臨床血液
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34 巻, 5 号
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第34回総会
特別講演I
  • 木下 タロウ
    1993 年 34 巻 5 号 p. 529-536
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    発作性夜間血色素尿症(PNH)は,補体によって赤血球が破壊される溶血性貧血である。PNH患者の血液細胞は,補体の作用から自己細胞を保護しているDAFとCD59が欠損している異常細胞と正常細胞のキメラである。DAFとCD59はGPIアンカー型タンパク質で,異常血液細胞では多くのGPIアンカー型タンパク質が欠損している。異常の本質はGPIアンカーの生合成不全であり,生合成経路の初期のステップが欠損している。このステップに働く遺伝子PIG-Aは484アミノ酸残基の小胞体膜タンパク質をコードし,PNHの原因遺伝子であることがわかった。PIG-A転写産物の解析から,転写産物が低下している症例,スプライシング異常らしい症例,翻訳領域内に突然変異があるらしい症例が見いだされた。すなわち,PNHは,PIG-A遺伝子に体細胞突然変異を起こした造血幹細胞由来の異常血液細胞がクローン性増殖により末梢を占有していると理解される。
教育講演IV
  • 入交 清博
    1993 年 34 巻 5 号 p. 537-544
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    最近の造血器腫瘍の治療目標は完全緩解に導入することのみでなく,完全治癒の状態に導くことである。そのためには緩解期において残存している微量の腫瘍細胞を検出方法を確立することが必要である。われわれの教室で検索した非Hodgkinリンパ腫,慢性骨髄性白血病,B-急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病におけるMRDの診断について述べた。1) 30症例の非Hodgkinリンパ腫の末梢血,骨髄細胞をサザンブロット法で検索すると,診断時に15例,50%に再構成バンドを認めた。2)骨髄移植が行われたCMLの7症例は移植後6カ月以内はRT-PCRは陽性であり,4例は7カ月以後陰性化した。3) B-ALLで緩解した3例は緩解12月後に初めてIgHの再構成バンドが陰性化した。MRDの検出は造血器腫瘍の治療のもっとも重要な目標であるので,今後も症例を重ねて,検出法を確立する必要がある。
教育講演V
  • 加藤 俊一
    1993 年 34 巻 5 号 p. 545-550
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    現在小児骨髄移植が直面する問題点と今後の課題について,国内および国際登録のデータと東海大学の経験をもとに検討した。白血病における化学療法,再生不良性貧血における免疫抑制療法や造血因子療法などの進歩により,骨髄移植の適応は難治例や最重症型に限定される傾向が強まっている。また,従来の同胞間骨髄移植や自家骨髄移植に加えて末梢血幹細胞移植や非血縁者間骨髄移植が施行されるようになり,治療法の選択の幅が広がりつつある。拒絶予防,白血病再発予防,さらにはQOLをも考慮にいれた前処置の改善が試みられ,一方ではGVL誘導のためにGVH誘発やBRM投与などの試みも進められている。一部の症例に成長の遅延,不妊,白内障,呼吸障害などが晩期障害として認められているが,全体としてみれば長期生存者におけるQOLは高いと評価される。
教育講演VI
  • 長澤 俊郎
    1993 年 34 巻 5 号 p. 551-556
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    真性多血症,慢性骨髄性白血病,本態性血小板血症,骨髄線維症などの疾患からなる慢性骨髄増殖性疾患では巨核球増多を伴うことが多い。最近の巨核球系前駆細胞の培養法,幼若巨核球の同定法,巨核球の分離法の確立は巨核球産生過程の解析を容易にした。しかし慢性骨髄増殖性疾患で定量的かつ連続的に巨核球産生過程を評価することは困難である。実際の臨床材料では巨核球系前駆細胞数,clot section中のPGPIIa/IIIb陽性細胞(巨核球)数,巨核球胞体面積,巨核球DNA量が測定可能である。今回の教育講演ではわれわれの観察結果と以前の報告から1) CMLの巨核球動態,2) ETとPVとの巨核球動態の差異,3) Ph1陽性ETの巨核球動態,4)反応性血小板増加症の巨核球動態についてまとめてみたい。
