臨床血液
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34 巻, 4 号
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第34回総会
教育講演I
  • 松尾 理
    1993 年 34 巻 4 号 p. 395-402
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
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    血栓溶解酵素は血液線溶系の生理的な活性化機構の応用として血栓溶解療法に使用されている。血栓(fibrin)を分解するplasminは血漿蛋白のplasminogenがplasminogen activator (PA)によって生じる。血栓のみを分解し,血漿中のfibrinogenを分解しない性質を有するPAが理想的なPAである。現在臨床的に使用されているPAおよび研究中のPAは計11種類におよび,作用機序から直接型PAと間接型PAとに分けられる。前者はplasminogenを単独でplasminに活性化でき,後者は単独ではなんら作用を有せず,plasmin (ogen)と1:1の複合体を形成して初めてPA作用が出現する。直接型PAにはu-PA, t-PA, scu-PA, mutant PA, hybrid PA, IgG carrying PA, bispecific monoclonal antibody, bat PAが有り,後者にはSK, APSACおよびSAKが有る。SAKは液相中で生じたplasminogenとの複合体がα2-PIで阻害され,固相上での複合体が阻害されない特徴を有している。病的血栓と止血血栓の鑑別が今後の課題である。
教育講演II
  • 沢田 海彦
    1993 年 34 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
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    非Hodgkinリンパ腫(NHL)は,Hodgkin病以外の悪性リンパ球の単クローン性増殖性疾患の総称で,形態学的,免疫学的,そして遺伝学的にも異なる悪性腫瘍で,その自然経過や,治療に対する反応は個々の症例によって異なる。そこでNHLの治療方針を選択したり,新しいプロトコールを作成し,その治療成績を検討し,ほかのプロトコールと比較するには,同様の特徴を供えた症例について評価しなければならない。そのためにこれまで病理診断とAnn Arbor分類による病期診断が大きな役割を果してきたが,病理診断は,必ずしも臨床的特徴を表したものではなく,施設間の診断の一致率にも問題がある。また,Ann Arborの病期分類はHodgkin病のために作られた分類で,NHLに応用するには無理があることが以前から指摘されてきた。そこで再現性のある病理診断に加えて,治療前の臨床的な特徴から予後や治療に対する反応を推測できるrisk factorに基づいてNHLの治療戦略をたてたり,治療プロトコールの評価することが重要である。
教育講演III
  • 清水 勝
    1993 年 34 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
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    近年献血への移行や採血手技の向上さらにはスクリーニング法の開発などにより,輸血療法に伴う感染症は著減してきた。特に輸血後肝炎は,HCV抗体のスクリーニング法の導入により1/3以下に激減し,さらに減少することが期待されている。しかしながら,目下のところほとんど問題となっていないものの世界的に流行しつつあるHIV感染や国際間の人口移動に伴う感染症(Chagas病,マラリアなど)に対する警戒は怠れない。これらの感染を予防するためには,問診の強化とともに感染後window期にある献血者の自己責任を明確にすることも必須であると考える。一方,血小板の保存に伴う細菌汚染や赤血球の長期保存によるY. enterocoliticaの問題が注目される。今後ともこれらの感染症の起こりうることを念頭において輸血後の副作用・合併症を鑑別することが必要とされる。
シンポジウム3
骨髄腫の基礎と臨床
  • 清水 史郎, 紺田 進
    1993 年 34 巻 4 号 p. 418-422
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄腫細胞の増殖機構につき,培養骨髄腫細胞株をもちいて検討を加えた。70例の患者より,骨髄由来4株,髄外由来7株,計11株が樹立された。骨髄由来株はすべてIL-6またはストローマ細胞依存性増殖を示した。髄外由来株は自発性増殖を示すほか,IL-6に付加的増殖を示した。抗IL-6抗体,抗IL-6R抗体による増殖抑制試験およびRT-PCR法によるIL-6 mRNA, IL-6R mRNAの検討から,骨髄由来株はパラクリン機構によるIL-6依存性増殖を,髄外由来株は自発的増殖とIL-6パラクリン機構による付加的増殖を示すと考えられた。培養株を用いた実験はin vitroで付与された人工的産物を観察している可能性があるが,この点については,培養初期の細胞分離精製による実験およびScidマウスをもちいた実験からIL-6が自己再生性骨髄腫細胞に対する増殖因子であり,パラクリン機序により増殖刺激を与えることが確認された。
