臨床血液
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35 巻, 8 号
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臨床研究
  • —造血器腫瘍114例の成績—
    松本 公一, 堀部 敬三, 赤塚 美樹, 南 三郎, 松山 孝治, 平林 憲之, 谷本 光音, 山田 博豊, 祖父江 良, 森島 泰雄, 小 ...
    1994 年 35 巻 8 号 p. 729-737
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    造血器腫瘍に対するHLA不適合骨髄移植114例を検討した。ドナー別では血縁者間表現型適合(RM0) 20例,HLA 1座不適合(RM1) 32例,2座以上不適合(RM2) 11例,非血縁者間表現型適合リンパ球混合培養試験陰性(UR0) 37例,同陽性(UR1) 14例であった。104例で生着が得られ,4例(RM1(1), RM2(2), UR0(1))で拒絶を認めた。II度以上急性GVHDの発症率は,RM0: 25%, UR0: 33%, UR1: 39%, RM1: 47%, RM2: 50%であったが,UR群(UR0, UR1)でIII度以上急性GVHDの比率が高かった。慢性GVHDの発症率は,RM0: 28%, RM1: 65%, UR0: 71%, UR1: 75%でUR群はRM0に対して有意に高かった。3年無病生存率は,RM1 (50%), UR0 (42%)はRM0 (45%)に匹敵したが,RM0以外では移植例の50%以上がGVHDなど重篤な合併症で死亡した。HLA適合血縁者ドナーがいない場合,HLA適合非血縁者またはHLA 1座不適合血縁者がドナー候補と考えられたが,その選択にあたっては,移植後管理の向上とともに,より精度の高い組織適合性の評価法が求められた。
  • —骨髄提供に対するドナーの心理—
    矢崎 信, 森島 泰雄, 小寺 良尚, 山内 辰也, 山田 博豊, 北折 健次郎, 祖父江 良, 堀部 敬三, 仁田 正和, 谷本 光音, ...
    1994 年 35 巻 8 号 p. 738-743
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    東海骨髄バンクでは,1989年10月から1992年までに登録された患者1,415とHLA-A, B検査済みドナー3,000人とでコーディネイションを行った。その結果,HLA-A, B一致のドナーが患者の757名,HLA-DR一致のドナーが患者の206名,MLC検査で移植可能と判定されたドナーが患者の80名に見いだされ,最終的に55例の非血縁者間の骨髄移植を仲介した。最も多いコーディネイション中の中断の理由は,ドナーの家族の反対であった。東海骨髄バンクを介して骨髄提供を行った55例のドナーに,提供後1カ月の時点にアンケート調査を行った。ドナーの92%は,提供したことに満足していた。提供したことを後悔している人はいなかった。また,73%の人は将来もう一度提供してもいいと考えていた。79%のドナーは,骨髄移植された患者の移植後の経過を知りたいと思っていた。この東海骨髄バンクの経験が日本骨髄バンクで生かされることを期待する。
  • 高桑 良夫, 宮澤 啓介, 吉川 治, 外山 圭助
    1994 年 35 巻 8 号 p. 744-750
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    血清フェリチン濃度は体内の貯蔵鉄量を求める指標として臨床的に用いられてきている。concanavalin-Aに対する結合性から血清フェリチン(sFt)には,glycosylated (secreted) Ftとnon-glycosylated (non-secreted) Ftの存在が既に証明されているが,著者らは,鉄過剰症(n=10), 白血病(n=36), 悪性リンパ腫(n=10), 多発性骨髄腫(n=3), 骨髄異形性症候群(n=12)の血液疾患について,glycosylated serum Ft (Glyco-sFt)の総sFtに対する比率とGlyco-sFt量をconcanavalin-Aとの結合能から測定し検討した。Glyco-sFtの比率は,対照(n=18, 78.1±7.4%), 鉄過剰症(61.1±17.8%)を示し,造血器腫瘍(43.8±23.4%, p<0.001)と比較し高値を示した。鉄過剰症におけるGlyco-sFt量は,高フェリチン血症をしめす造血器腫瘍より高値であった(p<0.005)。これより,Glyco-Ftの測定は,鉄過剰症と造血器腫瘍の鑑別に臨床上有用であることが示唆された。
症例
  • 柴原 直利, 王 伯銘, 斉藤 康栄, 佐藤 重明, 寺村 正尚, 溝口 秀昭
    1994 年 35 巻 8 号 p. 751-755