シンポジウム2
顆粒球造血の調節と臨床
  • —疾患との関係—
    小池 健一, 沢井 信邦, 奥村 伸生, 塩原 正明, 天野 芳郎, 中畑 龍俊, 小宮山 淳
    1993 年 34 巻 5 号 p. 557-561
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    serum-deprived cultureによる検討で,正常ヒト造血前駆細胞によるコロニー形成に対して,SCFはGM-CSF, IL-3, G-CSFと相乗作用を示したことから,GM-CSFやIL-3による好中球,マクロファージの産生にSCFは重要な役割を演ずると思われる。CMMoLとJCMLにおける白血球増多の病因として,autocrine mechanism以外に,造血前駆細胞のサイトカイン感受性の亢進が示唆された。血球貪食症候群では血清IFN-γの上昇が血球減少時に認められ,さらにIFN-γは造血前駆細胞の増殖を抑制することから,本疾患における血球減少の病因の1つとして,IFN-γによる造血抑制が推察された。再生不良性貧血や好中球減少症では,好中球数の低下に反応して血中G-CSF濃度が上昇するのに対して,血中SCF濃度は一定のレベルに保たれており,未分化な造血幹細胞に作用するサイトカインにはfeed back機構は存在しない可能性が示唆された。また再不貧の造血幹細胞には質的異常が存在するものと考えられた。
  • —ヒトG-CSFの病態生理—
    渡 潔
    1993 年 34 巻 5 号 p. 562-566
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の産生と体内動態について検討した。初代培養骨髄ストローマ細胞,末梢血単球,線維芽細胞,血管内皮細胞の培養上清中のヒトG-CSFを酵素免疫法により調べると,その産生量は刺激物質によって異なっていた。in situハイブリダイゼーションでは,一部の細胞にのみG-CSF mRNAの高い発現を認めた。次に血清G-CSFを測定したところ,正常人では30 pg/ml以下であったが,種々の好中球減少症で増加が認められ,なんらかの調節機構の存在が示唆された。また感染症や一部の悪性腫瘍でも高値を示し,それぞれ反応性および異所性の産生と思われた。さらに,遺伝子組み換え型ヒトG-CSFの血中半減期の検討では,再生不良性貧血で遅延し,急性骨髄性白血病や化学療法後(急性リンパ性白血病)の好中球回復期では短縮が認められた。このことはG-CSFが受容体との結合により消費されることを示唆しており,同時にG-CSFの半減期測定により生体内の顆粒球系細胞プールの大きさを推定しうる可能性が示された。
  • 浦瀬 文明
    1993 年 34 巻 5 号 p. 567-571
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    好中球造血は特異的に分化・増殖を促進するG-CSFによって調節されているが,その負の調節機構の存在については明らかではない。私たちの検討で化学療法後の造血回復期の血中に顆粒球コロニー抑制因子の存在が示唆された。その活性がG-CSF刺激コロニーに特異的であることから血中の可溶型G-CSF受容体の存在が想定された。尿の濃縮分画について行った,G-CSF受容体抗体を用いたimmunoblotでその存在がみいだされ,血漿中のG-CSF受容体の精製を試みた。G-CSF affinity columnから溶出されたG-CSF結合蛋白とG-CSFとの結合体は約90Kdであり,抗CRHドメイン抗体に反応するG-CSF受容体の細胞外ドメインであると考えられた。90Kd以下のG-CSF受容体フラグメントも認められた。これらの蛋白のG-CSFとの結合は抗G-CSF抗体を用いたimmunoblotで観察され,顆粒球コロニー抑制活性も認められた。
