臨床血液
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36 巻, 1 号
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臨床研究
  • 岩瀬 理, 青木 功, 栗山 謙, 内田 淑子, 相沢 信, 中野 優, 外山 圭助
    1995 年 36 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    自己免疫性溶血性貧血(AIHA)における免疫調節性T細胞(IRT)などの病態への関与を知るため,AIHA患者15名の末梢血T細胞subsetを二重染色法を用いて解析した。その結果,活動期,寛解期を問わずAIHA患者ではCD4+細胞が減少しており,subsetとしてはCD4+CD45RA+細胞(naive T-cell)が減少していた。なおCD4+細胞中に占めるCD45RA+細胞の比率は活動期に低下していたが,寛解期には正常化した。また活動期患者ではCD8++細胞の増加を認め,subsetではCD8++S6F1+細胞(activated cytotoxic T lymphocyte; aCTL)が増加していた。しかし寛解期には両者共正常値を示した。以上よりAIHAの病態形成にはIRTの一つと思われるCD4+CD45RA+細胞の病的変動とさらにはaCTLの関与していることが示唆された。
  • —血縁者間同種骨髄移植との比較—
    高見 昭良, 中尾 真二, 上田 幹夫, 高松 秀行, 杉森 尚美, 山崎 宏人, 三浦 裕次, 伊藤 高明, 山口 正木, 仁木 健雄, ...
    1995 年 36 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    1992年1月から1993年12月までに行った非血縁者同種骨髄移植(BMT)例のうち100日以上生存した6例について慢性GVHDの頻度と臨床的特徴を検討し,HLA一致血縁者間BMT例34例と比較した。慢性GVHDはそれぞれ5例(83%), 14例(41%)にみられた。そのうち移植後70日以内の早期発症例は非血縁者間BMT例では4例(80%)と血縁者間BMTの7%に比べて有意に多かった。病変を示す臓器の数も非血縁者間BMTでは多い傾向がみられた。移植後にHLA-DRB1遺伝子型を決定したところ2例で1座不一致が認められた。これらの所見から,非血縁者間BMT例では慢性GVHDを予防するために,(1)移植後免疫抑制強化,(2)スクリーニングテストの早期施行,(3) HLA-DRB1によるドナーの選択などが重要と考えられた。
症例
  • 斉藤 孝, 森本 幸治, 三田村 巧, 大島 年照, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    1995 年 36 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の男性で鼻出血と発熱を主訴に1992年8月,当科入院となる。理学的所見上,鼻咽頭腫瘤と全身の皮疹および3カ所の皮下腫瘤,脾腫,リンパ節腫脹を認めた。鼻咽頭と皮膚の腫瘤の生検結果より,非ホジキンリンパ腫(WF: Diffuse small cleaved)と診断された。入院時の血液検査は白血球数4,800/μlで,10%の芽球様細胞を認めた。骨髄像上,細胞質内にアズール顆粒のない約60%の芽球様細胞の多くは手鏡様の形態を示した。芽球様細胞の表面抗原は,CD56 (NHK-1)とIaが陽性,T細胞系,B細胞系,骨髄球系の表面抗原はすべて陰性で,TCR遺伝子再構成を認めず,本例の芽球様細胞はNK細胞由来であることが示唆された。皮膚および鼻咽頭腔の腫瘤に対する放射線療法後,芽球様細胞の急激な増加とDICを併発し,化学療法を行ったが,肺出血により死亡した。臨床経過と芽球様細胞の表面抗原より,本例はNK細胞由来の鼻咽頭腔原発悪性リンパ腫と考えられた。
  • 西郷 勝康, 杉本 健, 寮 隆吉, 山口 延男
    1995 年 36 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    好塩基球,好酸球,血小板の増加を伴った5q-症候群で,ほかの染色体異常も合併したtype B症例(82歳,女性)を経験した。本例は初診時より,FAB分類のrefractory anemia with excess of blasts (RAEB)の状況を呈していた。慢性骨髄性白血病様の末梢血所見であったことなどの理由によりrecombinant interferon α2bにより治療を開始した。末梢血中芽球の消失,血小板数の正常化,好塩基球の減少など末梢血所見の改善が得られ,これらの変化はinterferon依存性であった。さらに投与開始1年後には,約2/3の比率で正常クローンの回復がみられた。診断後約20カ月後に,骨髄性急性転化をきたし死亡したが,本例におけるinterferon療法の効果は,今後の治療法の確立に向け,一定の示唆を与えている可能性も考えられ報告した。
  • 村井 一範, 道又 衛, 下瀬川 健二, 及川 浩樹, 槍沢 大樹, 成ヶ澤 靖, 宮入 泰郎, 厨 信一郎