  • 高橋 隆幸, 奥野 芳章, 大杉 義征
    1993 年 34 巻 4 号 p. 423-426
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
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    〔目的〕骨髄腫細胞がIL-6 autocrineにより増殖するか否かは未だ解決されていない。そこでヒト骨髄腫細胞株(MM-S1)にIL-6遺伝子を発現させ,増殖動態の変化につき検討を行った。〔方法〕MM-S1の増殖にはIL-6が不可欠であるが,PCRで検討してもIL-6産生は認めず,ヌードマウスへの移植は不可能である。IL-6 cDNA導入後に得られたIL-6産生クローン(S6B45)を検討の対象とした。〔結果〕S6B45はIL-6非添加液体,半固形培地いずれにおいても活発な増殖を示したが,その増殖は抗IL-6 (MH166), 抗IL-6レセプター抗体(PM1)のいずれによっても濃度依存性に抑制された。S6B45のIL-6産生はタンパクおよびmRNAのレベルで確認された。S6B45はヌードマウスに腫瘤を形成したが,この腫瘤形成はMH166, PM1投与により用量依存性に抑制された。〔考察〕腫瘤形成に対する抗体の抑制効果はautocrine増殖を示す腫瘤に対する治療の道を示唆するものである。
  • 田川 進一, 服部 英喜, 柴山 浩彦, 西森 義高, 柴野 賢, 水木 満佐夫, 野島 順三, 井上 良一, 木谷 照夫
    1993 年 34 巻 4 号 p. 427-432
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Spreading (SP)能を有するヒト形質細胞(PC)腫株FR4dsと骨髄腫株で浮遊性のOPM1, SP能を有するOPM1dsの三種を用いてPCにおける接着分子fibronectin (FN)の役割を検討した。FR4dsはVLA-α4陽性,α5陽性,一方OPM1およびOPM1dsはα5陰性。FNはSPを誘導しアルブミン(AL)は阻害した。FN誘導SPにおけるα5の役割は,FN感受性をあげる点にあった。三種のPC株はともにFNに遊走(CA)した。CAにおけるα5の役割はFN感受性をあげる点にあった。以上より,α5陽性成熟型PCはSP能とCA能の総合としての組織親和性がα5陰性の未熟型PCより高いことが示唆された。髄外浸潤の結果胸水を示した多発性骨髄腫(MM)の胸水中のMM細胞と骨髄中のMM細胞の胸水へのCAをみた。胸水中のMM細胞のほうがよりよくCAした。PCのCA能はMM例の髄外浸潤の病態を良く説明する。FNの添加で増殖とIgの産生の亢進およびCAがあり,FNは生体内でPCに対して液性免疫増強因子として働いていることが示唆される。
  • 岩戸 康治, 河野 道生
    1993 年 34 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄腫細胞の生物学的不均一性と骨髄腫細胞表面の接着分子の発現の相違に関連性が認められ,骨髄腫細胞はCD38++/VLA-5-/MPC-1-とCD38++/VLA-5+/MPC-1+に大別された。前者は未熟な形態を示し,末梢血に出現しうること,in vitroにおいてIL-6反応性を示し高い増殖能を有することから骨髄腫前駆細胞(増殖分画),後者はより高いM蛋白分泌能を有し増殖能が乏しく形態的にも成熟型で成熟骨髄腫細胞と想定された。骨髄腫前駆細胞(CD38++/VLA-5-/MPC-1-/CD10-/CD24-/CD5-/Leu8-)は,接着分子の発現の面からは骨髄preB細胞(CD38+/VLA-5+/MPC-1-/CD10+/CD24+/Leu8-)よりはむしろリンパ組織胚中心B細胞(CD38+/VLA-5-/MPC-1-/CD10+/CD24-/CD5-/Leu8-)に類似性がみられた。骨髄腫前駆細胞の同定とその生物学的性状,特にその増殖機構の特徴を明らかにすることは骨髄腫の病態解明および治療戦略上,重要である。
  • 加納 正, 平清水 一範
    1993 年 34 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    無症候性から劇症型まで,多発性骨髄腫(MM)の臨床経過はほかの造血系腫瘍に比して多彩である。腫瘍細胞の性状と貧血,高Ca血症,腎不全などの腫瘍の2次効果がMMの臨床経過と関係する。予後因子として年齢,貧血の程度,腫瘍細胞の形態,クレアチニン値,Ca値,Bence Jones蛋白,腫瘍細胞のLI%, β2MG値,核小体局在性J鎖,その他の研究室レベルの検査が含まれる。腫瘍細胞のLI%が生存期間のもっとも信頼できる予後因子である。予後不良の病型として,若年型,形質細胞性白血病,劇症型,LDH高値例,J鎖型,アミラーゼ産生型がある。経過中の付加的M成分の出現は末期あるいは進展期にあることを示し,κ型症例にλ型M成分がみられる。Bence Jones escapeは症期に応じてその意義を異にする。くすぶり型でのBence Jones escapeは定型MMへの進展の徴候とみられる。明確な予後判定基準の設定は正しい治療戦略の選択に必須である。
