臨床血液
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34 巻, 6 号
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臨床研究
  • 滝口 智夫, 福徳 雅章, 広瀬 優子, 荒井 俊秀
    1993 年 34 巻 6 号 p. 689-696
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    2つの方法により正常γ/δ細胞クローンをつくり,その性質につき若干の考察を加えてみた。1つは正常ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を抗CD2抗体と補体処理にて主としてCD3+ α/βT細胞を減少させてから,ほかはCD3+細胞の減少した白血病・悪性リンパ腫患者PBMCやリンパ節,および胸・腹水細胞にそれぞれIL-1とIL-2を加えて培養後クローニングをおこなった。正常ヒトPBMCからはα/βクローン112, γ/δクローン62, 両者とも陰性101クローンをえることができた。γ/δクローンの中には100日以上増殖しつづけるものもみられた。しかし,K562に対しての細胞毒試験では陰性であった。白血病・悪性リンパ腫患者PBMCやリンパ節および胸・腹水細胞は主としてCD3- NKマーカー陽性細胞の増殖をきたしたが,中に正常γ/δクローンの増殖をみた1例について,γ/δクローン細胞の表面形質,形態,増殖を分析し,またDNAレベルでのクロナリティの証明をこころみた。
  • 金森 平和, 田辺 寿一, 岡本 理英, 田村 智彦, 藤田 浩之, 村田 興, 橋本 佳巳, 府川 仁哉, 原野 浩, 松崎 道男, 本村 ...
    1993 年 34 巻 6 号 p. 697-704
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1981年から1990年の間に当科を受診した,65歳未満の初回治療非ホジキンリンパ腫のうち,VEPA療法あるいはACOMEP-BD療法を行った66症例について臨床的検討を行った。年齢は22∼64歳(中央値47.5歳),男性43例,女性23例。臨床病期はI期1例,II期6例,III期27例,IV期32例で,VEPA療法は27例にACOMEP-BD療法は39例に行った。予後因子としてACOMEP-BD療法ではPSおよびLDH値,VEPA療法ではPSおよび骨髄浸潤が重要であった。ACOMEP-BD療法およびVEPA療法における寛解率,再発率,寛解期間,無再発生存率(3年),生存率(4年)はそれぞれ54%, 29%, 2∼34カ月(中央値22カ月),71%, 62%および48%, 77%, 2∼74カ月(中央値16カ月),38%, 26%であった。寛解導入療法として行ったACOMP-BD療法,VEPA療法のreceived dose intensityはそれぞれ0.85, 0.41で,強力な治療法によって再発率は有意に減少したが現在まで生存率に統計学的有意差はみられなかった。
  • 新井 望, 白井 達男
    1993 年 34 巻 6 号 p. 705-711
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    悪性リンパ腫の治療前後における肺局所の免疫能を解明するためにCOP-BLAM療法前後で末梢血(PB)と気管支肺胞洗浄液(BALF)の検討を行った。対象は未治療B細胞性リンパ腫10例で聴診所見に異常なく,胸部画像診断にて肺野に異常陰影の認めないものとした。治療前後でBALF中の総細胞数,マクロファージの軽度上昇を認めた。また,治療後肺炎を認めた症例ではPBは治療前後でCD4/CD8比に変化を認めなかったが,BALFでは肺炎を認めた症例では治療後CD4/CD8比の低下を認めた。2-color分析では,肺炎を認めた症例では治療前のBALF中のCD4+CD45 RA+細胞およびCD4+HLA-DR+細胞が低値であり,肺炎との関わりが示唆された。COP-BLAM療法前後でBALF中のCD4/CD8比の上昇がみられ,これは非ホジキンリンパ腫自体によるもの,化学療法による変化などが考えられた。
  • —再発後の治療と予後—
    生田 孝一郎, 藤岡 憲一郎, 高橋 浩之, 住田 裕子, 関口 晴之, 半沢 典生, 甲斐 純夫, 梶ケ谷 保彦, 船曳 哲典, 奥山 利 ...