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    周期性血小板減少症に赤芽球系低形成を合併した75歳の一女性例を報告した。血小板数は,28∼30日の周期で,1.0∼50.0×104lの規則的変動を示した。血小板数変動と各種パラメータの検討では,骨髄巨核球数は血小板増加期には増加していたが,血小板減少期には減少していた。骨髄コロニー培養を無血清軟寒天培養法で施行し,巨核球系コロニー数は血小板数の周期と相関を示した。血小板関連免疫グロブリンは,血小板増加期には正常範囲内であったが血小板減少期には増加を示した。これらの結果より,本症例における血小板数に周期的変動の機序として血小板産生と血小板破壊との両者が関与していることが示唆された。また本症例においては赤芽球系低形成を合併していたが,赤血球数には変動は認めなかった。本症例が周期性血小板減少症に赤芽球系低形成を合併した第1例である。
  • 中橋 栄太, 栗林 範臣, 辻 典秀, 川口 辰哉, 畑 裕之, 松崎 博充, 清水 一之, 高月 清
    1994 年 35 巻 8 号 p. 756-760
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は23歳,男性。労作時呼吸困難で発症し,末梢血での形質細胞の増加と尿中Bence Jone's蛋白の存在により形質細胞性白血病と診断された。入院後原疾患の増悪に伴い頚静脈怒張,心陰影拡大,肺うっ血像,肝脾腫など心不全をきたした。心臓カテーテル検査では末梢血管抵抗の減弱と,心拍出量の増加を認めたが,高拍出量をきたす基礎疾患は認められず,その原因は不明であった。また,意識障害を認め,高アンモニア血症と血中アミノ酸の異常も認められたが,肝機能の障害はなかった。難治性の心不全であったが,強力な化学療法(MVD+VAD)施行後は原疾患の改善にともなって,心不全と高アンモニア血症の著明な改善がみられた。以上の経過より,高心拍出性心不全と高アンモニア血症は原疾患によるものであることが強く示唆された。形質細胞性白血病にこのような合併症が存在することはきわめてまれであり,それらの関係について考察を試みた。
  • 景山 留美子, 高島 輝行, 谷脇 雅史, 堀池 重夫, 三澤 信一, 浦田 洋二, 安田 範夫, 加嶋 敬
    1994 年 35 巻 8 号 p. 761-767
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    右側頭筋の腫瘤を初発症状としたBリンパ腫の1例を報告する。症例は72歳,男性。1年位前からの右側頭部腫脹を主訴に来院。諸検査の結果,側頭筋部の腫瘍と診断,その他耳下腺部にも腫瘍を認めた。側頭部の腫瘍は側頭筋と筋膜の間に認め,組織は耳下腺部とともにmalignant lymphoma, diffuse medium-sized cell typeであった。表面マーカーはCD5+, CD10-, CD19+, CD20+, SmIg-μ+, δ+, λ+, 染色体分析では51, X, +X, -Y, +2, +3, +4, +8, +12の異常を認めた。Stage II Eと診断しLSG 12にて化学療法を開始したところ,12カ月目の現在治療中ではあるが完全寛解を維持している。骨格筋に発生するリンパ腫はきわめてまれであり,検索し得た限りでは28例であり,側頭筋に初発した症例はなかった。
  • 久武 純一, 石山 泰二郎, 秋本 佳久, 松田 功, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 太田 秀一, 風間 和男
    1994 年 35 巻 8 号 p. 768-773
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    49歳,女性。20歳(昭和39年)より皮疹が出現し,40歳の時に発熱,リンパ節腫大で当科受診。multicentric Castleman's disease (MCD)と診断され,多剤併用化学療法で症状は軽快した。平成4年11月に貧血の進行が認められ入院した。Hb 4.7 g/dl, RBC 135万/μl, 網赤血球118‰, 総ビリルビン2.1 mg/dl, 直接ビリルビン0.9 mg/dl, 直接クームス試験陽性であり自己免疫性溶血性貧血と診断した。ステロイド投与,血漿交換を行い一時的に貧血の改善が認められた。ステロイドの減量とともにHbの減少がみられ,免疫抑制剤,ビンクリスチン,ダナゾールを投与したが無効であった。ステロイドの再度の投与により貧血は改善し,Hb 8.0 g/dl前後を維持したため退院した。現在はステロイドの長期服用でHb 11.2 g/dlを維持している。MCDに合併したAIHAに関し若干の文献的考察を加えた。
  • 那須 浩二, 松林 秀幸, 前田 義久, 松浦 亮一郎, 鈴木 聡, 笠倉 新平