    1995 年 36 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    rhGM-CSF投与が血球3系統の増殖再開の契機となり,その後メテノロンアセテート(MA)投与により3年以上正常末梢血液像を維持している金製剤起因性の重症再生不良性貧血症例を経験した。患者は65歳の女性で慢性関節リウマチに対し金チオリンゴ酸ナトリウム計500 mgの投与を受けたが,最終投与の2カ月後高度の貧血のため当院に入院。入院時末梢血は高度の汎血球減少で骨髄は無形成,Hamおよび砂糖水試験が陽性を示した。3回のmPSLパルス療法とMA治療にほとんど反応がなかったため,入院4カ月後よりPSL 5 mg/日,MA 40 mg/日併用下でrhGM-CSF 300 μg/日を28日間連日皮下投与した。投与終了時には末梢好中球3,800/μl, 網赤血球4.1万/μl, 血小板4.1万/μlとなり,さらに3カ月後には末梢血液像はほぼ正常化し,以後MAを徐々に減量,現在PSL 5 mg/日のみの投与で正常血液像が保持され,PNHの病態も消失している。
  • 荻原 健英, 菊池 嘉, 今井 康文, 大坂 顯通, 伊坂 正明, 岡 裕爾
    1995 年 36 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳,女性。全身の骨痛のため当院受診し,骨X線写真上著明な骨粗鬆症が認められ,当院入院。末梢血でリンパ芽球を7%, 骨髄で96.5%認め,急性リンパ性白血病(ALL·L1)と診断した。骨のCT, MRI像および骨シンチグラムにてALLの骨浸潤を認めた。入院後補正Ca値15.1 mg/dlと著明な高Ca血症を呈し,副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の上昇を認めた。高Ca血症の治療として補液とカルシトニン投与を行ったが効果なく,bisphosphonateであるアレンドロネートを投与した。投与後,高Ca血症は急速に改善したが,PTHrP値は不変であった。ALLに対する化学療法後,末梢血の芽球の消失に従い,PTHrP値は正常化した。以上より,本例では芽球のPTHrP過剰産生による骨吸収が高Ca血症の原因と考えられた。ALLが高Ca血症を合併することはまれであり,本例はALLに伴う高Ca血症の原因を示唆する興味深い症例と考えられた。
  • 渡辺 浩, 浅井 治, 多田 則道, 矢野 真吾, 加藤 明徳, 宇野 真二, 大沢 浩, 宇野澤 俊夫, 藤井 常宏, 中村 督, 小林 ...
    1995 年 36 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳既婚男性で,慢性骨髄性白血病慢性期に対してHLA一致の同胞より同種骨髄移植を予定された。本症例は既婚者であるがまだ児を得ていなく,かつ挙児希望があったため移植前に精子の凍結保存を行った。busulfan 8 mg/kg, cyclophosphamide 120 mg/kg, 脾照射4.5 Gy, 全身照射10 Gyによる前処置後,同種骨髄移植を施行した。移植後の経過は順調で,day 187にcyclosporinの投与を終了した。骨髄染色体分析でday 20にphiladelphia染色体は消失,PCR法によるbcr/abl rearrangementも消失し,治癒の可能性も望めたため,凍結精子による人工受精を開始した。4度目の人工受精で妊娠に成功し,健康な生児の分娩に至った。移植前処置の超大量化学,放射線療法はしばしば不妊症を併発するが,あらかじめ精子や卵の凍結保存を行うことで挙児希望がかなえられることがあり,骨髄移植療法のquality of lifeの向上にきわめて意義があると考えられた。
  • 青木 定夫, 小山 覚, 後藤 隆夫, 高橋 芳右, 柴田 昭
    1995 年 36 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性非リンパ性白血病(ANLL), M0はその白血病細胞は未分化な幹細胞レベルであり,治療抵抗性で予後不良である。M0に対する標準的治療法はまだ確定していない。われわれは合併症の多い70歳男性のM0症例に対し,Ara-C少量療法とG-CSFの併用を行い,完全寛解に導入することができた。寛解後,経口Ara-C誘導体cytarabine ocfosfate (STA)を4週ごとに1日200 mgを5日間投与する維持療法を行い,3年8カ月以上の長期にわたって寛解を持続している。M0は寛解導入が困難で,特に高齢者ではきわめて予後の悪いことが知られている。M0に対し,ANLLに準じた治療が有効な場合や,急性リンパ性白血病(ALL)の治療が有効な場合が報告されているが,poor riskのANLLで用いられるAra-C少量療法による寛解導入の報告はなく,貴重な症例と考えられた。M0の再発の危険に対し,維持療法として用いたSTAの間欠経口投与が有効と考えられた。今後これらの治療は試みるべき価値があると思われる。
  • 前田 明則, 吉永 尚子, 平田 大二, 浅越 康助, 直川 匡晴, 高野 邦子, 原川 奈梨, 中坊 幸晴, 高橋 淳, 山本 孝吉, 大 ...