    1993 年 34 巻 6 号 p. 712-717
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
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    3年以上完全寛解を持続した小児急性リンパ性白血病55例の晩期再発(3年以後の再発)について検討した。55例中13例(23.6%)が再発,部位は骨髄8例(睾丸同時再発2例,中枢神経同時再発1例,卵巣同時再発1例を含む)睾丸4例,中枢神経1例と髄外再発を多く認めた。初発時臨床所見と再発率の関係は男児で有意に晩期再発が多かった。年齢および白血球数は晩期再発とは無関係であった。また初回治療と晩期再発の関係は,VPL群は多剤併用療法群に対し2倍の再発率であった。再発後の予後は強力な多剤併用療法(HEX変法)と局所への放射線療法を行うことにより10例中5例に再度の長期寛解を得た。しかし初発時に多剤併用療法をうけた例の予後は不良であった。これらの症例では,骨髄移植を含むさらに強力な治療が必要である。
症例
  • 星野 充明, 畠 清彦, 三室 淳, 中村 幸夫, 芦沢 則文, 角田 三郎, 室井 一男, 須田 年生, 吉田 稔, 三輪 哲義, 大田 ...
    1993 年 34 巻 6 号 p. 718-722
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は33歳男性。急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia, AML) M1と診断され,化学療法および全脳照射をうけた。1989年8月human leukocyte antigen適合,ABO式血液型不適合の妹をドナーとしてcyclophosphamide・全身照射の前処置を行ったのちbone marrow transplantation (BMT)を施行した。BMTは重篤なgraft versus host disease (GVHD)なく成功したが10カ月後の1990年6月,呼吸器症状を呈し入院した。画像上,混合性陰影を認め,抗生剤,ST合剤,サイトメガロウイルス(CMV)高抗体価γ-globulin, ステロイドパルス療法を行った。病理診断は間質性肺炎で,カリニ原虫・CMVの所見は得られなかった。その後,両側気胸を合併した。当初,胸膜癒着術は効果なかったが,ステロイド減量とともに効果がみられた。今回の症例では,間質性肺炎は放射線照射によること,ステロイドが気胸を難治にしたことが考えられた。
  • 鬼塚 淑子, 佐藤 聖哲, 小池 道明, 石山 泰二郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 太田 秀一, 藤沢 龍一, 山口 朗, 田代 恒久
    1993 年 34 巻 6 号 p. 723-727
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は59歳女性で10年前より類乾癬を指摘されていた。1991年6月左頬部の無痛性腫脹を主訴に本学口腔外科を受診した。腫瘤は外科的に切除され,その標本よりリンパ腫を疑われて当科に入院した。標本はLSG分類により,組織学的また免疫学的にび慢性大細胞型B細胞悪性リンパ腫と診断された。加えて,皮膚の一部を生検したところ菌状息肉症への移行が疑われた。この症例の臨床病期分類は,骨髄およびほかの諸検査によりstage IEと決定した。そして化学療法(CHOP)と放射線療法によって治療された。類乾癬と悪性リンパ腫の合併はあまり報告がなく,リンパ腫の発生上の点から興味ある症例と考えられた。
  • 菊池 雅子, 小野 和俊, 嶋本 義範, 山口 雅也
    1993 年 34 巻 6 号 p. 728-732
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    自然寛解を示した成人T細胞白血病(以下ATL)の1症例を経験したので報告する。症例は50歳女性。全身のリンパ節腫脹,末梢血液の分葉した核を持つ異常リンパ球の存在のために当院に紹介された。末梢血中の特徴的な異常リンパ球,細胞表面マーカー,抗HTLV-I抗体が陽性であることよりATLと診断した。入院前より既に末血の異常リンパ球数は減少傾向にあったが,入院後も無治療にてリンパ節腫脹・LDH高値は徐々に改善し末血中の異常リンパ球は消失した。その後10カ月は無治療にて寛解状態を保っていたが発症より約1年後に増悪をきたし全経過約2年で死亡。サザンブロット法による遺伝子解析では寛解前と再発後で同部位にHTLV-I proviral DNAのモノクローナルな組み込みが認められた。この症例においては自然寛解の契機は不明である。