  • 古川 雄祐
    1993 年 34 巻 5 号 p. 572-577
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    癌抑制遺伝子の中で,RB, p53遺伝子は機能発現に組織特異性が無いのが特徴である。両者とも,細胞周期移行をG1/S境界で抑制する作用がある。RBの場合は,非リン酸化型蛋白(Rb)がE2Fや増殖関連遺伝子のpromoter領域に結合することで増殖を抑制している。リン酸化により結合が解除されG1/S移行がおこる。顆粒球,単球においては,分化に伴いRbリン酸化能の喪失がおこり,終末分化を特徴づけている。したがって,RBの異常は細胞周期調節能の破綻を招き,その結果病的顆粒球産生(白血化)がおこると推定される。白血病症例において,DNAレベルで1.5∼12.1%, 蛋白レベルで6.3∼23.2%にRBの異常を合併することが報告されている。同様にp53の異常も造血器腫瘍において高頻度に観察され,特にCMLの急性転化では約20∼30%にDNA再構成が合併するといわれている。その他の例ではhot spotにおける点突然変異のことが多い。異常の頻度はprimary caseに比し株化細胞で多い傾向にある。
シンポジウム4
免疫抗体による止血機構異常と対策
  • —輸注による—
    山本 晃士, 高橋 勲
    1993 年 34 巻 5 号 p. 578-582
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    血友病患者にヒト第VIII因子および第IX因子製剤を輸注することにより発生する。抗第VIII因子および第IX因子同種抗体は,止血管理上重要な問題である。今回私たちは血友病インヒビター症例における遺伝的および免疫生化学的特徴につき検討した。血友病A(8例),およびB(6例)のインヒビター症例において,第VIII因子遺伝子についてはサザンブロット法により,また第IX因子遺伝子についてはサザンブロット法およびシークエンスにより遺伝子解析を行った。その結果,血友病A4例,B3例に大きな遺伝子欠損を認めた。また患者血清を用いて各種第VIII因子製剤および第IX因子製剤に対する認識部位の解析を行ったところ,各種製剤に対する認識パターンは製剤により異なっており,製剤の性状の違いによるものと思われた。また血友病Aインヒビター12例中11例がPorcine第VIII因子にも反応していた。
  • 岡村 孝, 津田 博子
    1993 年 34 巻 5 号 p. 583-587
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    自然発生凝固第VIII因子インヒビターの2例について報告する。症例1は,アレルギー性肉芽腫性血管炎を基礎疾患として持ち,治療に反応せず重篤な出血傾向が持続し,症例2は基礎疾患のない高齢者で,ステロイド投与により3カ月後に消失した。Immunoblotting法により免疫学的解析を行い,2例ともIgGタイプの自己抗体であった。症例1ではκおよびλ型の軽鎖を持ち,IgGサブクラスはG1およびG4であった。Western blotで症例1のインヒビターは,F VIII C末軽鎖80kDa(トロンビン切断72kDaフラグメント)を認識し,症例2では,トロンビン活性化フラグメント72kDaに加えて,重鎖44kDaをも認識した。これらの解析結果は,Fulcherらの報告と同様な結果であり,血友病患者に発生するalloantibodyと差はなく,A2およびC2ドメインを認識していると考えられ,F VIIIの機能上これらのドメインの重要性が示唆された。
  • 椿 和央
    1993 年 34 巻 5 号 p. 588-592
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    頻回輸血をうけた造血器疾患患者の同種抗体の産生率とその予防について検討した。HLA抗体は,AHG-LCT法,血小板抗体はFCMおよびMPHA法で測定した。同種抗体産生予防は,白血球除去フィルターを使用した。本フィルターの使用によって血液製剤中から99%以上の白血球が除去された。フィルター使用による同種抗体産生率は,37.1%から17.1%に減少した。血小板抗体は全輸血患者の2.2%に認められ,全例HLA抗体と共存していた。血小板同定パネルおよびImmunoblotting法によって,5例中3例はHPA-2b (Siba), ほかの2例は複合抗体と同定された。以上より,白血球除去フィルターはHLA抗体産生予防に有用である。頻回輸血患者の2.2%に血小板特異抗体が産生されるため,その多くの原因であるHPA-2bに対する対応を考慮する必要がある。
