臨床血液
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36 巻, 11 号
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臨床研究
  • 秋本 佳久, 石山 泰二郎, 上野 秀之, 日野 研一郎, 友安 茂, 鶴岡 延熹
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1247-1251
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
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    血中可溶性interleukin-2受容体(sIL-2R)は成人T細胞白血病,悪性リンパ腫等で高値を示すことが知られているが,著者らは,多発性骨髄腫(MM)においてsIL-2R濃度を測定し臨床的意義を検討した。対象はMM 16例および正常27例でsIL-2RはELISA法で測定した。正常人血清213±80 U/ml (mean±SD)に対し,MM 963±523 U/mlと増加していた。MM症例では病期の進展に伴いsIL-2R値は増加し臨床経過において免疫グロブリン値と相関した。また,血清interleukin-6および血清β2 microglobulin値はsIL-2R値と相関し,末梢血CD4/CD8比は病期の進展に伴い減少した。MM症例ではsIL-2Rは高値で,その成因にIL-6によるB細胞の活性化およびT細胞の活性化が想定され,sIL-2Rは病勢と相関し活動性の指標になると思われた。
  • 岡本 能弘, 小嶋 哲人, 勝見 章, 山崎 鶴夫, 濱口 元洋, 西田 幹夫, 鈴森 薫, 齋藤 英彦
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1252-1256
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    血友病は伴性劣性の遺伝形式をとる先天性の出血性疾患であり,X染色体長腕部に存在する第VIII因子遺伝子の異常によって引き起こされる。最近,遺伝子異常の不明であった血友病Aの重症例において,X染色体長腕中の第VIII因子遺伝子の一部を含んだ領域で約500 kbにおよび逆位がおこっていることが報告された。今回,われわれがnon-RIサザンブロッテイング法を用いた第VIII因子遺伝子の逆位解析を行った結果,日本人重症血友病A患者33名のうち12名(36.4%)に逆位を検出した。また,従来報告されている制限酵素断片長多型(RFLP)による保因者診断が不能であった血友病A家系において,この第VIII因子遺伝子逆位解析により保因者診断および出生前診断を行うことができた。これまで血友病Aの遺伝子診断には,RFLPを用いた間接法が多く用いられてきたが,これに加え今回の検討で第VIII因子の逆位解析が重症血友病Aの遺伝子診断に臨床上,非常に有用であることが示された。
  • 竹山 英夫, 山田 博豊, 恵美 宣彦, 斎藤 英彦, 竹下 明裕, 大野 竜三, 吉田 均, 直江 知樹, 影山 慎一, 白川 茂, 小寺 ...
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1257-1265
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
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    急性白血病の化学療法後におけるG-CSFの至適投与法を検討すべく,化学療法後投与(A群)と好中球減少性発熱後の投与(B群)との無作為割付群間比較試験を行った。登録時に強力な化学療法が施行されており,感染による38度以上の発熱がなく,骨髄中の芽球は20%以下で末梢血に芽球の認められない1) ALLの19例,2) 高齢者及び再発難治のAML 35例,3) CMLの急転例の3例を対象とした。A群では化学療法終了24時間後にG-CSF 200 μg/m2ivを開始する。B群では化学療法後好中球が1,000以下となり,38度以上の発熱がみられた場合に同量のG-CSF投与を開始する。不適格5例を除く52例の内A群は27例,B群は25例で,38度以上の発熱日数はA群は2.15±2.98日,B群で3.40±4.78日であった。感染症回避率はA群で40.7%, B群で15.6%であった。A群はB群に比し有意に好中球に回復時期を早め,早期に感染症の消失がみられた。G-CSFの早期投与による芽球の増加や白血病の早期再発はみられなかった。
  • 高橋 豊, 馬止 裕, 大野 陽一郎
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1266-1273
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
