに37例の報告があるが,本症例は最初のAMKLとの合併例の報告である。
  • 松下 格司, 有馬 直道, 福盛 順子, 大徳 恭久, 日高 史郎, 大坪 秀雄, 田中 弘允
    1993 年 34 巻 3 号 p. 348-354
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例:26歳,男性。1985年に白血球増多を指摘され,1987年5月にCMLの骨髄芽球性急性転化の診断を受け治療後寛解期を経て,1987年11月リンパ節腫脹,副鼻腔の腫瘤形成,胸水貯留のため当科入院。入院時骨髄,末梢血は寛解状態であったが,胸水にCD3, CD4, CD8陽性の白血病細胞を認めTリンパ球性急性転化として加療した。3カ月ほどの寛解状態の後,1988年9月より骨髄芽球性急性転化が再燃し,心不全,腎不全のために12月に死亡。骨髄芽球性急性転化時はPh1染色体および多くの付加的異常を示したが,Tリンパ球性急性転化時の胸水と骨髄では正常核型であった。サザン法によるbcr再構成の分析では骨髄芽球性急性転化時の骨髄とTリンパ球性急性転化時の胸水細胞に同位置のbcr再構成を認め,同一のCMLクローンからPh1陽性CML細胞とPh1陰性CML細胞が生じたものと考えられた。このことより本症例のPh1染色体異常獲得またはPh1陰性CML細胞の成立過程に2段階以上の発生機序の存在が示唆された。
  • 政氏 伸夫, 田中 淳司, 渡辺 雅男, 松浦 淳, 森井 健, 直原 徹, 木山 善雄, 比嘉 敏夫, 笠井 正晴, 韓 明哲, 今村 雅 ...
    1993 年 34 巻 3 号 p. 355-361
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    原発性マクログロブリン血症(WMG)はIgMタイプのM蛋白を示すBリンパ球系の腫瘍性増殖疾患で約80%の症例で正球性正色素性貧血(NNA)の合併が報告されるがその原因は明らかではない。われわれは,経過中に赤芽球癆(PRCA)様病態を呈したWMGを経験し,正常骨髄単核細胞(BMMNC) CFU-Eコロニー形成能による病態の検討を行った。症例は59歳の男性。入院時総蛋白9.7 g/dl, γグロブリン48.2%, 免疫電気泳動にてIgM分画にM蛋白を認めWMGと診断した。入院時より著明なNNAを示し,さらに進行したが網状赤血球は低値,骨髄は赤芽球系細胞が著明に減少し,エリスロポイエチンは高値でPRCA様の病態と考えられた。BMMNCのCFU-Eコロニー形成は患者末梢血リンパ球添加で抑制され患者血清添加で促進された。患者サプレッサー/キラーT細胞(Ts/c)亜分画群添加で,もっとも強く抑制され,混合比依存性を示したことより,同種赤芽球系前駆細胞に対する抑制性Ts/c細胞群の存在が示唆され,WMG患者で証明し得たまれな症例と考えられた。
  • 上野 秀之, 石山 泰二郎, 山田 一成, 秋本 佳久, 小池 道明, 中牧 剛, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹
    1993 年 34 巻 3 号 p. 362-366
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    同種骨髄移植後30日目に,19歳の女性に赤血球破砕症候群を発症した。移植前処置としては,全身照射(total 12 Gy), cytosine arabinoside (total 6 g), cyclophosphamide (total 6 g)を施行した。著明な貧血,網赤血球数の著増,破砕赤血球の出現をみたので,シクロスポリンAによる赤血球破砕症候群を疑い,投与をただちに中止し,methotrexateに変更した。シクロスポリンAの投薬中止後,この溶血性貧血は改善した。数週間後に,再びシクロスポリンAを使用したところ同様な溶血性貧血が出現したが投薬中止後再び改善した。したがって赤血球破砕症候群はシクロスポリンAによるものと考えられたが,GVHDおよびサイトメガロウイルスの関与も否定できないと思われる。
  • 小林 正之, 片山 俊夫, 落合 成正, 吉田 真弓, 海渡 健, 増岡 秀一, 島田 貴, 西脇 嘉一, 酒井 紀
    1993 年 34 巻 3 号 p. 367-372
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄増殖性疾患(MPD)由来と考えられるhypereosinophilic syndrome (HES)の2例を経験し,interferon-α (IFN-α)療法を試みたので報告する。症例1は45歳の男性。Prednisoloneが無効で,Flaumらの血液学的スコアが8点であったことよりMDP由来のHESと診断,hydroxyurea (HU)を投与していたが4年後心肺障害が出現,IFN-αで寛解が得られた。症例2は30歳の男性,血液学的スコアが9点のHESでHUによりコントロール良好であったが,3年後好中球主体のaccelerated phaseに移行し8 trisomyの染色体異常も出現したため,IFN-αを投与したが効果なく死亡した。なお両患者のリンパ球には好酸球コロニー刺激因子産生能の亢進は認められなかった。MPD由来のHESの診断にはFlaumらの血液学的スコアが有用であった。また1例でIFN-αが有効であったが,より早期から試みられるべき治療法と思われた。
  • 矢野 真吾, 浅井 治, 倉石 安庸, 小林 直, 藤井 常宏, 平野 明夫, 水沼 信之, 多田 則道, 土橋 史明, 稲本 幸雄, 三原 ...
    1993 年 34 巻 3 号 p. 373-377
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は43歳男性。治療抵抗性非ホジキンリンパ腫のため,超大量化学療法および自家造血幹細胞移植が施行された。adriamycinが計280 mg/m2投与されていたが心疾患の既往はなく,超大量化学療法前の胸部X-P, 診断図・心エコーおよび血清クレアチニン(Cr)値も正常であった。cyclophosphamide (CPA), etoposide, carboplatinをday-7より投与した。移植2日前より血清Cr値の上昇と,胸部不快感が出現し,重篤な不整脈のため移植翌日に死亡した。剖検では,心筋の変性・壊死・出血が認められた。CPMはアルキル化剤で,各種悪性腫瘍に対して有効であり,通常の投与量では出現しない心毒性が,大量投与では出現することが報告されており,しばしば急性心不全に移行し,致死的になることもあるとされている。CPM超大量投与を安全に施行するために,投与方法の検討,心毒性出現の早期発見,および発症の危険因子の検討などが必要であると考えられた。
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