  • 倉田 義之
    1993 年 34 巻 5 号 p. 593-598
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    膠原病をはじめとして各種の自己免疫疾患においてしばしば認められる血小板減少の成因につき検討した。FCMにて測定したPAIgG値は血小板減少を伴うSLE症例で特に高値であった。次にPAIgGがimmune complexesか抗血小板抗体かの鑑別にエーテル解離法が有効か検討した。まず基礎的検討として抗血小板抗体(抗HPA-4a抗体)およびモデル免疫複合体感作血小板よりのエーテル解離液の正常人血小板との反応性につき検討した。抗血小板抗体の解離液は正常人血小板と結合したが,モデル免疫複合体は結合せず,本法により両者の鑑別が可能と考えられた。本法をPAIgG高値SLE症例のPAIgG解析に応用したところSLE症例のPAIgG解離液も正常人血小板に結合し,抗血小板抗体であることが示唆された。さらにSLE症例の抗血小板抗体の対応抗原をdirect immunoprecipitation法およびMACEにて検討,抗GPIIb/IIIa抗体を検出した。これらの成績よりSLE症例における血小板減少の病態はITPと同じと考えられた。
  • 末廣 謙
    1993 年 34 巻 5 号 p. 599-604
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    抗リン脂質抗体症候群(APS)患者血漿およびIgG分画の血小板,凝固系さらにprostacyclinへの影響を検討した。APS血漿およびIgG分画は血小板凝集,ATP放出,カルシウム動員を亢進させ,それらは患者IgGの血小板表面への結合性亢進によるものと考えられた。凝固系での検討ではAPSのIgG分画はリン脂質を中和することによりX因子の活性化を抑制したが,血栓傾向を示す成績は得られなかった。APS患者血漿は培養内皮細胞のprostacyclin生成を抑制し,また患者血漿中でのprostacyclin安定性は低下していた。以上の血小板活性化,およびprostacyclinへの影響はAPSにおける血栓傾向の要因になり得ると考えられた。
  • 福武 勝幸, 依藤 壽, 小池 克昌, 山元 泰之, 立山 雅己, 杉村 大作, 吉田 信一, 高橋 陽子
    1993 年 34 巻 5 号 p. 605-610
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    抗HIV-1抗体陽性および陰性の血友病患者117症例を対象とし,血小板数の変化を1986年と1992年との間で比較したところ,陽性群において明らかな減少が認められた。1992年の血小板数が150×109/l未満の患者は陰性群で5.8%に対し,陽性群で23.5%であった。血小板数とその他の検査項目を比較すると,陽性陰性両群においてコリンエステラーゼは正の相関,IgGは負の相関を示したが,β2マイクログロブリンと血小板結合IgGは陽性群においてのみ負の相関を示した。血友病患者においてHIV-1感染とは別に存在する慢性肝機能障害が血小板減少に影響し,陽性群ではさらに免疫不全が関与していることが示唆された。血小板減少を示す血友病B患者の治療で,Acyclovir, Zidovudineおのおのの投与に一致して血小板数の増加を認めた。この患者の可溶化血小板にHSV-1およびHIV-1抗原が存在し,患者血清中の抗体がこれらを認識することが判明した。
パネルディスカッション
臨床研究
  • —カリニ・サイトメガロウイルス肺炎の早期診断法としてのPCR法の有用性の検討—
    田中 健, 本田 順一, 白石 香, 長部 誠志, 城島 浩人, 松尾 和彦, 古賀 仁了, 安田 佳織, 益地 久美子, 今村 豊, 中村 ...