    1995 年 36 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の男性。発熱,盗汗を主訴に来院した。WBC 8,700/μl(芽球49.5%),Hb 9.9 g/dl, Plt 13.0×104l, 骨髄は過形成で,芽球が86.4%を占めた。芽球はペルオキシダーゼ染色陰性,リンパ球系マーカー陰性,CD13陽性により,AML (M0)と診断した。BH-AC·TMP療法,BH-AC·MVP療法,Ara-C少量療法を施行するも,いずれも寛解には至らなかった。続いて行ったAra-C中等量療法後にも,66.4%の芽球の残存を認めた。しかし,rhG-CSFの投与を開始したところ,正常造血の回復とともに芽球の減少を認め,完全寛解に至った。G-CSFが本症例の寛解導入に有効であった機序は,充分に明らかではないが,白血病の病態解析ならびに治療法の一視点として,示唆に富む症例と考えられる。
  • 遠井 知子, 澤井 宏文, 武田 靖, 水田 和彦, 田嶌 政郎, 澤田 博義, 大熊 稔
    1995 年 36 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳女性,1988年発症の急性白血病。1992年4回目の再発時に当科に転院。急性骨髄性白血病(M0)と診断され,すでにanthracycline系薬剤による心筋傷害を認めた。AraC, VP-16少量療法にpirarubicinを併用し,再寛解導入し得たが,心筋傷害の増悪,心不全に続発し,急激な肝障害とDICが出現し,腹部エコー,CTにて肝実質内に小円形陰影を認めた。肝炎ウイルス抗原,抗体は陰性で,低血圧,肝血流低下などを認めたこと,LDHの高度上昇をともなったGOT, GPTの上昇といった臨床経過から,ischemic hepatitisと診断した。心不全にたいしてドブタミンなどの投与と酸素吸入を行い,約8日後には肝機能も軽快を得た。薬剤性心筋傷害合併白血病の治療例として興味ある例であり報告する。
短報
  • 藤沢 信, 金森 平和, 野口 太平, 丸田 壱郎, 小川 浩司, 酒井 リカ, 田口 淳, 富田 直人, 児玉 文雄, 大久保 隆男
    1995 年 36 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    A 74-year-old woman was admitted in October 1988 with anemia and leukocytopenia. Hematologic investigations established a diagnosis of hypoplastic acute leukemia. She received a low dose of cytosine arabinoside (LDAC: 10 mg/m2 every 12hours) subcutaneously for 21 days and achieved complete remission (CR) one month later. After one course of LDAC of 14 days, she received LDAC of 21 days every 5 to 6 months as maintenance therapy till April 1993. She has been in remission for 6 years. Intensification therapy with LDAC every 5 to 6 months might be useful in maintaining remission for hypoplastic acute leukemia.
  • 鴨下 昌晴, 鈴川 和巳, 小林 敏貴, 長谷川 雄一, 佐藤 祐二, 二宮 治彦, 長澤 俊郎, 阿部 帥
    1995 年 36 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    We reported a case of von Recklinghausen's disease complicated by macroglobulinemia, malignant Schwannoma and pheochromocytoma. A 43-year-old male patient who was diagnosed as von Recklinghausen's disease developed abdominal masses at 5 years after the adrenalectomy for pheochromocytoma. Computed tomography showed multiple heterogenous tumors in abdominal cavity. Histological examination of resected tumor was compatible with malignant Schwannoma. At the same time, peripheral blood and bone marrow smears showed a large number of plasmacytoid lymphocytes. Immunoelectrophoresis revealed M-protein of IgM, κ type. He was also diagnosed of coexistence with macroglobulinemia. The chemotherapeutic protocols used were not effective against both malignant Schwannoma and macroglobulinemia. The present case is a rare case of von Recklinghausen's disease associated with triple neoplasms.
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