  • 北林 淳, 三浦 偉久男, 伊藤 俊広, 高橋 正典, 中鉢 明彦, 新津 秀孝, 間宮 繁夫, 三浦 亮
    1993 年 34 巻 6 号 p. 733-737
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    (症例1)41歳,女性,白血球増多の精査目的で当科受診。肝脾腫(-)。WBC 26400, Hb 14.3 g/dl, Plt 63.7万,NAPscore 21。Ph1染色体を認めCMLと診断。busulfan投与で汎血球減少となり中止した。骨髄で芽球の増加を認め,移行期と考えVP療法を施行。発病6年後の現在,NAP正常,Ph1染色体(-), M-bcr再構成(-)。
    (症例2)74歳,女性,WBC 14600, Hb 14.7 g/dl, Plt 78.0万にて当科紹介。脾腫(-)。NAPscore 53, Ph1染色体認め,CMLと診断,busulfanにより白血球減少し,中止したが,白血球1,900まで低下。骨髄染色体分析で4/20と正常核型がみられた。その後,白血球増加し,i(17q)の付加的異常を伴い,正常核型は消失。2症例ともbusulfanに高い感受性があり,骨髄低形成となり,Ph1消失したと考えられる。細胞遺伝学的に同じPh1染色体陽性でも,第1例は完全寛解中,第2例は正常核型を認めたものの急性転化で死亡したことは,CMLの多様性を示すものと考えられる。
  • 原田 芳巳, 片野 てい子, 中村 嘉孝, 足立 山夫
    1993 年 34 巻 6 号 p. 738-742
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は74歳,男性。右肩関節痛,白血球増多を主訴に1980年12月15日第1回入院。肝3横指,脾4横指触知し,RBC 899×104l, Hb 20.6 g/dl, Ret 7‰, Plt 34.2×104l, WBC 26,800/μlで成熟好中球86%。骨髄像ではNCC 16.4×104l, M/E=2.0。真性多血症(PV)と考え,瀉血施行,少量のcarboquone等も投与したが,赤血球減少のため'90年9月以降無治療にて経過観察。'91年7月25日,腰痛を主訴に第2回入院。肝2横指,脾8横指触知し,RBC 456×104l, Hb 12.5 g/dl, Ret 9‰, Plt 24.2×104l, WBC 41,500/μlで成熟好中球90%。骨髄像ではNCC 60×104l, M/E=14.3と著しい骨髄球系過形成を示した。異常細胞を認めず,染色体検査でPh1染色体も認めず慢性好中球性白血病(CNL)と診断した。PVのCNLへの移行の報告は極めて少ない。
  • 友安 茂, 川上 恵一郎, 鬼塚 淑子, 石山 泰二郎, 鶴岡 延熹
    1993 年 34 巻 6 号 p. 743-747
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は大球性貧血,赤血球大小不同,奇形赤血球,血小板減少を認めた60歳,女性である。骨髄は低形成で好中球の核異常,巨核球数の減少がみられた。染色体分析では47, XX, +8であった。Refractory anemiaと診断し,酢酸メテノロンを投与したが血液学的改善はえられなかった。Deferoxamine (2g/day)の24時間点滴静注を開始した。治療開始後10日ごろから赤血球,血小板は増加しはじめdeferoxamine投与中止後も赤血球の上昇傾向は持続した。骨髄は正形成となり巨核球数もほぼ正常まで回復した。しかし,初診時と同様の赤血球大小不同,奇形赤血球,MCH, MCHCの異常,染色体異常は続いていた。これらの結果から,deferoxamineは異常クローンを撲滅するのではなく,血球分化を誘導したものと推定された。Deferoxamineの副作用としては球後視神経炎がみられたが,deferoxamine投与中止で消失した。
  • 黒沢 一代, 相沢 信, 北條 均, 川西 慶一, 木村 之彦, 外山 圭助
    1993 年 34 巻 6 号 p. 748-752
