臨床血液
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34 巻, 8 号
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臨床研究
  • 吉田 彌太郎, 原 宏, 高橋 豊, 山口 延男, 川越 裕也, 柴田 弘俊, 大野 陽一郎, 手島 博文
    1993 年 34 巻 8 号 p. 895-903
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    血液疾患を中心とする各種疾患413例,および血液学的正常者146例の血中erythropoietin (EPO)濃度を,radioimmunoassay (RIA)法により測定し,その臨床的有用性について検討した。また日内変動についても併せて検討した。正常値は性差がなく,13.5∼27.1 mlU/ml (logM±SD)であった。真性多血症では,未治療の7例全例において5.5 mIU/ml以下の低値を示した。腎性貧血以外の貧血症では,血中EPO濃度とHt値は疾患ごとに固有の負の相関を示し,再生不良性貧血(AA)がこの関係においてもっとも高いEPO濃度を示した。AAではまた重症度の進行に伴い血中EPO値も高値化する傾向が認められ,骨髄移植実施例では正常値化していた。溶血性貧血においては,発作性夜間血色素尿症例のEPO値が例外的に高値を示した。これらの結果から,血中EPO濃度は骨髄の赤血球造血能を良く反映する指標であると考えられ,各種の血液疾患の鑑別および病態把握に応用できる可能性が示された。血中EPO濃度は夜高くなる日内変動を示した。
  • 藤井 浩, 中川 均, 薗田 精昭, 葛山 由布子
    1993 年 34 巻 8 号 p. 904-911
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    recombinant granulocyte colony-stimulating factor (rG-CSF)併用末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を施行した11症例において造血回復を検討した。悪性リンパ腫8例,骨髄腫2例,ALL 1例で,rG-CSFを併用したキロサイド大量療法やエトポシド大量療法後の骨髄回復期にCS-3000を用いてPBSCを採取・凍結保存した。超大量化学療法後に1.9∼18.1×105/kg(5×105/kg以上は9例)のCFU-GMを輸注した。白血球数1,000/μl以上,好中球数500/μl以上,網状赤血球数1%以上,血小板数5万/μl以上に到達するのに,それぞれ8∼12(平均9)日,8∼12 (9)日,8∼27 (16)日,9∼38 (15)日を要した。輸注CFU-GM数(log)と移植後の好中球数が500/μl以上,血小板数が5万/μl以上,網状赤血球数が1%以上に回復するに要した日数との間に,それぞれr=-0.82 (p<0.005), -0.48, -0.57 (p<0.05)の負の相関を認めた。4∼8週後に3例で好中球数,9例で血小板数の一時的減少がみられたが,その後回復し以後安定した。rG-CSFを併用した時,安全なPBSCTに必要な最低CFU-GM数は2×105/kgと考えられた。
  • 有山 武志, 稲澤 譲治, 秋山 祐一, 吉田 彌太郎, 大熊 稔, 永井 謙一, 堀内 篤, 阿部 達生
    1993 年 34 巻 8 号 p. 912-918
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄移植後に残存するレシピエントのクローンや微小残存病変を検出することは移植の正否判定だけでなく,予後の推定や治療計画の決定にも重要となる。今回,10例の異性間骨髄移植例で移植後の微小残存クローンの同定を,間期核を対象とした蛍光in situ hybridization (FISH)法で検討した。FISH法は0.1%のオーダーで微小残存クローンを検出することが可能で,高感度,迅速,簡便でありかつ定量性,再現性を有した。異性間骨髄移植後の生着確認,微小残存クローンの検出,移植片対宿主病の判定,再発の予知に有用な手法であることが示唆された。以上より一般臨床検査として広く普及可能な検査法になりうると考えられた。
  • 浦部 晶夫, 溝口 秀昭, 高久 史麿, 宮崎 保, 谷内 昭, 新津 洋司郎, 三浦 恭定, 武藤 良知, 藤岡 成徳, 野村 武夫, 外 ...
