臨床血液
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35 巻, 7 号
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臨床研究
  • —寛解導入効果を中心に—
    岡本 昌隆, 丸山 文夫, 都築 基弘, 野村 俊之, 宮崎 仁, 脇田 待子, 小島 博嗣, 祖父江 良, 松井 俊和, 井野 晶夫, 江 ...
    1994 年 35 巻 7 号 p. 635-641
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1991年1月より92年12月末日までに,中高悪性度非Hodgkinリンパ腫(NHL)初回寛解導入不応6例,再発11例の計17例にpilot studyとしてdexamethasone, etoposide, ifosfamide, carboplatin併用療法(DeVIC)を実施し,顆粒球減少にはG-CSFを投与した。治療は原則として3週間毎に実施した。17例に1∼6コースの本療法を行い,敗血症で早期死亡した1例を除く評価可能16例中6例(38%)に完全寛解を得,4例は部分寛解となり,有効率は63%であった。観察期間中央値15カ月で,完全寛解中に急性単球性白血病を併発した1例を含む7例が死亡し,9例が生存中であり,治療開始1年後の生存率は62.5%, 50%生存期間は15+カ月である。3例に敗血症を認め,うち1例は早期死亡をしたが,他の非血液学的副作用は全般に軽度であった。少数例の検討ではあるが,本療法はADRを含む前治療に不応,および再発NHL症例のsalvage療法としては良好な結果であり,有用性は高いと考えられる。
  • 栗山 謙, 川西 慶一, 岩瀬 理, 中野 優, 外山 圭助
    1994 年 35 巻 7 号 p. 642-648
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    多発性骨髄腫(MM) 21例と特発性単クローン性高γグロブリン血症(MGUS) 10例について末梢血中の免疫調節細胞を検討した。MGUSおよびIgG, IgA型MM病期(CS) I+IIではCD3+細胞は減少し,CD3-CD56+細胞は増加していた。しかしCD4/8比,CD4+細胞に占めるCD45RA+細胞とCD29++細胞の割合,さらにCD8++T細胞中のS6F1++細胞の比率は対照と差はなかった。一方,MM(IgG, IgA型)CS IIIではCD3+細胞は減少していたが,CD3-CD56+細胞に変動はなかった。なおCD4/8比は低値で,CD4+細胞中のCD45RA+細胞の割合は低下し,CD29++細胞の比率は高値であった。またCD8++ T細胞中のS6F1++細胞の割合も高値を示した。しかしBence Jones蛋白(BJP)型のMM 2例ではCS IIIにも拘らず各T細胞サブセットに同様の変化は認めなかった。一般にM蛋白に発現されるidiotype量はMGUSよりMMで多く,特にCS IIIではBJP型を除き増加は著明と考えられる。今回の結果はM蛋白由来のidiotype量が免疫調節細胞の動態に影響を及ぼしている可能性を示唆していると思われた。
  • 森井 武志, 西川 潔, 下山 丈人, 山中 貴世, 松本 雅則, 八木 秀男, 三馬 省二, 藤村 吉博, 吉岡 章, 成田 亘啓
    1994 年 35 巻 7 号 p. 649-656
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,末梢血幹細胞採取物中のCD34陽性細胞率をヒストグラム表示および側方散乱光—蛍光(SSC-FL)表示を用いたフローサイトメトリー法で算出し,比較検討した。結果はすべての検体でヒストグラム表示法ではSSC-FL表示法に比べCD34陽性細胞率が高値であった。その原因として,一部の単球がCD34モノクローナル抗体に非特異的に反応していたが,ヒストグラム表示法ではこれらの非特異的反応とCD34陽性幹細胞とを識別できないためと考えられた。一方,SSC-FL表示法ではより正確に測定されると考えられた。現在ほとんどの外注検査センターでは,ヒストグラム表示法によりCD34陽性細胞率が算出されているが,SSC-FL表示による算出法で測定することが望まれる。