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    鉄赤血球回転(ferroerythrokinetics, FEK)に潜む曖昧さを改善し情報を整理・要約する目的で,正常,溶血過形成,低形成,無効造血(IEP)各群につき,erythron transferrin uptake(Cazzola等)換算法を採用したFEKデーターに正準判別分析を適用し正準変量V-1, V-2, V-3を得た。V-2, V-3につき,IEP群分布楕円の長・短軸にそれぞれ平行となるよう軸回転しV'-2, V'-3とした。V-1は赤血球有効産生量,V'-2は有効率,V'-3は末梢破壊率をそれぞれ反映する定量的指標と解釈された。IEP群でV'-2はETUと顕著な負相関(R=-0.872)関係があり造血効率の低下とそれに伴う代償性過形成との関係をより明瞭に呈示した。V-1, V'-2平面上でIEP群分布楕円と3判別線でFEK上記3型と2複合型に対応する5領域が区分できた。本法を適用すると,従来のFEKの指標では部分的ないし複合的要因のため判然としない疾患を判断する上に極めて有用な指標になると考えられた。
症例
  • 矢野 邦夫, 中野 祐往, 小林 政英, 富田 和宏, 笠松 紀雄, 橋爪 一光
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1274-1278
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
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    30歳の女性。慢性骨髄性白血病慢性期に同種骨髄移植を施行した。移植後104日に微熱,咳嗽が出現し,全身倦怠感強くなり10日後に入院となった。入院時,胸部X線写真にて,びまん性陰影が見られたためcytomegalovirus (CMV)による間質性肺炎を疑いganciclovir (DHPG) (5 mg/kg×2/day)を投与したところ,DHPG投与3日目に解熱し,全身倦怠感,咳嗽は消失した。この時,体幹部に水疱が極めて少数ながら認められており,また,水痘感染者との接触が確認されたため,水痘肺炎の疑いを強くし,胸部CTを施行した。肺野にびまん性の肺野濃度上昇と斑状の結節影が認められた。臨床経過,胸部CT像より水痘肺炎を強く疑い,DHPGを中止し(投与7日目),acyclovir内服投与を開始した。経過は順調にて退院となった。今回われわれは当初,CMVによる間質性肺炎を疑いDHPGを投与し,後に水痘肺炎を疑った症例において,DHPGの有効性を経験したので報告する。
  • 古家 寛司, 若山 聡雄, 田中 順子, 津森 道弘, 畠添 敏光, 大國 智司, 佐藤 利昭, 石倉 浩人, 加藤 讓
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1279-1283
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    慢性骨髄性白血病慢性期の33歳男性にHLA一致,MLC陰性の兄より同種骨髄移植を行った。患者はO型,兄はA型でmajor ABO不適合であった。移植早期に肝中心静脈閉塞症を合併したが,急性および慢性GVHDは生じなかった。好中球は移植後15日目に500/μl以上,血小板は22日目に20,000/μl以上にそれぞれ増加した。一方網状赤血球,赤血球は280日後においても増加しなかった。Ph1は陰性化したが,抗A凝集素は存続した。骨髄中の赤芽球の増加を認めず,赤芽球癆(PRCA)と診断した。プレドニゾロン内服,シクロスポリンの投与中止,エリスロポエチン皮下注などは,無効であった。284日目よりメチルプレドニゾロンパルス療法を開始し,292日目より網状赤血球の急激な増加を認め,PRCAは改善した。
  • 中瀬 一則, 長谷川 正規, 鈴木 宣則, 玉木 茂久, 谷川 元昭, 池田 健, 辻 幸太, 宮西 永樹
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1284-1288
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳男性。1986年1月に汎血球減少を認め入院。赤血球のanisocytosisとleukoerythroblastosisがみられ,骨髄穿刺はdry tapで生検で著明なfibrosisを認めた。入院3カ月後に全身の表在リンパ節腫大と体幹部に多数の皮膚腫瘤が出現。リンパ節生検によりlymphoblastic lymphomaと診断され,皮膚生検でも異型細胞の浸潤であった。リンパ節腫瘍細胞の表面形質は未熟T細胞型でT細胞抗原受容体β鎖,γ鎖遺伝子は胚細胞型であった。1986年6月に悪性リンパ腫として多剤併用化学療法を施行したが,その1カ月後に白血化し,肺炎で死亡した。末梢血は急性骨髄性白血病M2の病像であった。剖検で肝脾に髄外造血巣を認めた。本症例は原発性骨髄線維症で末期に白血化に至る経過中にT細胞性リンパ腫を合併した稀な症例である。
  • 下瀬川 健二, 小野 葉子, 菅原 健, 沼岡 英晴, 及川 浩樹, 伊藤 薫樹, 槍澤 大樹, 村井 一範, 成ケ澤 靖, 宮入 泰郎, ...