    1994 年 35 巻 8 号 p. 774-779
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1992年12月,71歳の女性が皮疹と微熱を主訴として当院免疫血液内科受診。末梢血では白血球数7,000/μl, 特徴的な異常リンパ球は29%, 抗Human T cell lymphotropic virus type-I (HTLV-I)抗体陽性。異常リンパ球のPCR法による遺伝子解析でHTLV-I proviral DNAのモノクローナルな組み込みが認められた。これらのことより,くすぶり型adult T cell leukemia (ATL)と診断した。末梢血リンパ球表面マーカーは,初診時CD3は61%, CD4は30%, CD8は59%で典型的なATLの形質ではなかった。1カ月後,末梢血白血球数6,300/μl, 異常リンパ球23%と初診時と変わらなかったがリンパ球表面マーカーはCD3が39%と減少し逆にCD4は58%と上昇した。リンパ球表面マーカーの3カラー解析でCD3-形質を証明し,cell sorterを用いてCD3-細胞の形態がATL細胞であることを確認した。本症例はくすぶり型のATLでありながら,CD3-の細胞表面形質を示したきわめて興味深い症例と思われる。
  • 秋本 佳久, 石山 泰二郎, 上野 秀之, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹, 九島 巳樹, 風間 和男
    1994 年 35 巻 8 号 p. 780-785
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    赤芽球癆,胸腺腫,重症筋無力症の3者を合併する症例は極めてまれであるが,著者らは,さらに正常圧水頭症を合併した1例を経験したので報告する。(症例)63歳,男性。歩行障害,左眼瞼下垂を認め某医に入院した。貧血を指摘され,頻回の輸血を施行されたが貧血が進行性となり,当科に入院した。RBC 176×104l, Hb 5.9 g/dl, Ht 17.4%, Ret 1‰と著明な貧血がみられ,骨髄で赤芽球系の細胞はほとんど認められなかった。胸部X-PおよびCTで心嚢壁右前方に腫瘤を認めた。また,眼瞼下垂を認めテンシロンテストが陽性で,抗アセチルコリンレセプター抗体は高値を示した。歩行障害,尿失禁,痴呆様症状もみられ頭部CTで水頭症を認めた。腰椎穿刺による髄液圧は正常であった。以上の成績から,胸腺腫,重症筋無力症,正常圧水頭症を合併した赤芽球癆と診断した。4者の合併は非常にまれで,正常圧水頭症の成因に免疫学的機序も想定されており興味ある症例と思われる。
  • 坂上 慎二, 中田 圭造, 長田 博, 山口 潤
    1994 年 35 巻 8 号 p. 786-791
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Fanconi症候群は,近位尿細管における多彩な再吸収障害を特徴とし,原発性のほか,さまざまな疾患に合併してみられることがある。今回,われわれは多発性骨髄腫に合併した,Fanconi症候群の1症例を経験した。症例は,62歳の女性。血清蛋白高値,免疫電気泳動でIgG-κ型M蛋白を認め,尿中Bence Jones蛋白陽性であった。骨髄中に異型性のある形質細胞の増加があり,多発性骨髄腫と診断した。腎性糖尿および,腎からの喪失による低リン血症,低カリウム血症,汎アミノ酸尿と代謝性アシドーシスを認め,Fanconi症候群と診断した。化学療法(MP間欠療法)後,血清IgGの減少,尿糖減少,血清K値改善を認めた。
  • 城下 紀幸, 黒沢 光俊, 岡部 実裕, 中馬 誠, 山本 義也, 桜田 恵右, 宮崎 保
    1994 年 35 巻 8 号 p. 792-797
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Numb chin syndromeは三叉神経第三枝の分枝であるオトガイ神経(mental nurve)の支配領域であるオトガイと下口唇に症状が限局する知覚障害をきたす症候群である。今回われわれはNumb chin syndromeを契機に診断された真性多血症を合併する多発性骨髄腫の一症例を経験したので報告する。73歳男性が1993年4月,口唇周囲の違和感,下顎のしびれ感を主訴に受診した。頭蓋X-Pにおける多数のpunched out lesion, 血清免疫電気泳動にてM-bow (Bence Jones protein, typeλ)を認め,骨髄穿刺にて骨髄腫細胞が14.1%確認され,多発性骨髄腫と診断された。MP療法にて神経症状は改善し,1994年5月現在,生存中である。Numb chin syndromeの原因,診断,治療などについて検討を加えた。
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