  • 堀部 敬三, 片山 功, 宮島 雄二, 松本 公一, 福田 稔, 吉田 潤, 工藤 寿子, 加藤 剛二, 小島 勢二, 松山 孝治
    1994 年 35 巻 7 号 p. 657-664
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    小児T細胞性腫瘍に対するL-asparaginase頻回投与を含む治療プロトコール8704Tの治療成績を報告した。対象は,T細胞性白血病(T-ALL) 15例(pre-T型2例を含む)とリンパ腫(T-NHL) 11例で,年齢は,3歳∼14歳(中央値6歳)。T-ALLの初診時白血球数は,6,800∼1,210,000/μl(中央値45,000/μl)で,T-NHLの病期は,III期6例,IV期5例で,組織型はリンパ芽球(LB)型8例,大細胞(LC)型3例であった。治療は2年間で,観察期間は14∼78カ月(中央値42カ月)であった。23例が寛解し,6例に初回寛解で骨髄または末梢血幹細胞移植した。17例でプロトコール遂行し,うち14例が初回寛解生存中で,1例が麻疹肺炎で死亡し,2例が再発した。5年無病生存率は,ALL 76.1%, NHL 65.5%と差はなかった。NHLの組織型別ではLB型の87.5%に対し,LC型は33.3%と予後不良であった(P=0.19)。ALLでは,CD2, 5, 7陽性例の88.7%に対し,CD7のみ陽性pre-T型の2例は寛解導入不能または再発し,有意に予後不良であった(P=0.0001)。本治療法によりLB型T細胞性腫瘍の予後改善が期待できた。
症例
  • 越智 慶子, 天野 正道, 曽田 泰, 戸川 敦, 高久 史麿
    1994 年 35 巻 7 号 p. 665-669
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は27歳女性。1991年12月より浮腫,動悸が出現した。翌年1月某院に入院し,縦隔腫瘍と心膜液貯留が認められ心膜腔ドレナージを施行した。心膜液中の細胞より悪性リンパ腫が疑われ,放射線治療目的にて1月末当院に転院となった。この時点で末梢血液中に芽球が出現し,末梢血および心膜液中の芽球はPeroxidase染色陰性,PAS染色弱陽性でCD7, CD33の表面マーカーを有していた。転院後,留置ドレナージからの心膜液の排出が悪くなり心膜タンポナーデにて死亡した。剖検では胸線,心外膜に強い腫瘍細胞浸潤があり心膜炎を認めた。縦隔腫瘍細胞ではJHのDNA再構成は認められたが,TCRβの再構成は認められなかった。以上CD7陽性CD4およびCD8陰性CD33陽性の未分化白血病/リンパ腫で急激な臨床経過を呈した1例を経験したので報告する。
  • 根上 利宏, 太田 正之, 奥田 洽爾, 清水 史郎
    1994 年 35 巻 7 号 p. 670-675
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    38歳,女性。感冒様症状後,一過性意識消失発作にて平成4年5月10日高岡市民病院入院。末梢血は小球性低色素性貧血(MCV 62 fl, MCH 14.4 pg, Hb 4.1 g/dl), 白血球数2,600/μl, 血小板数7.9万/μlと汎血球減少症を呈した。網状赤血球は6‰(補正値2.3‰, 17,000/μl)と低値であり,骨髄像で赤芽球の著減,前赤芽球以後の分化が停止した急性赤芽球癆,巨大前赤芽球の出現が認められた。血清抗parvovirus抗体はIgG, IgM共に陽性,骨髄液よりparvovirus DNAが証明された。本症例では溶血性貧血を示唆する所見はなく,末梢血液所見,骨髄可染鉄の欠如と鉄剤への造血反応より鉄欠乏性貧血を有した患者にparvovirus B19感染にてaplastic crisisをおこしたと診断された。溶血性貧血患者がparvovirus B19感染にてaplastic crisisをおこすことが知られているが,鉄欠乏性貧血患者においても著明な造血障害を引き起こすことが示された。
  • 齋藤 誠二, 林 恭一, 大熨 泰亮, 川島 邦博, 松友 誠治, 田川 真也, 吉野 正, 西内 律雄, 木村 郁郎
    1994 年 35 巻 7 号 p. 676-681