    1993 年 34 巻 8 号 p. 919-927
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    貧血を伴う多発性骨髄腫患者(Hb濃度10 g/dl未満)に対して,遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO, エポエチンアルファ)を3,000∼24,000IU/bodyの漸増法にて連日皮下投与し,その安全性と有効性を検討した。投与前非輸血例はHb濃度が1 g/dl以上上昇した症例,投与前輸血例は輸血量が50%以上減少した症例を有効例と判定した。全体の有効率は52.6%(10/19例)であった。また,貧血の改善に伴い自他覚症状の改善が認められた。血中EPO濃度が低い症例の方が有効例が多い傾向がみられた。有効例でのrHuEPOの投与量は血中EPO濃度が低い症例では,6,000 IU/body/日までが多く,血中EPO濃度の高い症例では,12,000 IU/body/日以上を必要とする症例が多かった。特に重篤な副作用,臨床検査値異常は認められなかった。以上の結果より,多発性骨髄腫に対するrHuEPO投与は,貧血改善ならびに輸血量の軽減に有用な治療法と考えられた。
  • 浦部 晶夫, 溝口 秀昭, 高久 史麿, 宮崎 保, 谷内 昭, 新津 洋司郎, 三浦 恭定, 武藤 良知, 藤岡 成徳, 野村 武夫, 外 ...
    1993 年 34 巻 8 号 p. 928-936
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    骨髄異形成症候群患者47例(Hb濃度10 g/dl未満)に対して遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO, エポエチンアルファ)を3,000∼24,000 IU/body/日の漸増法にて連日皮下投与し,有効性および安全性を検討した。投与前非輸血例はHb濃度が1 g/dl以上上昇した症例,投与前輸血例は輸血量が50%以上減少した症例を有効例と判定した。全体の有効率は,20.6% (7/34)であった。FAB分類ではRAとRARSに効果が認められた。有効例においては24,000 IUまでの増量を必要とする症例が多かった。特に問題となる重篤な副作用,臨床検査値異常は認められなかった。以上の結果より,骨髄異形成症候群に伴う貧血に対するrHuEPO投与は有用であると考えられた。
症例
  • 辻野 一三, 小熊 豊, 山口 潤
    1993 年 34 巻 8 号 p. 937-941
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は40歳,女性。平成2年10月,発熱,多飲,多尿を主訴に当科入院。空腹時血糖は471 mg/dlに達し,腹部CTで肝,両側腎および腹腔内リンパ節の腫脹を認めた。血糖はインスリンの投与でコントロールされたが,腹腔内リンパ節腫脹は持続し開腹リンパ節生検を行った。腫脹した腹腔内リンパ節から4個,左腋窩リンパ節から1個の標本を採取し,そのうち4個は反応性リンパ節炎の組織像を示した。しかし右腎基部より採取した標本では,限局性の壊死とマクロファージ,免疫芽球の浸潤を認め,亜急性壊死性リンパ節炎の病像を呈した。本疾患におけるリンパ節腫脹は若年女性の頸部に好発し,腹腔内リンパ節に発症する例はきわめてまれで,本症例が本邦第2例目に当たると考えられる。今後は腹腔内リンパ節腫脹の鑑別に本疾患も念頭に入れる必要性があると思われ呈示する。
  • 三浦 偉久男, 中鉢 明彦, 橋本 啓子, 西成 民夫, 仁村 隆, 三浦 亮
    1993 年 34 巻 8 号 p. 942-945
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Inv(16)(p13q22)を伴った急性骨髄性白血病の3例を5年以上経過観察し得たので報告する。症例1 (M4Eo): 1982年10月(45歳)発症。1983年1月,1984年8月に再発し再寛解導入し得たが,1987年12月22日胃癌で死亡した。全経過5年1カ月。症例2 (M5b): 1983年2月(26歳)発症。1984年骨髄で再発,再寛解後4月,7月に髄膜浸潤をきたし,1984年12月に骨髄で再発した。1985年9月には,脳実質内に腫瘤を形成したが,放射線および化学療法でCT, MRI上ほぼ消失し,10年経過し現在は化学療法を中止し経過観察中。症例3 (M4Eo): 1987年7月(37歳)発症。1988年6月に再発したが,1991年より治療を中止し,5年8カ月経過し,外来通院中。3症例とも5年以上生存しており,この染色体異常を伴った症例は,化学療法のみで治癒可能と考えられる。
  • 田野崎 隆二, 岡本 真一郎, 高橋 聡, 井上 登紀子, 菊野 薫, 青木 克益, 高田 雅史, 入江 誠治, 嶋根 みゆき, 東條 有伸 ...