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1289-1294
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    低形成性白血病に近似し,初診時よりおよそ22カ月間,ウベニメクス単独投与下で血液像の憎悪をほとんど示さないまま経過している71歳の急性骨髄性白血病(AML)症例を経験した。本例は初診時の骨髄細胞染色体分析で8トリソミーと正常核型のモザイクを示したが,初診よりおよそ19カ月後の染色体分析では8トリソミーは消失し,所属の不明な染色体の10番染色体長腕への挿入が分析細胞のすべてに認められた。この患者はこれまでの経過中,赤血球および血小板輸注を全く行うことなく良好に経過している。
  • 西郷 勝康, 中川 俊太郎, 寮 隆吉, 山口 延男
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1295-1299
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性白血病では稀に13トリソミーが単独の染色体異常として報告されているが,慢性骨髄性白血病(CML)ではこれまで2例が報告されているのみである。今回13トリソミーを単独の異常として有したフィラデルフィア(Ph)染色体陰性CML症例を経験した。症例は68歳男性。他疾患にて治療中白血球増加を指摘された。約7カ月後,急激に白血球の増加をきたし(108,000/μl), 脾腫が明らかとなった。好中球アルカリフォスファターゼ活性は中等度に低下し,形態学的にCMLに合致していると考えられたが,Ph染色体,BCR遺伝子の再構成共に見られず,13トリソミーが単独の染色体異常として確認された。13トリソミー単独の異常を有する急性白血病では,多系統にわたるマーカー発現例が多く予後不良の一群を形成している可能性が示されている。さらに多能性幹細胞疾患である骨髄異形成症候群の中にも若干例の報告があり,単独で13トリソミーを持つ血液疾患は,未分化な幹細胞レベルでの腫瘍化をきたした一連の疾患群とも考えられ,今後も症例の集積が必要と思われた。
  • 淡谷 典弘, 高尾 昌樹, 夏田 洋幹, 山脇 健盛, 鈴木 則宏, 高山 信之, 石田 明, 川合 陽子
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1300-1304
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳の女性。平成3年12月に慢性骨髄性白血病(CML)の移行期と診断され,第1回目入院。VP療法,BHAC-DMP療法,interferon, 6-MP, MCNU投与など施行後慢性期となり,外来でbusulfanの投与を受けていた。平成5年5月,急性転化のため第2回目入院。骨髄検査では59.2%とPAS陽性を含む赤芽球の増加が認められ,peroxidase陽性芽球は14.6%であった。Southern blot法によるmajor BCR遺伝子再構成は陽性であり,G-band法による染色体検査ではPh染色体に加え,t(6;9)(p23;q34)を認めた。この染色体異常は急性非リンパ性白血病(ANLL)に認められることが知られているが,Ph染色体陽性CMLの急性転化時に付加染色体異常としての報告はない。また赤芽球性急性転化の頻度はCML急性転化の10%と低い。本症例は赤芽球性急性転化時に付加染色体異常としてt(6;9)を伴った極めて貴重な症例と考えられた。
  • 岡本 昌隆, 宮崎 仁, 都築 基弘, 井野 晶夫, 江崎 幸治, 平野 正美
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1305-1310