    1993 年 34 巻 5 号 p. 613-619
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    近年,造血器腫瘍患者における日和見感染症は増加している。しかしながら,その早期かつ確定診断および治療は困難である。今回われわれは,経過中PcあるいはCMV肺炎を合併した3例(47歳・女性・ATL, 54歳・女性・CML, 65歳・女性・ATL)を報告する。これらは喀痰を材料とするPCR法による検出によって,ST合剤またはガンシクロビルによる治療が有効であった。これらにより,PCR法はPc, CMV検出の診断法として迅速で感度が良く,造血器腫瘍患者における感染症の早期治療に有用である。
  • 堀越 泰雄, 市川 政孝, 殿内 力, 三間屋 純一, 森田 全, 大塚 由美子, 川端 寛樹
    1993 年 34 巻 5 号 p. 620-627
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    HIV感染血友病患者においてDNA-PCRおよびRT-PCR法によりプロウイルスDNA, 血清RNAの検出を行った。対象はHIV抗体陽性血友病患者20名(AC 10名,ARC 8名,AIDS 2名)である。DNAプロウイルス検出率は93.6%(44/47回)であり病期別ではAC 92.0%(23/25回),ARC 100%(13/13回),AIDS 88.8%(8/9回)と病期との関連はなかった。血清RNA検出率は85.7%(36/42回)であり,AC 70.8%(17/24回),ARC 100%(13/13回),AIDS 100%(5/5回)と病期が進むほど高かった。AIDS症例では症状が出現し免疫能低下がみられる前に血清RNAの強陽性が持続した。CD4実数がほぼ正常であるAC症例はプロウイルスDNAと血清RNAは検出されにくかった。血清RNAはHIV感染の予後を予測する重要な指標となる。seroconversion前後のRT-PCR検索により抗体陽転よりも5カ月前にRNAが検出された症例も存在した。
  • —病理組織型との比較—
    栗山 謙, 川西 慶一, 久下 栄, 岩瀬 理, 内田 淑子, 中野 優, 外山 圭助
    1993 年 34 巻 5 号 p. 628-635
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    B細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL) 19例を対象に,それらのリンパ節腫瘍細胞について,flow cytometry (FCM)を用い,forward light scatter (FLS)と表面免疫グロブリン軽鎖の蛍光強度の2次元解析を行った。まずFLSおよび表出軽鎖(κ鎖またはλ鎖)がともに均一な分布を示すものを腫瘍性B細胞として同定。その際,counterpartの軽鎖(λ鎖またはκ鎖)が不均一な分布を示す細胞を対照とした。次に,同定した腫瘍細胞のFLSをCD3陽性細胞のFLSと比較して腫瘍細胞の大きさを検討した。その結果,19例のB-NHLは5つのパターンに分類された。この分類は病理組織診断(Working Formulation)における細胞型とほぼ一致していたが,さらにsmall cleaved cell lymphomaやlarge cell lymphomaの亜分類も可能ならしめるものと考えられた。FCMを用いたリンパ腫細胞の2次元解析は腫瘍性B細胞の同定とその大きさの判定を同時にかつ迅速に行い得る点,病理診断の補助のみならず臨床的にもきわめて有用と考えられた。
  • 大量busulfan, VP-16, ACNUによる前処置
    生田 孝一郎, 藤岡 憲一郎, 住田 裕子, 高橋 浩之, 関口 晴之, 甲斐 純夫, 梶ケ谷 保彦, 船曳 哲典, 佐々木 秀樹, 松山 ...
    1993 年 34 巻 5 号 p. 636-642
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    抗白血病効果を強めるために,われわれは大量busulfan, VP-16, ACNU (BVA)の新しい前処置による幹細胞移植を行った。14名の急性白血病の患者がこの前処置により,骨髄移植あるいは末梢血幹細胞移植をうけた。7例が同種骨髄移植,1例が同系骨髄移植,6例が末梢血幹細胞移植である。7例は第1寛解期,7例は第2寛解期あるいは第3寛解期での移植であった。本前処置には全身照射もcyclophosphamideも含まないが,全例で生着が得られた。2例が再発し1例がサイトメガロウイルス肺炎にて死亡した。11例は98日から1235日(中央値647)無病生存中である。最大の前処置関連毒性は呼吸器合併症である(間質性肺炎が3例,肺水腫が2例)。しかし全例ステロイド剤にて軽快した。この前処置法は小児急性白血病に有用であると考える。
症例
  • 川〓 晴光, 飯塚 芳一, 近藤 和喜夫, 弘田 博彦, 奥山 泰史, 加納 誠, 一井 しず子, 村上 純子, 土屋 達行, 澤田 達夫, ...