  • 沢村 守夫, 村上 博和, 小河原 はつ江, 土屋 純
    1993 年 34 巻 4 号 p. 444-449
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄腫患者の末梢前駆細胞の定量,血清β2マイクログロブリン値の問題点および長期生存の要因を検討した。患者末梢血単核細胞が培養で形質細胞に分化することを利用し前駆細胞の定量を行い,前駆細胞の変化も治療の指標となり得ると考えられた。血清β2マイクロブロブリン値は年齢差があり,アルファインターフェロンによる上昇も認められ,骨髄腫の治療効果の判定の際,注意を要する。日本骨髄腫研究会では骨髄腫の診断後10年以上生存した長期生存例の予後因子を検討した。1965年から1981年までに16施設で診断された骨髄腫1,119例中の長期生存例38例の診断時の所見を,当科で経験した10年未満死亡例121例を対照として比較した。長期生存例は50歳代に多く,病期I, IIで,骨髄中の骨髄腫細胞が低率で顆粒球や赤芽球が保たれ,細胞形態は成熟型か中間型であることが要因と考えられた。
  • 戸川 敦
    1993 年 34 巻 4 号 p. 450-454
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫の10年以上の長期生存例はきわめてまれでわずか2.2∼4.3%に過ぎない。日本骨髄腫研究会で集計した36例の長期生存例の治療内容を概観すると,メルファラン-プレドニン,シクロフォスファミド-プレドニンと比較的simpleな治療で経過しており,1回の治療期間が短く,かつ効果が長く続き,治療効果が不変であっても長期生存している。すなわち進行性となった病態にいかに対処していくかが,今日の課題である。アルキル化剤に耐性となった症例にメルファランの大量療法,VAD療法,MCNU-VP16-メルファラン三者併用療法を行ったのでその成績を報告する。特にメルファラン大量療法(75 mg/m2以下)によりCRが得られたので,副作用をもとに最大耐容濃度について言及する。骨髄移植の問題点を指摘し,サイトカイン療法についてもふれる。
  • 木谷 照夫
    1993 年 34 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    DMVM+IFNα(HLBI)療法により多発性骨髄腫(MM)のpilot studyとそれに続いて多施設協同治験を行った。pilot studyでは16例中6例37.5%にCRが得られた。奏効率(CR+PR)は68.8%であった。3症例で白血球数1,000以下となったが重大な副作用はみられなかった。CR例6例の2年間の追跡調査では2例がCRを続け,4例が再燃し,2例PR, 2例死亡。多施設協同治験では評価症例61例中CRは16例26.2%, CR+PR 68.9%, CR+PR+MR 96.7%であった。Ig型病型ではIgG型で効果が低く,BJP型がもっとも良い成績であった。初回治療例ではCRが39.9%と高かった。副作用として白血球数1,000以下となった例が67例中21例に認められ,またこの治療と関連したのではないかと考えられる肺炎などによる死亡例がみられた。本療法は高頻度にCRが得られ有効な治療法であるが,感染には十分注意する必要がある。
臨床研究
  • 長谷川 雄一, 長沢 俊郎, 小島 寛, 渋谷 彰, 二宮 治彦, 阿部 帥
    1993 年 34 巻 4 号 p. 460-464
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは60歳以上で発症した高齢者慢性特発性血小板減少性紫斑病(以下高齢者ITP)に新たな治療プロトコールを作製,施行した。その概要と治療成績を報告する。観察対象は高齢慢性ITP 12例で59歳以下の慢性ITP 40例と比較した。高齢者プロトコールでは若年者群(59歳以下)よりも初期ステロイド使用量を半量に減じ,ステロイド無効例には二次選択として脾摘を選択したが,合併症などで脾摘不能例にはダナゾール療法を選択した。高齢者群と若年者群の間には血小板数,PAIgGには有意差を認めなかった。高齢者ITP 12例全例に経口ステロイド療法を施行し,内5名が治療に反応した。ステロイドでは血小板数を50×103l以上に維持できない7名の内,4名に脾摘を施行し,脾摘が不能な3名にダナゾール療法を施行した。以上の治療で11名の血小板数は150×103l以上に維持された。高齢者群の治療結果は59歳以下の治療成績に比べると良好であった。
  • 高橋 豊, 吉田 彌太郎, 原 宏, 山口 延男, 川越 裕也, 柴田 弘俊, 手島 博文, 大野 陽一郎, 赤坂 清司
    1993 年 34 巻 4 号 p. 465-472