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は1985年6月,59歳時,全身のリンパ節腫大と高カルシウム血症をきたし,左鼠径リンパ節生検でびまん性大細胞型リンパ腫と診断され,CHOP療法により完全寛解(CR)となった。その後は無治療で経過観察されていたが,1992年1月,左腋窩,左鎖骨上窩のリンパ節腫大と脾腫が出現し,左腋窩リンパ節生検の結果,濾胞性中細胞型リンパ腫と診断された。その後腫瘤は自然退縮し,緩慢な経過を呈している。中ないし高悪性度リンパ腫のCR後に低悪性度リンパ腫が出現したとの報告はまれであるが,本症例のように長期CR後に再発を疑わせるリンパ節腫大を認めた場合には組織型の再確認が重要と考えられた。
  • —本邦成人例の検討を加えて—
    高柳 典弘, 幸田 久平, 平山 泰生, 松本 修二, 江副 彩乃, 中澤 修, 武田 光顕, 辻 彰子
    1994 年 35 巻 7 号 p. 682-688
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は,21歳,男性。発熱,黄疸,腹痛,全身倦怠感を主訴として入院した。臨床所見としては,肝機能異常,肝脾腫,汎血球減少,DICを認めた。また入院時よりEBウイルス抗体価の有意な変動があり,骨髄所見では多数の成熟した組織球による血球貪食像が観察されたことから,Virus-associated hemophagocytic syndrome (VAHS)と診断した。さらに入院時の動脈血ガス分析では,PaO2の低下と胸部CT上明らかな間質性肺炎を認めた。診断後直ちにステロイド療法を開始したところ,間質性肺炎と共に臨床症状の著明な改善が見られた。本邦報告成人発症VAHS 20例の臨床的検討と間質性肺炎合併について考察を加えて報告する。
  • 奥田 哲也, 湯本 義一
    1994 年 35 巻 7 号 p. 689-693
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    17歳の女性が発熱,全身リンパ節腫脹を主訴に当科紹介入院となった。汎血球減少,高LDH血症,高TG血症,ferritin高値の存在,さらに骨髄で成熟組織球による血球貪食が認められたことから,virus-associated hemophagocytic syndrome (VAHS)を疑ったが,生検リンパ節の病理所見では血球貪食はみられず,好中球浸潤を欠く広範な壊死を認め,亜急性壊死性リンパ節炎(subacute necrotizing lymphadenitis, SNL)と診断された。このような非典型的SNLの報告は少なく,VAHSとSNLの関係を考える上で貴重な症例と思われるので,若干の文献的考察を加え報告する。
  • 北島 晴夫, 安西 加奈子, 久保 政勝, 星 順隆, 赤塚 順一
    1994 年 35 巻 7 号 p. 694-698
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は3歳女児で,平成4年4月より出血斑が出現,同5月26日,当科精査加療目的の入院となった。入院時,血色素8.6 g/dl, 白血球2,500/μl, 血小板2.7×104lの汎血球減少を認めた。骨髄は低形成であったが,3系統の血球に異形成がみられ,低形成性骨髄異形成症候群と診断した。治療には2クールのパルス療法と経口プレドニン投与を行ったが,反応は不良で,輸血に頼らざるをえなかった。そこで,平成5年1月,セファランチン連日20 mg経口投与と,週2回の遺伝子組み換えヒト・エリスロポエチン(rhEPO) 3,000U静注を開始したところ,投与3カ月ころより奏効しはじめ,血色素は4.1 g/dlより11.9 g/dlへ,血小板は4,000/μlより3.9万/μlへと改善した。rhEPOは平成5年9月,漸減,中止とし,現在はセファランチンと少量プレドニン投与により,血色素は11 g/dl台,血小板数は3万台で安定している。
  • —赤芽球系コロニー形成におよぼす薬剤の影響—
    藤原 光, 梅田 祥克, 中村 嘉彦, 野崎 宏幸, 小川 吉明, 増本 暁, 福田 竜基, 川田 浩志, 渡辺 茂樹, 米倉 修司, 市川 ...