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    anthracyclineによる慢性心不全にβ遮断薬の少量連日投与をおこない,心機能の回復を得た。症例は44歳女性,89年9月診断のAML (M4E)。治療開始時の心左室駆出率(LVEF)は59%であったが,90年7月には33%に低下し以後の治療は中止した(daunorubicin総投与量486 mg/m2, aclarubicin 135 mg/m2, mitoxantrone 55 mg/m2)。同年10月に心不全(NYHA III°)を発症し,dobutamin, furosemide, digoxin等では症状は改善せず(NYHA II°), 12月よりmetoprololの少量連日投与を試みた(5 mg/日より開始し,4∼8週毎に倍量に増量し40 mg/日を維持量とした)。心不全症状は徐々に軽快し,91年2月にはLVEF 36%, NYHA I°で退院となり,3月以降は心不全症状は消失した。その後LVEFは92年5月には44%, 93年7月には53%まで改善した。anthracyclineによる慢性心不全に対するβ遮断薬の作用機序は明らかではないが,一部の心不全症例には有用である可能性が示唆され,今後検討されるべき治療法と考えられる。
  • 河内 康憲, 渡辺 礼香, 西原 利男, 内田 立身, 瀬津 弘順, 森 将晏
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1311-1315
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は69歳,男性。1986年2月腸閉塞のため当院外科に入院し試験開腹をうけ,後縦隔より後腹膜に亘る巨大腫瘍と空腸に手拳大の腫瘍を認めた。肉眼的に慢性肝炎が疑われた。空腸腫瘍はびまん性大細胞型の悪性リンパ腫と診断され,3月内科に転科した。化学療法にて寛解し6月に退院した。1991年夏頃に血小板減少,腹水,食道静脈瘤が出現し,HCV抗体が陽性であった。利尿剤で腹水は軽快した。1994年10月に右胸水が出現し当科に入院した。胸水は乳糜様でカイロミクロンを181 mg/dl認めた。持続吸引で胸水は消失し11月に退院したが,乳糜胸の再発のため12月に再入院した。今回は持続吸引では消失せず,胸腔内にOK432 10 KEを2回投与し胸膜癒着にて消失し1995年3月に退院した。GaシンチやCT像で悪性リンパ腫の再発は認められなかった。本例は肝硬変以外の病変を認めず乳糜胸の原因ははっきりしないが,過去に悪性リンパ腫が浸潤した胸管は,寛解中であっても破綻をきたしやすいのかもしれない。
  • 奥田 哲也, 湯本 義一
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1316-1320
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    66歳の男性が持続する発熱で当科を紹介され,入院した。白血球,血小板減少の存在,LDH, ferritinの著明高値の存在から血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome, HPS)を疑い骨髄穿刺を施行,血球貪食を伴う組織球が21%と増加しており確診を得た。増加した組織球の大部分は成熟型でvirus associated hemophagocytic syndrome (VAHS)を含む反応性の病態(reactive hemophagocytic syndrome, RHS)を考えたが,DICを合併していたため予後不良と判断,ステロイドのパルス療法に加えVP-16を含む多剤併用化学療法を行ったところ寛解に入り,その後の経過は順調である。成人RHSの場合,早期からの化学療法は治療のひとつの選択となると思われる。
  • 稲光 毅, 井上 光世, 穐吉 秀隆, 本田 景子, 渋谷 恒文, 中山 秀樹, 植田 浩司
    1995 年 36 巻 11 号 p. 1321-1325
    発行日: 1995年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    非血縁者間同種骨髄移植を受けた10歳の女児に発症したステロイド治療抵抗性の皮膚急性graft-versus-host disease (GVHD) stage +++に対して,8-methoxypsolaren and ultraviolet A (PUVA)療法を行った。皮膚病変はPUVA療法開始後早期から軽快しはじめ,全身的な免疫抑制療法を加えることなく治療5週目にはほぼ消失した。PUVA療法は皮膚の急性GVHDに対して有効な治療法であると考えられた。
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