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    血清erythropoietin (EP)濃度を新規導入RIA法で測定,そのHbに対応する基準値の設定と諸種血液疾患への適用を試みた。正常対照144, PNHを除く溶血性貧血12, 鉄欠乏性貧血44を基準疾患群とし,EP濃度(mU/ml)の対数変換値YのHb, Xに対する回帰推定値を基準値,±2rSD(回帰からの標準偏差)の範囲を基準域とした。回帰は貧血域と正常域別勾配の二相一次式と,Xの正常平均値 ?? からの偏位,X- ?? の三次式とを検討した。三次式は回帰性がより良く,X- ?? に対する負の加速的制御要因の負荷を意味し興味深い。他疾患への適用結果は,再不貧42例でEP過剰側に偏位し,基準値の平均約12倍,MDS 27例で過剰側偏位とともに多様性を呈示,腎性貧血33例で有意に不足域に偏位し基準値の平均29%で貧血発生機序を直接的に呈示,真性多血症22例で基準域内例が多く,基準疾患と類似の律則下の病態を示唆するなど,新たな視点からの興味ある知見と今後の検討課題を呈示した。
症例
  • 大久保 泰宏, 中沢 堅次
    1993 年 34 巻 4 号 p. 473-477
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例1: 49歳,男性。Non-Hodgkin's lymphoma, diffuse large cell type, stage II。MACOP-B療法でほぼ寛解状態となったが,第12週の治療後7日目に発熱とともに両肺野の瀰慢性陰影が出現した。ステロイドパルス療法とそれに引き続いてプレドニゾロン投与により軽快し退院した。症例2: 62歳,男性。脾門部腫瘤の生検でnon-Hodgkin's lymphoma, diffuse large cell typeと診断され,MACOP-B療法を開始した。第11週の治療後発熱が持続し,両肺野の瀰慢性陰影と著明な低酸素血症を認めた。ステロイドパルド療法,人工呼吸器による呼吸管理を行ったが,ARDS, 多臓器不全を併発し死亡した。この2症例は,いずれもrG-CSFを使用しており,同薬剤による末梢血好中球数の急激な増加の時期に肺病変が出現したことから,両者の関連が示唆された。以上より化学療法中にrG-CSFを使用する際には注意が必要であると考えられた。
  • 三浦 偉久男, 浜中 純子, 橋本 啓子, 西成 民夫, 仁村 隆, 間宮 繁夫, 三浦 亮
    1993 年 34 巻 4 号 p. 478-483
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,5q-単独の染色体異常を伴ったde novo AML (M2)の1例を経験したので報告する。症例は,76歳,女性で,近医より,貧血と白血球増多の検査のため当科紹介された。現症で点状皮下出血と口蓋扁桃,頸部リンパ節が腫大し,肝,脾は触知しなかった。検査成績では,WBC 256.1×103l, Hb 7.1g/dl (MCV=102fl), 血小板10.9×104l。骨髄は過形成で,分葉の少ない小型の骨髄巨核球が増加していた。AML (M2)と診断したが寛解導入療法施行前に死亡した。剖検で脳,心臓,肝臓,脾臓,腎臓に白血病細胞浸潤を認めた。骨髄では,小型骨髄巨核球が増加しており,電子顕微鏡では,骨髄球程度の大きさのものまで観察され,一部の巨核球胞体に分離膜密集像を認めた。本症例のように5q-単独の異常で発症するAMLは,小型巨核球が増加し「5q-症候群」と類似しており,白血化に染色体の核型進展以外に癌関連遺伝子の関与を考慮する必要があるのではないかと考えられる。
  • ウイルスの消長,抗体価の変動および赤芽球の変化を観察し得た症例
    小林 明子, 依田 安弘, 楊 景尭, 生江 花代, 石原 宣子, 永井 広子
    1993 年 34 巻 4 号 p. 484-489
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳女子。感冒様症状と貧血のため入院。入院時身体所見に著変なく,小球性低色素性貧血および網赤血球の著減を認めた。骨髄は赤芽球系がほぼ皆無で巨大前赤芽球を認めたほかには異常なし。組織可染鉄は著減し血清鉄,TIBCは正常であった。Polymerase chain reaction (PCR)により血清中にparvovirus B 19 (PVB 19)遺伝子の増幅が認められ,抗PVB 19 IgM抗体陽性,同IgG抗体陰性であった。風疹,麻疹,ムンプス,EBウイルスなどの抗体は陰性でHBs抗原抗体も陰性であった。以上より鉄欠乏状態の患者がPVB 19に感染し赤芽球癆を合併したと考えられた。入院第6, 11日の血清もPVB 19遺伝子が陽性であり感染後20日後でもウイルス残存の可能性が示された。しかし,骨髄中の赤芽球は入院第6日の骨髄で明らかに回復しておりIgG抗体も上昇していた。したがってIgM抗体の出現と同時に赤芽球系幹細胞が保護され造血の回復が始まったと考えられた。抗体産生障害の状態ではPVB 19の造血障害に留意すべきと思われた。
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