    1993 年 34 巻 8 号 p. 946-951
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Recombinant human granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (rhGM-CSF)はcyclespecificな抗腫瘍剤との併用で,これに感受性のある急性骨髄性白血病(AML)に対してその抗腫瘍効果を増強する可能性が知られている。この理論に基づいて,治療抵抗性AML (FAB:M1)にrhGM-CSFを併用した前処置法を用いて自家末梢血幹細胞移植を施行した。症例は,34歳,男性。初回寛解導入療法2コースで完全寛解に至るも,6カ月間に中枢神経浸潤を伴う2度の再発をきたした。大量のcytosine arabinoside (Ara-C)とEtoposideによる化学療法にても寛解は得られず,中枢神経浸潤が増悪した。この時点で,本症例の白血病細胞の増殖がrhGM-CSFで刺激されることがin vitroでの検討で示唆されたことより,前処置の抗白血病効果を選択的に増強させることを目的に,全身放射線照射(TBI) (12Gy), Ara-C (3 g/m2×8)にrhGM-CSF (250 μg/m2/day, ×4)を併用した前処置を施行し,その後に自家末梢血幹細胞を輸注した。前処置中には発熱と軽度の肝機能障害以外は重篤な副作用はみられず,2カ月の完全寛解が得られた。本症例は,rhGM-CSF併用前処置法の適応,安全性,有用性に関する今後の検討を進める上で参考になるものと思われる。
  • 加納 正, 井上 真由美, 大熊 稔
    1993 年 34 巻 8 号 p. 952-956
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)の診断2年後から急速に原発性アミロイド症(PA)に進展するという,余り例をみない症例を経験した。症例は1925年生の男性。90年6月単クローン性免疫グロブリン血症(IgG-λ型M成分=1 g/dl)が偶然発見され,MGUSと診断。2年間安定した経過を示したが,その後5カ月間に全身倦怠感,腹部膨満感,下腿と顔面浮腫,皮下出血,体動時息切れなどの諸症状が次々と重層的に出現した。皮膚,胃粘膜生検でアミロイド沈着を確認した。M成分量の増量なく,骨髄形質細胞数に変動はなかった。諸検査は5カ月間でアミロイド沈着が全身性に急速に進展する状態を示した。心のほか,肝(閉塞パターンの肝酵素異常),脾(Howell-Jolly小体)のアミロイド症も推定された。MGUSからPAへの変貌はM成分量の増量を伴わずにみられることに注目しなければならない。MGUSの診療に当たって,骨髄腫と同様PAの早期診断も念頭に置くべきである。
  • 岡本 理英, 原野 浩, 田村 智彦, 田辺 寿一, 藤田 浩之, 府川 仁哉, 金森 平和, 本村 茂樹, 毛利 博, 大久保 隆男, 松 ...
    1993 年 34 巻 8 号 p. 957-961
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    臨床的には慢性骨髄性白血病(CML)と考えられ,Ph1染色体陰性,bcr再構成が認められない疾患群があり,そのなかに1990年,Stewartらの提唱したNeutrophilic myelofibrosisがある。今回本疾患と思われた症例を経験したので報告する。症例は53歳男性。平成3年5月,左側腹部痛を主訴に近医受診。白血球増多(58,000/μl)および脾腫を認め,CMLが疑われ当科受診。骨髄穿刺では過形成で,各成熟段階の顆粒球系細胞の増加を認め,骨髄生検では中等度の線維化がみられた。染色体検査は47, XY, +9q-, 9q-であった。bcr再構成は認められず,RT-PCR法でもbcr-ablキメラmRNAは,発現していなかった。また,ras-mutationの検索でも,point mutationは認めなかった。分類不能の慢性骨髄増殖性疾患を検討する上で興味ある症例と考えられた。
  • 加納 正, 和泉 俊明, 大熊 稔
    1993 年 34 巻 8 号 p. 962-966
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    初発症状としてみられたamyloid arthropathyの診断の遅れにより,腎不全をきたした多発性骨髄腫(MM)例を経験した。症例:1932年生,女性。1992年2月から3月にかけて,両側第1∼3指先端部の知覚異常とともに指節間関節にはじまり,両側,対称性,多発性に関節症状(疼痛,腫脹,運動制限,朝のこわばり)が出現した。RAの治療は無効。同年5月には腎不全のため透析を開始した。同年6月京大病院に紹介。血清IgG-λ型M成分(5.4 g/dl), 尿中λ型Bence Jones蛋白は陽性(4.5g/日),骨髄中形質細胞の増多(36%), 骨打ち抜き像(+), 血清リウマチ因子(-), 関節腔正常,Tc-99m (V) DMSAアミロイドシンチで関節に異常集積像,滑膜生検でsynovial villiにCongo red陽性アミロイド沈着を証明。Amyloid arthropathy, 手根管症候群,腎不全を合併したMMと診断した。Melphalan, prednisolone (MP)の間けつ投与により,関節症状の改善とともにMMは寛解に入った。Amyloid arthropathyはAL型アミロイド症のまれな病像の一つで,しかもRAと類似し診断が遅れ易い。Amyloid arthropathyについて臨床上の問題点を考察した。
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