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は36歳,男性。1985年8月発症の急性白血病(M5b)と診断後,第二寛解時に1987年1月,HLA一致ABO型不適合同胞より同種骨髄移植を受けた。移植後赤血球系の回復は遅延したが,抗A抗体陰性化に伴い移植後260日に赤血球系も回復した。しかし移植後350日より溶血の所見なく貧血が出現したため,赤芽球系抑制因子の検討を試みた。患者末梢血単核球の共培養系では,患者および正常者骨髄赤芽球系コロニー形成の抑制が認められ,さらにこの抑制活性は患者末梢血単核球培養上清中に認められた。この抑制因子はPHA刺激T細胞より強く産生され,セファデックスゲルでは分子量約11,000の分画に存在し,また大量のEPOによっても吸収は認められなかった。以上より,本因子は従来明らかとされてきたPTH, 抗EPO抗体,Spermine類,uremic toxinなどとは異なる赤芽球系に対する抑制因子と考えられ,T細胞より産生されることより同種骨髄移植後のなんらかの免疫学的異常がその要因と考えられた。
  • 鹿嶋 広久, 杉田 憲一, 榊原 均, 江口 光興, 古川 利温
    1993 年 34 巻 6 号 p. 753-758
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性リンパ性白血病(ALL)の治療中に低γ-グロブリン血症と脳梗塞を認めた症例を報告した。本症例では,中枢性白血病の予防のための放射線治療前後に発熱,発疹を認めた。さらに,髄液の蛋白の増加と末梢血で好酸球の増加があり,維持療法時に嘔気,嘔吐を認めた。感染症による脳梗塞の可能性から,各種ウイルスの同定を試みたが,同定し得なかった。薬剤については,Methotrexate (MTX), L-asparaginaseの影響を考えた。MTXの内服により,嘔気,嘔吐がみられ,MTXによる副作用の可能性は充分考えられた。放射線の影響についても考えられた。しかし,放射線照射後10年以上経過してからの発症が多いとされている。ウイルス,薬剤ないしは放射線の影響などを考えたが,確定するには至らなかった。低γ-グロブリン血症と脳梗塞との関係も不明であった。
  • 村岡 健司, 原 寿郎, 梶原 哲郎, 下田 悠一郎, 宮本 祐一, 宮崎 澄雄
    1993 年 34 巻 6 号 p. 759-763
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    HIV感染者においてはHIV感染自身または日和見感染などにより食道潰瘍が起こることが報告されている。症例は,21歳血友病B, HIV感染者で,大量吐血,下血を主訴として来院した。入院後の食道造影,内視鏡にて,中部食道に軽度不整類円型,周堤がやや盛り上がった単発性巨大潰瘍を認めた。抗潰瘍薬投与を行ったが,嚥下痛など臨床症状改善せず,1カ月後の食道造影では上部食道にも巨大潰瘍が現れた。本症例の原因については病理組織検査,培養を行ったが不明であった。その後,一般的な消化性潰瘍の治療や,単純ヘルペス,カンジダに対する治療に反応しなかったため,Sucralfate+Dexamethasoneの経口投与を行ったところ,嚥下痛の消失,潰瘍の縮小を認めた。われわれが調べえた範囲では本邦で初めてHIV感染者で巨大食道潰瘍を合併した症例を経験したので報告した。
  • 藤井 浩, 中川 均, 薗田 精昭, 葛山 由布子
    1993 年 34 巻 6 号 p. 764-768
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    末梢血幹細胞移植術(PBSCT)後,15カ月間寛解を維持しているRAEB-T症例を報告した。症例は51歳の男性。1991年8月末梢血液異常にて入院。白血球数3,580/μlで芽球19%, 骨髄はやや低形成性で芽球21.2%認め,芽球の多くはアウエル小体(+)。MDS (RAEB-T)と診断し,Ara-C少量療法に続いてBHAC-VEP療法を施行し,2カ月後に完全寛解に到達。Ara-C大量療法後の骨髄回復期にCS-3000を用いて1回のアフェレーシスを施行。CFU-GM 4.3×105/kg, BFU-E 4.3×105/kg, CFU-Mix 0.68×105/kgの末梢血幹細胞を採取し,液体窒素中に保存。11月ブスルファン16 mg/kg, シクロホスファミド120 mg/kgにrG-CSFを併用した前処置後,PBSCTを施行。輸注細胞数はCFU-GM 0.8×105/kg, BFU-E 0.9×105/kg, CFU-Mix 0.14×105/kg。移植後17日目に好中球数は500/μl以上,63日目に血小板数は5万/μl以上に回復した。PBSCT後完全寛解を15カ月維持している。PBSCTはRAEB-Tに対する有用な治療法と思われる。
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