    1993 年 34 巻 5 号 p. 643-648
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳の女性。咳,微熱,下肢出血斑を主訴に来院。WBC 49,400/μlと白血球増加(芽球71%)認め入院。骨髄で芽球を84.8%認めた。ペルオキシダーゼ染色は6%陽性のため,FAB分類上M1と診断した。アウエル小体は認めない。この時の芽球の細胞表面マーカー分析では,CD19(+)が43.3%, CD20(+)が10.3%, CD33(+)が55.6%であった。M1の診断に基づきDCMP療法を2クール,MEC療法を1クール施行したが,骨髄で芽球が70%認められ,芽球の細胞表面マーカーでは72.4%がCD19(+) 35.0%がCD20(+)を示し,Bリンパ球系腫瘍細胞の増殖を認めた。このためALL-90プロトコルに従い治療を開始したが寛解導入できなかった。本例はFAB分類にてM1と診断されたが細胞表面マーカーの分析から,acute mixed lineage leukemiaと考えられた。
  • 中村 紀彦, 田中 善章, 廣岡 清樹, 林田 美代子, 那須 輝史, 椿尾 忠博, 土井 喜宣, 吉原 渡, 平井 利彦, 細野 剛良, ...
    1993 年 34 巻 5 号 p. 649-655
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は26歳,女性。今回の妊娠でループスアンチコアグラント(LA)陽性,抗カルジオライピン抗体(ACA)陽性と判明した。前回の妊娠は妊娠27週で子宮内胎児死亡となった。今回はアスピリン,ジピリダモール,プレドニゾロン,ヘパリン投与を行った。24週より胎児発育遅延がみられ,AT-III, ProteinC, Plasminogen, α2PI活性が著減した。AT-III製剤の投与により在胎期間の延長,胎児発育の改善をみた。30週で胎児仮死徴候がみられ帝王切開術による分娩となった。出生児は1,025 g, 男児。アプガースコアは1分後5点,5分後9点。経過良好。母体は術後DICとなったがすぐに離脱できた。本例では,TAT, α2 PI-PM複合体,FDPDdimer, FPBβ15-42, L-FDPの推移は臨床経過との関連が少なかった。
  • 内藤 広行, 有岡 秀樹, 小林 良二, 石川 順一
    1993 年 34 巻 5 号 p. 656-661
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例はALLの14歳女児で,第二寛解期にHLA一致の弟をドナーとして骨髄移植を施行された。GVHD予防にサイクロスポリンAと短期のメソトレキセート投与を行った。移植後42日目よりGOT, GPT値が上昇し,翌日にはそれぞれ8,560単位,2,590単位と急激に進行,プロトロンビン活性値は10%以下となった。HBs抗原,HCV抗体は陰性だった。劇症肝炎として血漿交換を行ったが,肝性脳症となり,移植から57日目に死亡した。剖検の結果,肝は肝中心静脈閉塞症の初期変化に一致する所見であった。肝中心静脈閉塞症としては発症がかなり遅く,非典型的な経過であり,劇症肝炎との鑑別が困難で注意が必要と考えられた。
  • 上村 伯人, 中村 忠夫
    1993 年 34 巻 5 号 p. 662-666
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳女性で,発熱・血圧低下のため緊急入院した。末梢血白血球数400/μl, 血小板数1.3万/μlと著減,骨髄穿刺でNCC 1.4万,芽球50.0%, 芽球の表面形質はCD13+, CD33+, HLA-DR+であった。血液培養陽性,凝固検査でDICと診断された。以上の結果よりSepsis, DICを伴った低形成性白血病と診断し,Ara-C少量療法とM-CSFの同時併用を開始した。Ara-C14日間,M-CSF26日間の投与後には白血球2,800/μl, 血小板11.1万/μl, 骨髄中芽球7.0%と改善し,Ara-C休薬2週後,さらにもう1コースのAra-C少量+M-CSFを投与し,完全寛解が得られた。M-CSFは単球の産生を刺激するだけでなく,単球を介して好中球や血小板も増加させ,さらに単球の活性化による殺腫瘍活性も期待されている。本例はAra-C少量療法とM-CSFの同時併用が,重症合併症を有した低形成性白血病に著効を示し,今後の白血病治療におけるM-CSFの有用性を示唆したので報告した。
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