    1994 年 35 巻 7 号 p. 699-703
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    84歳男性。心不全と肺炎のためerythromycin (EM)を含む抗生剤と利尿剤(furosemide)の投与中に中等度の大球性貧血を認めたが,治療の中止後に貧血は改善した。再度EMとfurosemideの投与中にHb 6.3 g/dlと高度の貧血が出現し,輸血を受けた。骨髄では赤芽球系細胞が0.2%と著減していた以外に異常を認めず,当院転院後にはすでに貧血の改善傾向と網状赤血球が80‰と増加していた。骨髄の赤芽球も41.5%と増加していたため,無治療にて経過を観察したところ貧血は改善した。臨床経過より薬剤性の赤芽球癆(PRCA)と診断した。患者および正常人4例より得た骨髄を血漿凝固法にて培養し,erythroid colony forming unit (CFU-E)形成に対するEMおよびfurosemideの影響を検討した。患者ではfurosemide添加によりCFU-E形成は著明に抑制されたが,EMでの抑制はより軽度であった。さらに,両薬剤を同時に添加した場合には患者ならびに正常人でもCFU-E形成の著しい抑制が認められた。これらの成績から,本症例ではEMとfurosemideの同時投与,特にfurosemideがPRCAの発症に関与していると推測された。現在までにEMおよびfurosemideによる薬物起因性PRCAの報告はないが,両薬剤の併用投与の副作用として今後PRCAに注意すべきであると考えられる。
  • 黒澤 晋一郎, 長田 恵, 斎藤 恒博, 新井 貴士, 百瀬 卓志, 守尾 一昭, 三橋 裕行
    1994 年 35 巻 7 号 p. 704-709
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    治療に抵抗性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)にプロスタサイクリン(PGI2)の誘導体製剤ベラプロストナトリウムを併用したが,これが契機となり寛解に至った1例を経験した。症例は51歳男性。奇異行動にて精神科に入院後,貧血と血小板減少のため内科へ転科した。血小板減少性紫斑,破砕赤血球を伴う溶血性貧血,精神神経症状,発熱の四徴よりTTPと診断した。副腎皮質ステロイド剤,血漿交換,デキストラン,ビンクリスチン,抗血小板剤を併用したが十分な効果が得られず,ベラプロストを投与したところ,著効を示し寛解に至った。血液中のPGI2安定化因子の低下がTTP発症に関与することが報告され,apolipoprotein A-IはPGI2安定化因子であることが明らかにされている。本症例ではapolipoprotein A-Iが異常低値であり,PGI2の安定化誘導体が著効を示したことなどから,TTPの病因を探るうえで貴重な症例であると考えられた。
短報
  • 平林 憲之, 後藤 整一, 磯谷 千穂, 富田 章裕, 大野 稔人
    1994 年 35 巻 7 号 p. 710-712
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    A case of successful pregnancy after allogeneic bone marrow transplantation (BMT) in a woman with severe aplastic anemia conditioned with 200 mg/kg cyclophosphamide and 4.5 Gy total lymphoid irradiation (TLI) at the age of 15 years is reported. She delivered a normal child 92 months after BMT. A male with paroxysmal nocturnal hemoglobinuria received allogeneic BMT at the age of 22 years is described as a second case. He was conditioned with 200 mg/kg CY and 7.5 Gy TLI and parented a normal child 32 months after BMT. These observations demonstrate that normal pregnancy can follow high dose chemotherapy and TLI.
  • 小林 昭一, 山本 敏晴, 秋葉 千代美, 片山 典子, 坂井 慶子, 丸田 壱郎, 小川 浩司, 藤沢 信, 酒井 リカ, 田口 淳, 富 ...
    1994 年 35 巻 7 号 p. 713-716
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Auer-rod-like bodies were found in plasma cells from a 74-year-old man with plasma cell dyscrasia. These bodies exhibited red purple staining by May-Giemsa staining and were indistinguishable from Auer bodies often found in acute myeloid leukemia. These bodies, however, failed to stain with peroxidase and showed acid phosphatase positivity. Bone marrow examinations were performed three times at the sternum or illiac crest. The proportions of plasma cells were 4.4%, 3.4% and 3.8%. The Auer-rod-like bodies were found in 0.05% (2/3824), 0.07% (4/6883) and 0.08% (2/2656) of the plasma cells.
  • 津田 弘之, 土井 秀樹, 稲田 知久, 城野 憲二
    1994 年 35 巻 7 号 p. 717-719
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    A 34-year-old woman was admitted because of pancytopenia with DIC in the 28th week of pregnancy. Bone marrow aspirate demonstrated 81.2% abnormal cells which showed Auer bodies and faggot formation. Chromosomal analysis demonstrated an abnormality, t(15;17). The patient was diagnosed as having acute promyelocytic leukemia (APL) and started to receive treatment with all-trans retinoic acid (ATRA) 70 mg/body/day per os. She had a cesarean section and gave birth to a female infant in the 29th week of pregnancy. An increase of WBC counts was observed on the 9th hospital day, then chemotherapy with anti-cancer agents was performed additionally. Complete remission was achieved on the 27th hospital day. Management of pregnant patients with APL could be improved by using ATRA instead of conventional combinations of cytotoxic agents.
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